説明

車室内用空気吹出装置

【課題】 空気吹出口部の前面(意匠面)が垂直状態から上下方向または左右方向に大きく傾斜している空気吹出装置において、空気誘導路を構成する筒体の前方へ長く突出している周壁面に沿って位置する最端側の後側風向調整板により指向される吹出空気流の当該壁部への付着現象を抑制して、吹出空気流の局部的は指向性(ポイント性)を向上させる。
【解決手段】各後側風向調整板22における筒体11における長く延出する側の周壁面11cに沿う最端側の後側風向調整板22aを他の後側風向調整板22より大きく回動動作させる回動機能を備え、空気吹出口部12aから吹出する空気流を周壁面11cの延長方向に対して拡開して傾斜する方向に指向させる際に、最端側の後側風向調整板22aを他の後側風向調整板22より大きく回動動作させて、吹出空気流の周壁面11cに対する付着現象を大きく抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センタレジスタ、サイドレジスタ、ロアレジスタ等、車室内用空気吹出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車室内用空気吹出装置の一形式として、先端側に空気吹出口部を有して空気誘導路を形成する方形の筒体と、前記筒体内における先端側部位に回動可能に支持されて互いに並列して位置する複数の前側風向調整板と、前記筒体内における前記前側風向調整板の後方側の部位に回動可能に支持されて互いに並列しかつ前記前側風向調整板に対して直交状態で位置する複数の後側風向調整板と、前記各前側風向調整板および前記各後側風向調整板を選択的に連動して回動させる駆動機構を備え、前記各前側風向調整板または前記各後側風向調整板を、前記駆動機構を介して回動動作させることにより、前記空気吹出口部から吹出する空気流を所望の方向に指向させる形式の車室内用空気吹出装置がある(特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開20003−276428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、当該形式の車室内用空気吹出装置において、設置場所の関係から、空気吹出口部の前面(意匠面)を垂直状態から上下方向に大きく傾斜する傾斜面に形成することがあり、また、空気吹出口部の前面(意匠面)を垂直状態から左右方向に大きく傾斜する傾斜面に形成することがある。これらの場合、空気吹出口部の意匠面が垂直状態から大きく傾斜するほど、各後側風向調整板の最端側の後側風向調整板の支持位置と、筒体における長く突出する側の壁部の先端との距離が長くなる(図11のa,b、および、図12を参照)。
【0004】
図11(a),(b)は、前側の風向調整板として縦フィンを採用し、後側風向調整板として横フィンを採用した空気吹出装置を概略的に例示していて、同図(a)は意匠面の傾斜が比較的起立している状態を示し、同図(b)は意匠面が垂直状態から上下方向に大きく傾斜している状態を示している。また、図12は、前側の風向調整板として横フィンを採用し、後側風向調整板として縦フィンを採用した空気吹出装置を概略的に例示していて、意匠面が垂直状態から左右方向に大きく傾斜している状態を示している。
【0005】
当該形式の空気吹出装置において、図11(b)に示すように、空気吹出口部の意匠面D1が上下方向に大きく傾斜している状態では、同図(a)に示す意匠面D2が比較的起立している状態に比較して、各後側風向調整板1の最端側の後側風向調整板1a(最下段の後側風向調整板)の先端と、筒体2における長く突出する側の壁部2a(底壁部)の先端との距離L1が、同図(a)に示す空気吹出装置における距離L2より長くなる。
【0006】
このため、図11(b)に示す車室内用空気吹出装置においては、各後側風向調整板1が筒体2の上下両壁部に略平行状態にある場合には、吹出空気流は底壁部2aに何等の影響を受けることなく指向されるが、例えば、吹出空気流を上方へ指向すべく、各後側風向調整板1の先端側を上方へ回動動作させると、最下段の後側風向調整板1aと隣接する上段の後風向調整板1b間を流動する空気流Aは、底壁部2aの長く延出する先端側面2a1に付着する現象が発生する。この結果、各後側風向調整板1にて指向される空気流は、拡開されてそのスポット性が損なわれ、吹出空気流を乗員が望む部位へ局部的に指向させることができないことになる。
【0007】
一方、図11(b)に示す空気吹出装置とは90度回転した関係にある図12に示す空気吹出装置にあっては、前側風向調整板として横フィンを採用し、後側風向調整板として縦フィンが採用されていて、各後側風向調整板1の最端側の後側風向調整板1aと、筒体2における長く延出する側壁部2a(側壁部)の先端との距離L1が長くなる。
【0008】
このため、図12に示す車室内用空気吹出装置においては、各後側風向調整板1が筒体2の上下両壁部に略平行状態にある場合には、吹出空気流は側壁部2aに何等の影響を受けることなく指向されるが、例えば、吹出空気流を右方へ指向すべく、各後側風向調整板1の先端側を右方へ回動動作させると、最端側の後側風向調整板1aと隣接する側部の後風向調整板1b間を流動する空気流は、側壁部2aの長く延出する先端側面2a1に付着する現象が発生する。この結果、各後側風向調整板1にて指向される空気流は、拡開されてそのスポット性が損なわれ、吹出空気流を乗員が望む部位へ局部的に指向させることができないことになる。
【0009】
従って、本発明の目的は、当該形式の車室内用空気吹出装置であって、図11の(b)に示す空気吹出装置や、図12に示す空気吹出装置において、上記した問題を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、車室内用空気吹出装置に関する。本発明が適用対象とする車室内用空気吹出装置は、先端側に空気吹出口部を有して空気誘導路を形成する方形の筒体と、前記筒体内における先端側部位に回動可能に支持されて互いに並列して位置する複数の前側風向調整板と、前記筒体内における前記前側風向調整板の後方側の部位に回動可能に支持されて互いに並列しかつ前記前側風向調整板に対して直交状態で位置する複数の後側風向調整板と、前記各前側風向調整板および前記各後側風向調整板を選択的に連動して回動させる駆動機構を備え、前記各前側風向調整板または前記各後側風向調整板を、前記駆動機構を介して連動して回動動作させることにより、前記空気吹出口部から吹出する空気流を所望の方向に指向させる形式の車室内用空気吹出装置である。
【0011】
しかして、本発明に係る車室内用空気吹出装置を構成する前記駆動機構は、前記筒体における長く延出する側の周壁面に沿う最端側の後側風向調整板を他の後側風向調整板より大きく回動動作させる回動機能を備え、前記空気吹出口部から吹出する空気流を前記筒体の前記周壁面の延長方向に対して拡開して傾斜する方向に指向させる際に、前記駆動機構により、前記最端側の後側風向調整板を他の後側風向調整板より大きく回動動作させることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る車室内用空気吹出装置においては、前記駆動機構を、前記前側風向調整板のいずれか1枚に同前側風向調整板の長手方向に摺動可能に組付けられて前記各後側風向調整板の最端側の後側風向調整板である第1の後側風向調整板とは異なる第2の後側風向調整板に係合して同第2の後側風向調整板を回動動作させるスライドノブと、前記後側風向調整板の長手方向における前記筒体の周壁に沿って位置し前記第2の後側風向調整板の一端部に設けた回転軸と一体に連結されたリンクプレートを有する構成とすることができる。
【0013】
しかして、当該駆動機構を構成する前記リンクプレートは、前記第2の後側風向調整板の一端部に前記回転軸より後方の部位に設けた支持軸を挿入された状態で回転可能に支持する支持孔と、前記第1の後側風向調整板の一端側に設けた回転軸を挿入された状態で摺動可能に支持するカム溝を有し、前記カム溝は、前記第2の後側風向調整板の前記回転軸の軸支部および前記支持軸の軸支部より所定距離離れた位置に設けられていて、互いに並列する前記両軸支部から離間する方向に延びる第1のカム溝部と、前記第1のカム溝部の先端から屈折して前記両軸支部に略沿う状態で延びる第2のカム溝部を備えていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係る車室内用空気吹出装置においては、前記筒体の底壁部を長く延出して、前記空気吹出口部の開口面が垂直状態から上下方向に大きく傾斜した状態に形成することができ、この場合には、前記各後側風向調整板として互いに上下に並列して横方向に延びる横フィンを採用して、前記各後側風向調整板の最下段の後側風向調整板を、前記最端側の後側調整板である第1の後側風向調整板に選定することができる。
【0015】
また、本発明に係る車室内用空気吹出装置においては、前記筒体の一方の側壁部を長く延出して、前記空気吹出口部の開口面が垂直状態から左右方向に大きく傾斜した状態に形成することができ、この場合には、前記各後側風向調整板として互いに左右に並列して縦方向に延びる縦フィンを採用して、前記各後側風向調整板の前記一方の側壁部に沿う最側端の後側風向調整板を、前記最端側の後側風向調整板である第1の後側風向調整板に選定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る車室内用空気吹出装置においては、前記空気吹出口部から吹出する空気流を前記筒体の周壁面の延長方向に対して拡開して傾斜する方向に指向させる際には、先ず、前記筒体における長く延出する側の周壁面に沿う最端側の後側風向調整板(第1の後側風向調整板)が残りの他の後側風向調整板より大きく回動動作する。
【0017】
このように、後側風向調整板の回動量に差を持つ回動動作により、第1の後側風向調整板による吹出空気流の指向方向を、他の全ての後側風向調整板による吹出空気流の指向方向に比較して、回動量の差だけより角度を持たせることができ、第1の後側風向調整板により指向される吹出空気流の、前記周壁面の延長面に対する付着現象を大きく抑制することができる。このため、当該車室内用空気吹出装置によれば、吹出空気流の指向のスポット性に対する影響を大きく抑制することができて、吹出空気流を乗員が望む部位へ局部的に指向させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、車室内用空気吹出装置に関する。図1〜図6には、本発明に係る車室内用空気吹出装置の一実施形態であるレジスタRを示している。図1は当該レジスタRの右前方からみた斜視図、図2は当該レジスタRの正面図、図3は当該レジスタRの右側面図、図4は当該レジスタRの左側面図、図5は当該レジスタRを分解した状態の各構成部材の一部を示す斜視図、図6は当該レジスタRを分解した状態の各構成部材の残りを示す斜視図である。
【0019】
当該レジスタRは、車室内の前面のインストルメントパネルにおける乗員の正面下方の部位に配設されるレジスタであって、インストルメントパネルの背面側に配設されている空調ダクトの先端部に接続されて、空調ダクトからの空気流を誘導して車室内に吹出すべく機能する。なお、当該レジスタRを構成する以下に示す各構成部材は、合成樹脂を成形材料とする成形部品である。
【0020】
当該レジスタRは、空気誘導路を形成する方形筒状のリテーナ11、リテーナ11の先端開口部に嵌着されて空気吹出口部を形成するベゼル12、リテーナ11内の先端部に配設されている前側風向調整板である複数の縦フィン21、リテーナ11内における各縦フィン21の配設部位より後方の位置に配設されている後側風向調整板である複数の横フィン22を主要構成部材とするもので、他に、リテーナ11内における各横フィン22の後方の位置に配設されているダンパプレート23、縦フィン21および横フィン22を選択的に回動動作させるフィン駆動機構30a、ダンパプレート23を回動動作させるダンパ駆動機構30bを備えている。
【0021】
リテーナ11は、筒状本体11aの先端側開口部の周縁部に、ベゼル12が嵌着される嵌合用の枠部11bを備えている。枠部11bは、その開口面が上下方向に大きく傾斜する傾斜面に形成されていて、筒状本体11aの底壁部11cは、当該開口部からさらに前方へ延出している。リテーナ11を構成する筒状本体11a内の空気誘導路の上流側には、ダンパプレート23が水平状態で上下方向に回動可能に支持され、ダンパプレート23より下流側に後側風向調整板である7枚の横フィン22が上下方向に回動可能に支持され、また、横フィン22より下流側である筒状本体11aの開口部の近傍に4枚の縦フィン21が左右方向に回動可能に支持されている。
【0022】
後側風向調整板である各横フィン22は、左右の端部に形成されている支持軸を左右の支持板24a,24bに上下方向に回動可能に支持された状態で、各支持板24a,24bをリテーナ11内の左右の各側壁部に嵌着することにより、リテーナ11内のダンパプレート23より下流側に配設されている。各横フィン22は、両支持板24a,24bに回動可能に支持された状態では、互いに上下に並列した状態にあって、左側端部にて、連結ロッド24cを介して互いに連動可能に連結されている。また、各横フィン22のうち、図示最下段の後側風向調整板である第1の後側風向調整板(第1の横フィン22a)から1段上の後側風向調整板である第2の風向調整板(第2の横フィン22b)は、後述するフィン駆動機構30aと作動的に連結している。
【0023】
前側風向調整板である各縦フィン21は、上下の端部に形成されている支持軸を上下の支持板25a,25bに左右方向に回動可能に支持された状態で、各支持板25a,25bをリテーナ11内における先端開口部の上下の各壁部に嵌着することにより、リテーナ11内の各横フィン22より下流側に配設されている。各縦フィン21は、両支持板25a,25bに回動可能に支持された状態では、互いに左右に並列した起立状態にあって、上側端部にて、連結ロッド25cを介して互いに連動可能に連結されている。また、各縦フィン21のうち、右から2列目の縦フィン21aには、後述するフィン駆動機構30aを構成するスライドノブ35が上下にスライド可能に組付けられている。
【0024】
ダンパ駆動機構30bは、ダンパプレート23の支持軸に一体回転可能に連結されたシャフト31、円盤状ノブ部を有するダイヤルノブ32、および、シャフト31のアーム部に一端を回動可能に連結され、かつ、ダイヤルノブ32のアーム部に他端を回動可能に連結された長尺のリンク33を有するもので、ダイヤルノブ32をリテーナ11の枠部11bの外側にダイヤルシム32aを介して組付けることによって、図4に示すように、リテーナ11の左外側に操作可能に組付けられている。
【0025】
このように各構成部材を組付けたリテーナ11の開口部には、ベゼル12が嵌着されて、図1〜図4に示すレジスタRが形成される。当該レジスタRにおいては、前側風向調整板である各縦フィン21がベゼル12に設けた大形の開口部12aの下流側に臨んでいて、当該開口部12aが当該レジスタRの空気吹出口部を構成している。また、ダンパ駆動機構30bを構成するダイヤルノブ32のノブ部の外周縁部の一部が、ベゼル12の左側壁部に設けた開口部から小形の開口部12bから前方に突出していて、ダンパ駆動機構30bはリテーナ11の外側に操作可能に組付けられている。
【0026】
ダンパ駆動機構30bは、ダンパプレート23を水平状態から上下方向へ回動動作させて、リテーナ11内の空気誘導路の開度を、全開状態と全閉状態の間で任意に調整するもので、ベゼル12から前方に一部露呈するダイヤルノブ32を回転操作することによって、ダンパプレート23を回動動作させることができる。
【0027】
当該レジスタRにおいては、空気吹出口部の開口面が、図1〜図4に示すように、また、図2の矢印a−a線に沿う縦断端面を示す図8(a)〜図10(a)に示すように、起立状態から前後方向に大きく傾斜していて、空気吹出口部は大きく傾いた状態で斜め上方に開口している。
【0028】
しかして、フィン駆動機構30aは、図5〜図10に示すように、連結ロッド34、スライドノブ35、および、リンクプレート36を備えている。連結ロッド34は、第2の横フィン22bに設けられて前方に突出する左右一つの支持部に両端部を支持されて、第2の横フィン22bの前方に位置している。
【0029】
スライドノブ35は、ノブモール35aを前面に固着した前側ノブ部35bと、後側ノブ部35cとからなり、前側ノブ部35bは縦フィン21aの略中央部にスライドシム35eを介して嵌合していて、前側ノブ部35bの後側には、後側ノブ部35cが嵌合されている。これにより、スライドノブ35は、前側ノブ部35bと後側ノブ部35cで縦フィン21aを外周側から挟持した状態にあって、縦フィン21aに対して、その長手方向である上下方向に摺動可能に組付けられている。後側ノブ部35cは、後方へ延びる上下一対の脚部35dを備えている。スライドノブ35は、その両脚部35dを第2の横フィン22bの前側に設けた連結ロッド34に嵌合させた状態で、第2の横フィン22bに連結されている。
【0030】
リンクプレート36は、各横フィン22を回動可能に支持する右側の支持板24bとリテーナ11の枠体11bの右側の側壁部間に位置し、第2の横フィン22bの右側の回転軸22b1に一体回転可能に連結して、支持板24bとリテーナ11の枠体11bの側壁部間にて、第2の横フィン22bと一体に回動可能に支持されている。リンクプレート36は、そのプレート本体に、第2の横フィン22bの回転軸22b1を一体回転可能に支持する支持孔36a、支持孔36aより所定距離離れて位置する支持孔36b、および、これら両支持孔36a,36bより前方かつ下方に所定距離はなれて位置する略L字状のカム溝36cを備えている。
【0031】
一方、第2の横フィン22bの右端部には、回転軸22b1より後方の部位に支持軸22b2が設けられて、支持軸22b2は、リンクプレート36の支持孔36bに挿通されて、支持孔36bに回転可能に支持されている。また、第1の横フィン22aの右側の支持軸22a1はリンクプレート36のカム溝36cに挿通されていて、カム溝36c内を同カム溝36cに沿って摺動可能になっている。
【0032】
リンクプレート36のカム溝36cは、第2の横フィン22bの回転軸22b1を一体回転可能に支持してリンクプレート36の回動支点となる支持孔36a、および、第2の横フィン22bの支持軸22b2を回転可能に支持する支持孔36bから遠のく垂直下方へ直線状に延びる第1の溝部36c1と、第1の溝部36c1の先端から略直角状に両支持孔36a,36bの並列する方向から漸次遠のく方向に直線状に延びる第2の溝部36c2を備えている。
【0033】
当該フィン駆動機構30aにおいては、前側風向調整板である各縦フィン21中の縦フィン21aに組付けたスライドノブ35を左右方向に押動操作すると、スライドノブ35が組付けられている縦フィン21aはその支持軸を中心に左右方向に回動し、同時に、連結ロッド25cによって互いに連結されている残りの縦フィン21はその支持軸を中心に同方向へ回動する。これにより、当該レジスタRの空気吹出口部12aから吹出する空気流は、各縦フィン21が連動して回動する方向(左方向または右方向)に指向される。
【0034】
また、当該フィン駆動機構30aにおいては、縦フィン21aに組付けたスライドノブ35を上下方向にスライド操作すると、スライドノブ35が連結している第2の横フィン22bはその回転軸22b1を中心に上下方向へ回動し、同時に、連結ロッド24cによって互いに連結されている残りの横フィン22はその支持軸を中心に同方向へ回動する。これにより、当該レジスタRの空気吹出口部12aから吹出する空気流は、各横フィン22が連動して回動する方向(上方向または下方向)に指向される。
【0035】
しかして、当該フィン駆動機構30aにおいては、各後側風向調整板である横フィン22中の最下段の第1の横フィン22aと、第2の横フィン22bと一体に回動するリンクプレート36とは、リンクプレート36に設けたカム溝36cを介して連結する構成を採っている。図8(a)〜図10(a)には、当該フィン駆動機構30aを操作した場合の、各作動状態における各横フィン22の回動動作状態を示し、また、図8(b)〜図10(b)には、各作動状態に対応するリンクプレート36の回動状態(第1,第2の横フィン22a,22bとの連結状態)を示している。
【0036】
当該フィン駆動機構30aにおいては、スライドノブ35の上下方向への摺動操作により、各横フィン22がリテーナ11の上下の壁部に対して平行状態にある場合(図8を参照:第1の作動状態)を基準とし、この状態のスライドノブ35を上方へ所定量スライドした状態(図9を参照)とし、さらには、スライドノブ35を上方へ最大限スライドした状態(図10を参照)とすることができる。
【0037】
当該フィン駆動機構30aのこれらの作動状態においては、基準となる図8に示す第1の作動状態では、第1の横フィン22aの支持軸22a1は、リンクプレート36のカム溝36cにおける第1の溝部36c1の基端部に位置していて、各横フィン22はリテーナ11の上下の壁部に対して略平行状態にある。このため、リテーナ11の空気誘導路を流動する空気流は、空気吹出口部12aから水平方向に吹出する。
【0038】
この状態にあるレジスタRにおいて、フィン駆動機構30aのスライドノブ35を上方へ所定量摺動させると、全ての横フィン22は連動して先端側が上方へ回動するように回動するが、この回動時には、リンクプレート36は、第2の横フィン22bの回転軸22b1を支持している支持孔36aを中心として回転して、支持軸22b2を支持孔36bに支持されている第2の横フィン22bがリンクプレート36の回転方向に回動して、第1の横フィン22a以外の残りの横フィン22も、これに連動して、同方向へ同量だけ回動する。
【0039】
一方、第1の横フィン22aの支持軸22a1は、リンクプレート36の回転により、カム溝36cにおける第1の溝部36c1の基端部から先端部にまで摺動し、この結果、第1の横フィン22aは、リンクプレート36のカム溝36cにおける第1の溝部36c1の作用によって、他の横フィン22の回動方向と同じ方向へこれらの横フィン22に比較してより大きく回動する。
【0040】
図9は、フィン駆動機構30aをこのよう操作した場合の状態(第2の作動状態)を示しており、第1の横フィン22aは、同図(a)に示しているように、第2の横フィン22bを含めた他の横フィン22より大きく回動する。各横フィン22がこのように回動している状態では、リテーナ11の空気誘導路を流動する空気流は、空気吹出口部12aから斜め上方へ吹出して、吹出空気流は、乗員が所望する方向に指向されるが、第1の横フィン22aは他の横フィン22に比較して大きく回動していて、吹出空気流を他の横フィン22に比較してより上方へ指向させることになる。このため、第1の横フィン22aにて指向された吹出空気流の、リテーナ11の底壁部11cの先端部位に対する付着現象は大幅に抑制される。この結果、吹出空気流の局部的な指向性が向上し、吹出空気流を、例えば乗員が所望している喉元へ的確に指向させることができる。
【0041】
この状態にあるレジスタRにおいて、フィン駆動機構30aのスライドノブ35をさらに上方へ所定量摺動させると、全ての横フィン22は連動して先端側が上方へ回動するように回動するが、この回動時には、リンクプレート36は、第2の横フィン22bの回転軸22b1を支持している支持孔36aを中心として回転して、支持軸22b2を支持孔36bに支持されている第2の横フィン22bが、リンクプレート36の回転方向に回動して、第1の横フィン22a以外の残りの横フィン22も、これに連動して、同方向へ同量だけ回動する。
【0042】
一方、第1の横フィン22aの支持軸22a1は、リンクプレート36の回転により、カム溝36cにおける第1の溝部36c1の先端部から第2の溝部36c2を摺動してその先端部に達する。この場合の第1の横フィン22aの支持軸22a1の回動量は、リンクプレート36のカム溝36cにおける第2の溝部36c2の作用によって、第2の横フィン22bの支持軸22b2の回動量に比較して小さいため、第1の横フィン22a1の最終的な回動量は是正されて、他の横フィン22と同量の回動量となる。
【0043】
図10は、フィン駆動機構30aをこのよう操作した場合の状態(第3の作動状態)を示しており、全ての横フィン22は、同図(a)に示しているように、同量だけ大きく回動していて、リテーナ11の空気誘導路を流動する空気流は、空気吹出口部12aから最大限斜め上方へ吹出する。この場合には、吹出空気流の上方への指向角度が図9に示す状態に比較して大きいため、第1の横フィン22aにて指向された吹出空気流の、リテーナ11の底壁部11cの先端部位に対する付着現象が影響することは皆無または皆無に近い。
【0044】
上記した実施形態は、空気吹出口部の傾斜面が垂直状態から上下方向に大きく傾斜した状態にあるレジスタRについて例示しているが、本発明は、当該レジスタRを90度回転した関係にあるレジスタにも適用することができる。かかる形態のレジスタにおいては、リテーナの一方の側壁部が長く延出されて、空気吹出口部の開口面が垂直状態から左右方向に大きく傾斜した状態に形成されていて、前側風向調整板として互いに上下に並列して横方向に延びる複数の横フィンを採用し、また、後側風向調整板として互いに左右に並列して縦方向に延びる複数の縦フィンを採用する。この場合には、各縦フィンの一方の側壁部に沿う最側端の縦フィンを最端側の第1の縦フィンに選定する。
【0045】
かかる構成のレジスタにおいては、後側風向調整板である各縦フィンにより、吹出空気流を左右方向の一方へ指向する場合に、吹出空気流の指向時の局部的な指向性(スポット性)を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る車室内用空気吹出装置の一実施形態であるレジスタの右前方からみた斜視図である。
【図2】当該レジスタの正面図である。
【図3】当該レジスタの右側面図である。
【図4】当該レジスタの左側面図である。
【図5】当該レジスタを分解した状態の各構成部材の一部を示す斜視図である。
【図6】当該レジスタを分解した状態の各構成部材の他の一部を示す斜視図である。
【図7】当該レジスタにおける図3の矢印7−7線に沿って切断した切断端面図である。
【図8】当該レジスタのフィン駆動機構による第1の作動状態時における図2の矢印a−a線に沿って切断した切断面図(a)、および、図2のb−b線に沿って切断した切断端面図(b)である。
【図9】当該レジスタのフィン駆動機構による第2の作動状態時における図2の矢印a−a線に沿って切断した切断面図(a)、および、図2のb−b線に沿って切断した切断端面図(b)である。
【図10】当該レジスタのフィン駆動機構による第3の作動状態時における図2の矢印a−a線に沿って切断した切断面図(a)、および、図2のb−b線に沿って切断した切断端面図(b)である。
【図11】従来のレジスタを縦断して概略的に示す縦断端面図であって、空気吹出口部が垂直状態から上下方向に傾斜しているレジスタの縦断端面図(a)、空気吹出口部が垂直状態から上下方向に大きく傾斜しているレジスタの縦断端面図(b)である。
【図12】従来のレジスタであって、空気吹出口部が垂直状態から左右方向に大きく傾斜しているレジスタの縦断端面図である。
【符号の説明】
【0047】
R…レジスタ、11…リテーナ、11a…筒状本体、11b…枠部、11c…底壁部、12…ベゼル、12a…ベゼル本体(空気吹出口部)、12b…開口部、12c…開口部、21,21a…縦フィン、22…横フィン、22a…第1の横フィン、22a1…支持軸、22b…第2の横フィン、22b1…回転軸、22b2…支持軸、23…ダンパプレート、24a,24b…支持板、24c…連結ロッド、25a,25b…支持板、25c…連結ロッド、30a…フィン駆動機構、30b…ダンパ駆動機構、31…シャフト、32…ダイヤルノブ、33…リンク、34…連結ロッド、35…スライドノブ、35a…ノブモール、35b…前側ノブ部、35c…後側ノブ部、35d…脚部、35e…スライドシム、36リンクプレート、36a,36b…支持孔、36c…カム溝、36c1…第1の溝部、36c2…第2の溝部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に空気吹出口部を有して空気誘導路を形成する方形の筒体と、前記筒体内における先端側部位に回動可能に支持されて互いに並列して位置する複数の前側風向調整板と、前記筒体内における前記前側風向調整板の後方側の部位に回動可能に支持されて互いに並列しかつ前記前側風向調整板に対して直交状態で位置する複数の後側風向調整板と、前記各前側風向調整板および前記各後側風向調整板を選択的に連動して回動させる駆動機構を備え、前記各前側風向調整板または前記各後側風向調整板を、前記駆動機構を介して連動して回動動作させることにより、前記空気吹出口部から吹出する空気流を所望の方向に指向させる車室内用空気吹出装置であり、前記駆動機構は、前記筒体における長く延出する側の周壁面に沿う最端側の後側風向調整板を他の後側風向調整板より大きく回動動作させる回動機能を備え、前記空気吹出口部から吹出する空気流を前記筒体の前記周壁面の延長方向に対して拡開して傾斜する方向に指向させる際に、前記駆動機構により、前記最端側の後側風向調整板を他の後側風向調整板より大きく回動動作させることを特徴とする車室内用空気吹出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車室内用空気吹出装置において、前記駆動機構は、前記前側風向調整板のいずれか1枚に同前側風向調整板の長手方向に摺動可能に組付けられて前記各後側風向調整板の最端側の後側風向調整板である第1の後側風向調整板とは異なる第2の後側風向調整板に係合して同第2の後側風向調整板を回動動作させるスライドノブと、前記後側風向調整板の長手方向における前記筒体の周壁に沿って位置し前記第2の後側風向調整板の一端部に設けた回転軸と一体に連結されたリンクプレートを有し、前記リンクプレートは、前記第2の後側風向調整板の一端部に前記回転軸より後方の部位に設けた支持軸を挿入された状態で回転可能に支持する支持孔と、前記第1の後側風向調整板の一端側に設けた回転軸を挿入された状態で摺動可能に支持するカム溝を有し、前記カム溝は、前記第2の後側風向調整板の回転軸の軸支部および支持軸の軸支部より所定距離離れた位置に設けられていて、互いに並列する前記両軸支部から離間する方向に延びる第1のカム溝部と、前記第1のカム溝部の先端から屈折して前記両軸支部に略沿う状態で延びる第2のカム溝部を備えていることを特徴とする車室内用空気吹出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車室内用空気吹出装置は、前記筒体の底壁部が長く延出されて、前記空気吹出口部の開口面が垂直状態から上下方向に大きく傾斜した状態に形成されており、また、前記各後側風向調整板として互いに上下に並列して横方向に延びる横フィンが採用されて、前記各後側風向調整板の最下段の後側風向調整板が前記最端側の後側風向調整板である第1の後側風向調整板に選定されていることを特徴とする車室用空気吹出装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の車室内用空気吹出装置は、前記筒体の一方の側壁部が長く延出されて、前記空気吹出口部の開口面が垂直状態から左右方向に大きく傾斜した状態に形成されており、また、前記各後側風向調整板として互いに左右に並列して縦方向に延びる縦フィンが採用されて、前記各後側風向調整板の前記一方の側壁部に沿う最側端の後側風向調整板が前記最端側の後側風向調整板である第1の後側風向調整板に選定されていることを特徴とする車室用空気吹出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−46029(P2009−46029A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214468(P2007−214468)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(595058336)豊和化成株式会社 (48)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】