説明

車両

【課題】外部充電が可能な車両において、外部電源から供給される電力の蓄電装置への供給と遮断とを切替えるための充電リレーの異常を検出する。
【解決手段】車両は、外部充電が可能であり、蓄電装置111と、車両100の駆動力を発生させるためのPCU120と、蓄電装置111から駆動装置120への電力の供給と遮断とを切替えるためのシステムメインリレーSMRと、充電装置200と、充電装置200から蓄電装置111への電力の供給と遮断とを切替える充電リレーCHRと、HV−ECU300とを備える。HV−ECU300は、充電装置200によって蓄電装置111の充電を行なう場合に、充電装置200を起動する前に、充電リレーCHRの接点が閉じられた状態に固着しているか否かの診断を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関し、より特定的には、車両外部の外部電源からの電力を用いて充電可能な車両の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に配慮した車両として、蓄電装置(たとえば二次電池やキャパシタなど)を搭載し、蓄電装置に蓄えられた電力から生じる駆動力を用いて走行する車両が注目されている。このような車両には、たとえば電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池車などが含まれる。そして、これらの車両に搭載される蓄電装置を発電効率の高い商用電源により充電する技術が提案されている。
【0003】
ハイブリッド車においても、電気自動車と同様に、車両外部の電源(以下、単に「外部電源」とも称する。)から車載の蓄電装置の充電(以下、単に「外部充電」とも称する。)が可能な車両が知られている。たとえば、家屋に設けられた電源コンセントと車両に設けられた充電口とを充電ケーブルで接続することにより、一般家庭の電源から蓄電装置の充電が可能ないわゆる「プラグイン・ハイブリッド車」が知られている。これにより、ハイブリッド自動車の燃料消費効率を高めることが期待できる。
【0004】
特開2006−081340号公報(特許文献1)は、バッテリからの電力を用いて走行する車両における電源回路の制御装置において、バッテリ電圧、バッテリ電流およびインバータ電圧の少なくともいずれかに基づいて、バッテリと負荷との間の電力の供給と遮断とを切替えるためのリレー(SMR)の、通電側および非通電側の固着を区別して異常を判定する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−081340号公報
【特許文献2】特開2009−189153号公報
【特許文献3】特開2008−154439号公報
【特許文献4】特開2000−134707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プラグイン・ハイブリッド車のように、外部充電が可能な車両においては、外部電源から供給される電力の、バッテリなどの蓄電装置への供給と遮断とを切替えるための充電リレーが備えられる場合がある。
【0007】
このような車両においては、充電リレーの接点が閉じられた状態で固着してしまうと、車両の走行時にも充電経路に電圧が印加された状態となってしまうので、事故等によって車両が破損した際に充電部分が露出してしまうと周囲に影響をおよぼすおそれがある。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、車両外部の外部電源からの電力を用いて充電可能な車両において、外部電源から供給される電力の蓄電装置への供給と遮断とを切替えるための充電リレーの異常検出を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による車両は、外部電源からの電力を用いて充電が可能な車両であって、充電が可能な蓄電装置と、第1の開閉器および第2の開閉器と、充電装置と、制御装置とを備える。駆動装置は、蓄電装置からの電力を用いて車両の駆動力を発生させる。第1の開閉器は、蓄電装置と駆動装置との間を結ぶ第1の電力線に介挿され、蓄電装置から駆動装置への電力の供給と遮断とを切替える。充電装置は、第2の電力線によって第1の電力線の駆動装置と第1の開閉器との間に接続され、外部電源からの交流電力を変換して蓄電装置に充電電力を供給する。第2の開閉器は、第2の電力線に介挿され、充電装置から蓄電装置への電力の供給と遮断とを切替える。そして、制御装置は、充電装置および第2の開閉器を制御し、充電装置によって蓄電装置の充電を行なう場合に、充電装置を起動する前に、第2の開閉器の接点が閉じられた状態に固着しているか否かの診断を行なう。
【0010】
好ましくは、車両は、第2の電力線の電圧を検出するための第1の電圧検出器をさらに備える。そして、制御装置は、第1の電圧検出器によって検出された検出電圧がしきい値より大きい場合は、診断を非実施として、第2の開閉器を閉成するとともに、充電装置を起動して蓄電装置の充電を開始する。
【0011】
好ましくは、第2の開閉器は2つのリレーを含む。そして、制御装置は、診断中に2つのリレーの少なくとも1つが固着していると判定した場合は、診断を中断するとともに、蓄電装置の充電を開始する。
【0012】
好ましくは、車両は、蓄電装置の電圧を検出するための第2の電圧検出器をさらに備える。そして、制御装置は、充電装置によって蓄電装置を充電している場合に、第1の電圧検出器の検出電圧と第2の電圧検出器の検出電圧との差の絶対値が基準値より大きいときは、第1の電圧検出器の出力が異常であると判定する。
【0013】
好ましくは、制御装置は、車両を始動して予め定められた基準時間が経過した後に、第1の電圧検出器の検出電圧に基づいて、第2の開閉器の接点が閉じられた状態に固着しているか否か、および第1の電圧検出器の出力が異常であるか否かのうちの少なくともいずれかを判定する。
【0014】
好ましくは、制御装置は、基準時間が経過した後に、第2の開閉器を開放するように制御しているときに、第1の電圧検出器の検出電圧がしきい値より小さい場合は、第2の開閉器の固着が発生しておらず、かつ第1の電圧検出器の出力が正常であると判定する。
【0015】
好ましくは、車両は、蓄電装置の電圧を検出するための第2の電圧検出器をさらに備える。そして、制御装置は、基準時間が経過した後に、第2の開閉器を開放するように制御しているときに、第1の電圧検出器の検出電圧と第2の電圧検出器の検出電圧との差の絶対値が基準値より小さい場合は、第2の開閉器の固着が発生していると判定する。
【0016】
好ましくは、制御装置は、第2の開閉器の固着が発生していると判定した場合は、車両の走行を制限する。
【0017】
好ましくは、車両は、蓄電装置の電圧を検出するための第2の電圧検出器をさらに備える。そして、制御装置は、基準時間が経過した後に、第2の開閉器を開放するように制御しているときに、第1の電圧検出器の検出電圧がしきい値より大きくかつ第1の電圧検出器の検出電圧が第2の電圧検出器の検出電圧から基準値を差し引いた値よりも小さい場合、および第1の電圧検出器の検出電圧が第2の電圧検出器の検出電圧に基準値を加えた値よりも大きい場合のうちのいずれかの場合は、第1の電圧検出器の出力が異常であると判定する。
【0018】
好ましくは、車両は、第2の開閉器の固着が発生している場合、および第1の電圧検出器の出力が異常である場合の少なくともいずれかの場合に、車両の操作者に対して警告するための警告装置をさらに備える。
【0019】
好ましくは、車両は、第2の電力線の電圧を検出するための第1の電圧検出器をさらに備える。第2の開閉器は、互いに独立して動作可能な2つのリレーを含む。そして、制御装置は、診断において、2つのリレーのうちの一方のリレーのみを接続する制御信号を出力した場合に、第1の電圧検出器の検出電圧がしきい値よりも大きいときは、他方のリレーの接点が固着していると判定する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、車両外部の外部電源からの電力を用いて充電可能な車両において、外部電源から供給される電力の蓄電装置への供給と遮断とを切替えるための充電リレーの異常検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施の形態に従う車両の全体ブロック図である。
【図2】本実施の形態において、充電リレーに固着がなく正常である場合に、外部充電を行なうときの、システムメインリレー,充電リレーおよび検出電圧の状態を説明するためのタイムチャートである。
【図3】本実施の形態において、充電リレーのリレーCHRBが固着している場合の外部充電時のタイムチャートである。
【図4】本実施の形態において、充電リレーのリレーCHRGが固着している場合のタイムチャートである。
【図5】本実施の形態において、コンデンサC3に電荷が残っている場合のタイムチャートである。
【図6】本実施の形態において、車両の運転終了時のシステムメインリレーおよび充電リレーの動作を説明するための図である。
【図7】本実施の形態において、HV−ECUで実行される充電起動制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図8】図7で説明したフローチャートのステップS120における、充電リレーの固着検出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図9】コンデンサC3に電荷が残っている状態で車両の始動が行なわれた場合の、システムメインリレー、充電リレー、および検出電圧の状態を説明するための図である。
【図10】実施の形態2において、HV−ECUで実行される車両始動後の充電リレーの固着検出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0023】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に従う車両100の全体ブロック図である。
【0024】
図1を参照して、車両100は、電池パック110と、コンデンサC1と、電圧センサ115と、駆動装置であるPCU(Power Control Unit)120と、モータジェネレータ130,131と、動力伝達ギア140と、駆動輪150と、補機バッテリ160と、補機負荷170と、エアコン180と、警告装置190と、制御装置であるHV−ECU(Electronic Control Unit)300とを備える。
【0025】
電池パック110は、蓄電装置111と、電圧センサ112、システムメインリレーSMR(System Main Relay)と、充電リレーCHRとを含む。
【0026】
蓄電装置111は、充放電可能に構成された電力貯蔵要素である。蓄電装置111は、たとえば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池あるいは鉛蓄電池などの二次電池や、電気二重層キャパシタなどの蓄電素子を含んで構成される。
【0027】
蓄電装置111は、電力線PL1および接地線NL1を介してPCU120に接続される。そして、蓄電装置111は、車両100の駆動力を発生させるための電力をPCU120に供給する。また、蓄電装置111は、モータジェネレータ130,131で発電された電力を蓄電する。蓄電装置111の出力はたとえば200V程度である。
【0028】
システムメインリレーSMRは、リレーSMRB,SMRG,SMRPと、抵抗R1とを含む。リレーSMRB,SMRGは、蓄電装置111とPCU120とを結ぶ電力線PL1および接地線NL1にそれぞれ介挿される。また、リレーSMRPは、直列に接続された抵抗R1とともに、リレーSMRGに並列に接続される。そして、リレーSMRB,SMRG,SMRPは、HV−ECU300からの制御信号SE1によってそれぞれ独立して制御され、蓄電装置111とPCU120との間での電力の供給と遮断とを切替える。
【0029】
なお、抵抗R1は、システムメインリレーSMRを閉成する際に、コンデンサC1を充電するために急激に流れる突入電流を低減するための減流抵抗として機能する。図2で後述するように、システムメインリレーSMRを閉成する際は、まずリレーSMRBおよびSMRPが閉成される。そして、低電流によってコンデンサC1が充電された後に、リレーSMRGが閉成されるとともにリレーSMRPが開放される。
【0030】
電圧センサ112は、蓄電装置111に並列に接続される。そして、電圧センサ112は、蓄電装置111の電圧VBを検出し、その検出値をHV−ECU300へ出力する。
【0031】
充電リレーCHRは、リレーCHRB,CHRGを含む。リレーCHRB,CHRGは、電力線PL1および接地線NL1におけるシステムメインリレーSMRおよびPCU120の間と充電装置200とに接続される、電力線PL2および接地線NL2にそれぞれ介挿される。充電リレーCHRは、電池パック110の外部に設けることも可能であるが、車両100の走行時などに、電池パック110の外側の充電経路である電力線PL2および接地線NL2に、電力線PL1および接地線NL1からの電圧が印加しないようにするために、電池パック110の内部に充電リレーCHRを設けることが望ましい。
【0032】
コンデンサC1は、電池パック110とPCU120とを結ぶ電力線PL1および接地線NL1の間に接続される。コンデンサC1は、電力線PL1および接地線NL1の間の電圧変動を低減する。
【0033】
電圧センサ115は、コンデンサC1にかかる電圧VLを検出し、その検出結果をHV−ECU300へ出力する。
【0034】
PCU120は、コンバータ121と、インバータ122,123と、電圧センサ124と、DC/DCコンバータ125と、MG−ECU126と、コンデンサC2とを含む。
【0035】
コンバータ121は、電力線PL1および接地線NL1と、電力線HPLおよび接地線NL1とに接続される。コンバータ121は、MG−ECU126からの制御信号PWCにより制御され、電力線PL1および接地線NL1と、電力線HPLおよび接地線NL1との間で電圧変換を行なう。
【0036】
インバータ122,123は、電力線HPLおよび接地線NL1を用いて、コンバータ121に対して互いに並列に接続される。インバータ122,123は、MG−ECU126からの制御信号PWI1,PWI2によってそれぞれ制御され、コンバータ121から供給される直流電力を、モータジェネレータ130,131をそれぞれ駆動するための交流電力に変換する。また、インバータ122,123は、モータジェネレータ130,131により発電された交流電力を、蓄電装置111の充電が可能な直流電力に変換する。
【0037】
コンデンサC2は、電力線HPLと接地線NL1との間に接続され、電力線HPLと接地線NL1との間の電圧変動を低減する。電圧センサ124は、コンデンサC2にかかる電圧VHを検出し、その検出結果をHV−ECU300へ出力する。
【0038】
モータジェネレータ130は交流回転電機であり、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型同期電動機である。
【0039】
モータジェネレータ130の出力トルクは、減速機や動力分割機構によって構成される動力伝達ギア140を介して駆動輪150に伝達されて、車両100を走行させる。モータジェネレータ130は、車両100の回生制動動作時には、駆動輪150の回転力によって発電することができる。そして、その発電電力は、PCU120によって蓄電装置110の充電電力に変換される。
【0040】
なお、図1においては、モータジェネレータおよびインバータのペアが2つ設けられる構成が示されるが、モータジェネレータおよびインバータのペアの数はこれに限定されず、モータジェネレータおよびインバータのペアを1つまたは2つより多く設ける構成としてもよい。
【0041】
また、モータジェネレータ130の他にエンジン(図示せず)が搭載されたハイブリッド自動車では、このエンジンおよびモータジェネレータ130を協調的に動作させることによって、必要な車両駆動力が発生される。この場合、エンジンの回転による発電電力を用いて、蓄電装置110を充電することも可能である。
【0042】
すなわち、本実施の形態における車両100は、車両駆動力発生用の電動機を搭載する車両を示すものであり、エンジンおよび電動機により車両駆動力を発生するハイブリッド自動車、エンジンを搭載しない電気自動車および燃料電池自動車などを含む。
【0043】
DC/DCコンバータ125は、電力線PL1および接地線NL1に接続され、HV−ECU300からの制御信号PWDに基づいて、蓄電装置111から供給される直流電圧を降圧する。そして、DC/DCコンバータ125は、電力線PL3を介して補機バッテリ160、補機負荷170およびHV−ECU300などの車両全体の低電圧系に電力を供給する。
【0044】
補機バッテリ160は、代表的には鉛蓄電池を含んで構成される。補機バッテリ160の出力電圧は、蓄電装置111の出力電圧よりも低く、たとえば12V程度である。補機負荷170には、たとえばランプ類、ワイパー、ヒータ、オーディオなどが含まれる。
【0045】
エアコン180は、電力線PL1および接地線NL1に接続され、車両100の室内を空調する。警告装置190は、HV−ECU300から警告信号ALMを受け、異常が発生した場合などに、運転者に対して注意を促すための警告を出力する。警告装置190は、ブザーやチャイム、ボイスアラームなどの聴覚的な警告、およびランプなどの表示灯や液晶表示画面などの表示装置による視覚的な警告を含む。
【0046】
また、車両100は、車両外部からの電力によって蓄電装置111を充電するための構成として、充電装置200と、インレット210と、電圧センサ220と、コンデンサC3と、抵抗R2と、ダイオードD1とを含む。
【0047】
インレット210は、外部電源500からの交流電力を受けるために、車両100のボディに設けられる。インレット210には、充電ケーブル400の充電コネクタ410が接続される。そして、充電ケーブル400のプラグ420が、(たとえば、商用電源のような)外部電源500のコンセント510に接続されることによって、外部電源500からの交流電力が、充電ケーブル400の電線部430を介して車両100に伝達される。また、充電ケーブル400の電線部430には、外部電源500から車両100への電力の供給と遮断とを切替えるための、充電回路遮断装置(以下「CCID(Charging Circuit Interrupt Device)」とも称する。)が介挿される。
【0048】
充電装置200は、電力線ACL1,ACL2を介して、インレット210に接続される。また、充電装置200は、充電リレーCHRを介して、電力線PL2および接地線NL2によって、電力線PL1および接地線NL1に接続される。充電装置200は、PHV−ECU300からの制御信号PWEによって制御され、インレット210から供給される交流電力を、蓄電装置111の充電電力に変換する。
【0049】
コンデンサC3は、電力線PL2と接地線NL2との間に接続され、電力線PL2と接地線NL2との間の電圧変動を低減する。ダイオードD1は、電力線PL2における、コンデンサC3の接続ノードと充電リレーCHRとの間に介挿され、電力線PL1から充電装置200へ向かう方向の電流を抑制する。
【0050】
電圧センサ220は、ダイオードD1およびリレーCHRBの間の電力線PL2と、接地線NL2とに接続される。電圧センサ220は、電力線PL2と接地線NL2との間の電圧VCHGを検出し、その検出結果をHV−ECU300へ出力する。
【0051】
抵抗R2は、電力線PL2と接地線NL2との間に、電圧センサ220と並列に接続される。抵抗R2は、高インピーダンスの抵抗であり、充電リレーCHRが開放されている間に、コンデンサC3に蓄えられた電荷を放電するための放電抵抗として機能する。
【0052】
HV−ECU300は、システムメインリレーSMR、充電リレーCHRなどを制御するための制御信号を生成して出力する。また、HV−ECU300は、MG−ECU126との間で信号の授受が可能であり、MG−ECU126に対して制御信号SIGを送信する。MG−ECU126は、この制御信号SIGに基づいて、PCU120内の各機器を制御するための制御信号を生成する。さらに、HV−ECU300は、電圧センサ112からの蓄電装置111の電圧VB、および図示しない電流センサによって検出される蓄電装置111の電流に基づいて、蓄電装置111の充電状態(以下、SOC「State of Charge」とも称する。)を演算する。
【0053】
なお、図1においては、HV−ECU300を1つの制御装置とする構成としているが、たとえば、充電装置200や蓄電装置111を制御するための制御装置などのように、機能ごとまたは制御対象機器ごとに個別の制御装置を設ける構成としてもよい。
【0054】
図1のような構成の車両において、基本的には、充電リレーCHRは外部充電が行なわれる場合のみに閉成される。これは、車両走行中に充電リレーCHRが閉成されたままであると、充電装置200に接続される電力線PL2および接地線NL2に、蓄電装置111からの電圧が印加された状態となってしまうため、車両の衝突等によって、万一この電力線PL2および接地線NL2が露出した場合に、電圧が印加された充電部分が露出することによる地絡などの周囲への影響を防止するためである。
【0055】
ところが、HV−ECU300から、充電リレーCHRを開放するような制御信号が出力されていた場合であっても、充電リレーCHRの接点が閉状態のまま固着しているときには、上述のような問題が起こる可能性がある。そのため、充電リレーCHRの固着の有無を検出する必要がある。
【0056】
この充電リレーCHRの固着の有無を検出する場合、後述するように、図1における電圧センサ220による検出電圧VCHGを用いて判定することが可能である。しかしながら、充電リレーCHRを開放するような制御信号が出力されている状態において、この電圧センサ220が高出力を出している場合には、充電リレーCHRの固着が発生しているのか、電圧センサ220自体の出力異常が発生しているのか、またはコンデンサC3に電荷が残っている状態であるのかが判定できない場合がある。
【0057】
このような状態において、PCU120やモータジェネレータ130,131などを用いて、コンデンサC3の電荷を放電させる場合には、システムメインリレーSMRを開放した上で、充電リレーCHRの接続、放電処理そして充電リレーCHRの開放のような動作が別途必要となる。そうすると、充電や車両始動の処理遅れやリレー自体の耐久性の低下、および蓄電装置111からの電力供給がない状態での動作であるために補機バッテリ160の電池容量低下などを招くおそれがある。さらに、システムメインリレーSMRに固着が発生していた場合には、上記の放電処理すらできない場合もある。また、コンデンサC3を独立して放電することのできる放電回路を別途設置することも可能であるが、追加の回路が必要となるのでコストアップにつながるおそれがある。
【0058】
そこで、本実施の形態においては、外部充電を行なう際に、充電装置の起動前に充電リレーCHRの固着診断を行なうとともに、診断前に電圧センサ220が高出力を検出している場合には、異常の誤検出防止のために上記固着診断をキャンセルする、充電起動制御を行なう。
【0059】
これによって、部品追加によるコストアップを行なうことなく、充電リレーCHRの固着検出を行なうことができる。
【0060】
次に、図2から図6を用いて、外部充電を行なう場合の、起動時および終了時のシステムメインリレーSMRおよび充電リレーCHRの動作について説明する。
【0061】
図2は、本実施の形態において、充電リレーCHRに固着がなく正常である場合に、外部充電を行なうときの、システムメインリレーSMR,充電リレーCHRおよび検出電圧VL,VCHGの状態を説明するためのタイムチャートである。図2および以降に説明する図3から図6においては、横軸に時間が示され、縦軸にシステムメインリレーSMRの各リレーの動作状態、電圧センサ115,220で検出される電圧VL,VCHGの状態、および充電リレーCHRの各リレーの動作状態が示される。
【0062】
図1および図2を参照して、充電ケーブル400がインレット210に接続され、外部充電が開始されると、HV−ECU300は、まずシステムメインリレーSMRを閉成する。
【0063】
時刻t1において、HV−ECU300は、システムメインリレーSMRのうち、蓄電装置111の正極側のリレーSMRBのみが最初に閉成されるように制御信号SE1が出力される。これにより、リレーSMRG,SMRPの接点が閉状態で固着しているか否かが判断される。具体的には、リレーSMRG,SMRPが正常であって、それらのリレーの接点が開放されている場合は、回路がオープン状態であるので、コンデンサC1は充電されず、電圧センサ115による検出電圧VLはゼロのままとなる。しかしながら、リレーSMRG,SMRPのいずれかの接点が閉状態で固着している場合には、回路がクローズ状態となって電圧センサ115で検出される電圧VLが上昇する。したがって、リレーSMRBのみを閉成した状態において、この電圧VLを所定のしきい値と比較することによって、リレーSMRG,SMRPの接点の固着状態が判断できる。
【0064】
リレーSMRGのみが固着している場合およびリレーSMRG,SMRPの両方が固着している場合は、電圧VLは、蓄電装置111の出力電圧VBとほぼ同じ値を示す。また、リレーSMRPのみが固着している場合には、電圧VLは、抵抗R1によって分圧された電圧を示す。
【0065】
その後、時刻t2において、HV−ECU300によってリレーSMRPが閉成される。これにより回路がクローズされて、電圧VLが図2中の曲線W1のように上昇する。このときは、上述のように、抵抗R1を介して電流が流れることによって、突入電流が抑制される。
【0066】
そして、所定の値まで電圧VLが上昇すると、時刻t3にて、リレーSMRGが閉成されるとともに、時刻t4にてリレーSMRPが開放される。これによって、コンデンサC1に電荷が蓄えられた状態となる。
【0067】
次に、時刻t5からt8において、上記のシステムメインリレーSMRと同様に、充電リレーCHRの接点が閉状態で固着しているか否かが判定される。具体的には、時刻t5からt6において、充電リレーCHRの正極側のリレーCHRBのみが閉成され、電圧センサ220で検出される電圧VCHGによって、リレーCHRGが固着しているか否かが判定される。さらに、時刻t7からt8において、充電リレーCHRの正極側のリレーCHRGのみが閉成されることによって、リレーCHRBが固着しているか否かが判定される。リレーCHRB,CHRGが固着している場合の詳細は、図3および図4で後述する。
【0068】
図2においては、充電リレーCHRのいずれのリレーにも異常がない場合なので、図中の曲線W2のように、時刻t5からt8までの間は電圧VCHGはゼロのままである。そして、時刻t8において、リレーCHRB,CHRGの両方が閉成されることによって、電圧VCHGが図中の曲線W2のように蓄電装置111の電圧VB付近まで上昇する。その後、図示しないが、充電装置200が起動されることによって蓄電装置111の充電が開始される。
【0069】
図2の時刻t8以降では、電圧センサ220によって検出される電圧VCHGは、基本的には、電圧センサ112で検出される蓄電装置111の電圧VBとほぼ同じ値となるはずである。そのため、システムメインリレーSMRおよび充電リレーCHRの両方が閉成された後の電圧VBおよび電圧VCHGを比較することによって、電圧センサ220の出力異常の有無をさらに判定することができる。具体的には、電圧VBと電圧VCHGとの差の絶対値がしきい値β1以下の場合は電圧センサ220は正常であると判定され、電圧VBと電圧VCHGとの差の絶対値がしきい値β1より大きい場合は電圧センサ220は異常であると判定される。なお、電圧VLと電圧VCHGとを比較するようにしてもよい。
【0070】
図3は、充電リレーCHRのリレーCHRBが固着している場合のタイムチャートである。
【0071】
図1および図3を参照して、時刻t11からt17までは、図2の時刻t1から時刻t7までの状態と同様である。しかしながら、時刻t17において、HV−ECU300からの、リレーCHRGのみを閉成するような制御信号SE2によってリレーCHRGが閉成されると、リレーCHRBが固着していることによって電力線PL2および接地線NL2の両方が蓄電装置111に接続されることになるので、図3中の曲線W12のように、電圧VCHGが上昇する。HV−ECU300は、電圧VCHGがしきい値γに到達する時刻t18において、リレーCHRBが固着していることを検出する(図3中の点P10)。そして、HV−ECU300は、警告装置190によってアラームを出力するとともに、リレーCHRB,CHRGの両方を閉成するような制御信号SE2を出力する。その後、HV−ECU300は、充電装置200を起動して、蓄電装置111の充電を開始する。
【0072】
図4は、充電リレーCHRのリレーCHRGが固着している場合のタイムチャートである。
【0073】
図1および図4を参照して、時刻t21からt25までは、図2の時刻t1から時刻t5までの状態と同様である。時刻t25において、HV−ECU300からの、リレーCHRBのみを閉成するような制御信号SE2によってリレーCHRBが閉成されると、リレーCHRGが固着していることによって、図4中の曲線W22のように、電圧VCHGが上昇する。そして、HV−ECU300は、電圧VCHGがしきい値γに到達する時刻t26において、リレーCHRGが固着していることを検出する(図4中の点P20)。そして、HV−ECU300は、警告装置190によってアラームを出力するとともに、リレーCHRB,CHRGの両方を閉成するような制御信号SE2を出力する。その後、HV−ECU300は、充電装置200を起動して、蓄電装置111の充電を開始する。
【0074】
図5は、充電装置200が起動されておらず、かつ充電リレーCHRが閉成されていない状態において、電圧センサ220の検出電圧VCHGがゼロより大きい値を示している場合、すなわち、コンデンサC3に電荷が残っている場合に、充電装置200を起動するときのタイムチャートである。
【0075】
通常、コンデンサC1からC3に蓄えられた電荷は、車両の走行が終了してイグニッションがオフにされたときに、たとえば、インバータ122,123において、モータジェネレータ130,131を回転させない状態で電流を流すような制御信号PWI1,PWI2によってモータジェネレータ130,131が駆動されることによって放電される。しかしながら、たとえばモータジェネレータやインバータの異常などによって、電荷の放電完了前に充電リレーCHRが開放されると、コンデンサC3に電荷が残されたままとなる。
【0076】
このような状態においては、上記で説明したような手法によって充電リレーCHRの固着を検出しようとしても、電圧VCHGがゼロではないので、固着の有無を判断できない場合がある。また、電圧センサ220の原点ずれなどの異常である可能性もある。そのため、本実施の形態のにおいては、図5の曲線W32に示すように、充電リレーCHRを閉成する前において、電圧VCGHがしきい値αより大きい場合には、上記で説明した充電リレーCHRの固着検出を行なわず、直ちにリレーCHRB,CHRGの両方を閉成して充電を開始する(図5中の時刻t35)。
【0077】
図6は、車両の運転終了時のシステムメインリレーSMRおよび充電リレーCHRの動作を説明するための図である。
【0078】
図1および図6を参照して、車両100の走行が終了して、イグニッションがオフに操作されると、時刻t41において、HV−ECU300によって、まずシステムメインリレーSMRのリレーSMRGのみが開放される。この状態で、HV−ECU300は、たとえば上述のようにインバータ122,123を動作させることによって、コンデンサC1からC3の電荷を放電させる。ここで、正常に電荷が放電された場合には、電圧VLおよび電圧VCHGは、曲線W41およびW42のようにほぼゼロ付近まで低下する。
【0079】
次に、時刻t42においてリレーSMRBが開放される。その後、時刻t43からt44の間でリレーSMRPのみを閉成することによって、リレーSMRBの固着の有無が判定される。そして、時刻t44でシステムメインリレーSMRに含まれるすべてのリレーが開放された後に、時刻t45にて充電リレーCHRのリレーCHRB,CHRGが開放される。
【0080】
なお、電圧センサ220の原点がずれている場合には、電圧VCGHは、図6中の破線の曲線W43のようになる。また、インバータやモータジェネレータの異常等によって、上述のようにコンデンサの放電ができなかった場合には、電圧VCGHは、図6中の一点鎖線の曲線W44のように、抵抗R2で消費されることによって徐々に低下する。
【0081】
図7は、本実施の形態において、HV−ECU300で実行される充電起動制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。図7および後述する図8,図10に示すフローチャート中の各ステップについては、HV−ECU300に予め格納されたプログラムがメインルーチンから呼び出されて、所定周期で実行することによって実現される。あるいは、一部のステップについては、専用のハードウェア(電子回路)を構築して処理を実現することも可能である。
【0082】
図1および図7を参照して、HV−ECU300は、外部充電の開始を検出すると、ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、システムメインリレーSMRを閉成する。このとき、図3等で説明したような、システムメインリレーSMRに含まれる各リレーの固着検出が行なわれる。
【0083】
次に、HV−ECU300は、S110にて、電圧センサ220によって検出された電圧VCHGが、しきい値αより大きいか否かを判定する。
【0084】
電圧VCHGがしきい値α以下の場合(S110にてNO)は、処理がS120に進められ、充電リレーCHRの固着診断処理が行なわれる。この処理の詳細については、図8にて後述する。
【0085】
その後、HV−ECU300は、S130にて、S120の診断処理の結果により、リレーCHRB,CHRGのいずれかに閉状態の固着が検出されたか否かを判定する。
【0086】
リレーCHRB,CHRGのいずれかに固着が検出された場合(S130にてYES)は、処理がS135に進められ、HV−ECU300は、警告装置190によってアラームを出力して、リレーCHRB,CHRGのいずれかに固着があることを運転者に知らせる。そして、処理がS115に進められ、HV−ECU300は、充電リレーCHRのリレーCHRB,CHRGを両方とも閉成する。その後、HV−ECU300は、S140に処理を進める。
【0087】
リレーCHRB,CHRGのいずれにも固着が検出されなかった場合(S130にてNO)は、処理がS140に進められる。
【0088】
S140にて、HV−ECU300は、充電装置200を起動して充電処理を開始する。そして、HV−ECU300は、S150にて、電圧VBと電圧VCHGとの差の絶対値が、しきい値β1より大きいか否かを判定する。
【0089】
電圧VBと電圧VCHGとの差の絶対値がしきい値β1より大きい場合(S150にてYES)は、処理がS155に進められる。そして、HV−ECU300は、警告装置190によってアラームを出力して、電圧センサ220に異常が発生していることを運転者に知らせる。その後、メインルーチンに処理が戻される。
【0090】
電圧VBと電圧VCHGとの差の絶対値がしきい値β1以下の場合(S150にてNO)は、メインルーチンに処理が戻される。
【0091】
一方、電圧VCHGがしきい値αより大きい場合(S110にてYES)は、コンデンサC3に電荷が残っている場合、リレーCHRB,CHRGの両方が固着している場合、または電圧センサ220の出力が異常である場合の少なくともいずれかであると判定される。そして、HV−ECU300は、S115にて、HV−ECU300は、充電リレーCHRの固着検出処理を行なわずに、充電リレーCHRのリレーCHRB,CHRGを両方とも閉成する。その後、S140以降の処理が実行される。
【0092】
次に図8を用いて、ステップS120での処理内容の詳細を説明する。
図8は、図7で説明したフローチャートのステップS120の充電リレーCHRの固着検出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0093】
図1および図8を参照して、S120に処理が進められると、HV−ECU300は、S300にて、まずリレーCHRBを閉成するような制御信号SE2を出力する。
【0094】
次に、HV−ECU300は、S310にて、電圧VCHGがしきい値γより大きいか否かを判定する。
【0095】
電圧VCHGがしきい値γより大きい場合(S310にてYES)は、処理がS311に進められ、HV−ECU300は、リレーCHRGが固着していると判定する。そして、HV−ECU300は、S312にて、リレーCHRGをさらに閉成するような制御信号SE2を出力する。
【0096】
電圧VCHGがしきい値γ以下の場合(S310にてNO)は、HV−ECU300は、S320にて、リレーCHRBを開放するような制御信号SE2を出力するとともに、S330にて、リレーCHRGを閉成するような制御信号SE2を出力する。
【0097】
そして、HV−ECU300は、S340にて、電圧VCHGがしきい値γより大きいか否かを判定する。
【0098】
電圧VCHGがしきい値γより大きい場合(S340にてYES)は、処理がS341に進められ、HV−ECU300は、リレーCHRBが固着していると判定する。そして、HV−ECU300は、S342にて、リレーCHRBをさらに閉成するような制御信号SE2を出力する。
【0099】
電圧VCHGがしきい値γ以下の場合(S340にてNO)は、HV−ECU300は、S350にて、リレーCHRB,CHRGの両方に固着がなく正常であると判定するとともに、S360にて、リレーCHRBをさらに閉成するような制御信号SE2を出力する。また、充電リレーCHRの固着検出を行なうことが可能となる。 以上のような処理に従って制御を行なうことによって、コンデンサC3に電荷が残っている場合等で充電リレーCHRの固着検出ができない場合には、充電リレーCHRの固着検出を行なわずに充電を開始することができるとともに、電圧センサ220の出力異常を検出することが可能となる。
【0100】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、外部充電を行なう際に充電リレーCHRの固着検出と電圧センサ220の出力異常検出を行なうとともに、充電装置200の起動前にコンデンサC3の電荷残り等により、電圧センサ220によって所定以上の電圧が検出されたときには、充電リレーCHRの固着検出を実行せずに充電を開始する構成について説明した。
【0101】
しかしながら、実施の形態1で、電荷残り等が発生した場合には、外部充電時に充電リレーCHRの固着検出が実行されないので、充電リレーCHRに固着が発生しているか否かを認識できない。
【0102】
そこで、実施の形態2においては、車両始動後に充電リレーCHRの固着検出および電圧センサ220の出力異常検出を行なうことによって、外部充電時に電荷残り等のために充電リレーCHRの固着検出が実行されなかった場合であっても、充電リレーCHRの固着の有無を判定できる構成について説明する。
【0103】
図9は、コンデンサC3に電荷が残っている状態で車両100の始動が行なわれた場合の、システムメインリレーSMR、充電リレーCHR、および検出電圧VL,VCHGの状態を説明するための図である。
【0104】
図1および図9を参照して、時刻t51より前においては、コンデンサC3の電荷残りにより、電圧センサ220によって検出される電圧VCHGがしきい値αよりも大きい状態となっている。この状態のまま、イグニッションがオンとされて、車両100が始動されると、時刻t51からt54のようにシステムメインリレーSMRが閉成される。時刻t51からt54における、システムメインリレーSMRの動作については、上述の図2の説明と同様であるため繰り返さない。
【0105】
充電リレーCHRが正常である場合は、コンデンサC3に蓄えられた電荷は、時間の経過とともに抵抗R2で消費されて低下する。これによって、電圧VCHGは、図9の曲線W52のように徐々に低下していき、時刻t55においてゼロ付近に到達する。なお、充電リレーCHRの2つのリレーCHRB,CHRGのいずれか一方のみが固着している場合も、同様に電圧VCHGはゼロに到達し得る。
【0106】
一方、リレーCHRB,CHRGの両方が固着している場合には、システムメインリレーSMRが閉成されると、電力線PL2および接地線NL2が蓄電装置111と電気的に接続されることになるので、図9の破線の曲線W53のように、蓄電装置111の電圧VB付近まで上昇する。
【0107】
すなわち、車両始動後であって、コンデンサC3に充電可能な最大電荷が抵抗2によって放電される時間以上の時間が経過した後の電圧VCHGが、しきい値α以下の場合(図9の領域A1)は、充電リレーCHRは正常または片側のみが固着していると判定され、電圧VCHGと電圧VBとの差の絶対値がしきい値β2より小さい場合(図9の領域A3)は、リレーCHRB,CHRGの両方が固着していると判定される。なお、それ以外の領域、すなわち図9の領域A2,A4となる場合は、電圧センサ220の出力異常の可能性があると判定される。
【0108】
また、図示していないが、図9の時刻t55以降において電圧VCHGが領域A1となった場合に、実施の形態1で説明したように、充電リレーCHRの各々のリレーを片側ずつ交互に閉成するような動作をさらに行なうことによって、車両始動後においても、リレーCHRB,CHRGのいずれか一方の固着の有無を検出することが可能である。
【0109】
以上のように、車両始動後であって、コンデンサC3に充電可能な最大電荷が抵抗2によって放電され得る時間以上の時間が経過した後に、電圧VCGHに基づいて充電リレーCHRの固着検出および電圧センサ220の出力異常検出を行なうことができる。
【0110】
図10は、実施の形態2において、HV−ECU300で実行される車両始動後の充電リレーCHRの固着検出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0111】
図1および図10を参照して、イグニッションがオンにされることによって、システムメインリレーSMRが閉成されて車両が始動されると、HV−ECU300は、S200にて、コンデンサC3に蓄えられた電荷が放電できる所定の時間が経過したか否かを判定する。
【0112】
所定時間が経過していない場合(S200にてNO)は、メインルーチンに処理が戻される。
【0113】
一方、所定時間が経過した場合(S200にてYES)は、次にS210に処理が進められて、HV−ECU300は、電圧VCHGがしきい値αより大きいか否かを判定する。
【0114】
電圧VCHGがしきい値αより大きい場合(S210にてYES)は、処理がS220に進められ、HV−ECU300は、電圧VBと電圧VCHGとの差の絶対値がしきい値β2以下であるか否かを判定する。ここで、β1≧β2である。
【0115】
電圧VBと電圧VCHGとの差の絶対値がしきい値β2以下の場合(S220にてYES)は、HV−ECU300は、リレーCHRB,CHRGの両方が固着していると判定する。そして、HV−ECU300は、S240にて、警告装置190によってアラームを出力して運転者に異常の発生を知らせる。
【0116】
その後、HV−ECU300は、S250にて、車両100の走行を制限する。この走行制限には、たとえば、万一衝突が発生したような場合でも充電部の露出が起きない程度に車速を制限したり、車両の走行を禁止したりすることが含まれる。なお、この走行制限処理は任意的であり、S240でのアラーム出力のみを行なって、走行を継続するようにしてもよい。
【0117】
電圧VBと電圧VCHGとの差の絶対値がしきい値β2より大きい場合(S220にてNO)は、HV−ECU300は、電圧センサ220の出力に異常がある可能性があると判定する。そして、HV−ECU300は、S230にて、警告装置190によってアラームを出力して運転者に異常の発生を知らせる。
【0118】
電圧VCHGがしきい値α以下の場合(S210にてNO)は、HV−ECU300は、リレーCHRB,CHRGの両方の固着は検出されなかったと判定し、処理をメインルーチンへ戻す。なお、この場合は、上述のように、リレーCHRB,CHRGの両方ともが正常である場合とリレーCHRB,CHRGのいずれか一方のみが固着している場合があるので、図10には図示しないが、図8と同様に、リレーCHRB,CHRGの片側のみを交互に閉成する処理をさらに追加することによって、リレーCHRB,CHRGの片側の固着を検出するようにしてもよい。
【0119】
以上のような処理に従って制御を行なうことによって、外部充電時に電荷残り等のために充電リレーCHRの固着検出が実行されなかった場合であっても、車両始動後に充電リレーCHRの固着の有無を判定することが可能となる。
【0120】
なお、本実施の形態における「システムメインリレーSMR」および「充電リレーCHR」は、それぞれ本発明の「第1の開閉器」および「第2の開閉器」の一例である。本実施の形態における「電力線PL1,接地線NL1」および「電力線PL2,接地線NL2」は、それぞれ本発明の「第1の電力線」および「第2の電力線」の一例である。本実施の形態における「電圧センサ220」および「電圧センサ112」は、それぞれ本発明の「第1の電圧検出器」および「第2の電圧検出器」の一例である。
【0121】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0122】
100 車両、110 電池パック、111 蓄電装置、112,115,124,220 電圧センサ、120 PCU、121 コンバータ、122,123 インバータ、125 DC/DCコンバータ、126 MG−ECU、130,131 モータジェネレータ、140 動力伝達ギア、150 駆動輪、160 補機バッテリ、170 補機負荷、180 エアコン、190 警告装置、200 充電装置、210 インレット、300 HV−ECU、400 充電ケーブル、410 充電コネクタ、420 プラグ、430 電線部、500 外部電源、510 コンセント、ACL1,ACL2,HPL,PL1〜PL3 電力線、C1〜C3 コンデンサ、CCID 充電回路遮断装置、CHR 充電リレー、CHRB,CHRG,SMRB,SMRG,SMRP リレー、D1 ダイオード、NL1,NL2 接地線、R1,R2 抵抗、SMR システムメインリレー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源からの電力を用いて充電が可能な車両であって、
充電が可能な蓄電装置と、
前記蓄電装置からの電力を用いて、前記車両の駆動力を発生させるための駆動装置と、
前記蓄電装置と前記駆動装置との間を結ぶ第1の電力線に介挿され、前記蓄電装置から前記駆動装置への電力の供給と遮断とを切替えるための第1の開閉器と、
第2の電力線によって前記第1の電力線の前記駆動装置と前記第1の開閉器との間に接続され、前記外部電源からの交流電力を変換して前記蓄電装置に充電電力を供給するように構成された充電装置と、
前記第2の電力線に介挿され、前記充電装置から前記蓄電装置への電力の供給と遮断とを切替えるための第2の開閉器と、
前記充電装置および前記第2の開閉器を制御するための制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記充電装置によって前記蓄電装置の充電を行なう場合に、前記充電装置を起動する前に、前記第2の開閉器の接点が閉じられた状態に固着しているか否かの診断を行なう、車両。
【請求項2】
前記第2の電力線の電圧を検出するための第1の電圧検出器をさらに備え、
前記制御装置は、前記第1の電圧検出器によって検出された検出電圧がしきい値より大きい場合は、前記診断を非実施として、前記第2の開閉器を閉成するとともに、前記充電装置を起動して前記蓄電装置の充電を開始する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記第2の開閉器は、
2つのリレーを含み、
前記制御装置は、前記診断中に前記2つのリレーの少なくとも1つが固着していると判定した場合は、前記診断を中断するとともに、前記蓄電装置の充電を開始する、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記蓄電装置の電圧を検出するための第2の電圧検出器をさらに備え、
前記制御装置は、前記充電装置によって前記蓄電装置を充電している場合に、前記第1の電圧検出器の検出電圧と前記第2の電圧検出器の検出電圧との差の絶対値が基準値より大きいときは、前記第1の電圧検出器の出力が異常であると判定する、請求項2に記載の車両。
【請求項5】
前記制御装置は、前記車両を始動して予め定められた基準時間が経過した後に、前記第1の電圧検出器の検出電圧に基づいて、前記第2の開閉器の接点が閉じられた状態に固着しているか否か、および前記第1の電圧検出器の出力が異常であるか否かのうちの少なくともいずれかを判定する、請求項2に記載の車両。
【請求項6】
前記制御装置は、前記基準時間が経過した後に、前記第2の開閉器を開放するように制御しているときに、前記第1の電圧検出器の検出電圧が前記しきい値より小さい場合は、前記第2の開閉器の固着が発生しておらず、かつ前記第1の電圧検出器の出力が正常であると判定する、請求項5に記載の車両。
【請求項7】
前記蓄電装置の電圧を検出するための第2の電圧検出器をさらに備え、
前記制御装置は、前記基準時間が経過した後に、前記第2の開閉器を開放するように制御しているときに、前記第1の電圧検出器の検出電圧と前記第2の電圧検出器の検出電圧との差の絶対値が基準値より小さい場合は、前記第2の開閉器の固着が発生していると判定する、請求項5に記載の車両。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第2の開閉器の固着が発生していると判定した場合は、前記車両の走行を制限する、請求項7に記載の車両。
【請求項9】
前記蓄電装置の電圧を検出するための第2の電圧検出器をさらに備え、
前記制御装置は、前記基準時間が経過した後に、前記第2の開閉器を開放するように制御しているときに、前記第1の電圧検出器の検出電圧が前記しきい値より大きくかつ前記第1の電圧検出器の検出電圧が前記第2の電圧検出器の検出電圧から基準値を差し引いた値よりも小さい場合、および前記第1の電圧検出器の検出電圧が前記第2の電圧検出器の検出電圧に前記基準値を加えた値よりも大きい場合のうちのいずれかの場合は、前記第1の電圧検出器の出力が異常であると判定する、請求項5に記載の車両。
【請求項10】
前記第2の開閉器の固着が発生している場合、および前記第1の電圧検出器の出力が異常である場合の少なくともいずれかの場合に、前記車両の操作者に対して警告するための警告装置をさらに備える、請求項5〜9のいずれか1項に記載の車両。
【請求項11】
前記第2の電力線の電圧を検出するための第1の電圧検出器をさらに備え、
前記第2の開閉器は、
互いに独立して動作可能な2つのリレーを含み、
前記制御装置は、前記診断において、前記2つのリレーのうちの一方のリレーのみを接続する制御信号を出力した場合に、前記第1の電圧検出器の検出電圧がしきい値よりも大きいときは、他方のリレーの接点が固着していると判定する、請求項1に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−160604(P2011−160604A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21800(P2010−21800)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】