説明

車両

【課題】直進走行時に、直進安定性を十分に向上させるとともに、旋回時に、旋回半径を十分に小さくして旋回性を十分に向上させることが可能な車両を提供する。
【解決手段】この車両(自動二輪車1)は、ヘッドパイプ2に回動可能に設けられる前輪操舵部材9と、後輪8を支持するとともに、ヘッドパイプ2に前後方向に延びる中心線L1の回りに回動可能に取り付けられるメインフレーム3と、前輪操舵部材9とメインフレーム3とを連結するとともに、前輪操舵部材9の舵切り時に、揺動部材10および継ぎ手部材15を介してメインフレーム3をヘッドパイプ2に対して回動させることにより後輪8に舵角を付与する連結部材11とを備えている。また、前輪操舵部材9の舵角が小さい場合に、前輪操舵部材9の操舵方向側と同方向側に後輪8を操舵するとともに、前輪操舵部材9の舵角が大きい場合に、前輪操舵部材9の操舵方向と逆方向側に後輪8を操舵する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に関し、特に、前輪および後輪の両方を操舵することが可能な車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、四輪車(車両)では、前輪だけでなく後輪も操舵する四輪操舵が実用化されている。また、二輪車(車両)においても、前輪だけでなく後輪も操舵する二輪操舵に関して、数多くの研究がなされている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、前輪の舵取り角(舵角)に応じて後輪も操舵する前後輪操向制御装置を備えた自動二輪車が開示されている。この前後輪操向制御装置を備えた自動二輪車は、前輪を操舵する操向ハンドル(前輪操舵手段)と、前輪の舵取り角に応じて後輪の舵取り角を決定するカム機構と、カム機構と後輪との間に配置されるプッシュプルワイヤと、後輪を支持する後方フレーム(リアフレーム)とを備えている。そして、操向ハンドルが操舵された場合に、操向ハンドルに固定されたカム機構を介して、プッシュプルワイヤが押し引きされて、後輪が後方フレームに対して左右方向に回動されることにより操舵される。具体的には、操向ハンドルの舵取り角が所定の角度よりも小さい場合に、操向ハンドルの操舵方向側と同方向側に後輪を操舵するとともに、操向ハンドルの舵角が所定の角度よりも大きい場合に、操向ハンドルの操舵方向側と逆方向側に後輪を操舵する。これにより、直進走行時に操向ハンドルに所定の角度よりも小さい舵取り角が付与された場合に、車両のふらつきを抑制して直進安定性をある程度向上させることができるとともに、旋回時に操向ハンドルに所定の角度よりも大きい舵取り角が付与された場合に、旋回半径を小さくして旋回性をある程度向上させることができる。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−178275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された構造では、前輪の舵取り角(舵角)に応じて後輪を操舵する場合に、垂直に近い状態でほとんど傾斜していない後方フレームに対して後輪を左右方向に回動することにより操舵するので、自動二輪車の重心を車体の中心線に対して左右方向に移動させにくいという不都合がある。このため、直進走行時に、車両のふらつきを抑制して直進安定性を十分に向上させることが困難であるとともに、旋回時に、旋回半径を十分に小さくして旋回性を十分に向上させることが困難であるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、直進走行時に、直進安定性を十分に向上させるとともに、旋回時に、旋回半径を十分に小さくして旋回性を十分に向上させることが可能な車両を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
この発明の一の局面による車両は、前輪を支持する前方フレーム部と、前方フレーム部に回動可能に設けられる前輪操舵手段と、後輪を支持するとともに、前方フレーム部に前後方向に延びる軸線の回りに回動可能に取り付けられる後方フレーム部と、前輪操舵手段と後方フレーム部とを連結するとともに、前輪操舵手段の舵切り時に、後方フレーム部を前方フレーム部に対して回動させることにより後輪に舵角を付与する連結手段と、前輪操舵手段の舵角が第1の角度よりも小さい場合に、前輪操舵手段の操舵方向側と同方向側に連結手段により後輪を操舵するとともに、前輪操舵手段の舵角が第1の角度よりも大きい場合に、前輪操舵手段の操舵方向と逆方向側に連結手段により後輪を操舵する後輪操舵手段とを備え、後輪操舵手段は、揺動機構を含み、揺動機構は、前輪操舵手段に回動可能に取り付けられ、前方フレーム部に連結されるとともに、連結手段を介して後方フレーム部に連結される。
【0008】
この一の局面による車両では、上記のように、後輪を支持するとともに、前方フレーム部に前後方向に延びる軸線の回りに回動可能に取り付けられる後方フレーム部と、前輪操舵手段と後方フレーム部とを連結するとともに、前輪操舵手段の舵切り時に、後方フレーム部を前方フレーム部に対して回動させることにより後輪に舵角を付与する連結手段とを設けることによって、直進走行時および旋回時の前輪操舵手段の舵切り時に、後輪および後方フレーム部を前後方向に延びる軸線の回りに回動させることができるので、自動二輪車の重心を左右方向に移動させやすくすることができる。また、上記前方フレーム部に対して回動可能な後方フレーム部および連結手段に加えて、前輪操舵手段の舵角が第1の角度よりも小さい場合に、前輪操舵手段の操舵方向側と同方向側に連結手段により後輪を操舵するとともに、前輪操舵手段の舵角が第1の角度よりも大きい場合に、前輪操舵手段の操舵方向と逆方向側に連結手段により後輪を操舵する後輪操舵手段を設けることによって、直進走行時に前輪操舵手段に第1の角度よりも小さい舵角が付与された場合に、後輪操舵手段により、前輪操舵手段の操舵方向側と同方向側に後輪を操舵しながら、回動可能な後方フレーム部および連結手段により、自動二輪車の重心を前輪操舵手段に蛇角を付与した方向の反対側に移動させて、前輪操舵手段に操舵された方向にふらつくのを抑制することができるので、直進安定性を十分に向上させることができる。また、旋回時に前輪操舵手段に第1の角度よりも大きい舵角が付与された場合に、後輪操舵手段により、前輪操舵手段の操舵方向側と逆方向側に後輪を操舵しながら、回動可能な後方フレーム部および連結手段により、自動二輪車の重心を前輪操舵手段に蛇角を付与した方向に移動させて、前輪操舵手段に操舵された方向に車両を傾けることができるので、旋回半径を十分に小さくすることにより旋回性を十分に向上させることができる。また、後輪操舵手段に含まれる揺動機構は、前輪操舵手段に回動可能に取り付けられ、前方フレーム部に連結されるとともに、連結手段を介して後方フレーム部に連結されることによって、前輪操舵手段に舵角が付与された場合に、前輪操舵手段の回動力を、揺動機構および連結手段を介して後方フレーム部に伝達することができるので、後方フレーム部を前後方向に延びる軸線の回りに回動させることができる。
【0009】
上記一の局面による車両において、好ましくは、揺動機構は、連結手段に接続されるとともに、前輪操舵手段の舵切り方向に前輪操舵手段と一体的に回動する揺動部材と、揺動部材に接続されるとともに、前方フレーム部に接続される継ぎ手部材とを含む。このように構成すれば、揺動部材と継ぎ手部材とを用いて、連結手段と前方フレーム部とを容易に接続することができる。
【0010】
上記揺動機構が揺動部材と継ぎ手部材とを含む車両において、好ましくは、揺動部材は、揺動部材の一方端部側に配置されるとともに、連結手段に連結される第1取付部と、揺動部材の他方端部側に配置されるとともに、継ぎ手部材に連結される第2取付部とを含み、第1取付部と第2取付部との間に略水平に配置された揺動軸部に揺動可能に支持されている。このように構成すれば、前輪操舵手段に舵角が付与された場合に、揺動軸部を中心に揺動部材を容易に揺動させることができる。
【0011】
上記揺動部材が第1取付部と第2取付部と揺動軸部とを含む車両において、好ましくは、継ぎ手部材は、一方端側に形成され、移動可能な第1接続部と、他方端側に形成され、移動可能な第2接続部とを含み、第1接続部は、揺動部材の第2取付部に移動可能に取り付けられ、第2接続部は、前方フレーム部に移動可能に取り付けられる。このように構成すれば、前方フレーム部に固定されている継ぎ手部材の第2接続部を中心に、継ぎ手部材の第1接続部が移動した際に、継ぎ手部材の第1接続部が取り付けられている揺動部材の第2取付部を容易に移動させることができる。これにより、前輪操舵手段に蛇角が付与された場合に、揺動軸部を中心に、揺動部材をより容易に揺動させることができる。
【0012】
上記揺動部材が第1取付部と第2取付部と揺動軸部とを含む車両において、好ましくは、連結手段は、連結手段の一方端側に配置されるとともに、揺動部材の第1取付部に移動可能に接続される第3接続部と、連結手段の他方端側に配置されるとともに、後方フレーム部の前端部側に固定される固定部とを含む。このように構成すれば、前輪操舵手段に舵角が付与された場合に、揺動部材が揺動することによって、揺動部材の第1取付部とともに、連結手段の第3接続部を容易に移動させることができる。これにより、前輪操舵手段の回動力を、連結手段を介して後方フレーム部に伝達することができる。
【0013】
上記継ぎ手部材が第1接続部および第2接続部を含む車両において、好ましくは、揺動部材の第2取付部は、前輪操舵手段に舵角を付与する方向の反対方向に継ぎ手部材の第1接続部が移動されることにより移動され、揺動部材の第2取付部と前輪操舵手段の回動軸との距離は、前輪操舵手段に付与される舵角が大きくなるにつれて大きくなる。このように構成すれば、前輪操舵手段に蛇角を付与するにしたがって、揺動部材の第2取付部が移動されて揺動部材が揺動軸部を中心に揺動されるので、揺動部材の第1取付部は、揺動部材の第2取付部が移動する方向とは反対の方向に移動される。これにより、揺動部材の第1取付部が移動する方向に、揺動部材の第1取付部に接続されている連結手段を移動させることができる。
【0014】
上記連結手段は第3接続部と固定部とを含む車両において、好ましくは、連結手段の第3接続部は、前輪操舵手段の舵角が第1の角度よりも小さい場合に、前輪操舵手段の回動軸よりも後方フレーム部側に位置するとともに、前輪操舵手段の舵角が第1の角度よりも大きい場合に、前輪操舵手段の回動軸よりも後方フレーム部の反対側に位置する。このように構成すれば、第1の角度よりも小さい場合には、連結手段の第3接続部は、前輪操舵手段の回動軸に対して、前輪操舵手段の蛇角方向と反対側に位置するようになるので、後方フレーム部に対して前輪操舵手段の蛇角方向とは反対側に回動力を伝達することができる。これにより、蛇角方向とは反対側に後方フレーム部を回動させて蛇角方向とは反対側に重心を配置することができるので、直進安定性をより向上させることができる。また、第1の角度よりも大きい場合には、第3接続部は、前輪操舵手段の回動軸に対して、前輪操舵手段の蛇角方向と同方向側に位置するようになるので、後方フレーム部に対して前輪操舵手段の蛇角方向と同方向の回動力を伝達することができる。これにより、蛇角方向に後方フレーム部を回動させて蛇角方向に重心を配置することができるので、旋回性をより向上させることができる。
【0015】
上記一の局面による車両において、好ましくは、連結手段は、連結手段の一方端部側を少なくとも前後方向に移動可能にするための複数の接合部を含む。このように構成すれば、接合部により、連結手段の一方端部側を、容易に、前後方向に、移動させることができる。
【0016】
上記連結手段の一方端部側を前後方向に移動可能にするための複数の接合部を含む車両において、好ましくは、複数の接合部は、略水平に配置された軸部と、軸部を回動可能に支持する第1軸受部とを含む。このように構成すれば、接合部により、連結手段を左右方向に移動するのを抑制しながら前後方向および上下方向に移動することができるので、前輪操舵手段の回動力が連結手段の左右方向の移動によって吸収されるのを抑制することができる。これにより、より確実に前輪操舵手段の回動力を、連結手段を介して後方フレーム部に伝達することができる。
【0017】
上記連結手段の一方端部側を前後方向に移動可能にするための複数の接合部を含む車両において、好ましくは、第1軸受部は、アンギュラ軸受を含む。このように構成すれば、軸部が回動する際の軸方向(左右方向)の移動を容易に抑制することができる。
【0018】
上記一の局面による車両において、好ましくは、前方フレーム部は、継ぎ手部材が接続されるブラケット部を含む。このように構成すれば、継ぎ手部材を容易に前方フレーム部に接続することができる。
【0019】
上記一の局面による車両において、好ましくは、前輪操舵手段の舵角が第1の角度よりも小さい場合に、前輪操舵手段の操舵方向側と逆方向側に重心が位置するとともに、前輪操舵手段の舵角が第1の角度よりも大きい場合に、前輪操舵手段の操舵方向と同方向側に重心が位置する。このように構成すれば、直進走行時に前輪操舵手段に第1の角度よりも小さい舵角が付与された場合に、直進安定性を容易に向上させることができるとともに、旋回時に前輪操舵手段に第1の角度よりも大きい舵角が付与された場合に、旋回半径を容易に小さくして旋回性を容易に向上させることができる。
【0020】
上記一の局面による車両において、好ましくは、前輪操舵手段の舵角が第1の角度よりも小さい第2の角度以下の場合に、前輪操舵手段の舵角が増加するに伴って、後輪の舵角が増加する。このように構成すれば、前輪操舵手段の舵角が第2の角度以下の直進走行時に前輪操舵手段の舵角に対応する大きさの舵角を後輪に付与することができるので、直進安定性をより向上させることができる。
【0021】
上記一の局面による車両において、好ましくは、前輪操舵手段の舵角が第1の角度よりも大きい場合に、前輪操舵手段の舵角が増加するに伴って、前輪操舵手段の操舵方向と逆方向側に後輪の舵角が増加する。このように構成すれば、前輪操舵手段の舵角が第1の角度よりも大きい旋回時に前輪操舵手段の舵角に対応する大きさの舵角を、前輪操舵手段の操舵方向と逆方向側に後輪に付与することができるので、旋回半径をより小さくして旋回性をより向上させることができる。
【0022】
上記一の局面による車両において、好ましくは、前後方向に延びる軸線の延長線は、後輪と地面との接点近傍を通過する。このように構成すれば、前方フレーム部に対して後方フレーム部が回動する場合に、後輪は地面との接点近傍を中心に回動するので、後輪が地面に対して滑るのを抑制することができる。
【0023】
上記一の局面による車両において、好ましくは、前方フレーム部と前記後方フレーム部との間に配置され、前方フレーム部と後方フレーム部とを互いに回動可能に支持する第2軸受部をさらに備える。このように構成すれば、第2軸受部により、後方フレーム部を前方フレーム部に対して前後方向に延びる軸線の回りにスムーズに回動させることができる。
【0024】
上記軸受を備える車両において、好ましくは、第2軸受部は、アンギュラ軸受である。このようなアンギュラ軸受を用いれば、前方フレーム部と後方フレーム部との連結部分における前後方向に延びる軸線に沿った方向(スラスト方向)の剛性およびその前後方向に延びる軸線に垂直な方向(ラジアル方向)の剛性の両方を確保することができる。
【0025】
上記軸受がアンギュラ軸受である車両において、好ましくは、前方フレーム部は、ヘッドパイプを含み、ヘッドパイプは、ヘッドパイプから後方に突出するように形成され、前後方向に延びる軸線上に回動中心を有するとともに、アンギュラ軸受が取り付けられる外周面を有する第1軸受取付部を含み、後方フレーム部は、ヘッドパイプの第1軸受取付部に対向するように配置され、アンギュラ軸受が取り付けられる内周面を有する第2軸受取付部を含む。このように構成すれば、ヘッドパイプの第1軸受取付部および後方フレーム部の第2軸受取付部にアンギュラ軸受を取り付けることにより、後方フレーム部を前方フレーム部に対してより容易に回動させることができる。
【0026】
上記一の局面による車両において、好ましくは、前後方向に延びる軸線の延長線上以外の部分に重心が位置する。このように構成すれば、軸線に対して後方フレーム部を回動させることにより、容易に、重心を移動させることができる。
【0027】
上記一の局面による車両において、好ましくは、前後方向に延びる軸線は、前方フレーム部の後方の下方向に延びる。このように構成すれば、後方の下方向に延びる軸線の回りに後方フレーム部および後輪を回動することにより、容易に、後輪に舵角を付与することができる。
【0028】
上記一の局面による車両において、好ましくは、後方フレーム部が前方フレーム部に対して回動する角度を規制するための規制部材をさらに備える。このように構成すれば、後方フレーム部が前方フレーム部に対して回動しすぎるのを防止することができる。
【0029】
上記一の局面による車両において、好ましくは、前方フレーム部の前方に配置される前照灯をさらに備え、前照灯は、後方フレーム部に固定されている。このように構成すれば、前輪操舵手段に舵角が付与された場合にも、前照灯は後方フレーム部に対して固定されているので、車体の前方を照射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による自動二輪車の全体構造を示した側面図である。図2は、図1に示した第1実施形態による自動二輪車のヘッドパイプ周辺を拡大した側面図である。図3〜図11は、図1に示した第1実施形態による自動二輪車の構造を詳細に説明するための図である。なお、第1実施形態では、本発明の車両の一例として、自動二輪車について説明する。図中、FWDは、自動二輪車の走行方向の前方を示している。以下、図1〜図11を参照して、本発明の第1実施形態による自動二輪車の構造について詳細に説明する。
【0032】
本発明の第1実施形態による自動二輪車1では、図1に示すように、ヘッドパイプ2の後方には、メインフレーム3が配置されている。なお、ヘッドパイプ2は、本発明の「前方フレーム部」の一例であり、メインフレーム3は、本発明の「後方フレーム部」の一例である。また、メインフレーム3は、後方の下方向に延びるように形成されている。また、メインフレーム3には、シートレール(図示せず)が連結されている。これらのヘッドパイプ2、メインフレーム3およびシートレールによって、車体フレームが構成されている。
【0033】
また、ヘッドパイプ2の下方には、上下方向の衝撃を吸収するためのサスペンションを有する一対のフロントフォーク4が配置されている。この一対のフロントフォーク4の下部には、前輪5が回転可能に取り付けられている。この前輪5の上方には、前輪5を覆うようにフロントフェンダ6が配置されている。
【0034】
ここで、第1実施形態では、ヘッドパイプ2の後部の下部には、図2に示すように、後方の下方向に突出した円筒形状の接続軸部2aが一体的に形成されている。なお、接続軸部2aは、本発明の「第1軸受取付部」の一例である。また、メインフレーム3には、ヘッドパイプ2の接続軸部2aに挿入される貫通孔3aが設けられている。なお、貫通孔3aは、本発明の「第2軸受取付部」の一例である。また、ヘッドパイプ2の接続軸部2aの外周面とメインフレーム3の貫通孔3aの内周面との間には、アンギュラ軸受7が配置されている。これにより、ヘッドパイプ2は、接続軸部2aの前後方向に延びる中心線L1の回りに、メインフレーム3に対して回動することが可能となる。なお、ヘッドパイプ2の接続軸部2aの中心線L1は、本発明の「軸線」の一例であり、アンギュラ軸受7は、本発明の「第2軸受部」の一例である。また、アンギュラ軸受7は、その中心軸が、ヘッドパイプ2の接続軸部2aの前後方向に延びる中心線L1と実質的に同一になるように配置されている。また、前後方向に延びる中心線L1の延長線は、図1に示すように、後方の下方向(後方斜め下方向)に延びるとともに、後輪8と地面100との接点100a近傍を通過するように形成されている。また、運転者が乗車していない状態で、自動二輪車1の重心G(図1参照)は、中心線L1の延長線よりも上側に配置されている。
【0035】
また、第1実施形態では、図2に示すように、ヘッドパイプ2の上部には、前輪操舵部材(ハンドル)9が配置されている。なお、前輪操舵部材9は、本発明の「前輪操舵手段」の一例である。この前輪操舵部材9は、ヘッドパイプ2の中心線L2を中心として回動可能に設けられている。なお、ヘッドパイプ2の中心線L2は、本発明の「前輪操舵手段の回動軸」の一例である。また、中心線L2は、図7に示すように、上方から見て、中心線L1上に配置されている。また、前輪操舵部材9には、図2に示すように、固定部9aが設けられている。この固定部9aの上部には、グリップ部9bを両端に有するシャフト部9cを挟み込んだ状態で固定部9dが取り付けられている。また、ヘッドパイプ2の接続軸部2aの上部後方側には、ブラケット2bが取り付けられている。なお、ブラケット2bは、本発明の「ブラケット部」の一例である。
【0036】
また、第1実施形態では、前輪操舵部材9の固定部9d内部の左右方向で、かつ、略水平に延びるように揺動軸部9eが設けられている。また、この揺動軸部9eの中心線は、中心線L2の延長線上に位置するように設けられている。また、揺動軸部9eには、揺動部材10の揺動中心穴10aが揺動可能に挿入されている。なお、揺動部材10は、本発明の「揺動機構」の一例である。また、揺動部材10の上端部には、上部ネジ穴部10bが設けられるとともに、下端部には、下部ネジ穴部10cが設けられている。なお、上部ネジ穴部10bは、本発明の「第1取付部」の一例であり、下部ネジ穴部10cは、本発明の「第2取付部」の一例である。この上部ネジ穴部10bには、揺動部材10とメインフレーム3の前端部のアンギュラ軸受7が取り付けられる部分の近傍の上面とを連結する連結部材11の上部接続部11aが配置されている。なお、連結部材11は、本発明の「連結手段」の一例である。具体的には、連結部材11の上部連結アーム11bの一方端部に設けられている上部接続部11aには、図2に示すように、ピロボール12が移動可能に取り付けられている。そして、ピロボール12の挿入穴12aにボルト40を挿入して、揺動部材10の上部ネジ穴部10bに、ピロボール12が固定されている。これにより、連結部材11の上部連結アーム11bに設けられている上部接続部11aと、揺動部材10の上部ネジ穴部10bとが互いに移動可能に接続されている。なお、上部接続部11aは、本発明の「第3接続部」の一例である。
【0037】
また、第1実施形態では、図2および図3に示すように、連結部材11は、上部連結アーム11bと、中間連結アーム11cと、下部固定部材11dとから構成されている。なお、下部固定部材11dは、本発明の「固定部」の一例である。また、上部連結アーム11bおよび中間連結アーム11cの間と、中間連結アーム11cおよび下部固定部材11dの間には、それぞれ、前後および上下方向に回動可能な2つのヒンジ回転軸11eおよび11f(図3参照)が設けられている。このヒンジ回転軸11eおよび11fは、略水平に、かつ、走行方向(矢印FWD方向)に略直交するように配置されている。なお、ヒンジ回転軸11eおよび11fは、本発明の「接合部」および「軸部」の一例である。これら2つのヒンジ回転軸11eおよび11fの左右方向の両端部には、それぞれアンギュラ軸受13(図3参照)が配置されている。なお、アンギュラ軸受13は、本発明の「第1軸受部」の一例である。また、各アンギュラ軸受13の内側には、それぞれ、スラストカラー14(図3参照)が配置されている。これにより、ヒンジ回転軸11bおよび11cは、アンギュラ軸受13によって、前後および上下方向へスムーズに回動されるようになるとともに、連結部材11に左右方向(ヒンジ回転軸11bおよび11cの軸方向)の移動が抑制されるように構成されている。また、図2に示すように、連結部材11の他方端部に設けられている下部固定部材11dは、上記のように、メインフレーム3の前端部のアンギュラ軸受7が取り付けられる部分の近傍の上面に固定されている。これにより、連結部材11の下部固定部材11dが中心線L1を中心としてメインフレーム3と一体的に回動することが可能である。
【0038】
また、第1実施形態では、揺動部材10の下部ネジ穴部10cには、揺動部材10とヘッドパイプ2の接続軸部2aの上部後方側に固定されているブラケット2bとを接続する継ぎ手部材15の前方接続部15aが配置されている。なお、継ぎ手部材15は、本発明の「揺動機構」の一例であり、前方接続部15aは、本発明の「第1接続部」の一例である。具体的には、継ぎ手部材15の一方端部に設けられている前方接続部15aには、図2に示すように、ピロボール16が移動可能に取り付けられている。そして、ピロボール16の挿入穴16aにボルト41を挿入して、揺動部材10の下部ネジ穴部10cに、ピロボール16が固定されている。これにより、継ぎ手部材15の前方接続部15aと、揺動部材10の下部ネジ穴部10cとが互いに移動可能に接続されている。なお、揺動部材10と継ぎ手部材15とによって後輪操舵手段が構成されている。また、継ぎ手部材15の他方端部に設けられている後方接続部15bには、図2に示すように、ピロボール17が移動可能に取り付けられている。なお、後方接続部15bは、本発明の「第2接続部」の一例である。そして、ピロボール17の挿入穴17aにボルト42を挿入して、ブラケット2bのネジ穴部2cに、ピロボール17が固定されている。これにより、継ぎ手部材15の後方接続部15bがブラケット2bに対して回動可能に接続されている。また、図2および図7に示すように、継ぎ手部材15の前方接続部15aは、前輪操舵部材9の回動軸となるヘッドパイプ2の中心線L2よりも後方側に位置するように配置されているので、たとえば、図10に示すように、前輪操舵部材9を右側に回動させた場合には、中心線L1に対して距離D1だけ左側に位置するように構成されている。また、継ぎ手部材15の後方接続部15bは、移動しないブラケット2bにピロボール17を介して回動可能に固定されているので、前輪操舵部材9を回動させる角度を大きくするにしたがって、中心線L2と、前方接続部15aに設けられているピロボール16の中心部16bとの距離D2(図6および図10参照)が大きくなるように構成されている。これにより、図6に示すように、継ぎ手部材15の前方接続部15aが揺動部材10の下部ネジ穴部10cを、ピロボール16およびボルト41を介して後方(矢印A方向)に引っ張るように移動させるとともに、揺動中心穴10aを中心に揺動部材10が回動(矢印B方向)し、上部ネジ穴10bは、前方へ移動するように構成されている。なお、中心線L2と、ピロボール16の中心部16bとの距離D2は、本発明の「揺動部材の第2取付部と前輪操舵手段の回動軸との距離」の一例である。
【0039】
また、第1実施形態では、図2および図7に示すように、前輪操舵部材9および揺動部材10が、たとえば、回動せずに実質的に0°に位置している場合に、ピロボール12の中心部12bは、中心線L2よりも後方側に位置するように構成されている。
【0040】
また、第1実施形態では、図4および図8に示すように、前輪操舵部材9および揺動部材10が、たとえば、右方向に約0°〜約10°(第2の角度)まで回動する場合に、ピロボール12の中心部12bは、前輪操舵部材9の回動軸となる中心線L2よりも後方側に位置するように構成されているので、ピロボール12の中心部12bは、中心線L1よりも距離D3(図8参照)だけ左側に位置するように構成されている。また、前輪操舵部材9および揺動部材10の回動角度を大きく(約0°〜約10°)するにしたがって、ピロボール12の中心部12bが中心線L1から左側に離れていくように構成されている。
【0041】
また、第1実施形態では、前輪操舵部材9および揺動部材10が、たとえば、右方向に約10°〜約20°(第1の角度)まで回動する場合にも、ピロボール12の中心部12bは、前輪操舵部材9の回動軸となる中心線L2よりも後方側に位置するように構成されているので、ピロボール12の中心部12bは、中心線L1よりも左側に位置するように構成されている。この場合、右方向に約0°〜約10°(第2の角度)まで回動する場合と異なり、前輪操舵部材9および揺動部材10の回動角度を大きく(約10°〜約20°)するにしたがって、揺動部材10が揺動中心穴10aの中心軸を中心に矢印C(図4参照)の方向にさらに回動されることによって、ピロボール12の中心部12bは、中心線L2に近づいてくるように構成されている。
【0042】
また、第1実施形態では、図5および図9に示すように、前輪操舵部材9および揺動部材10が、たとえば、約20°回動している場合に、上記のように、継ぎ手部材15の前方接続部15aが揺動部材10の下部ネジ穴部10cを、後方に引っ張るようにさらに移動させているので、ピロボール12の中心部12bは、実質的に中心線L2上に位置するように構成されている。
【0043】
また、第1実施形態では、図6および図10に示すように、前輪操舵部材9および揺動部材10が、たとえば、右方向に約20°〜約30°まで回動する場合に、上記のように、継ぎ手部材15の前方接続部15aが揺動部材10の下部ネジ穴部10cを、後方(矢印A方向)(図6参照)に引っ張るように、より大きく移動させているので、ピロボール12の中心部12bは、前輪操舵部材9の回動軸となる中心線L2よりも前方側に位置するように構成されている。これにより、図10に示すように、ピロボール12の中心部12bは、中心線L1よりも距離D4(図10参照)だけ右側に位置するように構成されている。また、図6に示すように、前輪操舵部材9および揺動部材10の回動角度を大きく(約20°〜約30°まで)するにしたがって、揺動部材10が揺動中心穴10aの中心軸を中心に矢印Bの方向にさらに回動されることによって、ピロボール12の中心部12bが中心線L1から右側に離れていくように構成されている。すなわち、第1実施形態では、連結部材11の上部接続部11aは、前輪操舵部材9が右側に約0°よりも大きく約20°よりも小さい角度回動した場合に、左側に配置されているとともに、前輪操舵部材9が右側に約20°回動した場合に、左右方向に対して中心に配置され、かつ、前輪操舵部材9が、右側に約20°よりも大きい角度回動した場合に、右側に配置されるように構成されている。また、前輪操舵部材9が左側に回動する場合には、連結部材11は、上記と逆方向側に回動する。
【0044】
また、第1実施形態では、図11に示すように、メインフレーム3の前方には、メインフレーム3がヘッドパイプ2に対して回動しすぎるのを防止するための一対のストッパー18が設けられている。なお、ストッパー18は、本発明の「規制部材」の一例である。また、一対のストッパー18は、メインフレーム3が中心線L1の回りにヘッドパイプ2に対して時計回りまたは反時計回りに数度(10度未満)の角度で回動すると当接するように形成されている。
【0045】
また、ヘッドパイプ2の前方には、図1に示すように、前方を照射するヘッドライト19と、ヘッドパイプ2の前方を覆うフロントカウル20とが設けられている。なお、ヘッドライト19は、本発明の「前照灯」の一例である。また、ヘッドライト19とヘッドパイプ2との間には、フロントカウル20を支持するステー21が配置されている。このステー21の上側には、図示しない計器類などが取り付けられている。
【0046】
また、第1実施形態では、図2に示すように、ステー21は、メインフレーム3に固定されるとともに、ヘッドパイプ2の接続軸部2aの中心線L1を中心としてヘッドパイプ2に対して回動可能なようにヘッドパイプ2の支持部2dに支持されている。これにより、前輪操舵部材9に舵角が付与された場合にも、ヘッドライト19は、メインフレーム3に対して固定されているので、車体(メインフレーム3)の前方を照射することが可能となる。また、ステー21を、メインフレーム3に固定するとともに、ヘッドパイプ2の支持部2dにより回動可能に支持することによって、メインフレーム3がヘッドパイプ2に対して回動する場合に、ヘッドライト19を、容易に、ヘッドパイプ2に対して回動させることが可能となる。
【0047】
また、メインフレーム3の後方の下方向には、図1に示すように、エンジン22が取り付けられている。このエンジン22には、排気管(図示せず)が取り付けられている。この排気管は、走行方向に向かって右側に湾曲して後方の下方向へ向かうとともに、マフラー23に連結されている。また、エンジン22の前方には、エンジン22を冷却するためのラジエータ24が設けられている。また、エンジン22とラジエータ24との間には、燃料タンク25が配置されている。
【0048】
また、メインフレーム3の後端部には、ピボット軸(図示せず)が設けられている。このピボット軸により、リヤアーム26の前端部が上下に揺動可能に支持されている。このリヤアーム26の後端部には、後輪8が回転可能に取り付けられている。つまり、後輪8は、リヤアーム26を介してメインフレーム3に取り付けられている。この後輪8は、垂直方向に対して傾斜することが可能なように、進行方向から見て、下面が円弧状の部分を有するいわゆるラウンドタイヤにより形成されている。また、前輪5も、後輪8と同様、ラウンドタイヤにより形成されている。また、メインフレーム3の上方には、シート27が配置されている。
【0049】
図12〜図15は、図1に示した第1実施形態による自動二輪車の走行時に、メインフレームが回動する場合の動作を説明するための平面図である。次に、図2、図7〜図10および図12〜図15を参照して、本発明の第1実施形態による自動二輪車1の走行時の動作について説明する。
【0050】
通常、自動二輪車1の直進走行時には、運転者は、車体がふらつくことにより倒れようとするのを防止するために、前輪操舵部材9を操舵している。たとえば、車体が右側に倒れるようにふらついた場合には、前輪操舵部材9を右方向に操舵して、車体が右側に倒れるのを抑制している。第1実施形態による自動二輪車1では、少ない操舵量で車体がふらついて倒れようとするのを抑制する効果がある。たとえば、図12および図7に示した直進走行状態から、車体が右側に倒れるようにふらついて、図13および図8に示すように、前輪操舵部材9に右方向に約0°よりも大きく約20°よりも小さい舵角が付与された場合、前述のように連結部材11の上部接続部11aに設けられているピロボール12は、中心線L2よりも後方に位置している状態で中心線L2(図4および図8参照)を中心として時計回りに回動するので、連結部材11の上部接続部11aに設けられているピロボール12の中心部12bは、中心線L1に対して所定の距離D3(図8参照)だけ左側に移動する。これにより、連結部材11の下部固定部材11dには、左方向に力が付与される。この際、連結部材11の下部固定部材11dは、メインフレーム3(図8および図13参照)に固定されているので、上記した連結部材11の下部固定部材11dに付与された左方向の力によって、メインフレーム3は、中心線L1を中心として左側に回動する。
【0051】
この場合、第1実施形態では、重心Gは、中心線L1よりも上側に配置されているので、重心Gは、中心線L1よりも左側に移動する。すなわち、前輪操舵部材9に約0°よりも大きく約20°よりも小さい舵角が付与された場合に、重心Gは、前輪操舵部材9の操舵方向側(右側)と逆方向側(左側)に移動する。これにより、車体が右側に倒れるのを抑制することが可能となる。また、中心線L1は、後方の下方向に延びるように配置されているので、メインフレーム3が左側に回動することにより、後輪8には、右斜め方向の舵角θ1(図13参照)が付与される。これにより、車体には、右側に舵角が付与されるので、これによっても、車体が倒れるのを抑制することが可能となる。これらの結果、比較的小さい舵角を付与するだけで、重心Gの移動および後輪8に舵角が付与されることにより、車体がふらついて倒れようとするのを抑制することが可能となる。これに対して、通常の自動二輪車において倒れるのを抑制するためには、重心Gを移動させにくいとともに、後輪にほとんど舵角が付与されないので、第1実施形態の自動二輪車1に比べて前輪操舵手段に、より大きい舵角を付与する必要がある。なお、この場合の後輪8の右斜め方向の舵角θ1は、前輪5の右斜め方向の舵角θ2よりも小さい。
【0052】
また、第1実施形態では、上記のように、前輪操舵部材9に約0°〜約10°まで舵角が付与される場合に、前輪操舵部材9の舵角が増加するのに伴って、後輪8に付与される舵角が増加する。また、前輪操舵部材9に約10°〜約20°まで舵角が付与される場合に、前輪操舵部材9の舵角が増加するのに伴って、後輪8に付与される舵角が減少する。
【0053】
また、自動二輪車1の前輪操舵部材9の舵角が約20°よりも大きい旋回時には、運転者は、走行速度を低下するとともに、前輪操舵部材9に大きい舵角を付与する。たとえば、右側に旋回する場合には、図13および図14に示した状態よりも大きい舵角を付与する。第1実施形態では、車体の旋回性を向上させる効果がある。たとえば、右側に旋回する場合、図13、図14、図8および図9に示した状態よりも大きい舵角(約20°よりも大きい舵角)が付与される。このとき、連結部材11の上部接続部11aに設けられているピロボール12は、中心線L2よりも前方に位置している状態で、中心線L2(図2参照)よりも右側に移動するので、連結部材11の上部接続部11aに設けられているピロボール12の中心部12bは、中心線L1に対して所定の距離D4(図10参照)だけ右側に移動する。これにより、連結部材11の下部固定部材11dには、右方向に力が付与される。この際、連結部材11の下部固定部材11dは、メインフレーム3(図10および図15参照)に固定されているので、上記した連結部材11の下部固定部材11dに付与された右方向の力によって、メインフレーム3は、中心線L1を中心として右側に回動する。この場合、第1実施形態では、重心Gは、中心線L1よりも上側に配置されているので、重心Gは、中心線L1よりも右側に移動する。すなわち、前輪操舵部材9に約20°よりも大きい舵角が付与された場合に、重心Gは、前輪操舵部材9の操舵方向側(右側)と同方向側(右側)に移動する。これにより、車体を旋回する側(右側)に傾斜させやすくすることが可能となるので、旋回性を向上させることが可能となる。また、中心線L1は、後方の下方向に延びるように配置されているので、メインフレーム3が右側に回動することにより、後輪8には、左斜め方向の舵角θ3(図15参照)が付与される。これにより、前輪5の回転の中心軸C1と後輪8の回転の中心軸C2とが交わる角度を大きくすることが可能となるので、旋回半径を小さくすることが可能となる。すなわち、後輪8に舵角θ3とキャンバースラストが付加されて旋回半径が小さくなる。その結果、旋回性を向上させることが可能となる。
【0054】
なお、第1実施形態では、前輪操舵部材9に約20°よりも大きい舵角が付与される場合に、前輪操舵部材9の舵角が増加するのに伴って、前輪操舵部材9の操舵方向と逆方向側に後輪8に付与される舵角が増加する。
【0055】
第1実施形態では、上記のように、後輪8を支持するとともに、ヘッドパイプ2に後方の下方向に延びる中心線L1の回りに回動可能に取り付けられるメインフレーム3と、前輪操舵部材9とメインフレーム3とを連結するとともに、前輪操舵部材9の舵切り時に、メインフレーム3を中心線L1の回りに回動させることにより後輪8に舵角を付与する連結部材11とを設けることによって、直進走行時および旋回時の前輪操舵部材9の舵切り時に、後輪8およびメインフレーム3を中心線L1の回りに回動させることができるので、自動二輪車1の重心Gを中心線L1に対して左右方向に移動させやすくすることができる。
【0056】
また、第1実施形態では、上記中心線L1の回りに回動可能なメインフレーム3および連結部材11に加えて、前輪操舵部材9の舵角が約20°(第1の角度)よりも小さい場合に、前輪操舵部材9の操舵方向側と同方向側にメインフレーム3および後輪8を操舵するとともに、前輪操舵部材9の舵角が約20°(第1の角度)よりも大きい場合に、前輪操舵部材9の操舵方向と逆方向側にメインフレーム3および後輪8を操舵する揺動部材10および継ぎ手部材15を設けることによって、直進走行時に前輪操舵部材9に約20°(第1の角度)よりも小さい舵角が付与された場合に、揺動部材10および継ぎ手部材15により、前輪操舵部材9の操舵方向側と同方向側に後輪8を操舵しながら、回動可能なメインフレーム3および連結部材11により、自動二輪車1の重心Gを中心線L1に対して前輪操舵部材9に蛇角を付与した方向の反対側に移動させて、前輪操舵部材9に操舵された方向にふらつくのを抑制することができるので、直進安定性を十分に向上させることができる。また、旋回時に前輪操舵部材9に約20°(第1の角度)よりも大きい舵角が付与された場合に、揺動部材10および継ぎ手部材15により、前輪操舵部材9の操舵方向側と逆方向側に後輪8を操舵しながら、回動可能なメインフレーム3および連結部材11により、自動二輪車1の重心Gを中心線L1に対して前輪操舵部材9に蛇角を付与した方向に移動させて、前輪操舵部材9に操舵された方向に自動二輪車1を傾けることができるので、旋回半径を十分に小さくすることにより旋回性を十分に向上させることができる。
【0057】
また、第1実施形態では、揺動部材10は、前輪操舵部材9の揺動軸部9eに回動可能に配置されるとともに、揺動部材10の一方側を連結部材11を介してメインフレーム3に連結し、他方側を継ぎ手部材15を介してヘッドパイプ2のブラケット2bに連結することによって、前輪操舵部材9に蛇角が付与された場合に、前輪操舵部材9の回動力を、揺動部材10、継ぎ手部材15および連結部材11を介してメインフレーム3に伝達することができるので、メインフレーム3を前後方向に延びる中心線L1の回りに回動させることができる。
【0058】
また、第1実施形態では、揺動部材10の下部ネジ穴部10cは、前輪操舵部材9に舵角を付与する方向の反対方向に継ぎ手部材15の前方接続部15aが移動されることにより移動され、下部ネジ穴部10cと前輪操舵部材9の中心線L2との距離は、前輪操舵部材9に付与される舵角が大きくなるにつれて大きくなるように構成することによって、前輪操舵部材9に蛇角を付与するにしたがって、揺動部材10の下部ネジ穴部10bが移動されて、揺動部材10が揺動中心穴10aの中心線を中心に揺動されるので、上部ネジ穴部10bは、揺動部材10の下部ネジ穴部10cが移動する方向とは反対の方向に移動される。これにより、揺動部材10の上部ネジ穴部10bが移動する方向に、揺動部材10の上部ネジ穴部10bに接続されている連結部材11を移動させることができる。
【0059】
また、第1実施形態では、連結部材11の上部接続部11aは、前輪操舵部材9の舵角が20°(第1の角度)よりも小さい場合に、前輪操舵部材9の回動する中心線L2よりもメインフレーム3側に位置するとともに、前輪操舵部材9の舵角が20°(第1の角度)よりも大きい場合に、前輪操舵部材9の回動する中心線L2よりもメインフレーム3の反対側に位置するように構成することによって、蛇角が20°(第1の角度)よりも小さい場合には、連結部材11の上部接続部11aは、中心線L2に対して、前輪操舵部材9の蛇角方向と反対側に位置するようになるので、メインフレーム3に対して前輪操舵部材9の蛇角方向とは反対側に回動力を伝達することができる。これにより、蛇角方向とは反対側にメインフレーム3を回動させることによって、蛇角方向とは反対側に重心Gを配置することができるので、直進安定性をより向上させることができる。また、蛇角が20°(第1の角度)よりも大きい場合には、上部接続部11aは、中心線L2に対して、前輪操舵部材9の蛇角方向と同方向側に位置するようになるので、メインフレーム3に対して前輪操舵部材9の蛇角方向と同方向の回動力を伝達することができる。これにより、蛇角方向側にメインフレーム3を回動させることによって、蛇角方向側に重心Gを配置することができるので、旋回性をより向上させることができる。
【0060】
また、第1実施形態では、ヒンジ回転軸11eおよび11fは、左右方向の移動を抑制しながら、前後方向および上下方向に移動可能であり、回動可能に支持するアンギュラ軸受13を含むように構成することによって、連結部材11の上部連結アーム11bおよび中間連結アーム11cを連結するヒンジ回転軸11eと、中間連結アーム11cおよび下部固定部材11dを連結するヒンジ回転軸11fとの左右方向の移動を抑制することができるので、前輪操舵部材9の回動力が連結部材11の左右方向の移動によって吸収されるのを抑制することができる。これにより、より確実に前輪操舵部材9の回動力を連結部材11を介してメインフレーム3に伝達することができる。
【0061】
また、第1実施形態では、前後方向に延びる接続軸部2aの中心線L1の延長線を、後輪8と地面100との接点100a近傍を通過させることによって、ヘッドパイプ2に対してメインフレーム3が回動する場合、後輪8は地面100との接点100a近傍を中心に回動するので、後輪8が地面100に対して左右方向へ滑るのを抑制することができる。
【0062】
また、第1実施形態では、ヘッドパイプ2とメインフレーム3とを互いに回動可能に支持するアンギュラ軸受7を設けることによって、アンギュラ軸受7により、メインフレーム3をヘッドパイプ2に対して前後方向に延びる接続軸部2aの中心線L1の回りにスムーズに回動させることができる。また、アンギュラ軸受7を用いることによって、ヘッドパイプ2とメインフレーム3との連結部分における前後方向に延びる中心線L1に沿った方向(スラスト方向)の剛性およびその前後方向に延びる中心線L1に垂直な方向(ラジアル方向)の剛性の両方を確保することができる。
【0063】
また、第1実施形態では、メインフレーム3がヘッドパイプ2に対して回動する角度を規制するための一対のストッパー18を設けることによって、メインフレーム3がヘッドパイプ2に対して回動しすぎるのを防止することができる。
【0064】
(第2実施形態)
図16は、本発明の第2実施形態による自動二輪車のヘッドパイプ周辺を拡大した側面図である。図17〜図23は、本発明の第2実施形態による自動二輪車の構造を詳細に説明するための図である。この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、前輪操舵部材9および揺動部材60が回動せずに実質的に0°に位置している場合に、揺動部材60の後述する上部前方ネジ穴部60bに移動可能に取り付けられているピロボール62の中心部62bが中心線L2よりも前方側に位置するように構成されている例について説明する。具体的には、第2実施形態による後輪操舵手段は、前輪操舵部材9の回動角度が0°〜20°の場合に、前輪5の蛇角方向と反対方向に後輪8に蛇角が付与されるように構成されるとともに、前輪操舵部材9の回動角度が20°〜30°の場合に、前輪5の蛇角方向と同方向に後輪8に蛇角が付与されるように構成されている。
【0065】
この第2実施形態による揺動部材60には、図16に示すように、前輪操舵部材9の揺動軸部9eが揺動可能に挿入される揺動部材60の揺動中心穴60aが設けられている。また、揺動部材60の上端部の走行方向側には、上部前方ネジ穴部60bが設けられるとともに、上端部の走行方向と反対側には、上部後方ネジ穴部60cが設けられている。この上部前方ネジ穴部60bには、連結部材11の上部接続部11aが配置されている。また、連結部材11は、揺動部材60とメインフレーム3の前端部のアンギュラ軸受7が取り付けられる部分の近傍の上面とを連結するように構成されている。具体的には、連結部材11の上部連結アーム11bの一方端部に設けられている上部接続部11aには、ピロボール62が移動可能に取り付けられている。そして、ピロボール62の挿入穴62aにボルト90を挿入して、揺動部材60の上部前方ネジ穴部60bに、ピロボール62が固定されている。
【0066】
また、第2実施形態では、揺動部材60の上部後方ネジ穴部60cには、揺動部材60とブラケット2bとを接続する継ぎ手部材65の前方接続部65aが取り付けられている。具体的には、継ぎ手部材65の一方端部に設けられている前方接続部65aには、図16に示すように、ピロボール66が移動可能に取り付けられている。そして、ピロボール66の挿入穴66aにボルト91を挿入して、揺動部材60の上部後方ネジ穴部60cに、ピロボール66が固定されている。また、継ぎ手部材65の他方端部に設けられている後方接続部65bには、ピロボール67が移動可能に取り付けられている。そして、ピロボール67の挿入穴67aにボルト92を挿入して、ブラケット2bのネジ穴部2cに、ピロボール67が固定されている。また、図16および図20に示すように、継ぎ手部材65の前方接続部65aは、前輪操舵部材9の回動軸となるヘッドパイプ2の中心線L2よりも前方側に位置するように配置されているので、たとえば、図17および図21に示すように、前輪操舵部材9を右側に回動させた場合には、中心線L1に対して距離D13(図21参照)だけ右側に位置するように構成されている。また、継ぎ手部材65の後方接続部65bは、移動しないブラケット2bにピロボール67を介して回動可能に固定されているので、前輪操舵部材9を回動させる角度を大きくするにしたがって、中心線L2と、前方接続部65aに設けられているピロボール66の中心部66bとの距離が大きくなるように構成されている。これにより、図19に示すように、継ぎ手部材65の前方接続部65aが揺動部材60の上部後方ネジ穴部60cを、ピロボール66およびボルト91を介して後方(矢印E方向)に引っ張るように移動させるとともに、揺動中心穴60aを中心に揺動部材60が回動(矢印F方向)し、上部前方ネジ穴60bは、後方へ移動するように構成されている。
【0067】
また、第2実施形態では、図17および図20に示すように、前輪操舵部材9および揺動部材60が、たとえば、回動せずに実質的に0°に位置している場合に、ピロボール62の中心部62bは、中心線L2よりも前方側に位置するように構成されている。
【0068】
また、第2実施形態では、図17および図21に示すように、前輪操舵部材9および揺動部材60が、たとえば、右方向に約0°〜約10°まで回動する場合に、ピロボール62の中心部62bは、前輪操舵部材9の回動軸となる中心線L2よりも前方側に位置するように構成されているので、ピロボール62の中心部62bは、中心線L1よりも距離D13(図21参照)だけ右側に位置するように構成されている。また、前輪操舵部材9および揺動部材60の回動角度を大きく(約0°〜約10°)するにしたがって、ピロボール62の中心部62bが中心線L1から右側に離れていくように構成されている。
【0069】
また、第2実施形態では、前輪操舵部材9および揺動部材60が、たとえば、右方向に約10°〜約20°まで回動する場合にも、ピロボール62の中心部62bは、前輪操舵部材9の回動軸となる中心線L2よりも前方側に位置するように構成されているので、ピロボール62の中心部62bは、中心線L1よりも右側に位置するように構成されている。この場合、右方向に約0°〜約10°まで回動する場合と異なり、前輪操舵部材9および揺動部材60の回動角度を大きく(約10°〜約20°)するにしたがって、揺動部材60が揺動中心穴60aの中心軸を中心に矢印F(図17参照)の方向にさらに回動されることによって、ピロボール62の中心部62bは、中心線L2に近づいてくるように構成されている。
【0070】
また、第2実施形態では、図18および図22に示すように、前輪操舵部材9および揺動部材60が、たとえば、約20°回動している場合に、上記のように、継ぎ手部材65の前方接続部65aが揺動部材60の上部後方ネジ穴部60cを、後方に引っ張るようにさらに移動させているので、ピロボール62の中心部62bは、実質的に中心線L2上に位置するように構成されている。
【0071】
また、第2実施形態では、図19および図23に示すように、前輪操舵部材9および揺動部材60が、たとえば、右方向に約20°〜約30°まで回動する場合に、上記のように、継ぎ手部材65の前方接続部65aが揺動部材60の上部後方ネジ穴部60cを、後方(矢印E方向)(図19参照)に引っ張るように、より大きく移動させているので、ピロボール62の中心部62bは、前輪操舵部材9の回動軸となる中心線L2よりも後方側に位置するように構成されている。これにより、図23に示すように、ピロボール62の中心部62bは、中心線L1よりも距離D14だけ左側に位置するように構成されている。また、図19に示すように、前輪操舵部材9および揺動部材60の回動角度を大きく(約20°〜約30°まで)するにしたがって、揺動部材60が揺動中心穴60aの中心軸を中心に矢印Fの方向にさらに回動されることによって、ピロボール62の中心部62bが中心線L1から左側に離れていくように構成されている。すなわち、第2実施形態では、連結部材11の上部接続部11aは、前輪操舵部材9が右側に約0°よりも大きく約20°よりも小さい角度回動した場合に、右側に配置されているとともに、前輪操舵部材9が右側に約20°回動した場合に、左右方向に対して中心に配置され、かつ、前輪操舵部材9が、右側に約20°よりも大きい角度回動した場合に、左側に配置されるように構成されている。また、前輪操舵部材9が左側に回動する場合には、連結部材11は、上記と逆方向側に回動する。
【0072】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0073】
図24および図25は、本発明の第2実施形態による自動二輪車の走行時に、メインフレームが回動する場合の動作を説明するための平面図である。次に、図17および図20〜図25を参照して、本発明の第2実施形態による自動二輪車の走行時の動作について説明する。
【0074】
本発明の第2実施形態による自動二輪車では、少ない操舵量の場合において、操舵トルクを小さくする効果がある。たとえば、図20に示した直進走行状態から、図24および図21に示すように、前輪操舵部材9に右方向に約0°よりも大きく約20°よりも小さい舵角が付与された場合、前述のように連結部材11の上部接続部11aに設けられているピロボール62は、中心線L2よりも前方に位置している状態で中心線L2(図17および図21参照)を中心として時計回りに回動するので、連結部材11の上部接続部11aに設けられているピロボール62の中心部62bは、中心線L1に対して所定の距離D13(図21参照)だけ右側に移動する。これにより、連結部材11の下部固定部材11dには、右方向に力が付与される。この際、連結部材11の下部固定部材11dは、メインフレーム3(図21および図24参照)に固定されているので、上記した連結部材11の下部固定部材11dに付与された右方向の力によって、メインフレーム3は、中心線L1を中心として右側に回動する。
【0075】
この場合、第2実施形態では、重心Gは、中心線L1よりも上側に配置されているので、重心Gは、中心線L1よりも右側に移動する。すなわち、前輪操舵部材9に約0°よりも大きく約20°よりも小さい舵角が付与された場合に、重心Gは、前輪操舵部材9の操舵方向側(右側)と同方向側(右側)に移動する。これにより、車体を旋回する側(右側)に傾斜させやすくすることが可能となるので、操舵トルクを小さくすることが可能となる。すなわち、旋回性を向上させることが可能となる。また、中心線L1は、後方の下方向に延びるように配置されているので、メインフレーム3が右側に回動することにより、後輪8には、左斜め方向の舵角θ11(図24参照)が付与される。これにより、前輪5の回転の中心軸C11と後輪8の回転の中心軸C12とが交わる角度を大きくすることが可能となるので、旋回半径を小さくすることが可能となる。すなわち、後輪8に舵角θ11とキャンバースラストが付加されて旋回半径が小さくなる。その結果、より旋回性を向上させることが可能となる。
【0076】
また、第2実施形態では、上記のように、前輪操舵部材9に約0°〜約10°まで舵角が付与される場合に、前輪操舵部材9の舵角が増加するのに伴って、後輪8に付与される舵角が増加する。また、前輪操舵部材9に約10°〜約20°まで舵角が付与される場合に、前輪操舵部材9の舵角が増加するのに伴って、後輪8に付与される舵角が減少する。
【0077】
また、前輪操舵部材9の舵角が約20°よりも大きい旋回時には、運転者は、走行速度を低下するとともに、前輪操舵部材9に大きい舵角を付与する。たとえば、右側に旋回する場合には、図24に示した状態よりも大きい舵角を付与する。第2実施形態では、Uターンをする場合などに大きい蛇角により旋回する際に、車体のバランスが崩れるのを抑制する効果がある。たとえば、右側に旋回する場合、図24、図21および図22に示した状態よりも大きい舵角(約20°よりも大きい舵角)が付与される。このとき、連結部材11の上部接続部11aに設けられているピロボール62は、中心線L2よりも後方に位置している状態で、中心線L2(図23参照)よりも左側に移動するので、連結部材11の上部接続部11aに設けられているピロボール62の中心部62bは、中心線L1に対して所定の距離D14(図23参照)だけ左側に移動する。これにより、連結部材11の下部固定部材11dには、左方向に力が付与される。この際、連結部材11の下部固定部材11dは、メインフレーム3(図23および図25参照)に固定されているので、上記した連結部材11の下部固定部材11dに付与された左方向の力によって、メインフレーム3は、中心線L1を中心として左側に回動する。
【0078】
この場合、第2実施形態では、重心Gは、中心線L1よりも上側に配置されているので、重心Gは、中心線L1よりも左側に移動する。すなわち、前輪操舵部材9に約20°よりも大きい舵角が付与された場合に、重心Gは、前輪操舵部材9の操舵方向側(右側)と逆方向側(左側)に移動する。これにより、車体が旋回する側に傾斜するのを抑制することが可能となるので、旋回する際に、車体のバランスが崩れるのを抑制することが可能となる。また、中心線L1は、後方の下方向に延びるように配置されているので、メインフレーム3が左側に回動することにより、後輪8には、右斜め方向の舵角θ13(図25参照)が付与される。これにより、車体には、右側に舵角が付与されるので、これによっても、旋回する際に、車体のバランスが崩れるのを抑制することが可能となる。
【0079】
なお、第2実施形態では、前輪操舵部材9に約20°よりも大きい舵角が付与される場合に、前輪操舵部材9の舵角が増加するのに伴って、前輪操舵部材9の操舵方向と同方向側に後輪8に付与される舵角が増加する。
【0080】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0081】
たとえば、上記実施形態では、車両の一例として自動二輪車を示したが、本発明はこれに限らず、前方フレーム部および後方フレーム部を備えた車両であれば、自転車、三輪車、ATV(All Terrain Vehicle;不整地走行車両)などの他の車両にも適用可能である。
【0082】
また、上記実施形態では、連結部材を、上部連結アーム、中間連結アームおよび下部固定部材をヒンジ回転軸によって連結するように構成した例について説明したが、本発明はこれに限らず、連結部材が前後上下に移動可能であれば複数の部材をヒンジ回転軸のようなもので連結する構成でなくてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、ヘッドパイプとメインフレームとを互いに回動可能に支持するためにアンギュラ軸受を用いた例を示したが、本発明はこれに限らず、ヘッドパイプとメインフレームとを互いに回動可能に支持するためにテーパーローラ軸受などの他の軸受を用いてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、ヘッドパイプの軸部の中心線L1を後方の下方向に延びるとともに、後輪と地面との接点近傍を通過するように構成した例を示したが、本発明はこれに限らず、ヘッドパイプの軸部の中心線L1を後方の下方向に延びるとともに、後輪と地面との接点近傍を通過しないように構成してもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、継ぎ手部材15の後方接続部15bが取り付けられるブラケット2bは、ヘッドパイプ2に固定されている例を示したが、本発明はこれに限らず、図26および図27に示した第1実施形態の変形例による自動二輪車101のように、継ぎ手部材115の後方接続部115bが配置される部分を連結部材111の下部固定部材111dに一体的に設けるようにしてもよい。この変形例による自動二輪車101では、図27に示すように、連結部材111の下部固定部材111dは、メインフレーム103の上部フレーム103aの上面にボルト150により固定されている。また、下部固定部材111dの前方に一体的に設けられている取付部111eには、継ぎ手部材115の後方接続部115bが配置されている。具体的には、後方接続部115bには、ピロボール117が移動可能に取り付けられている。そして、ピロボール117の挿入穴117aにボルト151を挿入して、下部固定部材111dに設けられている取付部111eに、ピロボール117が固定されている。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1実施形態による自動二輪車の全体構造を示した側面図である。
【図2】図1に示した第1実施形態による自動二輪車のヘッドパイプ周辺を拡大した側面図である。
【図3】図1に示した第1実施形態による自動二輪車の構造を詳細に説明するための矢印P方向から見た図である。
【図4】図1に示した第1実施形態による自動二輪車の前輪操舵部材が右側に約10°回動した場合のヘッドパイプ周辺を拡大した側面図である。
【図5】図1に示した第1実施形態による自動二輪車の前輪操舵部材が右側に約20°回動した場合のヘッドパイプ周辺を拡大した側面図である。
【図6】図1に示した第1実施形態による自動二輪車の前輪操舵部材が右側に約30°回動した場合のヘッドパイプ周辺を拡大した側面図である。
【図7】図1に示した第1実施形態による自動二輪車の前輪操舵部材が正面(約0°)の位置にある状態を示した図である。
【図8】図1に示した第1実施形態による自動二輪車の前輪操舵部材が右側に約10°回動した状態を示した図である。
【図9】図1に示した第1実施形態による自動二輪車の前輪操舵部材が右側に約20°回動した状態を示した図である。
【図10】図1に示した第1実施形態による自動二輪車の前輪操舵部材が右側に約30°回動した状態を示した図である。
【図11】図1に示した第1実施形態による自動二輪車のヘッドパイプ周辺の構造を詳細に説明するための矢印Q方向から見た図である。
【図12】図1に示した第1実施形態による自動二輪車の走行時に、メインフレームが回動する場合の動作を説明するための平面図である。
【図13】図1に示した第1実施形態による自動二輪車の走行時に、メインフレームが回動する場合の動作を説明するための平面図である。
【図14】図1に示した第1実施形態による自動二輪車の走行時に、メインフレームが回動する場合の動作を説明するための平面図である。
【図15】図1に示した第1実施形態による自動二輪車の走行時に、メインフレームが回動する場合の動作を説明するための平面図である。
【図16】本発明の第2実施形態による自動二輪車のヘッドパイプ周辺を拡大した側面図である。
【図17】本発明の第2実施形態による自動二輪車の前輪操舵部材が右側に約10°回動した場合のヘッドパイプ周辺を拡大した側面図である。
【図18】本発明の第2実施形態による自動二輪車の前輪操舵部材が右側に約20°回動した場合のヘッドパイプ周辺を拡大した側面図である。
【図19】本発明の第2実施形態による自動二輪車の前輪操舵部材が右側に約30°回動した場合のヘッドパイプ周辺を拡大した側面図である。
【図20】本発明の第2実施形態による自動二輪車の前輪操舵部材が正面(約0°)の位置にある状態を示した図である。
【図21】本発明の第2実施形態による自動二輪車の前輪操舵部材が右側に約10°回動した状態を示した図である。
【図22】本発明の第2実施形態による自動二輪車の前輪操舵部材が右側に約20°回動した状態を示した図である。
【図23】本発明の第2実施形態による自動二輪車の前輪操舵部材が右側に約30°回動した状態を示した図である。
【図24】本発明の第2実施形態による自動二輪車の走行時に、メインフレームが回動する場合の動作を説明するための平面図である。
【図25】本発明の第2実施形態による自動二輪車の走行時に、メインフレームが回動する場合の動作を説明するための平面図である。
【図26】本発明の第1実施形態の変形例による自動二輪車の全体構造を示した側面図である。
【図27】本発明の第1実施形態の変形例による自動二輪車のヘッドパイプ周辺の側面図である。
【符号の説明】
【0087】
1、101 自動二輪車(車両)
2 ヘッドパイプ(前方フレーム部)
2a 接続軸部(第1軸受取付部)
2b ブラケット(ブラケット部)
3 メインフレーム(後方フレーム部)
3a 貫通孔(第2軸受取付部)
5 前輪
7 アンギュラ軸受(第2軸受部)
8 後輪
9 前輪操舵部材(前輪操舵手段)
9e 揺動軸部
10 揺動部材(揺動機構、後輪操舵手段)
10a 揺動中心穴(移動軸部)
10b 上部ネジ穴部(第1取付部)
10c 下部ネジ穴部(第2取付部)
11、111 連結部材(連結手段)
11a 上部接続部(第3接続部)
11d、111d 下部固定部材(固定部)
11e、11f ヒンジ回転軸(接合部、軸部)
13 アンギュラ軸受(接合部、第1軸受部)
15、115 継ぎ手部材(揺動機構、後輪操舵手段)
15a 前方接続部(第1接続部)
15b、115b 後方接続部(第2接続部)
18 ストッパー(規制部材)
19 ヘッドライト(前照灯)
100 地面
100a 接点
G 重心
L1 中心線(軸線)
L2 中心線(回動軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪を支持する前方フレーム部と、
前記前方フレーム部に回動可能に設けられる前輪操舵手段と、
後輪を支持するとともに、前記前方フレーム部に前後方向に延びる軸線の回りに回動可能に取り付けられる後方フレーム部と、
前記前輪操舵手段と前記後方フレーム部とを連結するとともに、前記前輪操舵手段の舵切り時に、前記後方フレーム部を前記前方フレーム部に対して回動させることにより前記後輪に舵角を付与する連結手段と、
前記前輪操舵手段の舵角が第1の角度よりも小さい場合に、前記前輪操舵手段の操舵方向側と同方向側に前記連結手段により前記後輪を操舵するとともに、前記前輪操舵手段の舵角が前記第1の角度よりも大きい場合に、前記前輪操舵手段の操舵方向と逆方向側に前記連結手段により前記後輪を操舵する後輪操舵手段とを備え、
前記後輪操舵手段は、揺動機構を含み、
前記揺動機構は、前記前輪操舵手段に回動可能に取り付けられ、前記前方フレーム部に連結されるとともに、前記連結手段を介して前記後方フレーム部に連結される、車両。
【請求項2】
前記揺動機構は、前記連結手段に接続されるとともに、前記前輪操舵手段の舵切り方向に前記前輪操舵手段と一体的に回動する揺動部材と、
前記揺動部材に接続されるとともに、前記前方フレーム部に接続される継ぎ手部材とを含む、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記揺動部材は、前記揺動部材の一方端部側に配置されるとともに、前記連結手段に連結される第1取付部と、前記揺動部材の他方端部側に配置されるとともに、前記継ぎ手部材に連結される第2取付部とを含み、前記第1取付部と前記第2取付部との間に略水平に配置された揺動軸部に揺動可能に支持されている、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記継ぎ手部材は、
一方端側に形成され、移動可能な第1接続部と、
他方端側に形成され、移動可能な第2接続部とを含み、
前記第1接続部は、前記揺動部材の前記第2取付部に移動可能に取り付けられ、
前記第2接続部は、前記前方フレーム部に移動可能に取り付けられる、請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記連結手段は、
前記連結手段の一方端側に配置されるとともに、前記揺動部材の前記第1取付部に移動可能に接続される第3接続部と、
前記連結手段の他方端側に配置されるとともに、前記後方フレーム部の前端部側に固定される固定部とを含む、請求項3に記載の車両。
【請求項6】
前記揺動部材の前記第2取付部は、前記前輪操舵手段に舵角を付与する方向の反対方向に前記継ぎ手部材の前記第1接続部が移動されることにより移動され、
前記揺動部材の第2取付部と前記前輪操舵手段の回動軸との距離は、前記前輪操舵手段に付与される舵角が大きくなるにつれて大きくなる、請求項4に記載の車両。
【請求項7】
前記連結手段の前記第3接続部は、
前記前輪操舵手段の舵角が前記第1の角度よりも小さい場合に、前記前輪操舵手段の回動軸よりも後方フレーム部側に位置するとともに、前記前輪操舵手段の舵角が前記第1の角度よりも大きい場合に、前記前輪操舵手段の回動軸よりも前記後方フレーム部の反対側に位置する、請求項5に記載の車両。
【請求項8】
前記連結手段は、前記連結手段の一方端部側を少なくとも前後方向に移動可能にするための複数の接合部を含む、請求項1に記載の車両。
【請求項9】
前記複数の接合部は、略水平に配置された軸部と、前記軸部を回動可能に支持する第1軸受部とを含む、請求項8に記載の車両。
【請求項10】
前記第1軸受部は、アンギュラ軸受を含む、請求項9に記載の車両。
【請求項11】
前記前方フレーム部は、前記継ぎ手部材が接続されるブラケット部を含む、請求項1に記載の車両。
【請求項12】
前記前輪操舵手段の舵角が前記第1の角度よりも小さい場合に、前記前輪操舵手段の操舵方向側と逆方向側に重心が位置するとともに、前記前輪操舵手段の舵角が前記第1の角度よりも大きい場合に、前記前輪操舵手段の操舵方向と同方向側に重心が位置する、請求項1に記載の車両。
【請求項13】
前記前輪操舵手段の舵角が前記第1の角度よりも小さい第2の角度以下の場合に、前記前輪操舵手段の舵角が増加するに伴って、前記後輪の舵角が増加する、請求項1に記載の車両。
【請求項14】
前記前輪操舵手段の舵角が前記第1の角度よりも大きい場合に、前記前輪操舵手段の舵角が増加するに伴って、前記前輪操舵手段の操舵方向と逆方向側に前記後輪の舵角が増加する、請求項1に記載の車両。
【請求項15】
前記前後方向に延びる軸線の延長線は、前記後輪と地面との接点近傍を通過する、請求項1に記載の車両。
【請求項16】
前記前方フレーム部と前記後方フレーム部との間に配置され、前記前方フレーム部と前記後方フレーム部とを互いに回動可能に支持する第2軸受部をさらに備える、請求項1に記載の車両。
【請求項17】
前記第2軸受部は、アンギュラ軸受である、請求項16に記載の車両。
【請求項18】
前記前方フレーム部は、ヘッドパイプを含み、
前記ヘッドパイプは、前記ヘッドパイプから後方に突出するように形成され、前記前後方向に延びる軸線上に回動中心を有するとともに、前記アンギュラ軸受が取り付けられる外周面を有する第1軸受取付部を含み、
前記後方フレーム部は、前記ヘッドパイプの第1軸受取付部に対向するように配置され、前記アンギュラ軸受が取り付けられる内周面を有する第2軸受取付部を含む、請求項17に記載の車両。
【請求項19】
前記前後方向に延びる軸線の延長線上以外の部分に重心が位置する、請求項1に記載の車両。
【請求項20】
前記前後方向に延びる軸線は、前記前方フレーム部の後方の下方向に延びる、請求項1に記載の車両。
【請求項21】
前記後方フレーム部が前記前方フレーム部に対して回動する角度を規制するための規制部材をさらに備える、請求項1に記載の車両。
【請求項22】
前記前方フレーム部の前方に配置される前照灯をさらに備え、
前記前照灯は、前記後方フレーム部に固定されている、請求項1に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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