説明

車体前部構造

【課題】サブフレームのスイング移動を防ぐことができる車体前部構造を提供する。
【解決手段】 車体前部構造10は、昇降台58に載せたフロントサブフレーム16を取付位置に位置決めするために、左サブフレーム46部に、昇降台58に備えた左位置決めピン68に嵌め込み可能な左位置決め孔17aを備えるとともに、右サブフレーム部47に、昇降台58に備えた右位置決めピン69に嵌め込み可能な右位置決め孔を備え、左右のサブフレーム部46,47の前後の端部を前車体フレーム10Aに取り付けた後、左右の位置決め孔68,69に差し込んだ左右のボルト65,65を前車体フレーム10Aに取り付けるために、前車体フレーム10Aに左右の被締結部71,72を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車体前部構造に係り、特に、エンジン・ミッションユニットをサブフレームに搭載し、サブフレームを車体に取り付けた車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体前部構造として、左右のフロントサイドフレームの下方に、サブフレームを備え、サブフレームに備えた左右のフレーム本体に、ロアアームなどを介して前輪を取り付けたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−114813号公報
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図12は従来の基本構成を説明する図である。
車体前部構造200は、車体の前部左右側に左右のフロントサイドフレーム201,202を備え、左右のフロントサイドフレーム201,202の下方にサブフレーム203を備える。
【0004】
サブフレーム203は、左右のフレーム本体204,205をビーム206で連結し、左フレーム本体204の前端部204aをクロスメンバー207の左端部207aに締結部材208で取り付けるとともに、左フレーム本体204の後端部204bを左アウトリガー209に締結部材208で取り付け、右フレーム本体205の前端部205aをクロスメンバー207の右端部207bに締結部材208で取り付けるとともに、右フレーム本体205の後端部205bを右アウトリガー213に締結部材208で取り付けたものである。
【0005】
左フレーム本体204に左ロアアーム215などを介して左前輪216を取り付け、右フレーム本体205に右ロアアーム218などを介して右前輪219を取り付ける。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、サブフレーム203は、左右のフレーム本体204,205のうち、前後の端部204a,205a,204b,205b、すなわち4個所の部位を締結部材208…でそれぞれ取り付けている。
【0007】
このサブフレーム203に、例えば、左右の前輪216,219を介して横向きの荷重が作用した場合に、左右のフレーム本体204,205が、後端部側の締結部材208を中心にしてスイング移動しないように構成されている。
ところで、スイング移動をより好適に防止することが好ましく、その構成の実用化が望まれている。
【0008】
本発明は、サブフレームのスイング移動をより一層好適に防ぐことができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、サブフレームを左右の枠部を一体に連結して構成し、このサブフレームにエンジン・ミッションユニットを搭載した状態で、サブフレームを昇降台に載せるとともに昇降台上の取付位置に位置決めし、この昇降台を上昇させて、左枠部の前後の端部を車体に取り付けるとともに右枠部の前後の端部を車体に取り付けた車体前部構造であって、前記昇降台に載せたサブフレームを前記取付位置に位置決めするために、前記左枠部に、前記昇降台に備えた左位置決めピンに嵌め込み可能な左位置決め孔を備えるとともに、前記右枠部に、前記昇降台に備えた右位置決めピンに嵌め込み可能な右位置決め孔を備え、左右の枠部の前後の端部を前記車体に取り付けた後、前記左右の位置決め孔に差し込んだ左右の締結部材を車体に取り付けるために、この車体に左右の被締結部を備えたことを特徴とする。
【0010】
サブフレームを構成する左右の枠部に、左右の位置決め孔をそれぞれ備えた。よって、サブフレームを昇降台に載せる際に、左右の位置決め孔を、左右の位置決めピンに嵌め込むことで、サブフレームを取付位置に位置決めすることが可能になる。
これにより、サブフレームを取付位置に手間をかけないで簡単に位置決めすることができる。
【0011】
加えて、サブフレームを車体に取り付けた後、左位置決め孔に差し込んだ左締結部材を左被締結部に取り付けるとともに、左位置決め孔に差し込んだ左締結部材を左被締結部に取り付ける。
【0012】
このように、左右の枠部を車体に取り付ける際に、前後の端部に加えて、もう一個所の部位を車体に取り付けることで、左右の枠部をより一層強固に車体に取り付けることが可能になる。
これにより、前輪にかかった荷重が、サスペンションを介して左右の枠部に横向きに作用した場合に、左右の枠部が移動することを抑え、車体剛性を一層高めることができる。
【0013】
請求項2は、前記左位置決め孔を、前記左枠部の後端部近傍に備え、前記右位置決め孔を、前記右枠部の後端部近傍に備えたことを特徴とする。
【0014】
ここで、左枠部の前端部は、車体を構成する左フロントサイドフレームの前端部に取り付けられ、右枠部の前端部は、車体を構成する右フロントサイドフレームの前端部に取り付けられている。
【0015】
このため、左枠部または右枠部に横向きの荷重が作用した場合に、左枠部または右枠部は、左右の枠部の後端部を支点として前端部が車体中心に向かってスイング移動する。
よって、左右の枠部の後端部近傍の剛性を高めることで、左右の枠部のスイング移動をより好適に抑えることができる。
【0016】
そこで、左位置決め孔を、左枠部の後端部近傍に備え、右位置決め孔を、右枠部の後端部近傍に備えることにした。
これにより、左位置決め孔に差し込んだ左締結部材を左被締結部に取り付けるとともに、左位置決め孔に差し込んだ左締結部材を左被締結部に取り付けることで、左右の枠部の後端部の剛性を高めることが可能になる。
したがって、左枠部または右枠部に横向きの荷重が作用した場合に、左右の被締結部で左右の枠部のスイング移動をより好適に抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明では、前輪にかかった荷重が、サスペンションを介して左右の枠部に横向きにかかった際に、左右の枠部が移動することを抑えることで、車体剛性を一層高めることが可能になり、操作性の向上を図ることができるという利点がある。
【0018】
請求項2に係る発明では、左右の枠部の後端部の剛性を高めることで、左枠部または右枠部に横向きの荷重が作用した場合に、左右の被締結部で左右の枠部のスイング移動をより好適に抑えることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Lは左側、Rは右側を示す。
【0020】
図1は本発明に係る車体前部構造を示す斜視図、図2は本発明に係る車体前部構造を示す平面図である。
【0021】
車体前部構造10は、車体としての前車体フレーム10Aを構成する左右のフロントサイドフレーム11,12を所定間隔をおいて車体前後方向に延ばし、左フロントサイドフレーム11の後端11aから左フロアフレーム13を車体後方に延ばし、右フロントサイドフレーム12の後端12aから右フロアフレーム14を車体後方に延ばし、左右のフロントサイドフレーム11,12間にエンジン・ミッションユニット15を横向きに配置し、左右のフロントサイドフレーム11,12の下部にフロントサブフレーム(サブフレーム)16を取り付け、フロントサブフレーム16にエンジン・ミッションユニット15を搭載するとともに、左右のフロントサイドフレーム11,12にエンジン・ミッションユニット15を取り付けるように構成されている。
【0022】
左フロントサイドフレーム11は、左前フレーム部21を車体前後方向に水平に延ばし、左前フレーム部21の後端21aから左後フレーム部22を車体後方に向けて徐々に車体中心23に近づけるように水平に延ばしたものである。
【0023】
右フロントサイドフレーム12は、右前フレーム部25を車体前後方向に水平に延ばし、右前フレーム部25の後端25aから右後フレーム部26を車体後方に向けて徐々に車体中心23に近づけるように水平に延ばしたものである。
【0024】
左前フレーム部21の下部に左前取付ブラケット28を設け、右前フレーム部25の下部に右前取付ブラケット29を設ける。
左前取付ブラケット28に、フロントサブフレーム16の左前端部(前端部)16aがボルト止めされ、右前取付ブラケット29に、フロントサブフレーム16の右前端部(前端部)16bがボルト止めされている。
【0025】
左後フレーム部22は、前端22aの幅W2が、左前フレーム部21の幅W1より小さく形成されている。前端22aの幅W2を小さく形成することで、左側前輪24が右旋回した際に、左側前輪24の前端部が、前端22aに干渉しないように逃げ部を確保する。
この前端22aに、エンジン・ミッションユニット15のミッション部31がミッションマウント部33を介して取り付けられている。
【0026】
右後フレーム部26は、前端26aの幅W2が、右前フレーム部の幅W1より小さく形成されている。前端26aの幅W2を小さく形成することで、右側前輪24が左旋回した際に、右側前輪24の前端部が、前端26aに干渉しないように逃げ部を確保する。
この前端26aに、エンジン・ミッションユニット15のエンジン部32がエンジンマウント部34を介して取り付けられている。
【0027】
ところで、上述したように、左後フレーム部22は、車体後方に向けて徐々に車体中心23に近づけるように延ばされ、さらに、右後フレーム部26は、車体後方に向けて徐々に車体中心23に近づけるように延ばされている。
これにより、左右の後フレーム部22,26のうち、エンジン・ミッションユニット15の後方の部位(以下、「後方部位」と称す)22b,26bで略ハ字状の衝撃吸収部35を形成する。
【0028】
衝撃吸収部35を構成する左側の後方部位22bに、車体中心23に向けて突出させた左中央取付ブラケット37を備える。
さらに、衝撃吸収部35を構成する右側の後方部位26bに、車体中心23に向けて突出させた右中央取付ブラケット38を備える。
【0029】
左中央取付ブラケット37に、フロントサブフレーム16のうち、エンジン・ミッションユニット15の後方の左取付部位16eが切り離し可能に連結されている。
右中央取付ブラケット38に、フロントサブフレーム16のうち、エンジン・ミッションユニット15の後方の右取付部位16fが切り離し可能に連結されている。
【0030】
左フロアフレーム13は、左後フレーム部22の後端11aから車体後方に向けて途中まで下り勾配に延ばし、途中の部位から車体後方に向けて水平に延ばした部材である。
右フロアフレーム14は、右後フレーム部26の後端12aから車体後方に向けて途中まで下り勾配に延ばし、途中の部位から車体後方に向けて水平に延ばした部材である。
【0031】
左フロアフレーム13の車体中心23側に左後取付ブラケット41を設け、右フロアフレーム14の車体中心23側に右後取付ブラケット42を設ける。
左右のフロアフレーム13,14に、ダッシュロアクロスメンバー(クロスメンバー)44が掛け渡されている。このダッシュロアクロスメンバー44に、左右の後取付ブラケット41,42の後部が一体的に設けられている。
【0032】
ここで、前述した前車体フレーム10Aは、主に、左右のフロントサイドフレーム11,12、左右のフロアフレーム13,14およびダッシュロアクロスメンバー44で構成されている。
【0033】
左後取付ブラケット41に、フロントサブフレーム16の左後端部(後端部)16cがボルト止めされている。
さらに、ダッシュロアクロスメンバー44の左端部44a(すなわち、左被締結部71)に、左ブラケット17がボルト65で取り付けられている。
左ブラケット17は、図4に示すように、左後端部16cに溶接などで一体に取り付けられている。
【0034】
また、右後取付ブラケット42に、フロントサブフレーム16の右後端部(後端部)16dがボルト止めされている。
さらに、ダッシュロアクロスメンバー44の右端部44b(すなわち、右被締結部72)に、右ブラケット18がボルト65で取り付けられている。
右ブラケット18は、図4、図7に示すように、右後端部16dに溶接などで一体に取り付けられている。
これにより、前車体フレーム10Aの下部に、フロントサブフレーム16が取り付けられている。
【0035】
フロントサブフレーム16は、左右のサブフレーム部(枠部)46,47を、それぞれ左右のフロントサイドフレーム11,12に沿わせ、左右のサブフレーム部46,47の前端部を前サブクロスメンバー48で一体に連結し、左右のサブフレーム部46,47の後端部近傍を後サブクロスメンバー49で一体に連結した略矩形状枠体である。
【0036】
このフロントサブフレーム16の左後端部16cに、左ブラケット17が一体に取り付けられている。さらに、フロントサブフレーム16の右後端部16dに、右ブラケット18が一体に取り付けられている。
【0037】
図3は本発明に係る車体前部構造を示す断面図である。
左右のフロアフレーム13,14の上部にダッシュボードロアー45を備える。ダッシュボードロアー45でエンジンルーム45aと車室45bとを仕切る。
左右の左右のフロントサイドフレーム11,12および左右のフロアフレーム13,14にフロントサブフレーム16が取り付けられる。
【0038】
フロントサブフレーム16の右サブフレーム部47は、右前端部16bと右後端部16dとの間に右凹部51を備え、この右凹部51を船底状に凹ませたものである。
【0039】
すなわち、右凹部51は、右前端部16bから車体後方に向けて右下り傾斜部位51aが下り勾配に延び、この右下り傾斜部位51aの後端部から右水平部位51bが車体後方に向けて水平に延び、この右水平部位51bの後端部から右後端部16dまで右上り傾斜部位51cが車体後方に向けて上り勾配に延びたものである。
右上り傾斜部位51cに、右取付ベース部53を備える。この右取付ベース部53は、エンジン・ミッションユニット15(具体的には、エンジン部32)の後方に配置されている。
【0040】
図2に戻って、左サブフレーム部46は、右サブフレーム部47と左右対称の部材であり、左前端部16aと左後端部16cとの間に左凹部55を備え、この左凹部55を船底状に凹ませたものである。
【0041】
すなわち、左凹部55は、左前端部16aから左下り傾斜部位55aが車体後方に向けて下り勾配に延び、この左下り傾斜部位55aの後端部から左水平部位55bが車体後方に向けて水平に延び、この左水平部位55bの後端部から後端部まで左上り傾斜部位55cが車体後方に向けて上り勾配に延びたものである。
左上り傾斜部位55cに、左取付ベース部57を備える、この左取付ベース部57は、エンジン・ミッションユニット15(具体的には、ミッション部31)の後方に配置されている。
【0042】
左サブフレーム部46の左凹部55に、エンジン・ミッションユニット15のミッション部31を載せ、ミッション部31の後下取付部31aをボルト61で左水平部55bに取り付ける。
さらに、右サブフレーム部47の右凹部51に、エンジン・ミッションユニット15のエンジン部32を載せ、エンジン部32の後下取付部32aをボルト61で右水平部51bに取り付ける。
【0043】
加えて、エンジン・ミッションユニット15の前端部15aを前マウント部63を介して前サブクロスメンバー48に取り付ける。
これにより、フロントサブフレーム16に、エンジン・ミッションユニット15を載置した状態に保つ。
【0044】
図4は本発明に係る車体前部構造において前車体フレームにフロントサブフレームを取り付ける前の状態を示す斜視図、図5は本発明に係る車体前部構造において前車体フレームにフロントサブフレームを取り付ける前の状態を示す断面図である。
【0045】
上述した車体前部構造10は、サブフレーム16にエンジン・ミッションユニット15を搭載した状態で、サブフレーム16を昇降台58に載せるとともに昇降台58上の取付位置に位置決めし、この昇降台58を上昇させて、左サブフレーム部46の前後の端部16a、16cを前車体フレーム10Aに取り付けるとともに右サブフレーム部47の前後の端部16b,16dを前車体フレーム10Aに取り付けるものである。
【0046】
昇降台58は、ベース66に連結リンク67を介して昇降自在に連結されている。昇降台58とベース66とに、図示しない昇降手段(一例として、油圧シリンダ)が連結されている。
この油圧シリンダを縮めることにより、昇降台58を載置位置P1に下降させる。一方、この油圧シリンダを延ばすことにより、昇降台58を装着位置P2(図5参照)に上昇させる。
昇降台58には、後端部近傍に左右の位置決めピン68,69が上向きに突出されている。
【0047】
また、車体前部構造10は、左ブラケット17に左位置決め孔17aを備えるとともに、右ブラケット18に右位置決め孔18aを備える。
上述したように、左右のブラケット17,18を左右の後端部16c,16dに一体に取り付けることで、左右のブラケット17,18はフロントサブフレーム16に一体に取り付けられている。
【0048】
よって、フロントサブフレーム16を昇降台58に載せる際に、左右の位置決め孔17a,18aを左右の位置決めピン68,69に嵌め込むことで、昇降台58に載せたサブフレーム16を取付位置に位置決めすることができる。
【0049】
サブフレーム16を取付位置に位置決めすることで、左位置決めピン68を左被締結部71の左取付孔71a(図2参照)に位置合わせするとともに、右位置決めピン69を右被締結部72の右取付孔72a(図2参照)に位置合わせする。
【0050】
同様に、サブフレーム16を取付位置に位置決めすることで、左サブフレーム部46の前端部16aを左前取付ブラケット28に位置合わせするとともに、左サブフレーム部46の後端部16cを左後取付ブラケット41に位置合わせする。
さらに、サブフレーム16を取付位置に位置決めすることで、右サブフレーム部47の前端部16bを右前取付ブラケット29に位置合わせするとともに、右サブフレーム部47の後端部16dを右後取付ブラケット42に位置合わせする。
【0051】
図6は本発明に係る車体前部構造の前側の取付構造を示す断面図である。
右前取付ブラケット29は、右フロントサイドフレーム12の前端12b下部に下向きに突出した状態で取り付けられた中空状の部材である。
この、右前取付ブラケット29は、その底部75から所定間隔をおいて中間部材76を取り付け、底部75と中間部材76との間にスペーサ77を取り付け、スペーサ77の貫通孔77aに合わせて、底部75および中間部材76にそれぞれ貫通孔75a,76aを形成し、中間部材76の貫通孔76aに合わせてナット78を溶接したものである。
以下、上述したスペーサ77の貫通孔77a、底部75および中間部材76の貫通孔75a,76aを取付孔29a(図2も参照)と称する。
【0052】
右サブフレーム部47の前端部16bは、中空部81内にスペーサ82を配置し、このスペーサ82を上面部83と下面部84に取り付け、スペーサ82の貫通孔82aに合わせて、上面部83および下面部84にそれぞれ貫通孔83a,84aを形成したものである。
以下、上述したスペーサ82の貫通孔82a、上面部83および下面部84の貫通孔83a,84aを取付孔85と称する。
この取付孔85にボルト64を上向きに差し込む。
【0053】
右サブフレーム部47の前端部16bを右前取付ブラケット29に位置合わせすることで、前端部16bの取付孔85に差し込んだボルト64を、右前取付ブラケット29の取付孔29aに合わせる。
ボルト64を取付孔29aに差し込み、ナット78にねじ結合することで、右サブフレーム部47の前端部16bを右前取付ブラケット29に取り付ける。
【0054】
左前取付ブラケット28は、右前取付ブラケット29と左右対称の部材であり、各構成部材に、右前取付ブラケット29の構成部材と同一符号を付して説明を省略する。
また、左サブフレーム部46の前端部16aは、右サブフレーム部47の前端部16bと左右対称の部材であり、各構成部材に前端部16bの構成部材と同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
図7は本発明に係る車体前部構造の後側の取付構造を示す断面図である。
右後取付ブラケット42は、右フロアフレーム14の内壁14aおよびダッシュロアクロスメンバー44の前壁44c(右端部44b側の前壁)に沿って下向きに延ばすことで、内壁14aおよび前壁44cとともに中空状に形成した部材である。
【0056】
この、右後取付ブラケット42は、その底部87から所定間隔をおいて中間部材88を取り付け、底部87と中間部材88との間にスペーサ89を取り付け、スペーサ89の貫通孔89aに合わせて、底部87および中間部材88にそれぞれ貫通孔87a,88aを形成し、中間部材88の貫通孔88aに合わせてナット91を溶接したものである。
以下、上述したスペーサ89の貫通孔89a、底部87および中間部材88の貫通孔87a,88aを取付孔42aと称する。
【0057】
右サブフレーム部47の後端部16dは、中空部81内にスペーサ93を配置し、このスペーサ93を上面部94と下面部95に取り付け、スペーサ93の貫通孔93aに合わせて、上面部94および下面部95にそれぞれ貫通孔94a,95aを形成したものである。
以下、上述したスペーサ93の貫通孔93a、上面部94および下面部95の貫通孔94a,95aを取付孔96と称する。
この取付孔96にボルト65を上向きに差し込む。
【0058】
右サブフレーム部47の後端部16dを右後取付ブラケット42に位置合わせすることで、後端部16dの取付孔96に差し込んだボルト65を、右後取付ブラケット42の取付孔42a(図2も参照)に合わせる。
ボルト65を取付孔42aに差し込み、ナット91にねじ結合することで、右サブフレーム部47の後端部16dを右後取付ブラケット42に取り付ける。
【0059】
左後取付ブラケット41は、右後取付ブラケット42と左右対称の部材であり、各構成部材に、右後取付ブラケット42の構成部材と同一符号を付して説明を省略する。
また、左サブフレーム部46の後端部16cは、右サブフレーム部47の後端部16dと左右対称の部材であり、各構成部材に後端部16dの構成部材と同一符号を付して説明を省略する。
【0060】
右被締結部72は、ダッシュロアクロスメンバー44の右端部44bの底部98から所定間隔をおいて中間部材99を取り付け、底部98と中間部材99との間にスペーサ101を取り付け、スペーサ101の貫通孔101aに合わせて、底部98および中間部材99にそれぞれ貫通孔98a,99aを形成し、さらに、右後取付ブラケット42の底部87に貫通孔87bを形成し、中間部材99の貫通孔99aに合わせてナット102を溶接したものである。
すなわち、右被締結部72は、ダッシュロアクロスメンバー44の右端部44bに備えられている。
以下、上述したスペーサ101の貫通孔101a、底部87,98および中間部材99の貫通孔87a,98a,99aを右取付孔72aと称する。
【0061】
この右取付孔72aに右位置決めピン69を差し込むことにより、フロントサブフレーム16を取付位置に正確に位置決めする。
図2に示す左被締結部71は、右被締結部72と左右対称の部材であり、各構成部材に、右被締結部72の構成部材と同一符号を付して説明を省略する。
左被締結部71は、ダッシュロアクロスメンバー44の左端部44aに備えられている。
【0062】
また、フロントサブフレーム16の右後端部16dに、右ブラケット18の前端が一体に取り付けられている。同様に、図2に示すように、フロントサブフレーム16の左後端部16cに、左ブラケット17の前端が一体に取り付けられている。
【0063】
図2に戻って、左右のブラケット17,18を、左右の被締結部71,72にボルト65,65で取り付けた。
よって、左サブフレーム部46の後端部16cの剛性を高め、左サブフレーム部47の後端部16dの剛性を高めることが可能になる。
【0064】
加えて、左右の被締結部71,72を、ダッシュロアクロスメンバー44の左右の端部44a,44bに設けた。
ダッシュロアクロスメンバー44は、左右のフロアフレーム13,14に掛け渡した部材であり、比較的強固な部材である。
これにより、左右のブラケット17,18を、左右の被締結部71,72に強固に取り付けることが可能になり、車体剛性をより一層高めることができる。
【0065】
次に、車体前部構造10において前車体フレーム10Aにフロントサブフレーム16を取り付ける工程を図8〜図10に基づいて説明する。
図8(a),(b)は本発明に係る車体前部構造のフロントサブフレームを装着位置にセットする工程を説明する図である。
(a)において、昇降台58を載置位置P1に配置した状態で、サブフレーム16を昇降台58に載せる。
この際に、右位置決め孔18aを右位置決めピン69に嵌め込む。
同様に、図4に示す左位置決め孔17aを左位置決めピン68に嵌め込む。
【0066】
これにより、サブフレーム16を昇降台58に載せた状態で取付位置に位置決めする。
したがって、昇降台58にフロントサブフレーム16載せる際に、フロントサブフレーム16を取付位置に手間をかけないで簡単に位置決めすることができる。
【0067】
(b)において、昇降台58用の油圧シリンダ(図示せず)を延ばすことにより、昇降台58を装着位置P2に上昇する。
右位置決めピン69を、右被締結部72の右取付孔72aに差し込む。同様に、図4に示す左位置決めピン68を、左被締結部71の左取付孔71a(図2参照)に差し込む。
これにより、フロントサブフレーム16を取付位置に正確に位置決めする。
【0068】
右サブフレーム部47の前端部16bに形成した取付孔85に、ボルト64を矢印Aの如く上向きに差し込む。
右サブフレーム部47の後端部16dに形成した取付孔96に、ボルト65を矢印Bの如く上向きに差し込む。
【0069】
図9(a),(b)は本発明に係る車体前部構造のフロントサブフレームの前後端部を前車体フレームに取り付ける工程を説明する図である。
(a)において、前端部16bの取付孔85に差し込んだボルト64を、右前取付ブラケット29の取付孔29aに差し込む。
差し込んだボルト64をナット78にねじ結合することで、右サブフレーム部47の前端部16bを右前取付ブラケット29に取り付ける。
【0070】
同様に、図4に示す左サブフレーム部46の前端部16aを、左前取付ブラケット28にボルト64で取り付ける。
【0071】
(b)において、後端部16dの取付孔96に差し込んだボルト65を、右後取付ブラケット42の取付孔42aに差し込む。
差し込んだボルト65をナット91にねじ結合することで、右サブフレーム部47の後端部16dを右後取付ブラケット42に取り付ける。
【0072】
同様に、図4に示す左サブフレーム部46の後端部16cを、左後取付ブラケット41にボルト65で取り付ける。
【0073】
フロントサブフレーム16の前端部16a,16bおよび後端部16c,16dを前車体フレーム10Aに取り付ける。
その後、昇降台58用の油圧シリンダを縮めることにより、昇降台58を載置位置P1まで矢印Cの如く下降する。
右位置決めピン69を右取付孔72aから抜き出す。同様に、図4に示す左位置決めピン68を左取付孔71a(図2参照)から抜き出す。
【0074】
図10(a),(b)は本発明に係る車体前部構造のフロントサブフレームを被締結部に取り付ける工程を説明する図である。
(a)において、右取付孔72aにボルト(右締結部材)65を矢印Dの如く上向きに差し込む。同様に、図2に示す左取付孔71aにボルト65を差し込む。
【0075】
(b)において、差し込んだボルト65をナット102にねじ結合することで、右ブラケット18を右被締結部72に取り付ける。
同様に、図2に示す左ブラケット17を左被締結部71にボルト(左締結部材)65で取り付ける。
【0076】
次に、車体前部構造10の作用を図11に基づいて説明する。
図11は本発明に係る車体前部構造の作用を説明する図である。
フロントサブフレーム16のうち、左サブフレーム部46の前後の端部16a,16cをボルト65,65で前車体フレーム10Aに取り付ける。
フロントサブフレーム16のうち、右サブフレーム部47の前後の端部16b,16dをボルト65,65で前車体フレーム10Aに取り付ける。
【0077】
加えて、左ブラケット17をボルト64で左被締結部71に取り付けるとともに、右ブラケット18をボルト64で右被締結部72に取り付ける。
左右のブラケット17,18は、フロントサブフレーム16の左右の後端部16c,16dに取り付けられている。
【0078】
このように、左サブフレーム部46の前後の端部16a,16cを前車体フレーム10Aに取り付けた後、もう一個所の部位(すなわち、左ブラケット)17を前車体フレーム10Aに取り付ける。
同様に、右サブフレーム部47の前後の端部16c,16dを前車体フレーム10Aに取り付けた後、もう一個所の部位(すなわち、右ブラケット)18を前車体フレーム10Aに取り付ける。
よって、左サブフレーム部46の後端部16cの剛性を高め、左サブフレーム部47の後端部16dの剛性を高めることが可能になる。
【0079】
これにより、例えば、左側の前輪24にかかった荷重Fが、サスペンション(図示せず)を介して左サブフレーム部46に矢印の如く横向きにかかった際に、左サブフレーム部46が、左サブフレーム部46の後端部16cがボルト65を中心にしてスイング移動することをより好適に抑え、車体剛性を一層高めることができる。
【0080】
同様に、右側の前輪24にかかった荷重F(図示せず)が、サスペンション(図示せず)を介して右サブフレーム部47に横向きにかかった際に、右サブフレーム部47が、右サブフレーム部47の後端部16dがボルト65を中心にしてスイング移動することをより好適に抑え、車体剛性を一層高めることができる。
【0081】
なお、前記実施の形態では、締結部材としてボルト65を例示したが、これに限らないで、ビスなどのその他の締結部材を使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、エンジン・ミッションユニットをサブフレームに搭載し、サブフレームを車体に取り付けた車体前部構造への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に係る車体前部構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る車体前部構造を示す平面図である。
【図3】本発明に係る車体前部構造を示す断面図である。
【図4】本発明に係る車体前部構造において前車体フレームにフロントサブフレームを取り付ける前の状態を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る車体前部構造において前車体フレームにフロントサブフレームを取り付ける前の状態を示す断面図である。
【図6】本発明に係る車体前部構造の前側の取付構造を示す断面図である。
【図7】本発明に係る車体前部構造の後側の取付構造を示す断面図である。
【図8】本発明に係る車体前部構造のフロントサブフレームを装着位置にセットする工程を説明する図である。
【図9】本発明に係る車体前部構造のフロントサブフレームの前後端部を前車体フレームに取り付ける工程を説明する図である。
【図10】本発明に係る車体前部構造のフロントサブフレームを被締結部に取り付ける工程を説明する図である。
【図11】本発明に係る車体前部構造の作用を説明する図である。
【図12】従来の基本構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0084】
10…車体前部構造、10A…前車体フレーム(車体)、15…エンジン・ミッションユニット、16…フロントサブフレーム(サブフレーム)、16a…左前端部(前端部)、16b…右前端部(前端部)、16c…左後端部(後端部)、16d…右後端部(後端部)、17a…左位置決め孔、18a…右位置決め孔、44…ダッシュロアクロスメンバー(クロスメンバー)、44a…左端部、44b…右端部、46…左サブフレーム部(左枠部)、47…右サブフレーム部(右枠部)、58…昇降台、65…ボルト(左右の締結部材)、68…左位置決めピン、69…右位置決めピン、71…左被締結部、71a…左取付孔、72…右被締結部、72a…右取付孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブフレームを左右の枠部を一体に連結して構成し、このサブフレームにエンジン・ミッションユニットを搭載した状態で、サブフレームを昇降台に載せるとともに昇降台上の取付位置に位置決めし、この昇降台を上昇させて、左枠部の前後の端部を車体に取り付けるとともに右枠部の前後の端部を車体に取り付けた車体前部構造であって、
前記昇降台に載せたサブフレームを前記取付位置に位置決めするために、前記左枠部に、前記昇降台に備えた左位置決めピンに嵌め込み可能な左位置決め孔を備えるとともに、前記右枠部に、前記昇降台に備えた右位置決めピンに嵌め込み可能な右位置決め孔を備え、
左右の枠部の前後の端部を前記車体に取り付けた後、前記左右の位置決め孔に差し込んだ左右の締結部材を車体に取り付けるために、この車体に左右の被締結部を備えたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記左位置決め孔を、前記左枠部の後端部近傍に備え、
前記右位置決め孔を、前記右枠部の後端部近傍に備えたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−205811(P2006−205811A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−18242(P2005−18242)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】