説明

車体内装構造

【課題】ハーネス配索の作業性とハーネスに対する信頼性との両方を容易にして向上することができる車体内装構造を提供する。
【解決手段】空調ダクト(4,6)とフレーム(2)との間にハーネス(12)が配索された車体内装構造であって、ハーネス(12)を空調ダクト(4,6)から所定の隙間を存して隔離するハーネス保護材(18)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体内装構造に関し、特に空調ダクトとフレームとの間にハーネスが配索された車体内装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車体内装構造において配索されるハーネスを車体に固定する際には保護材でカバーするのが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−171648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に搭載される空調装置の空調ダクトの直下にハーネスを配索する車体内装構造においては、空調ダクトが近いためにハーネスの配索作業やレイアウトが困難となり、例えば車両タイプの違いによるハーネスの本数の増減に対応し難いとの問題がある。また、ハーネスの本数が大幅に増えると、ハーネスと空調ダクトとの隙間を確保することができず、ハーネスが空調ダクトに干渉して損傷するおそれがある。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、ハーネス配索の作業性とハーネスに対する信頼性との両方を容易にして向上することができる車体内装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項1記載の車体内装構造は、空調ダクトとフレームとの間にハーネスが配索された車体内装構造であって、ハーネスを空調ダクトから所定の隙間を存して隔離するハーネス保護材を備えることを特徴としている。
請求項2記載の発明は、ハーネス保護材がフレームに固定される固定部と、固定部から空調ダクト側に延びた後にフレーム側に屈曲され、ハーネスを空調ダクトから所定の隙間を存して隔離する隔離部と、隔離部の内側においてハーネスが収容される収容部と、フレーム側に向けて開口された開口部に架設され、収容部に収容されたハーネスを支持する結束バンドとを備えることを特徴としている。
【0007】
請求項3記載の発明は、ハーネス保護材が結束バンドの緩締によって収容部の容量を可変とすることを特徴としている。
請求項4記載の発明は、ハーネス保護材が固定部をフレームにボルトで締結することにより車体に固定されることを特徴としている。
請求項5記載の発明は、ハーネス保護材は固定部及び隔離部の端縁に装着された弾性材を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の車体内装構造によれば、空調ダクトとフレームとの間にハーネスが配索された車体内装構造において、ハーネスと空調ダクトとの隙間を確実に保持することができるため、ハーネスの配索作業やレイアウトが容易となり、例えば車両タイプの違いによるハーネスの本数の増減に対応し易くなってハーネスの配索作業の作業性を向上することができる。また、ハーネスの本数が大幅に増えてもハーネスが空調ダクトに干渉して損傷することが防止され、ハーネスに対する信頼性を向上することができる。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、上述した構成のハーネス保護材を設けるだけで容易にしてハーネスの配索作業の作業性とハーネスに対する信頼性との両方を向上することができる。
請求項3記載の発明によれば、車両タイプの違いにより、ハーネスの本数が少ない場合には結束バンドを引き締め、ハーネスの本数が増えたときには結束バンドを緩めることにより、ハーネスを本数の増減にかかわらず確実に結束して固定することができ、ハーネスの配索作業の作業性を大幅に向上することができる。
【0010】
請求項4記載の発明によれば、ハーネス保護材を既存の車体構造のフレームを利用して容易に組み付けることができるため、更に簡単な構成で、ハーネスの配索作業の作業性とハーネスに対する信頼性との両方を向上することができる。
請求項5記載の発明によれば、ハーネスがハーネス保護材に接触したときの損傷を確実に防止することができ、ハーネスに対する信頼性を更に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る観光バスを示した斜視図である。
【図2】図1のバスの車体内装構造の要部を示した斜視図である。
【図3】図2をA−A方向からみた断面図である。
【図4】図3をB−B方向からみた矢視図である。
【図5】図2においてハーネスの本数が増えた場合をA−A方向からみた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る観光バス1を示し、図2はその車体内装構造の要部を示した斜視図である。バス1の床下には車幅方向に車体フレーム構造の一部を形成するクロスメンバ(フレーム)2が延設され、バス1に搭載された空調装置からの空調エアが流れる空調ダクト4が車幅方向略中央において図示しないボディフレームに固定されている。
【0013】
空調ダクト4は、空調装置から温風が流れるヒータダクト6と冷風が流れるクーラダクト8とが分離して延設され、途中で内部が仕切壁によって温風経路と冷風経路とに仕切られた一体形状をなした集合ダクト10を形成し、図示しないが、その後に再びヒータダクト6とクーラダクト8とに分離されている。
クロスメンバ2とヒータダクト6との間には、バス1に搭載された図示しない電気機器に対する電源供給や信号通信を行うための電線であるハーネス12が配索されている。
【0014】
ハーネス12は種々の径を有する複数の電線がコルゲート管等に通されて束を形成し、適所において結束バンド14で結束されている。なお、本図では図の簡略のために、ハーネス12の束を所定の容積を占有する部材の如く概略化して記載している。
図3は図2をA−A方向からみた断面図であり、図4は図3をB−B方向からみた矢視図である。これらの図から明らかなように、車両前後方向にはクロスメンバ2と交差するようにしてフレーム16が延設され、フレーム16にはブラケット31が立設されている。ブラケット31にはハーネス12をヒータダクト6から隔離して保護するハーネス保護材18が固定されている。
【0015】
ハーネス保護材18は金属製であり、その長手方向は少なくともハーネス12がヒータダクト6に干渉する範囲に亘る長さを有している。
ハーネス保護材18は、ボルト20が立設された固定部21を備え、ブラケット31に挿通されたボルト20をナット22で締結することによりハーネス保護材18が固定される。ハーネス保護材18は、固定部21からヒータダクト6側に延びた後にクロスメンバ2側に屈曲された隔離部24を備え、隔離部24はハーネス12をヒータダクト6から所定の隙間Gを存して隔離している。ハーネス保護材18は固定部21及び隔離部24によって略逆J字形状の断面をなしている。隔離部24の内側にはハーネス12が収容される収容部26が形成され、収容部26はクロスメンバ2側に向けて開口する開口部28からハーネス12の出し入れが可能となっている。
【0016】
ハーネス保護材18の外周には複数の結束バンド14が巻回され、結束バンド14が開口部28に架設されることにより収容部26に収容されたハーネス12を下から支持、固定している。
結束バンド14は、バンドを係止部で係止固定することによりバンドの長さ調節が可能であり、バンドの緩締によって収容部26の容量を変更することができる。
【0017】
具体的には、バス1の車両タイプの違いによって、図3に示すようにハーネス12の本数が少ない場合には結束バンド14を引き締め、ハーネス保護材18内の結束バンド14の下側に開口部28を含んだ断面視略三角形状の空間を形成する。一方、図5に示すようにハーネス12の本数が多い場合には結束バンド14を緩めることにより、上記空間分だけ収容部26の容量を増加可能である。こうして、結束バンド14で支持可能なハーネス12の本数を調整することができるため、ハーネス12はその本数の増減にかかわらず確実に結束され、固定される。
【0018】
また、図2に示すように、ハーネス保護材18の固定部21及び隔離部24の両端縁にはゴム製若しくは樹脂製等の弾性材からなるエッジトリム(弾性材)30が装着されている。
以上のように本実施形態では、ヒータダクト6とクロスメンバ2との間にハーネス12が配索された車体内装構造において、上述した断面視略逆J字形状をなすハーネス保護材18を設けるだけの簡単な構成で、ハーネス12とヒータダクト6との隙間Gを確実に保持することができる。従って、ハーネス12の配索作業やレイアウトが容易となり、車両タイプの違いによるハーネス12の本数の増減に対応し易くなってハーネス12の配索作業の作業性を大幅に向上することができる。
【0019】
また、ハーネス保護材18を有することにより、ハーネス12の本数が大幅に増えてもハーネス12がヒータダクト6に干渉して損傷することが防止され、ハーネス12に対する信頼性を向上することができる。
また、ハーネス保護材18が結束バンド14の緩締によって収容部26の容量を変更可能であるため、バス1の車両タイプの違いによってハーネス12の本数が少ない場合には結束バンド14を引き締め、ハーネス12の本数が増えたときには結束バンド14を緩めることでハーネス12をその本数の増減にかかわらず確実に結束して固定することができ、ハーネス12の配索作業の作業性を大幅に向上することができる。
【0020】
更に、ハーネス保護材18は固定部21をクロスメンバ2にフレーム16及びブラケット31を介してボルト20及びナット22で締結して車体に固定されるため、ハーネス保護材18を既存の車体構造のクロスメンバ2及びフレーム16を利用して容易に組み付けることができる。
更にまた、ハーネス保護材18は固定部21及び隔離部24の端縁にエッジトリム30が装着されることにより、ハーネス12がハーネス保護材18に接触したときの損傷を確実に防止することができ、ハーネス12に対する信頼性を更に向上することができる。
【0021】
以上で本発明の実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
例えば本実施形態のハーネス保護材18は断面視略逆J字形状をなして形成されるが、上述した固定部21、隔離部24、収容部26、開口部28、及び結束バンド14を備えていればこの形状に限定されない。
【0022】
また、本発明はヒータダクト6とクロスメンバ2との間にハーネス12が配索された車体内装構造であれば、バス1以外の車両の車体内装構造にも適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0023】
1 バス(車体)
2 クロスメンバ(フレーム)
4 空調ダクト
6 ヒータダクト(空調ダクト)
12 ハーネス
14 結束バンド
18 ハーネス保護材
21 固定部
22 ボルト
24 隔離部
26 収容部
28 開口部
30 エッジトリム(弾性材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調ダクトとフレームとの間にハーネスが配索された車体内装構造であって、前記ハーネスを前記空調ダクトから所定の隙間を存して隔離するハーネス保護材を備えることを特徴とする車体内装構造。
【請求項2】
前記ハーネス保護材は、前記フレームに固定される固定部と、前記固定部から前記空調ダクト側に延びた後に前記フレーム側に屈曲され、前記ハーネスを前記空調ダクトから前記隙間を存して隔離する隔離部と、前記隔離部の内側において前記ハーネスが収容される収容部と、前記フレーム側に向けて開口された開口部に架設され、前記収容部に収容された前記ハーネスを支持する結束バンドとを備えることを特徴とする請求項1に記載の車体内装構造。
【請求項3】
前記ハーネス保護材は、前記結束バンドの緩締によって前記収容部の容量を可変とすることを特徴とする請求項2に記載の車体内装構造。
【請求項4】
前記ハーネス保護材は、前記固定部を前記フレームにボルトで締結することにより前記車体に固定されることを特徴とする請求項2又は3に記載の車体内装構造。
【請求項5】
前記ハーネス保護材は、前記固定部及び前記隔離部の端縁に装着された弾性材を有することを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載の車体内装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−135106(P2012−135106A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284371(P2010−284371)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】