説明

車体前部構造

【課題】エンジンフード後方の見栄えを向上することを可能にする。
【解決手段】車体11に固定されるロアヒンジ22及びロアヒンジ22に対して回動するとともにエンジンフード14に固定されるアッパヒンジ23を備えたフードヒンジ17と、このエンジンフード14とフロントウインドシールドガラス15との間に配置されたカウルトップガーニッシュ16と、を備えた車体前部構造20であって、カウルトップガーニッシュ16にエンジンフード14の開閉時においてアッパヒンジ23との干渉を避ける干渉逃げ開口21を備え、アッパヒンジ23に、エンジンフード14の閉時において干渉逃げ開口21を覆うヒンジカバー25を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体にエンジンフードをヒンジを介して開閉自在に取付ける車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造として、車体にエンジンフードをヒンジを介して開閉自在に取付けるときに、車体の意匠性の向上を図ったものが知られている。
この種の車体前部構造として、エンジンフードを昇降させるアクティブフードヒンジのリフト動作を妨げることがなく、エンジンフード後方の見栄えを向上したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1の車体前部構造は、エンジンフードをリフトアップするアクティブフードヒンジと、このアクティブフードヒンジの後部を覆うカウルトップガーニッシュと、このカウルトップガーニッシュに設けられるとともに、アクティブフードヒンジの移動軌跡上の部位に設けられ、アクティブフードヒンジのリフト動作に伴って移動可能な回避部とを備えたものであり、エンジンフードを昇降させるアクティブフードヒンジのリフト動作を妨げることがなく、エンジンフード後方の見栄えを向上したものである。
【0004】
一般的に、車体にエンジンフードヒンジのロアヒンジを固定し、アッパヒンジにエンジンフードを取付け、車体に対してエンジンフードを開閉自在に取付ける車体前部構造において、エンジンフードとフロントウインドシールドガラスとの間に配置されたカウルトップガーニッシュにスリットが設けられ、アッパヒンジの回転を許容するようにしたものがある。
このような、スリットは見栄えが悪いばかりではなく、車両の商品性を損なう原因になることもある。従って、上記の車体前部構造においても、特許文献1の車体前部構造のようなエンジンフード後方の見栄えをよくする対策が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−28906公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、車体にエンジンフードヒンジのロアヒンジを固定し、アッパヒンジにエンジンフードを取付け、車体に対してエンジンフードを開閉自在に取付ける車体前部構造において、エンジンフード後方の見栄えを向上することができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体に固定されるロアヒンジ及びロアヒンジに対して回動するとともにエンジンフードに固定されるアッパヒンジを備えたフードヒンジと、このエンジンフードとフロントウインドシールドガラスとの間に配置されたカウルトップガーニッシュと、を備えた車体前部構造であって、カウルトップガーニッシュにエンジンフードの開閉時においてアッパヒンジとの干渉を避ける干渉逃げ開口を備え、アッパヒンジに、エンジンフードの閉時において干渉逃げ開口を覆うヒンジカバーを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、ヒンジカバーが、硬質樹脂材により形成されアッパヒンジに取付けられる下部ピースと、軟質樹脂材により形成されエンジンフードの閉時において少なくともカウルトップガーニッシュとラップする上部ピースとから構成され、これらの上部ピース及び下部ピースが、二色成形により形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、ヒンジカバーは、意匠面を軟質樹脂材により形成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、アッパヒンジは、ヒンジカバーの前側が取付けられる前取付部と、後ろ側が取付けられる後取付部とを有し、この後取付部が前取付部に対して、後ろ下がりに傾斜するように角度を持って設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、車体前部構造に、車体に固定されるロアヒンジ及びロアヒンジに対して回動するとともにエンジンフードに固定されるアッパヒンジを備えたフードヒンジと、このエンジンフードとフロントウインドシールドガラスとの間に配置されたカウルトップガーニッシュと、を備える。
カウルトップガーニッシュにエンジンフードの開閉時においてアッパヒンジとの干渉を避ける干渉逃げ開口を備え、アッパヒンジに、エンジンフードの閉時において干渉逃げ開口を覆うヒンジカバーを備えたので、エンジンフードの閉じたときの見栄えがよくなる。これにより、車両の商品性の向上を図ることができる。
【0012】
請求項2に係る発明では、ヒンジカバーが、硬質樹脂材により形成されアッパヒンジに取付けられる下部ピースと、軟質樹脂材により形成されエンジンフードの閉時において少なくともカウルトップガーニッシュとラップする上部ピースとから構成されたので、硬質樹脂材により取付け剛性を向上させつつ、軟質樹脂材によりカウルトップガーニッシュとの密着力を高めることができる。
また、上部ピース及び下部ピースが、二色成形により形成されるので、ヒンジカバーの成形が容易になるとともに、部品点数の低減を図ることができる。
【0013】
請求項3に係る発明では、ヒンジカバーは、意匠面を軟質樹脂材により形成されたので、ヒンジカバーの意匠面全体を軟質樹脂材で成形することで、例えば、軟質樹脂材と硬質樹脂材との間の境界が意匠面に存在しなくなる。これにより、さらにヒンジカバーの見栄えがよくなる。
【0014】
請求項4に係る発明では、アッパヒンジは、ヒンジカバーの前側が取付けられる前取付部と、後ろ側が取付けられる後取付部とを有し、この後取付部が前取付部に対して、後ろ下がりに傾斜するように角度を持って設けられた。
後取付部は、エンジンフードの開放時において前取付部よりも下方に位置しており、より車体に近い側で締結される。このときに後取付部が傾斜した状態になると、後取付部の締結作業が行い難くなる。そこで、前取付部よりも後取付部を後ろ下がりに傾斜させることで、エンジンフードの開放時に後取付部が、前取付部よりも垂直に近くなる。つまり、締結ラインが水平に近くなり、後取付部の締結作業がしやすくなる。すなわち、ヒンジカバーの取付性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る車体前部構造を採用した車両の斜視図である。
【図2】本発明に係る車体前部構造の斜視図である。
【図3】図2に示された車体前部構造のフードヒンジの斜視図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】図3の5−5線断面図である。
【図6】図3に示されたヒンジのヒンジカバーの斜視図である。
【図7】図6の7−7線断面図である。
【図8】図6の8−8線断面図である。
【図9】図6の9−9線断面図である。
【図10】図2に示された車体前部構造の比較検討図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0017】
図1及び図2に示されたように、車両10は、車体11の前部を覆うエンジンフード14と、車室12の前方を透視可能に覆うフロントウインドシールドガラス15と、これらのエンジンフード14とフロントウインドシールドガラス15との間に配置され、エンジンフード14及びフロントウインドシールドガラス15で形成される隙間を覆うカウルトップガーニッシュ16と、エンジンフード14の後方に設けられ、車体11に対してエンジンフード14を開閉自在に取付けるフードヒンジ17とを備える。
【0018】
本発明に係る車体前部構造20は、エンジンフード14と、カウルトップガーニッシュ16と、フードヒンジ17とから構成される構造である。
エンジンフード14は、フードヒンジ17のアッパヒンジ23にボルト27,27で取付けられている。
カウルトップガーニッシュ16は、エンジンフード14の開放時(開閉時)においてアッパヒンジ23の干渉を逃げる干渉逃げ開口(スリット)21が形成される。
【0019】
図3〜図4に示されたように、フードヒンジ17は、車体11にボルト26,26で固定されるロアヒンジ22と、このロアヒンジ22にピン24を介して回転自在(回動自在)に取付けられ、エンジンフード14を支持するアッパヒンジ23と、このアッパヒンジ23に上方から取付けられ、エンジンフード14の閉状態でカウルトップガーニッシュ16の干渉逃げ開口21を覆うヒンジカバー25とからなる。
【0020】
ロアヒンジ22は、ロア本体部31と、このロア本体部31の下部に折り曲げ形成され、車体11側にボルト26,26で取付けされるロア側取付部32と、ロア本体部31の上部後方に形成され、アッパヒンジ23にピン24を介して回転自在に嵌合するロア側嵌合部33とが形成される。
【0021】
アッパヒンジ23は、アッパ本体部41と、このアッパ本体部41の前部に形成され、エンジンフード14をボルト27,27で取付ける前後の取付孔42,43と、アッパ本体部41の後部に形成され、ロアヒンジ22にピン24を介して回転自在に嵌合するアッパ側嵌合部44と、後の取付孔43の後方に形成され、ヒンジカバー25の前側を裏面から取付ねじ47で取付ける前取付部45と、この前取付部45の後方に形成され、ヒンジカバー25の後側を裏面から取付ねじ48で取付ける後取付部46と、ヒンジカバー25を位置決めする第1及び第2の位置決め受け部51,52(図8及び図9参照)が形成される。
【0022】
図4に示されたように、前取付部45及び後取付部46の関係は、後取付部46が、前取付部45に対して、後ろ下がりに傾斜するように角度θを持って設けられる。
【0023】
図2に示されるように、後取付部46は、エンジンフード14の開放時において前取付部45よりも下方に位置しており、より車体11に近い側で工具(例えば、電動ドライバ)54で締結される。このときに後取付部46が傾斜した状態になると、後取付部46の締結作業が行い難くなる。そこで、前取付部45よりも後取付部46を後ろ下がりに傾斜させることで、エンジンフード14の開放時に後取付部46が、前取付部45よりも垂直に近くなる。つまり、締結ラインが水平に近くなり、後取付部46の締結作業がしやすくなる。
【0024】
さらに、前取付部45では、図4及び図5に示されたように、ヒンジカバー25の前側に形成された逃げ孔64にスプリングナット65が挿着され、このスプリングナット65に取付ねじ47がねじ込まれる。後取付部46では、図4に示されたように、ヒンジカバー25の後側に形成された取付ボス65に、取付ねじ48がねじ込まれる。
【0025】
図6〜図9に示されるように、ヒンジカバー25は、硬質樹脂材により形成されアッパヒンジ23に取付けられる下部ピース(取付部)62と、軟質樹脂材により形成されエンジンフード14の閉時において少なくともカウルトップガーニッシュ16とラップする上部ピース(ラップ部)61とから構成される。なお、硬質樹脂材は、ポリプロピレン樹脂又はABS樹脂などが好ましく、軟質樹脂はEPDM(エチレン・ポリプロピレンゴム)又はその他ゴムなどが好ましい。
【0026】
上部ピース61及び下部ピース62は、二色成形により形成される。
また、上部ピース61の表面は、意匠面71が形成され、意匠面71には下部ピース62が突出されない(図6〜図8参照)。下部ピース62には、先に説明した逃げ孔64と、取付ボス65と、図8に示されるように、アッパヒンジ23の第1の位置決め受け部51に位置決めされる第1の位置決め部67と、アッパヒンジ23の第2の位置決め受け部52に位置決めされる第2の位置決め部68(図9参照)とが形成される。
【0027】
図10(a)には比較例の車体前部構造100においてエンジンフード104を閉じた状態が示され、図10(b)には比較例の車体前部構造100においてエンジンフード104を開けた状態が示され、図10(c)には実施例の車体前部構造20においてエンジンフード14を閉じた状態が示され、図10(d)には実施例の車体前部構造20においてエンジンフード14を開けた状態が示される。
【0028】
図10(a),(b)に示されたように、比較例の車体前部構造100は、車体101の前部を覆うエンジンフード104と、車室102の前方を透視可能に覆うフロントウインドシールドガラス105と、これらのエンジンフード104とフロントウインドシールドガラス105との間に配置され、エンジンフード104及びフロントウインドシールドガラス105で形成される隙間を覆うカウルトップガーニッシュ106と、車体101とエンジンフード104後方とに設けられ、車体101に対してエンジンフード104を開閉自在に取付けるフードヒンジ107とから構成され、カウルトップガーニッシュ106は、エンジンフード104の開放時においてフードヒンジ107のアッパヒンジ113の干渉を逃げる干渉逃げ開口(スリット)111が形成されている。
【0029】
すなわち、比較例の車体前部構造100では、エンジンフード104の閉状態で、カウルトップガーニッシュ106の干渉逃げ開口(スリット)111が見えたままである。従って、干渉逃げ開口111が目立ち、車両の商品性が落ちる。
【0030】
図10(c),(d)に示されたように、実施例の車体前部構造20では、エンジンフード14と、カウルトップガーニッシュ16と、フードヒンジ17とから構成され、フードヒンジ17のアッパヒンジ23に、エンジンフード14の閉状態でカウルトップガーニッシュ16の干渉逃げ開口(スリット)21を塞ぐヒンジカバー25が設けられた。従って、干渉逃げ開口(スリット)21を隠すことができる。
【0031】
図1〜図9に示されたように、車体前部構造20は、車体11に固定されるロアヒンジ22及びロアヒンジ22に対して回動するとともにエンジンフード14に固定されるアッパヒンジ23を備えたフードヒンジ17と、このエンジンフード14とフロントウインドシールドガラス15との間に配置されたカウルトップガーニッシュ16と、を備える。
【0032】
カウルトップガーニッシュ16にエンジンフード14の開放時(開閉時)においてアッパヒンジ23との干渉を避ける干渉逃げ開口21を備え、アッパヒンジ23に、エンジンフード14の閉時において干渉逃げ開口21を覆うヒンジカバー25を備えたので、エンジンフード14の閉じたときの見栄えがよくなる。これにより、車両10の商品性の向上を図ることができる。
【0033】
ヒンジカバー25は、硬質樹脂材により形成されアッパヒンジ23に取付けられる下部ピース62と、軟質樹脂材により形成されエンジンフード14の閉時において少なくともカウルトップガーニッシュ16とラップする上部ピース61とから構成されたので、硬質樹脂材により取付け剛性を向上させつつ、軟質樹脂材によりカウルトップガーニッシュ16との密着力を高めることができる。
【0034】
また、上部ピース61及び下部ピース62が、二色成形により形成されるので、ヒンジカバー25の成形が容易になるとともに、部品点数の低減を図ることができる。
【0035】
ヒンジカバー25は、意匠面71を軟質樹脂材により形成されたので、ヒンジカバー25の意匠面71全体を軟質樹脂材で成形することで、例えば、軟質樹脂材と硬質樹脂材との間の境界が意匠面71に存在しなくなる。これにより、さらにヒンジカバー25の見栄えがよくなる。
【0036】
アッパヒンジ23は、ヒンジカバー25の前側が取付けられる前取付部45と、後ろ側が取付けられる後取付部46とを有し、この後取付部46が前取付部45に対して、後ろ下がりに傾斜するように角度を持って設けられた。
【0037】
後取付部46は、エンジンフード14の開放時において前取付部45よりも下方に位置しており、より車体11に近い側で締結される。このときに後取付部46が傾斜した状態になると、後取付部46の締結作業が行い難くなる。そこで、前取付部45よりも後取付部46を後ろ下がりに傾斜させることで、エンジンフード14の開放時に後取付部46が、前取付部45よりも垂直に近くなる。つまり、締結ラインが水平に近くなり、後取付部46の締結作業がしやすくなる。すなわち、ヒンジカバー25の取付性の向上を図ることができる。
【0038】
尚、本発明に係る車体前部構造は、図7に示すように、ヒンジカバー25は上部ピース61及び下部ピース62とから構成されたが、これに限るものではなく、ヒンジカバーを単一の樹脂で形成することを妨げるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る車体前部構造は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【符号の説明】
【0040】
10…車両、11…車体、14…エンジンフード、15…フロントウインドシールドガラス、16…カウルトップガーニッシュ、17…フードヒンジ、20…車体前部構造、21…干渉逃げ開口、22…ロアヒンジ、23…アッパヒンジ、25…ヒンジカバー、45…前取付部、46…後取付部、61…上部ピース、62…下部ピース、71…意匠面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定されるロアヒンジ及びロアヒンジに対して回動するとともにエンジンフードに固定されるアッパヒンジを備えたフードヒンジと、このエンジンフードとフロントウインドシールドガラスとの間に配置されたカウルトップガーニッシュと、を備えた車体前部構造であって、
前記カウルトップガーニッシュに前記エンジンフードの開閉時において前記アッパヒンジとの干渉を避ける干渉逃げ開口を備え、
前記アッパヒンジに、前記エンジンフードの閉時において前記干渉逃げ開口を覆うヒンジカバーを備えたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記ヒンジカバーは、硬質樹脂材により形成され前記アッパヒンジに取付けられる下部ピースと、軟質樹脂材により形成され前記エンジンフードの閉時において少なくとも前記カウルトップガーニッシュとラップする上部ピースとから構成され、
これらの上部ピース及び下部ピースが、二色成形により形成されることを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記ヒンジカバーは、意匠面を前記軟質樹脂材により形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記アッパヒンジは、前記ヒンジカバーの前側が取付けられる前取付部と、後ろ側が取付けられる後取付部とを有し、
この後取付部が前取付部に対して、後ろ下がりに傾斜するように角度を持って設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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