説明

車両

【課題】倒立制御停止直後から所定時間、駆動トルクを付加して車体を特定方向に傾斜させることによって、緊急停止時を含む倒立制御停止時に、確実に車体を特定方向に傾斜させることができ、車体固定式のストッパを車体の片側のみに取り付けるだけでよく、車両を軽量・小型化することができ、使い勝手がよく、かつ、安全に使用することができるようにする。
【解決手段】回転可能に車体に取り付けられた駆動輪12と、該駆動輪12に与える駆動トルクを制御して前記車体の姿勢を制御する車両制御装置とを有し、該車両制御装置は、前記車体の姿勢制御の停止直後から所定時間、前記駆動輪12に駆動トルクを付加し、前記車体を特定方向に傾斜させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倒立振り子の姿勢制御を利用した車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、倒立振り子の姿勢制御を利用した車両に関する技術が提案されている。例えば、同軸上に配設された2つの駆動輪を有し、乗員の重心移動による車体の姿勢変化を感知して駆動する車両、球体状の単一の駆動輪に取り付けられた車体の姿勢を制御しながら移動する車両等の技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この場合、センサで車体のバランスや動作の状態を検出しながら、倒立制御を行って、車両を移動させる。また、乗員が降車するときや車両の電源を遮断したときには、倒立制御を停止するのと同時にストッパを作動させ、該ストッパを接地させることによって車体の姿勢を維持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−291799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の車両においては、可動式のストッパを車両の前後に取り付ける必要があり、これにより、構成が複雑化するとともに、車両の軽量化及び低コスト化の妨げとなる。そこで、固定式のストッパを車両のいずれか一方側に取り付ける、乗員が降車するときには、乗員が降車しやすい方向に車体を傾けて、車体に固定されたストッパを路面に接地させることが考えられる。
【0006】
しかし、倒立制御の停止時に、車体が逆方向に傾斜する可能性がある。例えば、センサ、ECU(Electronic Control Unit)、バッテリ等の故障によって、車体の姿勢制御を緊急停止させた場合、車体を倒立状態に維持することや車体を特定方向に必ず傾斜させることは困難である。そこで、緊急停止時に車体が逆方向に傾斜した場合に備えて、エアバッグ等の転倒防止装置を取り付けることもできるが、そもそも、逆方向への傾斜は乗員に不安感を与え、エアバッグ等の転倒防止装置の交換やメンテナンスには労力と費用を要する。
【0007】
また、正しい傾斜方向に車体が傾斜した場合であっても、その勢いが強すぎると、ストッパが路面に接触したときの衝撃を乗員が不快に感じるだけでなく、ストッパの接地点を回転中心として車体が更に傾斜する可能性がある。
【0008】
本発明は、前記従来の車両の問題点を解決して、倒立制御停止直後から所定時間、駆動トルクを付加して車体を特定方向に傾斜させることによって、緊急停止時を含む倒立制御停止時に、確実に車体を特定方向に傾斜させることができ、車体固定式のストッパを車体の片側のみに取り付けるだけでよく、車両を軽量・小型化することができ、使い勝手がよく、かつ、安全に使用することができる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、本発明の車両においては、回転可能に車体に取り付けられた駆動輪と、該駆動輪に与える駆動トルクを制御して前記車体の姿勢を制御する車両制御装置とを有し、該車両制御装置は、前記車体の姿勢制御の停止直後から所定時間、前記駆動輪に駆動トルクを付加し、前記車体を特定方向に傾斜させる。
【0010】
本発明の他の車両においては、さらに、前記車両制御装置は、前記車体の姿勢制御の停止直後からの時間に応じて、前記駆動輪に付加する駆動トルクの大きさを決定する。
【0011】
本発明の更に他の車両においては、さらに、前記車両制御装置は、前記時間の経過とともに前記駆動輪に付加する駆動トルクを増加させ、該駆動トルクの最終値を、前記駆動輪を前記特定方向に回転させる正の値とする。
【0012】
本発明の更に他の車両においては、さらに、前記車両制御装置は、前記駆動トルクを制御する駆動トルク制御手段と、前記車体の傾斜角を保持するトルク値を前記駆動トルク制御手段に指令する第1駆動トルク指令手段と、前記車体を特定方向へ傾斜させるようなトルク値を前記駆動トルク制御手段に指令する第2駆動トルク指令手段と、前記車体の姿勢制御の停止からの経過時間を取得する時間取得手段と、前記駆動輪に駆動トルクを付加するタイムスケジュールに関するパラメータを決定するパラメータ決定手段とを備え、前記第1駆動トルク指令手段からの指令値を前記駆動トルク制御手段が前記所定時間受信しないと、前記第2駆動トルク指令手段は、前記パラメータと前記経過時間とによってトルク値を決定して前記駆動トルク制御手段に指令する。
【0013】
本発明の更に他の車両においては、さらに、前記パラメータは前記駆動輪に付加する駆動トルクの初期値、付加時間及び増加率である。
【0014】
本発明の更に他の車両においては、さらに、前記パラメータは前記車体の姿勢制御の実行時に決定される。
【0015】
本発明の更に他の車両においては、さらに、前記車体の姿勢制御の停止後に前記駆動トルク制御手段に電力を供給する蓄電手段を更に有する。
【0016】
本発明の更に他の車両においては、さらに、前記車両制御装置は、起動直後に前記蓄電手段に電力を供給し、停止直前に前記蓄電手段から電力を回収する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の構成によれば、緊急停止時を含む姿勢制御の停止時に、確実に車体を特定方向に傾斜させることができ、小型で軽量で安価な倒立型の車両を提供することができる。
【0018】
請求項2の構成によれば、センサの計測値が不要であり、センサの状態に関わらず、姿勢制御の停止後の安全性と快適性を保障することができる。
【0019】
請求項3の構成によれば、車体が傾斜する勢いを制限し、接地時の衝撃による快適性の低下を防ぐことができる。
【0020】
請求項4及び5の構成によれば、車体をより確実に特定方向に傾斜させることができる。
【0021】
請求項6の構成によれば、車体の傾斜角が変化する最中に姿勢制御を停止した場合でも、安全性や快適性を保障することができる。
【0022】
請求項7及び8の構成によれば、電源の異常時や枯渇時においても、確実に車体を前方に傾斜させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態における車両の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態における車両システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態における車両の電源系システムの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態における車両の電力供給システムのリレーの制御に対応した状態を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における主制御ECUの走行及び姿勢制御処理の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態における駆動トルク指令値の変化を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態における駆動輪制御ECUの駆動輪制御処理の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
図1は本発明の実施の形態における車両の構成を示す概略図、図2は本発明の実施の形態における車両システムの構成を示すブロック図、図3は本発明の実施の形態における車両の電源系システムの構成を示すブロック図、図4は本発明の実施の形態における車両の電力供給システムのリレーの制御に対応した状態を示す図である。
【0026】
図1において、10は、本実施の形態における車両であり、車体の本体部11、駆動輪12、支持部13及び乗員15が搭乗する搭乗部14を有し、前記車両10は、車体を前後に傾斜させることができるようになっている。そして、倒立振り子の姿勢制御と同様に車体の姿勢を制御する。図1に示される例において、車両10は右方向に前進し、左方向に後退することができる。
【0027】
前記駆動輪12は、車体の一部である支持部13に対して回転可能に支持され、駆動アクチュエータとしての駆動モータ52によって駆動される。なお、駆動輪12の軸は図1に示す平面に垂直な方向に存在し、駆動輪12はその軸を中心に回転する。また、前記駆動輪12は、単数であっても複数であってもよいが、複数である場合、同軸上に並列に配設される。本実施の形態においては、駆動輪12が2つであるものとして説明する。この場合、各駆動輪12は個別の駆動モータ52によって独立して駆動される。なお、駆動アクチュエータとしては、例えば、油圧モータ、内燃機関等を使用することもできるが、ここでは、電気モータである駆動モータ52を使用するものとして説明する。
【0028】
また、車体の一部である本体部11は、支持部13によって下方から支持され、駆動輪12の上方に位置する。そして、本体部11には搭乗部14が取り付けられている。なお、本実施の形態においては、説明の都合上、乗員15が搭乗部14に搭乗している例について説明するが、搭乗部14には必ずしも乗員15が搭乗している必要はなく、例えば、車両10がリモートコントロールによって操縦される場合には、搭乗部14に乗員15が搭乗していなくてもよいし、乗員15に代えて、貨物が積載されていてもよい。前記搭乗部14は、乗用車、バス等の自動車に使用されるシートと同様のものであり、足置き部、座面部、背もたれ部及びヘッドレストを備える。
【0029】
前記搭乗部14の脇(わき)には、目標走行状態取得装置としてのジョイスティック31を備える入力装置30が配設されている。乗員15は、操縦装置であるジョイスティック31を操作することによって、車両10を操縦する、すなわち、車両10の加速、減速、旋回、その場回転、停止、制動等の走行指令を入力するようになっている。なお、乗員15が操作して走行指令を入力することができる装置であれば、ジョイスティック31に代えて他の装置、例えば、ペダル、ハンドル、ジョグダイヤル、タッチパネル、押しボタン等の装置を目標走行状態取得装置として使用することもできる。
【0030】
なお、車両10がリモートコントロールによって操縦される場合には、前記ジョイスティック31に代えて、コントローラからの走行指令を有線又は無線で受信する受信装置を目標走行状態取得装置として使用することができる。また、車両10があらかじめ決められた走行指令データに従って自動走行する場合には、前記ジョイスティック31に代えて、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶媒体に記憶された走行指令データを読み取るデータ読取り装置を目標走行状態取得装置として使用することができる。
【0031】
さらに、前記搭乗部14の足置き部には、車体固定式の姿勢制限手段としてのストッパ16が取り付けられている。なお、該ストッパ16は、足置き部と別個のものであってもよいが、一体的に形成されていることが望ましい。さらに、前記ストッパ16は、乗降時のみ突出して車体姿勢を保持する装置であってもよい。そして、倒立制御を停止した時には、前記ストッパ16の少なくとも一部、例えば、前端部が路面に接地することによって車体の姿勢角度を制限し、車体が所定角度以上に傾斜することを防止する。
【0032】
降車時における車体の傾斜方向、すなわち、車両10を停車させて乗員15が降車する際に車体を傾斜させる方向である降車方向は、前方又は後方のいずれであってもよいが、本実施の形態における車両10では、前記降車方向が前方であるものとして説明する。そして、降車時に倒立制御を停止すると、車体が前方に傾斜してストッパ16の前端部が路面に接地するので、車体の姿勢が安定し、乗員15は安全に降車することができる。
【0033】
また、車両システムは、図2に示されるように、車両制御装置20を有し、該車両制御装置20は主制御ECU21及び駆動輪制御ECU22を備える。該主制御ECU21及び駆動輪制御ECU22は、CPU、MPU等の演算手段、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶手段、入出力インターフェイス等を備え、車両10の各部の動作を制御するコンピュータシステムであり、例えば、本体部11に配設されるが、支持部13や搭乗部14に配設されていてもよい。また、前記主制御ECU21及び駆動輪制御ECU22は、それぞれ、別個に構成されていてもよいし、一体に構成されていてもよい。
【0034】
そして、主制御ECU21は、駆動輪制御ECU22、駆動輪センサ51及び駆動モータ52とともに、駆動輪12の動作を制御する駆動輪制御システム50の一部として機能する。前記駆動輪センサ51は、レゾルバ、エンコーダ等から成り、駆動輪回転状態計測装置として機能し、駆動輪12の回転状態を示す駆動輪回転角及び/又は回転角速度を検出し、主制御ECU21に送信する。また、該主制御ECU21は、駆動トルク指令値を駆動輪制御ECU22に送信し、該駆動輪制御ECU22は、図3に示されるような駆動モータ動作回路53の動作を制御して、受信した駆動トルク指令値に相当する入力電圧を駆動モータ52に供給させる。そして、該駆動モータ52は、入力電圧に従って駆動輪12に駆動トルクを付与し、これにより、駆動アクチュエータとして機能する。
【0035】
また、主制御ECU21は、駆動輪制御ECU22、車体傾斜センサ41及び駆動モータ52とともに、車体の姿勢を制御する車体制御システム40の一部として機能する。前記車体傾斜センサ41は、加速度センサ、ジャイロセンサ等から成り、車体傾斜状態計測装置として機能し、車体の傾斜状態を示す車体傾斜角及び/又は傾斜角速度を検出し、主制御ECU21に送信する。そして、該主制御ECU21は、駆動トルク指令値を駆動輪制御ECU22に送信する。
【0036】
さらに、該駆動輪制御ECU22は、駆動モータ52に電力を供給するための電力供給システム60を制御する。該電力供給システム60は、図3に示されるように、バッテリから成る主電源62、キャパシタから成る蓄電手段63、コンバータを備える昇圧手段64、並びに、電力供給システム60内の電力回路を切り替える充電リレー61a、回収リレー61b及び付加制御リレー61cを備える。なお、前記充電リレー61a、回収リレー61b及び付加制御リレー61cを統合的に説明する場合には、リレー61として説明する。また、該リレー61の各々は、駆動輪制御ECU22からの動作信号受信時にはH側、未受信時にはL側に切り替わるものとする。
【0037】
そして、駆動輪制御ECU22は、充電リレー61a、回収リレー61b及び付加制御リレー61cを切り替えることにより、各制御の目的に応じた電力供給を実現する。具体的には、図4に示されるように、主電源62から蓄電手段63に充電する充電時、倒立制御を行うために主電源62からの電力を駆動モータ52に供給する倒立制御時、倒立制御の停止直後に駆動トルクを付加して車体を特定方向としての前方に傾斜させるために蓄電手段63からの電力を駆動モータ52に供給するトルク付加制御時、及び、トルク付加制御の後に蓄電手段63に蓄電されている電力を昇圧手段64を介して主電源62に回収する回収時の制御状態に応じて、充電リレー61a、回収リレー61b及び付加制御リレー61cを切り替える。
【0038】
さらに、主制御ECU21には、入力装置30のジョイスティック31から走行指令が入力される。そして、前記主制御ECU21は、駆動トルク指令値を駆動輪制御ECU22に送信する。
【0039】
なお、電力供給システム60の回路構成は、必ずしも図3に示されるようなものである必要はなく、同様の電力供給切替が可能であれば、他の回路構成であってもよい。
【0040】
また、本実施の形態においては、電力供給システム60のリレー61を駆動輪制御ECU22によって制御しているが、電源供給システム60が電力供給制御ECUを備え、該電力供給制御ECUが、駆動輪制御ECU22から送信された指令に基づいて、その指令を遂行するのに必要な状態になるようにリレー61を制御してもよい。
【0041】
なお、各センサは、複数の状態量を取得するものであってもよい。例えば、車体傾斜センサ41として加速度センサとジャイロセンサとを併用し、両者の計測値から車体傾斜角と車体傾斜角速度とを決定してもよい。
【0042】
また、車両制御装置20は、機能の観点から、駆動トルクを制御する駆動トルク制御手段と、車体の姿勢制御に適したトルク値を駆動トルク制御手段に指令する第1駆動トルク指令手段と、車体の特定方向への傾斜に適したトルク値を駆動トルク制御手段に指令する第2駆動トルク指令手段と、車体の姿勢制御の停止からの経過時間を取得する時間取得手段と、駆動輪12に駆動トルクを付加するタイムスケジュールに関するパラメータを決定するパラメータ決定手段とを備える。
【0043】
次に、前記構成の車両10の動作について説明する。まず、主制御ECU21の走行及び姿勢制御処理の動作について説明する。
【0044】
図5は本発明の実施の形態における主制御ECUの走行及び姿勢制御処理の動作を示すフローチャートである。
【0045】
本実施の形態においては、状態量やパラメータを次のような記号によって表す。
θW :駆動輪回転角〔rad〕
θ1 :車体傾斜角(鉛直軸基準)〔rad〕
τW :駆動トルク(2つの駆動輪の合計)〔Nm〕
g:重力加速度〔m/s2
W :駆動輪接地半径〔m〕
1 :車体慣性モーメント〔kgm2
1 :車体質量(乗員を含む)〔kg〕
走行及び姿勢制御処理において、主制御ECU21は、まず、蓄電手段63への充電が完了するまで待機する(ステップS1)。具体的には、駆動輪制御ECU22からの充電完了信号を受信するまで待機する。

【0046】
続いて、主制御ECU21は、乗員15の操縦操作量を取得する(ステップS3)。具体的には、ジョイスティック31の操作量を取得する。そして、主制御ECU21は、駆動トルクτW の指令値を決定する(ステップS4)。具体的には、ジョイスティック31の操作量に対応した走行目標と各センサから取得した状態量に基づいて、倒立姿勢を保ちつつ走行目標を達成できるような駆動トルクτW の指令値を決定する。
【0047】
続いて、主制御ECU21は、停止時駆動トルクパラメータを決定する(ステップS5)。この場合、主制御ECU21は、第1駆動トルク指令手段として機能し、各状態量から、停止時駆動トルクパラメータとしての駆動トルク初期値、駆動トルク付加時間及び駆動トルク増加率を決定する。まず、駆動トルク初期値を下記の式によって取得する。
【0048】
【数1】

【0049】
また、駆動トルク付加時間を下記の式によって取得する。
【0050】
【数2】

【0051】
さらに、駆動トルク増加率を下記の式によって取得する。
【0052】
【数3】

【0053】
ここで、前記車体傾斜角残差は次のように与えられる。
【0054】
【数4】

【0055】
θ1,shは車体傾斜角閾(しきい)値で、δ<θ1,sh<θ1,Max である。なお、θ1,Max は最大車体傾斜角であり、ストッパ16が接地する車体傾斜角、すなわち、実際の接地角である。
【0056】
また、前記実質車体傾斜角は次のように決定される。
【0057】
【数5】

【0058】
なお、前記実質車体傾斜角を決定する式における右辺第2項の正負の符号は、すなわち、γD αD0の正負は、車両10が前進しているときには正、車両10が後進しているときには負とする。また、制動トルクの予測値には、以下の仮定(1)及び(2)の下で所定の値を予め与えておく。
(1)非常停止時に駆動輪12に摩擦ブレーキが作用する場合、性能予想値又は制御指令値であるブレーキトルクの値を与える。
(2)非常停止時に駆動輪12に摩擦ブレーキが作用しない場合、駆動モータ52の逆起電力や駆動輪12の転がり抵抗などを考慮して制動トルクに相当する値を与える。
【0059】
ちなみに、駆動トルクの最終値は次の式で与えられる。
【0060】
【数6】

【0061】
なお、駆動トルクの最終値は、必ず負の値になる。
【0062】
このように、本実施の形態においては、倒立制御停止後の付加トルクに関するパラメータである停止時駆動トルクパラメータを決定する。つまり、倒立制御実行時に、倒立制御停止後のパラメータをあらかじめ決定しておく。具体的には、主制御ECU21が倒立制御停止後のパラメータを決定しておく。このように、複雑な計算を主制御ECU21に委ねることで、駆動輪制御ECU22の負担の増加による駆動トルク制御への悪影響、あるいは、高性能で高価な駆動輪制御ECU22を必要とすることを回避できる。そして、決定した値を倒立制御用の駆動トルク指令値とともに、駆動輪制御ECU22へ逐次送信する。そのため、車体傾斜センサ41や主制御ECU21の故障時においても、その後の駆動トルク付加量を適切な値に設定できる。
【0063】
また、倒立制御停止直前の車体傾斜状態に応じて、倒立制御停止時駆動トルクパラメータを決定する。なお、パラメータは、初期値、付加時間及び増加率の3種、すなわち、駆動トルク初期値、駆動トルク付加時間及び駆動トルク増加率の3種とする。
【0064】
まず、車体傾斜角に応じて、最初に付加する駆動トルクの値である駆動トルク初期値を決定する。なお、車体の後方傾斜時には、駆動トルク初期値を負の値とし、車体を前方傾斜へ移行させる。一方、車体の前方傾斜時には、駆動トルク初期値を正の値とし、車体の前方傾斜速度の増加を抑える。
【0065】
また、ストッパ16が路面に接触するまでの傾斜角の残余に関係する車体傾斜角残差に応じて、倒立制御停止後に駆動トルクを付加する時間である駆動トルク付加時間を決定する。なお、車体が後方に傾いているときには、駆動トルク付加時間を大きくする。一方、車体が前方に傾いているときには、駆動トルク付加時間を小さくする。
【0066】
さらに、付加する駆動トルクの最終値が正の値になるように、付加する駆動トルクの時間変化率である駆動トルク増加率を決定する。そのため、車体傾斜状態に応じた適切な駆動トルク付加により、倒立制御停止時の安全性と快適性を保障できる。
【0067】
なお、車体傾斜角が所定の閾値、すなわち、θ1,shよりも大きい場合には、駆動トルクを付加しない。すなわち、ストッパ16が接地する傾斜角である最大車体傾斜角よりも小さい値である車体傾斜角閾値に対して、車体傾斜角が同閾値以上であるときは、駆動トルク付加時間を零とする。これにより、無駄な駆動トルクの付加、及び、それに伴うエネルギの浪費を回避する。
【0068】
また、パラメータの決定時に必要な車体傾斜角として、その他の影響を加味した実質車体傾斜角の値を用いる。この場合、車体傾斜角速度に基づいて、実質車体傾斜角の値を決定する。つまり、車体の前方への傾斜速度が大きいほど、実質車体傾斜角の値を増加させる。また、車体の後方への傾斜速度が大きいほど、実質車体傾斜角の値を減少させる。そのため、車体の傾斜角が変化する最中に倒立制御を停止した場合でも、安全性や快適性を保障できる。
【0069】
さらに、倒立制御停止時における車両10の減速に伴う慣性力の影響を考慮する。つまり、予測される車両10の減速度と減速時間に基づいて、前方傾斜確率を決定する。また、車両速度又は駆動輪回転角速度に基づいて、減速時間を決定する。この場合、車両速度が高いほど、車両10が停止するまでの時間が長く、車体傾斜に大きな影響を及ぼすと判断する。このように、緊急停止後の慣性力を考慮することで、より高精度に傾斜方向を予測できる。
【0070】
なお、本実施の形態においては、各種慣性の影響を考慮して駆動トルクパラメータを決定しているが、さらに、他の影響を考慮してもよい。例えば、搭乗部14の重心位置を取得する重心位置取得手段を備え、その取得値に応じて駆動トルクの付加量を決定してもよい。また、路面の形状を取得する路面形状取得手段を備え、その取得値、例えば、路面勾(こう)配の値に応じて駆動トルクパラメータを修正してもよい。
【0071】
また、本実施の形態においては、駆動トルクパラメータとして初期値、付加時間及び増加率を与えることで、その後の駆動トルクの計算に要する処理量を最小としているが、他のパラメータで駆動トルク付加のタイムスケジュールを定義してもよい。例えば、いずれかの値に代えて最終値を与えてもよい。また、本実施の形態では3つのパラメータ値を車体傾斜状態に応じて変化させているが、その一部を定数としてもよい。このとき、駆動輪制御ECU22側でそれらの定数が定義されてもよい。
【0072】
さらに、本実施の形態においては、非線形の関数によって実質車体傾斜角を決定しているが、線形近似した簡単な関数によって決定してもよい。また、非線形の関数をマップとして具備し、それを用いて決定してもよい。
【0073】
続いて、主制御ECU21は、駆動輪制御ECU22に各データを送信する(ステップS6)。具体的には、駆動トルクの指令値と停止時駆動トルクパラメータとを駆動輪制御ECU22に送信する。
【0074】
続いて、主制御ECU21は、倒立制御不可であるか否か、すなわち、倒立制御の継続が不可能であるか否かを判断する(ステップS7)。具体的には、車体傾斜センサ41等の制御に必要な要素の状態を診断し、異常状態を検出する。そして、倒立制御不可でない場合、すなわち、倒立制御の継続が可能である場合、主制御ECU21は、センサから各状態量を取得し、それ以降の動作を所定の時間間隔(例えば、100〔μm〕毎)で繰り返し実行する。
【0075】
また、倒立制御不可である場合、すなわち、倒立制御の継続が不可能である場合、主制御ECU21は停止し(ステップS8)、走行及び姿勢制御処理が終了する。この場合、主制御ECU21はすべての処理動作を停止する。そのため、倒立制御、及び、駆動輪制御ECU22へのデータ送信も停止する。すると、後述のように、駆動輪制御ECU22は、駆動トルクの指令値を取得することができず、トルク付加制御に移行する。
【0076】
次に、駆動輪制御ECU22の駆動輪制御処理の動作について説明する。
【0077】
図6は本発明の実施の形態における駆動トルク指令値の変化を示す図、図7は本発明の実施の形態における駆動輪制御ECUの駆動輪制御処理の動作を示すフローチャートである。
【0078】
駆動輪制御処理において、駆動輪制御ECU22は、まず、蓄電手段63、すなわち、キャパシタを充電する(ステップS11)。具体的には、充電リレー61aに動作信号を送信し、蓄電手段63を充電する。そして、所定の蓄電量又は電圧に達するまで充電した後、動作信号を停止する。
【0079】
続いて、駆動輪制御ECU22は、トルク指令を取得したか否かを判断する(ステップS12)。つまり、主制御ECU21から送信される駆動トルクの指令値の取得に成功したか否かを判断する。なお、所定時間、駆動トルクの指令値を取得できなかった場合、取得失敗と判断する。
【0080】
そして、トルク指令を取得した場合、すなわち、主制御ECU21から送信される駆動トルクの指令値の取得に成功した場合、駆動輪制御ECU22は、駆動トルクを制御する(ステップS13)。つまり、取得した駆動トルクの指令値を実現するように、駆動モータ動作回路53の電圧を制御する。
【0081】
さらに、駆動輪制御ECU22は、パラメータを取得する(ステップS14)。つまり、主制御ECU21から駆動トルクの指令値と共に送信される停止時駆動トルクパラメータを取得する。そして、再度トルク指令を取得したか否かを判断し、それ以降の動作を所定の時間間隔(例えば、100〔μm〕毎)で繰り返し実行する。
【0082】
また、トルク指令を取得したか否かを判断してトルク指令を取得しなかった場合、すなわち、主制御ECU21から送信される駆動トルクの指令値の取得に失敗した場合、駆動輪制御ECU22は、トルク付加制御に移行する。そのため、主制御ECU21からの停止信号を受信するシステムを用いる場合には対応できないケースである主制御ECU21に異常が発生したケースや、主制御ECU21と駆動輪制御ECU22との間の通信異常が発生したケースにも、確実に対応できる。したがって、幅広いフェイル条件について、その異常状態を簡単に、かつ、確実に検知することができる。
【0083】
そして、トルク付加制御に移行すると、駆動輪制御ECU22は、電源をキャパシタに変更する(ステップS15)。具体的には、付加制御リレー61cに動作信号を送信し、電力供給源をキャパシタ、すなわち、蓄電手段63に切り替える。
【0084】
本実施の形態においては、倒立制御停止後の付加トルクに必要な電力を主電源62とは別の蓄電手段63によって賄うようになっている。このように、倒立制御停止後は、倒立制御実行時とは別の電源を使用することによって、バッテリから成る主電源62の異常時や枯渇時においても、確実に車体を前方に傾斜させることができる。また、蓄電手段63として、低容量で高出力を発生可能な特徴を持つキャパシタを使用するので、大きな出力が必要な場合でも、確実に車体を前方に傾斜させることができる。そして、倒立制御の停止前に主電源62であるバッテリを用いてキャパシタを充電するので、蓄電手段63の充電管理が不要であり、安全で使い勝手のよい車両10を提供できる。また、必要な駆動トルク付加の終了後には、キャパシタの電力を回収する。なお、回収時に昇圧手段64を動作させることで、エネルギの回収率を高める。これにより、エネルギ消費量を気にすることなく、非常時に備えた十分な電力量を用意できる。また、駆動トルクの付加に伴う回生エネルギを主電源62であるバッテリに回収できる。
【0085】
なお、本実施の形態においては、切替接点によるリレー61を用いているが、他のリレーを用いてもよい。例えば、停止制御リレーとして、オーバーラップ機構を備えるMBB(Make Before Brake)接点によるリレーを用いることで、電源切替時に生じる一時的な電力遮断を回避してもよい。また、コンデンサ等を用いて、瞬間的な電圧低下を低減させてもよい。
【0086】
また、本実施の形態においては、倒立制御停止の原因に関わらず、必ず蓄電手段63のエネルギを使用しているが、主電源62であるバッテリの異常や枯渇時以外の場合には、バッテリの電力を用いてもよい。これにより、昇圧時のエネルギ損失量を低減できる。
【0087】
さらに、本実施の形態においては、蓄電手段63であるキャパシタに残ったエネルギを回収しているが、廃棄してもよい。これにより、昇圧手段64や回収リレー61bが不要になり、より簡素で安価な電力供給システム60を実現できる。
【0088】
続いて、駆動輪制御ECU22は、経過時間を取得する(ステップS16)。具体的には、倒立制御停止又はトルク指令取得失敗からの経過時間を取得する。そして、駆動輪制御ECU22は、駆動トルク指令値を決定する(ステップS17)。この場合、駆動輪制御ECU22は、第2駆動トルク指令手段として機能し、経過時間及び停止時駆動トルクパラメータから、下記の式によって停止時駆動トルク指令値を決定する。
【0089】
【数7】

【0090】
上記の式によって決定された停止時駆動トルク指令値は、図6に示されるように、経過時間tに応じて変化する。
【0091】
このように、本実施の形態においては、倒立制御停止直後からの所定時間、駆動トルクを付加して、車体を適切に傾斜させる。具体的には、経過時間のみに応じて、付加する駆動トルクの値を変化させる。これにより、車体傾斜センサ41等のセンサの計測値が不要であり、センサの状態に関わらず、倒立制御停止後の安全性と快適性を保障できる。
【0092】
また、倒立制御停止直前に取得した停止時駆動トルクパラメータに基づいて、駆動トルクの与え方を決定する。つまり、倒立制御停止直前の車体傾斜状態等に応じて決定されたパラメータ値を用いる。このように、停止直前の状態を把握することで、より適切な駆動トルクの付加を実現できる。
【0093】
さらに、駆動トルク付加量を時間の線形関数として与える。このように、必要なトルク値の変化を実現できる最も簡単な関数である線形関数を用いることで、駆動輪制御ECU22の演算負荷を最小にすることができるのとともに、駆動モータ52の電力負荷を滑らかにして蓄電手段63の電圧変動下における駆動トルク制御を容易にすることができる。
【0094】
さらに、駆動輪制御ECU22が、倒立制御停止時の駆動トルク指令値を決定する。つまり、駆動輪制御ECU22自身が車体の姿勢制御に必要な駆動トルクを算出し、その値に応じて駆動トルクを制御する。そのため、車両システムの他の要素の状態に関わらず、駆動トルクの制御を実行できる。このように、従来の倒立制御に不可欠な駆動輪制御システム50をフェイルセーフ手段としても用いることで、フェイルセーフのために新たなECUやアクチュエータを追加することなく、倒立制御停止時の安全性を保障できる。
【0095】
なお、本実施の形態においては、タイムスケジュール型のフィードフォワード制御として、駆動トルクを決定しているが、一部の状態量を取得し、考慮したフィードバック制御によって駆動トルクを決定してもよい。例えば、駆動トルク制御にも用いる駆動輪回転状態の情報を逐次取得し、その値に応じて駆動トルクを決定してもよい。
【0096】
また、本実施の形態においては、単純な線形関数によって駆動トルク指令値を決定しているが、より複雑な関数を用いてもよい。この場合、その関数を定義するのに最低限必要なパラメータを倒立制御実行時に主制御ECU21から取得する。
【0097】
続いて、駆動輪制御ECU22は、駆動トルクを制御する(ステップS18)。つまり、決定した駆動トルク指令値を実現するように駆動モータ動作回路53の電圧を制御する。続いて、駆動輪制御ECU22は、制御終了であるか否かを判断する(ステップS19)。この場合、停止時駆動トルクパラメータによって決定される時間が経過すると、制御を終了する。つまり、経過時間がパラメータの1つである駆動トルク付加時間以上であるとき、制御終了とみなす。
【0098】
そして、制御終了でない場合、駆動輪制御ECU22は、再度経過時間を取得し、それ以降の動作を所定の時間間隔(例えば、100〔μm〕毎)で繰り返し実行する。
【0099】
また、制御終了である場合、駆動輪制御ECU22は、蓄電手段63であるキャパシタの電力を回収し(ステップS20)、駆動輪制御処理が終了する。この場合、駆動輪制御ECU22は、回収リレー61bに動作信号を送信し、キャパシタの電力を主電源62であるバッテリに回収する。なお、付加制御リレー61cへの動作信号を停止した後、キャパシタの電圧が所定の閾値を下回るまで、回収リレー61bに動作信号を送信し続ける。
【0100】
なお、本実施の形態においては、倒立制御停止に至った原因に関わらず上述の制御を実行するが、特定の原因による停止時に限って本制御を実行してもよい。例えば、主制御ECU21と駆動輪制御ECU22との間の通信異常時に限って本制御を実行してもよい。
【0101】
また、本実施の形態においては、倒立制御の継続が不可能になった場合に上述の制御を実行するが、倒立制御の継続が不要になった場合にも同様の制御を実行してもよい。例えば、搭乗部14に主電源投入切替手段を備え、乗員15が急な降車を希望した場合に、前記主電源投入切替手段によって主電源62を遮断することにより、乗員15の降車に適した車体姿勢に移行するようにしてもよい。これにより、降車を速やかに行うことが可能になり、利便性が向上する。
【0102】
このように、本実施の形態においては、倒立制御停止直後から所定時間、駆動トルクを付加して、車体を特定方向に傾斜させるようになっている。具体的には、倒立制御停止直後からの時間に応じて、駆動輪12に付加する駆動トルクの大きさを決定する。また、駆動輪12を車体の特定方向(本実施の形態においては、前方)と同方向に回転させるような駆動トルクの値を正とするとき、時間経過と共に付加する駆動トルクを徐々に増加させる。そして、付加する駆動トルクの最終値を正の値とする。
【0103】
また、倒立制御停止直前の車体傾斜状態に応じて、駆動輪12に付加する駆動トルクのタイムスケジュールに関するパラメータを決定する。該タイムスケジュールに関するパラメータは、初期値、付加時間及び増加率、すなわち、駆動トルク初期値、駆動トルク付加時間及び駆動トルク増加率とする。なお、前記タイムスケジュールに関するパラメータは、倒立制御実行時に主制御ECU21によって決定される。
【0104】
さらに、駆動輪制御ECU22によって、駆動トルクを付加する。つまり、主制御ECU21からの駆動トルク指令値を所定時間受信しないと、駆動輪制御ECU22は自身が第2駆動トルク指令手段として機能し、付加する駆動トルクを決定する。なお、倒立制御では、主制御ECU21が第1駆動トルク指令手段として機能し、倒立制御に適したトルク値を駆動輪制御ECU22に指令する。
【0105】
さらに、倒立制御停止直後に駆動輪制御ECU22に電力を供給する蓄電手段63を備える。車両システムの起動直後に電力を蓄電手段63に供給し、正常終了直前に電力を回収する。
【0106】
これにより、小型で軽量で安価な倒立型の車両10を提供できる。緊急停止時を含む倒立制御停止時に、確実に車体を特定方向に傾斜させることができる。また、従来の倒立型車両に備わっている駆動輪制御システムを、特定方向傾斜手段に活用するので、車体固定式の片側ストッパであるストッパ16のみによって、安全な倒立型の車両10を実現できる。
【0107】
なお、本実施の形態においては、前方に車体を傾けた方が利便性や快適性が高いという前提で、特定方向を前方として、前方への傾斜を促す制御を実行しているが、特定方向を後方として、後方に傾けてもよい。例えば、車両10の前方にハンドルがあり、後方から搭乗する立ち乗り型の倒立型車両の場合、必ず後方に傾斜させることで、乗降時の利便性や快適性を高めることができる場合がある。
【0108】
また、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、倒立振り子の姿勢制御を利用した車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0110】
10 車両
12 駆動輪
20 車両制御装置
21 主制御ECU
22 駆動輪制御ECU
63 蓄電手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に車体に取り付けられた駆動輪と、
該駆動輪に与える駆動トルクを制御して前記車体の姿勢を制御する車両制御装置とを有し、
該車両制御装置は、前記車体の姿勢制御の停止直後から所定時間、前記駆動輪に駆動トルクを付加し、前記車体を特定方向に傾斜させることを特徴とする車両。
【請求項2】
前記車両制御装置は、前記車体の姿勢制御の停止直後からの時間に応じて、前記駆動輪に付加する駆動トルクの大きさを決定する請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記車両制御装置は、前記時間の経過とともに前記駆動輪に付加する駆動トルクを増加させ、該駆動トルクの最終値を、前記駆動輪を前記特定方向に回転させる正の値とする請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記車両制御装置は、
前記駆動トルクを制御する駆動トルク制御手段と、
前記車体の傾斜角を保持するトルク値を前記駆動トルク制御手段に指令する第1駆動トルク指令手段と、
前記車体を特定方向へ傾斜させるようなトルク値を前記駆動トルク制御手段に指令する第2駆動トルク指令手段と、
前記車体の姿勢制御の停止からの経過時間を取得する時間取得手段と、
前記駆動輪に駆動トルクを付加するタイムスケジュールに関するパラメータを決定するパラメータ決定手段とを備え、
前記第1駆動トルク指令手段からの指令値を前記駆動トルク制御手段が前記所定時間受信しないと、前記第2駆動トルク指令手段は、前記パラメータと前記経過時間とによってトルク値を決定して前記駆動トルク制御手段に指令する請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両。
【請求項5】
前記パラメータは前記駆動輪に付加する駆動トルクの初期値、付加時間及び増加率である請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記パラメータは前記車体の姿勢制御の実行時に決定される請求項4に記載の車両。
【請求項7】
前記車体の姿勢制御の停止後に前記駆動トルク制御手段に電力を供給する蓄電手段を更に有する請求項4に記載の車両。
【請求項8】
前記車両制御装置は、起動直後に前記蓄電手段に電力を供給し、停止直前に前記蓄電手段から電力を回収する請求項7に記載の車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−234827(P2010−234827A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81953(P2009−81953)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】