説明

車体の補強構造

【課題】キャブを効率的に補強する。
【解決手段】補強部材30は、上面部31と背面部32と第1側面部33と第2側面部34とを一体的に備える。上面部31は、エアデフレクタ取付部35を有する。エアデフレクタ取付部35には、ルーフパネル2の上方に配置されるエアデフレクタが取り付けられる。第2側面部34は、ベース部40とシートベルトアンカー取付部41とを有する。ベース部40は、第1側面部33と略同一面内に形成されている。シートベルトアンカー取付部41は、ベース部40から車幅方向内側へ突設されてリヤピラーインナに接触する。シートベルトアンカー取付部41には、リヤピラーインナの内側に配置されるシートベルトアンカーが取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブを補強部材によって補強する車体の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
実開平6−67217号公報には、サイドパネルアウタとリヤピラーインナとの間の閉空間に、シートベルトアンカーを取り付けるため及びその取り付け部分を補強するためのシートベルトアンカー補強板を設けた構造が開示されている。
【0003】
【特許文献1】実開平6−67217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャブのルーフパネルの上方にエアデフレクタなどの部品を配置する場合、サイドパネルアウタの内側にエアデフレクタを取り付けるため及びその取り付け部分を補強するためのエアデフレクタ補強板を設けることがある。また、ルーフパネルとサイドパネルアウタとバックパネルとの連結部分に、これらを補強するためのコーナー補強板を設けることがある。
【0005】
しかし、上記構造では、各補強板がそれぞれ独立してキャブを補強している。このため、効率的な補強が行われず、各補強板の境界近辺において応力集中が生じる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、キャブを効率的に補強することが可能な補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、キャブを補強部材によって補強する車体の補強構造であって、キャブは、ルーフパネルとサイドパネルアウタとリヤピラーインナとバックパネルとを備える。
【0008】
サイドパネルアウタは、サイドパネルアウタ上面部とサイドパネルアウタ上側面部とリヤピラーアウタ側面部とリヤピラーアウタ後面部とを有する。サイドパネルアウタ上面部は、ルーフパネルの車幅方向外縁部に接合されて車幅方向外側へ延びる。サイドパネルアウタ上側面部は、サイドパネルアウタ上面部の車幅方向外縁部から下方へ曲折してドア開口の上方を区画する。リヤピラーアウタ側面部は、サイドパネルアウタ上側面部の後端部から連続して下方に延びてドア開口の後方を区画する。リヤピラーアウタ後面部は、リヤピラーアウタ側面部の後縁部から車幅方向内側へ曲折して延びる。
【0009】
リヤピラーインナは、リヤピラーアウタ側面部の車幅方向内側に対向配置され、リヤピラーアウタ側面部との間に閉空間を形成し、サイドパネルアウタに対して固定される。
【0010】
バックパネルは、ルーフパネル及びサイドパネルアウタの後方で車幅方向に沿って立設される。バックパネルは、ルーフパネルの後縁部に接合されると共に、リヤピラーアウタ後面部の車幅方向内縁部に接合される。
【0011】
補強部材は、上面部と背面部と第1側面部と第2側面部とを備え、これら上面部と背面部と第1側面部と第2側面部は、一体的に形成されている。
【0012】
上面部は、サイドパネルアウタ上面部の下面に対向配置され、サイドパネルアウタ上面部に固定される。背面部は、リヤピラーアウタ後面部の前面に対向配置され、サイドパネルアウタ又はリヤピラーインナの少なくとも一方に固定され、上面部の後端部から下方へ曲折して延びる。第1側面部は、上記閉空間内でサイドパネルアウタ上側面部の内面に対向配置され、上面部の車幅方向外縁部から下方に曲折して延びる。第2側面部は、リヤピラーアウタ側面部の内面に対向配置され、サイドパネルアウタ又はリヤピラーインナの少なくとも一方に固定され、背面部の車幅方向外縁部から前方に曲折して延びる。
【0013】
上面部は、第1取付部を有する。第1取付部には、ルーフパネルの上方に配置される取付部品が取り付けられる。第2側面部は、ベース部と第2取付部とを有する。ベース部は、第1側面部と略同一面内に形成されている。第2取付部は、ベース部から車幅方向内側へ突設されてリヤピラーインナに接触する。第2取付部には、リヤピラーインナの内側に配置されるシートベルトアンカーが取り付けられる。
【0014】
上記構成では、第1取付部は、ルーフパネルの上方に取り付けられる取付部品を支持し、第2取付部は、リヤピラーインナの内側に配置されるシートベルトアンカーを支持する。第1取付部は、第1側面部及び背面部によって補強され、第2取付部は、ベース部によって補強される。さらに、上面部と背面部と第1側面部と第2側面部とは、一体的に形成され、且つ第2側面部のベース部は、第1側面部と略同一面内に形成されている。このため、取付部品やシートベルトアンカーからの負荷を、前後方向、上下方向、及び車幅方向の3方向に分散させて支持することができ、応力集中を抑制することができる。また、キャブのコーナー部分を強固に補強することができる。従って、キャブを効率的に補強することができる。
【0015】
また、1つの補強部材によって、取付部品の支持とシートベルトアンカーの支持とコーナー部の補強とを行うことができるので、部品点数の削減及び組み付け工数の削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、キャブを効率的に補強することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係わるキャブの補強構造の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、トラックなどの車両のキャブ1を左斜め後方から視た状態を模式的に示す斜視図、図2は、補強部材30を左斜め後方から視た斜視図、図3は、図1のIII−III断面図、図4は、図1のIV−IV断面図である。なお、以下の説明において、前後方向は車両の進行方向の前後を示し、内外方向は車幅方向の内外を示す。
【0018】
図1に示すように、キャブ1の外面は、ルーフパネル2とサイドパネルアウタ3とバックパネル4とフロントパネル5とから概ね構成される。サイドパネルアウタ3は、ドア開口7を区画する。ルーフパネル2には、サイドパネルアウタ3とバックパネル4とフロントパネル5が各々連結される。サイドパネルアウタ3には、バックパネル4とフロントパネル5が各々連結される。
【0019】
サイドパネルアウタ3の後方柱部分の内側には、リヤピラーインナ6(図3に示す)が配設される。サイドパネルアウタ3の上方部分の内側には、サイドパネルインナ28(図3に示す)が配設される。サイドパネルインナ28の後縁部は、リヤピラーインナ6の上部の前縁部に連結される。キャブ1の左後方のコーナー部分(角部分)8には、点線で図示するように補強部材30が配設される。なお、特に図示しないが、キャブ1の右側にもサイドアウタがルーフパネル2と連結され、キャブ1の右後方の角部分にも補強部材30が同様に配設される。
【0020】
次に、キャブ1のうち補強部材30が配設される左後方のコーナー部分8の構造について、図1、図3及び図4を参照してさらに詳しく説明する。
【0021】
サイドパネルアウタ3は、サイドパネルアウタ上面部10とサイドパネルアウタ上側面部11とリヤピラーアウタ側面部12とリヤピラーアウタ後面部13とリヤピラーアウタ前面部14とを有する。
【0022】
サイドパネルアウタ上面部10の内縁部は、ルーフパネル2の外縁部2aに接合されて外側へ延びる。サイドパネルアウタ上側面部11は、サイドパネルアウタ上面部10の外縁部から下方へ曲折し、サイドパネルアウタ上側面部11の下縁部は、ドア開口7の上方を区画する。
【0023】
サイドパネルインナ28は、サイドパネルアウタ上面部10の下方で且つサイドパネルアウタ上側面部11の内側に対向配置され、サイドパネルアウタ上面部10及びサイドパネルアウタ上側面部11との間に閉空間29を形成する。サイドパネルインナ28の上縁部と下縁部とは、サイドパネルアウタ上面部10の内縁部とサイドパネルアウタ上側面部11の下縁部とにそれぞれ接合される。
【0024】
リヤピラーアウタ側面部12は、サイドパネルアウタ上側面部11の後端部から略L状に連続して下方に延びる。リヤピラーアウタ側面部12の前縁部は、ドア開口7の後方を区画する。リヤピラーアウタ後面部13は、リヤピラーアウタ側面部12の後縁部から内側へ曲折して延びる。リヤピラーアウタ前面部14は、リヤピラーアウタ側面部12の前縁部から内側へ曲折して延びる。
【0025】
リヤピラーインナ6は、リヤピラーアウタ側面部12の内側に対向配置され、リヤピラーアウタ側面部12との間に閉空間9を形成する。閉空間9の上部は、閉空間29の後部と連通する。リヤピラーインナ6の前縁部はリヤピラーアウタ側面部12の前縁部に接合され、リヤピラーインナ6の後縁部はリヤピラーアウタ側面部12の後縁部に接合される。
【0026】
バックパネル4は、ルーフパネル2及びサイドパネルアウタ3の後方で車幅方向に沿って立設される。バックパネル4の上縁部は、ルーフパネル2の後縁部に接合される。バックパネル4の外縁部は、リヤピラーアウタ後面部13の内縁部とリヤピラーインナ6の内縁部と積層され、これらの積層部分25が相互に接合される。
【0027】
次に、補強部材30の構造について、図2〜図4を参照して説明する。
【0028】
補強部材30は、上面部31と背面部32と第1側面部33と第2側面部34とを備え、これら上面部31と背面部32と第1側面部33と第2側面部34は、一体的に形成されている。
【0029】
上面部31は、閉空間29内でサイドパネルアウタ上面部10の下面に対向配置される。上面部31の内縁部は、ルーフパネル2の外縁部2aとサイドパネルアウタ上面部10の内縁部とサイドパネルインナ28の上縁部と積層され、これらの積層部分26が相互に接合される。
【0030】
背面部32は、閉空間9内でリヤピラーアウタ後面部13の前面に対向配置され、上面部31の後縁部から下方へ曲折して延びる。上面部31と背面部32とは、湾曲状に連続する。背面部32の内縁部は、リヤピラーインナ6に接合される。なお、背面部32をサイドパネルアウタ3に接合してもよい。
【0031】
第1側面部33は、閉空間29内でサイドパネルアウタ上側面部11の内面に対向配置され、上面部31の外縁部から下方に曲折して延びる。
【0032】
第2側面部34は、閉空間9内でリヤピラーアウタ側面部12の内面及びリヤピラーインナ6の裏面(閉空間9を区画する面)に対向配置され、背面部32の外縁部から前方に曲折して延びる。リヤピラーアウタ前面部14の内縁部は前方に曲折され、第2側面部34の前縁部は、リヤピラーアウタ前面部14の内縁部とリヤピラーインナ6の前縁部と積層され、これらの積層部分27が相互に接合される。
【0033】
上面部31は、複数のボルト挿通孔36が形成されたエアデフレクタ取付部(第1取付部)35を有する。エアデフレクタ取付部35は、サイドパネルアウタ上面部10の下面に近接又は接触する。ルーフパネル2の上方に配置されるエアデフレクタ(取付部品)37は、ボルト挿通孔36を挿通するボルト38とこれと螺合するナット39とによって、エアデフレクタ取付部35に取り付けられて支持される。
【0034】
第2側面部34は、ベース部40とシートベルトアンカー取付部(第2取付部)41とを有する。ベース部40は、第1側面部33と略同一面内に形成される。シートベルトアンカー取付部41は、ベース部40から内側へ略U状に突設されてリヤピラーインナ6の裏面に面接触する。なお、シートベルトアンカー取付部41をリヤピラーインナ6に接合してもよい。
【0035】
シートベルトアンカー取付部41には、複数のボルト挿通孔43が形成されている。リヤピラーインナ6の表面には内装部材(トリム)が取り付けられ、内装部材上にシートベルトアンカー42が配置される。なお、図3では、内装部材の図示を省略している。シートベルトアンカー42は、ボルト挿通孔43を挿通するボルト44とこれと螺合するナット45とによって、シートベルトアンカー取付部41に取り付けられ支持される。
【0036】
本実施形態によれば、エアデフレクタ取付部35は、エアデフレクタ37を下方から支持し、シートベルトアンカー取付部41は、シートベルトアンカー42を側方から支持する。
【0037】
ここで、エアデフレクタ取付部35は、第1側面部33及び背面部32によって補強される。また、シートベルトアンカー取付部41は、ベース部40によって補強される。さらに、上面部31と背面部32と第1側面部33と第2側面部34とは、一体的に形成され、且つ第2側面部34のベース部40は、第1側面部33と略同一面内に形成されている。このため、エアデフレクタ37やシートベルトアンカー42から過大な負荷が急激に入力した場合であっても、この負荷を前後方向、上下方向、及び車幅方向(左右方向)の3方向に分散させて支持することができ、応力集中を抑制することができる。また、キャブ1のコーナー部分8を強固に補強することができる。従って、キャブ1を効率的に補強することができる。
【0038】
また、一つの補強部材30によって、エアデフレクタ37の支持とシートベルトアンカー42の支持とコーナー部8の補強とを行うことができるので、部品点数の削減及び組み付け工数の削減を図ることができる。
【0039】
なお、上述の実施形態においては、ルーフパネル2の上方にエアデフレクタ37を取り付ける例を示したが、他の取付部品、例えばキャリヤなどのルーフ架装品を取り付ける場合には、上記エアデフレクタ取付部35をルーフ架装品の取付部とすればよい。
【0040】
上述の実施形態の説明は本発明の一例である。このため、本発明は上述の実施形態に限定されることはなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、上述の実施形態以外であっても種々の変更が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、様々なキャブの補強構造に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係る補強部材が配設されたキャブを斜め後方から視た斜視図である。
【図2】補強部材を斜め後方から視た斜視図である。
【図3】図1のIII−III断面図である。
【図4】図1のIV−IV断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1:キャブ
2:ルーフパネル
3:サイドパネルアウタ
4:バックパネル
5:フロントパネル
6:リヤピラーインナ
9:閉空間
10:サイドパネルアウタ上面部
11:サイドパネルアウタ上側面部
12:リヤピラーアウタ側面部
13:リヤピラーアウタ後面部
14:リヤピラーアウタ前面部
30:補強部材
31:上面部
32:背面部
33:第1側面部
34:第2側面部
35:エアデフレクタ取付部(第1取付部)
37:エアデフレクタ(取付部品)
40:ベース部
41:シートベルトアンカー取付部(第2取付部)
42:シートベルトアンカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブを補強部材によって補強する車体の補強構造であって、
前記キャブは、
ルーフパネルと、
前記ルーフパネルの車幅方向外縁部に接合されて車幅方向外側へ延びるサイドパネルアウタ上面部と、このサイドパネルアウタ上面部の車幅方向外縁部から下方へ曲折してドア開口の上方を区画するサイドパネルアウタ上側面部と、前記サイドパネルアウタ上側面部の後端部から連続して下方に延びて前記ドア開口の後方を区画するリヤピラーアウタ側面部と、このリヤピラーアウタ側面部の後縁部から車幅方向内側へ曲折して延びるリヤピラーアウタ後面部と、を有するサイドパネルアウタと、
前記リヤピラーアウタ側面部の車幅方向内側に対向配置され、該リヤピラーアウタ側面部との間に閉空間を形成し、前記サイドパネルアウタに対して固定されるリヤピラーインナと、
前記ルーフパネル及び前記サイドパネルアウタの後方で車幅方向に沿って立設され、前記ルーフパネルの後縁部に接合されると共に前記リヤピラーアウタ後面部の車幅方向内縁部に接合されるバックパネルと、を備え、
前記補強部材は、
前記サイドパネルアウタ上面部の下面に対向配置され、該サイドパネルアウタ上面部に固定される上面部と、
前記リヤピラーアウタ後面部の前面に対向配置され、前記サイドパネルアウタ又は前記リヤピラーインナの少なくとも一方に固定され、前記上面部の後端部から下方へ曲折して延びる背面部と、
前記サイドパネルアウタ上側面部の内面に対向配置され、前記上面部の車幅方向外縁部から下方に曲折して延びる第1側面部と、
前記閉空間内で前記リヤピラーアウタ側面部の内面に対向配置され、前記サイドパネルアウタ又は前記リヤピラーインナの少なくとも一方に固定され、前記背面部の車幅方向外縁部から前方に曲折して延びる第2側面部と、を備え、
前記上面部と前記背面部と前記第1側面部と前記第2側面部は、一体的に形成され、
前記上面部は、前記ルーフパネルの上方に配置される取付部品が取り付けられる第1取付部を有し、
前記第2側面部は、前記第1側面部と略同一面内に形成されるベース部と、このベース部から車幅方向内側へ突設されて前記リヤピラーインナに接触し、該リヤピラーインナの内側に配置されるシートベルトアンカーが取り付けられる第2取付部と、を有する
ことを特徴とする車体の補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−126981(P2008−126981A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317793(P2006−317793)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【特許番号】特許第4078656号(P4078656)
【特許公報発行日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】