説明

車体の収納部構造

【課題】 収納部にカーペットを敷設したときに、フロア側カーペットと収納部のカーペットに隙間が生ずることなく、また見栄えのよい車両の収納部構造を提供すること。
【解決手段】 自動車の車体のリアフロア1には、フロアパネルを下側に窪ませて収納部6を形成している。フロアパネル面に配設されるフロアカーペット7をリアフロア1面から収納部6の内面形状に沿って、リアフロア1側のカーペット7とともに一体成形によって形成し、フロアカーペット7で収納部6の内面を覆うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体のフロアに配設される収納部の見栄えをよくすることができる車両の収納部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロアにフロアパネルを成形して、フロアパネル面よりも下側に突出する凹部を形成して収納空間を設け、この収納空間を収納部として小物などを収納できると使い勝手がよい。そして、収納部に蓋を設け、蓋を取り外すことにより、物の出し入れをすることがある。このようなときに、収納部の内面をそのままフロアパネルの金属(塗装)面とすることができるが、直接金属面が見えてしまい高級感が無く見栄えが悪くなる。
見栄えを向上させるため、収納部の内面を収納部に沿った形状の樹脂製のボックスなどを配設したり、カーペットを収納部の周囲に合わせて敷設したりして見栄えの向上を図ることが考えられる。このような収納部は蓋で覆われ、蓋の上にカーペット被せて、蓋を隠すようにしたものがある。
【0003】
【特許文献1】特許第3225737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、収納部内部にカーペットを敷設する場合では、収納部の内面から開口に沿ってカーペットを合わすように配設するので、カーペットと収納部の固定を確実に行わないと、収納部の開口でカーペットの縁部が捲れたり、剥がれてしまいパネルの地肌が見えてしまうことがある。よって、そのための接合処理にコストと時間を費やしたり、使用期間の経過とともに、いずれかのカーペットが変形してフロア側のカーペットとの間に隙間が生じることがある。
また、収納部を蓋で覆うと、蓋がフロアパネル面に載置されるようなものは、フロアパネル面よりも蓋が上方に突出したり、蓋の固定部として設けたフックなどをカーペットで覆うような場合は、その部分でカーペットが上方に膨らむようなことがあり、見栄上好ましくないものもある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、収納部にカーペットを配設したときに、フロア側カーペットと収納部のカーペットに隙間が生ずることなく、また外観上、見栄えのよい車両の収納部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために、車体のフロアパネルの基準面からフロアパネルを下側に窪ませて収納空間を設けるとともに該収納空間の内面に沿った形状にカーペットを形成して収納部を設け、前記フロアの基準面側のカーペットと前記収納空間側のカーペットを一体成形によって形成し、収納部の内面を覆うようにした。
上記発明は、前記収納部の開口部に、該開口部の周形状に外形が等しい蓋部材を設け、前記開口部よりも内側に前記蓋部材の厚さに等しい階段形状の段部を形成し、蓋部材を段部で支持することができる。
また、上記発明は、前記収納部が車体の後部に設けられ、前記収納空間のカーペットの後部側に位置するカーペットに変えてバックパネルに装着されるトリムで覆うようにできる。
さらに、上記発明は、前記基準面側のカーペット及び収納空間側のカーペットを、ホットプレスで成形することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の車両の収納部構造は、車体のフロアパネルの基準面からフロアパネルを下側に窪ませて収納空間を設けるとともに該収納空間の内面に沿った形状にカーペットを形成して収納部を設け、前記フロアの基準面側のカーペットと前記収納空間側のカーペットを一体成形によって形成し、収納部の内面を覆うようにしたので、収納部の見栄えが良く車両の高級感が得られる。カーペットと収納部を一体成形することによって、フロアとカーペットの継ぎ目も無くなる。
上記発明は、前記収納部の開口部に、該開口部の周形状に外形が等しい蓋部材を設け、前記開口部よりも内側に前記蓋部材の厚さに等しい階段形状の段部を形成し、蓋部材を段部で支持するようにしたので、蓋部材の収納部の支持が段部で確実になる。また、蓋部材がフロアパネルと面一になるので、見栄えがよくなる。
また、上記発明は、前記収納部が車体の後部に設けられ、前記収納空間のカーペットの後部側に位置するカーペットに変えてバックパネルに装着されるトリムで覆うようにしたので、カーペットが複雑な形状にならない。
さらに、前記基準面側のカーペット及び収納空間側のカーペットを、ホットプレスで成形したので、カーペットを所定の形状に容易に成形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態による車体の収納構造について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る自動車のフロアの後部を示し、フロアにカーペットを敷設していない状態の斜視図、図2はフロアの後部に設けた収納部を示し、フロア及び収納部にカーペットを敷設した状態の斜視図、図3は、収納部を蓋で覆った状態の斜視図である。
図1に示すように、自動車の車体20の後部には、複数のパネルを接合して形成されたリアフロア1が設けられている。リアフロア1の後部には、下側に底部が突出したフロアパン部2aを形成し、このフロアパン部2aは物の収納部6として使用される。フロアパン部2aの上部にある開口3aは、ほぼ矩形に形成され、車体に対して前側と両側面に、リアフロア1を屈曲させて形成した階段状の段部4aを設け、段部4aの下側には段部4aと底部をつなぐ傾斜部5aを形成している。なお、符号1aは、車体の後部に設けられる図示しないバックドアのドア枠である。
【0008】
図1に示すリアフロア1及びフロアパン部2aには、図4に示すように、一枚の材料にて一体成形したカーペット7が敷設されている。本実施の形態ではカーペット7は、裏地がポリエチレン(PE)を使用し、表地がポリエチレンテレフタレート(PET)を使用している。このカーペットは、ホットプレスにより一体成形により形成されている。
図2に示すように、カーペット7はフロアパン部2aも含めてリアフロア1の面全体を覆っている。カーペット7はフロアパン部2aの内面と傾斜部5aおよび段部4aに重なりあうように対応させて、凹部2bと傾斜部5bおよび段部4bを形成している。そして、さらにカーペット7の後部を車体後部のクロスメンバを構成するバックパネル8近傍まで延在し、図5及び図6に示すように、後述するバックトリム12とバックパネル8の間で後端部7aをフランジ状に上方へ折り曲げるようにして立設させている。これによって、カーペット7の後端の形状が安定する。
【0009】
カーペット7に形成した段部4bの深さは、収納部を覆う蓋10の厚さと同じであり、また、フロアパン部2aの開口3aに対応させてカーペット7に形成した収納部6の開口3bは蓋10の外形と同じ形状であるので、収納部6に蓋10を被せると、段部4a,4bで蓋10が支持され、リアフロア1を覆うカーペット7と蓋10の各々の面が面一になる。蓋10は、表面をカーペット7と同じ材料で形成することによって、蓋10が目立たなくなって見栄えが向上する。なお、蓋10は、取り外しできるように形成したが、車幅方向の両端部にヒンジを形成し、蓋10を回動可能に開閉できるように構成してもよい。
図5、図7に示すように、蓋10の後端側の下面には、帯状の引き出し紐14がビス16で取付けられている。また、図7に示すように、蓋10には貫通孔15を形成し、引き出し紐を貫通孔15に通して、蓋10の裏側から表側に引き出すようにしている。この引き出し紐14を引くことで蓋10の後部を持ち上げることができ、蓋10を容易に開放または取り外すことができる。
【0010】
収納部6の後部には、バックパネル8に装着され収納部6の後壁部を形成する樹脂製のバックトリム12が設けられている。バックパネル8は、車体の前方側にほぼ垂直方向に配設される縦壁8aを形成し、縦壁8aの上部からは後方側へ突出させたフランジ8bを形成している。バックトリム12は縦壁12aと後方側へ突出させたフランジ12bを設け、この縦壁12aには、カーペット7の段部4bに対応させて略同一高さ位置に、階段状の段部12c形成し、バックパネル8の上部では、後方側へ突出させたフランジ12bをバックパネル8のフランジ8bを覆うように形成されている。これらのフランジ8b,12bの後端部には、ウエザーストリップ17が装着されている。
【0011】
バックトリム12の縦壁12aの下端部は、前側に折り曲げられた前向きフランジ12dを形成し、カーペット7のフランジ状の後端部7aの前側(収納部側)に、カーペット7を押さえ込むようにして配設されている。これによって、カーペット7の後端の浮き上がりが確実に防止される。
バックトリム12は、バックパネル8及びバックトリム12の各々の縦壁8a,12aに形成した孔にクリップ13bを差込み、バックパネル8の上面フランジ8bに形成した孔にフランジ12bの裏面に一体成形されたクリップ13aを差し込むことで、バックパネル8に装着されている。これらのフランジ8b,12bは、バックドアの下側のドア枠を形成する。詳細には、バックトリム12の縦壁12aがバックパネル8に当接し、クリップ13bの頭部が収納可能な深さの凹部を設け、この凹部に締結用の孔を形成して各々の縦壁8a,12aをクリップ13bにて固定している。なお、この凹部は、図6に示すように、蓋10が閉じられた状態で蓋10によって隠される位置に設定されており、外観の向上を図っている。
なお、図1中の符号18は、折り畳み式跳ね上げシートの後部座席を固定するために、後部座席に設けられたラッチが噛合するストライカの取付凹所18である。カーペット7は、この取付凹所18に対しても、図4の成形部18aに示すように、取付け凹所18に沿うように形成されている。
【0012】
カーペット7の車体への組付け時では、すなわち、カーペット7をリアフロア1及びフロアパン部2aに組付けるときは、フロアパン部2aにカーペット7の凹部2bを位置決めしたり、若しくはフロアパン部2aの段部4aをカーペット7の段部4bに位置決めしたりして、カーペット7のリアフロア1への装着が容易になる。カーペット7のリアフロア1の固定方法は特に限定されないが、両面テープや面ファスナーなどで、リアフロア1若しくはリアフロア1の前端側に位置するフロントフロア9側のカーペットなどと結合される。
【0013】
このように、リアフロア1と収納部6とのカーペット7を一体成形したので、従来のように、別体であったリアフロア側のカーペットと収納部側のカーペットが捲れて隙間が生じることがない。また、両者の重なり部の処理が不必要となる。収納部6にカーペットが敷設されているので、収納部自体の見栄えが良くなるのは、勿論、収納部6とリアフロア1とのカーペットの継ぎ目がないので見栄えがよい。さらに、収納物とリアフロア1との振動音を防止できるとともに、蓋10がカーペット7を介してリアフロア1で支持されるので、蓋10とリアフロア1との振動音が確実に防止できる。
カーペット7の段部4bは、蓋10の支持部のみならず、カーペット7の装着後において、その位置ズレを防止することができる。バックトリム12の前向きフランジ12dは、カーペット7の後端側の上方への浮き上がりを防止する役割を果たす。
また、蓋10の後端部をバックトリム12の段部12cに当接するようにしたので、バックトリム12の車体の前方側への飛び出し(浮き)を防止することができ、バックトリム12の固定用のクリップ13bの取付箇所を減らすことができる。
【0014】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることなく本発明の技術的思想に基いて種々の変形及び変更が可能である。
蓋10の材質は、特に問わないが、材質の弱いものを使用する場合は、図7に示すように、蓋10の中間部に、車幅方向の一端部から他端部まで延びる金属製のパイプ11を補強することにより、剛性を大きくすることができる。
また、蓋10を引き出し紐14で開放するようにしたが、蓋10に直接把持部を形成してもよい。
本発明は、ワンボックスカーなどの荷台のフロアで説明したが、トランクを有する車両などのタイヤ収納部として適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態による車両の収納部構造を採用した自動車のリアフロア部にカーペットを配設していない状態の斜視図である。
【図2】図1のフロアパン部に形成した収納部にカーペットを敷設した状態の斜視図である。
【図3】図2の収納部を蓋で覆った状態の斜視図である。
【図4】図1のリアフロア部に配設されるカーペットの平面図である。
【図5】図3のA−A線方向における断面図(なお、フロアパン部のパネルがカーペットの下部にあるが、これを省略している。以下の図6〜図8も同じ)である。
【図6】図3のB−B線方向における断面図である。
【図7】図3のC−C線方向における断面図である。
【図8】図3のD−D線方向における断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 リアフロア
2a フロアパン部
2b 凹部
3a 開口(フロアパン側)
3b 開口(カーペット側)
4a 段部(フロアパン側)
4b 段部(カーペット側)
5a 傾斜部(フロアパン側)
5b 傾斜部(カーペット側)
6 収納部
7 カーペット
8 バックパネル
9 フロントフロア
10 蓋
11 パイプ
12 バックトリム
12a 縦壁
13a,13b クリップ
14 引き出し紐
15 孔
16 ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のフロアパネルの基準面からフロアパネルを下側に窪ませて収納空間を設けるとともに該収納空間の内面に沿った形状にカーペットを形成して収納部を設け、前記フロアの基準面側のカーペットと前記収納空間側のカーペットを一体成形によって形成し、収納部の内面を覆うようにしたことを特徴とする車体の収納部構造。
【請求項2】
前記収納部の開口部に、該開口部の周形状に外形が等しい蓋部材を設け、前記開口部よりも内側に前記蓋部材の厚さに等しい階段形状の段部を形成し、蓋部材を段部で支持するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の車体の収納部構造。
【請求項3】
前記収納部が車体の後部に設けられ、前記収納空間のカーペットの後部側に位置するカーペットに変えてバックパネルに装着されるトリムで覆うようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車体の収納部構造。
【請求項4】
前記基準面側のカーペット及び収納空間側のカーペットを、ホットプレスで成形したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載車体の収納部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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