説明

車体側部構造

【課題】側面衝突時の荷重をフロアへ効率よく伝達し、センシング性能を向上させることができる車体側部構造を得る。
【解決手段】ドアアウタパネル26の下部側には、車両幅方向内側に略水平に延在された平板状の下面部26Cが設けられており、下面部26Cの車両幅方向内側の端部から車両下方側へ延在された縦壁部26Dとドアインナパネル28の縦壁部28Bの下端部とが接合されている。ドアインナパネル28の縦壁部28Bと対向する位置にロッカ16が配設されており、ロッカ16のロッカインナパネル20に略水平に形成された横壁部21Bにフロアパネル24の端部24Aが接合されている。その際、ドアアウタパネル26の下面部26Cと横壁部21Bとフロアパネル24は、ほぼ同じ高さに配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面衝突に配慮した車体側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ドアの下部に車両前後方向に沿って閉断面部を設け、側面衝突時の荷重を閉断面部を介してピラーへ伝達する構造が開示されている。
【0003】
また、下記特許文献2には、インパクトビームの端部に荷重伝達部材を設け、側面衝突時の荷重をインパクトビームから荷重伝達部材を介してピラーへ伝達する構造が開示されている。
【特許文献1】特開2004−82797号公報
【特許文献2】特開2006−321444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術1又は先行技術2では、フロアの所定の位置にセンサを設けた場合、側面衝突時の荷重伝達経路が、閉断面部又はインパクトビーム、ピラー、ロッカ、フロア、センサの順となる。このため、側面衝突時のセンシング性能を向上させるためには、それぞれの部材の剛性を高くする必要があり、質量及びコストが増大する可能性がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、側面衝突時の荷重をフロアへ効率よく伝達し、センシング性能を向上させることができる車体側部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、車両意匠面を形成するドアアウタパネルと、前記ドアアウタパネルの車両内側に配置されるドアインナパネルとを備えた側部ドアと、ロッカアウタパネルとロッカインナパネルとで閉断面を形成し、前記側部ドアの下部の車両内側に車両前後方向に沿って配置されるロッカと、を含んで構成された車体側部構造であって、前記側部ドアの下部に設けられ、前記車両意匠面から車両内側方向に略水平に延在された平板状の下端部と、前記ロッカインナパネルの車両内側に略水平に延在された接合面と、車両幅方向の端部が前記接合面に接合され、側面衝突状態を検出する側面衝突検出センサが取り付けられたフロアパネルと、を備えると共に、前記下端部と前記接合面が、前記フロアパネルと略同じ高さに配置されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1記載の車体側部構造において、前記下端部は、前記ドアアウタパネルで形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1に記載の車体側部構造において、前記下端部は、前記ドアアウタパネル及び前記ドアインナパネルで形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車体側部構造において、前記側部ドアの前記下端部の下方側に、車両外形意匠面および車両内側面が形成されたドア下モールが設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車体側部構造において、車両側面視で前記ドアインナパネルの車両内側面における前記ロッカと重なる位置にクッションゴムが設けられ、かつ、前記クッションゴムが、前記下端部と前記接合面と前記フロアパネルと略同じ高さに配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項1記載の本発明によれば、側部ドアの下部に車両意匠面から車両内側方向に略水平に平板状の下端部が延在されると共に、ロッカインナパネルの車両内側に接合面が下端部と略同じ高さで略水平に延在され、この接合面にフロアパネルの車両幅方向の端部が接合されている。衝突体が側部ドアに側面衝突したとき、側部ドアは平板状の下端部が設けられているため断面の変形が抑制され、そのまま下端部が車両内側(車室側)へ侵入してロッカのフロアパネルと略同じ高さの位置に接触し、ロッカへ荷重が伝達される。ロッカに伝達された荷重は、更に下端部と略同じ高さに設けられたロッカインナパネルの接合面を介して、接合面と略同じ高さにあるフロアパネルに効率よく伝達される。フロアパネルに荷重が伝達されることにより、フロアパネルに取り付けられた側面衝突検出センサによって側面衝突状態が検出される。これにより、別の荷重伝達部材を設けることなく、側面衝突時の荷重が、側部ドア、ロッカ、フロアへと伝達され、センシングの急峻化を軽量及び低コストで実現することができる。
【0012】
請求項2記載の本発明によれば、側面衝突時に、側部ドアは、ドアアウタパネルで形成された平板状の下端部により断面の変形が抑制され、そのまま下端部が車両内側(車室側)へ侵入してロッカのフロアパネルと略同じ高さの位置に接触し、ロッカへ荷重を効率よく伝達することができる。
【0013】
請求項3記載の本発明によれば、側面衝突時に、側部ドアはドアアウタパネル及びドアインナパネルで形成された平板状の下端部により断面の変形が抑制され、そのまま下端部が車両内側(車室側)へ侵入してロッカのフロアパネルと略同じ高さの位置に接触し、ロッカへ荷重を効率よく伝達することができる。
【0014】
請求項4記載の本発明によれば、側部ドアの下端部の下方側にドア下モールが設けられており、ドア下モールの車両外形意匠面および車両内側面によって従来のドア形状を補うことができる。
【0015】
請求項5記載の本発明によれば、車両側面視でドアインナパネルの車両内側面におけるロッカと重なる位置にクッションゴムが設けられており、側面衝突時に側部ドアの平板状の下端部が車両内側(車室側)へ侵入すると、下端部と略同じ高さに配置されたクッションゴムが、ロッカのフロアパネルと略同じ高さの位置に接触する。これにより、側部ドアからクッションゴムを介してロッカへ荷重がより効率的に伝達される。ロッカに伝達された荷重は、更に下端部及びクッションゴムと略同じ高さに設けられたロッカインナパネルの接合面を介して、接合面と略同じ高さにあるフロアパネルに伝達される。従って、クッションゴムを設けることにより、側部ドアのロッカに当たるまでの空走距離が少なくなり、センシングの急峻化をより効果的に実現できる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車体側部構造は、側面衝突時の荷重を側部ドアからフロアパネルへ効率よく伝達し、センシング性能を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0017】
請求項2記載の本発明に係る車体側部構造は、ドアアウタパネルで下端部が形成されており、軽量及び低コストでセンシングの急峻化を実現することができるという優れた効果を有する。
【0018】
請求項3記載の本発明に係る車体側部構造は、ドアアウタパネル及びドアインナパネルで下端部が形成されており、軽量及び低コストでセンシングの急峻化を実現することができるという優れた効果を有する。
【0019】
請求項4記載の本発明に係る車体側部構造は、側部ドアの下端部の下方側に設けられたドア下モールによって、従来のドア形状を補うことができるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項5記載の本発明に係る車体側部構造は、ドアインナパネルの車両内側面にクッションゴムを設けることで、ロッカに当たるまでの空走距離が少なくなり、側面衝突時の荷重をより一層効率的にフロアパネルに伝達することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
〔第1実施形態〕
【0022】
以下、図1及び図2を用いて、本発明に係る車体側部構造の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0023】
図1には、フロントサイドドア廻りの車体側部構造の縦断面図が示されている。この図に示されるように、車体側部10には、フロントサイドドア12によって開閉されるドア開口部14が形成されている。ドア開口部14の下縁側には、フロントサイドドア12の下部12Aの車両幅方向内側に、車両前後方向に沿って延在する閉断面構造のロッカ16が配設されている。
【0024】
ロッカ16は、車両骨格部材であり、断面略ハット状に形成されて車両幅方向外側(車室外側)に配置されたロッカアウタパネル18と、車両幅方向内側(車室内側)に配置されたロッカインナパネル20と、ロッカアウタパネル18の車両幅方向外側に被嵌された断面略ハット状のサイメンパネル22と、を主要部として構成されている。ロッカインナパネル20は、断面が略ハット状で車両幅方向内側の上部が窪んだ凹部21を備えた形状である。凹部21は、車両上下方向に沿って配置された縦壁部21Aと、縦壁部21Aの下端部から車両幅方向に沿って略水平に延在された接合面としての横壁部21Bと、で形成されている。
【0025】
ロッカアウタパネル18とロッカインナパネル20とは、上下一対のフランジ部が接合されることによって閉断面構造に形成されている。また、サイメンパネル22の上下一対のフランジ部は、車両幅方向外側からロッカアウタパネル18の上下一対のフランジ部に接合されている。サイメンパネル22の中間部には、車両幅方向内側に凹状に窪んだ凹状部22Aが形成されている。
【0026】
ロッカインナパネル20の横壁部21Bの上面には、フロアパネル24の一般面24Bに対して車両幅方向外側に設けられた端部24Aの下面部が溶接により接合されている。フロアパネル24の端部24A及び一般面24Bは、車両幅方向に沿って略水平に配置されている。
【0027】
フロントサイドドア12は、車両幅方向外側に配置されたドアアウタパネル26と、車両幅方向内側に配置されたドアインナパネル28と、車両下部側に設けられたドア下モール30と、を主要部として構成されている。ドアインナパネル28の下部側には、車両幅方向外側へ略水平に形成された段差部28Aと、段差部28Aの車両外側端部から下方に車両上下方向に沿って形成された縦壁部28Bと、が設けられている。縦壁部28Bは、上部よりも下部が車両幅方向内側に若干突出した形状となっている。縦壁部28Bは、車両側面視でロッカ16と重なる位置(サイメンパネル22と対向する位置)に設けられている。ドアインナパネル28の段差部28Aと縦壁部28Bとで形成される凹部は、サイメンパネル22の上端角部と対向する位置に配置されている。
【0028】
ドアアウタパネル26の車両幅方向外側の外壁部26Aは、車両意匠面を構成している。ドアアウタパネル26の下部には、外壁部26Aの下端部から車両幅方向内側に窪んだ窪み部26Bと、窪み部26Bの下端部から車両幅方向内側に屈曲されて略水平に延在された平板状の下端部としての下面部26Cと、下面部26Cの車両幅方向内側の端部から車両下方側へ屈曲された縦壁部26Dと、が設けられている。ドアアウタパネル26の縦壁部26Dの車両内側面は、ドアインナパネル28の縦壁部28Bの車両外側面に面接触された状態で、スポット溶接又はレーザー溶接により接合されている。ドアアウタパネル26の下面部26Cと、ロッカインナパネル20の横壁部21Bと、横壁部21Bに接合されたフロアパネル24は、略同じ高さで配置されている。
【0029】
ドアアウタパネル26の窪み部26B及び下面部26Cの下方側には、ドア下モール30が配設されている。ドア下モール30は、車両外形意匠面を形成する外壁部30Aと、外壁部30Aの下端部から車両幅方向内側に連続して車両内側面を形成する内壁部30Bと、外壁部30Aの上端部にドアアウタパネル26の窪み部26Bと接触する延設部30Cと、を備えている。さらに、ドア下モール30は、延設部30Cの車両幅方向内側でドアアウタパネル26の下面部26Cに接触するように略水平に形成された上面取付部30Dと、上面取付部30Dの車両幅方向内側の端部からドアアウタパネル26の縦壁部26Dに接触するように車両下方側に形成された内側取付部30Eと、を備えている。ドア下モール30の内側取付部30Eの車両幅方向外側には、車両上下方向に沿って切り欠き部32が形成されている。切り欠き部32は、ドア下モール30の車両前後方向に複数設けられている。なお、図1では、切り欠き部32の下端部の断面を省略している。
【0030】
ドアアウタパネル26の縦壁部26Dには、クリップ34を取付けるための略円形の孔部26Eが形成されており、ドアインナパネル28の縦壁部28Bには、孔部26Eと合致する位置に略円形の孔部28Cが形成されている。さらに、内側取付部30Eの切り欠き部32が形成された位置には、孔部26E及び孔部28Cと合致する位置に略円形の孔部33が形成されている。これらの孔部28C、26E、33に縦壁部28Bの側からクリップ34を挿入して係止部34Aを内側取付部30Eに係止させることで、ドア下モール30がドアアウタパネル26及びドアインナパネル28に取付けられている。ドア下モール30は、車両前後方向の複数の位置でクリップ34によりドアアウタパネル26及びドアインナパネル28に取付けられている。このドア下モール30の外壁部30Aと内壁部30Bによって、フロントサイドドア12の下部形状を補うことができる。
【0031】
フロアパネル24の車両中央部付近の上面部には、側面衝突状態を検出するセンサ38が設けられている。車体側部10にポール等の衝突体が衝突すると、荷重がフロアパネル24に伝達されて急激な加速度が発生し、その加速度がセンサ38に伝達されて入力される。その結果、センサ38によって側面衝突状態が検出されるようになっている。なお、本実施形態の車両では、センサ38によって側面衝突状態が検出されたときに、車両用シート付近の図示しない頭部保護エアバック装置やサイドエアバック装置などの乗員保護装置が作動するように設定されている。
【0032】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0033】
図2に示されるように、衝突体の側面衝突によりフロントサイドドア12に車両内側方向(矢印A方向)の荷重が作用すると、フロントサイドドア12には下面部26Cが設けられているため断面の変形が抑制され(断面崩れが抑制され)、そのまま下面部26Cが車両内側(車室側)へ侵入してサイメンパネル22のフロアパネル24と略同じ高さの位置に当たり、ロッカ16へ車両内側方向(矢印B方向)の荷重が伝達される。ロッカ16に伝達された荷重は、更に下面部26Cと略同じ高さに設けられたロッカインナパネル20の横壁部21Bを介して、横壁部21Bと略同じ高さにあるフロアパネル24に効率よく伝達される。すなわち、側面衝突時の荷重は、フロントサイドドア12の下面部26Cから略同じ高さのロッカインナパネル20の横壁部21B、フロアパネル24へと略水平方向に効率よく伝達される。その際、フロアパネル24は、側面衝突時の荷重をせん断方向に受けるので、フロアパネル24の端部24Aが横壁部21Bから剥離しにくい。
【0034】
荷重がフロアパネル24に伝達されることによって、急激な加速度が発生し、その加速度がセンサ38に伝達されて入力されることで、側面衝突状態が検出される。これにより、別の荷重伝達部材を設けることなく、側面衝突時の荷重が、フロントサイドドア12、ロッカ16、フロアパネル24へと効率よく伝達され、センシングの急峻化を実現することができる。
【0035】
ここで、本実施形態の車体側部構造を、フロントサイドドア12の下部に下面部26C及びドア下モール30を設けない比較例の車体側部構造(図示省略)と対比して説明する。比較例の車体側部構造では、フロントサイドドアの外形形状はドア下モールを装着した外形形状と略同じに形成されており、フロントサイドドアの下部は、ドアアウタパネルの下端とドアインナパネルの下端とを接合することによって形成されている。このような比較例の車体側部構造では、側面衝突時の荷重が、フロントサイドドア、フロントサイドドア内に車両前後方向に沿って配置されたインパクトビーム、フロントサイドドアの後端部側で車両上下方向に沿って配置されたセンターピラー、センターピラーの下部に設けられたロッカ16、ロッカ16に接合されたフロアパネル24の順で伝達される。
【0036】
これに対して、本実施形態の車体側部構造では、側面衝突時の荷重が、フロントサイドドア12内に配置されたインパクトビーム(図示省略)や車両上下方向に沿って配置されたセンターピラー(図示省略)を介さずに、ドアアウタパネル26の下面部26Cから、ロッカ16、フロアパネル24へとダイレクトに伝達される。これによって、センサ38によるセンシングの急峻化を実現することができる。このため、例えば、頭部保護エアバック装置やサイドエアバック装置などの乗員保護装置をより迅速に作動させることができる。
【0037】
また、例えば、車両用シートの側方でフロントサイドドア12にポールが側面衝突したとき(いわゆるポール側突時)など、フロントサイドドア12に対する局所的な入力に対して、ドアアウタパネル26の下面部26Cから、ロッカ16、フロアパネル24へとダイレクトに荷重を伝達することができる。このため、一般的にセンサで検出しにくいと言われているポール側突時においても、センシングの急峻化を実現することができる。
【0038】
また、本実施形態の車体側部構造では、フロントサイドドア12を質量をかけて補強して剛性を上げる必要がなく、軽量化を実現できる。
【0039】
さらに、フロントサイドドア12の下面部26Cの下方側にドア下モール30を設けることで、ドア下モール30の外壁部30Aおよび内壁部30Bによって従来のドア形状を補うことができる。
【0040】
〔第2実施形態〕
【0041】
以下に、本発明に係る車体側部構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0042】
図3に示されるように、車体側部50のフロントサイドドア52は、車両幅方向外側に配置されたドアアウタパネル54と、車両幅方向内側に配置されたドアインナパネル56と、車両下部側に配置されたドア下モール58と、を主要部として構成されている。ドアアウタパネル54の下部には、窪み部26Bの下端部から車両幅方向内側に屈曲されて略水平に延在された平板状の下端部としての下面部54Aと、フロントサイドドア52の車両幅方向中間部で下面部54Aから車両下方側に略直角に屈曲された屈曲部54Bと、設けられている。また、ドアインナパネル56の下部には、縦壁部28Bの下端部から車両幅方向外側に屈曲されて略水平に延在された平板状の下端部としての下面部56Aと、下面部56Aから車両下方側に略直角に屈曲されてドアアウタパネル54の屈曲部54Bと面接触される屈曲部56Bと、が設けられている。ドアアウタパネル54の屈曲部54Bとドアインナパネル56の屈曲部56Bとは面接触された状態で、スポット溶接又はレーザー溶接により接合されている。ドアアウタパネル54の下面部54A及びドアインナパネル56の下面部56Aは、ロッカインナパネル20の横壁部21B及びフロアパネル24と略同じ高さに配置されている。
【0043】
ドア下モール58の上部には、ドアアウタパネル54の下面部54A及びドアインナパネル56の下面部56Aに接触する上部取付部58Aと、上部取付部58Aの中間部に屈曲部54B及び屈曲部56Bが挿入される凹部58Bと、が形成されている。また、ドア下モール58の車両幅方向内側には、車両幅方向外側に凹んだ切り欠き部60が形成されており、上部取付部58Aの切り欠き部60が形成された位置には、クリップ62を取り付けるための略円形の孔部61が形成されている。ドアインナパネル56の下面部56Aには、孔部61と合致する位置に略円形の孔部56Cが形成されており、これらの孔部61、56Cに上部取付部58Aの下方側からクリップ62を挿入して係止部62Aを下面部56Aに係止させることで、ドア下モール58がドアアウタパネル54及びドアインナパネル56に取付けられている。
【0044】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0045】
ポールなどの衝突体がフロントサイドドア52に側面衝突したとき、フロントサイドドア52にはドアアウタパネル54の下面部54A及びドアインナパネル56の下面部56Aが設けられているため断面の変形が抑制され、そのまま下面部54A、56Aが車両内側(車室側)へ侵入してサイメンパネル22に当たり、ロッカ16へ荷重が伝達される。ロッカ16に伝達された荷重は、更に下面部54A、56Aと略同じ高さに設けられたロッカインナパネル20の横壁部21B、横壁部21Bと略同じ高さにあるフロアパネル24へと略水平方向に効率よく伝達される。これにより、センシングの急峻化を実現することができる。
【0046】
〔第3実施形態〕
【0047】
以下に、本発明に係る車体側部構造の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0048】
図4に示されるように、車体側部70のフロントサイドドア72は、車両幅方向外側に配置されたドアアウタパネル74と、車両幅方向内側に配置されたドアインナパネル76と、車両下部側に配置されたドア下モール78と、を主要部として構成されている。ドアアウタパネル74の下部には、窪み部26Bの下端部から車両幅方向内側に屈曲されて略水平に延在された平板状の下端部としての下面部74Aが設けられている。また、ドアインナパネル76の下部には、縦壁部28Bの下端部から車両幅方向外側に屈曲されて略水平に延在された平板状の下端部としての下面部76Aが設けられている。ドアインナパネル76の下面部76Aは、ドアアウタパネル74の下面部74Aの上面側にオーバーラップするように形成されており、ドアインナパネル76の下面部76Aとドアアウタパネル74の下面部74Aとは面接触された状態で、スポット溶接又はレーザー溶接により接合されている。ドアアウタパネル74の下面部74A及びドアインナパネル76の下面部76Aは、ロッカインナパネル20の横壁部21B及びフロアパネル24と略同じ高さに配置されている。
【0049】
ドア下モール78の上部には、ドアアウタパネル74の下面部74Aに接触する上部取付部78Aと、上部取付部78Aとの間に形成された段差を介してドアインナパネル76の下面部76Aに接触する上部取付部78Bと、が形成されている。また、ドア下モール78の車両幅方向内側には、車両幅方向外側に凹んだ切り欠き部80が形成されており、上部取付部78Bの切り欠き部80が形成された位置には、クリップ62を取り付けるための略円形の孔部81が形成されている。ドアインナパネル76の下面部76Aには、孔部81と合致する位置に略円形の孔部76Bが形成されており、これらの孔部81、76Bにクリップ62を挿入することによって、ドア下モール78がドアアウタパネル74及びドアインナパネル76に取付けられている。
【0050】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0051】
ポールなどの衝突体がフロントサイドドア72に側面衝突したとき、フロントサイドドア72にはドアアウタパネル74の下面部74A及びドアインナパネル76の下面部76Aが設けられているため断面の変形が抑制され、そのまま下面部74A、76Aが車両内側(車室側)へ侵入してサイメンパネル22に当たり、ロッカ16へ荷重が伝達される。ロッカ16に伝達された荷重は、更に下面部74A、76Aと略同じ高さに設けられたロッカインナパネル20の横壁部21B、横壁部21Bと略同じ高さにあるフロアパネル24へと略水平方向に効率よく伝達される。これにより、センシングの急峻化を実現することができる。
【0052】
〔第4実施形態〕
【0053】
以下に、本発明に係る車体側部構造の第4実施形態について説明する。なお、前述した第1〜第3実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0054】
図5に示されるように、車体側部90のフロントサイドドア92には、ドアインナパネル28の縦壁部28Bの下部側に、クッションゴム96が装着される略円形状の孔部94が設けられている。孔部94は、縦壁部28Bにおけるドアアウタパネル26の下面部26Cから上方側の部位に形成されている。クッションゴム96は、車両幅方向に沿って配置された断面が略円形状の部材からなり、外周面の車両幅方向外側には周溝96Aが形成されている。そして、ドアインナパネル28の孔部94にクッションゴム96の周溝96Aが嵌入されることで、クッションゴム96がドアインナパネル28に取り付けられている。クッションゴム96の車両幅方向内側の部分は、ドアインナパネル28の縦壁部28Bからサイメンパネル22の凹状部22Aの方向に突出している。
【0055】
さらに、ドアアウタパネル26の下面部26Cと、クッションゴム96と、ロッカ16のロッカインナパネル20に形成された横壁部21Bと、フロアパネル24とは、略同じ高さに配置されている。
【0056】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0057】
ポールなどの衝突体がフロントサイドドア92に側面衝突したとき、フロントサイドドア92には下面部26Cが設けられているため断面の変形が抑制され、そのまま下面部26Cが車両内側(車室側)へ侵入して下面部26Cと略同じ高さのクッションゴム96がサイメンパネル22に当たり、ロッカ16へ荷重が伝達される。ロッカ16に伝達された荷重は、更に下面部26C及びクッションゴム96と略同じ高さに設けられたロッカインナパネル20の横壁部21Bを介して、横壁部21Bと略同じ高さにあるフロアパネル24に伝達される。すなわち、側面衝突時の荷重は、フロントサイドドア12の下面部26Cからクッションゴム96を介して、クッションゴム96と略同じ高さのロッカインナパネル20の横壁部21B、フロアパネル24へと略水平方向に効率よく伝達される。
【0058】
このような車体側部構造では、ドアインナパネル28にクッションゴム96が設けられているため、側面衝突時にドアアウタパネル26の下面部26Cが車両幅方向内側へ侵入する際の空走距離が少なくなり、ドアアウタパネル26に入力される荷重が下面部26Cからクッションゴム96を介してロッカ16により効果的に伝達される。このため、衝突開始からセンシングまでの応答性が良くなり、センシングの急峻化をより効果的に実現することができる。
【0059】
〔実施形態の補足説明〕
【0060】
上述した第1〜第3実施形態では、フロントサイドドアに下面部(平板状の下端部)を形成する構成を変更しているが、下面部の構成はこれらに限定されず、他の構成でもよい。
【0061】
上述した各実施形態では、フロントサイドドアの下面部の下方側にドア下モールがクリップにより取り付けられているが、ドア下モールの取り付け手段は、これに限定されず、他の構成でもよい。例えば、ドア下モールを接着剤を用いてフロントサイドドアの下部に接着する構成でもよい。
【0062】
上述した各実施形態では、フロントサイドドアに本発明の平板状の下端部としての下面部を設けたが、これに限定されず、例えばリアサイドドアに本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1実施形態に係る車体側部構造の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】図1の車体側部構造の側面衝突時の変形過程を示す縦断面図である。
【図3】第2実施形態に係る車体側部構造の全体構成を示す縦断面図である。
【図4】第3実施形態に係る車体側部構造の全体構成を示す縦断面図である。
【図5】第4実施形態に係る車体側部構造の全体構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0064】
10 車体側部
12 フロントサイドドア(側部ドア)
12A 下部
16 ロッカ
18 ロッカアウタパネル
20 ロッカインナパネル
21B 横壁部(接合面)
22 サイメンパネル
24 フロアパネル
24A 端部
26 ドアアウタパネル
26A 外壁部(車両意匠面)
26C 下面部(下端部)
28 ドアインナパネル
30 ドア下モール
30A 外壁部(車両外形意匠面)
30B 内壁部(車両内側面)
38 センサ(側面衝突検出センサ)
50 車体側部
52 フロントサイドドア(側部ドア)
54 ドアアウタパネル
54A 下面部(下端部)
56 ドアインナパネル
56A 下面部(下端部)
58 ドア下モール
70 車体側部
72 フロントサイドドア(側部ドア)
74 ドアアウタパネル
74A 下面部(下端部)
76 ドアインナパネル
76A 下面部(下端部)
78 ドア下モール
90 車体側部
92 フロントサイドドア(側部ドア)
96 クッションゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両意匠面を形成するドアアウタパネルと、前記ドアアウタパネルの車両内側に配置されるドアインナパネルとを備えた側部ドアと、
ロッカアウタパネルとロッカインナパネルとで閉断面を形成し、前記側部ドアの下部の車両内側に車両前後方向に沿って配置されるロッカと、
を含んで構成された車体側部構造であって、
前記側部ドアの下部に設けられ、前記車両意匠面から車両内側方向に略水平に延在された平板状の下端部と、
前記ロッカインナパネルの車両内側に略水平に延在された接合面と、
車両幅方向の端部が前記接合面に接合され、側面衝突状態を検出する側面衝突検出センサが取り付けられたフロアパネルと、を備えると共に、
前記下端部と前記接合面が、前記フロアパネルと略同じ高さに配置されていることを特徴とする車体側部構造。
【請求項2】
前記下端部は、前記ドアアウタパネルで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車体側部構造。
【請求項3】
前記下端部は、前記ドアアウタパネル及び前記ドアインナパネルで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車体側部構造。
【請求項4】
前記側部ドアの前記下端部の下方側に、車両外形意匠面および車両内側面が形成されたドア下モールが設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車体側部構造。
【請求項5】
車両側面視で前記ドアインナパネルの車両内側面における前記ロッカと重なる位置にクッションゴムが設けられ、
かつ、前記クッションゴムが、前記下端部と前記接合面と前記フロアパネルと略同じ高さに配置されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車体側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−214791(P2009−214791A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62411(P2008−62411)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】