説明

車体の移載方法

【課題】検査または処理をした状態の車体を次工程に搬送して、次工程に搬送した場合に生じる不具合を防止する。
【解決手段】車体Wをフロアコンベア1の搬送台車10からオーバーヘッドコンベア2の搬送ハンガー20、またはオーバーヘッドコンベア2の搬送ハンガー20からフロアコンベア(1,3)の搬送台車(10,30)に移載するための車体の移載方法であって、多関節ロボット5,6で車体Wを支持した状態で揺動させて、車体Wを検査、その他車体Wに対する処理を行なう揺動ステップと、多関節ロボット5,6で支持した状態で車体Wを搬送ハンガー20または搬送台車(10,30)に移載する移載ステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の移載方法に係り、特に、車体を揺動させて検査または処理を実行する車体の移載方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フロアコンベアからオーバーヘッドコンベアへ、またはオーバーヘッドコンベアからフロアコンベアへ車体を移載する場合において、車体を水平状態で位置決めして保持したまま昇降させて移載する昇降式移載装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
例えば、車体の塗装工程において、前工程であるプレス工程、溶接工程で車体に付着した防錆油、シーラー、綿ゴミ等を除去し車体表面への電着塗料の付き廻り性を向上するため、前処理槽に車体を浸漬し、その後、防錆のための電着塗装を施すべく電着槽に浸漬される。
【0004】
上記浸漬処理は、いずれもオーバーヘッドコンベアに吊り下げられた搬送ハンガーに車体を載置した状態で各処理槽内の処理液に没入搬送するようになっている。このため、浸漬処理を行なうために、車体をフロアコンベアからオーバーヘッドコンベアに移載し、浸漬処理が完了したらオーバーヘッドコンベアからフロアコンベアに移載する。
【0005】
このような浸漬処理において、オーバーヘッドコンベアで処理液に没入搬送するとき、ドアがドア治具により車体に固定されていないと水圧或いは入出槽時の車体の振動等により開放して、処理槽の内側壁と干渉し、オーバーヘッドコンベアが過負荷により停止する。そして、この停止が長時間に及ぶと、前処理槽、電着槽内に浸漬されている車体は廃品となり、また、ドアが処理槽の内側壁に干渉した当該車体はデフォームが発生し、廃品となる不具合がある。
【0006】
ところが、ドア治具は作業者が各ドアに対して取付けているため、作業者のミスによるドア治具の取り付け忘れ、または取り付け不良が発生する場合がある。これを防止するため、前処理槽に入槽する手前でセンサによりドアの位置を確認したり(例えば、特許文献2)、ドアをカメラで撮像し撮像されたドアの位置と基準位置との差異によりドアが開放しているか否かを検出したりする方法もある(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開04−122533号公報
【特許文献2】特開平06−142607号公報
【特許文献3】特開2001−000905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の昇降式移載装置を用いて、前処理前フロアコンベアから前処理槽、電着槽内に浸漬するための前処理・電着オーバーヘッドコンベアに車体を移載すると、車体を水平に保持した状態で昇降させて移載するので、車体およびドアに垂直方向の負荷しかかからないため、ドアは閉止状態を保持したままで開きにくいので、ドア治具の取り付け忘れ、または取り付け不良を発見することは困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、搬送ハンガーまたは前記搬送台車に移載して次工程に搬送した場合に生じる不具合を防止すべく、検査または処理をした状態の車体を次工程に搬送することができる車体の移載方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、車体をフロアコンベアの搬送台車からオーバーヘッドコンベアの搬送ハンガー、またはオーバーヘッドコンベアの搬送ハンガーからフロアコンベアの搬送台車に移載するための車体の移載方法であって、多関節ロボットで前記車体を支持した状態で揺動させて、当該車体を検査、その他当該車体に対する処理を行なう揺動ステップと、前記多関節ロボットで支持した状態で前記車体を前記搬送ハンガーまたは前記搬送台車に移載する移載ステップと、を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項1に係る発明によれば、多関節ロボットにより車体を移載することで、車体を種々の態様で自在に揺動させたり、移動したり、昇降したりすることができるため、多様な態様の検査や処理に確実に適用できる自在な移載方法を実現することができる。
このため、請求項1に係る発明は、前記搬送ハンガーまたは前記搬送台車に移載して、検査または処理をした状態の車体を次工程に搬送することで、次工程に搬送した場合に生じる不具合を防止することができ、予め設定された次工程での作業を円滑に実行することができる。
【0012】
また、請求項1に係る発明は、揺動ステップと移載ステップとを並行して実行することができるため、工程の簡素化効率化を実現することができる。
なお、揺動ステップの後で移載ステップを実行してもよいし、揺動ステップを実行しながら移載ステップを実行してもよい。また、複数の多関節ロボットを使用して、揺動ステップと移載ステップとを別々の多関節ロボットで実行してもよい。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の車体の移載方法であって、前記揺動ステップは、前記車体を縦軸回り、または横軸回りに揺動させることを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、車体を縦軸回りに揺動させることで、車体の傾斜角度を左右方向(例えばローリング動作)に自在に傾動させることができる。また、車体を横軸回りに揺動させることで、車体の傾斜角度を前後方向(例えばピッチング動作)に自在に傾動させることができる。
【0015】
ここで、車体の縦軸とは、前後方向に沿う方向の軸を意味し、車体の幅方向の中心を通る軸、重心を通る軸等、検査および処理の目的に応じて種々の態様がある。車体の横軸とは、左右方向に沿う方向の軸を意味し、車体の前後方向の中心を通る軸、重心を通る軸、前輪または後輪の車軸を通る軸等、検査および処理の目的に応じて種々の態様がある。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の車体の移載方法であって、前記揺動ステップは、前記車体のドアが予め設定された状態に組み付けられているかどうかを検査することを特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、前記車体を揺動させて、当該車体のドアが予め設定された状態に組み付けられているかどうかを検査することで、例えばドア治具の取り付けが不十分である場合には揺動させるとドアが開いてしまうのでドア治具の取り付けの有無および取り付け状態を認識することが可能となる。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の車体の移載方法であって、前記揺動ステップは、前記車体内に滞留する塗料が流れ落ちるように揺動させて排出する処理を行うことを特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、前記車体内に滞留する塗料が流れ落ちるように揺動させて排出することで、前記車体内に滞留する塗料を迅速かつ確実に排出することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る車体の移載方法は、検査または処理をした状態の車体を次工程に搬送して、次工程に搬送した場合に生じる不具合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る車体の移載方法に係る揺動ステップを説明するための正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車体の移載方法における車体をフロアコンベアからオーバーヘッドコンベアに移載する移載ステップを説明するための正面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車体の移載方法における車体をオーバーヘッドコンベアからフロアコンベアに移載する場合の揺動ステップ(a)と移載ステップ(b)を説明するための正面図である。
【図4】図1の要部拡大図である。
【図5】ドアに取付けた状態のドア治具の構成を説明するための部分平面図である。
【図6】ドア治具の取り付け状態を検出する方法を示す部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態に係る車体の移載方法について、以下、塗装ラインにおける前処理・電着工程における搬入・搬出時の車体の移載に適用する場合を例として説明する。
ここで、前処理・電着工程は、電着塗装の前処理である油分等を除去する前処理工程、から電着工程までを意味するが、前処理工程および電着工程をそれぞれ区別して使用する場合もある。
【0023】
塗装ラインにおける前処理・電着工程では、図1に示すように、前処理前フロアコンベア1の搬送台車10に車体Wが載置されて、前処理・電着工程に車体Wが搬入されてくる(図1(a))。このようにして前処理・電着工程に搬送されてきた車体Wは、移載装置である2台の多関節ロボット5,6により、揺動ステップを実行してから(図1(b))、前処理前フロアコンベア1の搬送台車10から前処理・電着オーバーヘッドコンベア2の搬送ハンガー20に移載されて(図2(a))、前処理・電着工程内で搬送される(図2(b))。
【0024】
一方、前処理・電着工程から車体Wが搬出される場合には、図3に示すように、前処理・電着工程が終了した車体Wは、2台の多関節ロボット7,8により、揺動ステップを実行してから(図3(a))、前処理・電着オーバーヘッドコンベア2から電着後フロアコンベア3に移載される(図3(b))。
【0025】
本発明の実施形態に係る車体Wの移載方法は、図1〜図3に示すように、ドア治具4(図5参照)の取り付け工程(不図示)を経て前処理前フロアコンベア1により前処理・電着工程に搬送されてきた車体Wを(図1(a)参照)、2台の多関節ロボット5,6で支持した状態で揺動させて、ドアW1の組み付け状態を検出する第1の揺動ステップと(図1(b)参照)、搬送ハンガー20に移載する第1の移載ステップと((図2(a))参照)、2台の多関節ロボット7,8で支持した状態で、車体W内に滞留する塗料が流れ落ちるように揺動させて排出する第2の揺動ステップと(図3(a)参照)、電着後フロアコンベア3の搬送台車30に移載する第2の移載ステップと((図3(b)参照)、を含んでいる。
【0026】
車体Wは、図1(a)に示すように、前処理前フロアコンベア1上に配設された搬送台車10に載置された状態で位置決めされて搬送されてくる。
具体的には、図4に示すように、搬送台車10の支持プレート13の前部に配設された位置決めピン11が車体WのサイドシルW2の開孔に挿入され、搬送台車10の支持プレート13の後部に配設された先端が略コ字型の受け具12の二股部材間12aに車体WのサイドフレームW3が挿入載置されることにより搬送台車10上に位置決め支持されている。
【0027】
ドア治具取り付け工程(不図示)では、図1(a)に示すように、搬送台車10に載置された状態の車体Wに対して、作業者(不図示)がドアW1を車体Wに対して一定開度で保持するようにドア治具4(図5)を取り付ける(図6(a)参照)。
【0028】
ドア治具4は、図5に示すように、車体Wのドア開孔のフランジ部W4に挿入して固定する二股部材41と、この二股部材41に延設された支持プレート42と、支持プレート42に設けられた係合アーム保持部43と、支持プレート42に直交する軸回りに回動自在に支持された係合アーム44と、を備えている。
そして、係合アーム44は、ヨ字型に形成され、軸部44aと、軸部44aに直交する方向に形成された第1係合部44bおよび第2係合部44cと、作業者が把持して回動させる把持アーム44dと、を備えている。
【0029】
ドア治具4の車体Wへの取り付けは、車体Wのドア開孔のフランジ部W4をドア治具4の二股部材間41aに挿入し、二股部材41の一方の部材41bの螺子孔41dに締結ボルトBを螺合することにより、二股部材41の他方の部材41cと締結ボルトBの間で車体Wのドア開孔のフランジ部W4を保持することにより行う。
【0030】
ドア治具4によるドアの係合は、図5に示すように、係合アーム44の第1係合部44bをドアW1に形成された開口W6から挿入し(2点差線で示す)、次いで作業者が係合アーム44の把持アーム44dを把持して180度回動させて、係合アーム保持部43に把持アーム44dが当接して保持されるようにする(実線で示す)。これにより、ドアの内板W5が車体Wに支持されたドア治具4の第1係合部44bと第2係合部44c間で車体Wに対して一定開度で保持される。
【0031】
次いで、車体Wは、前処理前フロアコンベア1の搬送台車10上から前処理・電着オーバーヘッドコンベア2の搬送ハンガー20に移載装置である2台の多関節ロボット5,6により移載される(図1(b)〜図2(a))。
【0032】
続いて、第1の揺動ステップ〜第1の移載ステップまでの動作について説明する。
第1の揺動ステップでは、車体Wを2台の多関節ロボット5,6で支持した状態で縦軸回り(a方向)、または横軸回りに揺動(b方向)させて、ドア治具4により、前記車体Wのドアが予め設定された状態に組み付けられているかどうかを検査する(図1(b)参照)。
第1の移載ステップでは、車体Wを前処理前フロアコンベア1の搬送台車10から前処理・電着オーバーヘッドコンベア2の搬送ハンガー20に移載する((図2(a))参照)。
【0033】
2台の多関節ロボット5,6は、図1(b)に示すように、前処理前フロアコンベア1と前処理・電着オーバーヘッドコンベア2が平行に敷設された箇所に配設され、前処理前フロアコンベア1と前処理・電着オーバーヘッドコンベア2の搬送軸線に平行となるように対向して配設されている。そして、多関節ロボット5は、車体Wの前部を支持し、多関節ロボット6は車体Wの後部を支持して、一対となる2台の多関節ロボット5,6が協働して作動するように同期制御されている。
【0034】
前方の多関節ロボット5のアーム51の先端には支持プレート52が配設され、支持プレート52上には先端が上方に開口した略コ字形の受け具53が立設され、受け具53の二股部材間53aに車体WのサイドフレームW3の前部を挿通し、さらに二股部材間53aに植設された位置決めピン(不図示)をサイドフレームW3の開孔に挿通するように構成され、また、後方の多関節ロボット6のアーム61の先端にも支持プレート62が配設され、支持プレート62上には先端が略コ字形の受け具63が立設され、受け具63の二股部材間63aに車体WのサイドフレームW3の後部を挿通するように構成されている。
【0035】
また、一対の多関節ロボット5,6の両外側には、前処理前フロアコンベア1と前処理・電着オーバーヘッドコンベア2の搬送軸線に平行となるように投受光器9,9が配設されている。
【0036】
前処理・電着オーバーヘッドコンベア2には、移載装置側が開放された略C形状をなした搬送ハンガー20が吊り下げ支持され、搬送ハンガー20の載置台31、32上に車体WのサイドシルW2を載置し、かつ前方の載置台31に植設されたピン体33を車体WのサイドシルW2の開孔に挿入し、車体Wが位置決めされている。
【0037】
このような構成のもとに、図4に示すように、一対の多関節ロボット5,6が車体Wを支持すべく、アーム51,61を下降させ、前処理前フロアコンベア1の停止位置に停止している搬送台車10上の車体WのサイドフレームW3を各々の支持プレート52,62の受け具53,63上に支持し、次いでアーム51,61を上昇させることにより車体Wを搬送台車10上から多関節ロボット5,6の支持プレート52,62上にそれぞれ移載する。
【0038】
そして、一対の多関節ロボット5,6のアーム51,61の先端が対向する状態(車体Wが各コンベアの搬送軸線と平行となる)に車体Wを保持し、次いで一対の多関節ロボット5,6により車体Wを前処理前フロアコンベア1と前処理・電着オーバーヘッドコンベア2の搬送軸線と直交する方向(車体Wの縦軸回りのa方向)または、軸線方向(車体Wの横軸回りのb方向)に揺動させる。
【0039】
このとき、一対の多関節ロボット5,6の両外側に配設された投受光器9を作動させる。そして、投受光器9,9間で導通される光線が遮られた場合は、図6(b)に示すように、ドアW1がドア治具4により車体Wに固定されていないと判断し、前処理・電着オーバーヘッドコンベア2の搬送ハンガー20に車体Wを移載することなく、警報を鳴動させ、停止する。
【0040】
一方、図6(a)に示すように、車体Wが前処理前フロアコンベア1と前処理・電着オーバーヘッドコンベア2の搬送軸線と直交する方向または軸線方向に揺動される間、投受光器9,9で導通される光線が遮られなかった場合は、ドアW1はドア治具4により車体Wに固定されていると判断し、一対の多関節ロボット5,6が作動して車体Wを多関節ロボット5,6の支持プレート52,62上から前処理・電着オーバーヘッドコンベア2の停止位置で静止し、待機している搬送ハンガー20上に車体Wを移載する。そして、車体Wを不図示の前処理・電着槽に没入させ、各種処理および電着塗装を行う。
【0041】
次いで、電着塗装が完了した車体Wは、前処理・電着オーバーヘッドコンベア2の搬送ハンガー20上から電着後フロアコンベア3に一対の多関節ロボット7,8により移載され、不図示の電着乾燥炉に搬入され、電着塗料の焼付け硬化が行われる。
【0042】
続いて、第2の揺動ステップ〜第2の移載ステップの動作について説明する。
第2の揺動ステップでは、前処理・電着オーバーヘッドコンベア2から車体Wを受け取って、2台の多関節ロボット7,8で支持した状態で、車体W内に滞留する塗料が流れ落ちるように横軸回りに揺動(b方向)させて排出する((図3(a)参照)。
第2の移載ステップでは、前処理・電着オーバーヘッドコンベア2の搬送ハンガー20から電着後フロアコンベア3の搬送台車30に移載する((図3(b)参照)。
【0043】
一対の多関節ロボット7,8は、一対の多関節ロボット5,6と同様の構成であり、一対の多関節ロボット5,6との違いは、多関節ロボット7,8の近傍には投受光器9を配設していない点と、一対の多関節ロボット7,8に載置された車体Wの下方にオイルパン90が配設されている点である。このため、多関節ロボット7,8についての詳細な説明は省略する。
【0044】
図3(a)に示すように、車体Wは、前処理・電着オーバーヘッドコンベア2の搬送ハンガー20の載置台31,32上から多関節ロボット7,8のアーム71,81の支持プレート72,82上に移載される。さらに、一対の多関節ロボット7,8のアーム71,81の先端が対向する状態(車体Wが各搬送コンベアの搬送軸線と平行となる)に車体Wを保持し、次いで多関節ロボット7,8により車体Wを各搬送コンベア(1,2)の搬送軸線方向(車体Wの横軸回りのb方向)に揺動させ、通電により車体Wに付着せず車体W内に滞留している電着塗料を車外に排出し、排出された電着塗料はオイルパン90に貯留され、貯留された電着塗料は再利用のため、回収される。
【0045】
そして、車室内に滞留する電着塗料を排出した車体Wは、多関節ロボット7,8により電着後フロアコンベア3の搬送台車30上に移載される。搬送台車30上での車体Wの支持は前処理前フロアコンベア1の搬送台車10と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0046】
[本発明の実施形態に係る車体の移載方法の効果]
このようにして、前処理・電着オーバーヘッドコンベア2前の多関節ロボット5,6でドアW1がドア治具4により車体Wに固定されているか否かが多関節ロボット5,6の移載動作途中で確実に検出できるため、前処理・電着槽内でドアW1が開放し、槽内壁に干渉して、各搬送コンベア(1,2)が過負荷となって停止する不具合が解消される。
【0047】
また、同様に前処理・電着後の多関節ロボット7,8の移載動作途中で車体W内に滞留する電着塗料を確実に排出することができるため、電着後フロアコンベア3上または周辺の装置または搬送台車30上に電着塗料がたれ落ち硬化して、搬送台車30の位置決め停止装置の作動不良等の発生を防止することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されず、適宜変更して実施することが可能である。例えば、前記した実施形態においては、一対となる2台の多関節ロボット(5,6,7,8)を車体Wの前後に配設したが、これに限定されるものではなく、軸荷重の大きな多関節ロボットを使用することで、1台の多関節ロボットであってもよい。
【0049】
本実施形態においては、前処理前フロアコンベアと前処理・電着オーバーヘッドコンベアが平行に敷設されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、多関節ロボット(5,6,7,8)により、揺動ステップを実行した後に、移載するコンベアの搬送方向に適合させながら移載することもできる。
【符号の説明】
【0050】
1 前処理前フロアコンベア(フロアコンベア)
2 前処理前・電着オーバーヘッドコンベア(オーバーヘッドコンベア)
3 電着後フロアコンベア(フロアコンベア)
4 ドア治具
5,6 多関節ロボット
7,8 多関節ロボット
9 投受光器
10 搬送台車
20 搬送ハンガー
30 搬送台車
W 車体
W1 ドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体をフロアコンベアの搬送台車からオーバーヘッドコンベアの搬送ハンガー、またはオーバーヘッドコンベアの搬送ハンガーからフロアコンベアの搬送台車に移載するための車体の移載方法であって、
多関節ロボットで前記車体を支持した状態で揺動させて、当該車体を検査、その他当該車体に対する処理を行なう揺動ステップと、
前記多関節ロボットで支持した状態で前記車体を前記搬送ハンガーまたは前記搬送台車に移載する移載ステップと、
を含むことを特徴とする車体の移載方法。
【請求項2】
前記揺動ステップは、前記車体を縦軸回り、または横軸回りに揺動させることを特徴とする請求項1に記載の車体の移載方法。
【請求項3】
前記揺動ステップは、前記車体のドアが予め設定された状態に組み付けられているかどうかを検査することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車体の移載方法。
【請求項4】
前記揺動ステップは、前記車体内に滞留する塗料が流れ落ちるように揺動させて排出する処理を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車体の移載方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−84083(P2011−84083A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235901(P2009−235901)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】