説明

車体フロア構造

【課題】前・後突時にフロアパネルを変形し難くし、衝突荷重を効果的に分散する。
【解決手段】フロアトンネルフレーム2と、左右のサイドシル5,6と、フロアトンネルフレーム2と左右のサイドシル5,6とを連結する複数の横骨格部材(ミドルクロスメンバー7、フロントクロスメンバー9、エクステンション11,12、アウトリガー13,14)と、フロアトンネルフレーム2とサイドシル5,6とに掛け渡されたフロアパネル3,4とを備え、横骨格部材は、平面視で前後方向に対して傾斜して延びサイドシル5,6に連なる斜延部を有し、フロアトンネルフレーム2とサイドシル5,6と横骨格部材とで囲まれたフロアパネル3,4の各領域に、サイドシル5,6と斜延部との交点を中心とする同心円弧状のビード50を複数条設け、ビード50の一端がサイドシル5,6に直交し、他端が前記横骨格部材に対して直交する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体フロア構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体フロア構造の中には、剛性を高めるために、サイドシルとクロスメンバとが交差する部位を中心とする凸形状あるいは凹形状のビードをフロアパネルのほぼ全面に設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようにビードを設けたフロアパネルでは、フロアパネルに印加された荷重がビードの延びる方向に沿って伝達されるので、これを利用して、車両前面衝突(以下、前突と略す)あるいは車両後面衝突(以下、後突と略す)のときに衝突荷重をフロアパネルを介してサイドシルへ伝達し、荷重の分散化を図り、各部材の荷重負担を低減することが考えられる。
【特許文献1】特開2006−298076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前突時あるいは後突時に衝突荷重がフロアパネルに伝達された場合に、荷重に対してビードが突っ張りきれずに折れ曲がり、フロアパネルが変形してしまっては、サイドシルへの荷重伝達に支障を来し、荷重の分散ができなくなるという課題がある。
そこで、この発明は、前突時あるいは後突時にフロアパネルが変形し難く、効果的に衝突荷重を分散することができる車体フロア構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る車体フロア構造では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、車幅方向中央に配置され車体前後方向に延びるフロアトンネルフレーム(例えば、後述する実施例におけるフロアトンネルフレーム2)と、車体左右に配置され車体前後方向に延びるサイドシル(例えば、後述する実施例におけるサイドシル5,6)と、前記フロアトンネルフレームと前記左右のサイドシルとを車幅方向に連結する複数の横骨格部材(例えば、後述する実施例におけるミドルクロスメンバー7、フロントクロスメンバー9,10、エクステンション11,12、アウトリガー13,14)と、前記フロアトンネルフレームと前記サイドシルとに掛け渡されたフロアパネル(例えば、後述する実施例におけるフロアパネル3,4)とを備え、前記横骨格部材は、平面視で前後方向に対して傾斜して延び前記サイドシルに連なる斜延部(例えば、後述する実施例におけるアウトリガー13,14、前傾部72)を有し、前記フロアトンネルフレームと前記サイドシルと前記横骨格部材とで囲まれた前記フロアパネルの各領域(例えば、後述する実施例における前方領域S1、後方領域S2)に、前記サイドシルと前記斜延部との交点を中心とする同心円弧状のビード(例えば、後述する実施例におけるビード50)を複数条設け、前記ビードの少なくとも一部は、一端が前記サイドシルに直交し、他端が前記横骨格部材に対して直交するように延びていることを特徴とする車体フロア構造である。
このように構成することにより、前突時あるいは後突時に横骨格部材に作用する衝突荷重は、横骨格部材の斜延部を介して直接サイドシルに伝達されるとともに、フロアパネルを介してサイドシルに伝達される。フロアパネルのビードの少なくとも一部は、一端がサイドシルに直交し、他端が横骨格部材に対して直交するように延びているので、該ビードは衝突荷重を正面から受けて突っ張ることができ、ビードが折れ難く、フロアパネルが変形し難くなる。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記フロアトンネルフレームの前端部と前記サイドシルの前端部とを連結する前記横骨格部材は、前記サイドシルに連結されるアウトリガー(例えば、後述する実施例におけるアウトリガー13,14)と前記フロアトンネルフレームに連結されるエクステンション(例えば、後述する実施例におけるエクステンション11,12)とを連結してなり、前記アウトリガーの前端に車体前後方向に延びるフロントサイドフレームを連結し、前記ビードの前記他端は、前記フロントサイドフレームの幅内において該幅方向に対して直交するように延びていることを特徴とする。
このように構成することにより、前突時の衝突荷重はアウトリガーを介して直接サイドシルに伝達されるとともに、フロアパネルを介してサイドシルに伝達され、また、エクステンションを介してフロアトンネルフレームにも伝達される。ビードの他端は、フロントサイドフレームの幅内において該幅方向に対して直交するように延びているので、該ビードは前突時の衝突荷重を正面から受けて突っ張ることができ、ビードが折れ難く、フロアパネルが変形し難くなる。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記フロアトンネルフレームの後端部と前記サイドシルの後端部とを連結する前記横骨格部材(例えば、後述する実施例におけるミドルクロスメンバー7)は、前記斜延部(例えば、後述する実施例における前傾部72)に連なり車体前後方向に対し直交して延びる直線部(例えば、後述する実施例における直線部71)を有し、前記斜延部と前記直線部との接続部に補強部材(例えば、後述する実施例におけるバルクヘッド73)を設け、前記ビードの前記他端は前記直線部に対して直交するように延びていることを特徴とする。
このように構成することにより、後突時の衝突荷重は横骨格部材の斜延部を介して直接サイドシルに伝達されるとともに、フロアパネルを介してサイドシルに伝達される。横骨格部材には、斜延部と直線部との接続部が補強部材によって補強されているので、後突時に横骨格部材が変形し難い。ビードの他端は、横骨格部材の直線部に対して直交するように延びているので、該ビードは後突時の衝突荷重を正面から受けて突っ張ることができ、ビードが折れ難く、フロアパネルが変形し難くなる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、前突時あるいは後突時に横骨格部材に作用する衝突荷重は、横骨格部材の斜延部を介して直接サイドシルに伝達されるとともに、フロアパネルを介してサイドシルに伝達されるので、フロアパネルへの荷重負担を低減することができ、る。また、フロアパネルのビードの少なくとも一部が衝突荷重を正面から受けて突っ張ることができ、フロアパネルが変形し難くなるので、フロアパネルを介してのサイドシルへの荷重分散を効果的に行うことができる。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、前突時の衝突荷重はアウトリガーを介して直接サイドシルに伝達されるとともに、フロアパネルを介してサイドシルに伝達され、また、エクステンションを介してフロアトンネルフレームにも伝達されるので、荷重分散により、フロアトンネルフレームおよびフロアパネルへの荷重負担を低減することができる。その結果、フロアトンネルフレームに対する補強度合いを低減することができ、軽量化が可能になる。また、フロアパネルに対する荷重負担も低減するので、フロアパネルの軽量化も可能になる。さらに、フロアパネルを変形し難くすることができるので、フロアパネルを介してのサイドシルへの荷重分散を効果的に行うことができる。
【0010】
請求項3に係る発明によれば、後突時の衝突荷重は横骨格部材の斜延部を介して直接サイドシルに伝達されるとともに、フロアパネルを介してサイドシルに伝達されるので、フロアパネルへの荷重負担を低減することができる。また、横骨格部材は補強部材によって補強され、後突時に変形し難いので、サイドシルへの荷重分散を効果的に行うことができる。また、フロアパネルを変形し難くすることができるので、フロアパネルを介してのサイドシルへの荷重分散を効果的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明に係る車体フロア構造の実施例を図1から図10の図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、上下方向、前後方向、左右方向は車体の上下方向、前後方向、左右方向と一致する。
【0012】
図1、図2に示すように、車両のフロア1には、車幅方向中央部に車体前後方向に延びるフロアトンネルフレーム2が形成されている。このフロアトンネルフレーム2の両側縁には左右のフロアパネル3,4の内側縁が接合され、左右のフロアパネル3,4の外側縁にそれぞれ車体前後方向に延びる車体骨格部材である左右のサイドシル5,6が取り付けられている。つまり、左右のフロアパネル3,4はフロアトンネルフレーム2と左右のサイドシル5,6とに掛け渡されている。左右のサイドシル5,6の後部同士が車体骨格部材であるミドルクロスメンバー(横骨格部材)7によって連結され、ミドルクロスメンバー7の前縁部は左右のフロアパネル3,4の後縁に接合されている。また、フロアトンネルフレーム2の前後方向略中央部と左右のサイドシル5,6がそれぞれ左右のフロントクロスメンバー(横骨格部材)9,10によって連結されている。
【0013】
一方、フロアトンネルフレーム2の前端部の両側壁にはそれぞれエクステンション11、12の一端部が接合され、左右のサイドシル5,6の前端部にはそれぞれアウトリガー13,14の一端部が接合され、これら左右のエクステンション11,12がアウトリガー13,14の内側壁に連結されている。この実施例では、主としてフロアパネル3,4とフロアトンネルフレーム2とでフロア1を構成している。
【0014】
図3に示すように、フロアトンネルフレーム2は、上壁17と傾斜した両側壁18,18によってフロアパネル3,4の上方に凸となるように膨出形成されたトンネル本体19と、このトンネル本体19の両側縁を左右のフロアパネル3,4面よりも下側に延出した後、水平方向外側に延出し、フロアパネル3,4下面にフランジ部20によって溶接されるウイング部21,21とで構成されている。左右のフロアパネル3,4の内側縁にはフランジ部22が立ち上げ形成され、このフランジ部22がフロアトンネルフレーム2のトンネル本体19の両側壁18,18に溶接されている。したがって、フロアトンネルフレーム2の両側壁18,18であって、フロアパネル3,4下に、フロアトンネルフレーム2のウイング部21,21とフロアパネル3,4とで形成された車体前後方向に延出する閉断面構造部H1が形成されることとなる。
【0015】
サイドシル5,6は、車室内側に凸形状に形成されたサイドシルインナー23と、このサイドシルインナー23と共に上下の接合フランジ部24,24で接合されて閉断面構造部を形成するレインフォース25と、このレインフォース25の外側に閉断面構造部を形成し前記接合フランジ部24に接合されるサイドシルアウター8とで構成されている。サイドシルインナー23はほぼ全長に亘って同一断面形状に形成されているが、図1、図2に示すようにレインフォース25は前端および後端から前後方向中央に進むにしたがって徐々に外側への突出寸法が大きくなる傾斜閉断面形状部HF2、HR2が形成されている。レインフォース25の外側への突出寸法が最大となる最大突出閉断面構造部H2は車体前後方向所定長さに亘って形成され、この最大突出閉断面構造部H2はミドルクロスメンバー7とフロントクロスメンバー9,10との間に配置されている。サイドシルインナー23の内側壁26に左右のフロアパネル3,4の外側縁に立ち上げ形成されたフランジ部27が接合されている。
【0016】
図4に示すように、ミドルクロスメンバー7は、略L字形断面の2つの部材を対向配置し、後部上縁フランジ部28と前部下縁フランジ部29とを互いに溶接してフロアパネル3,4上面に車体骨格部となる略矩形の閉断面構造部H3を形成するものである。前部下縁フランジ部29は左右のフロアパネル3,4の後縁に溶接されている。また、ミドルクロスメンバー7は、図1、図2に示すように、車体前後方向に対し直交して延びる直線部71と、直線部71の左右両端から平面視斜め前方に屈曲形成された前傾部(斜延部)72,72、とから構成されており、閉断面構造部H3の内部には、補強部材としてのバルクヘッド73が直線部71と前傾部72とを仕切るように接合されている。
そして、ミドルクロスメンバー7の前傾部72,72の後壁および左右のサイドシル5,6の後部内壁に左右のリヤサイドフレーム15,16の前端部が連結され、バルクヘッド73,73とリヤサイドフレーム15,16の内壁がほぼ整合している。
【0017】
フロントクロスメンバー9,10は下側に開いたハット型断面形状の部材であって、左右のフロアパネル3,4上面に前後のフランジ部31,31が接合され、フロアパネル3,4上面に車幅方向に沿う車体骨格部となる閉断面構造部H4を形成するものである。フロントクロスメンバー9,10の外側端はサイドシルインナー23の上壁を含む側壁26に接合され、内側端は図1,図2に示すように、前フランジ部32と後フランジ部33とがフロアトンネルフレーム2の側壁18外面に、上壁34の端縁はフロアトンネルフレーム2の上壁17に接合されている。
【0018】
ここで、図3に示すように、フロアトンネルフレーム2のトンネル本体19の裏側には、左右のフロントクロスメンバー9,10を結ぶ位置にジョイントフレーム35が接合されている。このジョイントフレーム35は、フロントクロスメンバー9,10とは逆に上側に開いたハット型断面形状の部材であって、下壁36はフロアパネル3,4面に整合している。ジョイントフレーム35の前側フランジ37と後側フランジ38(図1,図2参照)はトンネル本体19の裏側に接合され、下壁36の両端縁39,39はフロアトンネルフレーム2のトンネル本体19の裏側に接合されている。
これによりジョイントフレーム35とフロアトンネルフレーム2との間に閉断面構造部H5が形成され、この閉断面構造部H5が左右のフロントクロスメンバー9,10とフロアパネル3,4との間に形成された閉断面構造部H4と連なり、車幅方向に沿ってサイドシル5,6を連結する実質的に連続した車体骨格部材を形成することとなる。
【0019】
図5に示すように、左右のエクステンション11,12の一端側はフロアトンネルフレーム2のウイング部21を下方から全面を覆うように上に開いた形状に形成されたものであって、内側壁40はフロアパネル3,4のフランジ部22に至る部位をフロアトンネルフレーム2のトンネル本体19の側壁18裏面に接合されている。エクステンション11,12の一端側の外側のフランジ部41はウイング部21のフランジ部20に重合されている。
【0020】
一方、アウトリガー13,14の一端部はサイドシルインナー23,23の下壁42に接合される下壁43とこの下壁43からフロパネル3,4の下面に立ち上がりフランジ部44によってフロアパネル3,4に接合され、サイドシル5,6とフロアパネル3,4との間に閉断面構造部H6を形成している。
アウトリガー13,14は、サイドシルインナー23,23との接合部から車体前方に進むにしたがって車幅方向内側に延び、その前端がフロアトンネルフレーム2とサイドシル5,6との間において車幅方向略中央に位置している。つまり、アウトリガー13,14は、平面視において前後方向に対し傾斜して延び、サイドシルインナー23,23に連なっている。
【0021】
このように形成された、エクステンション11,12とアウトリガー13,14が図4に鎖線で示すように、フロアパネル3,4の前縁上面に接合されたダッシュボードパネル45の裏面に沿って、徐々に前側に立ち上がるようにして形成され、図6、図7に示すように、前側がハット型断面形状に形成されたアウトリガー13,14の下壁43にエクステンション11,12の下壁46が接合され両者が連結されている。つまり、フロアトンネルフレーム2の前端部と左右のサイドシル5,6の前端部は、エクステンション11,12とアウトリガー13,14によって車幅方向に連結されており、エクステンション11,12とアウトリガー13,14は横骨格部材を構成し、アウトリガー13,14は横骨格部材の斜延部を構成する。
そして、アウトリガー13の前端にフロントサイドフレーム74(図2参照)の後端が連結されている。尚、図6,図7において鎖線で示すのはアウトリガー13,14、エクステンション11,12との間に閉断面構造部H6を形成するダッシュボードパネル45である。
【0022】
図1、図2に示すように、フロアパネル3,4にはそのほぼ全面に波紋状の多数のビード50が規則的に設けられるとともに、多数の液抜き孔51と、複数の位置決め孔52が設けられている。フロアパネル3,4は、フロアトンネルフレーム2を中心にして左右対称形をなし、ビード50、液抜き孔51、位置決め孔52についてもフロアパネル3,4では左右対称な配列となっている。以下、左側のフロアパネル3について詳述し、右側のフロアパネル4についての説明は省略する。
なお、図3〜図5の断面図において、正確には複雑な形状となるビード50の断面形状は、図示都合上単純な形状として示す。
【0023】
同じフロアパネル3において、フロントクロスメンバー9を境にして前方と後方ではビード50の配列パターンが異なっている。
フロアパネル3においてフロントクロスメンバー9よりも前方の略矩形領域(以下、前方領域という)S1では、アウトリガー13の一端部における断面中心とサイドシルインナー23の内側壁26との交点X1を中心としてビード50が同心円弧状に一定間隔で複数条設けられている。ビード50の一端側はサイドシルインナー23に直交しており、ビード50の他端側はアウトリガー13あるいはエクステンション11に接近するように延び、ビード50の一部の他端側は、アウトリガー13に連結されるフロントサイドフレーム74の幅内において該幅方向に対して直交するように延び、エクステンション11とアウトリガー13との接続部Qの近傍に位置している。
【0024】
一方、フロアパネル3においてフロントクロスメンバー9よりも後方の略矩形領域(以下、後方領域という)S2では、ミドルクロスメンバー7の左側の前傾部72における断面中心とサイドシルインナー23の内側壁26との交点X2を中心としてビード50が同心円弧状に一定間隔で複数条設けられている。ビード50の一端側はサイドシルインナー23に直交しており、ビード50の他端側はミドルクロスメンバー7に接近するように延び、ビード50の一部の他端側は、ミドルクロスメンバー7の直線部71に対して直交するように延びている。
【0025】
ビード50はプレス加工により一般面よりも上方に突出させた台形状に形成されており、隣接するビード50,50間に谷部53が形成されている。
このように多数のビード50を設けたことによって、フロアパネル3,4の剛性を高めている。なお、ビード50の高さは、フロアパネル3,4に必要とされる剛性と車室内空間との兼ね合いにより適宜設定することが可能である。
【0026】
また、前方領域S1では、アウトリガー13とサイドシルインナー23との結合部と、フロアトンネルフレーム2とフロントクロスメンバー9との結合部とを結ぶ対角線近くであってビード50に直交する直線上に、液抜き孔51および位置決め孔52が配置されている。一方、後方領域S2では、フロアトンネルフレーム2とフロントクロスメンバー9との結合部と、ミドルクロスメンバー7とサイドシルインナー23との結合部とを結ぶ対角線近くであってビード50に直交する直線上に、液抜き孔51および位置決め孔52が配置されている。
【0027】
液抜き孔51は隣接するビード50,50間の谷部53の中央に1つずつ設けられている。この液抜き孔51はフロアパネル3の電着塗装工程において、電着液からフロアパネル3を取り出した際にフロアパネル3から電着液を抜くためのものである。
位置決め孔52はフロアパネル3の前方領域S1と後方領域S2にそれぞれ1つずつ設けられており、隣接する2つのビード50,50を連結した部位に設けられている。位置決め孔52は、フロア1を組み立てる際に、位置決め孔52に位置決め治具を挿入してフロアパネル3,4を位置決めするためものである。
【0028】
このように構成された車体フロア構造において、フロントサイドフレーム74を介して前突による衝突荷重が作用したとき、およびリヤサイドフレーム15を介して後突による衝突荷重が作用したときの荷重の伝達を、図8および図9を参照してフロア1の左側を例にして説明する。なお、図8および図9はフロア構造を簡略化して示した模式図であり、図8では説明の都合上、フロアパネル3を省略している。
【0029】
図8に示すように、前突時にフロントサイドフレーム74からアウトリガー13に入力した衝突荷重FFは、サイドシル5に斜めに繋がるアウトリガー13を介してサイドシル5に直接伝達されるとともに、フロアパネル3を介してサイドシル5に伝達され、さらに、エクステンション11を介してフロアトンネルフレーム2にも伝達される。このように衝突荷重FFが分散されるので、フロアトンネルフレーム2あるいはフロアパネル3への荷重負担が低減される。その結果、フロアトンネルフレーム2に対する補強を低減することができ、フロアトンネルフレーム2の軽量化が可能になり、フロアパネル3に対する負担も低減するので、フロアパネル3の軽量化も可能になる。したがって、車体重量を減少させて燃費向上に寄与することができる。
【0030】
また、荷重がフロアパネル3を介してサイドシル5に伝達される際に、荷重はビード50の長手方向に沿って伝達されるが、ビード50の一部については、その一端側がサイドシル5に直交し、他端側がフロントサイドフレーム74の幅内において該幅方向に対して直交するように延びていることから、該ビード50はアウトリガー13から伝達される荷重を正面から受けて突っ張ることができ、ビード50が折れ難くなる。その結果、フロアパネル3が変形し難くなるので、フロアパネル3に伝達された荷重を効果的にサイドシル5に伝達することができる。
【0031】
一方、図9に示すように、後突時にリヤサイドフレーム15に入力した衝突荷重RFは、サイドシル5に斜めに繋がるリヤサイドフレーム15を介してサイドシル5に直接伝達されるとともに、ミドルクロスメンバー7に伝達される。さらに、ミドルクロスメンバー7に伝達された荷重は、サイドシル5に斜めに繋がるミドルクロスメンバー7の前傾部72を介してサイドシル5に直接伝達されるとともに、フロアパネル3を介してサイドシル5に伝達される。このように衝突荷重RFが分散されるので、フロアパネル3への荷重負担が低減され、フロアパネル3の軽量化が可能になる。したがって、車体重量を減少させて燃費向上に寄与することができる。
【0032】
特に、この実施例では、ミドルクロスメンバー7の直線部71と前傾部72との接続部にバルクヘッド73が設けられ、しかも、バルクヘッド73とリヤサイドフレーム15の内壁とがほぼ整合して配置されているので、衝突荷重RFがミドルクロスメンバー7に作用したときに、バルクヘッド73がミドルクロスメンバー7の変形を阻止し、前傾部72を介してのサイドシル5への荷重伝達およびフロアパネル3を介してのサイドシル5への荷重伝達を効果的に行うことができる。
【0033】
また、荷重がフロアパネル3を介してサイドシル5に伝達される際に、荷重はビード50の長手方向に沿って伝達されるが、ビード50の一部については、その一端側がサイドシル5に直交し、他端側がミドルクロスメンバー7の直線部71に対して直交するように延びていることから、該ビード50はミドルクロスメンバー7の直線部71から伝達される荷重を正面から受けて突っ張ることができ、ビード50が折れ難くなる。その結果、フロアパネル3が変形し難くなるので、フロアパネル3を介してのサイドシル5への荷重伝達を効果的に行うことができる。
【0034】
〔他の実施例〕
なお、この発明は前述した実施例に限られるものではない。
例えば、前述した実施例ではビードの断面形状を台形としたが、ビードの断面形状は半円形や三角形等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明に係る車体フロアの実施例における外観斜視図である。
【図2】前記実施例における車体フロアの平面図である。
【図3】図2のD−D断面図である。
【図4】図2のE−E断面図である。
【図5】図2のC−C断面図である。
【図6】図2のB−B断面図である。
【図7】図2のA−A断面図である。
【図8】前記実施例の車体フロアにおいて前突時の荷重伝達を説明するための模式図である。
【図9】前記実施例の車体フロアにおいて後突時の荷重伝達を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0036】
1 フロア
2 フロアトンネルフレーム
3,4 フロアパネル
5,6 サイドシル
7 ミドルクロスメンバー(横骨格部材)
9,10 フロントクロスメンバー(横骨格部材)
11,12 エクステンション(横骨格部材)
13,14 アウトリガー(横骨格部材、斜延部)
50 ビード
72 前傾部(斜延部)
73 バルクヘッド(補強部材)
74 フロントサイドフレーム
S1 前方領域(略矩形領域)
S2 後方領域(略矩形領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向中央に配置され車体前後方向に延びるフロアトンネルフレームと、車体左右に配置され車体前後方向に延びるサイドシルと、前記フロアトンネルフレームと前記左右のサイドシルとを車幅方向に連結する複数の横骨格部材と、前記フロアトンネルフレームと前記サイドシルとに掛け渡されたフロアパネルとを備え、前記横骨格部材は、平面視で前後方向に対して傾斜して延び前記サイドシルに連なる斜延部を有し、前記フロアトンネルフレームと前記サイドシルと前記横骨格部材とで囲まれた前記フロアパネルの各領域に、前記サイドシルと前記斜延部との交点を中心とする同心円弧状のビードを複数条設け、前記ビードの少なくとも一部は、一端が前記サイドシルに直交し、他端が前記横骨格部材に対して直交するように延びていることを特徴とする車体フロア構造。
【請求項2】
前記フロアトンネルフレームの前端部と前記サイドシルの前端部とを連結する前記横骨格部材は、前記サイドシルに連結されるアウトリガーと前記フロアトンネルフレームに連結されるエクステンションとを連結してなり、前記アウトリガーの前端に車体前後方向に延びるフロントサイドフレームを連結し、前記ビードの前記他端は、前記フロントサイドフレームの幅内において該幅方向に対して直交するように延びていることを特徴とする請求項1に記載の車体フロア構造。
【請求項3】
前記フロアトンネルフレームの後端部と前記サイドシルの後端部とを連結する前記横骨格部材は、前記斜延部に連なり車体前後方向に対し直交して延びる直線部を有し、前記斜延部と前記直線部との接続部に補強部材を設け、前記ビードの前記他端は前記直線部に対して直交するように延びていることを特徴とする請求項1に記載の車体フロア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−265536(P2008−265536A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111555(P2007−111555)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】