説明

車体部材及びその組立方法

【課題】一対の下側フランジについて、所望の接合強度を得る。
【解決手段】下側フランジ22側に凸を成す突部34を下側フランジ32に形成した状態で、下側フランジ22を下側フランジ32に対して車両上側にずれた位置に位置させ、この状態で、下側フランジ32における突部34よりも車両下側の部位32Aに接着剤36を塗布する。従って、下側フランジ22,32が対向するように、カウルトップサイドインナ12を車両下側に移動させた場合でも、突部34が接着剤36をガードするので、下側フランジ22が接着剤36を削ぎ落としてしまうことを抑制できる。しかも、この突部34については、下側フランジ22,32を対向させた後にスポット溶接することで潰すので、これにより、接着剤36を下側フランジ22,32に密着させることができる。以上より、下側フランジ22,32について、所望の接合強度を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体部材及びその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いのフランジが接着剤により接着されたサイドシルインナ及びサイドシルアウタを備えたサイドシルが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−211986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のサイドシルでは、通常、一方のフランジに接着剤を塗布した状態で、サイドシルインナをサイドシルアウタに対して一対のフランジが対向する方向に相対的に移動させてサイドシルアウタに組み付ける。従って、他方のフランジが一方のフランジに塗布された接着剤を削ぎ落としてしまう心配は少ない。
【0005】
ところが、車体部材のなかには、この車体部材を構成する第一車体構成部材及び第二車体構成部材の一方を他方に対して一対のフランジの延びる方向に移動させて組み付ける必要があるものがある。この場合には、第一車体構成部材及び第二車体構成部材の組み付け時に一方のフランジに塗布された接着剤を他方のフランジが削ぎ落としてしまう可能性がある。そして、この場合には、一対のフランジについて、所望の接合強度を得られない虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、接合部及び被接合部について、所望の接合強度を得ることができる車体部材及びその組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車体部材の組立方法は、接合部を有する第一車体構成部材と、前記接合部に接着剤を用いて接合された被接合部を有し、前記第一車体構成部材と共に車体の一部を構成する第二車体構成部材と、を備えた車体部材の組立方法であって、前記接合部側に凸を成す突部を前記被接合部に形成した状態で、前記接合部が前記被接合部に対して前記被接合部の延びる方向の一方側にずれた位置に位置されるように、前記第一車体構成部材及び前記第二車体構成部材を組付前の位置に位置させ、前記被接合部における前記突部よりも前記延びる方向の他方側の部位に前記接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、前記接合部と前記被接合部とが対向するように、前記第一車体構成部材を前記第二車体構成部材に対して前記被接合部の延びる方向の他方側に相対的に移動させて、前記第一車体構成部材及び前記第二車体構成部材を組付位置に位置させる移動工程と、前記接合部及び前記被接合部を互いに押し付けて前記突部を潰し、前記接合部及び前記被接合部を少なくとも前記接着剤により接合させる接合工程と、を備えている。
【0008】
この車体部材の組立方法によれば、接合部側に凸を成す突部を被接合部に形成した状態で、接合部を被接合部に対して被接合部の延びる方向の一方側にずれた位置に位置させ、この状態で、被接合部における突部よりも上述の延びる方向の他方側の部位に接着剤を塗布する。従って、接合部と被接合部とが対向するように、第一車体構成部材を第二車体構成部材に対して被接合部の延びる方向の他方側に相対的に移動させた場合でも、突部が接着剤をガードするので、接合部が接着剤を削ぎ落としてしまうことを抑制することができる。
【0009】
しかも、この突部については、接合部と被接合部とを対向させた後に、接合部及び被接合部を互いに押し付けることで潰すので、これにより、接着剤を接合部及び被接合部に密着させることができる。以上より、接合部及び被接合部について、所望の接合強度を得ることができる。
【0010】
なお、本発明において、第一車体構成部材を第二車体構成部材に対して相対的に移動させることには、第一車体構成部材を第二車体構成部材に対して移動させることに加え、第二車体構成部材を第一車体構成部材に対して移動させること、及び、第一車体構成部材及び第二車体構成部材の両方を移動させることが含まれる。
【0011】
また、前記課題を解決するために、請求項2に記載の車体部材の組立方法は、接合部を有する第一車体構成部材と、前記接合部に接合された被接合部を有すると共に、前記第一車体構成部材が前記被接合部の延びる方向の一方側から相対的に移動されることで組み付けられ、前記第一車体構成部材と共に車体の一部を構成する第二車体構成部材と、を備えた車体部材の組立方法であって、前記被接合部側に凸を成す突部を前記接合部に形成した状態で、前記接合部が前記被接合部に対して前記被接合部の延びる方向の一方側にずれた位置に位置されるように、前記第一車体構成部材及び前記第二車体構成部材を組付前の位置に位置させる組付前工程と、前記被接合部における前記延びる方向の一方側の端部から前記被接合部における接着剤塗布領域までの距離をL1、前記接合部における前記延びる方向の他方側の端部から前記突部の頂点までの距離をL2、前記接着剤塗布領域に塗布される接着剤の前記被接合部からの突出高さをH1、前記突部の前記接合部からの突出高さをH2とした場合に、L1<L2、H1<H2を満足するように、前記接着剤を前記接着剤塗布領域に塗布する接着剤塗布工程と、前記接合部と前記被接合部とが対向するように、前記第一車体構成部材を前記第二車体構成部材に対して前記被接合部の延びる方向の他方側に相対的に移動させて、前記第一車体構成部材及び前記第二車体構成部材を組付位置に位置させる移動工程と、前記接合部及び前記被接合部を互いに押し付けて前記突部を潰し、前記接合部及び前記被接合部を少なくとも前記接着剤により接合させる接合工程と、を備えている。
【0012】
この車体部材の組立方法によれば、組立前工程において、被接合部側に凸を成す突部を接合部に形成した状態で、接合部を被接合部に対して被接合部の延びる方向の一方側にずれた位置に位置させる。そして、接着剤塗布工程において、被接合部における上述の延びる方向の一方側の端部から被接合部における接着剤塗布領域までの距離をL1、接合部における上述の延びる方向の他方側の端部から突部の頂点までの距離をL2、接着剤塗布領域に塗布される接着剤の被接合部からの突出高さをH1、突部の接合部からの突出高さをH2とした場合に、L1<L2、H1<H2を満足するように、接着剤を接着剤塗布領域に塗布する。従って、接合部と被接合部とが対向するように、第一車体構成部材を第二車体構成部材に対して被接合部の延びる方向の他方側に相対的に移動させた場合でも、例えば、突部及び被接合部が摺接されて接合部と被接合部との間隔が確保されるので、接合部が接着剤を削ぎ落としてしまうことを抑制することができる。
【0013】
しかも、この突部については、接合部と被接合部とを対向させた後に、接合部及び被接合部を互いに押し付けることで潰すので、これにより、接着剤を接合部及び被接合部に密着させることができる。以上より、接合部及び被接合部について、所望の接合強度を得ることができる。
【0014】
請求項3に記載の車体部材の組立方法は、請求項1又は請求項2に記載の車体部材の組立方法における前記接合工程において、前記突部が潰れるように前記突部が位置する部位において前記接合部及び前記被接合部にスポット溶接を施し、前記接合部及び前記被接合部を前記スポット溶接による溶接部と前記接着剤とにより接合させる組立方法である。
【0015】
この車体部材の組立方法によれば、接合部及び被接合部のスポット溶接時に突部を潰すので、例えば、突部を潰す作業と溶接作業とを別々に行う場合に比して、作業工数を削減することができる。また、接合部及び被接合部を接着剤に加えて、スポット溶接による溶接部によっても接合するので、接合部及び被接合部の接合強度を向上させることができる。
【0016】
また、前記課題を解決するために、請求項4に記載の車体部材は、接合部を有する第一車体構成部材と、前記接合部と対向する被接合部を有すると共に、前記第一車体構成部材が前記被接合部の延びる方向の一方側から相対的に移動されることで組み付けられ、前記第一車体構成部材と共に車体の一部を構成する第二車体構成部材と、前記被接合部に形成され、前記接合部側に凸を成していた突部が前記接合部に押し付けられて潰されることで形成された潰され部と、前記被接合部における前記潰され部よりも前記延びる方向の他方側の部位を少なくとも含む部位と前記接合部とを接着する接着剤と、を備えている。
【0017】
この車体部材は、上記構成により、例えば、次の要領で組み立てることができる。すなわち、接合部側に凸を成す突部を被接合部に形成した状態で、接合部が被接合部に対して被接合部の延びる方向の一方側にずれた位置に位置されるように、第一車体構成部材及び第二車体構成部材を組付前の位置に位置させ、被接合部における突部よりも上述の延びる方向の他方側の部位に接着剤を塗布する(接着剤塗布工程)。
【0018】
続いて、接合部と被接合部とが対向するように、第一車体構成部材を第二車体構成部材に対して被接合部の延びる方向の他方側に相対的に移動させて、第一車体構成部材及び第二車体構成部材を組付位置に位置させる(移動工程)。
【0019】
そして、接合部及び被接合部を互いに押し付けて突部を潰し、接合部及び被接合部を少なくとも接着剤により接合させる(接合工程)。以上の要領で、車体部材を組み立てることができる。
【0020】
ここで、この車体部材では、その組立時に、上述のように、接合部側に凸を成す突部を被接合部に形成した状態で、接合部が被接合部に対して被接合部の延びる方向の一方側にずれた位置に位置され、この状態で、被接合部における突部よりも上述の延びる方向の他方側の部位に接着剤が塗布される。従って、接合部と被接合部とが対向するように、第一車体構成部材が第二車体構成部材に対して被接合部の延びる方向の他方側に相対的に移動された場合でも、突部が接着剤をガードするので、接合部が接着剤を削ぎ落としてしまうことを抑制することができる。
【0021】
しかも、この突部については、接合部と被接合部とが対向された後に、接合部及び被接合部が互いに押し付けられることで潰されるので、これにより、接着剤を接合部及び被接合部に密着させることができる。以上より、接合部及び被接合部について、所望の接合強度を得ることができる。
【0022】
請求項5に記載の車体部材は、請求項4に記載の車体部材において、前記潰され部と前記接合部とを接合するスポット溶接による溶接部を備えたものである。
【0023】
この車体部材によれば、接合部及び被接合部のスポット溶接時に突部を潰すことができるので、例えば、突部を潰す作業と溶接作業とを別々に行う場合に比して、作業工数を削減することができる。また、接合部及び被接合部が接着剤に加えて、スポット溶接による溶接部によっても接合されているので、接合部及び被接合部の接合強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上詳述したように、本発明によれば、接合部及び被接合部について、所望の接合強度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第一実施形態に係る車体部材の組立方法を説明する説明図である。
【図2】図1に示される突部がスポット溶接によって潰される工程を説明する説明図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る車体部材の変形例を示す断面図であって、突部が潰される前の状態を示す図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る車体部材の組立方法を説明する説明図である。
【図5】図4に示される突部がスポット溶接によって潰される工程を説明する説明図である。
【図6】比較例に係る車体部材の組立方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第一実施形態]
はじめに、本発明の第一実施形態について説明する。
【0027】
なお、各図において示される矢印UP、矢印OUTは、車両上下方向上側、車両幅方向外側をそれぞれ示している。
【0028】
図1に示される車体部材10は、例えば、乗用自動車等の車両におけるカウルトップサイドとされている。この車体の一部を構成する車体部材10は、第一車体構成部材及び第二車体構成部材の一例として、カウルトップサイドインナ12及びカウルトップサイドアウタ14を備えている。このカウルトップサイドインナ12及びカウルトップサイドアウタ14は、例えば、プレス成型等により形成される。
【0029】
カウルトップサイドインナ12は、車両幅方向に延びる上壁部16と、この上壁部16の車両幅方向内側の端部から車両下側に向けて延びる内壁部18とを有している。上壁部16の車両幅方向外側の端部は、外側フランジ20として形成されており、内壁部18の車両下側の端部は、接合部の一例である下側フランジ22として形成されている。
【0030】
一方、カウルトップサイドアウタ14は、下壁部26と外壁部28とを有している。下壁部26は、外壁部28の車両下側の端部から車両幅方向内側に向けて延びると共に、上述の上壁部16の車両下側に配置されて、この上壁部16と対向されている。外壁部28は、車両上下方向に延びると共に、上述の内壁部18の車両幅方向外側に配置されて、この内壁部18と対向されている。
【0031】
外壁部28の車両上側の端部には、車両幅方向外側に向けて延びる外側フランジ30が形成されており、下壁部26の車両幅方向内側の端部には、車両下側に向けて延びる下側フランジ32が被接合部の一例として形成されている。
【0032】
下側フランジ32には、下側フランジ22側に凸を成す突部34が形成されている。この突部34は、突起状に形成されて車両前後方向に間隔を空けて複数並んでいても良く、また、車両前後方向に連続する突条とされていても良い。
【0033】
なお、図1に示される車体部材10は、カウルトップサイドアウタ14にカウルトップサイドインナ12が組み付けられた後、突部34が潰される前の状態で示されている。この車体部材10は、次の要領で組み付けられ、その最終的な形態は、以下の如くとされている。
【0034】
すなわち、先ず、図1の想像線(二点鎖線)で示されるように、下側フランジ22が下側フランジ32に対して車両上側(被接合部の延びる方向の一方側)にずれた位置に位置されるように、カウルトップサイドインナ12をカウルトップサイドアウタ14に対する組付前の位置に位置させる。そして、この状態で、下側フランジ32における突部34よりも車両下側(被接合部の延びる方向の他方側)の部位32Aに接着剤36を塗布する(接着剤塗布工程)。
【0035】
続いて、図1の実線で示されるように、下側フランジ22と下側フランジ32とが対向するように、カウルトップサイドインナ12を車両下側に移動させて、カウルトップサイドインナ12をカウルトップサイドアウタ14に対する組付位置に位置させる(移動工程)。
【0036】
次いで、図2の上図に示されるように、スポット溶接用の一対の溶接ガン38を突部34が位置する高さにセットする。そして、下側フランジ22及び下側フランジ32にその両側から一対の溶接ガン38を押し当ててスポット溶接を施す。これにより、図2の下図に示されるように、下側フランジ22及び下側フランジ32が互いに押し付けられることで突部34が潰され、この突部34が潰されることで形成された潰され部40と、下側フランジ22とがスポット溶接による溶接部42によって接合される。
【0037】
また、このように、スポット溶接時に下側フランジ22及び下側フランジ32が互いに押し付けられることで、接着剤36の一部が潰され部40よりも車両上側に流れ込み、下側フランジ32における潰され部40よりも車両下側の部位32A及び車両上側の部位32Bが、下側フランジ22と接着剤36により接合される(接合工程)。なお、図1に示される外側フランジ20,30については、接着剤や溶接などにより接合する。
【0038】
以上の要領で、車体部材10は、組み立てられる。また、以上の要領で組み立てられた車体部材10において、下側フランジ32は、図2の下図に示されるように、最終的には、突部34が潰されることで形成された潰され部40を有する形態とされる。
【0039】
なお、潰され部40について突部34が潰されることで形成されたものであるか否か(下側フランジ32にもともと突部34が形成されていたか否か)については、例えば、突部34の痕跡が残る等により、下側フランジ32の最終的な形態から把握可能である。
【0040】
次に、本発明の第一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0041】
先ず、本発明の第一実施形態の作用及び効果をより明確にするために、比較例について説明する。なお、図6に示される比較例において、上述の本発明の第一実施形態と同一名称の構造については、比較の容易のために同一の符合を用いる。
【0042】
図6に示される比較例に係る車体部材100は、上述の本発明の第一実施形態に係る車体部材10に対し、突部34が省かれた構成とされている。
【0043】
そして、この比較例に係る車体部材100の組立方法では、先ず、図6の上図に示されるように、下側フランジ22を下側フランジ32に対して車両上側にずれた位置に位置させた状態で、下側フランジ32に接着剤36を塗布する。続いて、図6の下図に示されるように、カウルトップサイドインナ12を車両下側に移動させて、下側フランジ22を下側フランジ32に対向させる。
【0044】
しかしながら、この比較例に係る車体部材100では、下側フランジ32に接着剤36を塗布した状態で、カウルトップサイドインナ12を車両下側に移動させた際に、下側フランジ22が接着剤36を削ぎ落としてしまう可能性がある。そして、この場合には、下側フランジ22及び下側フランジ32について、所望の接合強度を得られない虞がある。
【0045】
これに対し、本発明の第一実施形態に係る車体部材10の組立方法では、図1の想像線(二点鎖線)で示されるように、下側フランジ22側に凸を成す突部34を下側フランジ32に形成した状態で、下側フランジ22を下側フランジ32に対して車両上側にずれた位置に位置させ、この状態で、下側フランジ32における突部34よりも車両下側の部位32Aに接着剤36を塗布する。
【0046】
従って、図1の実線で示される如く、下側フランジ22と下側フランジ32とが対向するように、カウルトップサイドインナ12を車両下側に移動させて、カウルトップサイドインナ12をカウルトップサイドアウタ14に対する組付位置に位置させた場合でも、突部34が接着剤36をガードするので、下側フランジ22が接着剤36を削ぎ落としてしまうことを抑制することができる。
【0047】
特に、製造誤差等の影響により、例えば、下側フランジ22が下側フランジ32寄りに位置している場合でも、下側フランジ22が突部34と摺接することにより下側フランジ32から遠ざかる側にずらされるので、下側フランジ22が接着剤36を削ぎ落としてしまうことをより効果的に抑制することができる。
【0048】
しかも、この突部34については、図2に示されるように、下側フランジ22と下側フランジ32とを対向させた後にスポット溶接することで潰すので、これにより、接着剤36を下側フランジ22及び下側フランジ32に密着させることができる。以上より、下側フランジ22及び下側フランジ32について、所望の接合強度を得ることができる。
【0049】
また、上述のように、下側フランジ22及び下側フランジ32のスポット溶接時に突部34を潰すので、例えば、突部34を潰す作業と溶接作業とを別々に行う場合に比して、作業工数を削減することができる。また、下側フランジ22及び下側フランジ32を接着剤36に加えて、スポット溶接による溶接部42によっても接合するので、下側フランジ22及び下側フランジ32の接合強度を向上させることができる。
【0050】
次に、本発明の第一実施形態の変形例について説明する。
【0051】
本発明の第一実施形態では、スポット溶接時に、接着剤36の一部が突部34よりも車両上側に流れ込み、下側フランジ32における潰され部40よりも車両下側の部位32A及び車両上側の部位32Bが、下側フランジ22と接着剤36により接合されていた。しかしながら、スポット溶接時に、接着剤36の一部が潰され部40よりも車両上側に流れ込まずに、下側フランジ32における潰され部40よりも車両下側の部位32Aのみが下側フランジ22と接着剤36により接合されていても良い。
【0052】
また、突部34は、下側フランジ22及び下側フランジ32にスポット溶接が施されることにより潰されていたが、例えば、下側フランジ22及び下側フランジ32にその両側から押圧部材等を押し当てることで下側フランジ22及び下側フランジ32が互いに押し付けられ、これにより、突部34が潰されても良い。
【0053】
また、車体部材10は、カウルトップサイドインナ12及びカウルトップサイドアウタ14を備えたカウルトップサイドとされていたが、その他の車体の部材とされていても良い。
【0054】
例えば、図3に示される本発明の第一実施形態の変形例において、車体部材10は、リアフロアパネル52及びリアサイドメンバ54を第一車体構成部材及び第二車体構成部材の一例として備えている。
【0055】
リアフロアパネル52の車両幅方向外側の端部からは、車両上側に向けて接合部の一例である外側フランジ56が延びており、リアサイドメンバ54には、外側フランジ56と対向するように被接合部の一例である縦壁部58が形成されている。この縦壁部58には、外側フランジ56側に凸を成す突部64が形成されており、この縦壁部58における突部64よりも車両下側の部位58Aには、接着剤66が塗布されている。
【0056】
なお、この図3では、リアサイドメンバ54にリアフロアパネル52が組み付けられた後、突部64が潰される前の状態が示されている。突部64が潰されて縦壁部58と外側フランジ56とが接合される工程については、上述の本発明の第一実施形態と同様である。
【0057】
この変形例においても、上述の本発明の第一実施形態と同様に、突部64が接着剤66をガードするので、外側フランジ56が接着剤66を削ぎ落としてしまうことを抑制することができる。また、外側フランジ56及び縦壁部58を互いに押し付けることで突部64を潰すことにより、接着剤66を外側フランジ56及び縦壁部58に密着させることができる。以上より、外側フランジ56及び縦壁部58について、所望の接合強度を得ることができる。
【0058】
また、本発明の第一実施形態では、第一車体構成部材としてのカウルトップサイドインナ12が車両下側に移動されることで、第二車体構成部材としてのカウルトップサイドアウタ14に組み付けられていた。しかしながら、車体部材10は、第二車体構成部材が第一車体構成部材に対して移動されることで第一車体構成部材に組み付けられる構成とされていても良く、また、第一車体構成部材及び第二車体構成部材の両方が移動されることで互いに組み付けられる構成とされていても良い。
【0059】
また、本発明の第一実施形態において、カウルトップサイドインナ12のカウルトップサイドアウタ14に対する相対的な組付方向(移動方向)は、車両上下方向とされていた。しかしながら、車体部材10は、その他の方向を第一車体構成部材の第二車体構成部材に対する組付方向とする構成とされていても良い。
【0060】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
【0061】
図4,図5に示される本発明の第二実施形態に係る車体部材70は、上述の本発明の第一実施形態に係る車体部材10に対し、次の如く構成が変更されている。つまり、図4の上図に示されるように、本発明の第二実施形態に係る車体部材70において、突部34は、下側フランジ32ではなく、下側フランジ22に形成されている。
【0062】
そして、この車体部材10は、次の要領で組み付けられ、その最終的な形態は、以下の如くとされている。
【0063】
すなわち、先ず、図4の上図に示されるように、下側フランジ22が下側フランジ32に対して車両上側(被接合部の延びる方向の一方側)にずれた位置に位置されるように、カウルトップサイドインナ12をカウルトップサイドアウタ14に対する組付前の位置に位置させる(組付前工程)。
【0064】
そして、下側フランジ32における車両上側の端部32Cからこの下側フランジ32における接着剤塗布領域32Dまでの距離をL1、下側フランジ22における車両下側(被接合部の延びる方向の他方側)の端部22Aから突部34の頂点までの距離をL2、上述の接着剤塗布領域32Dに塗布される接着剤36の下側フランジ32からの突出高さをH1、突部34の下側フランジ22からの突出高さをH2とした場合に、L1<L2、H1<H2を満足するように、接着剤36を上述の接着剤塗布領域32Dに塗布する(接着剤塗布工程)。
【0065】
続いて、図4の下図に示されるように、下側フランジ22と下側フランジ32とが対向するように、カウルトップサイドインナ12を車両下側に移動させて、カウルトップサイドインナ12をカウルトップサイドアウタ14に対する組付位置に位置させる(移動工程)。
【0066】
そして、図5に示されるように、突部34が潰れるように突部34が位置する部位において下側フランジ22及び下側フランジ32にスポット溶接を施し、下側フランジ22及び下側フランジ32をスポット溶接による溶接部42と接着剤36とにより接合させる(接合工程)。この接合工程は、上述の本発明の第一実施形態における接合工程と同様である。
【0067】
以上の要領で、車体部材70は、組み立てられる。また、以上の要領で組み立てられた車体部材70において、下側フランジ22は、図6の下図に示されるように、最終的には、突部34が潰されることで形成された潰され部80を有する形態とされる。
【0068】
なお、この潰され部40について突部34が潰されることで形成されたものであるか否か(下側フランジ22にもともと突部34が形成されていたか否か)についても、例えば、突部34の痕跡が残る等により、下側フランジ22の最終的な形態から把握可能である。
【0069】
次に、本発明の第二実施形態の作用及び効果について説明する。
【0070】
以上詳述したように、本発明の第二実施形態に係る車体部材70の組立方法では、組立前工程において、下側フランジ32側に凸を成す突部34を下側フランジ22に形成した状態で、下側フランジ22を下側フランジ32に対して車両上側にずれた位置に位置させる。そして、接着剤塗布工程において、下側フランジ32における車両上側の端部32Cからこの下側フランジ32における接着剤塗布領域32Dまでの距離をL1、下側フランジ22における車両下側の端部32Cから突部34の頂点までの距離をL2、上述の接着剤塗布領域32Dに塗布される接着剤36の下側フランジ32からの突出高さをH1、突部34の下側フランジ22からの突出高さをH2とした場合に、L1<L2、H1<H2を満足するように、接着剤36を上述の接着剤塗布領域32Dに塗布する。
【0071】
従って、下側フランジ22と下側フランジ32とが対向するように、カウルトップサイドインナ12を車両下側に移動させた場合でも、例えば、突部34が下側フランジ32と摺接されて下側フランジ22と下側フランジ32との間隔が確保されるので、下側フランジ22が接着剤36を削ぎ落としてしまうことを抑制することができる。
【0072】
しかも、この突部34については、下側フランジ22と下側フランジ32とを対向させた後にスポット溶接することで潰すので、これにより、接着剤36を下側フランジ22及び下側フランジ32に密着させることができる。以上より、下側フランジ22及び下側フランジ32について、所望の接合強度を得ることができる。
【0073】
また、上述のように、下側フランジ22及び下側フランジ32のスポット溶接時に突部34を潰すので、例えば、突部34を潰す作業と溶接作業とを別々に行う場合に比して、作業工数を削減することができる。また、下側フランジ22及び下側フランジ32を接着剤36に加えて、スポット溶接による溶接部42によっても接合するので、下側フランジ22及び下側フランジ32の接合強度を向上させることができる。
【0074】
なお、本発明の第二実施形態においても、本発明の第一実施形態と同様の変形例を採用することができる。
【0075】
以上、本発明の第一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0076】
10,70 車体部材
12 カウルトップサイドインナ(第一車体構成部材)
14 カウルトップサイドアウタ(第二車体構成部材)
22 下側フランジ(接合部)
32 下側フランジ(被接合部)
34 突部
36 接着剤
40,80 潰され部
42 溶接部
52 リアフロアパネル(第一車体構成部材)
54 リアサイドメンバ(第二車体構成部材)
56 外側フランジ(接合部)
58 縦壁部(被接合部)
64 突部
66 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合部を有する第一車体構成部材と、前記接合部に接着剤を用いて接合された被接合部を有し、前記第一車体構成部材と共に車体の一部を構成する第二車体構成部材と、を備えた車体部材の組立方法であって、
前記接合部側に凸を成す突部を前記被接合部に形成した状態で、前記接合部が前記被接合部に対して前記被接合部の延びる方向の一方側にずれた位置に位置されるように、前記第一車体構成部材及び前記第二車体構成部材を組付前の位置に位置させ、前記被接合部における前記突部よりも前記延びる方向の他方側の部位に前記接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記接合部と前記被接合部とが対向するように、前記第一車体構成部材を前記第二車体構成部材に対して前記被接合部の延びる方向の他方側に相対的に移動させて、前記第一車体構成部材及び前記第二車体構成部材を組付位置に位置させる移動工程と、
前記接合部及び前記被接合部を互いに押し付けて前記突部を潰し、前記接合部及び前記被接合部を少なくとも前記接着剤により接合させる接合工程と、
を備えた車体部材の組立方法。
【請求項2】
接合部を有する第一車体構成部材と、前記接合部に接合された被接合部を有すると共に、前記第一車体構成部材が前記被接合部の延びる方向の一方側から相対的に移動されることで組み付けられ、前記第一車体構成部材と共に車体の一部を構成する第二車体構成部材と、を備えた車体部材の組立方法であって、
前記被接合部側に凸を成す突部を前記接合部に形成した状態で、前記接合部が前記被接合部に対して前記被接合部の延びる方向の一方側にずれた位置に位置されるように、前記第一車体構成部材及び前記第二車体構成部材を組付前の位置に位置させる組付前工程と、
前記被接合部における前記延びる方向の一方側の端部から前記被接合部における接着剤塗布領域までの距離をL1、前記接合部における前記延びる方向の他方側の端部から前記突部の頂点までの距離をL2、前記接着剤塗布領域に塗布される接着剤の前記被接合部からの突出高さをH1、前記突部の前記接合部からの突出高さをH2とした場合に、L1<L2、H1<H2を満足するように、前記接着剤を前記接着剤塗布領域に塗布する接着剤塗布工程と、
前記接合部と前記被接合部とが対向するように、前記第一車体構成部材を前記第二車体構成部材に対して前記被接合部の延びる方向の他方側に相対的に移動させて、前記第一車体構成部材及び前記第二車体構成部材を組付位置に位置させる移動工程と、
前記接合部及び前記被接合部を互いに押し付けて前記突部を潰し、前記接合部及び前記被接合部を少なくとも前記接着剤により接合させる接合工程と、
を備えた車体部材の組立方法。
【請求項3】
前記接合工程において、前記突部が潰れるように前記突部が位置する部位において前記接合部及び前記被接合部にスポット溶接を施し、前記接合部及び前記被接合部を前記スポット溶接による溶接部と前記接着剤とにより接合させる、
請求項1又は請求項2に記載の車体部材の組立方法。
【請求項4】
接合部を有する第一車体構成部材と、
前記接合部と対向する被接合部を有すると共に、前記第一車体構成部材が前記被接合部の延びる方向の一方側から相対的に移動されることで組み付けられ、前記第一車体構成部材と共に車体の一部を構成する第二車体構成部材と、
前記被接合部に形成され、前記接合部側に凸を成していた突部が前記接合部に押し付けられて潰されることで形成された潰され部と、
前記被接合部における前記潰され部よりも前記延びる方向の他方側の部位を少なくとも含む部位と前記接合部とを接着する接着剤と、
を備えた車体部材。
【請求項5】
前記潰され部と前記接合部とを接合するスポット溶接による溶接部を備えた、
請求項4に記載の車体部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−240437(P2012−240437A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109240(P2011−109240)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】