説明

車体骨格構造

【課題】車両の前面衝突時にダッシュクロスメンバの荷重負担を軽減することができる車体骨格構造を得る。
【解決手段】ダッシュクロスメンバ40の膨出部44の上面44Aには、アッパーリインフォース50の前端フランジ部56及びガセット60の下端フランジ部68が結合されている。車両の前面衝突時にダッシュクロスメンバ40がフロントサイドメンバ24側からトーボード部16を介して荷重Fを受けた場合、アッパーリインフォース50及びガセット60がこの荷重Fの一部を支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダッシュパネルのキャビン側の面にダッシュクロスメンバを備えた車体骨格構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体骨格構造においては、ダッシュクロスメンバがダッシュパネルに結合されて車両幅方向に延在した構造がある(例えば、特許文献1参照)。このような構造では、前面衝突時にフロントサイドメンバ(前部骨格部)の軸方向に作用する荷重がダッシュクロスメンバに入力される。
【特許文献1】特開2003−191862公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このような構造では、例えば、ダッシュクロスメンバの入力位置後方側に支持部がないと、ダッシュクロスメンバにはロッカやトンネル部を支点にした曲げモーメントが発生してしまい、ダッシュクロスメンバの荷重負担が大きくなる。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、車両の前面衝突時にダッシュクロスメンバの荷重負担を軽減することができる車体骨格構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載する本発明の車体骨格構造は、エンジンルームとキャビンとを隔成し、下部に車両後方下側へ傾斜するトーボード部を備えたダッシュパネルと、車体前部の両サイドに略車両前後方向に延在して前記ダッシュパネルの車両前方側に位置する前部骨格部と、前記前部骨格部の後端部から前記トーボード部に沿って車両後方下側へ傾斜するキックアップ部と、前記キックアップ部の後端部から車体フロアの下面に沿って車両後方側へ延在する後部骨格部と、を備えた左右一対の骨格体と、前記トーボード部の前記キャビン側の面に上下フランジ部が結合されて略車両幅方向に延在すると共に、前記上下フランジ部間に前記キャビン側に膨出して略車両幅方向に延在する膨出部を備え、車両の前面衝突時に前記前部骨格部側からの荷重を受けるダッシュクロスメンバと、前記キックアップ部の下部の車両上方側及び前記後部骨格部の車両上方側に配置されて略車両前後方向に延在すると共に、前記トーボード部の下部の前記キャビン側の面及び前記車体フロアの上面に結合され、かつ、前端フランジ部が前記ダッシュクロスメンバにおける前記膨出部の上面に結合されたアッパーリインフォースと、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載する本発明の車体骨格構造によれば、ダッシュクロスメンバは、トーボード部のキャビン側の面に上下フランジ部が結合されて略車両幅方向に延在すると共に上下フランジ部間で膨出部がキャビン側に膨出して略車両幅方向に延在しており、車両の前面衝突時には、このダッシュクロスメンバが前部骨格部側からの荷重をキックアップ部及びトーボード部を介して受ける。
【0007】
ここで、ダッシュクロスメンバの膨出部の上面にはアッパーリインフォースの前端フランジ部が結合されており、アッパーリインフォースは、キックアップ部の下部の車両上方側及び後部骨格部の車両上方側に配置されて略車両前後方向に延在すると共に、トーボード部の下部のキャビン側の面及び車体フロアの上面に結合されているので、車両の前面衝突時にダッシュクロスメンバがトーボード部を介して荷重を受けた場合、アッパーリインフォースがこの荷重の一部を支持する。
【0008】
請求項2に記載する本発明の車体骨格構造は、請求項1記載の構成において、前記ダッシュクロスメンバの略車両上方側でかつ車両平面視で前記前部骨格部の車両後方側に配置されて前記トーボード部の前記キャビン側の面に結合されたガセットを有し、前記ガセットの下端フランジ部が前記ダッシュクロスメンバの前記膨出部の上面に結合されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載する本発明の車体骨格構造によれば、ダッシュクロスメンバの膨出部の上面にはガセットの下端フランジ部が結合されており、ガセットは、ダッシュクロスメンバの略車両上方側でかつ車両平面視で前部骨格部の車両後方側に配置されてトーボード部のキャビン側の面に結合されているので、ダッシュクロスメンバの上フランジ部付近における骨格体の断面高さ寸法が大きくない場合にも、ダッシュクロスメンバの上フランジ部付近におけるガセットの断面高さ分が骨格体の断面高さを補う。このため、車両の前面衝突時には、ダッシュクロスメンバの上フランジ部付近での骨格体の曲げ変形及び該曲げ変形に起因するダッシュクロスメンバへの荷重負荷が効果的に防止又は抑制され、前部骨格部側からの荷重がより一層スムーズにダッシュクロスメンバ及びアッパーリインフォースに伝達される。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車体骨格構造によれば、車両の前面衝突時にダッシュクロスメンバの荷重負担を軽減することができるという優れた効果を有する。
【0011】
請求項2に記載の車体骨格構造によれば、車両の前面衝突時に前部骨格部側からの荷重をより一層スムーズにダッシュクロスメンバ及びアッパーリインフォースに伝達することができ、ダッシュクロスメンバの荷重負担を効果的に軽減することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(実施形態の構成)
本発明の一実施形態に係る車体骨格構造について図1〜図4を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0013】
図1には、本実施形態に係る車体骨格構造の全体構成をキャビン12側(車室内側)から見た場合の斜視図が示されている(車両左側部分は図示省略)。また、図2には、車体骨格構造の要部構成を車両側面視で見た場合の縦断面図が示されている。これらの図に示されるように、エンジンルーム10とキャビン12とは、ダッシュパネル14によって隔成されて(仕切られて)いる。
【0014】
図1に示されるように、ダッシュパネル14の上部は、略垂直板状に形成された垂直板部14Aとなっているおり、ダッシュパネル14の下部は、この垂直板部14Aと一体的に設けられて傾斜板状に形成されたトーボード部16となっている。トーボード部16は、車両後方下側へ(車両後方に向けて車両斜め下方側に)傾斜している。図2に示されるように、トーボード部16の下端部は、車体フロアとしてのフロアパネル18の前端部にスポット溶接等で結合されて一体化されている。フロアパネル18は、キャビン12の底部を構成している。
【0015】
また、図1に示されるように、ダッシュパネル14の略車両幅方向中央部には、略車両前後方向に沿うダッシュトンネル部14Cが設けられている。ダッシュトンネル部14Cの後端部側には、フロアパネル18(図2参照)のフロアトンネル部(図示省略)が連接しており、ダッシュトンネル部14Cの後端部は、スポット溶接等で結合されることでトンネル状の前記フロアトンネル部の前端部に一体化されている。フロアトンネル部(図示省略)は、車両前後方向に沿って延在しており、ボデー下部を補強している。また、ダッシュトンネル部14C及びフロアトンネル部(図示省略)で構成されるトンネル部19の上部には、トンネルアッパーリインフォース20(広義には「補強部材」として把握される要素である。)が溶接等によって結合されている。このトンネルアッパーリインフォース20によって、トンネル部19の剛性が高められており、車両の正面衝突時にトンネル部19及びトンネルアッパーリインフォース20で大きな反力が得られるようになっている(正面衝突時における支持点の確保)。
【0016】
ダッシュパネル14によって隔成されたエンジンルーム10側となる車体前部22の両サイドには、前部骨格部(骨格体30の一部)としての左右一対のフロントサイドメンバ24が略車両前後方向に延在してダッシュパネル14の車両前方側に位置している。因みに、フロントサイドメンバ24は、フロントサイドメンバインナパネル及びフロントサイドメンバアウタパネルによって矩形閉断面構造かつ長尺状に形成されている。
【0017】
なお、左右一対のフロントサイドメンバ24の前端部同士は、車両幅方向を長手方向として配置された図示しないフロントバンパリインフォースによって相互に連結されている。フロントバンパリインフォースはフロントバンパの一部を構成する高強度の長尺状の部材であり、図示しないフロントバンパカバーの後方側にアブソーバを介して配置されている。
【0018】
図2に示されるように、フロントサイドメンバ24の後端部は、ダッシュパネル14のトーボード部16の前面上部(車室外面16Bの上部)にスポット溶接等により結合されている。フロントサイドメンバ24の後端部における閉断面内側には、アンダーリインフォース26の前端部がスポット溶接等で結合されている。アンダーリインフォース26は、前端部(フロントサイドメンバ24の後端部と一体化された部位)からトーボード部16の側面視形状に沿って車両後方下側へ傾斜するキックアップ部26A(骨格体30の一部)と、このキックアップ部26Aの後端部からフロアパネル18の下面18Bに沿って車両後方側へ延在する後部骨格部26B(骨格体30の一部)と、を備えている。
【0019】
また、図1に示されるように、アンダーリインフォース26は、その長手方向から見てキャビン12側が開放された断面略ハット状に形成されている。アンダーリインフォース26の左右フランジ部126は、キックアップ部26Aでは、トーボード部16の反キャビン側の面である車室外面16Bに結合されており、図2に示される後部骨格部26Bでは、フロアパネル18の下面18Bに結合されている。
【0020】
図1に示されるように、アンダーリインフォース26において、左右フランジ部126間には車両下方側に膨出して略車両前後方向に延在する凸部226が形成されている。凸部226は、トーボード部16及びフロアパネル18(図2参照)に対向して配置される底壁部226Aと、底壁部226Aと左右フランジ部126とを繋ぐ左右一対の側壁部226Bとを含んで構成されている。これにより、アンダーリインフォース26と、トーボード部16(ダッシュパネル14)及びフロアパネル18(図2参照)とで、略車両前後方向に延在する閉断面部28を備えた閉断面構造が形成されている。なお、本実施形態では、フロントサイドメンバ24及びアンダーリインフォース26が左右一対の骨格体30を構成している。
【0021】
ここで、本実施形態では、図2に示されるように、ダッシュパネル14のトーボード部16は、その傾斜方向の略中央部がアンダーリインフォース26の底壁部226A側へやや落ち込むように下げられて設定されており、アンダーリインフォース26とダッシュパネル14とで形成する閉断面部28を備えた閉断面構造の延在方向の略中央部における断面積が小さく(側断面視での閉断面高さが低く)なっている。つまり、トーボード部16の一般面は、従来構造よりも車両上下方向で低い位置に設定され、トーボード部16の車両上方側のスペースをその分だけ広くしている。
【0022】
図1に示されるように、キャビン12の車両幅方向外側の下部(ドア開口部の下縁側)には、車両前後方向に沿って延在するロッカ32(サイドシルともいい、広義には「車両前後方向骨格部材」として把握される要素である。)が配設されている。ロッカ32は、車両幅方向外側(車室外側)に配置されたロッカアウタパネル32Aと、車両幅方向内側(車室内側)に配置されたロッカインナパネル32Bと、を含んで構成されている。ロッカアウタパネル32Aは、車両幅方向内側が開放された断面略ハット状に形成され、ロッカインナパネル32Bは、車両幅方向外側が開放された断面略ハット状に形成されている。ロッカアウタパネル32Aとロッカインナパネル32Bとは、上下一対のフランジ部が接合されることによって閉断面部34を備えた閉断面構造に形成されている。ロッカインナパネル32Bの車両幅方向内側の側面には、トーボード部16の車両幅方向外側の端末部及びフロアパネル18(図2参照)の車両幅方向外側の端末部が車両上方側に折り曲げられた状態でスポット溶接されている。
【0023】
また、トーボード部16のキャビン12側の面としての車室内面16Aには、ダッシュクロスメンバ40(広義には「車両幅方向骨格部材」として把握される要素である。)が配設されている。ダッシュクロスメンバ40は、トーボード部16側が開放された断面略ハット状に形成されており、上下フランジ部42A、42B(上フランジ部を符号42A、下フランジ部を符号42Bで示す。)がトーボード部16の車室内面16Aに溶接等によって結合されて略車両幅方向に延在すると共に、上下フランジ部42A、42B間にキャビン12側に膨出して略車両幅方向に延在する膨出部44を備えている。膨出部44は、トーボード部16に対向して配置される平板状の頂壁部144と、頂壁部144と上下フランジ部42A、42Bとを繋ぐ一対の側壁部244A、244Bとを含んで構成されている。これにより、ダッシュクロスメンバ40とダッシュパネル14のトーボード部16とで、略車両幅方向に延在する閉断面部48を備えた閉断面構造が形成されている(図2参照)。
【0024】
また、ダッシュクロスメンバ40の車両幅方向両側の端部側のフランジ部は、ホイールハウス36の湾曲壁面、ロッカインナパネル32Bの車両幅方向内側の側面及び上面に溶接等によって結合されている。さらに、ダッシュクロスメンバ40の車両幅方向中央部には、トンネルアッパーリインフォース20が溶接等によって結合されている。このように配設されたダッシュクロスメンバ40は、車両の前面衝突時にフロントサイドメンバ24側からの荷重Fを受けるようになっている。
【0025】
また、図2に示されるように、ダッシュクロスメンバ40が配設されると、その分だけキャビン12のスペースが小さくなるが、本実施形態では、前述のように、トーボード部16における傾斜方向の略中央部がアンダーリインフォース26の底壁部226A側へ下げられているので、傾斜方向の略中央部が下げられていない場合(従来構造)に比べてダッシュクロスメンバ40が車両下方側に配置(低い位置に設定)されることになり、ダッシュクロスメンバ40のキャビン12側への突出量は相殺されている。また、アンダーリインフォース26とトーボード部16(ダッシュパネル14)とで形成する閉断面部28の断面高さが低く設定された部分にダッシュクロスメンバ40が配設されているので、ダッシュクロスメンバ40によって、閉断面部28の断面高さが低く設定された部分(延在方向の略中央部)の強度及び剛性が補強されている。
【0026】
キックアップ部26Aの下部の車両上方側及び後部骨格部26Bの車両上方側には、アッパーリインフォース50が配置されて略車両前後方向に延在している。図1に示されるように、アッパーリインフォース50は、車両下方側が開放された断面略ハット状に形成されており、左右フランジ部52がトーボード部16の下部の車室内面16A及び図2に示されるフロアパネル18の上面18Aに結合されて略車両前後方向に延在すると共に、図1に示される左右フランジ部52間にキャビン12側に膨出して略車両前後方向に延在する凸部54を備えている。凸部54は、トーボード部16の下部及びフロアパネル18(図2参照)に対向して配置される頂壁部154と、頂壁部154と左右フランジ部52とを繋ぐ一対の側壁部254とを含んで構成されている。これにより、アッパーリインフォース50と、トーボード部16の下部及びフロアパネル18(図2参照)とで、略車両前後方向に延在する閉断面部58を備えた閉断面構造が形成されている(図2、図3(C)(図2の3C−3C線断面に相当)、及び図3(D)(図2の3D−3D線断面に相当)参照)。
【0027】
図1に示されるように、アッパーリインフォース50には、左右一対の側壁部254の前端から略車両幅方向へ向けて互いに離反するように左右フランジ部55が延設されている。左右フランジ部55は、ダッシュクロスメンバ40の下側の側壁部244Bにアーク溶接等によって結合されている。また、アッパーリインフォース50には、頂壁部154の前端から車両前方上側へ向けて前端フランジ部56が延設されている。この前端フランジ部56は、ダッシュクロスメンバ40における膨出部44の頂壁部144の上面44Aにアーク溶接等によって結合されている。
【0028】
すなわち、図2に示されるように、トーボード部16が車両上下方向で低い位置に設定されたことにより広げられたキャビン12側のスペースに、ダッシュクロスメンバ40及びアッパーリインフォース50の前部が配設されて両者が直接結合されている。このため、キャビン12側(車室内)のスペースは、従来通りに確保され、乗員80の足乗せ位置(ヒールポイントP)への影響もない。なお、図2において、二点鎖線で示される符号82はクッション材を介して配置されるカーペットであり、二点鎖線で示される符号84は車両用ペダルである。
【0029】
ここで、ダッシュクロスメンバ40とアンダーリインフォース26とが交差してトーボード部16を介して結合された部分は、車両の正面衝突時にフロントサイドメンバ24側からの荷重入力部位となるが、アッパーリインフォース50が配設されることによって入力荷重に対する支持点が追加されることになる。
【0030】
また、図1に示されるように、ダッシュクロスメンバ40の略車両上方側でかつ車両平面視でフロントサイドメンバ24の車両後方側には、ガセット60が配置されている。ガセット60は、頂壁部62Aと左右一対の側壁部62Bとによって形成された本体部62を備えている。頂壁部62Aは、ダッシュクロスメンバ40の頂壁部144とトーボード部16の上部側とを斜めに掛け渡す位置に配設されている。左右一対の側壁部62Bは、頂壁部62Aの左右両端からトーボード部16側へ垂下されており、車両側面視で三角形状となっている。
【0031】
頂壁部62Aの上端側(トーボード部16側)の端部からは略車両上方側へ向けて上端フランジ部64が延設されている。ガセット60の上端フランジ部64は、トーボード部16の車室内面16Aにスポット溶接等により結合されている。また、左右一対の側壁部62Bのダッシュクロスメンバ40側の端部からは略車両幅方向へ向けて互いに離反するように左右フランジ部66が延設されている。ガセット60の左右フランジ部66は、ダッシュクロスメンバ40の上側の側壁部244Aにスポット溶接等により結合されている。さらに、頂壁部62Aの下端側(ダッシュクロスメンバ40側)の端部からは略車両後方下側へ向けて下端フランジ部68が延設されている。ガセット60の下端フランジ部68は、ダッシュクロスメンバ40の膨出部44における頂壁部144の上面44Aに結合されている。
【0032】
これらによって、図2に示されるように、ガセット60とトーボード部16とダッシュクロスメンバ40とで閉断面部70を備えた閉断面構造が形成されている(図2の3A−3A線断面に相当する図3(A)参照)。なお、本実施形態では特に設けていないが、上記構成に加えて、例えば、図1に示される側壁部62Bのトーボード部16側の端部から略車両幅方向へ向けて互いに離反するように左右フランジ部を延設させると共に該左右フランジ部をトーボード部16やダッシュクロスメンバ40の上フランジ部42Aにスポット溶接等により結合させてもよい。
【0033】
以上の構成により、図2に示されるように、トーボード部16の上端側に接合されたガセット60の上端フランジ部64、頂壁部62A及び下端フランジ部68と、ダッシュクロスメンバ40の頂壁部144と、アッパーリインフォース50の頂壁部154とが、連続的に繋がると共にトーボード部16やフロアパネル18を介してアンダーリインフォース26の底壁部226Aの車両上方側に位置している。
【0034】
図3には、アンダーリインフォース26の長手方向に直角な方向に沿って切断した断面図が示されており、アンダーリインフォース26、トーボード部16、ダッシュクロスメンバ40、アッパーリインフォース50及びガセット60の位置関係及び結合状態等が示されている。図3(A)は図2の3A−3A線断面、図3(B)は図2の3B−3B線断面、図3(C)は図2の3C−3C線断面、図3(D)は図2の3D−3D線断面にそれぞれ相当する。図2及び図3に示されるように、アンダーリインフォース26と、トーボード部16(ダッシュパネル14)及びフロアパネル18(図2参照)とで、形成された閉断面部28の車両上方側では、ダッシュクロスメンバ40とトーボード部16と形成する閉断面部48の前後に閉断面部70、閉断面部58が形成されている。これらによって、アンダーリインフォース26に沿った構造体は、全体として断面急変部(断面が急変する部分)がない構造体になっている。
【0035】
(実施形態の作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果を説明する。
【0036】
図1に示されるように、ダッシュクロスメンバ40は、トーボード部16の車室内面16Aに上下フランジ部42A、42Bが結合されて略車両幅方向に延在すると共に上下フランジ部42A、42B間で膨出部44がキャビン12側に膨出して略車両幅方向に延在しており、車両の前面衝突時には、このダッシュクロスメンバ40がフロントサイドメンバ24側からの荷重Fをキックアップ部26A及びトーボード部16を介して受ける。
【0037】
ここで、ダッシュクロスメンバ40の膨出部44の上面44Aにはアッパーリインフォース50の前端フランジ部56が結合されており、アッパーリインフォース50は、キックアップ部26Aの下部の車両上方側及び後部骨格部26B(図2参照)の車両上方側に配置されて略車両前後方向に延在すると共に、トーボード部16の下部の車室内面16A及び図2に示されるフロアパネル18の上面18Aに結合されているので、車両の前面衝突時に図1に示されるダッシュクロスメンバ40がトーボード部16を介して荷重Fを受けた場合、アッパーリインフォース50がこの荷重Fの一部を支持する。すなわち、フロントサイドメンバ24からの入力位置における支持点となる。
【0038】
また、ダッシュクロスメンバ40の膨出部44の上面44Aにはガセット60の下端フランジ部68が結合されており、ガセット60は、ダッシュクロスメンバ40の略車両上方側でかつ車両平面視でフロントサイドメンバ24の車両後方側に配置されてトーボード部16の車室内面16Aに結合されているので、図2に示されるように、ダッシュクロスメンバ40の上フランジ部42A付近におけるアンダーリインフォース26の断面高さ寸法が大きくなくても、ダッシュクロスメンバ40の上フランジ部42A付近におけるガセット60の断面高さ分がアンダーリインフォース26の断面高さを補う。
【0039】
このため、車両の前面衝突時には、ダッシュクロスメンバ40の上フランジ部42A付近でのアンダーリインフォース26の曲げ変形及び該曲げ変形に起因するダッシュクロスメンバ40への荷重負荷が効果的に防止又は抑制され、フロントサイドメンバ24側からの荷重Fがより一層スムーズにダッシュクロスメンバ40及びアッパーリインフォース50に伝達される。
【0040】
以上の作用について補足説明すると、例えば、図4(A)に模式的に示す対比構造(図中では、本実施形態に係る車体骨格構造と実質的に同一の部材については同一符号を付す。)、すなわち、ダッシュクロスメンバ40への入力位置後方側に支持部がないような対比構造では、車両の前面衝突によってフロントサイドメンバ24からダッシュクロスメンバ40に入力があった場合(矢印F方向参照)、ダッシュクロスメンバ40にはロッカ32やトンネルアッパーリインフォース20を支点にした比較的大きな曲げモーメントMが発生してしまい、ダッシュクロスメンバ40の荷重負担が大きくなる。なお、図中の二点鎖線は、横曲げモーメント分布を示している。これに対して、図4(B)に模式的に示すように、本実施形態に係る車体骨格構造では、ダッシュクロスメンバ40への入力位置後方側にガセット60及びアッパーリインフォース50が配設されて支持部として機能するので、ロッカ32やトンネルアッパーリインフォース20を支点にした曲げモーメントが低減される。これによって、図1に示されるダッシュクロスメンバ40とアンダーリインフォース26とが交差してトーボード部16を介して結合された部分の座屈が効果的に抑えられる。
【0041】
また、ダッシュクロスメンバ40とアンダーリインフォース26とが交差してトーボード部16を介して結合された部分を座屈しにくくするために、例えば、アンダーリインフォース(26)内に補強用のリインフォースを配設するような対比構造やダッシュクロスメンバ(40)内にバルクヘッドを配設するような対比構造では、車両の正面衝突時に作用する曲げモーメント自体を低減させるための構造ではないので、比較的大きな補強が必要となって軽量化が難しい。これに対して、本実施形態に係る車体骨格構造では、正面衝突時に作用する曲げモーメント自体を直接低減させるので、前記対比構造との対比において軽量化も可能になる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係る車体骨格構造によれば、車両の前面衝突時にダッシュクロスメンバ40の荷重負担を軽減することができる。
【0043】
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態では、骨格体30は、前部骨格部がフロントサイドメンバ24によって構成され、キックアップ部及び後部骨格部がアンダーリインフォース26によって構成されているが、骨格体は、例えば、前部骨格部がフロントサイドメンバによって構成され、キックアップ部がフロントサイドメンバ及びアンダーリインフォースによって構成されると共に、後部骨格部がアンダーリインフォースによって構成されるような他の骨格体としてもよい。
【0044】
また、上記実施形態に係る車体骨格構造では、ダッシュクロスメンバ40の略車両上方側でかつ車両平面視でフロントサイドメンバ24の車両後方側にガセット60が配置されており、このような構造が好ましいが、車体骨格構造は、例えば、トーボード部やダッシュクロスメンバ等の形状によっては、前記のようなガセット(60)を配設しない構造の車体骨格構造としてもよい。
【0045】
さらに、アッパーリインフォースやガセットにおける(トーボード部やダッシュクロスメンバに結合するための)結合用のフランジ部の形状は、図1等に示される上記実施形態の例に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施形態に係る車体骨格構造の全体構成をキャビン側から見た状態で示す斜視図である(車両左側部分は図示を省略する。)。
【図2】本実施形態に係る車体骨格構造の要部構成を車両側面視で示す縦断面図である(図1の2−2線に沿った拡大断面図に相当する)。
【図3】本実施形態に係る車体骨格構造をアンダーリインフォースの長手方向に直角な方向に沿って切断した状態で示す断面図である。図3(A)は図2の3A−3A線断面、図3(B)は図2の3B−3B線断面、図3(C)は図2の3C−3C線断面、図3(D)は図2の3D−3D線断面にそれぞれ相当する。
【図4】車体骨格構造を模式的に示す説明図である。図4(A)は対比構造を示す。図4(B)は本実施形態に係る車体骨格構造を示す。
【符号の説明】
【0047】
10 エンジンルーム
12 キャビン
14 ダッシュパネル
16 トーボード部
16A 車室内面(キャビン側の面)
18 フロアパネル(車体フロア)
18A フロアパネルの上面(車体フロアの上面)
18B フロアパネルの下面(車体フロアの下面)
22 車体前部
24 フロントサイドメンバ(前部骨格部)
26A キックアップ部
26B 後部骨格部
30 骨格体
40 ダッシュクロスメンバ
42A 上フランジ部
42B 下フランジ部
44 膨出部
44A 膨出部の上面
50 アッパーリインフォース
56 前端フランジ部
60 ガセット
68 下端フランジ部
F フロントサイドメンバ側からの荷重(前部骨格部側からの荷重)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームとキャビンとを隔成し、下部に車両後方下側へ傾斜するトーボード部を備えたダッシュパネルと、
車体前部の両サイドに略車両前後方向に延在して前記ダッシュパネルの車両前方側に位置する前部骨格部と、前記前部骨格部の後端部から前記トーボード部に沿って車両後方下側へ傾斜するキックアップ部と、前記キックアップ部の後端部から車体フロアの下面に沿って車両後方側へ延在する後部骨格部と、を備えた左右一対の骨格体と、
前記トーボード部の前記キャビン側の面に上下フランジ部が結合されて略車両幅方向に延在すると共に、前記上下フランジ部間に前記キャビン側に膨出して略車両幅方向に延在する膨出部を備え、車両の前面衝突時に前記前部骨格部側からの荷重を受けるダッシュクロスメンバと、
前記キックアップ部の下部の車両上方側及び前記後部骨格部の車両上方側に配置されて略車両前後方向に延在すると共に、前記トーボード部の下部の前記キャビン側の面及び前記車体フロアの上面に結合され、かつ、前端フランジ部が前記ダッシュクロスメンバにおける前記膨出部の上面に結合されたアッパーリインフォースと、
を有することを特徴とする車体骨格構造。
【請求項2】
前記ダッシュクロスメンバの略車両上方側でかつ車両平面視で前記前部骨格部の車両後方側に配置されて前記トーボード部の前記キャビン側の面に結合されたガセットを有し、前記ガセットの下端フランジ部が前記ダッシュクロスメンバの前記膨出部の上面に結合されていることを特徴とする請求項1記載の車体骨格構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−248593(P2009−248593A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95236(P2008−95236)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】