説明

車体構造

【課題】通常の走行時における、乗員の乗り心地性や快適性を維持しつつ、しかも、車体に衝突エネルギーが作用したときにおける、乗員の保護性能を高めること。
【解決手段】サスペンションと動力源の少なくとも一方を支持したサブフレーム30を、弾性体50を介して車体フレーム20に取付けるようにした車体構造であり、車両の衝突を検出する衝突検出センサ61と、衝突検出センサが衝突を検出したときに、車体フレームに対してサブフレームを連結することが可能な荷重伝達用連結機構63とを備える。荷重伝達用連結機構による、車体フレームとサブフレームとの間での荷重伝達は、弾性体による荷重伝達よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フレームにサブフレームを取付けた車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両の中には、サスペンションやエンジンを支持したサブフレームを、車体フレームに取付けるようにした、車体構造を採用した車種がある。サブフレームを取付ける構造には、固定式取付構造とフローティング式取付構造(フローティング支持構造)がある。
【0003】
固定式取付構造は、車体フレームにサブフレームを直接取付ける方式の構造である。この固定式取付構造を採用した場合、車体に対して正面から衝突エネルギーが作用したときに、サブフレームは車体フレームと一体的に衝突エネルギーを吸収することができる。
【0004】
ところで、車両の走行中において、車輪からサスペンションを介してサブフレームに振動が伝わるとともに、エンジンからマウントを介してサブフレームに振動が伝わる。固定式取付構造では、これらの振動が、サブフレームから車体フレームに伝達されてしまう。このため、車室内へ伝わる振動や騒音を抑制して、乗員の乗り心地性や快適性を高める上では不利である。
【0005】
一方、フローティング式取付構造は、車体フレームに弾性体(防振ゴム)を介してサブフレームを取付ける方式の構造である。このフローティング式取付構造を採用した場合、車両の走行中において、車輪からサスペンションを介してサブフレームに伝わった振動や、エンジンからマウントを介してサブフレームに伝わった振動は、弾性体によって緩和されるので、車室に伝わりにくい。このため、車室内へ伝わる振動や騒音を抑制して、乗員の乗り心地性や快適性を高める上では有利である。
【0006】
しかし、上述のように、車体フレームとサブフレームとの間には、弾性体が介在している。車体に対して正面から衝突エネルギーが作用したときに、弾性体が変形する。このため、サブフレームによって衝突エネルギーを効率良く吸収するには、何らかの対策が必要となる。その場合に、構造が複雑にならないようにするとともに、車体重量の増加を極力抑制する必要がある。車体重量が増加したのでは、車両の燃費(燃料の単位容量当たり走行できる距離)が低下する要因となる。
【0007】
また、近年、衝突エネルギーを考慮したフローティング式取付構造の開発が、進められている。この改良したフローティング式取付構造は、車体フレームに一定以上の衝突エネルギーが作用したときに、車体フレームにサブフレームを連結している複数のボルトの一部を、破断させることにより、サブフレームを落下させ、この結果、車室への衝撃を緩和するというものである(例えば、特許文献1参照。)。この技術においても、サブフレームによって衝突エネルギーを効率良く吸収できることが、より好ましい。
【特許文献1】特許第4026815号公報
【0008】
以上の説明から明らかなように、車体構造には、(1)車室内に伝わる振動や騒音を抑制して、乗員の乗り心地性や快適性を高めることと、(2)車体フレーム及びサブフレームによって衝突エネルギーを効率良く吸収することを、両立させることが求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、通常の走行時における、乗員の乗り心地性や快適性を維持しつつ、しかも、車体に衝突エネルギーが作用したときにおける、乗員の保護性能を高めることができる、車体構造の技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、サスペンションと動力源の少なくとも一方を支持したサブフレームを、弾性体を介して車体フレームに取付けるようにした車体構造であって、車両の衝突を検出する衝突検出センサと、この衝突検出センサが衝突を検出したときに、前記車体フレームに対して前記サブフレームを連結することが可能な荷重伝達用連結機構とを備え、前記荷重伝達用連結機構による、前記車体フレームと前記サブフレームとの間での荷重伝達特性は、前記弾性体による荷重伝達特性よりも大きいものであることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明では、前記荷重伝達用連結機構は、前記車体フレームと前記サブフレームとの一方に有する孔と、前記車体フレームと前記サブフレームとの他方に有するピンとからなり、前記衝突検出センサが衝突を検出したときに、前記孔に前記ピンが嵌合する構成であることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明では、前記荷重伝達用連結機構は、前記車体フレームと前記サブフレームとの一方に有する嵌合凹部と、前記車体フレームと前記サブフレームとの他方に有する嵌合凸部とからなり、前記衝突検出センサが衝突を検出したときに、前記嵌合凹部に前記嵌合凸部が嵌合する構成であることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明では、前記衝突検出センサは、加速度センサからなることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明では、サスペンションと動力源の少なくとも一方を支持するサブフレームを、弾性体を介して車体フレームに取付けるようにした車体構造であって、前記車体フレームと前記サブフレームの一方は嵌合凹部を有するとともに、前記車体フレームと前記サブフレームの他方は嵌合凸部を有しており、前記嵌合凹部と前記嵌合凸部とは、互いに車体前後方向に一直線上に配置され、前記嵌合凹部の底と前記嵌合凸部の先端との間には、車体前後方向に所定の間隔を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、サスペンションと動力源の少なくとも一方を支持したサブフレームを、弾性体を介して車体フレームに取付けるようにした、いわゆる、フローティング式取付構造を採用している。従って、車両の走行中において、車輪からサスペンションを介してサブフレームに伝わった振動や、エンジンから弾性体を介してサブフレームに伝わった振動は、弾性体によって緩和されるので、車室に伝わりにくい。このため、車室内に伝わる振動や騒音を抑制して、乗員の乗り心地性や快適性を高めることができる。
【0016】
さらに、請求項1に係る発明では、衝突検出センサ及び荷重伝達用連結機構を備えている。このため、衝突検出センサが車両の衝突を検出したときに、荷重伝達用連結機構は車体フレームに対してサブフレームを連結する。荷重伝達用連結機構による、車体フレームとサブフレームとの間での荷重伝達特性は、弾性体による荷重伝達特性よりも大きい。従って、車体フレームに対してサブフレームを堅固に連結することができるので、サブフレームによって衝突エネルギーを効率良く吸収することができる。つまり、車体に衝突エネルギーを受けたときには、サブフレームを衝突エネルギー吸収部材として活用することができる。この結果、車体に衝突エネルギーが作用したときにおける、乗員の保護性能を一層高めることができる。
しかも、衝突検出センサ及び荷重伝達用連結機構を備えただけの簡単な構成であり、サブフレームを衝突エネルギー吸収部材として活用するので、衝突エネルギー吸収のための別部材を設ける必要がない。このため、車体重量の増加を極力抑制することができる。従って、車両の燃費を高める上で、極めて有利となる。
【0017】
このように、請求項1に係る発明では、(1)車室内に伝わる振動や騒音を抑制して、乗員の乗り心地性や快適性を高めることと、(2)車体フレーム及びサブフレームによって衝突エネルギーを効率良く吸収することを、両立させることができる。
【0018】
請求項2に係る発明では、荷重伝達用連結機構を孔とピンの組み合わせによって構成し、衝突検出センサが衝突を検出したときに、孔にピンが嵌合するようにしたので、荷重伝達用連結機構の構成を一層簡単にすることができる。しかも、衝突時において、孔にピンが嵌合することによって、車体フレームに対してサブフレームを、より堅固に且つ確実に連結することができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、荷重伝達用連結機構を嵌合凹部と嵌合凸部の組み合わせによって構成し、衝突検出センサが衝突を検出したときに、嵌合凹部に嵌合凸部が嵌合するようにしたので、荷重伝達用連結機構の構成を一層簡単にすることができる。しかも、衝突時において、嵌合凹部に嵌合凸部が嵌合することによって、車体フレームに対してサブフレームを、より堅固に且つ確実に連結することができる
【0020】
請求項4に係る発明では、衝突検出センサを加速度センサによって構成したので、車両の衝突を検出する加速度の基準値を容易に設定することができる。この結果、荷重伝達用連結機構を作動させる基準を一層明確に設定することができる。
【0021】
請求項5に係る発明では、サスペンションと動力源の少なくとも一方を支持したサブフレームを、弾性体を介して車体フレームに取付けるようにした、いわゆる、フローティング式取付構造を採用している。従って、車両の走行中において、車輪からサスペンションを介してサブフレームに伝わった振動や、エンジンから弾性体を介してサブフレームに伝わった振動は、弾性体によって緩和されるので、車室に伝わりにくい。このため、車室内に伝わる振動や騒音を抑制して、乗員の乗り心地性や快適性を高めることができる。
【0022】
さらに、請求項5に係る発明では、車体に衝突エネルギーを受けることにより、車体フレームとサブフレームとが、車体前後方向へ相対的に変位したときに、嵌合凹部と嵌合凸部とが車体前後方向へ相対的に変位する。この結果、嵌合凹部と嵌合凸部とが嵌合し連結することによって、車体フレームに対してサブフレームが連結する。従って、車体フレームに対してサブフレームを堅固に連結することができるので、サブフレームによって衝突エネルギーを効率良く吸収することができる。つまり、車体に衝突エネルギーを受けたときには、サブフレームを衝突エネルギー吸収部材として活用することができる。この結果、車体に衝突エネルギーが作用したときにおける、乗員の保護性能を一層高めることができる。
しかも、嵌合凹部と嵌合凸部を備えただけの簡単な構成であり、車体に衝突エネルギーを受けたときに嵌合凹部に嵌合凸部が嵌合するといった、受動的(パッシブ)な作用をなすものであり、サブフレームを衝突エネルギー吸収部材として活用するので、衝突エネルギー吸収のための別部材を設ける必要がない。このため、車体重量の増加を極力抑制することができる。従って、車両の燃費を高める上で、極めて有利となる。
【0023】
このように、請求項5に係る発明では、(1)車室内に伝わる振動や騒音を抑制して、乗員の乗り心地性や快適性を高めることと、(2)車体フレーム及びサブフレームによって衝突エネルギーを効率良く吸収することを、両立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Leは左側、Riは右側を示す。
先ず、車両の概要について図1及び図2に基づき説明する。図1は本発明に係る車両の前部の斜視図である。図2は図1に示された車両の前部の左側面図である。
【0025】
車両10における車体11の前部は、車体フレーム20と、この車体フレーム20の前部に取付けたサブフレーム30とからなる。
車体フレーム20の前部は、車体前部の両側で車体前後に延びた左右のフロントサイドフレーム21,21と、これらのフロントサイドフレーム21,21の車幅方向外側で且つ上方で車体前後に延びた左右のアッパフレーム22,22と、フロントサイドフレーム21,21とアッパフレーム22,22との間に掛け渡した左右のダンパハウジング23,23と、左右のフロントサイドフレーム21,21の前部及び左右のアッパフレーム22,22の前部に結合したフロントバルクヘッド24と、左右のフロントサイドフレーム21,21の前端間に掛け渡されたバンパ25(図2参照)とを主要構成としたモノコックボディである。
【0026】
このような車体フレーム20は、左右のフロントサイドフレーム21,21の前部と、このフロントサイドフレーム21,21の後端から後方へ延びる左右のフロアフレーム26,26の前端部とに、前後左右4個(図1では3個のみを示す。)の防振用弾性ブッシュ50を介して、サブフレーム30を吊り下げた構成である。
【0027】
サブフレーム30は、平面視略四角形状の枠からなり、右半部に横置きエンジン41(動力源41)をマウントし、左半部にトランスミッション42をマウントするとともに、左右両側に左右のサスペンション43(右側を省略)を取付けたものである。
【0028】
左のサスペンション43は、フロントサイドフレーム21に上下スイング可能に取付けたアッパアーム44と、サブフレーム30の左側部にスイング可能に取付けたロアアーム45と、ロアアーム45とダンパハウジング23との間に取付けたクッション46と、アッパアーム44及びロアアーム45に連結したナックル47とを主要構成として、車体フレーム20に図示せぬ前輪(車輪)を懸架する前輪懸架装置である。なお、左右のサスペンション43は互いに同様の構成なので、右側の説明を省略する。
【0029】
次に、車体フレーム20の下部にサブフレーム30の四隅をマウントする防振用弾性ブッシュ50の構成を図3に基づいて説明する。図3は、図2に示された防振用弾性ブッシュ及び衝突時フレームロック装置(第1実施例)周りの断面図であり、一例として、サブフレーム30の前側をマウントする防振用弾性ブッシュ50を示している。防振用弾性ブッシュ50(以下、単に「弾性ブッシュ50」と言う。)の構成は、一般的な車体フレームにサブフレームをマウントするための、周知のものであればよいが、ここで一例を挙げて説明すると、次の通りである。
【0030】
つまり、弾性ブッシュ50は、上下二分割の弾性ブッシュ部材51,51からなる。上下二分割の弾性ブッシュ部材51,51は、それぞれ内筒52と、この内筒52を囲う外筒53とを、ラバー(防振ゴム)等の弾性部材54によって連結した構成の防振部材である。上下二分割の弾性ブッシュ部材51,51は、サブフレーム30の貫通孔31に嵌合した上で、内筒52,52を貫通した取付ボルト55によって、フロントサイドフレーム21に取付けられる。この結果、フロントサイドフレーム21の下部に弾性ブッシュ50を介してサブフレーム30を取付けることができる。このように、本発明の取付構造には、車体フレーム20に弾性ブッシュ50を介してサブフレーム30を取付ける方式の構造、いわゆる、フローティング式取付構造を採用している。以下、弾性ブッシュ50のことを、適宜「弾性体50」と言い換える。
【0031】
ところで、図2及び図3に示すように、車両10は衝突時フレームロック装置60(第1実施例)を備えている。第1実施例の衝突時フレームロック装置60は、衝突検出センサ61と制御部62と複数の荷重伝達用連結機構63と複数の連結駆動部64とからなる。
【0032】
衝突検出センサ61は、車両10の衝突を検出するものであって、車体フレーム20の前部に取り付けられている。この衝突検出センサ61は、例えば加速度センサからなり、検出された加速度が、予め設定されている所定の基準加速度を超えたとき(車両10に衝突があったとき)に、検出信号を発する。衝突検出センサ61を加速度センサによって構成したので、車両10の衝突を検出する加速度の基準値を容易に設定することができる。この結果、荷重伝達用連結機構63を作動させる基準を一層明確に設定することができる。
【0033】
制御部62は、衝突検出センサ61の検出信号を受けたときに、複数の荷重伝達用連結機構63を制御するものである。
【0034】
複数の荷重伝達用連結機構63は、衝突検出センサ61が車両10の衝突を検出したとき、つまり、制御部62から制御信号を受けたときに作動して、車体フレーム20に対してサブフレーム30を連結することが可能なものである。この複数の荷重伝達用連結機構63は、4つの弾性ブッシュ50の各々近傍に2組ずつ、合計8組配置される。具体的には、図3に示すように、2組の荷重伝達用連結機構63は、各弾性ブッシュ50を挟んで前後に配置されている。
【0035】
各々の荷重伝達用連結機構63は、孔71とシリンダ72とピン73とからなる。孔71は、車体フレーム20とサブフレーム30との一方に有しており、上下方向に開口したピン嵌合用孔(ピン嵌合用の溝や凹部を含む)である。シリンダ72及びピン73は、車体フレーム20とサブフレーム30との他方に有している。シリンダ72は、孔71に対して同心に配置されるとともに、孔71に臨むように開口している。ピン73は、シリンダ72に上下スライド可能に嵌合したロック用ピンであって、孔71に嵌合することが可能である。なお、ピン73は、孔71から離反する方向に圧縮ばね74で付勢されている。
【0036】
各連結駆動部64は、各々の荷重伝達用連結機構63に1つずつ有し、合計8個有している。これらの連結駆動部64は、制御部62の制御信号を受けて、各々の荷重伝達用連結機構63を個別に駆動するものである。より具体的には、連結駆動部64は、制御部62の制御信号を受けて、ピン73を極めて短時間に孔71に嵌合させるように駆動するものであり、例えばインフレータからなる。以下、連結駆動部64のことを、適宜「インフレータ64」と言い換えることにする。
【0037】
次に、上記構成の第1実施例の作用を説明する。図4は図3に示された衝突時フレームロック装置(第1実施例)の作用図である。
図1に示すように、車体11は、サスペンション43とエンジン41(動力源41)の少なくとも一方を支持したサブフレーム30を、弾性ブッシュ50(弾性体50)を介して車体フレーム20に取付けるようにした、いわゆる、フローティング式取付構造を採用している。従って、車両10の走行中において、車輪からサスペンション43を介してサブフレーム30に伝わった振動や、エンジン41から弾性体50を介してサブフレームに伝わった振動は、弾性体50によって緩和されるので、車室に伝わりにくい。このため、車室内に伝わる振動や騒音を抑制して、乗員の乗り心地性や快適性を高めることができる。
【0038】
その後、図3に示すように、衝突検出センサ61が車両10(図2参照)の衝突を検出したときに、制御部62は電気的な制御信号をインフレータ64の点火装置65に発する。制御信号を受けた点火装置65は、インフレータ64内のガス発生剤に点火して、多量のガスを発生させ、このガスをシリンダ72内に送り込む。送り込まれたガスによって、シリンダ72内は一時的に昇圧する。この結果、ピン73は孔71へ向かってスライドして、図4に示すように孔71に嵌合する。このようにして、荷重伝達用連結機構63は、車体フレーム20に対してサブフレーム30を連結する。
【0039】
孔71とピン73の嵌合による連結状態は、極めて堅固である。ピン73を介して、車体フレーム20とサブフレーム30との間で車体前後方向へ大荷重を伝達することができる。つまり、荷重を伝達する特性(荷重伝達特性)が大きい。このように、荷重伝達用連結機構63による、車体フレーム20とサブフレーム30との間での荷重伝達特性は、弾性ブッシュ50による荷重伝達特性よりも大きい。従って、車体フレーム20に対してサブフレーム30を堅固に連結することができるので、サブフレーム30によって衝突エネルギーを効率良く吸収することができる。つまり、車体11(図2参照)に衝突エネルギーを受けたときには、サブフレーム30を衝突エネルギー吸収部材として活用することができる。この結果、車体11に衝突エネルギーが作用したときにおける、乗員の保護性能を一層高めることができる。
【0040】
しかも、衝突時フレームロック装置60は、衝突検出センサ61、制御部62、荷重伝達用連結機構63及び連結駆動部64を備えただけの簡単な構成であり、サブフレーム30を衝突エネルギー吸収部材として活用するので、衝突エネルギー吸収のための別部材を設ける必要がない。このため、車体11の重量の増加を極力抑制することができる。従って、車両10の燃費を高める上で、極めて有利となる。
【0041】
さらには、荷重伝達用連結機構63を孔71とピン73の組み合わせによって構成し、衝突検出センサ61が衝突を検出したときに、孔71にピン73が嵌合するようにしたので、荷重伝達用連結機構63の構成を一層簡単にすることができる。しかも、衝突時において、孔71にピン73が嵌合することによって、車体フレーム20に対してサブフレーム30を、より堅固に且つ確実に連結することができる。
【0042】
このように、衝突時フレームロック装置60は、(1)車室内に伝わる振動や騒音を抑制して、乗員の乗り心地性や快適性を高めることと、(2)車体フレーム20及びサブフレーム30によって衝突エネルギーを効率良く吸収することを、両立させることができる。
【0043】
なお、第1実施例において、連結駆動部64は、インフレータに限定されるものではなく、例えば電動アクチュエータによって構成してもよい。
また、第1実施例において、孔71に対するピン73の嵌め合い方式については、次の(1)又は(2)に設定すればよい。(1)互いに若干の芯ズレがあっても確実に嵌合されるように、僅かに隙間を有した緩い嵌合公差の嵌め合い方式。(2)車体フレーム20に対してサブフレーム30を厳密に連結するように、軽く圧入する程度の嵌め合い公差の嵌め合い方式。
【0044】
また、第1実施例において、孔71とピン73とを、車体フレーム20とサブフレーム30のどちらに設けるかについては、適宜設定すればよい。例えば、車種に応じて、車体フレーム20に対するサブフレーム30の連結状態を、より確実にできるように設定する。また、生産、組立が容易な方を選択する。
また、第1実施例において、荷重伝達用連結機構63は孔71とピン73の組み合わせに限定されるものではなく、例えばフック状の部材同士の組み合わせでもよい。
【0045】
次に、衝突時フレームロック装置60の他の実施例について説明する。なお、上記図1〜図4に示す車体11及び弾性ブッシュ50については、他の実施例においても同じ構成、作用を有しているので、同一符号を付し、その説明を省略する。また、他の実施例の衝突時フレームロック装置において、第1実施例の衝突時フレームロック装置60と同じ構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0046】
図5(a),(b)は第2実施例の衝突時フレームロック装置の構成図兼作用図である。図5(a)は、衝突時フレームロック装置100(第2実施例)の構成を示し、上記図3に対応させて表している。図5(b)は、衝突時フレームロック装置100(第2実施例)の作用を示す。なお、図5においては、弾性ブッシュ50を断面しないで表してある。
【0047】
図5(a)に示すように、第2実施例の衝突時フレームロック装置100は、衝突検出センサ61と制御部62と複数の荷重伝達用連結機構110と複数の連結駆動部120とからなる。
【0048】
複数の荷重伝達用連結機構110は、衝突検出センサ61が車両10の衝突を検出したとき、つまり、制御部62から制御信号を受けたときに作動して、車体フレーム20に対してサブフレーム30を連結することが可能なものである。この複数の荷重伝達用連結機構110は、4つの弾性ブッシュ50の各々近傍に1組ずつ、合計4組配置される。
【0049】
1組の荷重伝達用連結機構110は、車体フレーム20とサブフレーム30との一方に有した1つの嵌合凹部111と、車体フレーム20とサブフレーム30との他方に有した1つの嵌合凸部112とからなる。嵌合凹部111と嵌合凸部112は、車両10を上から見たときに弾性ブッシュ50の位置を中心とした位置に配置され、しかも、凹凸同士が互いに上下に対向し合うように形成されている。
【0050】
各連結駆動部120は、各々の荷重伝達用連結機構110に1つずつ有し、合計4個有している。これらの連結駆動部120は、制御部62の制御信号を受けて、各々の荷重伝達用連結機構110を個別に駆動するものであり、2つのロッド121,121と、1つの駆動源122と、1つの引上げ盤123と、2つのロッド引上げ部124,124とからなる。
【0051】
2つのロッド121,121は、サブフレーム30から車体フレーム20へ向かって上方へ延びる細長い部材であり、弾性ブッシュ50を挟んで前後の位置に、且つ弾性ブッシュ50の近傍に配置されている。各ロッド121,121の先端(上端)には、ロッド121,121よりも大径の凸部121a,121aが、それぞれ一体に形成されている。
【0052】
駆動源122は、例えば、制御部62の制御信号を受けて、出力ロッド122aが極めて短時間に上方(サブフレーム30から離反する方向)へ伸びる、電動アクチュエータからなる。以下、駆動源122のことを、適宜「電動アクチュエータ122」と言い換えることにする。
【0053】
引上げ盤123は、車体フレーム20に上下スライド可能に取り付けられるとともに、電動アクチュエータ122の出力ロッド122aに連結されている。このため、引上げ盤123は、電動アクチュエータ122によって引き上げられる。
【0054】
2つのロッド引上げ部124,124は、引上げ盤123において、各凸部121a,121aに対して個別に対向する位置に設けられ、それぞれ引上げ凹部124a,124aを有している。なお、ロッド引上げ部124,124は、引上げ盤123に一体に形成されてもよい。各引上げ凹部124a,124aは、通常状態において、各凸部121a,121aを緩く嵌合している。このため、通常状態においては、弾性ブッシュ50による振動吸収を妨げることはない。
【0055】
次に、上記構成の第2実施例の作用を、図5に基づいて説明する。
図5(a)において、衝突検出センサ61が車両10(図2参照)の衝突を検出したときに、電動アクチュエータ122は、制御部62から電気的な制御信号を受けて、出力ロッド122aを上方へ伸ばし、引上げ盤123及びロッド引上げ部124,124を上方へ急速に引き上げる。この結果、図5(b)に示すように、各ロッド引上げ部124,124は、各凸部121a,121aを上方へ急速に引き上げる。このため、サブフレーム30が車体フレーム20へ向かって上方へ移動することによって、嵌合凹部111に嵌合凸部112が嵌合する。このようにして、荷重伝達用連結機構110は、車体フレーム20に対してサブフレーム30を連結する。
【0056】
嵌合凹部111に嵌合凸部112の嵌合による連結状態は、極めて堅固である。嵌合凹部111と嵌合凸部112を介して、車体フレーム20とサブフレーム30との間で車体前後方向へ大荷重を伝達することができる。つまり、荷重を伝達する特性(荷重伝達特性)が大きい。このように、荷重伝達用連結機構110による、車体フレーム20とサブフレーム30との間での荷重伝達特性は、弾性ブッシュ50による荷重伝達特性よりも大きい。従って、車体フレーム20に対してサブフレーム30を堅固に連結することができるので、サブフレーム30によって衝突エネルギーを効率良く吸収することができる。つまり、車体11に衝突エネルギーを受けたときには、サブフレーム30を衝突エネルギー吸収部材として活用することができる。この結果、車体11に衝突エネルギーが作用したときにおける、乗員の保護性能を一層高めることができる。
【0057】
さらには、荷重伝達用連結機構110を嵌合凹部111と嵌合凸部112の組み合わせによって構成し、衝突検出センサ61が衝突を検出したときに、嵌合凹部111に嵌合凸部112が嵌合するようにしたので、荷重伝達用連結機構110の構成を一層簡単にすることができる。しかも、衝突時において、嵌合凹部111に嵌合凸部112が嵌合することによって、車体フレーム20に対してサブフレーム30を、より堅固に且つ確実に連結することができる。
【0058】
このように、衝突時フレームロック装置100は、(1)車室内に伝わる振動や騒音を抑制して、乗員の乗り心地性や快適性を高めることと、(2)車体フレーム20及びサブフレーム30によって衝突エネルギーを効率良く吸収することを、両立させることができる。
【0059】
なお、第2実施例において、駆動源122は、電動アクチュエータに限定されるものではなく、例えばインフレータによって構成してもよい。その場合には、インフレータの作動によって出力ロッド122aが上方へ伸びることになる。
【0060】
また、第2実施例において、嵌合凹部111と嵌合凸部112とを、車体フレーム20とサブフレーム30のどちらに設けるかについては、適宜設定すればよい。連結駆動部120についても、同様である。例えば、車種に応じて、車体フレーム20に対するサブフレーム30の連結状態を、より確実にできるように設定する。また、生産、組立が容易な方を選択する。
【0061】
また、第2実施例において、引上げ凹部124aと凸部121aとの組み合わせ構造は、荷重伝達用連結機構110を兼ねることができる。つまり、引上げ凹部124aが嵌合凹部111の役割を兼ねるとともに、凸部121aが嵌合凸部112の役割を兼ねる。
その場合には、嵌合凹部111及び嵌合凸部112を廃止してもよい。廃止することによって、衝突時フレームロック装置100の構成を、より簡略にすることができる。
また、廃止せずに残すことによって、車体フレーム20に対してサブフレーム30が引き上げられるときに、サブフレーム30の位置決めをするためのガイド部材の役割を果たすことができる。
【0062】
また、第2実施例において、弾性ブッシュ50は、車体フレーム20に対してサブフレーム30が引き上げられるときに、サブフレーム30の位置決めをするためのガイド部材の役割を果たすために、図3に示す内筒52及び外筒53の形状を適宜変更することができる。
【0063】
図6(a),(b)は第3実施例の衝突時フレームロック装置の構成図兼作用図である。図6(a)は、衝突時フレームロック装置200(第3実施例)の構成を示し、上記図3に対応させて表している。図6(b)は、衝突時フレームロック装置200(第3実施例)の作用を示す。なお、図6においては、弾性ブッシュ50を断面しないで表してある。
【0064】
図6(a)に示すように、第3実施例の衝突時フレームロック装置200は、衝突検出センサ61と制御部62と複数の荷重伝達用連結機構210と複数の連結駆動部220とからなる。
【0065】
複数の荷重伝達用連結機構210は、衝突検出センサ61が車両10(図2参照)の衝突を検出したとき、つまり、制御部62から制御信号を受けたときに作動して、車体フレーム20に対してサブフレーム30を連結することが可能なものである。この複数の荷重伝達用連結機構210は、4つの弾性ブッシュ50の各々近傍に1組ずつ、合計4組配置される。
【0066】
1組の荷重伝達用連結機構210は、車体フレーム20とサブフレーム30との一方に有した1つの嵌合凹部211と、車体フレーム20とサブフレーム30との他方に有した1つの嵌合凸部212とからなる。嵌合凸部212は、サブフレーム30から車体フレーム20へ向かって上方へ延びる細長いロッド213の先端(上端)に一体に形成されている。嵌合凹部211は、嵌合凸部212の前面に臨む前側凹部211aと、嵌合凸部212の後面に臨む後側凹部211bとからなる。前側に位置する前側凹部211aと、中央に位置する嵌合凸部212と、後側に位置する後側凹部211bとは、車体前後方向へ一直線上に整列している。さらに、通常状態において、前側凹部211aと後側凹部211bは、嵌合凸部212に対して一定の隙間を有している。このため、通常状態においては、弾性ブッシュ50による振動吸収を妨げることはない。
【0067】
各連結駆動部220は、各々の荷重伝達用連結機構210に1つずつ有し、合計4個有している。これらの連結駆動部220は、制御部62の制御信号を受けて、各々の荷重伝達用連結機構210を個別に駆動するものであり、連結駆動部220は、駆動源221とスライダ222とからなる。
【0068】
駆動源221は、例えば、制御部62の制御信号を受けて、前後2つの出力ロッド221a,221bが極めて短時間に車両前後方向に伸びる、電動アクチュエータからなる。この電動アクチュエータ221は、車体フレーム20に取り付けられている。以下、駆動源221のことを、適宜「電動アクチュエータ221」と言い換えることにする。前の出力ロッド221aは車両前方へ伸びる。後の出力ロッド221bは車両後方へ伸びる。後の出力ロッド221bの後端には、前側凹部211aを有している。
【0069】
スライダ222は、前後に細長いシリンダ部材からなり、車体フレーム20に前後スライド可能に取り付けられている。スライダ222の前端部222aは、前の出力ロッド221aに連結されている。このため、前の出力ロッド221aが前方へ伸びることによって、スライダ222は前方にスライドする。スライダ222の後端部222bは、前面に後側凹部211bを有している。
【0070】
次に、上記構成の第3実施例の作用を、図6に基づいて説明する。
図6(a)において、衝突検出センサ61が車両10(図2参照)の衝突を検出したときに、電動アクチュエータ221は、制御部62から電気的な制御信号を受けて、前後の出力ロッド221a,221bを急速に伸ばす。このため、スライダ222は前方にスライドする。この結果、図6(b)に示すように、前側凹部211a及び後側凹部211bは、嵌合凸部212に急速に嵌合する。このようにして、荷重伝達用連結機構210は、車体フレーム20に対してサブフレーム30を連結する。
【0071】
嵌合凹部211に嵌合凸部212の嵌合による連結状態は、極めて堅固である。嵌合凹部211と嵌合凸部212を介して、車体フレーム20とサブフレーム30との間で車体前後方向へ大荷重を伝達することができる。つまり、荷重を伝達する特性(荷重伝達特性)が大きい。このように、荷重伝達用連結機構210による、車体フレーム20とサブフレーム30との間での荷重伝達特性は、弾性ブッシュ50による荷重伝達特性よりも大きい。従って、車体フレーム20に対してサブフレーム30を堅固に連結することができるので、サブフレーム30によって衝突エネルギーを効率良く吸収することができる。つまり、車体11に衝突エネルギーを受けたときには、サブフレーム30を衝突エネルギー吸収部材として活用することができる。この結果、車体11に衝突エネルギーが作用したときにおける、乗員の保護性能を一層高めることができる。
【0072】
さらには、荷重伝達用連結機構210を嵌合凹部211と嵌合凸部212の組み合わせによって構成し、衝突検出センサ61が衝突を検出したときに、嵌合凹部211に嵌合凸部212が嵌合するようにしたので、荷重伝達用連結機構210の構成を一層簡単にすることができる。しかも、衝突時において、嵌合凹部211に嵌合凸部212が嵌合することによって、車体フレーム20に対してサブフレーム30を、より堅固に且つ確実に連結することができる。
【0073】
このように、衝突時フレームロック装置200は、(1)車室内に伝わる振動や騒音を抑制して、乗員の乗り心地性や快適性を高めることと、(2)車体フレーム20及びサブフレーム30によって衝突エネルギーを効率良く吸収することを、両立させることができる。
【0074】
なお、第3実施例において、駆動源221は、電動アクチュエータに限定されるものではなく、例えばインフレータによって構成してもよい。その場合には、インフレータの作動によって、2つの出力ロッド221a,221bが車両前後方向に伸びることになる。
【0075】
また、第3実施例において、嵌合凹部211と嵌合凸部212とを、車体フレーム20とサブフレーム30のどちらに設けるかについては、適宜設定すればよい。連結駆動部220についても、同様である。例えば、車種に応じて、車体フレーム20に対するサブフレーム30の連結状態を、より確実にできるように設定する。また、生産、組立が容易な方を選択する。
【0076】
図7(a),(b)は第4実施例の衝突時フレームロック装置の構成図兼作用図である。図7(a)に示すように、第4実施例の衝突時フレームロック装置300は、複数の荷重伝達用連結機構310からなる。複数の荷重伝達用連結機構310は、車両10の衝突を検出したとき車体フレーム20に対してサブフレーム30を連結することが可能なものである。この複数の荷重伝達用連結機構310は、4つの弾性ブッシュ50の各々近傍に1組ずつ、合計4組配置される。
【0077】
1組の荷重伝達用連結機構310は、車体フレーム20とサブフレーム30との一方に有した1つの嵌合凹部311と、車体フレーム20とサブフレーム30との他方に有した1つの嵌合凸部312とからなる。
【0078】
車体フレーム20は、サブフレーム30に対向する面(下面)に開口した、挿入凹部313を有する。この挿入凹部313の後壁313aには、嵌合凹部311が形成されている。嵌合凹部311は、後壁313aに開口するとともに、車両後方へ向かって先細り状の雌テーパに形成され、その奥端を底311aとしたものである。
【0079】
サブフレーム30は、上面から車体フレーム20へ向かって上方へ延びた、細長いロッド314を有する。この細長いロッド314は、更に挿入凹部313内へ延び、その先端(上端)から車両後方へ向かって突出した嵌合凸部312が形成されている。嵌合凸部312は、車両後方へ向かって先細り状の雄テーパに形成され、その先端312aが底311aに対向している。
【0080】
嵌合凹部311と嵌合凸部312とは、互いに車体前後方向に一直線上に配置されている。さらに、通常状態において、嵌合凹部311に対して嵌合凸部312は、一定の隙間を有している。嵌合凹部311の底311aと嵌合凸部312の先端312aとの間には、車体前後方向に所定の間隔を有している。このため、通常状態においては、弾性ブッシュ50による振動吸収を妨げることはない。
【0081】
次に、上記構成の第4実施例の作用を、図7に基づいて説明する。
図7(a)において、車両10(図2参照)が前方の障害物に衝突したときに、衝突の初期段階において、サブフレーム30に前方から衝突エネルギーが作用した場合には、車体フレーム20に対してサブフレーム30が相対的に後方へ変位する。この結果、図7(b)に示すように、嵌合凸部312が嵌合凹部311に嵌合する。つまり、雄テーパが雌テーパに嵌合する。このようにして、荷重伝達用連結機構310は、車体フレーム20に対してサブフレーム30を連結する。
【0082】
嵌合凹部311に嵌合凸部312の嵌合による連結状態は、極めて堅固である。嵌合凹部311と嵌合凸部312を介して、車体フレーム20とサブフレーム30との間で車体前後方向へ大荷重を伝達することができる。つまり、荷重を伝達する特性(荷重伝達特性)が大きい。このように、荷重伝達用連結機構310による、車体フレーム20とサブフレーム30との間での荷重伝達特性は、弾性ブッシュ50による荷重伝達特性よりも大きい。従って、車体フレーム20に対してサブフレーム30を堅固に連結することができるので、サブフレーム30によって衝突エネルギーを効率良く吸収することができる。つまり、車体11に衝突エネルギーを受けたときには、サブフレーム30を衝突エネルギー吸収部材として活用することができる。この結果、車体11に衝突エネルギーが作用したときにおける、乗員の保護性能を一層高めることができる。
【0083】
さらには、衝突時フレームロック装置300は、荷重伝達用連結機構310を嵌合凹部311と嵌合凸部312の組み合わせによって構成し、車両10が衝突したときに、嵌合凹部311に嵌合凸部312が嵌合するようにした、いわゆる受動的(パッシブ)な作用をなす。つまり、能動的な電動アクチュエータやインフレータといった駆動源、衝突検出センサ、制御部は不要である。従って、荷重伝達用連結機構310を含み、衝突時フレームロック装置300全体の構成を一層簡単にすることができる。しかも、衝突時において、嵌合凹部311に嵌合凸部312が嵌合することによって、車体フレーム20に対してサブフレーム30を、より堅固に且つ確実に連結することができる。
【0084】
このように、衝突時フレームロック装置300は、(1)車室内に伝わる振動や騒音を抑制して、乗員の乗り心地性や快適性を高めることと、(2)車体フレーム20及びサブフレーム30によって衝突エネルギーを効率良く吸収することを、両立させることができる。
【0085】
図8は図2に示された車両の前部の変形例図であり、サブフレーム30の前端から前方へフレーム延長部320を延ばしたことを特徴とする。フレーム延長部320の前端はバンパ25の真下近くに位置する。この場合に、車体11には、図7に示す荷重伝達用連結機構310を設けている。
【0086】
このような構成であるから、車両10が前方の障害物に衝突したときに、衝突エネルギーはフレーム延長部320を介してサブフレーム30に直ちに伝わる。このため、衝突した早期において、直ちに嵌合凹部311に嵌合凸部312が嵌合する。従って、車体フレーム20とサブフレーム30とが協働して、衝突エネルギーを一層効率良く吸収することができる。
【0087】
なお、本発明では、車体11は、車体フレーム20の後部にサブフレーム30を取付ける構成でもよい。
また、サブフレーム30は、動力源41とサスペンション43の少なくとも一方を支持した構成であればよい。
また、動力源41は、走行用の動力を発生するものであればよく、エンジンの他に例えば電動モータであってもよい。
また、衝突時フレームロック装置60,100,200は、制御部62を備えた構成に限定されるものではない。例えば、衝突検出センサ61の検出信号を連結駆動部64、駆動源122,221に直接に発する構成でもよい。
【0088】
また、衝突検出センサ61は、上記加速度センサによって構成されるものに限定されず、車両10の衝突状態を判別できるセンサやシステムであればよい。つまり、衝突検出センサ61の構成は、上記加速度センサだけでなく、あるいは、ボディ変形(衝突による車体11の変形)を計測する変位センサやリミットスイッチからなる衝突状態を判別できるセンサやシステムであれば、何を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の車体構造は、動力源41とサスペンション43を支持したサブフレーム30を、弾性体50を介して車体フレーム20に取付けるようにした、自動車に用いるのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明に係る車両の前部の斜視図である。
【図2】図1に示された車両の前部の左側面図である。
【図3】図2に示された防振用弾性ブッシュ及び衝突時フレームロック装置(第1実施例)周りの断面図である。
【図4】図3に示された衝突時フレームロック装置(第1実施例)の作用図である。
【図5】本発明に係る衝突時フレームロック装置(第2実施例)の構成図兼作用図である。
【図6】本発明に係る衝突時フレームロック装置(第3実施例)の構成図兼作用図である。
【図7】本発明に係る衝突時フレームロック装置(第4実施例)の構成図兼作用図である。
【図8】図2に示された車両の前部の変形例図である。
【符号の説明】
【0091】
10…車両、11…車体、20…車体フレーム、30…サブフレーム、43…サスペンション、41…動力源(エンジン)、50…弾性体(防振用弾性ブッシュ)、60…衝突時フレームロック装置、61…衝突検出センサ(加速度センサ)、62…制御部、63…荷重伝達用連結機構、64…連結駆動部、71…孔、72…シリンダ、73…ピン、100,200,300…衝突時フレームロック装置、110,210,310…荷重伝達用連結機構、111,211,311…嵌合凹部、112,212,312…嵌合凸部、120,220…連結駆動部、122,222…駆動源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンションと動力源の少なくとも一方を支持したサブフレームを、弾性体を介して車体フレームに取付けるようにした車体構造であって、
車両の衝突を検出する衝突検出センサと、この衝突検出センサが衝突を検出したときに、前記車体フレームに対して前記サブフレームを連結することが可能な荷重伝達用連結機構とを備え、
前記荷重伝達用連結機構による、前記車体フレームと前記サブフレームとの間での荷重伝達特性は、前記弾性体による荷重伝達特性よりも大きいものであることを特徴とした車体構造。
【請求項2】
前記荷重伝達用連結機構は、前記車体フレームと前記サブフレームとの一方に有する孔と、前記車体フレームと前記サブフレームとの他方に有するピンとからなり、前記衝突検出センサが衝突を検出したときに、前記孔に前記ピンが嵌合する構成であることを特徴とした請求項1記載の車体構造。
【請求項3】
前記荷重伝達用連結機構は、前記車体フレームと前記サブフレームとの一方に有する嵌合凹部と、前記車体フレームと前記サブフレームとの他方に有する嵌合凸部とからなり、前記衝突検出センサが衝突を検出したときに、前記嵌合凹部に前記嵌合凸部が嵌合する構成であることを特徴とした請求項1記載の車体構造。
【請求項4】
前記衝突検出センサは、加速度センサからなることを特徴とした請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の車体構造。
【請求項5】
サスペンションと動力源の少なくとも一方を支持するサブフレームを、弾性体を介して車体フレームに取付けるようにした車体構造であって、
前記車体フレームと前記サブフレームの一方は嵌合凹部を有するとともに、前記車体フレームと前記サブフレームの他方は嵌合凸部を有しており、
前記嵌合凹部と前記嵌合凸部とは、互いに車体前後方向に一直線上に配置され、
前記嵌合凹部の底と前記嵌合凸部の先端との間には、車体前後方向に所定の間隔を有している、ことを特徴とした車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−36760(P2010−36760A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203065(P2008−203065)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】