説明

車両

【課題】構造が複雑になるのを抑制しながら、減衰機構および検出手段の両方が設けられた懸架装置を得ることが可能な車両を提供する。
【解決手段】この自動二輪車1(車両)は、前輪8と車体との間に設けられるとともに、前輪8と車体とが相対的に移動するときの伸縮する力を減衰させる減衰機構を含むフロントフォーク10と、前輪8および車体が相対的に移動するときの伸縮状態を検出するための検出装置20とを備え、フロントフォーク10の減衰機構は、前輪8側に設けられるシリンダ部25と、車体側に設けられ、挿入穴24dを有するロッド部24と、ロッド部24に取り付けられるとともに、シリンダ部25の内部に配置され、挿入穴26bを有するピストン部26とを含み、検出装置20は、シリンダ部25に設けられるとともに、ロッド部24の挿入穴24dおよびピストン部26の挿入穴26bに挿入されるセンサ部32を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に関し、特に、懸架装置を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フロントフォークやリヤサスペンションなどの懸架装置を備えた車両が知られている(たとえば、特許文献1参照)。上記特許文献1には、前輪と車体との間に配置される左右一対のフロントフォークと、一方のフロントフォークの内部に設けられるとともに、フロントフォークのストローク量(伸縮量)を検出するストロークセンサ部(検出手段)と、他方のフロントフォークに設けられるとともに、前輪と車体とが伸縮する力を減衰させるダンパー機構(減衰機構)とを含む車両が開示されている。この車両のストロークセンサ部は、フロントフォークのインナーチューブに取り付けられる検出パイプと、フロントフォークのアウターチューブに取り付けられる検出ロッドとにより構成されており、検出ロッドが検出パイプ内に挿入され、検出ロッドから制御装置にケーブルが接続されている。そして、フロントフォークの伸縮時に、検出ロッドおよび検出パイプの相対位置が変化して抵抗値が変化することによる電圧変化を検出し、この電圧変化を制御装置へ入力することにより、フロントフォークのストローク量(伸縮量)が検出される。
【0003】
【特許文献1】特開平6−263078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された車両では、上記のように、一対のフロントフォークのうちの一方のフロントフォークにダンパー機構を設けるとともに、他方のフロントフォークにストロークセンサ部を設けることを前提とした構造を有しているので、1つのフロントフォークにストロークセンサ部およびダンパー機構の両方を設けることが困難であるという問題点がある。また、1つのフロントフォークにダンパー機構(減衰機構)およびストロークセンサ部(検出手段)を設けようとすると、構造が複雑になるという問題点がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、構造が複雑になるのを抑制しながら、減衰機構および検出手段の両方が設けられた懸架装置を得ることが可能な車両を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
この発明の一の局面による車両は、車輪と、車体と、車輪と車体との間に設けられるとともに、車輪と車体とが相対的に移動するときの伸縮する力を減衰させる第1減衰機構を含む懸架装置と、車輪および車体が相対的に移動するときの伸縮状態を検出するための検出手段とを備え、懸架装置の第1減衰機構は、車輪側および車体側のいずれか一方に設けられるシリンダ部と、車輪側および車体側の他方に設けられ、第1挿入穴を有するロッド部と、ロッド部に取り付けられるとともに、シリンダ部の内部に配置され、第2挿入穴を 有するピストン部とを含み、検出手段は、懸架装置の第1減衰機構のシリンダ部に配置されるとともに、ロッド部の第1挿入穴およびピストン部の第2挿入穴の少なくともいずれか一方に挿入されるセンサ部を含む。
【0007】
この一の局面による車両では、上記のように、車輪と車体とが相対的に移動するときの伸縮する力を減衰させる懸架装置の第1減衰機構を、第1挿入穴を有するロッド部と、第2挿入穴を有するピストン部とを含むように構成するとともに、車輪および車体が相対的に移動するときの伸縮状態を検出するための検出手段を、ロッド部の第1挿入穴およびピストン部の第2挿入穴の少なくともいずれか一方に挿入されるセンサ部を含むように構成することによって、センサ部を第1減衰機構のピストン部およびロッド部の少なくともいずれか一方に挿入することができるので、第1減衰機構および検出手段を1つの懸架装置に設けることができる。また、センサ部を第1減衰機構のピストン部およびロッド部の少なくともいずれか一方に挿入するだけであるので、懸架装置の構造が複雑になるのを抑制することができる。したがって、この一の局面では、懸架装置の構造が複雑になるのを抑制しながら、第1減衰機構および検出手段の両方が設けられた懸架装置を得ることができる。
【0008】
上記一の局面による車両において、好ましくは、センサ部は、ロッド部の第1挿入穴およびピストン部の第2挿入穴の少なくともいずれか一方に挿入される一方端部と、シリンダ部の車輪側および車体側のいずれか一方の外部に配置されるとともに、電気配線が接続される他方端部とを含む。このように構成すれば、センサ部の他方端部に接続される電気配線をシリンダ部の外部に配置することができるので、シリンダ部の組立時に電気配線が邪魔になるのを抑制することができる。これにより、組立作業性を向上させることができる。
【0009】
上記センサ部が一方端部および他方端部を含む車両において、好ましくは、センサ部の他方端部をシリンダ部の外側から着脱可能に取り付けるための第1取付部材をさらに備える。このように構成すれば、シリンダ部の組立後に、センサ部をシリンダ部に取り付けることができるとともに、センサ部の修理や交換を行う場合にも、シリンダ部を分解することなくセンサ部をシリンダ部から取り外すことができるので、センサ部の着脱作業性を向上させることができる。
【0010】
上記センサ部の他方端部をシリンダ部の外側から着脱可能に取り付けるための取付部材を備える車両において、好ましくは、懸架装置は、アウターチューブと、アウターチューブに摺動可能に挿入されたインナーチューブとをさらに含み、シリンダ部は、アウターチューブおよびインナーチューブのいずれか一方の内部に配置され、ロッド部は、アウターチューブおよびインナーチューブの他方の内部に配置され、センサ部の他方端部は、取付部材により、アウターチューブおよびインナーチューブのシリンダ部が配置される方の外側から着脱可能に取り付けられる。このように構成すれば、アウターチューブおよびインナーチューブの組立後に、センサ部をシリンダ部に取り付けることができるとともに、センサ部の修理や交換を行う場合にも、アウターチューブおよびインナーチューブを分解することなくセンサ部をシリンダ部から取り外すことができるので、センサ部の着脱作業性をより向上させることができる。
【0011】
上記センサ部の他方端部をシリンダ部の外側から着脱可能に取り付けるための取付部材を備える車両において、好ましくは、懸架装置は、シリンダ部が固定される支持ブラケットを含み、支持ブラケットには、センサ部および取付部材の外径よりも大きい内径を有するとともに、センサ部および取付部材を挿入するための懸架装置の長手方向に伸びる挿入孔が形成されている。このように構成すれば、支持ブラケットの装着後に挿入孔を介してセンサ部および取付部材を挿入することができるので、懸架装置の組立工程における最後の方の工程で、センサ部をシリンダ部に取り付けることができる。これにより、組立作業性をより向上させることができる。また、センサ部の修理や交換などを行なう場合にも、支持ブラケットを装着した状態でセンサ部をシリンダ部から取り外すことができるので、センサ部の修理および交換などを容易に行うことができる。
【0012】
上記センサ部が一方端部および他方端部を含む車両において、好ましくは、センサ部の他方端部をシリンダ部の内側から着脱可能に取り付けるための第2取付部材をさらに備える。このように構成すれば、センサ部をシリンダ部から取り外すことができるので、センサ部の修理や交換を行うことができる。
【0013】
上記センサ部が一方端部および他方端部を含む車両において、好ましくは、懸架装置は、支持ブラケットを含み、支持ブラケットは、軸部材を挿入するための貫通穴と、貫通穴の内周面に設けられる電気配線取出溝とを有し、支持ブラケットの貫通穴には、軸部材を回転可能に支持する軸受部材が取り付けられており、電気配線は、軸受部材の外周面と、電気配線取出溝の内周面との間に配置される。このように構成すれば、電気配線が軸部材の外周面に当接するのを防止することができるので、電気配線が損傷するのを抑制することができる。
【0014】
上記一の局面による車両において、好ましくは、検出手段のセンサ部は、ロッド部の第1挿入穴に挿入され、ロッド部の第1挿入穴のセンサ部が挿入される側の端部は、外側に向かって開口幅が大きくなるテーパ形状を有する。このように構成すれば、組立時に、検出手段のセンサ部をロッド部の第1挿入穴に挿入しやすくすることができるので、これによっても、組立作業性を向上させることができる。
【0015】
上記一の局面による車両において、好ましくは、車輪は、前輪を含み、懸架装置は、前輪と車体との間に配置され、第1減衰機構およびセンサ部の両方が設けられたフロントフォークを含む。このように、上記一の局面の懸架装置の構成をフロントフォークに適用すれば、フロントフォークの構造が複雑になるのを抑制しながら、第1減衰機構およびセンサ部の両方が設けられたフロントフォークを得ることができる。
【0016】
上記一の局面による車両において、好ましくは、車輪は、前輪を含み、懸架装置は、前輪と車体との間に設けられた一対のフロントフォークを含み、一対のフロントフォークのいずれか一方に第1減衰機構およびセンサ部の両方が設けられており、一対のフロントフォークの他方には、第2減衰機構が設けられている。このように検出手段のセンサ部を一対のフロントフォークのいずれか一方に設ければ、両側のフロントフォークは一体的に伸縮するので、両側のフロントフォークの伸縮状態を検出することができる。これにより、検出手段の部品点数が増加するのを抑制することができる。また、走行方向に対して両側に配置される一対のフロントフォークの両方に減衰機構を設けることができるので、フロントフォークに掛かる減衰力がフロントフォークの片側のみに集中するのを抑制することができる。これにより、減衰力の掛かり方のバランスが悪くなるのを抑制することができる。
【0017】
上記一の局面による車両において、好ましくは、車輪は、後輪を含み、懸架装置は、後輪と車体との間に配置され、第1減衰機構およびセンサ部が設けられたリヤサスペンションを含む。このように、上記一の局面の懸架装置の構成をリヤサスペンションに適用すれば、リヤサスペンションの構造が複雑になるのを抑制しながら、第1減衰機構およびセンサ部の両方が設けられたリヤサスペンションを得ることができる。また、リヤサスペンションに減衰機構およびセンサ部の両方を設けることができるので、リヤサスペンションが2つの場合に、一方のリヤサスペンションに減衰機構を設けるとともに、他方のリヤサスペンションにセンサ部を設けるという構成にする必要がない。これにより、リヤサスペンションが2つの場合に、走行方向に対して両側に配置される2つのリヤサスペンションの両方に減衰機構を設けることができるので、リヤサスペンションに掛かる減衰力がリヤサスペンションの片側のみに集中するのを抑制することができる。これにより、減衰力の掛かり方のバランスが悪くなるのを抑制することができる。
【0018】
上記一の局面による車両において、好ましくは、懸架装置の第1減衰機構は、シリンダ部の内部に配置され、センサ部が挿入される第3挿入穴を有するベースバルブをさらに含む。このように構成すれば、シリンダ部の内部にベースバルブを配置する場合にも、センサ部をベースバルブの第3挿入穴に挿入することができるので、容易に、減衰機構および検出手段のセンサ部を1つの懸架装置に設けることができる。
【0019】
上記一の局面による車両において、好ましくは、検出手段は、センサ部と、ロッド部およびピストン部の少なくとも一方との相対的な位置を検出するために設けられている。このように構成すれば、容易に、車輪および車体が相対的に移動するときの伸縮状態を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態による自動二輪車の全体構造を示した側面図である。図2は、図1に示した一実施形態による自動二輪車の前側の構造を示した側面図である。図3〜図10は、図1に示した一実施形態による自動二輪車のフロントフォークおよびリヤサスペンションの構造を詳細に説明するための図である。なお、本実施形態では、本発明の車両の一例として、自動二輪車について説明する。図中、FWDは、自動二輪車の走行方向の前方を示している。以下、図1〜図10を参照して、本発明の一実施形態による自動二輪車1の構造について詳細に説明する。
【0022】
本発明の一実施形態による自動二輪車1では、図1に示すように、ヘッドパイプ2の後方には、メインフレーム3が配置されている。また、メインフレーム3には、シートレール4が接続されている。これらのヘッドパイプ2、メインフレーム3およびシートレール4によって、車体フレームが構成されている。なお、ヘッドパイプ2、メインフレーム3およびシートレール4は、本発明の「車体」の一例である。
【0023】
また、ヘッドパイプ2には、図2および図3に示すように、ステアリングシャフト5が取り付けられている。このステアリングシャフト5の上部には、図2に示すように、ハンドル6が取り付けられている。また、ヘッドパイプ2の前方には、ヘッドパイプ2の前方を覆うフロントカウル7が設けられている。また、フロントカウル7の下方には、前輪8と、前輪8の上方に配置されるフロントフェンダ9が配置されている。なお、前輪8は、本発明の「車輪」の一例である。この前輪8は、一対のフロントフォーク10の下端部に回転可能に取り付けられている。なお、フロントフォーク10は、本発明の「懸架装置」の一例である。このフロントフォーク10は、前輪8と車体とが相対的に移動するときの伸縮する力を減衰させる機能を有する。
【0024】
また、フロントフォーク10は、図3に示すように、走行方向に向かって前輪8の左側に配置される左側フロントフォーク11と、走行方向に向かって右側に配置される右側フロントフォーク12とにより構成されている。この左側フロントフォーク11は、アウターチューブ13およびインナーチューブ14が軸方向に摺動して伸縮可能に設けられるとともに、右側フロントフォーク12は、アウターチューブ15およびインナーチューブ16が軸方向に摺動して伸縮可能に設けられることによって、テレスコピック型に構成されている。また、アウターチューブ13および15は、ステアリングシャフト5に固定されたブラケット17に固定されている。また、インナーチューブ14および16には、アクスルブラケット18および19がそれぞれ設けられているとともに、アクスルブラケット18および19には、前輪8の車軸8aが取り付けられている。なお、アクスルブラケット18は、本発明の「支持ブラケット」の一例であり、車軸8aは、本発明の「軸部材」の一例である。
【0025】
ここで、本実施形態では、左側フロントフォーク11には、後述する減衰機構と、左側フロントフォーク11の伸縮量を検出するための検出装置20とが設けられている一方、右側フロントフォーク12には、減衰機構と、減衰調整バルブ21および22とが設けられている。なお、検出装置20は、本発明の「検出手段」の一例である。
【0026】
具体的には、図4および図5に示すように、左側フロントフォーク11のアウターチューブ13の内周面には、インナーチューブ14の外周面と摺動するブッシュ13aが取り付けられている。また、左側フロントフォーク11のアウターチューブ13の上端部には、ロッド固定部材23が嵌合されてアウターチューブ13の上端開口が塞がれている。
【0027】
また、本実施形態では、図5に示すように、ロッド固定部材23のネジ穴23aには、ロッド部24のネジ山が形成された上端外周部24aが固定されている。また、ロッド部24には、鍔部24bが固定されている。また、ロッド部24のネジ山が形成された下端外周部24cは、後述するシリンダ部25の内部に配置される伸び減衰用のピストン部26のネジ穴26aに固定されている。また、ロッド部24およびピストン部26には、内周面の所定の領域に非磁性体からなるパイプ部材27が配置された挿入穴24dおよび26bがそれぞれ形成されている。なお、挿入穴24dは、本発明の「第1挿入穴」の一例であり、挿入穴26bは、本発明の「第2挿入穴」の一例である。また、ピストン部26には、油を通過させるための複数のオリフィス26cおよび26dが形成されている。この複数のオリフィス26cは、ピストン部26よりも下側の中間オイル室25aの油を上側の上部オイル室25bに通過させる機能を有するとともに、複数のオリフィス26dは、ピストン部26よりも上側の上部オイル室25bの油を下側の中間オイル室25aに通過させる機能を有する。また、複数のオリフィス26cおよび26dの上側には、オリフィス26cの上面を塞ぐとともに、オリフィス26dの上面を開口するように板状のワッシャ26eが配置されている。また、複数のオリフィス26cおよび26dの下側には、オリフィス26cの下面を開口するとともに、オリフィス26dの下面を塞ぐように板状のワッシャ26fが配置されている。
【0028】
また、左側フロントフォーク11のインナーチューブ14のネジ山が形成された下端外周部14aは、アクスルブラケット18のネジ穴18aに固定されている。このアクスルブラケット18には、下部に複数の開口部28aを有するシリンダパイプ部28の下部が固定されている。このシリンダパイプ部28の上部には、上部蓋体29が固定されている。この上部蓋体29の上面とロッド部24の鍔部24bの下面との間には、圧縮コイルバネ30が配置されている。また、シリンダパイプ部28の内部には、圧縮減衰用のベースバルブ31が設けられている。このベースバルブ31の下部には、蓋体部31aが設けられており、この蓋体部31aは、シリンダパイプ部28の下部を塞ぐように配置されている。また、蓋体部31aの下部は、アクスルブラケット18に固定されている。なお、シリンダパイプ部28、上部蓋体29およびベースバルブ31の蓋体部31aによって、シリンダ部25が構成されている。なお、ロッド部24、シリンダ部25、ピストン部26およびベースバルブ31によって、左側フロントフォーク11の減衰機構(第1減衰機構)が構成されている。
【0029】
また、ベースバルブ31には、油を通過するための複数のオリフィス31bおよび31cが形成されている。この複数のオリフィス31bは、ベースバルブ31よりも下側の下部オイル室25cの油を上側の中間オイル室25aに通過させる機能を有するとともに、複数のオリフィス31cは、ベースバルブ31よりも上側の中間オイル室25aの油を下側の下部オイル室25cに通過させる機能を有する。また、複数のオリフィス31bおよび31cの上側には、オリフィス31bの上面を塞ぐとともに、オリフィス31cの上面を開口するように板状のワッシャ31dが配置されている。また、複数のオリフィス31bおよび31cの下側には、オリフィス31bの下面を開口するとともに、オリフィス31cの下面を塞ぐように板状のワッシャ31eが配置されている。
【0030】
また、本実施形態では、ベースバルブ31には、挿入穴31fが形成されている。なお、挿入穴31fは、本発明の「第3挿入穴」の一例である。また、ベースバルブ31の挿入穴31fには、センサ部32が挿入されている。そして、センサ部32の一方端部32aは、ピストン部26の挿入穴26bおよびロッド部24の挿入穴24dの内周面に設けられた非磁性体からなるパイプ部材27の挿入穴27aに挿入されているとともに、センサ部32の他方端部32bは、シリンダ部25の下側の外部に配置されている。なお、センサ部32は、コイルのインダクタンス変化を利用した変位センサ部であり、非磁性体からなるパイプ部材27の挿入穴27aに挿入された長さを検出する機能を有する。そして、検出された長さに対応する信号が減衰力コントロールユニット33(図3参照)に入力されることにより、伸縮量が検出されるように構成されている。この減衰力コントロールユニット33は、検出された伸縮量を時間で微分することによって伸縮速度を算出するとともに、伸縮速度に対応した信号を減衰調整バルブ21および22(図3参照)に入力する機能を有する。
【0031】
また、図5に示すように、センサ部32の他方端部32bは、取付部材34のネジ部34aにより、ベースバルブ31の蓋体部31aのネジ穴31gに、シリンダ部25の下側から着脱可能に固定されている。なお、取付部材34は、本発明の「第1取付部材」の一例である。この取付部材34は、ネジ部34a、シールワッシャ34b、ナット部34cおよび電気配線支持部34dによって構成されている。また、取付部材34およびセンサ部32によって、検出装置20が構成されている。
【0032】
また、アクスルブラケット18のベースバルブ31の蓋体部31aの挿入穴31fの下方に位置する部分には、センサ部32および取付部材34の外径よりも大きく形成された挿入孔18bが形成されている。これにより、挿入孔18bを介して、センサ部32および取付部材34をベースバルブ31の蓋体部31aに取り付けることが可能となる。また、アクスルブラケット18の下部には、挿入孔18bに交差するように、前輪8の車軸8aを支持する貫通穴18cが形成されている。また、貫通穴18cの内周面の所定の領域には、図5および図6に示すように、電気配線取出溝18dが形成されている。そして、貫通穴18cには、カラー35が挿入されるとともに、カラー35には、前輪8の車軸8aが挿入されている。なお、カラー35は、本発明の「軸受部材」の一例である。また、カラー35の外周面35aと電気配線取出溝18dの内周面18eとの間を介して取付部材34(図5参照)の電気配線支持部34d(図5参照)に接続された電気配線70が、外部に取り出されている。
【0033】
また、本実施形態では、図3に示すように、右側フロントフォーク12には、減衰機構(第2減衰機構)を構成するロッド部(図示せず)、シリンダ部(図示せず)、伸び減衰用のピストン部(図示せず)および圧縮減衰用のベースバルブ(図示せず)が、左側フロントフォーク11と同様に設けられている。その一方、右側フロントフォーク12には、センサ部(検出装置)は取り付けられることなく、伸び減衰用のピストン部(図示せず)および圧縮減衰用のベースバルブ(図示せず)の減衰力を調節するための減衰調整バルブ21および22が設けられている。このため、右側フロントフォーク12のロッド部、伸び減衰用のピストン部および圧縮減衰用のベースバルブには、左側フロントフォーク11と異なり、センサ部を挿入するための挿入穴は設けられていない。そして、減衰調整バルブ21および22は、減衰力コントロールユニット33に接続されるとともに、減衰力コントロールユニット33からの信号により、右側フロントフォーク12内のオイルなどの圧力を調整することにより、減衰特性を制御する機能を有する。
【0034】
また、図1に示すように、メインフレーム3の上部には、燃料タンク36が配置されている。また、燃料タンク36の後方には、シート37が配置されている。また、メインフレーム3の下方には、エンジン38が取り付けられている。また、エンジン38の前方には、エンジン38に供給する空気を清浄にするためのエアクリーナ39が設けられている。また、メインフレーム3の後部には、図示しないピボット軸が設けられている。このピボット軸により、リヤアーム40の前端部が上下に揺動可能に支持されている。このリヤアーム40の後端部には、後輪41が回転可能に取り付けられている。なお、後輪41は、本発明の「車輪」の一例である。
【0035】
また、メインフレーム3の後部の上側には、支持部3aが設けられている。この支持部3aには、リヤサスペンション42の上部取付部43が軸部材44により取り付けられている。なお、リヤサスペンション42は、本発明の「懸架装置」の一例であり、上部取付部43は、本発明の「支持ブラケット」の一例である。このリヤサスペンション42(図1参照)の下部取付部45は、図7に示すように、メインフレーム3の後部の下側に設けられた支持部3bを中心として揺動可能に設けられた揺動部材46に取り付けられている。この揺動部材46の下部は、リヤアーム40の支持部40aに連結部材47によって連結されている。これにより、リヤアーム40が上下に揺動するに伴って、揺動部材46がメインフレーム3の支持部3bを中心として揺動するとともに、リヤサスペンション42(図1参照)を伸縮させることが可能となる。
【0036】
また、本実施形態では、リヤサスペンション42は、フロントフォーク10とは異なり、1つのみ設けられている。また、リヤサスペンション42は、図3に示すように、後述する減衰機構と、リヤサスペンション42の伸縮量を検出するための検出装置48と、減衰調整バルブ49とが設けられている。なお、検出装置48は、本発明の「検出手段」の一例である。
【0037】
具体的には、図8に示すように、リヤサスペンション42の上部取付部43には、シリンダパイプ部50の上端部が固定されている。
【0038】
また、本実施形態では、リヤサスペンション42の上部取付部43には、挿入穴43aが形成されている。この挿入穴43aには、図9に示すように、センサ部51に取り付けられた取付部材52が着脱可能に固定されている。なお、センサ部51および取付部材52によって、検出装置48が構成されている。なお、取付部材52は、本発明の「第2取付部材」の一例である。また、取付部材52の下部には、図10に示すように、取付部材52が挿入穴43aから抜け落ちるのを防止するためのCリング53が取り付けられている。
【0039】
また、シリンダパイプ部50の外周面には、鍔部50aが固定されている。また、シリンダパイプ部50の下部には、挿入穴54aを有する蓋体54が設けられている。なお、上部取付部43、シリンダパイプ部50および蓋体54によって、リヤサスペンション42のシリンダ部55が構成されている。
【0040】
また、シリンダ部55の内部には、リヤサスペンション42のピストン部56が配置されている。また、ピストン部56には、油を通過させるための複数のオリフィス56aおよび56bが形成されている。この複数のオリフィス56aは、ピストン部56よりも下側の下部オイル室55aの油を上側の上部オイル室55bに通過させる機能を有するとともに、複数のオリフィス56bは、ピストン部56よりも上側の上部オイル室55bの油を下側の下部オイル室55aに通過させる機能を有する。また、複数のオリフィス56aおよび56bの上側には、オリフィス56aの上面を塞ぐとともに、オリフィス56bの上面を開口するように板状のワッシャ56cが配置されている。また、複数のオリフィス56aおよび56bの下側には、オリフィス56aの下面を開口するとともに、オリフィス56bの下面を塞ぐように板状のワッシャ56dが配置されている。
【0041】
また、ピストン部56の挿入穴56eには、リヤサスペンション42のロッド部57が固定されている。なお、挿入穴56eは、本発明の「第2挿入穴」の一例である。このロッド部57には、挿入穴57aが設けられている。なお、挿入穴57aは、本発明の「第1挿入穴」の一例である。なお、シリンダ部55、ピストン部56およびロッド部57によって、リヤサスペンション42の減衰機構(第1減衰機構)が構成されている。また、ロッド部57の挿入穴57aのセンサ部51が挿入される側(上側)の端部は、上側に向かって開口幅が大きくなるテーパ形状が形成されている。また、ロッド部57の挿入穴57aには、センサ部51の一方端部51aを挿入するための挿入穴58aを有する非磁性体からなるパイプ部材58が挿入されて固定されている。なお、センサ部51は、センサ部32(図5参照)と同様、コイルのインダクタンス変化を利用した変位センサ部であり、非磁性体からなるパイプ部材58の挿入穴58aに挿入された長さを検出する機能を有する。そして、検出された長さに対応する信号が減衰力コントロールユニット33(図3参照)に入力されることにより、伸縮量が検出されるように構成されている。この減衰力コントロールユニット33(図3参照)は、検出された伸縮量を時間で微分することによって伸縮速度を算出するとともに、伸縮速度に対応した信号を減衰調整バルブ49(図3参照)に入力する機能を有する。
【0042】
また、ロッド部57のネジ山が形成された下端外周部57bは、下部取付部45のネジ穴45aに固定されている。この下部取付部45の上面と鍔部50aの下面との間には、圧縮コイルバネ59が配置されている。
【0043】
また、上部取付部43には、軸部材44が挿入される貫通穴43bが形成されている。また、本実施形態では、図10に示すように、貫通穴43bの内周面の所定の領域には、電気配線取出溝43cが形成されている。そして、貫通穴43bには、カラー60が挿入されるとともに、カラー60には、軸部材44が挿入されている。なお、カラー60は、本発明の「軸受部材」の一例である。また、カラー60の外周面60aと電気配線取出溝43cの内周面43dとの間を介してセンサ部51の他方端部51bに接続された電気配線71が、外部に取り出されている。
【0044】
また、上部取付部43には、図8に示すように、リザーバタンク部61が設けられている。このリザーバタンク部61には、ピストン部61aを内部に有するシリンダ部61bが形成されている。また、シリンダ部61bは、ピストン部61aの上側のオイル室61cとピストン部61aの下側のガス室61dとにより構成されている。このシリンダ部61bのオイル室は、オイル通路62を介して上部オイル室55bに接続されている。このオイル通路62には、減衰部材63が設けられている。また、ガス室は、約1MPaの内圧を有するように空気が充満されている。
【0045】
次に、本実施形態による自動二輪車1のフロントフォーク10およびリヤサスペンション42の動作について説明する。まず、図3〜図5を参照して、本実施形態による自動二輪車1のフロントフォーク10の動作について説明する。
【0046】
ここでは、まず、フロントフォーク10(図4参照)に圧縮する方向の力が作用した場合について説明する。フロントフォーク10に圧縮する方向の力が作用すると、圧縮コイルバネ30(図4参照)の付勢力に抗してフロントフォーク10が短くなることにより、減衰力が発生する。
【0047】
具体的には、図5に示すように、シリンダ部25に対してピストン部26およびロッド部24が下降されると、中間オイル室25aの圧力が上昇し、ベースバルブ31のワッシャ31eが開かれる。そして、中間オイル室25a内のオイルが、ベースバルブ31のオリフィス31cを介してA方向に流れて、下部オイル室25c内に流入するとともに、下部オイル室25cからシリンダパイプ部28の開口部28aを介してシリンダ部25の外側に流出する。この際、上部オイル室25bの体積が拡大するため、中間オイル室25a内のオイルが、ピストン部26のオリフィス26cを介してC方向に流れて、上部オイル室25bに流入する。この場合、オイルが圧縮減衰用のベースバルブ31のオリフィス31cなどを流れる抵抗により、減衰力が発生することとなる。
【0048】
次に、フロントフォーク10に伸長する方向の力が作用する場合について説明する。フロントフォーク10に伸長する方向の力が作用すると、フロントフォーク10が伸長されることにより、減衰力が発生する。
【0049】
具体的には、シリンダ部25に対してピストン部26およびロッド部24が上昇されると、上部オイル室25bの圧力が上昇し、ピストン部26のワッシャ26fが開かれる。そして、上部オイル室25b内のオイルが、ピストン部26のオリフィス26dを介してD方向に流れて、中間オイル室25a内に流入する。この際、中間オイル室25a内の体積が拡大するため、下部オイル室25c内のオイルが、ベースバルブ31のオリフィス31bを介してB方向に流れて、中間オイル室25aに流入するとともに、シリンダ部25の外側からシリンダパイプ部28の開口部28aを介して下部オイル室25cに流入する。この場合、オイルが伸び減衰用のピストン部26のオリフィス26dなどを流れる抵抗により、減衰力が発生することとなる。
【0050】
また、左側フロントフォーク11の伸縮時には、センサ部32がロッド部24内を相対的に移動することにより、インダクタンスが変化する。このインダクタンスの変化により、非磁性体からなるパイプ部材27の挿入穴27aに挿入されたセンサ部32の長さが検出される。そして、検出された長さに対応する信号が減衰力コントロールユニット33(図3参照)に入力されることにより、伸縮量が検出される。そして、伸縮量を時間で微分することにより、フロントフォーク10の伸縮速度が算出されるとともに、伸縮速度に応じた信号により、減衰調整バルブ21および22(図3参照)を制御して所望の減衰特性が得られる。
【0051】
次に、図3および図8を参照して、本実施形態による自動二輪車1のリヤサスペンション42の動作について説明する。
【0052】
まず、リヤサスペンション42(図8参照)に圧縮する方向の力が作用した場合について説明する。リヤサスペンション42に圧縮する方向の力が作用すると、圧縮コイルバネ59(図8参照)の付勢力に抗してリヤサスペンション42が短縮されることにより、減衰力が発生する。
【0053】
具体的には、図8に示すように、シリンダ部55に対してピストン部56およびロッド部57が上昇されると、上部オイル室55bの圧力が上昇し、ピストン部56のワッシャ56dが開かれる。そして、上部オイル室55b内のオイルが、ピストン部56のオリフィス56bを介してE方向に流れて、下部オイル室55a内に流入する。また、上部オイル室55bの圧力が上昇すると、上部オイル室55b内のオイルが、オイル通路62を介してリザーバタンク部61に流入する。この場合、オイルがピストン部56のオリフィス56bなどを流れる抵抗により、減衰力が発生するとともに、オイル通路62に設けられた減衰部材63により、減衰力が発生することとなる。
【0054】
次に、リヤサスペンション42に伸長する方向の力が作用した場合について説明する。リヤサスペンション42に伸長する方向の力が作用すると、リヤサスペンション42が伸長されることにより、減衰力が発生する。
【0055】
具体的には、シリンダ部55に対してピストン部56およびロッド部57が下降されると、下部オイル室55aの圧力が上昇し、ピストン部56のワッシャ56cが開かれる。そして、下部オイル室55a内のオイルが、ピストン部56のオリフィス56aを介してF方向に流れて、上部オイル室55b内に流入する。この際、上部オイル室55bの体積が拡大するため、リザーバタンク部61内のオイルが、オイル通路62を介して上部オイル室55bに流入する。この場合、オイルがピストン部56のオリフィス56aなどを流れる抵抗により、減衰力が発生するとともに、オイル通路62に設けられた減衰部材63により、減衰力が発生することとなる。
【0056】
また、リヤサスペンション42の伸縮時には、検出装置48のセンサ部51がロッド部57内を相対的に移動することにより、インダクタンスが変化する。このインダクタンスの変化により、非磁性体からなるパイプ部材58の挿入穴58aに挿入されたセンサ部51の長さが検出される。そして、検出された長さに対応する信号が減衰力コントロールユニット33(図3参照)に入力されることにより、伸縮量が検出される。そして、伸縮量を時間で微分することにより、リヤサスペンション42の伸縮速度が算出されるとともに、伸縮速度に応じた信号により、減衰調整バルブ49(図3参照)を制御して所望の減衰特性が得られる。
【0057】
図11〜図17は、本実施形態による自動二輪車の左側フロントフォークの組立工程を説明するための図である。次に、図11〜図17を参照して、本実施形態による自動二輪車1の左側フロントフォーク11の組立工程について説明する。
【0058】
まず、図11に示すように、上部蓋体29が固定されたシリンダパイプ部28に、ピストン部26のネジ穴26aに取り付けられたロッド部24を下方から挿入する。そして、図12に示すように、シリンダパイプ部28の下端部に、ベースバルブ31が取り付けられたアクスルブラケット18を取り付ける。
【0059】
次に、図13に示すように、インナーチューブ14のネジ山が形成された下端外周部14aをアクスルブラケット18のネジ穴18aに固定する。そして、図14に示すように、インナーチューブ14の外側にアウターチューブ13を配置する。その後、ロッド部24の周囲に圧縮コイルバネ30を配置するとともに、ロッド部24に鍔部24bを取り付けることにより、鍔部24bの下面とシリンダ部25の上部蓋体29の上面との間に圧縮コイルバネ30を配置する。そして、ロッド部24のネジ山が形成された上端外周部24aをロッド固定部材23のネジ穴23aに固定する。
【0060】
その後、図15に示すように、アウターチューブ13の上端部をロッド固定部材23に固定する。そして、図16に示すように、アクスルブラケット18の挿入孔18bからセンサ部32を挿入して、ベースバルブ31の挿入穴31f、ピストン部26の挿入穴26b、および、ロッド部24の挿入穴24dに挿入する。その後、取付部材34のネジ部34aをベースバルブ31の蓋体部31aのネジ穴31gに固定する。
【0061】
次に、図17に示すように、電気配線70をアクスルブラケット18の電気配線取出溝18dに配置して、アクスルブラケット18の貫通穴18cにカラー35を挿入する。このようにして左側フロントフォーク11の組立を完了する。
【0062】
本実施形態では、上記のように、左側フロントフォーク11の減衰機構を、挿入穴24dを有するロッド部24と、挿入穴26bを有するピストン部26とを含むように構成するとともに、検出装置20を、ロッド部24の挿入穴24dおよびピストン部26の挿入穴26bに挿入されるセンサ部32を含むように構成することによって、センサ部32を減衰機構のピストン部26およびロッド部24に挿入することができるので、減衰機構および検出手段を1つの左側フロントフォーク11に設けることができる。また、センサ部32を減衰機構のピストン部26およびロッド部24に挿入するだけであるので、左側フロントフォーク11の構造が複雑になるのを抑制することができる。また、リヤサスペンション42の減衰機構を、挿入穴57aを有するロッド部57と、挿入穴56eを有するピストン部56とを含むように構成するとともに、検出装置48を、ピストン部56の挿入穴56eに配置されるロッド部57の挿入穴57aに挿入される検出装置48のセンサ部51を含むように構成することによって、左側フロントフォーク11の場合と同様、リヤサスペンション42の構造が複雑化するのを抑制しながら、減衰機構および検出手段を1つのリヤサスペンション42に設けることができる。
【0063】
また、本実施形態では、電気配線70が接続されるセンサ部32の他方端部32bを、シリンダ部25の外部に配置するとともに、電気配線71が接続されるセンサ部51の他方端部51bを、シリンダ部55の外部に配置することによって、電気配線70および71をシリンダ部25および55の外部にそれぞれ配置することができるので、シリンダ部25および55の組立時に電気配線70および71が邪魔になるのを抑制することができる。これにより、組立作業性を向上させることができる。
【0064】
また、本実施形態では、アクスルブラケット18に、センサ部32および取付部材34の外径よりも大きい内径を有する挿入孔18bを設けることによって、アクスルブラケット18の取り付け後に挿入孔18bを介してセンサ部32および取付部材34を挿入することができるので、左側フロントフォーク11の組立工程における最後の方の工程で、センサ部32をシリンダ部25に取り付けることができる。これにより、組立作業性をより向上させることができる。また、センサ部32の修理や交換などを行なう場合にも、アクスルブラケット18を取り付けた状態でセンサ部32をシリンダ部25から取り外すことができるので、センサ部32の修理および交換などを容易に行うことができる。
【0065】
また、本実施形態では、電気配線70を、カラー35の外周面35aと、電気配線取出溝18dの内周面18eとの間に配置するとともに、電気配線71を、カラー60の外周面60aと、電気配線取出溝43cの内周面43dとの間に配置することによって、電気配線70および71が車軸8aおよび軸部材44の外周面にそれぞれ当接するのを防止することができるので、電気配線70および71が損傷するのを抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態では、ロッド部57の挿入穴57aのセンサ部51が挿入される側(上側)の端部に、上側に向かって開口幅が大きくなるようにテーパ形状を形成することによって、組立時に、センサ部51をロッド部57の挿入穴57aに挿入しやすくすることができるので、これによっても、組立作業性を向上させることができる。
【0067】
また、本実施形態では、センサ部32を、右側フロントフォーク12に設けることなく、左側フロントフォーク11に設けることによって、左側フロントフォーク11および右側フロントフォーク12は一体的に伸縮するので、左側フロントフォーク11および右側フロントフォーク12の両方の伸縮状態を検出することができる。これにより、センサ部32の部品点数が増加するのを抑制することができる。また、走行方向に対して両側に配置される左側フロントフォーク11および右側フロントフォーク12の両方に減衰機構を設けることができるので、左側フロントフォーク11および右側フロントフォーク12に掛かる減衰力が左側フロントフォーク11または右側フロントフォーク12の片側のみに集中するのを抑制することができる。これにより、減衰力の掛かり方のバランスが悪くなるのを抑制することができる。
【0068】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0069】
たとえば、上記実施形態では、懸架装置および検出手段を備えた車両の一例として自動二輪車を示したが、本発明はこれに限らず、懸架装置および検出手段を備えた車両であれば、自転車、三輪車、ATV(All Terrain Vehicle;不整地走行車両)などの他の車両にも適用可能である。
【0070】
また、上記実施形態では、センサ部を非磁性体からなるパイプ部材の内部に配置することにより、非磁性体からなるパイプ部材の挿入穴に挿入された長さを検出し、その検出した長さから懸架装置の伸縮量を検出するとともに、その伸縮量を時間で微分することによって伸縮速度を算出した例について示したが、本発明はこれに限らず、速度検出用のセンサ部を用いてロッド部などの相対速度を検出することにより、懸架装置の伸縮速度を検出するようにしてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、ロッド部およびピストン部の内部に非磁性体からなるパイプ部材を設けた例について示したが、本発明はこれに限らず、ロッド部およびピストン部を非磁性体により形成すれば、ロッド部およびピストン部の内部に非磁性体からなるパイプ部材を設けなくてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、減衰機構を有する懸架装置の一例としてのフロントフォークおよびリヤサスペンションに本発明を適用した例について示したが、本発明はこれに限らず、フロントフォークおよびリヤサスペンション以外の減衰機構を有する懸架装置にも本発明を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施形態による自動二輪車の全体構造を示した側面図である。
【図2】図1に示した一実施形態による自動二輪車の前側の構造を示した側面図である。
【図3】図1に示した一実施形態による自動二輪車の構造を説明するための図である。
【図4】図1に示した一実施形態による自動二輪車のフロントフォークの構造を詳細に説明するための断面図である。
【図5】図1に示した一実施形態による自動二輪車のフロントフォークの構造を詳細に説明するための拡大断面図である。
【図6】図5の100−100線に沿った断面図である。
【図7】図1に示した一実施形態による自動二輪車のリヤサスペンションの取付構造を説明するための斜視図である。
【図8】図1に示した一実施形態による自動二輪車のリヤサスペンションの構造を詳細に説明するための断面図である。
【図9】図1に示した一実施形態による自動二輪車のリヤサスペンションの構造を詳細に説明するための断面図である。
【図10】図1に示した一実施形態による自動二輪車のリヤサスペンションの構造を詳細に説明するための断面図である。
【図11】本実施形態による自動二輪車の左側フロントフォークの組立工程を説明するための図である。
【図12】本実施形態による自動二輪車の左側フロントフォークの組立工程を説明するための図である。
【図13】本実施形態による自動二輪車の左側フロントフォークの組立工程を説明するための図である。
【図14】本実施形態による自動二輪車の左側フロントフォークの組立工程を説明するための図である。
【図15】本実施形態による自動二輪車の左側フロントフォークの組立工程を説明するための図である。
【図16】本実施形態による自動二輪車の左側フロントフォークの組立工程を説明するための図である。
【図17】本実施形態による自動二輪車の左側フロントフォークの組立工程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0074】
1 自動二輪車(車両)
2 ヘッドパイプ(車体)
3 メインフレーム(車体)
4 シートレール(車体)
8 前輪(車輪)
8a 車軸(軸部材)
10 フロントフォーク(懸架装置)
13 アウターチューブ
14 インナーチューブ
18 アクスルブラケット(支持ブラケット)
18b 挿入孔
18c、43b 貫通穴
18d、43c 電気配線取出溝
20、48 検出装置(検出手段)
24、57 ロッド部
24d、57a 挿入穴(第1挿入穴)
25、55 シリンダ部
26、56 ピストン部
26b、56e 挿入穴(第2挿入穴)
31 ベースバルブ
31f 挿入穴(第3挿入穴)
32、51 センサ部
32a、51a 一方端部
32b、51b 他方端部
34 取付部材(第1取付部材)
35、60 カラー(軸受部材)
41 後輪(車輪)
42 リヤサスペンション(懸架装置)
43 上部取付部(支持ブラケット)
44 軸部材
52 取付部材(第2取付部材)
70、71 電気配線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と、
車体と、
前記車輪と前記車体との間に設けられるとともに、前記車輪と前記車体とが相対的に移動するときの伸縮する力を減衰させる第1減衰機構を含む懸架装置と、
前記車輪および前記車体が相対的に移動するときの伸縮状態を検出するための検出手段とを備え、
前記懸架装置の前記第1減衰機構は、前記車輪側および前記車体側のいずれか一方に設けられるシリンダ部と、前記車輪側および前記車体側の他方に設けられ、第1挿入穴を有するロッド部と、前記ロッド部に取り付けられるとともに、前記シリンダ部の内部に配置され、第2挿入穴を有するピストン部とを含み、
前記検出手段は、前記懸架装置の前記第1減衰機構のシリンダ部に配置されるとともに、前記ロッド部の前記第1挿入穴および前記ピストン部の前記第2挿入穴の少なくともいずれか一方に挿入されるセンサ部を含む、車両。
【請求項2】
前記センサ部は、前記ロッド部の前記第1挿入穴および前記ピストン部の前記第2挿入穴の少なくともいずれか一方に挿入される一方端部と、前記シリンダ部の前記車輪側および前記車体側のいずれか一方の外部に配置されるとともに、電気配線が接続される他方端部とを含む、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記センサ部の前記他方端部を前記シリンダ部の外側から着脱可能に取り付けるための第1取付部材をさらに備える、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記懸架装置は、アウターチューブと、前記アウターチューブに摺動可能に挿入されたインナーチューブとをさらに含み、
前記シリンダ部は、前記アウターチューブおよび前記インナーチューブのいずれか一方の内部に配置され、
前記ロッド部は、前記アウターチューブおよび前記インナーチューブの他方の内部に配置され、
前記センサ部の前記他方端部は、前記取付部材により、前記アウターチューブおよび前記インナーチューブの前記シリンダ部が配置される方の外側から着脱可能に取り付けられる、請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記懸架装置は、前記シリンダ部が固定される支持ブラケットを含み、
前記支持ブラケットには、前記センサ部および前記取付部材の外径よりも大きい内径を有するとともに、前記センサ部および前記取付部材を挿入するための前記懸架装置の長手方向に伸びる挿入孔が形成されている、請求項3に記載の車両。
【請求項6】
前記センサ部の前記他方端部を前記シリンダ部の内側から着脱可能に取り付けるための第2取付部材をさらに備える、請求項2に記載の車両。
【請求項7】
前記懸架装置は、支持ブラケットを含み、
前記支持ブラケットは、軸部材を挿入するための貫通穴と、前記貫通穴の内周面に設けられる電気配線取出溝とを有し、
前記支持ブラケットの前記貫通穴には、前記軸部材を回転可能に支持する軸受部材が取り付けられており、
前記電気配線は、前記軸受部材の外周面と、前記電気配線取出溝の内周面との間に配置される、請求項2に記載の車両。
【請求項8】
前記検出手段の前記センサ部は、前記ロッド部の前記第1挿入穴に挿入され、
前記ロッド部の前記第1挿入穴の前記センサ部が挿入される側の端部は、外側に向かって開口幅が大きくなるテーパ形状を有する、請求項1に記載の車両。
【請求項9】
前記車輪は、前輪を含み、
前記懸架装置は、前記前輪と前記車体との間に配置され、前記第1減衰機構および前記センサ部の両方が設けられたフロントフォークを含む、請求項1に記載の車両。
【請求項10】
前記車輪は、前輪を含み、
前記懸架装置は、前記前輪と前記車体との間に設けられた一対のフロントフォークを含み、
前記一対のフロントフォークのいずれか一方に前記第1減衰機構および前記センサ部の両方が設けられており、
前記一対のフロントフォークの他方には、第2減衰機構が設けられている、請求項1に記載の車両。
【請求項11】
前記車輪は、後輪を含み、
前記懸架装置は、前記後輪と前記車体との間に配置され、前記第1減衰機構および前記センサ部が設けられたリヤサスペンションを含む、請求項1に記載の車両。
【請求項12】
前記懸架装置の前記第1減衰機構は、前記シリンダ部の内部に配置され、前記センサ部が挿入される第3挿入穴を有するベースバルブをさらに含む、請求項1に記載の車両。
【請求項13】
前記検出手段は、前記センサ部と、前記ロッド部および前記ピストン部の少なくとも一方との相対的な位置を検出するために設けられている、請求項1に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−248507(P2006−248507A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281036(P2005−281036)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】