説明

車体のフロアパネル

【課題】 フロアパネル形状に高さ方向の制約があっても、車体のフレーム部材から伝わった振動によるフロアパネルの振動エネルギを効果的に低減させ、フロアパネルからの音響放射を低減することができる車体のフロアパネルを提供する。
【解決手段】 本発明は、車体前後方向及び車幅方向に配設されたフレーム部材(20,22,27,28等)に連結され自動車のフロアを構成する車体のフロアパネル(2等)であって、フレーム部材に囲まれた領域(S1等)の中央部に形成された高剛性部70と、この高剛性部の周りに平らに形成された低剛性部72と、を有し、高剛性部には曲率の連続した曲面の波形状部(70b,70c,70d)が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体のフロアパネルに係り、特に、車体前後方向及び車幅方向に配設されたフレーム部材に連結され自動車のフロアを構成する車体のフロアパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンやサスペンションの振動がフレーム部材を介してフロアパネルに伝達され、このフロアパネルが振動することにより、不快な車室内振動や騒音が発生することが知られている。このようなエンジンやサスペンションから伝達される不快な振動は、自動車では主に400Hz以下であり、特にタイヤの空洞共鳴に起因したロードノイズである250Hz付近の周波数にピークを有している。
【0003】
従来、これらの振動騒音を抑制するためにフロアパネル及びその近傍の車体各部に制振材や防振材を貼付けることが一般的に行われている。しかし、この手法では、非常に大量の制振材や防振材を必要とするので、車両重量が増加し、さらに、コストも増大するという問題を抱えていた。また、フロアパネルにビードを多数形成したり、パネル厚を大きくすることでその剛性を高め、それにより、フロアパネルの固有振動数を400Hzよりも高い高帯域にずらすことも知られている。この手法では、低周波の領域における共振ピークを抑制できる利点があるが、一方で、高音域の振動が逆に多くなるため、高周波領域における振動騒音を抑制するための制振材や防振材が多く必要となり、同様の問題を抱えていた。
【0004】
また、フロアパネルに、曲げ、圧縮、引張りに強い複数のシェル構造の凸部と、これらの凸部の間に縦横に延びる凹部とを形成し、この凹部に制振材を設け、凹部に集中した振動を制振材で減衰させるようにしたパネル構造が知られている(特許文献1)。このパネル構造では、複数の凸部の間で凹部を縦横に網の目のように延びるように形成することにより、あらゆる方向の曲げ変形に対する振動エネルギ損失係数を大きくするようにしている。
なお、本出願人により、特許文献2に記載のフロアパネル構造が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平6−107235号公報
【特許文献2】特開2004−237871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1のパネル構造をフロアパネルのフレーム部材に囲まれた領域に適用した場合、凸部が複数あることや、凹部が縦横に網の目のように延びることに起因して、振動及び騒音を十分に低減することが出来ない。例えば、フレーム部材を介して振動エネルギが四方からフロアパネルに流入する場合、凸部が複数であると凹部に振動が集中しにくくなるという問題や、凹部によりパネル領域全体に振動ひずみが分散してパネル領域全体が振動し易くなってしまう等の問題を抱えている。一方、製造面でも、制振材を凹部に合わせて縦横に網の目のように設けるにはコストが増大する、というような問題も抱えている。
【0007】
一方、本出願人は、複数のフレーム部材により囲まれたフロアパネルの領域の中央部に上方向又は下方向に突出した高剛性部を形成すると共に高剛性部の周囲の全域に平らな低剛性部を形成したフロアパネル構造を提案している(特許文献2)。このフロアパネル構造によれば、高剛性部を領域の中央部に1つ形成することで、振動を低剛性部に効果的に集中させることが出来る等の利点を有し、上述した問題なく、振動及び騒音を低減することが出来る。
【0008】
しかしながら、この特許文献2に示すフロアパネル構造でも、振動及び騒音の低減が困難な以下のような場合があった。即ち、フロアパネル自身を上方向或いは下方向に突出させて高剛性部を形成する場合、その高剛性部の突出高さは、フロアパネルの車体下方或いは上方に配置された排気管や補機類等と干渉しない高さ、或いは、乗員の足の踏み心地を悪化(乗員が凹み等を感じて違和感をおぼえること等)させない高さに抑える必要がある。しかし、そのような突出高さが小さい程、高剛性部の剛性を十分に高めることが難しくなり、このような場合には、低剛性部に振動が集中しにくくなるのである。このような問題は、特に、フレーム部材で囲まれた領域が比較的大きい場合や長方形状である場合に顕著になっていた。
【0009】
なお、乗員の足の踏み心地の確保の観点では、高剛性部の高さを大きくしても、その形状に合わせてくりぬかれた厚めのカーペットを敷いたり、高剛性部をウレタン等で埋めたり、フロアパネルの上方に他の鋼板部材をわたしたりして、踏み心地を確保することが考えられるが、これらの場合には、車両重量の増加やコストの増大などの面で問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、フロアパネル形状に高さ方向の制約があっても、車体のフレーム部材から伝わった振動によるフロアパネルの振動エネルギを効果的に低減させ、フロアパネルからの音響放射を低減することができる車体のフロアパネルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために本発明は、車体前後方向及び車幅方向に配設されたフレーム部材に連結され自動車のフロアを構成する車体のフロアパネルであって、フレーム部材に囲まれた領域の中央部に形成された高剛性部と、この高剛性部の周りに平らに形成された低剛性部と、を有し、高剛性部には曲率の連続した曲面の波形状部が形成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、高剛性部と低剛性部とが設けられているので、それらの剛性差により、低剛性部に振動エネルギが集中する。そして、低剛性部において、この集中した振動エネルギにより生じる大きな振動ひずみとフロアパネルを構成する材質(鋼板)自体の減衰能により、フロアパネルの振動エネルギが低減される。また、高剛性部がフレーム部材に囲まれた領域の中央部に形成されると共に低剛性部がその周りに形成されているので、低剛性部に振動が効果的に集中して大きく歪み、また、高剛性部に伝達される振動が低剛性部で効果的に遮断され、さらに、フレーム部材を介してフロアパネルに伝達される振動の振動エネルギがフロアパネル全体に分散されずに低減される。これらの結果、フロアパネルからの音響放射をより確実に低減させることが出来る。
さらに、本発明においては、高剛性部には曲率の連続した曲面の波形状部が形成されているので、高剛性部の高さを大きくとらなくても、高剛性部の剛性を確実に高めることが出来る。従って、フロアパネルの車体下方及び上方に設けられた排気管や補機類等に干渉することなく、或いは、乗員の足の踏み感を悪化させることなく、上述した高剛性部と低剛性部との剛性差を確実に得ることが出来る。これらの結果、フロアパネル形状に高さ方向の制約があっても、車体のフレーム部材から伝わった振動によるフロアパネルからの音響放射を低減させることが出来る。
【0012】
また、本発明において、好ましくは、高剛性部の波形状部は上方向或いは下方向に突出した曲面部を少なくとも2つ有する。
このように構成された本発明においては、少なくとも2つの曲面部により、高剛性部に波形状部を容易に形成することが出来る。さらに、曲面部は、上方向或いは下方向に突出した曲面で構成されるので、それ自体剛性が高く、その結果、高剛性部の剛性をより確実に高めることが出来る。
【0013】
また、本発明において、好ましくは、高剛性部の波形状部は低剛性部から上方向に突出した曲面部及び低剛性部から下方向に突出した曲面部をそれぞれ有し、それらの曲面部の高さは互いに同一である。
このように構成された本発明においては、低剛性部から互いに反対側の方向に突出する曲面部が形成され、それらの曲面部の高さは互いに同一であるので、高剛性部の高さを大きくとならなくても高剛性部の剛性をより確実に高めることが出来る。
【0014】
また、本発明において、好ましくは、上方向に突出した曲面部及び下方向に突出した曲面部の低剛性部からの高さはいずれも5mm以下である。
このように構成された本発明においては、乗員の足の踏み心地が悪化することをより確実に防止することが出来る。
【0015】
また、本発明において、好ましくは、高剛性部の波形状部は上方向に突出された曲面部及び下方向に突出された曲面部をそれぞれ有し、且つ、高剛性部はその全体が低剛性部に対し上方に形成されている。
このように構成された本発明においては、上方向に突出された曲面部及び下方向に突出された曲面部をそれぞれ有する波形状部により、高剛性部の高さを大きくとならなくても高剛性部の剛性をより確実に高めることが出来る。さらに、高剛性部はその全体が低剛性部に対し上方に形成されているので、フロアパネルの下方に配置された排気管等との干渉をより確実に防止することが出来る。
【0016】
また、本発明において、好ましくは、高剛性部の低剛性部から最も突出した部分の高さは10mm以下である。
このように構成された本発明においては、乗員の足の踏み心地が悪化することをより確実に防止することが出来る。
【0017】
また、本発明において、好ましくは、高剛性部の波形状部は、少なくとも2つの曲面部の間に曲率0となる境界部を有し、その境界部が平面視で曲線状に延びる。
このように構成された本発明においては、曲面部間の曲率0となる境界部が平面視で曲線状に延びるので、その境界部に振動エネルギが集中することを防止することが出来る。その結果、フロアパネルの特に高剛性部からの音響放射をより確実に低減させることが出来る。
【0018】
また、本発明において、好ましくは、高剛性部は長方形状に形成され、高剛性部の波形状部の曲面部は長方形状の高剛性部の長辺方向に並ぶように形成されている。
このように構成された本発明においては、長方形状に形成された高剛性部の長手方向に波形状部の曲面部が並ぶので、高剛性部の長手方向の剛性をより確実に高めることが出来る。
【0019】
また、本発明において、好ましくは、長方形状の高剛性部に形成された各曲面部には曲率の連続した曲面の副波形状部がそれぞれ形成されている。
このように構成された本発明においては、各曲面部に曲率の連続した曲面の副波形状部がそれぞれ形成されているので、各曲面部自体の剛性をそれぞれより高めることが出来る。その結果、高剛性部の長手方向の剛性をより確実に高めることが出来る。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、フロアパネル形状に高さ方向の制約があっても、車体のフレーム部材から伝わった振動によるフロアパネルの振動エネルギを効果的に低減させ、フロアパネルからの音響放射を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態によるフロアパネルを備えた自動車のアンダボディを示す斜視図である。図1に示すように、自動車のアンダボディ1は、車室の床部分(フロア部分)を構成する複数のフロアパネル2、4、6、8、10、12、14、16と、これらのフロアパネルが接続された複数のフレーム部材とから構成されている。複数のフレーム部材は、車体前後方向に延びるフロントサイドフレーム18、サイドシル20、フロアサイドフレーム22、リアサイドフレーム24、車幅方向に延びるNo.1乃至No.9クロスメンバ26〜34、これらのクロスメンバ間に設けられた車体前後方向に延びるNo.1乃至No.3トンネルサイドメンバ36〜38である。
【0022】
先ず、図1により、フレーム部材を説明する。自動車のアンダボディ1の車体前方部分には、エンジンルームを左右両側から囲むように車体前後方向に延びる閉断面構造の一対のフロントサイドフレーム18が設けられている。これらのフロントサイドフレーム18の車体前端部には閉断面構造のNo.1クロスメンバ26が接合され、さらに、これらのフロントサイドフレーム18には、エンジン40及びフロントサスペンションクロスメンバ42が取り付けられ、このフロントサスペンションクロスメンバ42には、フロントサスペンション44が取り付けられている。
一対のフロントサイドフレーム18の後端部は、フロア部分の車体前側の端縁部で車幅方向に延びるNo.2クロスメンバ27に接合されている。このNo.2クロスメンバ27は、車室とエンジンルームを仕切るダッシュパネル(図示せず)の下方傾斜部に取り付けられ、各フロントサイドフレーム18の車体外側に設けられた閉断面構造の一対のトルクボックスメンバ27aと、各フロントサイドフレーム18の中間に挟まるように配置された閉断面構造のダッシュロアクロスメンバ27bとから構成されている。
【0023】
このNo.2クロスメンバ27より車体後方のフロア部分に設けられた一対のサイドシル20は、閉断面構造のものであり、その前端部がNo.2クロスメンバ27の車幅方向の両端部に接合されている。これらのサイドシル20の間には、それぞれ車体前後方向に延びる一対の断面コ字状のフロアサイドフレーム22が設けられ、これらのフロアサイドフレーム22の前端部は、フロントサイドフレーム18の後端部に接合されると共にNo.2クロスメンバ27に接合されている。これらのフロアサイドフレーム22は、No.3クロスメンバ28とNo.4クロスメンバ29との間22aで車幅方向内方に張り出すように湾曲し、No.5クロスメンバ30との連結部30aにおいて車幅方向に折り曲げられ、その他の部分は直線状に延びている。
【0024】
これらのフロアサイドフレーム22の後端部には、それぞれ断面コ字状の車体前後方向に延びるリアサイドフレーム24の前端部が接合されている。また、これらのリアサイドフレーム24の前端部は、車幅方向外方に向けて曲がり、サイドシル20の車幅方向内方の側面にも接合され、この前端部には、車幅方向に延びる補強部材24aが設けられている。これらのリアサイドフレーム24は、フロア部分の車体後側の端縁部まで延び、これらのリアサイドフレーム24には、そのNo.7クロスメンバ32とNo.8クロスメンバ33との間にリアサスペンションクロスメンバ46が取り付けられ、このリアサスペンションクロスメンバ46には、リアサスペンション48が取り付けられている。
【0025】
また、No.2クロスメンバ27の車体後方側には、No.2クロスメンバ27に平行に車幅方向に直線状に延びNo.3クロスメンバ28が設けられている。このNo.3クロスメンバ28は、その車幅方向の左右両端部がそれぞれサイドシル20に接合され、また、その車幅方向の左右両側においてフロアサイドフレーム22と交差すると共にフロアサイドフレーム22に接合されている。このNo.3クロスメンバ28の車体後方側には、No.3クロスメンバ28に平行に車幅方向に直線状に延びるNo.4クロスメンバ29が設けられ、その車幅方向の左右両端部はサイドシル20に接合されている。また、No.4クロスメンバ29は、その車幅方向の左右両側においてフロアサイドフレーム22と交差すると共にフロアサイドフレーム22に接合されている。これらのNo.3及びNo.4クロスメンバ28、29は、フロアトンネル部50が設けられる車幅方向のほぼ中央位置において上方に突出している。
【0026】
No.4クロスメンバ29の車体後方側には、No.5乃至No.7クロスメンバ30、31、32が設けられ、各クロスメンバ30〜32は、互いに平行に車幅方向に直線状に延びている。No.5クロスメンバ30の車幅方向の左右両端部は、それぞれフロアサイドフレーム22に接合され、No.6及びNo.7クロスメンバ31、32の車幅方向の左右両端部は、それぞれリアサイドフレーム24に接合されている。No.7クロスメンバ32の車体後方側には、その車幅方向のほぼ中央が前方側に湾曲したNo.8クロスメンバ33が車幅方向に延びるように設けられ、その車幅方向の左右両端部がそれぞれリアサイドフレーム24に接合されている。
このNo.8クロスメンバ33の車体後方側には、フロア部分の車体後側の端縁部で車幅方向に直線状に延びる閉断面構造のNo.9クロスメンバ34が設けられ、その車幅方向の左右両端部がそれぞれリアサイドフレーム24の後端部に接合されている。
【0027】
さらに、車体前後方向の補強部材として、上述したフロントサイドフレーム18、サイドシル20、フロアサイドフレーム22及びリアサイドフレーム24に加えて、フロアトンネル部50の車幅方向の両側の縁部でそれぞれ車体前後方向に延びる断面コ字状のNo.1乃至No.3トンネルサイドメンバ36〜38が配設されている。No.1トンネルサイドメンバ36は、No.2クロスメンバ27とNo.3クロスメンバ28との間にわたって直線状に延び、その車体前後方向の両端部は、それぞれ、No.2クロスメンバ27及びNo.3クロスメンバ28に接合されている。No.2トンネルサイドメンバ37は、No.4クロスメンバ29とNo.5クロスメンバ30との間にわたって直線状に延び、その車体前後方向の両端部は、それぞれ、No.4クロスメンバ29及びNo.5クロスメンバ30に接合されている。No.3トンネルサイドメンバ38は、No.6クロスメンバ31とNo.7クロスメンバ32との間にわたって直線状に延び、その車体前後方向の両端部は、それぞれ、No.6クロスメンバ31及びNo.7クロスメンバ32に接合されている。
【0028】
上述した断面コ字状のフレーム部材、即ち、フロアサイドフレーム22、リアサイドフレーム24、No.3乃至No.8クロスメンバ28〜33、及び、No.1乃至No.3トンネルサイドメンバ36〜38は、いずれも、断面コ字状の開放部が車体上方に向くように形成され、各フロアパネル2、4、6、8、10、12、14、16の下面が、これらの各フレーム部材のフランジ部に接合され、略矩形の閉断面が構成される。
【0029】
次に、図1により、フロアパネルを説明する。図1に示すように、自動車のアンダボディ1には、それぞれ鋼板を一体でプレス成形した第1乃至第8フロアパネル2、4、6、8、10、12、14、16が設けられている。
【0030】
第1フロアパネル2は、No.2クロスメンバ27、一対のサイドシル20及びNo.3クロスメンバ28により囲まれた空間を覆うように設けられ、その車幅方向のほぼ中央位置で車体前後方向に延びるように上方に膨出するフロアトンネル部50が形成されている。第1フロアパネル2は、その前縁部がNo.2クロスメンバ27の車体後方側面に接合され、残りの3辺の縁部の下面が、一対のサイドシル20及びNo.3クロスメンバ28にそれぞれ接合され、さらに、その車幅方向の左右両側において、No.1トンネルサイドメンバ36及びフロアサイドフレーム22に、その下面が接合されている。この第1フロアパネル2には、各フレーム部材20、22、27、28、36により囲まれたパネル領域S1及びS2が、フロアトンネル部50の車幅方向の左右両側にそれぞれ形成されている。
【0031】
第2フロアパネル4は、No.3クロスメンバ28、一対のサイドシル20及びNo.4クロスメンバ29により囲まれた空間を覆うように設けられ、その車幅方向のほぼ中央位置で車体前後方向に延びるように上方に膨出するフロアトンネル部50が形成されている。この第2フロアパネル4は、その4辺の縁部の下面が、No.3クロスメンバ28、一対のサイドシル20及びNo.4クロスメンバ29にそれぞれ接合され、さらに、その車幅方向の左右両側において、フロアサイドフレーム22にその下面が接合されている。また、第2フロアパネル4のフロアトンネル部50の車幅方向の両縁部には、一直線状に折り曲げられた折れ部54が形成され、この折れ部54からフロアトンネル部50が立ち上がっている。さらに、第2フロアパネル4には、上述したフロアサイドフレーム22の湾曲部22aに沿って、その両側に直線状のビード部56が形成されている。このビード部56は、第2フロアパネル4自身を車体上方に突出して形成され、No.3クロスメンバ28からNo.4クロスメンバ29まで延びている。この第2フロアパネル4には、各フレーム部材20、22、28、29、折れ部54及びビード部56により囲まれたパネル領域S3及びS4が、フロアトンネル部50の車幅方向の左右両側にそれぞれ形成されている。
【0032】
第3フロアパネル6は、No.4クロスメンバ29、フロアサイドフレーム22及びNo.5クロスメンバ30により囲まれた空間を覆うように設けられ、その車幅方向のほぼ中央位置で車体前後方向に延びるように上方に膨出するフロアトンネル部50が形成されている。この第3フロアパネル6は、その4辺の縁部の下面が、No.4クロスメンバ29、各フロアサイドフレーム22及びNo.5クロスメンバ30にそれぞれ接合され、さらに、その車幅方向の左右両側において、No.2トンネルサイドメンバ37に、その下面が接合されている。さらに、この第3フロアパネル6には、フロアトンネル部50の左右両側において、No.4クロスメンバ29及びNo.5クロスメンバ30に平行に車幅方向に直線状に延びるビード部58が形成されている。このビード部58は、第3フロアパネル6自身を車体上方に突出して形成したものである。この第3フロアパネル6には、各フレーム部材22、29、30、37及びビード部58により囲まれたパネル領域S5及びS6が、フロアトンネル部50の車幅方向の左右両側にそれぞれ形成されている。
【0033】
第4フロアパネル8は、第3フロアパネル6の車幅方向外方にそれぞれ設けられ、No.4クロスメンバ29、サイドシル20、フロアサイドフレーム22及びリアサイドフレーム24により囲まれた空間を覆うように車体前後方向に延び、その後縁部がNo.8クロスメンバ33の近傍まで延びている。これらの第4フロアパネル8は、各フレーム部材20、22、24、29に接合されている。
【0034】
第5フロアパネル10は、No.5クロスメンバ30、No.6クロスメンバ31、一対のフロアサイドフレーム22及び一対のリアサイドフレーム24により囲まれた空間を覆うように設けられ、その4辺の縁部の下面が、それぞれ、それらのフレーム部材22、24、30、31に接合されている。また、第5フロアパネル10のフロアトンネル部50の車幅方向の両縁部には、一直線状に折り曲げられた折れ部54が形成され、この折れ部54からフロアトンネル部50が立ち上がっている。この第5フロアパネル10には、各フレーム部材22、24、30、31及び折れ部54により囲まれたパネル領域S7が、フロアトンネル部50の車幅方向の左右両側にそれぞれ形成されている。
【0035】
第6フロアパネル12は、No.6クロスメンバ31、No.7クロスメンバ32及び一対のリアサイドフレーム24により囲まれた空間を覆うように設けられ、その4辺の縁部の下面が、それぞれ、それらのフレーム部材24、31、32にそれぞれ接合され、さらに、その車幅方向の左右両側において、No.3トンネルサイドメンバ38に、その下面が接合されている。この第6フロアパネル12には、各フレーム部材24、31、32、38により囲まれたパネル領域S8が、フロアトンネル部50の車幅方向の左右両側にそれぞれ形成されている。
【0036】
第7フロアパネル14は、No.7クロスメンバ32、No.8クロスメンバ33及び一対のリアサイドフレーム24により囲まれた空間を覆うように設けられ、その4辺の縁部の下面が、それぞれ、それらのフレーム部材24、32、33に接合されている。
第8フロアパネル16は、No.8クロスメンバ33、No.9クロスメンバ34及び一対のリアサイドフレーム24により囲まれた空間を覆うように設けられ、その4辺の縁部の下面が、それぞれ、それらのフレーム部材24、33、34に接合されている。
【0037】
このような自動車のアンダボディ1において、エンジン40、フロントサスペンション44及びリアサスペンション48の振動は、それぞれ、フロントサスペンションクロスメンバ42、フロントサイドフレーム18、リアサスペンションクロスメンバ46を経由して、一対のフロアサイドフレーム22及びリアサイドフレーム24に大きく伝達され、さらに、各クロスメンバ26〜34、サイドシル20、各トンネルサイドメンバ36〜38に伝達され、これらの振動が各フロアパネル2〜16に伝達される。各フロアパネルに伝達される振動は、上述したように、特にタイヤの空洞共鳴に起因したロードノイズである250Hz付近の周波数にピークを有する主に400Hz以下の振動であり、このような振動によりフロアパネルからの音響放射が生じ、車室内の振動騒音を悪化させる要因となる。
本発明の実施形態では、フロアパネル2に振動低減構造を設けることにより、フレーム部材からフロアパネル2に伝達された振動によるフロアパネル2からの音響放射を抑制するようにしている。なお、他のフロアパネル4、6、8、10、14、16は、従来のパネルで構成されている。
【0038】
ここで、振動低減構造を説明する。振動低減構造は、フレーム部材などで囲まれたフロアパネルの所定の領域(パネル領域)に、所定の剛性の高い部分(高剛性部)と所定の剛性の低い部分(低剛性部)とを設けたものである。フロアパネルに伝達された振動の振動エネルギは、高剛性部と低剛性部との剛性差により低剛性部に集中し、この集中した振動エネルギにより生じる大きな振動ひずみとフロアパネルを構成する材質(鋼板)自体の減衰能により、振動エネルギが熱エネルギに変換される。その結果、フロアパネルの振動が低減するので、フロアパネルからの音響放射が低減される(振動低減効果)。さらに、低剛性部に制振材を設けると、低剛性部の歪みに伴ってその制振材が歪むので、低剛性部に集中した振動エネルギがさらに大きく低減され、その結果、フロアパネルからの音響放射がより効果的に低減される。
【0039】
また、高剛性部をパネル領域の中央部に設けると共に低剛性部をその周囲の全域に高剛性部を囲むように設けることにより、後述するように、振動が低剛性部に大きく且つ確実に集中する。また、フレーム部材からフロアパネルに伝達される振動が、高剛性部に伝達される前に低減される(振動遮断効果)。さらに、フレーム部材を介してフロアパネルに伝達される振動の振動エネルギが、フロアパネル全体に分散されずに低減される。これらの結果、フロアパネルからの音響放射をより確実に低減させることが出来る。
【0040】
図2及び図3により、実験により得られた、このような振動低減構造による音響放射の低減の効果を説明する。図2は、振動低減構造を有するフロアパネルの実験モデルを示す平面図(a)及びA-A線に沿って見た断面図(b)であり、図3は、図2の実験モデル及び従来のパネルの実験モデルから得た実験結果を示す線図である。
図2に示すように、実験モデルは、平面視で正方形状に配置した断面矩形の実験用のフレーム部材60に、振動低減構造を有するパネル62を取り付けたものである。パネル62は、厚さ約0.7mmの鋼鈑をプレス成形したものであり、フレーム部材60に囲まれたパネルの大きさは、いずれも、縦横の長さがそれぞれ約300mmの大きさとなっている。このパネル62には、高剛性部64と、この高剛性部64の周囲の全域の平らな低剛性部66とが形成され、低剛性部66に制振材68が貼付けられている。
【0041】
また、従来のパネルとして、このパネル62と同じ厚さの鋼鈑で全面を平らに形成したパネルをフレーム部材60に取り付けた実験モデルも用意した(図示せず)。この従来のパネルには、その全面に、パネル62と同量の制振材を貼付けた。実験では、フロアパネルが取り付けられているフレーム部材60の一部を加振器で500Hz以下の周波数(ホワイトノイズ)の加振力を与えて、フレームの振動の大きさに対するパネルの振動の大きさの比(振動率)を測定した。
図3に示すように、振動低減構造を有するパネル62の振動率は、従来のパネルに対し、400Hz以下の周波数の比較的全域に亘って低下し、特に、タイヤの空洞共鳴に起因するロードノイズにより250Hz付近に現れるピークの高さが大きく低下している。このように、振動低減構造によりパネルから放射される音響放射が低減されると言える。
【0042】
次に、本発明の第1実施形態を具体的に説明する。本発明の第1実施形態はフロアパネル2に適用され、そのパネル領域S1及びS2にそれぞれ振動低減構造が設けられている。パネル領域S1及びS2の振動低減構造の構成はそれぞれ同じであり、また、フロアトンネル部50に対し車幅方向の左右両側でも同じであるので、以下では、図4(a)乃至図4(c)により、進行方向に対し車幅方向左側のパネル領域S1について説明し、その他のパネル領域については説明を省略する。図4(a)は、第1実施形態によるフロアパネル2のパネル領域S1を示す拡大平面図であり、図4(b)及び図4(c)は、それぞれ、図4(a)のb−b線及びc−c線に沿って見たフロアパネル2の断面構造を示す断面図である。
【0043】
先ず、図4(a)に示すように、パネル領域S1は、フレーム部材20、22、27、28に囲まれた長方形状の領域であり、各フレーム部材20、22、27、28がそれぞれ直線状に延びると共に対向するフレーム部材が互いに平行に延びている。
このパネル領域S1には、その中央部に高剛性部70が1つ形成されると共にこの高剛性部70の周りの全域に高剛性部70を囲むようにロ字状に延びる低剛性部72が形成されている。なお、この図4(a)においては、高剛性部70の車体上下方向(フロアパネル2の面外方向)への突出度合いに応じた等高線を合わせて示している。本実施形態の高剛性部70は、後述するように曲率の連続した曲面で構成されており、高剛性部70において、その周縁部(低剛性部72との境界部)70aを示す線以外の線は、そのような等高線を示すものである。
【0044】
また、図4(a)乃至図4(c)に示すように、低剛性部72には、その全域に制振材74が設けられている。この制振材74はアスファルト系制振材であり、高剛性部70の周縁部70aに沿った長方形状の開口を有すると共に、低剛性部70の形状に合わせてロ字状に延びるシート状に形成され、低剛性部72に貼り付けられている。なお、制振材74は、塗布型制振材などの他の制振材でも良い。
【0045】
次に、高剛性部70は、そのパネル領域S1の形状に合わせた長方形状に形成され、境界部70aの4つの辺が直線状に延びると共に各フレーム部材20、22、27、28と平行になるように形成されている。このように形成することにより、低剛性部72の剛性を高めないようにして、高剛性部70と低剛性部72との剛性差が確実に得られるようにしている。即ち、境界部70dが曲線状に延びると、低剛性部72の剛性を高めてしまうが、直線状に延びるようにすれば、低剛性部72の剛性を高めなくて済むのである。
【0046】
また、高剛性部70は、平面視で、パネル領域S1に占めるその面積の割合が大きくなるように(その面積が少なくとも低剛性部72より大きくなるように)形成されている。一方、低剛性部72の幅(境界部70dの各辺と各フレーム部材20、22、27、28との相対距離)は、低剛性部72に振動が集中するように所定距離隔てられている。このように、高剛性部70は、低剛性部72への振動の集中を妨げないように、パネル領域S1の大部分にわたって形成されている。
【0047】
次に、図4(b)及び図4(c)に示すように、高剛性部70は、フロアパネル自身をその面外方向に突出させて一体成形され、境界部70aでは、低剛性部72から不連続な角度で立ち上げられている。一方、低剛性部72は、その剛性が高剛性部70より小さくなるように、ほぼ平らに形成されている。
【0048】
次に、図4(a)及び図4(b)に示すように、本実施形態の高剛性部70には、その車体前後方向の前方側の領域で上方向に突出(車室に対して凸状に形成)した凸曲面部70bと、後方側の領域で下方向に突出(車室に対して凹状に形成)した凹曲面部70cとが形成されている。これらの曲面部70b、70cは、互いに同じ大きさ及び形状に形成され、それらの高さ(本実施形態では、低剛性部72からの高さ)hb、hcは、いずれも4mmである。
【0049】
また、これらの曲面部70b、70cは、いずれも曲率の連続した曲面(曲率が不連続に変化する部分のない曲面)で構成されている。本実施形態では、各曲面部70b、70cは、いずれも、その全面にわたって曲率が連続的に変化するように形成されている。さらに、高剛性部70は、各曲面部70b、70cにわたって曲率が連続して変化するように形成されている。即ち、各曲面部70b、70c間の境界部70dの近傍では、曲面が凸状から凹状に(凹状から凸状に)曲率が連続して変化し、曲率の向きが反転する位置(境界部70d)で曲率が0となっている。
【0050】
このように、高剛性部70は曲率の連続した曲面で構成されている。また、高剛性部70は、各曲面部70b、70cにより、曲率が連続した凸状の曲面及び凹状の曲面で構成された波形状に形成されている(波形状部)。特に、本実施形態では、2つの曲面部70b、70cが、長方形状の高剛性部70の長手方向(長辺方向)に並んで形成され、図4(b)に示すように、その長手方向の断面形状が波形状となっている。
【0051】
次に、第1実施形態の作用効果を説明する。
先ず、フロアパネル2には、そのパネル領域S1(S2)に、高剛性部70と低剛性部72とが設けられているので、それらの剛性差により、低剛性部72に振動エネルギが集中する。そして、上述したように、低剛性部72において、フロアパネル2の振動エネルギが低減され、フロアパネル2からの音響放射を低減させることが出来る。さらに、低剛性部72には制振材74が設けられているので、上述したように、パネル領域からの音響放射をさらに効果的に低減させることが出来る。
【0052】
ここで、本実施形態のフロアパネル2には、高剛性部70を「質点」、低剛性部72を、その質点(高剛性部70)とフレーム部材とをつなぐ「ばね」とする振動系(ばね−マス系)が形成されているとみなすことが出来る。フレーム部材は、加振源とみなすことが出来る。このような振動系においては、ばね(低剛性部72)で支えられた質点(高剛性部70)が、一つであり且つ重い方が、ばねがより大きくたわむ(低剛性部72が大きく歪む)と共に質点の振動が小さくなる(高剛性部70に伝達される振動がばね低剛性部72で効果的に遮断される(振動遮断効果))。本実施形態では、このような観点に基づき、高剛性部70をパネル領域S1の中央部に1つだけ形成すると共にその面積を比較的大きくとり、その周囲の全域に高剛性部70を取り囲むように低剛性部72を形成している。従って、低剛性部72を大きく歪ませることが出来、その結果、上述した振動低減効果がより確実に得られる。また、フレーム部材からフロアパネルに伝達される振動のうち、高剛性部70に伝達される振動を低剛性部72で効果的に遮断することが出来、その結果、比較的大きな面積を有する高剛性部70からの音響放射が抑制される。さらに、フレーム部材を介してフロアパネルに伝達される振動の振動エネルギが、フロアパネル全体に分散されずに低減されることになる。
【0053】
次に、高剛性部の剛性を高めるには、高剛性部の高さを大きくとるのが有効であるが、乗員の足の踏み感を悪化させたたり、フロアパネルの車体下方或いは上方に設けられた排気管や補機類等と干渉してしまう場合がある。しかし、本実施形態によれば、高剛性部70は、曲面部70b、70cにより、曲率の連続した曲面の波形状に形成されているので、その高さを抑えつつ剛性を確実に高めることが出来る。これは、特に、波形状部を有しない場合よりも高剛性部70の曲率を比較的小さくすることが出来ることに起因する。また、曲面部70b、70cは、その湾曲した曲面形状により、それ自体の剛性が高いので、波形状部を有する高剛性部70の剛性をより確実に高めることが出来る。さらに、高剛性部70の全面にわたって曲率が連続することにより、高剛性部70の剛性を全体的に確実に高めることが出来るのである。なお、曲面部としては、曲率が連続していれば、曲率が一定である部分(断面が円弧状になる部分)を含んでも良く、このような場合でも同様の作用が得られる。
【0054】
ここで、高剛性部を長方形状に形成した場合、その長手方向の距離が大きい程、その面外方向の突出高さを大きくしなければ剛性を高めにくい。しかし、本実施形態では、高剛性部70の各曲面部70b、70cは、長方形状の高剛性部70の長手方向(長辺方向)に並ぶように形成されている。従って、高剛性部70の長手方向に凹凸が連続する波形状となっているので、高剛性部の高さを抑えても、その長手方向の剛性をより確実に高めることが出来る。
【0055】
次に、高剛性部70には、上方向に突出した凸曲面部70b及び下方向に突出した凹曲面部70cがそれぞれ形成され、それぞれ、低剛性部72に対して上方側或いは下方側に位置するように低剛性部72から突出している。そして、その大きさ及び形状、特に突出高さが互いに同一であるので、より確実に高剛性部70の剛性を高めることが出来る。
特に、各曲面部70b、70cの突出高さhb、hcは、それぞれ4mmであり、凸曲面部70bの最も上方の部分と、凹曲面部70cの最も下方の部分との上下方向(高さ方向)の相対距離が8mmとなるので、乗員の足の踏み心地を悪化させることを防止しつつ、高剛性部70の剛性を高めることが出来る。
【0056】
ここで、各曲面部70b、70cの低剛性部72からの突出高さhb、hcは、合わせて10mm以下であるのが好ましく、この場合、乗員の足の踏み心地を悪化させずに、波形状部により高剛性部70の剛性を高めることが出来ると考えられる。例えば、それぞれの曲面部70b、70cの高さを互いに同一且つ5mm以下とするか、或いは、互いに異なる高さでも凸曲面部70bの最も上方の部分と、凹曲面部70cの最も下方の部分との上下方向(高さ方向)の相対距離を10mm以下としても良い。
【0057】
このように、本実施形態では、フロアパネル形状に関し高さ方向の制約があっても、高剛性部70と低剛性部72の剛性差を確実に得ることが出来、その結果、フロアパネルからの音響放射を低減させることが出来る。
【0058】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。本発明の第2実施形態は、図1に示す自動車のアンダーボディ1のフロアパネル2に適用されており、このフロアパネル2以外のアンダボディ1の構成は、上述した第1実施形態と同様である。また、第1実施形態と同様に、各パネル領域S1及びS2に同じ構成の振動低減構造が設けられている。ここでは、図5(a)乃至図5(d)により、フロアパネル2のパネル領域S1の構成についてのみ説明し、その他の構成の説明は省略する。図5(a)は、本発明の第2実施形態によるフロアパネル2のパネル領域S1を示す拡大平面図であり、図5(b)乃至図5(d)は、それぞれ、図5(a)のb−b線、c−c線及びd−d線に沿って見たフロアパネル2の断面構造を示す断面図である。なお、図5(a)においても、図4(a)と同様に等高線を合わせて示し、高剛性部80において、その低剛性部82との境界部80aを示す線以外の線は、そのような等高線を示すものである。
【0059】
図5(a)に示すように、この第2実施形態では、第1実施形態と同様に、パネル領域S1の中央部に長方形状の高剛性部80が形成されると共にこの高剛性部80の周りの全域に高剛性部80を囲むようにロ字状に延びる低剛性部82が形成されている。また、図5(b)乃至図5(d)に示すように、高剛性部80は、フロアパネル自身をその面外方向に突出させて一体成形され、低剛性部82は、その剛性が高剛性部80より小さくなるように、ほぼ平らに形成されている。また、図5(a)乃至図5(d)に示すように、第1実施形態と同様に、低剛性部82に制振材84が設けられている。
【0060】
次に、図5(a)及び図5(b)に示すように、高剛性部80には、その車体前後方向の前方側の領域で上方向に突出した凸形状の凸曲面部80bと、後方側の領域で下方向に突出した凹形状の凹曲面部80cとが形成されている。図5(b)乃至図5(d)に示すように、この第2実施形態では、凸曲面部80b及び凹曲面部80cのいずれも、低剛性部72に対して上方側に位置するように形成されている。即ち、高剛性部80には、その境界部80aの全周にわたって、低剛性部82から不連続な角度で上方に向けて立ち上げられた立ち上げ部80eが形成され、その立ち上げ部80eの上端位置(図5(b)中上方の二点鎖線で示す基準高さhe)に対し、凸曲面部80bが上方向に突出して車室に対して凸状に形成され、凹曲面部80cが下方向に突出して車室に対して凹状に形成されている。
【0061】
これらの凸曲面部80b及び凹曲面部80cの基準高さ(上方の二点鎖線)に対する高さhb、hcは、それぞれ4mmであり、互いに同一の高さとなっている。また、立ち上げ部80eの高さheは6mmである。従って、高剛性部80の低剛性部82から最も突出した部分の高さhaは10mmとなっている。また、凹曲面部80cが低剛性部82に対し下方に突出しないようになっている。このように、この第2実施形態では、高剛性部80全体が、低剛性部82に対し上方に突出するように形成されている。
【0062】
次に、図5(a)及び図5(b)に示すように、第1実施形態と同様に、各曲面部80b、80cは、互いに同じ大きさ及び形状に形成されると共に曲率の連続した曲面で構成されている。また、第1実施形態と同様に、高剛性部80は、各曲面部80b、80cにわたって曲率が連続して変化するように形成され、境界部80dでは曲率が0となっている。
【0063】
このように、この第2実施形態においても、高剛性部80は、曲率の連続した曲面で構成されている。また、高剛性部80は、各曲面部80b、80cにより、凸状の曲面と凹状の曲面が連続した波形状となっている。特に、各曲面部80b、80cが、長方形状の高剛性部80の長手方向(長辺方向)に並んで形成され、図5(b)に示すように、その長手方向の断面形状が波形状となるように形成されている。
【0064】
次に、第2実施形態の作用効果を説明する。
先ず、本実施形態においては、上述した第1実施形態の作用効果と同様に、高剛性部80と低剛性部82により、パネル領域の振動エネルギが低減されるので、パネル領域からの音響放射を低減させることが出来る。また、制振材84により、さらにパネル領域の振動エネルギが低減される。また、高剛性部80がパネル領域(S1、S2)の中央部に1つだけ形成されると共にその面積が比較的大きくとられ、その周囲の全域に高剛性部80を取り囲むように低剛性部82が形成されているので、低剛性部82に振動が効果的に集中して大きく歪み、また、高剛性部80に伝達される振動が低剛性部82で効果的に遮断され、さらに、フレーム部材20、22、27、28を介してフロアパネル2に伝達される振動の振動エネルギがフロアパネル全体に分散されずに低減される。これらの結果、フロアパネル2からの音響放射をより確実に低減させることが出来る。
【0065】
次に、高剛性部80は、2つの曲面部80b、80cにより、曲率の連続した曲面の波形状に形成されているので、第1実施形態と同様の理由により、高剛性部80の面外方向への突出量が小さくても、高剛性部80の剛性を確実に高めることが出来る。さらに、第1実施形態と同様に、各曲面部80b、80cの大きさ及び形状、特に高さが、互いに同一であるので、高剛性部80の剛性をより確実に高めることが出来る。
【0066】
次に、高剛性部80の全体が、低剛性部82に対し面外方向に上方に位置しているので、フロアパネルの下方に配置された排気管等との干渉を防止することが出来る。なお、高剛性部の全体が下方に突出するように形成しても良く、この場合、車室側に配置された補機類等との干渉を防止することが出来る。
【0067】
さらに、高剛性部80の低剛性部82から最も突出した部分の高さhaが10mmであるので、乗員の足の踏み心地を悪化させることを防止しつつ、高剛性部80の剛性を高めることが出来る。ここで、高剛性部80の低剛性部82から最も突出した部分の高さhaは、10mm以下であるのが好ましく、この場合、乗員の足の踏み心地を悪化させずに、波形状部により高剛性部80の剛性を高めることが出来る。例えば、立ち上げ部80eの高さheを4mmとすれば、高剛性部80の低剛性部82から最も突出した部分の高さhaが8mmとなり、且つ、凹曲面部80cが低剛性部82に対し下方に突出しないようにすることが出来る。
【0068】
次に、各曲面部80b、80cが、長方形状の高剛性部80の長手方向(長辺方向)に並ぶように形成されているので、第1実施形態と同様に、長手方向に凹凸が連続して形成される波形状を形成することが出来る。その結果、高剛性部の高さを抑えても、その長手方向の剛性をより確実に高めることが出来る。
【0069】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。本発明の第3実施形態は、図1に示す自動車のアンダーボディ1のフロアパネル2に適用されており、このフロアパネル2以外のアンダボディ1の構成は、上述した第1実施形態と同様である。また、第1実施形態と同様に、各パネル領域S1及びS2に同じ構成の振動低減構造が設けられている。ここでは、図6(a)乃至図6(c)により、フロアパネル2のパネル領域S1の構成についてのみ説明し、その他の構成の説明は省略する。図6(a)は、本発明の第3実施形態によるフロアパネル2のパネル領域S1を示す拡大平面図であり、図6(b)及び図6(c)は、それぞれ、図6(a)のb−b線及びc−c線に沿って見たフロアパネル2の断面構造を示す断面図である。なお、図6(a)においても、図4(a)と同様に等高線を合わせて示し、高剛性部90において、その低剛性部92との境界部90aを示す線以外の線は、そのような等高線を示すものである。
【0070】
図6(a)に示すように、この第3実施形態では、第1実施形態と同様に、パネル領域S1の中央部に長方形状の高剛性部90が形成されると共にこの高剛性部90の周りの全域に高剛性部90を囲むようにロ字状に延びる低剛性部92が形成されている。また、図6(b)及び図6(c)に示すように、高剛性部90は、フロアパネル自身をその面外方向に突出させて一体成形され、低剛性部92は、その剛性が高剛性部90より小さくなるように、ほぼ平らに形成されている。また、図6(a)乃至図6(d)に示すように、第1実施形態と同様に、低剛性部92に制振材94が設けられている。
【0071】
次に、図6(a)及び図6(b)に示すように、本実施形態の高剛性部90には、その車体前後方向の前方側及び後方側の領域にそれぞれ、いずれも上方向に突出した凸形状の2つの凸曲面部90b、90cが形成されている。図6(b)に示すように、凸曲面部90b、90cのいずれも、低剛性部92に対して上方側に位置するように形成されており、高剛性部90の全体が、低剛性部92に対し面外方向に上方に突出するように形成されている。
【0072】
図6(a)及び図6(b)に示すように、第1実施形態と同様に、各曲面部90b、90cは、互いに同じ大きさ及び形状に形成されると共に曲率の連続した曲面で構成されている。これらの凸曲面部90b、90cの低剛性部92からの突出高さは、いずれも8mmである。
【0073】
この第3実施形態においては、各曲面部90b、90c間の境界部90dは、下方に突出した曲率の連続した曲面(凹曲面)であり、図6(a)で示すように、この境界部90dは、高剛性部90の長辺方向の中間で、高剛性部90の短辺方向に直線状に延びている。高剛性部90は、この境界部90dの凹曲面と、それぞれの凸曲面部90b、90cとが、互いに曲率が連続して変化するように形成されている。従って、境界部90dと、各曲面部90b、90cとのそれぞれの境界(2箇所)で、曲率が0となっている。
【0074】
このように、この第3実施形態においても、高剛性部90は曲率の連続した曲面で構成されている。また、高剛性部90は、各曲面部90b、90cにより、凸状の曲面と凹状の曲面が連続した波形状となっている。特に、各曲面部90b、90cが、長方形状の高剛性部90の長手方向(長辺方向)に並んで形成され、図6(b)に示すように、その長手方向の断面形状が波形状となるように形成されている。
【0075】
次に、第3実施形態の作用効果を説明する。
先ず、本実施形態においては、上述した第1実施形態の作用効果と同様に、高剛性部90と低剛性部92により、パネル領域の振動エネルギが低減されるので、パネル領域からの音響放射を低減させることが出来る。また、制振材94により、さらにパネル領域の振動エネルギが低減される。また、高剛性部90がパネル領域(S1、S2)の中央部に1つだけ形成されると共にその面積が比較的大きくとられ、その周囲の全域に高剛性部90を取り囲むように低剛性部92が形成されているので、低剛性部92に振動が効果的に集中して大きく歪み、また、高剛性部90に伝達される振動が低剛性部92で効果的に遮断され、さらに、フレーム部材20、22、27、28を介してフロアパネル2に伝達される振動の振動エネルギがフロアパネル全体に分散されずに低減される。これらの結果、フロアパネル2からの音響放射をより確実に低減させることが出来る。
【0076】
次に、高剛性部90は、2つの凸曲面部90b、90cにより、曲率の連続した曲面の波形状に形成されているので、第1実施形態と同様に、高剛性部90の面外方向への突出量が小さくても、高剛性部90の剛性を確実に高めることが出来る。特に、境界部90dも曲率の連続した曲面であり、高剛性部90の剛性をより確実に高めることが出来る。さらに、各曲面部90b、90cの大きさ及び形状、特に高さが、互いに同一であるので、第1実施形態と同様に、高剛性部90の剛性をより確実に高めることが出来る。
【0077】
次に、高剛性部90の全体が、低剛性部92に対し面外方向に上方に位置しているので、第2実施形態と同様に、フロアパネル2の下方に配置された排気管等との干渉を防止することが出来る。この第3実施形態においても、第2実施形態と同様に、高剛性部90の低剛性部92から最も突出した部分の高さは、10mm以下であるのが好ましい。
【0078】
次に、各曲面部90b、90cが、長方形状の高剛性部90の長手方向(長辺方向)に並ぶように形成されているので、第1実施形態と同様に、長手方向に凹凸が連続して形成される波形状を形成することが出来、その結果、高剛性部の突出高さを抑えても、その長手方向の剛性をより確実に高めることが出来る。
【0079】
次に、本発明の第4実施形態を説明する。本発明の第4実施形態は、図1に示す自動車のアンダーボディ1のフロアパネル2に適用されており、このフロアパネル2以外のアンダボディ1の構成は、上述した第1実施形態と同様である。また、第1実施形態と同様に、各パネル領域S1及びS2に同じ構成の振動低減構造が設けられている。ここでは、図7(a)乃至図7(e)により、フロアパネル2のパネル領域S1の構成についてのみ説明し、その他の構成の説明は省略する。図7(a)は、本発明の第4実施形態によるフロアパネル2のパネル領域S1を示す拡大平面図であり、図7(b)乃至(e)は、それぞれ、図7(a)のb−b線、c−c線、d−d線及びe−e線に沿って見たフロアパネル2の断面構造を示す断面図である。なお、図7(a)においても、図4(a)と同様に等高線を合わせて示し、高剛性部100において、その低剛性部102との境界部100aを示す線以外の線は、そのような等高線を示すものである。
【0080】
図7(a)に示すように、この第4実施形態では、第1実施形態と同様に、パネル領域S1の中央部に長方形状の高剛性部100が形成されると共にこの高剛性部100の周りの全域に高剛性部100を囲むようにロ字状に延びる低剛性部102が形成されている。また、図7(b)乃至図7(d)に示すように、高剛性部100は、フロアパネル自身をその面外方向に突出させて一体成形され、低剛性部102は、その剛性が高剛性部100より小さくなるように、ほぼ平らに形成されている。また、図7(a)乃至図7(d)に示すように、第1実施形態と同様に、低剛性部102に制振材104が設けられている。
【0081】
次に、図7(a)及び図7(b)に示すように、高剛性部100には、その車体前後方向の前方側の領域で上方向に突出した凸曲面部100bと、後方側の領域で下方向に突出した凹曲面部100cとが形成されている。図7(b)乃至図7(e)に示すように、この第4実施形態においても、第1実施形態と同様に、凸曲面部70bは低剛性部72から上方に突出し、凹曲面部70cは低剛性部72から下方に突出するように形成され、それらの低剛性部102からの突出高さは、それぞれ4mmである。
【0082】
また、各曲面部100b、100cは、第1実施形態と同様に、それぞれ、曲率の連続した曲面で構成されている。また、図7(b)及び図7(d)に示すように、第1実施形態と同様に、高剛性部100は、各曲面部100b、100cにわたって曲率が連続して変化するように形成され、境界部100dでは、曲率が0となっている。
【0083】
次に、図7(a)に示すように、この第4実施形態では、凸曲面部100bは、平面視で凹状(凸曲面部100bの周縁部が平面視で凹状に延びる)に形成され、凹曲面部100cは、平面視で凸状(凹曲面部100cの周縁部が平面視で凸状に延びる)に形成されている。そして、各曲面部100b、100cは、それらの境界部100dが曲線状に延びるように形成されている。このように、曲率が0となる境界部100dが、高剛性部100の長辺方向のほぼ中間位置で、高剛性部100の短辺方向に曲線状に延びるように形成されている。この境界部100dの曲線は、その曲率が連続している。
【0084】
このように、この第3実施形態においても、高剛性部100は曲率の連続した曲面で構成されている。また、高剛性部100は、各曲面部100b、100cにより、凸状の曲面と凹状の曲面が連続した波形状となっている。特に、各曲面部100b、100cが、長方形状の高剛性部100の長手方向(長辺方向)に並んで形成され、図7(b)に示すように、その長手方向の断面形状が波形状となるように形成されている。
【0085】
次に、第4実施形態の作用効果を説明する。
先ず、本実施形態においては、上述した第1実施形態の作用効果と同様に、高剛性部100と低剛性部102により、パネル領域の振動エネルギが低減されるので、パネル領域からの音響放射を低減させることが出来る。また、制振材104により、さらにパネル領域の振動エネルギが低減される。また、高剛性部100がパネル領域(S1、S2)の中央部に1つだけ形成されると共にその面積が比較的大きくとられ、その周囲の全域に高剛性部100を取り囲むように低剛性部102が形成されているので、低剛性部102に振動が効果的に集中して大きく歪み、また、高剛性部100に伝達される振動が低剛性部102で効果的に遮断され、さらに、フレーム部材20、22、27、28を介してフロアパネル2に伝達される振動の振動エネルギがフロアパネル全体に分散されずに低減される。これらの結果、フロアパネル2からの音響放射をより確実に低減させることが出来る。
【0086】
次に、高剛性部100は、2つの曲面部100b、100cにより、曲率の連続した曲面の波形状に形成されているので、第1実施形態と同様の理由により、高剛性部100の面外方向への突出量が小さくても、高剛性部100の剛性を確実に高めることが出来る。なお、この第4実施形態においても、第1実施形態と同様に、各曲面部100b、100cの低剛性部102からの突出高さが、合わせて10mm以下であるのが好ましい。
【0087】
次に、各曲面部100b、100cが、長方形状の高剛性部100の長手方向(長辺方向)に並ぶように形成されているので、第1実施形態と同様に、長手方向に凹凸が連続して形成される波形状を形成することが出来、その結果、高剛性部の高さを抑えても、その長手方向の剛性をより確実に高めることが出来る。
【0088】
次に、曲率が0となる境界部100dが曲線状に延びるので、その曲率0の境界部100dに振動エネルギが集中することを防止することが出来る。ここで、境界部は曲率が0であるので、平らに形成された低剛性部に比べてその量は少ないが、振動エネルギが集中し易くなっている。また、境界部が直線状に延びている(第1乃至第3実施形態の境界部70d、80d、90d参照)と、その境界部で折れ曲がるような振動が発生し易く、或いは、低剛性部から振動エネルギが伝達され易くなると考えられる。一方、この第4実施形態では、境界部100dが曲線状に延びているので、高剛性部100が折れ曲がるような振動の発生や、振動エネルギの集中を極めて生じにくくすることが出来る。即ち、曲率が0である境界部100dは、曲率が0であっても、直線状であるよりはその剛性が高くなり、振動エネルギが集中しにくくなると考えられる。
【0089】
ここで、図8により、第4実施形態の変形例を説明する。この変形例では、境界部110dが、図8に示すように延び、2つの曲面部110b、110cが互いに同じ大きさ且つ対称な形状に形成されている。このようにして、高剛性部110の剛性をより確実に高めることが出来る。この変形例においても、上述した作用効果が得られる。
【0090】
なお、この第4実施形態以外の他の実施形態や変形例等においても、各曲面部の境界部(80d、90d、120d、130d等)が曲線状に延びるようにしても良く、これらの場合も、この第4実施形態と同様の作用が得られる。
【0091】
次に、本発明の第5実施形態を説明する。本発明の第5実施形態は、図1に示す自動車のアンダーボディ1のフロアパネル2に適用されており、このフロアパネル2以外のアンダボディ1の構成は、上述した第1実施形態と同様である。また、第1実施形態と同様に、各パネル領域S1及びS2に同じ構成の振動低減構造が設けられている。ここでは、図9(a)乃至図9(d)により、フロアパネル2のパネル領域S1の構成についてのみ説明し、その他の構成の説明は省略する。図9(a)は、本発明の第5実施形態によるフロアパネル2のパネル領域S1を示す拡大平面図であり、図9(b)乃至図9(d)は、それぞれ、図9(a)のb−b線、c−c線及びd−d線に沿って見たフロアパネル2の断面構造を示す断面図である。なお、図9(a)においても、図4(a)と同様に等高線を合わせて示し、高剛性部100において、その低剛性部102との境界部100aを示す線以外の線は、そのような等高線を示すものである。
【0092】
図9(a)に示すように、この第5実施形態では、第1実施形態と同様に、パネル領域S1の中央部に長方形状の高剛性部120が形成されると共にこの高剛性部120の周りの全域に高剛性部120を囲むようにロ字状に延びる低剛性部122が形成されている。また、図9(b)乃至図9(d)に示すように、高剛性部120は、フロアパネル自身をその面外方向に突出させて一体成形され、低剛性部122は、その剛性が高剛性部120より小さくなるように、ほぼ平らに形成されている。また、図9(a)乃至図9(d)に示すように、第1実施形態と同様に、低剛性部122に制振材124が設けられている。
【0093】
次に、図9(a)及び図9(b)に示すように、高剛性部120には、その車体前後方向の前方側の領域で上方向に突出した凸形状の凸曲面部120bと、後方側の領域で下方向に突出した凹形状の凹曲面部120cとが形成されている。この第5実施形態では、これらのそれぞれの曲面部120b、120c自体が、さらに、波形状に形成されている。具体的には、図9(a)乃至図9(d)に示すように、凸曲面部120bには、その車幅方向の車体内方側の領域に形成された副曲面部120eと、車体外方側の領域に形成された副曲面部120fとが形成され、凹曲面部120cには、その車幅方向の車体内方側の領域に形成された副曲面部120gと、車体外方側の領域に形成された副曲面部120hとが形成されている。
【0094】
図9(b)に示すように、凸曲面部120bの副曲面部120eは、二点鎖線で示す凸状の面からさらに上方向に突出した凸形状に形成され、図9(c)に示すように、凸曲面部120bの副曲面部120fは、二点鎖線で示す凸状の面に対し下方向に突出した凹形状に形成されている。このように、凸曲面部120bには、副曲面部120e、120dにより、車幅方向に凹凸が連続する副波形状部が、さらに形成されている。
また、図9(b)に示すように、凹曲面部120cの副曲面部120gは、二点鎖線で示す凹状の面からさらに下方に突出した凹形状に形成され、図9(c)に示すように、凹曲面部120cの副曲面部120hは、二点鎖線で示す凹状の面に対し上方向に突出した凸形状に形成されている。このように、凹曲面部120cには、副曲面部120g、120hにより、車幅方向に凹凸が連続する副波形状部が、さらに形成されている。
また、高剛性部120の最も上方の部分と、最も下方の部分との上下方向(高さ方向)の距離が10mmとなるように、各曲面部120b(120e、120f)、120c(120g、120h)が形成されている。
【0095】
次に、図9(b)乃至図9(d)に示すように、各曲面部120b、120cは、第1実施形態と同様に曲率の連続した曲面で構成されている。即ち、この第5実施形態の場合は、副曲面部120e、120f、120g、120gは、それぞれ、曲率の連続した曲面で構成されると共に各副曲面部120e、120fにわたって、及び、各副曲面部120g、120hにわたって曲率が連続して変化するように形成されている。さらに、第1実施形態と同様に、高剛性部120は、各曲面部120b、120cにわたって曲率が連続して変化するように形成されている。各曲面部120b、120c間の境界部120d、各副曲面部120e、120f間の境界部120m、各副曲面部120g、120h間の境界部120nでは、それぞれ、曲率が0となっている。
【0096】
このように、この第5実施形態においては、高剛性部120は曲率の連続した曲面で構成されている。また、高剛性部120は、各曲面部120b、120c及びそれらの副曲面部120e、120f、120g、120gにより、その長手方向に凸状の曲面と凹状の曲面が連続した波形状となっている。また、短辺方向にも、境界部120dを除き、凸状の曲面と凹状の曲面が連続した波形状となっている。
【0097】
次に、第5実施形態の作用効果を説明する。
先ず、この第5実施形態においては、上述した第1実施形態の作用効果と同様に、高剛性部120と低剛性部122により、パネル領域の振動エネルギが低減されて、パネル領域からの音響放射を低減させることが出来る。また、制振材124により、さらにパネル領域の振動エネルギが低減される。また、高剛性部120がパネル領域(S1、S2)の中央部に1つだけ形成されると共にその面積が比較的大きくとられ、その周囲の全域に高剛性部120を取り囲むように低剛性部122が形成されているので、低剛性部122に振動が効果的に集中して大きく歪み、また、高剛性部120に伝達される振動が低剛性部122で効果的に遮断され、さらに、フレーム部材20、22、27、28を介してフロアパネル2に伝達される振動の振動エネルギがフロアパネル全体に分散されずに低減される。これらの結果、フロアパネル2からの音響放射をより確実に低減させることが出来る。
【0098】
次に、高剛性部120は、2つの曲面部120b、120c及びそれらに形成された4つの副曲面部120e〜hにより、曲率の連続した曲面の波形状に形成されているので、第1実施形態と同様の理由により、高剛性部120の面外方向への突出量が小さくても、高剛性部120の剛性を確実に高めることが出来る。そして、各曲面部120b、120cが、長方形状の高剛性部120の長手方向(長辺方向)に並ぶように形成されているので、第1実施形態と同様に、長手方向に凹凸が連続して形成される波形状を形成することが出来、その結果、高剛性部の高さを抑えても、その長手方向の剛性をより確実に高めることが出来る。
【0099】
特に、この第5実施形態では、各曲面部120b、120cは、それぞれ、副曲面部120e〜hにより、それ自体も波形状に形成されている(副波形状部)ので、各曲面部120b、120c自体の剛性をより高めることが出来る。その結果、高剛性部120の長手方向(長辺方向)の剛性をより高めることが出来る。また、この第5実施形態では、各副曲面部120e〜hは、短辺方向に並んで形成され、高剛性部120の短辺方向に凸状及び凹状が連続する波形状となるので、短辺方向の剛性も高めることが出来る。
【0100】
また、第1実施形態と同様に、高剛性部120の低剛性部82から上方及び下方にそれぞれ最も突出した部分の高さの差が10mmであるので、乗員の足の踏み心地を悪化させることを防止しつつ、高剛性部120の剛性を高めることが出来る。
【0101】
次に、本発明の他の態様を説明する。
先ず、図10(a)乃至図10(d)に示すように、長方形状の高剛性部130の長辺方向及び短辺方向にそれぞれ2つづつ、合計4つの曲面部130b、130cを形成しても良い。この図10に示す高剛性部130では、凸曲面部130bが対角線上に位置するように2つ形成され、一方、凹曲面部130cも対角線上に位置するように2つ形成されている。図10(b)乃至図10(d)に示すように、高剛性部130は、第1実施形態と同様に曲率の連続した曲面で構成されている。図10(a)に示すように、各曲面部130b、130c間の境界部130dは、高剛性部120のほぼ中心で交わるように、車体前後方向及び車幅方向にそれぞれ延びている。なお、符号132は低剛性部、符号134は制振材であり、いずれも、第1実施形態と同様に形成されている。
【0102】
このように形成した高剛性部130によれば、車体前後方向及び車幅方向のいずれにもより確実に剛性を高めることが出来る。特に、フロアパネルのフレーム部材等で囲まれた領域(パネル領域S1等)の面積が大きい場合や、例えば、パネル領域S7のような正方形状の領域に正方形状の高剛性部を形成する場合に、この図10に示すように形成すると良い。なお、このような曲面部130b、130cの配置において、各曲面部を第2乃至第4実施形態のように形成しても良い。また、車体前後方向及び又は車幅方向に曲面部が3つ以上並ぶように形成しても良い。
【0103】
次に、高剛性部を、その長手方向に3つ或いはそれ以上の数の曲面部が並ぶように形成しても良い。
次に、上述した各実施形態が適用されたフロアパネル2は、車幅方向にわたって設けられ、複数のパネル領域(S1、S2)を有しているが、これを、各パネル領域(例えばS1)毎に個別のパネルとし、それらの各パネルの周縁部を各フレームに接合したようなフロアパネルにおいても同様の作用効果が得られる。
次に、例えば、上述したフロアパネル4、6、10のように、フレーム部材で囲まれると共に振動規制部であるビード部(56、58)及び/又は折れ部(54)でもその一部が囲まれたパネル領域S4乃至S7に、上述した実施形態と同様の振動低減構造を設けても、同様の作用効果が得られる。
次に、その形状が矩形状ではないパネル領域、例えば、上述したフロアパネル4、6のパネル領域S4乃至S6に、上述した実施形態と同様の振動低減構造を形成しても同様の作用効果が得られる。この場合、高剛性部を、例えばそのパネル領域の形状に合わせて台形状に形成し、平面視で各曲面部の形状が台形状になるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の実施形態によるフロアパネルを備えた自動車のアンダボディを示す斜視図である。
【図2】振動低減構造を有するフロアパネルの実験モデルを示す平面図(a)及びA-A線に沿って見た断面図(b)である。
【図3】図2の実験モデル及び従来のパネルの実験モデルから得た実験結果を示す線図である。
【図4(a)】本発明の第1実施形態によるフロアパネル2のパネル領域S1を示す拡大平面図である。
【図4(b)】図4(a)のb−b線に沿って見た車体前後方向の断面構造を示す断面図である。
【図4(c)】図4(a)のc−c線に沿って見た車幅方向の断面構造を示す断面図である。
【図5(a)】本発明の第2実施形態によるフロアパネル2のパネル領域S1を示す拡大平面図である。
【図5(b)】図5(a)のb−b線に沿って見た車体前後方向の断面構造を示す断面図である。
【図5(c)】図5(a)のc−c線に沿って見た車幅方向の断面構造を示す断面図である。
【図5(d)】図5(a)のd−d線に沿って見た車幅方向の断面構造を示す断面図である。
【図6(a)】本発明の第3実施形態によるフロアパネル2のパネル領域S1を示す拡大平面図である。
【図6(b)】図6(a)のb−b線に沿って見た車体前後方向の断面構造を示す断面図である。
【図6(c)】図6(a)のc−c線に沿って見た車幅方向の断面構造を示す断面図である。
【図7(a)】本発明の第4実施形態によるフロアパネル2のパネル領域S1を示す拡大平面図である。
【図7(b)】図7(a)のb−b線に沿って見た車体前後方向の断面構造を示す断面図である。
【図7(c)】図7(a)のc−c線に沿って見た車幅方向の断面構造を示す断面図である。
【図7(d)】図7(a)のd−d線に沿って見た車幅方向の断面構造を示す断面図である。
【図7(e)】図7(a)のe−e線に沿って見た車幅方向の断面構造を示す断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態の変形例によるフロアパネル2のパネル領域S1を示す拡大平面図である。
【図9(a)】本発明の第5実施形態によるフロアパネル2のパネル領域S1を示す拡大平面図である。
【図9(b)】図9(a)のb−b線に沿って見た車体前後方向の断面構造を示す断面図である。
【図9(c)】図9(a)のc−c線に沿って見た車体前後方向の断面構造を示す断面図である。
【図9(d)】図9(a)のd−d線に沿って見た車幅方向の断面構造を示す断面図である。
【図10(a)】本発明の他の態様によるフロアパネル2のパネル領域S1を示す拡大平面図である。
【図10(b)】図10(a)のb−b線に沿って見た車体前後方向の断面構造を示す断面図である。
【図10(c)】図10(a)のc−c線に沿って見た車体前後方向の断面構造を示す断面図である。
【図10(d)】図10(a)のd−d線に沿って見た車幅方向の断面構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0105】
1 自動車のアンダボディ
2,4,6,8,10,12,14,16 第1乃至第8フロアパネル
S1〜S8 パネル領域
18 フロントサイドフレーム
20 サイドシル
22 フロアサイドフレーム
24 リアサイドフレーム
26〜34 No.1〜No.9クロスメンバ
36〜38 No.1〜No.3トンネルサイドメンバ
40 エンジン
42 フロントサスペンションクロスメンバ
46 リアサスペンションクロスメンバ
70,80,90,100,110,120,130 高剛性部
72,82,92,102,112,122,132 低剛性部
74,84,94,104,114,124,134 制振材
70a,80a,90a,100a,110a,120a,130a 高剛性部の周縁部(低剛性部との境界部)
70b,80b,90b,90c,100b,110b,120b,130b 高剛性部の凸曲面部
70c,80c,100c,110c,120c,130c 高剛性部の凹曲面部
70d,80d,90d,100d,110d,120d,130d 各曲面部間の境界部
120e,120f,120g,120h 高剛性部の曲面部の副曲面部
120m,120n 各副曲面部間の境界部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向及び車幅方向に配設されたフレーム部材に連結され自動車のフロアを構成する車体のフロアパネルであって、
上記フレーム部材により囲まれた領域の中央部に形成された高剛性部と、この高剛性部の周りに平らに形成された低剛性部と、を有し、
上記高剛性部には曲率の連続した曲面の波形状部が形成されていることを特徴とする車体のフロアパネル。
【請求項2】
上記高剛性部の波形状部は上方向或いは下方向に突出した曲面部を少なくとも2つ有する請求項1記載の車体のフロアパネル。
【請求項3】
上記高剛性部の波形状部は上記低剛性部から上方向に突出した上記曲面部及び上記低剛性部から下方向に突出した上記曲面部をそれぞれ有し、それらの曲面部の高さは互いに同一である請求項2記載の車体のフロアパネル。
【請求項4】
上記上方向に突出した曲面部及び上記下方向に突出した曲面部の上記低剛性部からの高さはいずれも5mm以下である請求項3記載の車体のフロアパネル。
【請求項5】
上記高剛性部の波形状部は上方向に突出された上記曲面部及び下方向に突出された上記曲面部をそれぞれ有し、且つ、上記高剛性部はその全体が上記低剛性部に対し上方に形成されている請求項2記載の車体のフロアパネル。
【請求項6】
上記高剛性部の上記低剛性部から最も突出した部分の高さは10mm以下である請求項5記載の車体のフロアパネル。
【請求項7】
上記高剛性部の波形状部は、上記少なくとも2つの曲面部の間に曲率0となる境界部を有し、その境界部が平面視で曲線状に延びる請求項2乃至6のいずれか1項記載の車体のフロアパネル。
【請求項8】
上記高剛性部は長方形状に形成され、
上記高剛性部の波形状部の曲面部は上記長方形状の高剛性部の長辺方向に並ぶように形成されている請求項2乃至7のいずれか1項記載の車体のフロアパネル。
【請求項9】
上記長方形状の高剛性部に形成された各曲面部には曲率の連続した曲面の副波形状部がそれぞれ形成されている請求項8記載の車体のフロアパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図4(c)】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図5(c)】
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【図5(d)】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図6(c)】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図7(c)】
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【図7(d)】
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【図7(e)】
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【図8】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図9(c)】
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【図9(d)】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【図10(c)】
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【図10(d)】
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【公開番号】特開2006−315626(P2006−315626A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143062(P2005−143062)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】