説明

車体前部構造

【課題】ダンパ部で支持されるダンパの支持剛性を向上することを可能にするとともに、フロントサイドフレームの折れのモードコントロールの安定化を図ることを可能にする。
【解決手段】エンジンルーム13とキャビン12とを仕切るダッシュボード14と、ダッシュボード14に後端が結合されて前方側に延びる左右一対のフロントサイドフレーム16と、フロントサイドフレーム16に下部が接地するダンパ部33と、を備えた車体前部構造であって、フロントサイドフレーム16は、ダンパ部33が接地する範囲内に、前後入力に対する耐力がフロントサイドフレーム16の他の部位に比較して低くされた変形容易部75を備え、ダンパ部33に、車幅方向に凸形状に突出させ上下方向に延びる縦ビード76を備え、変形容易部75と縦ビード76とを、車体前後方向で同一位置に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルームとキャビンとを仕切るダッシュボードと、ダッシュボードに後端が結合されて前方側に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、フロントサイドフレームに下部が接地するダンパ部(ダンパハウジング)と、を備えた車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造は、車室の前壁をなすダッシュボードロアの下部に連なるダッシュボードクロスメンバと、ダッシュボードクロスメンバから車両前方へ延設しエンジンルームの左右に配置されたフロントサイドフレームと、フロントサイドフレームに取付けられているダンパハウジング(ダンパ部)と、を備える。
【0003】
ダンパハウジング(ダンパ部)には、車両前方へ向いている前壁部に連なりフロントサイドフレ一ム内を仕切る仕切壁(バルクヘッド)を備える。フロントサイドフレームには、バルクヘッドより車両前方に設けた前部変形部と、バルクヘッドより車両後方で内側壁部に設けた内脆弱と、ダンパハウジングより車両後方で外側壁部に凹状に形成した外脆弱と、を備えている。
【0004】
この車体前部構造によれば、前突エネルギーの大半を、フロントサイドフレームの変形で吸収することが可能である。これにより、前突時のフロントサイドフレームの変形モードを安定化することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−255883公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、キャビン領域拡大のために、エンジンルームの前後長を短くするショートオーバハング化の傾向がある。エンジンルームの前後長を短くすることは、前突荷重の吸収領域を縮小することとなり、より効率的な前突エネルギーの吸収性能が求められる。
特許文献1の車体前部構造では、前突エネルギーの大半はフロントサイドフレームの変形で吸収する構造となっているため、前突エネルギー吸収性能がフロントサイドフレームの剛性に依存する。従って、他の部位を利用したより効率的な前突エネルギーの吸収ができない。
【0007】
さらに、フロントサイドフレームの変形モードを安定化するために、ダンパハウジング(ダンパ部)のフロントサイドフレームへの設置部が、開ロを有する二股の脚形状となっている。すなわち、ダンパハウジングのダンパ支持剛性の低下が考えられる。
また、フロントサイドフレームに脆弱部を設けた分、フロントサイドフレームが弱くなり衝撃吸収性能が低下すると考えられる。
【0008】
本発明は、ダンパハウジング(ダンパ部)で支持されるダンパの支持剛性を向上することができるとともに、衝撃吸収量の増大を図ることができる車体前部構造を提供することを課題とする。さらに、フロントサイドフレームの折れのモードコントロールの安定化を図ることができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、エンジンルームとキャビンとを仕切るダッシュボードと、ダッシュボードに後端が結合されて前方側に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、フロントサイドフレームに下部が接地するダンパ部と、を備えた車体前部構造であって、フロントサイドフレームは、ダンパ部が接地する範囲内に、前後入力に対する耐力がフロントサイドフレームの他の部位に比較して低くされた変形容易部を備え、ダンパ部に、車幅方向に凸形状に突出させ上下方向に延びる縦ビードを備え、変形容易部と縦ビードとを、車体前後方向で同一位置に配置することを特徴とする。
なお、ダンパ部は、ダンパ(ダンパユニット)が取付けられるダンパベースと、このダンパベースの廻りに形成されるダンパハウジングと、から構成される。
【0010】
請求項2に係る発明は、フロントサイドフレームに、長手方向に沿って延びる横ビードを備え、横ビードの前端部より前方、若しくは横ビードの後端部より後方に、変形容易部を設定することを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、縦ビードに、前側の稜線と後側の稜線とを備え、前側の稜線と後側の稜線との間の幅が、フロントサイドフレームに結合される下方部位に向かうに連れて徐々に広がるよう末広がり形状に形成されることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、縦ビードが、前側の稜線が変形容易部に向かって延び、後側の稜線がフロントサイドフレームとダッシュボードとの結合部に向かって延びるよう形成されることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、フロントサイドフレームとダッシュボードとの結合部に、結合部を補強する補強用ブラケットを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、エンジンルームとキャビンとを仕切るダッシュボードと、ダッシュボードに後端が結合されて前方側に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、フロントサイドフレームに下部が接地するダンパ部と、を備えた。
フロントサイドフレームは、ダンパ部が接地する範囲内に、前後入力(荷重)に対する耐力がフロントサイドフレームの他の部位に比較して低くされた変形容易部を備える。ダンパ部に、車幅方向に凸形状に突出させ上下方向に延びる縦ビードを備える。
変形容易部と縦ビードとを、車体前後方向で同一位置に配置したので、縦ビードがダンパの上下入力(荷重)に対しては上下に延びる梁となる。これにより、ダンパ部で支持されるダンパの支持剛性を向上することができる。
また、変形容易部及び縦ビードが、前突荷重の前後入力に対しては折れの起点となることで、例えば、厚板で形成されたダンパ部を衝撃吸収にも利用でき、衝撃吸収量の増大を図ることができる。さらに、変形容易部と縦ビードとを、車体前後方向で同一位置に配置した。すなわち、フロントサイドフレームとダンパ部の折れの起点が前後方向で同位置に配置されたものとみることもできる。この結果、フロントサイドフレームの折れのモードコントロールの安定化を図ることができる。
【0015】
請求項2に係る発明では、フロントサイドフレームに、長手方向に沿って延びる横ビードを備え、横ビードの前端部より前方、若しくは横ビードの後端部より後方に、変形容易部を設定するので、横ビードによりフロントサイドフレームの前後入力(荷重)に対する耐力が向上できるとともに、簡単な構成で変形容易部を形成することができる。また、フロントサイドフレームに弱い部分を設けることなくモードコントロールできるので、フロントサイドフレームによる衝撃吸収性能を低下させることがない。
【0016】
請求項3に係る発明では、縦ビードに、前側の稜線と後側の稜線とを備え、前側の稜線と後側の稜線との間の幅が、フロントサイドフレームに結合される下方部位に向かうに連れて徐々に広がるよう末広がり形状に形成されるので、ダンパ部で支持されるダンパからの突き上げ入力(荷重)を、フロントサイドフレームの前後の広い範囲で支えることができる。この結果、ダンパの支持剛性の向上を図ることができる。
【0017】
請求項4に係る発明では、縦ビードが、前側の稜線が変形容易部に向かって延び、後側の稜線がフロントサイドフレームとダッシュボードとの結合部に向かって延びるよう形成されるので、前側の稜線がダンパ部の折れの起点となる。これにより、フロントサイドフレームの変形モード安定化を図ることができるとともに、後側の稜線でダンパの支持剛性の向上を図ることができる。
【0018】
請求項5に係る発明では、フロントサイドフレームとダッシュボードとの結合部に、結合部を補強する補強用ブラケットを備えるので、後側の稜線が接地する結合部の剛性及び強度の向上を図ることができる。この結果、ダンパの支持剛性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る車体前部構造を示す平面図である。
【図2】図1に示された車体前部構造の車体内方からの側面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】図1に示された車体前部構造の車体内方上部からの斜視図である。
【図6】図5に示された車体前部構造の要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0021】
図1〜図5に示されたように、車体10の前部には、正面視矩形状に形成されるフロントバルクヘッド31と、フロントバルクヘッド31の車幅外側で前後方向に延びるフロントサイドフレーム16と、フロントサイドフレーム16の外側に並設され、車体後方に向けて上方に湾曲されるアッパフレーム(アッパメンバ)17と、エンジンルーム13とキャビン(車室)12とを仕切るダッシュボード14と、フロントサイドフレーム16に下部が接地され、ダンパユニット(不図示)が支持されるダンパ部33と、フロントサイドフレーム16の前端に設けられた内側の衝撃吸収部材(内側バンパビームエクステンション)21と、このバンパビームエクステンション21の外側に且つアッパフレーム17の前端に設けられた外側の衝撃吸収部材(外側バンパビームエクステンション)22と、内側の衝撃吸収部材21及び外側の衝撃吸収部材22が車幅方向に連結される連結プレート23と、内側の衝撃吸収部材21及び外側の衝撃吸収部材22の前端に設けられるバンパビーム24と、が設けられる。
【0022】
図1に示される車体前部構造は、ダッシュボード14、フロントサイドフレーム16及びダンパ部33廻りの結合構造である。以下、詳細に説明する。
【0023】
フロントサイドフレーム16、アッパフレーム17、内側の衝撃吸収部材21、外側の衝撃吸収部材22、連結プレート23、ダンパ部33は、車幅方向に関して左右対称に一対設けられている。
また、ダンパ部33は、不図示のダンパ(ダンパユニット)が取付けられるダンパベース55と、このダンパベース55の廻りに形成されるダンパハウジング56と、から構成される。図1では車体10の右側を示す。
【0024】
フロントサイドフレーム16の前端部16a、アッパフレーム17の前端部17aと同一面となるよう結合されている。すなわち、フロントサイドフレーム16の前端部16aにフロントサイドフレーム16側のフランジ53を備え、アッパフレーム17の前端部17aにアッパフレーム17のフランジ54を備え、フランジ53,54は連続的に且つ同一面になるように設けられる。
【0025】
フロントサイドフレーム16側のフランジ53は、車幅内側に延出され、フロントバルクヘッド31の左右を構成するサイドステー47の閉断面と車体前後方向で且つ車幅方向にラップする。符号53aは、サイドステー47にラップするオーバラップ部である。
フロントサイドフレーム16は、閉断面形状に形成される。
【0026】
フロントサイドフレーム16は、後端がダッシュボード14に結合されて前方側に延びる部材であるともいえる。フロントサイドフレーム16とダッシュボード14との結合部71は、結合部71を補強する補強用ブラケット72を備える。
【0027】
フロントサイドフレーム16は、フロントサイドフレーム16の長手途中に、長手方向に沿って延びる横ビード73,73と、ダンパ部33のダンパハウジング56が接地する範囲内に、前後入力(荷重)に対する耐力がフロントサイドフレーム16の他の部位に比較して低くされた変形容易部75と、が形成される。
【0028】
なお、横ビード73,73は、フロントサイドフレーム16の内側に図示されているが、フロントサイドフレーム16の外側にも、車体前後方向に関して同位置にて形成されている。
【0029】
変形容易部75は、横ビード73の後端部73bより後方に設定される。変形容易部75は、折れ線が形成される。その他、他の部分に比べて縮小した断面に形成してもよく、ノッチや切り欠きを形成したものであってもよい。変形容易部75は、ダンパ部33とフロントサイドフレーム16の折れの起点としての作用をなす。なお、変形容易部75は、横ビード73の前端部73aより前方に形成されたものであってもよい。また、S2はフロントサイドフレーム16にダンパ部33のダンパハウジング56が接地するダンパハウジング接地範囲を示す。
【0030】
内側の衝撃吸収部材21は、フロントサイドフレーム16の前端部16aに設けられ、フロントバルクヘッド31よりも前方に延びる。さらに、先端が車幅外方に指向するように湾曲して形成される。これにより、バンパビーム24に車幅外方から斜めに前突荷重が作用する場合に、内側の衝撃吸収部材21に円滑に潰れを発生させ、衝撃の吸収を促進することができる。
【0031】
外側の衝撃吸収部材22は、アッパフレーム17の前端部17aに設けられるとともに、車体前方に直線的に延ばされている。これにより、バンパビーム24に前突荷重が作用する場合に、外側の衝撃吸収部材22に円滑に潰れを発生させ、衝撃の吸収を促進することができる。
【0032】
連結プレート23は、車幅方向に延ばされた部材であり、内側の衝撃吸収部材21と外側の衝撃吸収部材22を一体的に載置する部材である。
【0033】
フロントバルクヘッド31は、車幅方向に延びるアッパステー45及びロアステー(不図示)と、車体上下方向に延びる左右一対のサイドステー47(図1参照)と、から構成される。
【0034】
ダンパ部33のダンパベース55は、厚板で形成されている。さらに、ダンパ部33のダンパハウジング56は、ダンパベース55よりも薄い鋼板で形成され、車幅方向に凸形状に突出させ上下方向に延びる縦ビード76を備える。
縦ビード76は、フロントサイドフレーム16の変形容易部75と車体前後方向で同一位置に配置され、前側の稜線76aと後側の稜線76bとを備える。詳細には、縦ビード76の前側の稜線76aが、フロントサイドフレーム16の変形容易部75と車体前後方向で同一位置に配置されている。
【0035】
前側の稜線76aは、変形容易部75に向かって延び、後側の稜線76bは、フロントサイドフレーム16とダッシュボード14との結合部71に向かって延びるよう形成される。前側の稜線76aと後側の稜線76bとの間の幅は、フロントサイドフレーム16に結合される下方部位に向かうに連れて徐々に広がるよう末広がり形状に形成される。
【0036】
図5に示されたように、ダッシュボード14は、キャビン(車室)12内とエンジンルーム13を仕切るダッシュロアパネル37と、ダッシュロアパネル37の上部に設けられるダッシュアッパパネル38とから構成されている。
【0037】
フロントサイドフレーム16に変形容易部75を形成し、ダンパ部33のダンパハウジング56に上下方向に延びる車幅方向に凸形状の縦ビード76を形成し、変形容易部75と縦ビード76とを前後方向で同位置とした。縦ビード76は、ダンパユニット(不図示)の上下入力(荷重)に対しては上下に延びる梁の役目をなし、ダンパ支持剛性を向上するとともに、前突荷重の前後入力に対しては折れの起点として作用する。
【0038】
厚板のダンパベース55を衝撃吸収に利用して、衝撃吸収量を増大する。縦ビード76は、ダンパハウジング56及びフロントサイドフレーム16の折れの起点として作用する変形容易部75と同位置に設定することで、ダンパ部及びフロントサイドフレーム16の折れモードのモードコントロールの安定化を図る。
【0039】
フロントサイドフレーム16の長手途中に前後に延びる横ビード73を形成し、この横ビード73の後端部73bより後側を変形容易部75に設定した。
横ビード73によりフロントサイドフレーム16の前後入力(荷重)に対する耐力を向上する。横ビード73の前及び後端部73a,73bの近傍部位とでフロントサイドフレーム16の耐力に差を与え、これを変形容易部75とした。なお、変形容易部75は、横ビード73の前端部73aより前側に設定したものであってもよい。
【0040】
また、ダンパ部33のダンパハウジング56側の縦ビード76を、フロントサイドフレーム16に結合される下方部位に向かうに連れて末広がり形状とすることで、ダンパの支持剛性を向上する。
【0041】
縦ビード76の前側の稜線76aを、横ビード73の後端部73b近傍に接地させ、後側の稜線76bを、フロントサイドフレーム16とダッシュボード14との結合部71に接地させた。これにより、前側の稜線76aでフロントサイドフレーム16の変形モード安定化を図り、後側の稜線76bでダンパの支持剛性を向上させる。
【0042】
フロントサイドフレーム16とダッシュボード14との結合部71に、補強用ブラケット72を備えることで、後側の稜線76bが接地する結合部71の剛性及び強度の向上を図る。これにより、ダンパ支持剛性の向上を図った。
【0043】
図1、図2に示されたように、車体前部構造では、エンジンルーム13とキャビン12とを仕切るダッシュボード14と、ダッシュボード14に後端が結合されて前方側に延びる左右一対のフロントサイドフレーム16と、フロントサイドフレーム16に下部が接地するダンパ部33と、を備えた。
【0044】
フロントサイドフレーム16は、ダンパ部33のダンパハウジング56が接地する範囲内に、前後入力(荷重)に対する耐力がフロントサイドフレーム16の他の部位に比較して低くされた変形容易部75を備える。ダンパハウジング56に、車幅方向に凸形状に突出させ上下方向に延びる縦ビード76を備える。
【0045】
変形容易部75と縦ビード76とを、車体前後方向で同一位置に配置したので、縦ビード76がダンパの上下入力(荷重)に対しては上下に延びる梁となる。これにより、ダンパ部33で支持されるダンパの支持剛性を向上することができる。
【0046】
また、変形容易部75及び縦ビード76が、前突荷重の前後入力に対しては折れの起点となることで、例えば、厚板で形成されたダンパ部33のダンパベース55を衝撃吸収にも利用でき、衝撃吸収量の増大を図ることができる。さらに、変形容易部75と縦ビード76とを、車体前後方向で同一位置に配置した。すなわち、フロントサイドフレーム16とダンパ部33の折れの起点が前後方向で同位置に配置されたものとみることもできる。この結果、フロントサイドフレーム16の折れのモードコントロールの安定化を図ることができる。
【0047】
図2に示されたように、車体前部構造では、フロントサイドフレーム16に、長手方向に沿って延びる横ビード73を備え、横ビード73の後端部73bより後方に、変形容易部75を設定するので、横ビード73によりフロントサイドフレーム16の前後入力(荷重)に対する耐力が向上できるとともに、簡単な構成で変形容易部75を形成することができる。また、フロントサイドフレーム16に弱い部分を設けることなくモードコントロールできるので、フロントサイドフレーム16による衝撃吸収性能を低下させることがない。
【0048】
図2に示されたように、車体前部構造では、縦ビード76に、前側の稜線76aと後側の稜線76bとを備え、前側の稜線76aと後側の稜線76bとの間の幅が、フロントサイドフレーム16に結合される下方部位に向かうに連れて徐々に広がるよう末広がり形状に形成されるので、ダンパ部33で支持されるダンパからの突き上げ入力(荷重)を、フロントサイドフレーム16の前後の広い範囲で支えることができる。この結果、ダンパの支持剛性の向上を図ることができる。
【0049】
図5に示されたように、車体前部構造では、縦ビード76が、前側の稜線76aが変形容易部75に向かって延び、後側の稜線76bがフロントサイドフレーム16とダッシュボード14との結合部71に向かって延びるよう形成されるので、前側の稜線76aがダンパ部33の折れの起点となる。これにより、フロントサイドフレーム16の変形モード安定化を図ることができるとともに、後側の稜線76bでダンパの支持剛性の向上を図ることができる。
【0050】
図5に示されたように、車体前部構造では、フロントサイドフレーム16とダッシュボード14との結合部71に、結合部71を補強する補強用ブラケット72を備えるので、後側の稜線76bが接地する結合部71の剛性及び強度の向上を図ることができる。この結果、ダンパの支持剛性が向上する。
【0051】
尚、本発明に係る車体前部構造は、図2に示すように、変形容易部75は、横ビード73の後端部73bより後方に設定されたが、これに限るものではなく、変形容易部75は、横ビード73の前端部73aより前方に形成されたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、エンジンルームとキャビンとをダッシュボードで仕切り、ダッシュボードに左右一対のフロントサイドフレームが結合し、フロントサイドフレームにダンパ部(ダンパハウジング)の下部を接地させる車体前部構造を備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0053】
10…車体、12…キャビン、13…エンジンルーム、14…ダッシュボード、16…フロントサイドフレーム、33…ダンパ部、71…結合部、72…補強用ブラケット、73…横ビード、73a…前端部、73b…後端部、75…変形容易部、76…縦ビード、76a…前側の稜線、76b…後側の稜線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームとキャビンとを仕切るダッシュボードと、該ダッシュボードに後端が結合されて前方側に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、前記フロントサイドフレームに下部が接地するダンパ部と、を備えた車体前部構造であって、
前記フロントサイドフレームは、前記ダンパ部が接地する範囲内に、前後入力に対する耐力が前記フロントサイドフレームの他の部位に比較して低くされた変形容易部を備え、
前記ダンパ部に、車幅方向に凸形状に突出させ上下方向に延びる縦ビードを備え、
前記変形容易部と前記縦ビードとを、車体前後方向で同一位置に配置することを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記フロントサイドフレームは、長手方向に沿って延びる横ビードを備え、
前記横ビードの前端部より前方、若しくは前記横ビードの後端部より後方に、前記変形容易部を設定することを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記縦ビードは、前側の稜線と後側の稜線とを備え、
前記前側の稜線と前記後側の稜線との間の幅が、前記フロントサイドフレームに結合される下方部位に向かうに連れて徐々に広がるよう末広がり形状に形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記縦ビードは、前記前側の稜線が前記変形容易部に向かって延び、前記後側の稜線が前記フロントサイドフレームと前記ダッシュボードとの結合部に向かって延びるよう形成されることを特徴とする請求項3記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記フロントサイドフレームと前記ダッシュボードとの結合部は、該結合部を補強する補強用ブラケットを備えることを特徴とする請求項4記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−61900(P2012−61900A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206082(P2010−206082)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】