車載レーダ装置
【課題】角度分解能を向上し、角度情報の算出精度を向上させることのできる車載レーダ装置を提案する。
【解決手段】複数の受信アンテナを含む受信アンテナアレイと、2つの送信アンテナを有し、前記2つの送信アンテナから時分割で交互に電波を送信し、前記電波が目標で反射した反射波を前記各受信アンテナで受信し、得られた各受信データを用いて、少なくとも前記目標に関する角度情報を求める車載レーダ装置であって、受信アンテナアレイは、間隔dを隔てて前記複数の受信アンテナを並べて構成され、2つの送信アンテナは、前記受信アンテナアレイの各端部に位置する前記受信アンテナからそれぞれ間隔Dを隔てて配置され、前記間隔Dが、前記間隔dよりも大きな任意の値に設定される。
【解決手段】複数の受信アンテナを含む受信アンテナアレイと、2つの送信アンテナを有し、前記2つの送信アンテナから時分割で交互に電波を送信し、前記電波が目標で反射した反射波を前記各受信アンテナで受信し、得られた各受信データを用いて、少なくとも前記目標に関する角度情報を求める車載レーダ装置であって、受信アンテナアレイは、間隔dを隔てて前記複数の受信アンテナを並べて構成され、2つの送信アンテナは、前記受信アンテナアレイの各端部に位置する前記受信アンテナからそれぞれ間隔Dを隔てて配置され、前記間隔Dが、前記間隔dよりも大きな任意の値に設定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車などの車両に搭載される車載レーダ装置に関するものであり、とくに、少なくとも目標に関する角度情報を算出するように構成された車載レーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
目標に関する角度情報は、目標の存在する方向を表わす情報であり、一般に車載レーダ装置において、角度情報はビームを走査することにより得ることができる。
【0003】
例えば機械走査方式では、ビームは機械的に走査される。この機械走査方式では、隣接する2つの受信アンテナについて、ビームが重なる領域で目標の検出を行ない、各領域でのビート信号の受信強度に基づいて、目標に関する角度情報を求める。しかしながら、ビート信号の受信強度は、様々な要因の影響を受けやすい。したがって、受信強度を用いるよりも、ビート信号の位相を用いて角度情報を求めるものが提案されている。このビート信号の位相を用いることにより、角度分解能を向上し、角度情報の算出精度を向上することができる。
【0004】
この位相を用いて角度情報を得る技術として、デジタル・ビーム・フォーミング(digital beam formingであって、以下、DBFと略称する)処理が知られている。このDBF処理では、送信アンテナから送信され、目標で反射した送信パルスを複数の受信アンテナにて同時に受信し、その受信データを利用して、様々なビームパターンをデジタル信号処理により形成する。従来のフェーズドアレー方式のレーダ装置では、各アンテナに対してアナログ移相器を接続するが、DBF処理では、アナログ移相器の機能、およびアナログ移相器の出力をアナログ的に合成する機能を、デジタル信号処理により実現しているものと考えることができる。このDBF処理では、受信パルスの到来方向毎に、受信パルスの受信電力強度と位相とが検出されることになり、この位相を用いて目標に関する角度情報を高精度に算出することが可能となる。
【0005】
このDBF処理を採用すれば、機械走査方式のようにアンテナを機械的に駆動する必要がないため、駆動機構が不要となり、結果として振動に強く、しかも小型化、軽量化された車載レーダ装置を得ることができる。また、フェーズドアレー方式のレーダ装置と比べ、アナログ移相器が不要となるので、車載レーダ装置の低コスト化を図ることができる。
【0006】
また、一般に受信データの位相を用いて角度情報を得る場合、角度分解能はアンテナ開口径が大きいほど、向上することが知られている。しかしながら、アンテナ装置を限られたスペースに配置する車載レーダでは、そのスペースの制約のため、角度分解能に限界がある。
【0007】
下記特許文献1の図4には、互いに間隔dを隔てて並べて配置された複数の受信アンテナで構成された受信アンテナアレイに対し、その両端部にそれぞれ間隔dを置いて2つの送信アンテナを設け、これらの2つの送信アンテナから、時分割に交互に送信パルスを送信し、各受信アンテナで得られた受信データを用いて、DBF処理を実施することにより、アンテナ開口径を等価的に約2倍に拡大し、角度分解能を向上するものが開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−198312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特開文献1には、アンテナ開口径をさらに拡大することは開示されておらず、目標に関する角度情報の分解能をさらに向上し、角度情報の算出精度をさらに向上することが望まれる。
【0010】
この発明は、この課題を解決するためになされたもので、限られたアンテナサイズで角度分解能を向上し、角度情報の算出精度をさらに向上させることのできる車載レーダ装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明による車載レーダ装置は、複数の受信アンテナを含む受信アンテナアレイと、2つの送信アンテナを有し、前記2つの送信アンテナから、時分割で交互に送信パルスを送信し、前記送信パルスが目標で反射した受信パルスを前記各受信アンテナで受信し、得られた各受信データを用いて、少なくとも前記目標に関する角度情報を算出する車載レーダ装置であって、前記受信アンテナアレイは、間隔dを隔てて前記複数の受信アンテナを並べて構成され、前記2つの送信アンテナは、前記受信アンテナアレイの各端部に位置する前記受信アンテナからそれぞれ間隔Dを隔てて配置され、前記間隔Dは、前記間隔dよりも大きな任意の値に設定されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明による車載レーダ装置では、受信アンテナアレイが、間隔dを隔てて複数の受信アンテナを並べて構成され、2つの送信アンテナが、前記受信アンテナアレイの各端部に位置する前記受信アンテナからそれぞれ間隔Dを隔てて配置され、前記間隔Dは、前記間隔dよりも大きな任意の値に設定されるので、アンテナ開口径を等価的にさらに拡大することができ、目標に関する角度情報を、より高い精度で算出することができる。
【0013】
この発明の前記以外の他の目的、特徴、観点および効果は、以下の図面を参照した詳細な説明に基づき、さらに明確とされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図面を参照して、この発明のいくつかの実施の形態について説明する。
【0015】
実施の形態1.
(1)実施の形態1の構成の説明
図1は、この発明による車載レーダ装置の実施の形態1を示すブロック図である。この実施の形態1は、自動車などの車両に搭載される車載レーダ装置100である。この車載レーダ装置100は、それを搭載した車両の前方を走行する前方車両などの目標を検出し、この目標との間の車間距離、相対速度を出力し、また、その目標に関する角度情報を出力する。
【0016】
車載レーダ装置100は、アンテナ装置10と、送信系30と、受信系40と、信号処理器50を含む。まず、アンテナ装置10は、受信アンテナアレイ20と、2つの送信アンテナT1、T2を含む。受信アンテナアレイ20は、4つの受信アンテナR1、R2、R3、R4を有する。受信アンテナR1〜R4および送信アンテナT1、T2は、例えば、互いに同じ種類で、同じ仕様のアンテナで構成され、具体的には、プリント基板上に形成されたパッチアンテナとされる。
【0017】
受信アンテナR1〜R4および送信アンテナT1、T2は、それらの中心点が共通の配置ラインA−Aに沿って並ぶように配置される。これらの各アンテナR1〜R4、T1、T2は、機械的な走査を受けずに固定される。図1において、受信アンテナR1は、受信アンテナアレイ20の一端に配置され、この受信アンテナR1から受信アンテナアレイ20の他端に向かって、受信アンテナR2、R3、R4が、この順序で配置される。受信アンテナR4は、受信アンテナアレイ20の他端に配置される。受信アンテナR2、R3は、受信アンテナR1、R4の間に配置される。
【0018】
受信アンテナR1、R2、R3、R4は、間隔dを隔てて、等間隔に並べて配置される。受信アンテナR1、R2の間隔d、受信アンテナR2、R3の間隔d、および受信アンテナR3、R4の間隔dは、互いに等しい。
【0019】
2つの送信アンテナT1、T2は、受信アンテナアレイ20の両端部から間隔をおいて配置される。送信アンテナT1は、受信アンテナR1から間隔Dを隔てて配置される。送信アンテナT2は、受信アンテナR4から間隔Dを隔てて配置される。送信アンテナT1と受信アンテナR1の間隔D、および送信アンテナT2と受信アンテナR4の間隔Dは、互いに等しい。この間隔Dは、間隔dよりも大きく、D>dの関係とされる。実施の形態1では、D=2dとされる。
【0020】
送信系30は、送信アンテナT1、T2と、送信用スイッチ31と、アンプ32、33と、分配器34と、4分配器35と、電圧制御発振器36と、信号処理器50を含む。信号処理器50は、受信系40にも共用される。この送信系30は、2つの送信アンテナT1、T2から、時分割に、交互に送信パルスP1、P2を放射する。
【0021】
信号処理器50は、電圧制御発振器36に対して、変調電圧信号Vmを供給する。電圧制御発振器36は、VCO(Voltage controlledOscilator)で構成され、変調電圧信号Vmに応じて周波数変調された送信信号Stを発生し、この送信信号Stを分配器34に供給する。送信信号Stは、周波数変調された連続波である。分配器34は、アンプ32を通じて送信信号Stを送信用スイッチ31に供給するとともに、アンプ33を通じて送信信号Stを4分配器35に供給する。4分配器35は、送信信号Stを4つのローカル送信信号St1〜St4に分配する。
【0022】
送信用スイッチ31は、アンプ32で増幅された送信信号Stを受け、また、信号処理器50から送信切換信号Ssを受ける。送信用スイッチ31は、アンプ32に接続されたa端子と、送信アンテナT1に接続されたb端子と、送信アンテナT2に接続されたc端子を有する。この送信用スイッチ31は、a端子がb端子に接続される第1オン状態と、a端子がc端子に接続される第2オン状態と、a端子がb端子とc端子の何れにも接続されないオフ状態とを選択することができ、送信切換信号Ssに基づいて、第1オン状態とオフ状態と第2オン状態とを切換える。第1オン状態では、送信信号Stは送信アンテナT1に供給され、第2オン状態では、送信信号Stは送信アンテナT2に供給されるが、オフ状態では、何れの送信アンテナT1、T2にも送信信号Stは供給されない。
【0023】
送信用スイッチ31は、送信切換信号Ssに基づいて、第1オン状態からオフ状態となり、このオフ状態から第2オン状態に切換えられる。また、第2オン状態からオフ状態になり、このオフ状態から第1オン状態に切換えられる。この送信用スイッチ31の切換動作に基づき、送信信号Stは、送信アンテナT1、T2に時分割に交互に供給される。その結果、送信アンテナT1、T2は、それぞれ送信信号Stがパルス変調された送信パルスP1、P2を放射する。送信パルスP1、P2は、送信アンテナT1、T2から、時分割に、交互に空間に向けて放射される。
【0024】
受信系40は、受信アンテナアレイ20と、ミキサ回路41と、A/D変換回路42と、信号処理器50を含む。この受信系40は、送信パルスP1、P2が目標で反射して到来する受信パルスS1、S2を受信し、これらの受信パルスS1、S2に対応する受信データSdを生成して、この受信データSdを信号処理器50で処理する。
【0025】
受信アンテナアレイ20は、受信パルスS1、S2を受信し、受信信号Srを発生する。この受信信号Srは、受信アンテナR1〜R4によって得られる受信信号Sr1〜Sr4の総称である。受信アンテナR1によって得られる受信信号Sr1には、受信パルスS1に対応する受信信号Sr11と、受信パルスS2に対応する受信信号Sr12が、交互に現われる。受信アンテナR2によって得られる受信信号Sr2には、受信パルスS1に対応する受信信号Sr21と、受信パルスS2に対応する受信信号Sr22が交互に現われる。受信アンテナR3によって得られる受信信号Sr3には、受信パルスS1に対応する受信信号Sr31と、受信パルスS2に対応する受信信号Sr32が交互に現われる。受信アンテナR4によって得られる受信信号Sr4には、受信パルスS1に対応する受信信号Sr41と、受信パルスS2に対応する受信信号Sr42が交互に現われる。
【0026】
ミキサ回路41は、受信信号Srとローカル送信信号St1〜St4を受けて、受信ビート信号Sbを発生する。ミキサ回路41は、4つのミキサ411〜414を有し、これらのミキサ411〜414は、それぞれ受信アンテナアレイ20の受信アンテナR1〜R4にそれぞれ接続される。ミキサ411は、受信信号Sr1とローカル送信信号St1を受け、受信信号Sr1にローカル送信信号St1を混合して、受信ビート信号Sb1を発生する。この受信ビート信号Sb1には、受信パルスS1に対応する受信ビート信号Sb11と、受信パルスS2に対応する受信ビート信号Sb12が交互に現われる。
【0027】
同様に、ミキサ412、413、414は、それぞれ受信信号Sr2、Sr3、Sr4とローカル送信信号St2、St3、St4を受け、受信ビート信号Sb2、Sb3、Sb4を発生する。受信ビート信号Sb2には、受信パルスS1に対応する受信ビート信号Sb21と、受信パルスS2に対応する受信ビート信号Sb22が交互に現われる。受信ビート信号Sb3には、受信パルスS1に対応する受信ビート信号Sb31と、受信パルスS2に対応する受信ビート信号Sb32が交互に現われる。また、受信ビート信号Sb4には、受信パルスS1に対応する受信ビート信号Sb41と、受信パルスS2に対応する受信ビート信号Sb42が交互に現われる。受信ビート信号Sbは、これらの受信ビート信号Sb1〜Sb4の総称である。
【0028】
受信パルスS1、S2は、送信アンテナT1、T2から放射された送信パルスP1、P2が目標で反射され、受信アンテナR1〜R4で受信される。このため、受信ビート信号Sb1〜Sb4は、送信信号Stに対する周波数変化Δfを含み、また受信ビート信号Sb1〜Sb4の間の位相差φを含んでいる。周波数変化Δfは、目標までの距離情報IDと、目標の相対速度情報ISを演算するのに使用され、また、位相差φは目標に関する角度情報Iθを演算するのに使用される。
【0029】
A/D変換回路42は、受信ビート信号Sbを受信レンジゲート0〜Nのそれぞれでサンプリングし、それぞれのサンプリング値をデジタル信号に変換し、受信データSdを発生する。A/D変換回路42は、4つのA/D変換器421〜424を有し、これらのA/D変換器421〜424は、それぞれミキサ411〜414に接続される。A/D変換器421は、ミキサ411からの受信ビート信号Sb1を受信レンジゲート0〜Nのそれぞれでサンプリングし、それぞれのサンプリング値をデジタル信号に変換し、受信データSd1を発生する。この受信データSd1には、受信パルスS1に対応する受信データSd11と、受信パルスS2に対応する受信データSd12が交互に現われる。
【0030】
同様に、A/D変換器422、423、424は、それぞれミキサ412、413、414からの受信ビート信号Sb2、Sb3、Sb4を受信レンジゲート0〜Nのそれぞれでサンプリングし、それぞれのサンプリング値をデジタル信号に変換して、受信データSd2、Sd3、Sd4を発生する。受信データSd2には、受信パルスS1に対応する受信データSd21と、受信パルスS2に対応する受信データSd22が交互に現われる。受信データSd3には、受信パルスS1に対応する受信データSd31と、受信パルスS2に対応する受信データSd32が交互に現われる。受信データSd4には、受信パルスS1に対応する受信データSd41と、受信パルスS2に対応する受信データSd42が交互に現われる。受信データSdは、これらの受信データSd1〜Sd4の総称である。
【0031】
信号処理器50は、受信データSdに対する信号処理を行なう。この信号処理器50は、目標が存在するかどうかの目標検出情報ITを出力し、また、送信パルスP1、P2とそれらに対応した受信パルスS1、S2との周波数変化Δfに基づいて目標までの距離情報IDと、目標の相対速度情報ISを出力する。信号処理器50は、さらに受信パルスS1、S2から得られた受信データSdの位相差φに基づき、目標に関する角度情報Iθを出力する。
【0032】
(2)実施の形態1の動作の説明
さて、実施の形態1について、その動作を説明する。図2は、実施の形態1の車載レーダ装置100の送受信動作を示す説明図である。図2の横軸は、時間軸である。図2(a)は送信信号Stの周波数変化を、図2(b)は送信信号Stに対応した送信パルス列を、図2(c)は送信パルス列に対応した送信パルスP1と受信パルスS1を、図2(d)は送信パルス列に対応した送信パルスP2と受信パルスS2を、図2(e)は受信パルスS1に対応した受信ビート信号Sbとそれに対する受信レンジゲートを、また図2(f)は受信パルスS2に対応した受信ビート信号Sbとそれに対する受信レンジゲートをそれぞれ示す。
【0033】
送信信号Stは、図2(a)に示すように、周波数が三角波状に変化する周波数変調部分Fmを含む。この周波数変調部分Fmは、所定の時間間隔T0を置いて間欠的に発生される。この周波数変調部分Fmは、信号処理器50から電圧制御発振器36に供給される変調電圧信号Vmに基づいて発生される。
【0034】
周波数変調部分Fmは、アップチャープucとダウンチャープdcを含む。アップチャープucでは、送信信号Stの周波数がf1からf2へ直線的に上昇する。ダウンチャープdcでは、送信信号Stの周波数がf2からf1へ直線的に低下する。ダウンチャープdcは、アップチャープucに続いて現われる。
【0035】
実施の形態1では、アップチャープucおよびダウンチャープdcに、それぞれ送信パルス列が設定される。具体的には、この送信パルス列は、アップチャープucおよびダウンチャープdcのそれぞれにおいて、互いに等間隔に1024個のアドレスに時分割され、これらの各アドレスは、順次アドレス0〜1023にアドレス付けされ、アドレスゲート0〜1023とされる。この送信パルス列は、送信切換信号Ssに基づいて、送信用スイッチ31が設定する。
【0036】
送信パルス列は、512個の偶数のアドレスゲート0、2、・・・、1022と、512個の奇数アドレスゲート1、3、・・・、1023を含む。偶数のアドレスゲート0、2、・・・、1022と、奇数のアドレスゲート1、3、・・・、1023は、交互に発生される。各偶数のアドレスゲートでは、それぞれ送信信号Stが送信アンテナT1に供給され、送信パルスP1が送信アンテナT1から送信される。言い換えれば、送信パルスP1は、偶数のアドレスゲート0、2、・・・、1022のそれぞれにおいて、間欠的に送信される。また、奇数のアドレスゲート1、3、・・・、1023では、それぞれ送信信号Stが送信アンテナT2に供給され、送信パルスP2が送信アンテナT2から送信される。言い換えれば、送信パルスP2は、奇数のアドレスゲート1、3・・・、1023のそれぞれにおいて、間欠的に送信される。図2(b)は、1つのダウンチャープdcにおける送信パルス列を例示する。
【0037】
図2(c)には、送信パルス列の偶数のアドレスゲート、具体的にはアドレスゲート0とアドレスゲート2に対応する2つの送信パルスP1が例示される。図2(d)には、送信パルス列の奇数のアドレスゲート、具体的には、アドレスゲート1とアドレスゲート3に対応する2つの送信パルスP2が例示される。アドレスゲート0、1、2、・・・、1023は、それぞれアドレス期間Tiを持つ。偶数のアドレスゲート0、2、・・・、1022のそれぞれのアドレス期間Tiの冒頭では、それぞれ送信用スイッチ31が第1オン状態となり、そのa端子がb端子に接続され、送信パルスP1がそれぞれ持続時間Twを持って送信される。また、奇数のアドレスゲート1、3、・・・、1023のそれぞれのアドレス期間Tiの冒頭では、それぞれ送信用スイッチ31が第2オン状態となり、そのa端子がc端子に接続されるので、送信パルスP2がそれぞれ持続時間Twを持って送信される。このように、アドレスゲート0、1、2、・・・のそれぞれのアドレス期間Tiでは、冒頭に送信パルスP1、P2が持続時間Twを持って送信され、その残りの期間(Ti−Tw)では、送信用スイッチ31はオフ状態となり、送信パルスP1、P2は送信されない。
【0038】
偶数のアドレスゲート0、2、・・・、1022では、それぞれ送信パルスP1に基づいて、受信パルスS1が受信される。この受信パルスS1に対応する受信ビート信号Sb1e、Sb2e、Sb3e、Sb4eが、図2(e)に示される。受信ビート信号Sb1e、Sb2e、Sb3e、Sb4eは、それぞれ受信ビート信号Sb1、Sb2、Sb3、Sb4に含まれる。これらの受信ビート信号Sb1e、Sb2e、Sb3e、Sb4eには、図2(e)に示すように、受信レンジゲート0〜Nが設定される。受信ビート信号Sb1e、Sb2e、Sb3e、Sb4eは、それぞれA/D変換器421〜424により、受信レンジゲート0〜Nのそれぞれにおいてサンプリングされ、それぞれのサンプリング値は、A/D変換器421〜424でデジタル信号に変換され、受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eとなる。これらの受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eを偶数アドレス受信データSdeと総称する。この偶数アドレス受信データSdeが得られる状態は、送信パルスP1の送信時に対応する。
【0039】
奇数のアドレスゲート1、3、・・・、1023では、それぞれ送信パルスP2に基づいて、受信パルスS2が受信される。この受信パルスS2に対応する受信ビート信号Sb1o、Sb2o、Sb3o、Sb4oが、図2(f)に示される。受信ビート信号Sb1o、Sb2o、Sb3o、Sb4oは、それぞれ受信ビート信号Sb1、Sb2、Sb3、Sb4に含まれる。これらの受信ビート信号Sb1o、Sb2o、Sb3o、Sb4oには、図2(f)に示すように、受信レンジゲート0〜Nが設定される。受信ビート信号Sb1o、Sb2o、Sb3o、Sb4oは、A/D変換器421〜424により、受信レンジゲート0〜Nのそれぞれにおいてサンプリングされ、それぞれのサンプリング値は、A/D変換器421〜424でデジタル信号に変換され、受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oとなる。これらの受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oを奇数アドレス受信データSdoと総称する。この奇数アドレス受信データSdoが得られる状態は、送信パルスP2の送信時に対応する。
【0040】
アップチャープucおよびダウンチャープdcでは、それぞれアドレスゲート0、1、2、・・・、1023の進行に伴ない、偶数アドレス受信データSdeと、奇数アドレス受信データSdoが交互に発生する結果となる。なお、受信レンジゲートの数は(N+1)であり、これは7〜10とされる。
【0041】
(3)実施の形態1におけるアンテナの等価配置の説明
実施の形態1は、アンテナの等価配置を改善し、アンテナ開口径を拡大して、目標に関する角度情報の算出精度を向上するものである。図3は、実施の形態1における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す説明図である。図3(a)は、受信アンテナR1〜R4の受信経路差を示す。図3(a)の左側には、送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信経路差が、またその右側には、送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信経路差が示される。図3(b)は、送信アンテナT2を基準として、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における受信経路差を示す。図3(c)は、送信アンテナT2を基準として、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における受信位相差を示す。図3(d)は、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における位置合わせ位相調整後の受信位相差を示す。図3(e)は、実施の形態1におけるアンテナ装置10の等価配置を示す。
【0042】
送信パルスP2の送信時には、図3(a)の左側に示すように、送信パルスP2が、送信アンテナT2から矢印P2方向に放射され、受信パルスS2が、受信アンテナR1〜R4に矢印S2方向に入射する。また、送信パルスP1の送信時には、図3(a)の右側に示すように、送信パルスP1が、送信アンテナT1から矢印P1方向に放射され、受信パルスS1が、受信アンテナR1〜R4に矢印S1方向に入射する。アンテナの配置ラインA−Aに直交する基準面に対する受信パルスS1、S2の入射角をθとする。受信パルスS2、S1は、短い時間間隔で受信されるので、矢印S2、S1は互いに平行と見なすことができる。受信パルスS2、S1について、受信アンテナR1〜R4の等位相面を符号r1〜r4で表わし、また、これらの等位相面r1〜r4の両側に、送信アンテナT1、T2の等位相面t1、t2を表わす。等位相面r1〜r4は、それぞれ受信アンテナR1〜R4の中心点を通り、矢印S2、S1に直交する。等位相面t2、t1は、それぞれ送信アンテナT2、T1の中心点を通り、矢印S2、S1に直交する。
【0043】
実施の形態1では、間隔D=2dであるので、受信アンテナR1〜R4は、アンテナの配置ラインA−Aに沿って、送信アンテナT2から、それぞれ間隔5d、4d、3d、2dだけ離れている。したがって、送信パルスP2の送信時において、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図3(a)の左側に示すように、送信アンテナT2の等位相面t2から、それぞれ+5Δr、+4Δr、+3Δr、+2Δrだけ離れる。なお、Δr=d×sinθである。
【0044】
送信パルスP1の送信時においても、図3(a)の右側に示すように、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、送信アンテナT2の等電位面t2から、それぞれ+5Δr、+4Δr、+3Δr、+2Δrだけ離れる。なお、図3(a)において、送信アンテナT1、T2の等位相面t1、t2の間の経路差は、+Δ7rである。
【0045】
送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における経路差を総合して考えると、図3(b)のようになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図3(b)の左側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+5Δr、+4Δr、+3Δr、+2Δrだけ離れる。送信アンテナT2の等位相面t2と送信アンテナT1の等位相面t1との間の経路差が+7Δrであるので、送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図3(b)の右側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+12Δr、+11Δr、+10Δr、+9Δrだけ離れる結果となる。
【0046】
図3(b)に示す経路差を位相差に置き換えると、図3(c)に示す通りになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図3(c)の左側に示す通り、送信アンテナT2を基準として、それぞれ−5Δφ、−4Δφ、−3Δφ、−2Δφの位相差を持つことになる。送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図3(c)の右側に示す通り、送信アンテナT2を基準として、それぞれ−12Δφ、−11Δφ、−10Δφ、−9Δφの位相差を持つことになる。
【0047】
図3(c)に示す位相差は、送信アンテナT1、T2が、受信アンテナアレイ20の両側にそれぞれ間隔Dだけ離れて配置された実施の形態1において、送信アンテナT2を基準とした位相差であるが、ここで、送信アンテナT1の位置を仮想的に送信アンテナT2の位置に合わせるための、位置合わせ位相調整量θPを考える。実施の形態1において、この位置合わせ位相調整量θPは、+14Δφであり、位置合わせ係数P=+14と位相差Δφを乗算したものである。位置合わせ係数Pは、間隔Dと間隔dについて、D=md(mは係数)としたとき、P=6+4mで求められ、実施の形態1では、m=2であるので、位置合わせ係数Pは+14となる。この位置合わせ係数Pは、アンテナ装置10の間隔Dと間隔dとの間の係数mに依存して決定されるので、係数mが特定されると、一義的に求めることができる。位相調整量θPは、図3(c)の右側に示す送信パルスP1の送信時における各位相差に、それぞれ加算される。図3(c)の左側に示す送信パルスP2の送信時における各位相差には、位相調整量θPは加算されない。この位置合わせ位相調整量θPを送信パルスP1の送信時における各位相差に加算することにより、図3(e)に示すように、2つの送信アンテナT1、T2が、同じ位置に配置された1つの仮想送信アンテナT1/T2に等価される。
【0048】
仮想送信アンテナT1/T2を基準とした場合、図3(e)に示すアンテナの等価配置が得られる。送信パルスP2の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図3(d)に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ−5Δφ、−4Δφ、−3Δφ、−2Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の左側に、等価的な受信アンテナアレイ20Lを形成する結果になる。また、送信パルスP1の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図3(d)に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準にして、それぞれ+2Δφ、+3Δφ、+4Δφ、+5Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の右側に、等価的な受信アンテナアレイ20Rを形成する結果になる。
【0049】
等価的な受信アンテナアレイ20Lは、送信アンテナT2から送信される送信パルスP2に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Lの受信アンテナR1〜R4は、図3(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH1〜CH4を形成する。これらの受信チャネルCH1〜CH4は、奇数アドレス受信データSdoに対応し、受信チャネルCH1〜CH4では、それぞれ奇数アドレス受信データSdoの受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oがそれぞれ得られる。
【0050】
等価的な受信アンテナアレイ20Rは、送信アンテナT1から送信される送信パルスP1に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Rの受信アンテナR1〜R4は、図3(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH5〜CH8を形成する。これらの受信チャネルCH5〜CH8は、偶数アドレス受信データSdeに対応し、受信チャネルCH5〜CH8では、それぞれ偶数アドレス受信データSdeの受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eがそれぞれ得られる。
【0051】
(4)実施の形態1における信号処理器50の動作の説明
図4は、実施の形態1における信号処理器50の動作を示すフローチャートである。このフローチャートは、スタートとエンドとの間に6つのステップS11〜S16を含む。最初のステップS11では、偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに対して、時間軸方向の高速フーリエ変換(Fast Fourier Transformであり、以下FFTと略称する)処理を行なう。この時間軸方向のFFT処理では、図2の横軸である時間軸方向に、偶数アドレス受信データSdeと奇数アドレス受信データSdoをFFT処理する。この時間軸方向のFFTは、図2(e)(f)に示す各受信レンジゲート0〜Nのそれぞれに対応して実行される。
【0052】
次のステップS12では、ステップS11でFFT処理された偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに対し、位相補正θCを行なう。この位相補正θCは、キャリブレーション補正とも呼ばれる。この位相補正θCは、偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに含まれる受信アンテナR1〜R4と送信アンテナT1、T2のハードウエア的な位相誤差、および送信用スイッチ31の切換タイミングの時間的誤差を補正する。
【0053】
次のステップS13では、ステップS12で位相補正θCを受けた偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoのそれぞれに対し、空間方向DBFを行なう。このステップS13は、2つのステップS131、S132を含む。ステップS131は、受信データSdに対する入射角位相調整を行なうステップであり、またステップS132は、ステップS131に続き、受信データSdを複素加算するステップである。これらのステップS131、S132を含むステップS13では、離散フーリエ変換(DiscreteFourier Transformであり、以下DFTと略称する)処理が行なわれる。具体的には、偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoのそれぞれに対し、空間で受信アンテナR1〜R4が並ぶ方向、言い換えれば、図3(e)において、各受信チャネルCH1〜CH8が並ぶ方向にDFT処理を行なう。この空間のチャネル方向のDFT処理に基づいて、DBF処理が行なわれる。
【0054】
ステップS131には、位置合わせ係数Pが与えられる。この位置合わせ係数Pは、図3(c)と図3(d)の間に示された位相調整量θP=14Δφにおける位置合わせ係数であり、実施の形態1では、P=+14とされる。ステップS131では、この位置合わせ係数Pを受け、位置合わせ位相調整量θPを偶数アドレス受信データSdeに加算する。
【0055】
また、ステップS131では、同時に入射角θに対する位相調整を行なう。この入射角θに対する位相調整は、図3(c)(d)におけるΔφを調整することに相当する。ステップS132では、ステップS131において、入射角θに対する位相調整を受けた偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoを複素加算する。
【0056】
図5は、ステップS131における入射角θに対する位相調整と、ステップS132における複素加算の原理を示す説明図である。ステップS131では、受信データSd1〜Sd4のそれぞれに含まれた偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoのそれぞれに対し、受信パルスS1、S2の様々な入射角θを想定した位相調整が実行される。このステップS131における位相調整は、位相スキャニング調整とも呼ばれる。このステップS131における位相調整に基づいて、ステップS132における複素加算が実行され、その結果、受信パルスS1、S2の実際の入射角θaに対応する受信データSde、Sdoが強められ、またこの実際の入射角θa以外の入射角θbに対応する受信データSde、Sdoが弱められる。
【0057】
図5(a)は、受信アンテナR1〜R4と、これらの受信アンテナR1〜R4により得られた受信データSd1〜Sd4を示す。これらの受信データSd1〜Sd4は、具体的には、それぞれ偶数アドレス受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4e、および奇数アドレス受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oであるが、受信データSd1〜Sd4で代表して示す。この受信データSd1〜Sd4は、デジタルデータであるが、解り易くするために、波形信号として示している。図5(b)は、これらの受信データSd1〜Sd4に対し、ステップS131における位相調整として、受信パルスS2、S1の実際の入射角θaに対応する位相調整を与えた場合における受信データSd1〜Sd4の変化を示す。図5(c)は、受信データSd1〜Sd4に対し、ステップS131における位相調整として、受信パルスS2、S1の実際の入射角θa以外の入射角θbに対応する位相調整を与えた場合における受信データSd1〜Sd4の変化を示す。図5(d)は、図5(b)(c)に基づいて、ステップS132で得られる加算受信データSDの受信電力強度特性Csdを示す。
【0058】
受信データSd1〜Sd4は、図5(a)に示すように、時間軸に対して傾斜した同相位相線φaに沿って互いに同じ位相を持つものとする。ステップS131における位相調整が、受信パルスS2、S1の実際の入射角θaとされた場合には、図5(b)に示すように、受信データSd1〜Sd4の同位相線φaが、時間軸と直行するように、互いに同じ位相に揃えられるので、ステップS132でそれらを複素加算した加算受信データSDは、受信データSd1〜Sd4の受信電力強度が互いに強め合うように加算され、ビームが形成される。これに対し、ステップS131における位相調整が、受信パルスS2、S1の実際の入射角θaと異なる入射角θbとされた場合には、図5(c)に示すように、受信データSd1〜Sd4の同位相線φaが、時間軸の方向に傾斜した状態となるので、ステップS132でそれらの受信データを複素加算した加算受信データSDは、受信電力強度が小さくなる。
【0059】
ステップS132で得られる加算受信データSDに関する受信電力強度特性Csdが、図5(d)に示される。図5(d)において、横軸は入射角θであり、縦軸は加算受信データSDの受信電力強度である。図5(d)では、受信パルスS2、S1の実際の入射角θaの方位に、加算受信データSDの受信電力強度の最大ピークSpが得られる。
【0060】
次のステップS14では、目標検出処理が実行される。この目標検出処理では、図5(d)で得られた加算受信データSDの受信電力強度特性Csdを用いて、所定の閾値を越える最大ピークSpが存在するかどうかが判定され、所定の閾値を越える最大ピークSpが存在すると判定された場合には、目標が存在することを表わす目標検出情報ITが出力される。この目標検出情報ITは、例えば、レーダ装置100を搭載した車両の前方に、前方車両が存在することを意味する。
【0061】
次のステップS15は、ステップS14から目標検出情報ITが出力されたときに、その目標に対する距離情報IDと、その目標の相対速度情報ISを出力する。これらの距離情報IDおよび相対速度情報ISは、送信信号と受信信号の周波数差から同時に算出される。この算出処理はよく知られているので、詳細な説明は省略する。
【0062】
次のステップS16では、ステップS14から目標検出情報ITが出力されたときに、この目標に関する角度情報Iθが算出される。実施の形態1では、受信チャネルCH1〜CH4で得られた奇数アドレス受信データSdoと、受信チャネルCH5〜CH8で得られた偶数アドレス受信データSdeの間で、目標に関する角度情報Iθが算出される。具体的には、受信チャネルCH1、CH5からなる受信チャネルペアCH1/CH5、受信チャネルCH2、CH6からなる受信チャネルペアCH2/CH6、受信チャネルCH3、CH7からなる受信チャネルペアCH3/CH7、および受信チャネルCH4、CH8からなる受信チャネルペアCH4/CH8に基づいて、目標に関する角度情報Iθが算出される。これらの各受信チャネルペアにおける2つの受信チャネルの間のアンテナ開口径Lは、D=2dであるので、L=7dとなる。D=dとした従来のアンテナ装置では、L=5dであるので、実施の形態1では、アンテナ開口径Lを従来のアンテナ装置よりも拡大することができる。このアンテナ開口径Lの拡大により、角度情報Iθの分解能が向上し、より正確な角度情報Iθを得ることができる。
【0063】
この角度情報Iθは、ステップS12の出力、すなわちステップS13でDBF処理を受ける前の偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに基づいて、算出される。受信チャネルCH1〜CH4では、それぞれ奇数アドレス受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oが得られる。受信チャネルCH5〜CH8では、それぞれ偶数アドレス受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eが得られる。受信チャネルペアCH1/CH5では、受信データSd1o、Sd1eから角度情報Iθ1を算出する。受信チャネルCH2/CH6では、受信データSd2o、Sd2eから角度情報Iθ2を算出する。受信チャネルペアCH3/CH7では、受信データSd3o、Sd3eから角度情報Iθ3を算出する。受信チャネルCH4/CH8では、受信データSd4o、Sd4eから角度情報Iθ4を算出する。
【0064】
図6は、これらの角度情報Iθ1〜Iθ4を算出する原理を説明するための説明図である。図6では、2つのアンテナ素子Ra、Rbが素子間隔Edを隔てて配置されたアンテナアレイを想定し、このアンテナアレイに対し、入射角θ1の方向から受信波S1(t)が入射され、それぞれのアンテナ素子Ra、Rbから受信信号ra(t)、rb(t)が得られる場合を考える。受信波S1(t)の到来波面を符号Swで示す。受信信号ra(t)、rb(t)は、到来波S1(t)に対しそれぞれ0、およびφ1の位相を持つものとする。言い換えれば、受信信号ra(t)と受信信号rb(t)との位相差がφ1である。
【0065】
このとき、2つのアンテナ素子Ra、Rbから得られる受信信号ra(t)、rb(t)は、ノイズを無視すると、次式で表わすことができる。
ra(t)=S1(t)
rb(t)=ejφ1S1(t)・・・(式1)
(式1)から受信信号ra(t)とrb(t)の関係を導出すると、次の(式2)が得られる。
rb(t)=ra(t)ejφ1・・・(式2)
この(式2)から、受信信号ra(t)、rb(t)の間の位相差φ1は、次の(式3)で求めることができる。
φ1=arg{rb(t)/ra(t)}・・・(式3)
【0066】
また、図6から位相差φ1は、素子間隔Edと次の(式4)の関係にある。なお、(式4)において、λは受信波S1(t)の波長である。
φ1=(2π/λ)Ed×sinθ1・・・(式4)
この式をθ1について解くと、次の(式5)が得られる。
θ1=sin−1(λ×φ1/2π×Ed)・・・(式5)
(式5)に(式3)を代入すると入射角θ1が求められる。つまり、受信信号ra(t)とrb(t)の位相差φ1から、入射角θ1を得ることができる。
【0067】
実施の形態1の受信チャネルペアCH1/CH5では、受信データSd1eが受信信号ra(t)に、受信データSd1oが受信信号rb(t)に、受信チャネルCH1、CH5の間のアンテナ開口径Lが素子間隔Edに、角度情報Iθ1が角度θ1にそれぞれ対応し、(式5)に基づき、角度情報Iθ1を求める。また、受信チャネルペアCH2/CH6では、受信データSd2eが受信信号ra(t)に、受信データSd2oが受信信号rb(t)に、受信チャネルCH2、CH6の間のアンテナ開口径Lが素子間隔Edに、角度情報Iθ2が角度θ1にそれぞれ対応し、(式5)に基づき、角度情報Iθ2を求める。
【0068】
同様に、受信チャネルペアCH3/CH7では、受信データSd3eが受信信号ra(t)に、受信データSd3oが受信信号rb(t)に、受信チャネルCH3、CH7の間のアンテナ開口径Lが素子間隔Edに、角度情報Iθ3が角度θ1にそれぞれ対応し、(式5)に基づき、角度情報Iθ3を求める。また、受信チャネルペアCH4/CH8では、受信データSd4eが受信信号ra(t)に、受信データSd4oが受信信号rb(t)に、受信チャネルCH4、CH8の間のアンテナ開口径Lが素子間隔Edに、角度情報Iθ4が角度θ1にそれぞれ対応し、(式5)に基づき、角度情報Iθ4を求める。ステップS16では、例えば、これらの角度情報Iθ1〜Iθ4を平均して目標に関する角度情報Iθを算出する。
【0069】
実施の形態1では、ステップS12の出力、すなわちステップS13でDBF処理を受ける前の偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに基づいて、角度情報Iθ1〜Iθ4が算出されるので、この角度情報Iθ1〜Iθ4には、位置合わせ位相調整量θPが加算されていない。しかし、これらの角度情報Iθ1〜Iθ4は、単に符号反転補正を行なうだけで、位置合わせ位相調整量θPを加算した角度情報に変換することができる。ステップS16で求められた角度情報Iθ1〜Iθ4には、符号反転補正が行なわれる。
【0070】
角度情報Iθ1〜Iθ4に単に符号反転補正を行なうだけで、角度情報Iθ1〜Iθ4が、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報に変換される理由について、説明する。例えば受信チャネルペアCH1/CH5の間で角度情報Iθ1を算出する場合について、この符号反転補正について説明する。偶数アドレス受信データSd1eは受信チャネルCH5で得られ、また奇数アドレス受信データSd1oは受信チャネルCH1で得られるが、これらの受信データSd1e、Sd1oは、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データであり、位置合わせ位相調整量θPが加算されておらず、図3(c)に示すように、それぞれ−12Δφ、−5Δφの位相差を持つ。これらの受信データSd1e、Sd1oの間の位相差をφbとすると、この位相差φbは、φb=−12Δφ−(−5Δφ)=−7Δφとなる。これに対して、位置合わせ位相調整量θPを加算した後の受信データSd1e、Sd1oは、図3(d)に示すように、それぞれ+2Δφ、−5Δφの位相差を持っており、これらの間の位相差をφcとすると、この位相差φcは、φc=+2Δφ−(−5Δφ)=7Δφとなる。すなわち、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データSd1から算出された位相差φbを、位置合わせ位相調整量θPを加算した位相差φcに変換するには、−符号を+符号に補正する符号反転補正を行なえばよい。他の受信チャネルペアCH2/CH6、CH3/CH7、CH4/CH8で算出される角度情報Iθ2、Iθ3、Iθ4にも、同じ符号反転補正が行なわれ、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報とされる。
【0071】
(5)実施の形態1の効果の説明
実施の形態1では、目標に関する角度情報Iθは、各受信チャネルペアから算出した角度情報Iθ1〜Iθ4を平均して算出される。角度情報Iθ1〜Iθ4の分解能Δθは、Δθ=(λ/L)で定義される。実施の形態1では、送信アンテナT1、T2と受信アンテナアレイ20との間隔Dが、受信アンテナR1〜R4の間隔dに対し、D=2dに設定され、その結果、アンテナ開口径Lは拡大され、L=7dとなるので、分解能Δθをより小さくすることができ、より正確な角度情報Iθを得ることができる。
【0072】
次に、車載レーダ装置100の有効測角範囲Rθついて、説明する。この有効測角範囲Rθは、車載レーダ装置100が、受信パルスS1、S2に基づいて、目標に関する角度情報Iθを正確に測定できる角度範囲である。(式4)で表わされるφ1は、位相差であり、この位相差φ1が−πと+πの間にある範囲において、(式5)に基づいて、入射角θ1を、曖昧さを含まずに、正確に求めることができる。言い換えれば、(式5)において、φ1を−πと+πの間の範囲としたときの入射角θ1の範囲が、有効測角範囲Rθである。
【0073】
この有効測角範囲Rθは、素子間隔Edが大きくなれば、それに伴なって小さくなる。一例として、素子間隔EdをEd=0.6λとし、位相差φ1を−π≦φ1≦+πとすると、(式5)から、有効測角範囲Rθは、−56度≦Rθ≦+56度となる。これに対し、実施の形態1では、アンテナ開口径Lは、L=7dであり、間隔dを、例えば実用的な値、d=0.6λとすると、L=4.2λとなる。このアンテナ開口径L=4.2λを素子間隔Edとし、位相差φ1を−π≦φ1≦+πとすると、(式5)から、有効測角範囲Rθは、−6.8度≦Rθ≦+6.8度となる。
【0074】
このように実施の形態1では、D=2dとすることにより、アンテナ開口径LをL=7dに拡大し、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、より正確な角度情報Iθを得ることができ、併せて、有効角度範囲Rθを、実用的に±6.8度の範囲とすることができる。
【0075】
(6)実施の形態1の一般的な説明
実施の形態1では、送信アンテナT1、T2と受信アンテナアレイ20との間隔Dが、受信アンテナR1〜R4の間隔dに対し、D=2dの関係に設定され、その結果、アンテナ開口径Lを、L=7dに拡大することができた。この発明は、一般的には、間隔Dを間隔dよりも大きくすることを特徴とする。言い換えれば、間隔Dと間隔dについて、D=md(mは係数)の関係とした場合に、係数mを1よりも大きくすることが特徴である。この係数mは、実用的には、1.1≦m≦10.0を満足する任意の値とされる。実施の形態1は、m=2.0とした場合に相当する。
【0076】
実施の形態2.
実施の形態2では、係数mをm=2.5に設定し、これに伴なって、位置合わせ係数PがP=+16とされる。これ以外では、実施の形態2は、実施の形態1と同じに構成される。
【0077】
図7は、実施の形態2における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す。この図7(a)〜図7(e)は、それぞれ図3(a)〜図3(e)にそれぞれ対応するが、実施の形態2では、係数mが2.5とされたために、具体的な経路差が相違し、また、アンテナの等価配置における仮想送信アンテナT1/T2の間隔が相違する。その他は、図3(a)〜図3(e)と同じである。
【0078】
実施の形態2では、係数mが2.5であり、間隔D=2.5dであるので、受信アンテナR1〜R4は、アンテナの配置ラインA−Aに沿って、送信アンテナT2から、それぞれ間隔5.5d、4.5d、3.5d、2.5dだけ離れている。したがって、送信パルスP2の送信時において、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図7(a)の左側に示すように、送信アンテナT2の等位相面t2から、それぞれ+5.5Δr、+4.5Δr、+3.5Δr、+2.5Δrだけ離れる。
【0079】
送信パルスP1の送信時においても、図7(a)の右側に示すように、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、送信アンテナT2の等電位面t2から、それぞれ+5.5Δr、+4.5Δr、+3.5Δr、+2.5Δrだけ離れる。なお、図7(a)において、送信アンテナT1、T2の等位相面t1、t2の間の経路差は、+Δ8rである。
【0080】
送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における経路差を総合して考えると、図7(b)のようになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図7(b)の左側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+5.5Δr、+4.5Δr、+3.5Δr、+2.5Δrだけ離れる。送信アンテナT2、T1の間の経路差が+8Δrであるので、送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図7(b)の右側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+13.5Δr、+12.5Δr、+11.5Δr、+10.5Δrだけ離れる結果となる。
【0081】
図7(b)に示す経路差を位相差に置き換えると、図7(c)に示す通りになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図7(c)の左側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−5.5Δφ、−4.5Δφ、−3.5Δφ、−2.5Δφの位相差を持つことになる。送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図7(c)の右側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−13.5Δφ、−12.5Δφ、−11.5Δφ、−10.5Δφの位相差を持つことになる。
【0082】
図7(c)に示す位相差は、送信アンテナT1、T2が、受信アンテナアレイ20の両側にそれぞれ間隔D(D=2.5d)だけ離れて配置された実施の形態2において、送信アンテナT2を基準とした位相差であるが、ここで、送信アンテナT1の位置を仮想的に送信アンテナT2の位置に合わせるための、位置合わせ位相調整量θPを考える。実施の形態2において、この位置合わせ位相調整量θPは、+16Δφであり、位置合わせ係数Pと位相差Δφを乗算したものである。位置合わせ係数Pは、P=6+4mで求められ、実施の形態2では、m=2.5であるので、位置合わせ係数Pは+16となる。位相調整量θPは、図7(c)の右側に示す送信パルスP1の送信時における各位相差に、それぞれ加算される。図7(c)の左側に示す送信パルスP2の送信時における各位相差には、位相調整量θPは加算されない。この位置合わせ位相調整量θPを送信パルスP1の送信時における各位相差に加算することにより、図7(e)に示すように、2つの送信アンテナT1、T2が、同じ位置に配置された1つの仮想送信アンテナT1/T2に等価される。
【0083】
仮想送信アンテナT1/T2を基準とした場合、図7(e)に示すアンテナの等価配置が得られる。送信パルスP2の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図7(d)の左側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ−5.5Δφ、−4.5Δφ、−3.5Δφ、−2.5Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の左側に、等価的な受信アンテナアレイ20Lを形成する結果になる。また、送信パルスP1の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図7(d)の右側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ+2.5Δφ、+3.5Δφ、+4.5Δφ、+5.5Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の右側に、等価的な受信アンテナアレイ20Rを形成する結果になる。
【0084】
等価的な受信アンテナアレイ20Lは、送信アンテナT2から送信される送信パルスP2に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Lの受信アンテナR1〜R4は、図7(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH1〜CH4を形成する。これらの受信チャネルCH1〜CH4は、奇数アドレス受信データSdoに対応し、受信チャネルCH1〜CH4では、それぞれ奇数アドレス受信データSdoの受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oがそれぞれ得られる。
【0085】
等価的な受信アンテナアレイ20Rは、送信アンテナT1から送信される送信パルスP1に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Rの受信アンテナR1〜R4は、図7(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH5〜CH8を形成する。これらの受信チャネルCH5〜CH8は、偶数アドレス受信データSdeに対応し、受信チャネルCH5〜CH8では、それぞれ偶数アドレス受信データSdeの受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eがそれぞれ得られる。
【0086】
実施の形態2でも、図4のステップS16において、ステップS12の出力、すなわちステップS13でDBF処理を受ける前の偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに基づいて、角度情報Iθ1〜Iθ4が算出されるので、この角度情報Iθ1〜Iθ4を、位置合わせ位相調整量θPを加算した角度情報に変換するため、角度情報Iθ1〜Iθ4に、符号反転補正が行なわれる。
【0087】
実施の形態2において、角度情報Iθ1〜Iθ4に単に符号反転補正を行なうだけで、角度情報Iθ1〜Iθ4が、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報に変換される理由について、例えば受信チャネルペアCH1/CH5の間で角度情報Iθ1を算出する場合を例にして説明する。偶数アドレス受信データSd1eは受信チャネルCH5で得られ、また奇数アドレス受信データSd1oは受信チャネルCH1で得られるが、これらの受信データSd1e、Sd1oは、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データであり、位置合わせ位相調整量θPが加算されておらず、図7(c)に示すように、それぞれ−13.5Δφ、−5.5Δφの位相差を持つ。これらの受信データSd1e、Sd1oの間の位相差をφbとすると、この位相差φbは、φb=−13.5Δφ−(−5.5Δφ)=−8Δφとなる。これに対して、位置合わせ位相調整量θPを加算した後の受信データSd1e、Sd1oは、図7(d)に示すように、それぞれ+2.5Δφ、−5.5Δφの位相差を持っており、これらの間の位相差をφcとすると、この位相差φcは、φc=+2.5Δφ−(−5.5Δφ)=8Δφとなる。すなわち、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データSd1から算出された位相差φbを、位置合わせ位相調整量θPを加算した位相差φcに変換するには、−符号を+符号に補正する符号反転補正を行なえばよい。他の受信チャネルペアCH2/CH6、CH3/CH7、CH4/CH8で算出される角度情報Iθ2、Iθ3、Iθ4にも、同じ符号反転補正が行なわれ,位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報とされる。
【0088】
この実施の形態2では、D=2.5dとすることにより、アンテナ開口径LをL=8dに拡大することができ、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、角度情報Iθの精度を向上することができる。
【0089】
実施の形態1では、有効測角範囲Rθが、−6.8度≦Rθ≦+6.8度であるが、実施の形態2では、アンテナ開口径Lが、L=8dであり、間隔dを、例えば実用的な値、d=0.6λとすると、L=4.8λとなる。このアンテナ開口径L=4.8λを素子間隔Edとし、位相差φ1を−π≦φ1≦+πとすると、(式5)から、有効測角範囲Rθは、−6.0度≦Rθ≦+6.0度となる。
【0090】
このように実施の形態2では、D=2.5dとすることにより、アンテナ開口径LをL=8dに拡大し、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、より正確な角度情報Iθを得ることができ、併せて、有効角度範囲Rθを、実用的に±6.0度の範囲とすることができる。
【0091】
実施の形態3.
実施の形態2では、係数mを、m=2.5としたが、実施の形態3では、係数mをm=2.7に設定し、これに伴なって位置合わせ係数PがP=16.8とされる。これ以外では、実施の形態3は、実施の形態1と同じに構成される。
【0092】
実施の形態3では、実施の形態1と同様に、信号処理器50が、図4のステップS13において、受信データSdをDFT処理するように構成される。ステップS13において、DFT処理に代わって、FFT処理することが考えられるが、このFFT処理では、係数mが、1/2の整数倍でないと、ステップS4における空間のチャネル方向の受信データ処理を行なうことがでない。実施の形態3では、係数mが2.7であり、これは1/2の整数倍ではないが、信号処理器50がステップS13において、受信データSdをDFT処理することにより、ステップS13における空間のチャネル方向の受信データSdの処理を行なうことができる。
【0093】
図8は、実施の形態3における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す。この図8(a)〜図8(e)は、それぞれ図3(a)〜図3(e)にそれぞれ対応するが、実施の形態3では、係数mが2.7とされたために、具体的な経路差が相違し、また、アンテナの等価配置における仮想送信アンテナT1/T2の間隔が相違する。その他は、図3(a)〜図3(e)と同じである。
【0094】
実施の形態3では、係数mが2.7であり、間隔D=2.7dであるので、受信アンテナR1〜R4は、アンテナの配置ラインA−Aに沿って、送信アンテナT2から、それぞれ間隔5.7d、4.7d、3.7d、2.7dだけ離れているので、送信パルスP2の送信時において、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図8(a)の左側に示すように、送信アンテナT2の等位相面t2からそれぞれ+5.7Δr、+4.7Δr、+3.7Δr、+2.7Δrだけ離れる。
【0095】
送信パルスP1の送信時においても、図8(a)の右側に示すように、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、送信アンテナT2の等電位面t2から、それぞれ+5.7Δr、+4.7Δr、+3.7Δr、+2.7Δrだけ離れる。なお、図8(a)において、送信アンテナT1、T2の等位相面t1、t2の間の経路差は、8.4Δrである。
【0096】
送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における経路差を総合して考えると、図8(b)のようになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図8(b)の左側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+5.7Δr、+4.7Δr、+3.7Δr、+2.7Δrだけ離れる。送信アンテナT2、T1の間の経路差が+8.4Δrであるので、送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図8(b)の右側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+14.1Δr、+13.1Δr、+12.1Δr、+11.1Δrだけ離れる結果となる。
【0097】
図8(b)に示す経路差を位相差に置き換えると、図8(c)に示す通りになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図8(c)の左側に示す通り、送信アンテナT2を基準として、それぞれ−5.7Δφ、−4.7Δφ、−3.7Δφ、−2.7Δφの位相差を持つことになる。送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図8(c)の右側に示す通り、送信アンテナT2を基準としてそれぞれ−14.1Δφ、−13.1Δφ、−12.1Δφ、−11.1Δφの位相差を持つことになる。
【0098】
図8(c)に示す位相差は、送信アンテナT1、T2が、受信アンテナアレイ20の両側にそれぞれ間隔D(D=2.7d)だけ離れて配置された実施の形態3において、送信アンテナT2を基準とした位相差であるが、ここで、実施の形態3において、送信アンテナT1の位置を仮想的に送信アンテナT2の位置に合わせるための、位置合わせ位相調整量θPを考える。実施の形態3において、この位置合わせ位相調整量θPは、+16.8Δφであり、位置合わせ係数P=16.8と位相差Δφを乗算したものである。位置合わせ係数Pは、P=6+4mで求められ、実施の形態3ではm=2.7であるので、位置合わせ係数Pは、+16.8となる。位相調整量θPは、図8(c)の右側に示す送信パルスP1の送信時における各位相差に、それぞれ加算される。図8(c)の左側に示す送信パルスP2の送信時における各位相差には、位相調整量θPは加算されない。この位置合わせ位相調整量θPを送信パルスP1の送信時における各位相差に加算することにより、図8(e)に示すように、2つの送信アンテナT1、T2が、同じ位置に配置された1つの仮想送信アンテナT1/T2に等価される。
【0099】
仮想送信アンテナT1/T2を基準とした場合、図8(e)に示すアンテナの等価配置が得られる。送信パルスP2の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図8(d)の左側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ−5.7Δφ、−4.7Δφ、−3.7Δφ、−2.7Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の左側に、等価的な受信アンテナアレイ20Lを形成する結果になる。また、送信パルスP1の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図8(d)の右側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ+2.7Δφ、+3.7Δφ、+4.7Δφ、+5.7Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の右側に、等価的な受信アンテナアレイ20Rを形成する結果になる。
【0100】
等価的な受信アンテナアレイ20Lは、送信アンテナT2から送信される送信パルスP2に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Lの受信アンテナR1〜R4は、図8(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH1〜CH4を形成する。これらの受信チャネルCH1〜CH4は、奇数アドレス受信データSdoに対応し、受信チャネルCH1〜CH4では、それぞれ奇数アドレス受信データSdoの受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oがそれぞれ得られる。
【0101】
等価的な受信アンテナアレイ20Rは、送信アンテナT1から送信される送信パルスP1に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Rの受信アンテナR1〜R4は、図8(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH5〜CH8を形成する。これらの受信チャネルCH5〜CH8は、偶数アドレス受信データSdeに対応し、受信チャネルCH5〜CH8では、それぞれ偶数アドレス受信データSdeの受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eがそれぞれ得られる。
【0102】
実施の形態3でも、図4のステップS16において、ステップS12の出力、すなわちステップS13でDBF処理を受ける前の偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに基づいて、角度情報Iθ1〜Iθ4が算出されるので、この角度情報Iθ1〜Iθ4を、位置合わせ位相調整量θPを加算した角度情報に変換するため、角度情報Iθ1〜Iθ4に、符号反転補正が行なわれる。
【0103】
実施の形態3において、角度情報Iθ1〜Iθ4に単に符号反転補正を行なうだけで、角度情報Iθ1〜Iθ4が、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報に変換される理由について、例えば受信チャネルペアCH1/CH5の間で角度情報Iθ1を算出する場合を例にして説明する。偶数アドレス受信データSd1eは受信チャネルCH5で得られ、また奇数アドレス受信データSd1oは受信チャネルCH1で得られるが、これらの受信データSd1e、Sd1oは、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データであり、位置合わせ位相調整量θPが加算されておらず、図8(c)に示すように、それぞれ−14.1Δφ、−5.7Δφの位相差を持つ。これらの受信データSd1e、Sd1oの間の位相差をφbとすると、この位相差φbは、φb=−14.1Δφ−(−5.7Δφ)=−8.4Δφとなる。これに対して、位置合わせ位相調整量θPを加算した後の受信データSd1e、Sd1oは、図8(d)に示すように、それぞれ+2.7Δφ、−5.7Δφの位相差を持っており、これらの間の位相差をφcとすると、この位相差φcは、φc=+2.7Δφ−(−5.7Δφ)=8.4Δφとなる。すなわち、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データSd1から算出された位相差φbを、位置合わせ位相調整量θPを加算した位相差φaに変換するには、−符号を+符号に補正する符号反転補正を行なえばよい。他の受信チャネルペアCH2/CH6、CH3/CH7、CH4/CH8で算出される角度情報Iθ2、Iθ3、Iθ4にも、同じ符号反転補正が行なわれ、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報とされる。
【0104】
この実施の形態3では、D=2.7dとすることにより、アンテナ開口径LをL=8.4dに拡大することができ、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、角度情報Iθの精度を向上することができる。
【0105】
実施の形態2では、有効測角範囲Rθが、−6.0度≦Rθ≦+6.0度であるが、実施の形態3では、アンテナ開口径Lが、L=8.4dであり、間隔dを、例えば実用的な値、d=0.6λとすると、L=5.04λとなる。このアンテナ開口径L=5.04λを素子間隔Edとし、位相差φ1を−π≦φ1≦+πとすると、(式5)から、有効測角範囲Rθは、−5.7度≦Rθ≦+5.7度となる。
【0106】
このように実施の形態3では、D=2.7dとすることにより、アンテナ開口径LをL=8.4dに拡大し、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、より正確な角度情報Iθを得ることができ、併せて、有効角度範囲Rθを、実用的に±5.7度の範囲とすることができる。
【0107】
実施の形態4.
実施の形態3では、係数mを、m=2.7としたが、実施の形態4では、m=3.2に設定し、これに伴なって位置合わせ係数PがP=18.8とされる。これ以外では、実施の形態4は、実施の形態1と同じに構成される。
【0108】
実施の形態4では、実施の形態1と同様に、信号処理器50が、図4のステップS13において、受信データSdをDFT処理するように構成される。ステップS13において、DFT処理に代わって、FFT処理とすることが考えられるが、このFFT処理では、係数mが、1/2の整数倍でないと、ステップS4における空間のチャネル方向の受信データ処理を行なうことがでない。実施の形態4では、係数mが3.2であり、これは1/2の整数倍ではないが、信号処理器50が、ステップS13において、受信データSdをDFT処理することにより、ステップS13における空間のチャネル方向の受信データSdの処理を行なうことができる。
【0109】
図9は、実施の形態4における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す。この図9(a)〜図9(e)は、それぞれ図3(a)〜図3(e)にそれぞれ対応するが、実施の形態4では、係数mが3.2とされたために、具体的な経路差が相違し、また、アンテナの等価配置における仮想送信アンテナT1/T2の間隔が相違する。その他は、図3(a)〜図3(e)と同じである。
【0110】
実施の形態4では、係数mが3.2であり、間隔D=3.2dであるので、受信アンテナR1〜R4は、アンテナの配置ラインA−Aに沿って、送信アンテナT2から、それぞれ間隔6.2d、5.2d、4.2d、3.2dだけ離れている。したがって、送信パルスP2の送信時において、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図9(a)の左側に示すように、送信アンテナT2の等位相面t2から、それぞれ+6.2Δr、+5.2Δr、+4.2Δr、+3.2Δrだけ離れる。
【0111】
送信パルスP1の送信時においても、図9(a)の右側に示すように、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、送信アンテナT2の等電位面t2から、それぞれ+6.2Δr、+5.2Δr、+4.2Δr、+3.2Δrだけ離れる。なお、図9(a)において、送信アンテナT1、T2の等位相面t1、t2の間の経路差は、9.4Δrである。
【0112】
送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における経路差を総合して考えると、図9(b)のようになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図9(b)の左側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+6.2Δr、+5.2Δr、+4.2Δr、+3.2Δrだけ離れる。送信アンテナT2、T1の間の経路差が+9.4Δrであるので、送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図9(b)の右側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+15.6Δr、+14.6Δr、+13.6Δr、+12.6Δrだけ離れる結果となる。
【0113】
図9(b)に示す経路差を位相差に置き換えると、図9(c)に示す通りになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図9(c)の左側に示す通り、送信アンテナT2を基準として、それぞれ−6.2Δφ、−5.2Δφ、−4.2Δφ、−3.2Δφの位相差を持つことになる。送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図9(c)の右側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−15.6Δφ、−14.6Δφ、−13.6Δφ、−12.6Δφの位相差を持つことになる。
【0114】
図9(c)に示す位相差は、送信アンテナT1、T2が、受信アンテナアレイ20の両側にそれぞれ間隔D(D=3.2d)だけ離れて配置された実施の形態4において、送信アンテナT2を基準とした位相差であるが、ここで、実施の形態4において、送信アンテナT1の位置を仮想的に送信アンテナT2の位置に合わせるための、位置合わせ位相調整量θPを考える。実施の形態4において、この位置合わせ位相調整量θPは、+18.8Δφであり、位置合わせ係数P=18.8と位相差Δφを乗算したものである。位置合わせ係数Pは、P=6+4mで求められ、実施の形態4ではm=3.2であるので、位置合わせ係数Pは18.8となる。位相調整量θPは、図9(c)の右側に示す送信パルスP1の送信時における各位相差に、それぞれ加算される。図9(c)の左側に示す送信パルスP2の送信時における各位相差には、位相調整量θPは加算されない。この位置合わせ位相調整量θPを送信パルスP1の送信時における各位相差に加算することにより、図9(e)に示すように、2つの送信アンテナT1、T2が、同じ位置に配置された1つの仮想送信アンテナT1/T2に等価される。
【0115】
仮想送信アンテナT1/T2を基準とした場合、図9(e)に示すアンテナの等価配置が得られる。送信パルスP2の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図9(d)の左側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ−6.2Δφ、−5.2Δφ、−4.2Δφ、−3.2Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の左側に、等価的な受信アンテナアレイ20Lを形成する結果になる。また、送信パルスP1の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図9(d)の右側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ+3.2Δφ、+4.2Δφ、+5.2Δφ、+6.2Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の右側に、等価的な受信アンテナアレイ20Rを形成する結果になる。
【0116】
等価的な受信アンテナアレイ20Lは、送信アンテナT2から送信される送信パルスP2に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Lの受信アンテナR1〜R4は、図9(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH1〜CH4を形成する。これらの受信チャネルCH1〜CH4は、奇数アドレス受信データSdoに対応し、受信チャネルCH1〜CH4では、それぞれ奇数アドレス受信データSdoの受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oがそれぞれ得られる。
【0117】
等価的な受信アンテナアレイ20Rは、送信アンテナT1から送信される送信パルスP1に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Rの受信アンテナR1〜R4は、図9(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH5〜CH8を形成する。これらの受信チャネルCH5〜CH8は、偶数アドレス受信データSdeに対応し、受信チャネルCH5〜CH8では、それぞれ偶数アドレス受信データSdeの受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eがそれぞれ得られる。
【0118】
実施の形態4でも、図4のステップS16において、ステップS12の出力、すなわちステップS13でDBF処理を受ける前の偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに基づいて、角度情報Iθ1〜Iθ4が算出されるので、この角度情報Iθ1〜Iθ4を、位置合わせ位相調整量θPを加算した角度情報に変換するため、角度情報Iθ1〜Iθ4に、符号反転補正が行なわれる。
【0119】
実施の形態4において、角度情報Iθ1〜Iθ4に単に符号反転補正を行なうだけで、角度情報Iθ1〜Iθ4が、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報に変換される理由について、例えば受信チャネルペアCH1/CH5の間で角度情報Iθ1を算出する場合を例にして説明する。偶数アドレス受信データSd1eは受信チャネルCH5で得られ、また奇数アドレス受信データSd1oは受信チャネルCH1で得られるが、これらの受信データSd1e、Sd1oは、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データであり、位置合わせ位相調整量θPが加算されておらず、図9(c)に示すように、それぞれ−15.6Δφ、−6.2Δφの位相差を持つ。これらの受信データSd1e、Sd1oの間の位相差をφbとすると、この位相差φbは、φb=−15.6Δφ−(−6.2Δφ)=−9.4Δφとなる。これに対して、位置合わせ位相調整量θPを加算した後の受信データSd1e、Sd1oは、図9(d)に示すように、それぞれ+3.2Δφ、−6.2Δφの位相差を持っており、これらの間の位相差をφcとすると、この位相差φcは、φc=+3.2Δφ−(−6.2Δφ)=9.4Δφとなる。すなわち、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データSd1から算出された位相差φbを、位置合わせ位相調整量θPを加算した位相差φcに変換するには、−符号を+符号に補正する符号反転補正を行なえばよい。他の受信チャネルペアCH2/CH6、CH3/CH7、CH4/CH8で算出される角度情報Iθ2、Iθ3、Iθ4にも、同じ符号反転補正が行なわれ、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報とされる。
【0120】
この実施の形態4では、D=3.2dにすることにより、アンテナ開口径LをL=9.4dに拡大することができ、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、角度情報Iθの精度を向上することができる。
【0121】
実施の形態3では、有効測角範囲Rθが、−5.7度≦Rθ≦+5.7度であるが、実施の形態4では、アンテナ開口径Lが、L=9.4dであり、間隔dを、例えば実用的な値、d=0.6λとすると、L=5.64λとなる。このアンテナ開口径L=5.64λを素子間隔Edとし、位相差φ1を−π≦φ1≦+πとすると、(式5)から、有効測角範囲Rθは、−5.1度≦Rθ≦+5.1度となる。
【0122】
このように実施の形態4では、D=3.2dとすることにより、アンテナ開口径LをL=9.4dに拡大し、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、より正確な角度情報Iθを得ることができ、併せて、有効角度範囲Rθを、実用的に±5.1度の範囲とすることができる。
【0123】
実施の形態5.
実施の形態4では、係数mを、m=3.2としたが、実施の形態5では、係数mをm=3.5に設定し、これに伴って位置合わせ係数PがP=20.0とされる。これ以外では、実施の形態5は、実施の形態1と同じに構成される。
【0124】
図10は、実施の形態5における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す。この図10(a)〜図10(e)は、それぞれ図3(a)〜図3(e)にそれぞれ対応するが、実施の形態5では、係数mが3.5とされたために、具体的な経路差が相違し、また、アンテナの等価配置における仮想送信アンテナT1/T2の間隔が相違する。その他は、図3(a)〜図3(e)と同じである。
【0125】
実施の形態5では、係数mが3.5であり、間隔D=3.5dであるので、受信アンテナR1〜R4は、アンテナの配置ラインA−Aに沿って、送信アンテナT2から、それぞれ間隔6.5d、5.5d、4.5d、3.5dだけ離れている。したがって、送信パルスP2の送信時において、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図10(a)の左側に示すように、送信アンテナT2の等位相面t2から、それぞれ+6.5Δr、+5.5Δr、+4.5Δr、+3.5Δrだけ離れる。
【0126】
送信パルスP1の送信時においても、図10(a)の右側に示すように、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、送信アンテナT2の等電位面t2から、それぞれ+6.5Δr、+5.5Δr、+4.5Δr、+3.5Δrだけ離れる。なお、図10(a)において、送信アンテナT1、T2の等位相面t1、t2の間の経路差は、+10.0Δrである。
【0127】
送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における経路差を総合して考えると、図10(b)のようになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図10(b)の左側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+6.5Δr、+5.5Δr、+4.5Δr、+3.5Δrだけ離れる。送信アンテナT2、T1の間の経路差が+10.0Δrであるので、送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図10(b)の右側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+16.5Δr、+15.5Δr、+14.5Δr、+13.5Δrだけ離れる結果となる。
【0128】
図10(b)に示す経路差を位相差に置き換えると、図10(c)に示す通りになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図10(c)の左側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−6.5Δφ、−5.5Δφ、−4.5Δφ、−3.5Δφの位相差を持つことになる。送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図10(c)の右側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−16.5Δφ、−15.5Δφ、−14.5Δφ、−13.5Δφの位相差を持つことになる。
【0129】
図10(c)に示す位相差は、送信アンテナT1、T2が、受信アンテナアレイ20の両側にそれぞれ間隔D(D=3.5d)だけ離れて配置された実施の形態5において、送信アンテナT2を基準とした位相差であるが、ここで、実施の形態5において、送信アンテナT1の位置を仮想的に送信アンテナT2の位置に合わせるための、位置合わせ位相調整量θPを考える。実施の形態5において、この位置合わせ位相調整量θPは、+20.0Δφであり、位置合わせ係数P=20.0と位相差Δφを乗算したものである。位置合わせ係数Pは、P=6+4mで求められ、実施の形態5ではm=3.5であるので、位置合わせ係数Pは+20.0となる。位相調整量θPは、図10(c)の右側に示す送信パルスP1の送信時における各位相差に、それぞれ加算される。図10(c)の左側に示す送信パルスP2の送信時における各位相差には、位相調整量θPは加算されない。この位置合わせ位相調整量θPを送信パルスP1の送信時における各位相差に加算することにより、図10(e)に示すように、2つの送信アンテナT1、T2が、同じ位置に配置された1つの仮想送信アンテナT1/T2に等価される。
【0130】
仮想送信アンテナT1/T2を基準とした場合、図10(e)に示すアンテナの等価配置が得られる。送信パルスP2の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図10(d)の左側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ−6.5Δφ、−5.5Δφ、−4.5Δφ、−3.5Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の左側に、等価的な受信アンテナアレイ20Lを形成する結果になる。また、送信パルスP1の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図10(d)の右側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準にして、それぞれ+3.5Δφ、+4.5Δφ、+5.5Δφ、+6.5Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の右側に、等価的な受信アンテナアレイ20Rを形成する結果になる。
【0131】
等価的な受信アンテナアレイ20Lは、送信アンテナT2から送信される送信パルスP2に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Lの受信アンテナR1〜R4は、図10(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH1〜CH4を形成する。これらの受信チャネルCH1〜CH4は、奇数アドレス受信データSdoに対応し、受信チャネルCH1〜CH4では、それぞれ奇数アドレス受信データSdoの受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oがそれぞれ得られる。
【0132】
等価的な受信アンテナアレイ20Rは、送信アンテナT1から送信される送信パルスP1に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Rの受信アンテナR1〜R4は、図10(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH5〜CH8を形成する。これらの受信チャネルCH5〜CH8は、偶数アドレス受信データSdeに対応し、受信チャネルCH5〜CH8では、それぞれ偶数アドレス受信データSdeの受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eがそれぞれ得られる。
【0133】
実施の形態5でも、図4のステップS16において、ステップS12の出力、すなわちステップS13でDBF処理を受ける前の偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに基づいて、角度情報Iθ1〜Iθ4が算出されるので、この角度情報Iθ1〜Iθ4を、位置合わせ位相調整量θPを加算した角度情報に変換するため、角度情報Iθ1〜Iθ4に、符号反転補正が行なわれる。
【0134】
実施の形態5において、角度情報Iθ1〜Iθ4に単に符号反転補正を行なうだけで、角度情報Iθ1〜Iθ4が、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報に変換される理由について、例えば受信チャネルペアCH1/CH5の間で角度情報Iθ1を算出する場合を例にして説明する。偶数アドレス受信データSd1eは受信チャネルCH5で得られ、また奇数アドレス受信データSd1oは受信チャネルCH1で得られるが、これらの受信データSd1e、Sd1oは、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データであり、位置合わせ位相調整量θPが加算されておらず、図10(c)に示すように、それぞれ−16.5Δφ、−6.5Δφの位相差を持つ。これらの受信データSd1e、Sd1oの間の位相差をφbとすると、この位相差φbは、φb=−16.5Δφ−(−6.5Δφ)=−10.0Δφとなる。これに対して、位置合わせ位相調整量θPを加算した後の受信データSd1e、Sd1oは、図10(d)に示すように、それぞれ+3.5Δφ、−6.5Δφの位相差を持っており、これらの間の位相差をφcとすると、この位相差φcは、φc=+3.5Δφ−(−6.5Δφ)=10.0Δφとなる。すなわち、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データSd1から算出された位相差φbを、位置合わせ位相調整量θPを加算した位相差φcに変換するには、−符号を+符号に補正する符号反転補正を行なえばよい。他の受信チャネルペアCH2/CH6、CH3/CH7、CH4/CH8で算出される角度情報Iθ2、Iθ3、Iθ4にも、同じ符号反転補正が行なわれ、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報とされる。
【0135】
この実施の形態5では、D=3.5dとすることにより、アンテナ開口径LをL=10.0dに拡大することができ、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、角度情報Iθの精度を向上することができる。
【0136】
実施の形態4では、有効測角範囲Rθが、−5.1度≦Rθ≦+5.1度であるが、実施の形態5では、アンテナ開口径Lが、L=10.0dであり、間隔dを、例えば実用的な値、d=0.6λとすると、L=6.0λとなる。このアンテナ開口径L=6.0λを素子間隔Edとし、位相差φ1を−π≦φ1≦+πとすると、(式5)から、有効測角範囲Rθは、−4.8度≦Rθ≦+4.8度となる。
【0137】
このように実施の形態5では、D=3.5dとすることにより、アンテナ開口径LをL=10.0dに拡大し、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、より正確な角度情報Iθを得ることができ、併せて、有効角度範囲Rθを、実用的に±4.8度の範囲とすることができる。
【0138】
実施の形態6.
実施の形態5では、係数mを、m=3.5としたが、実施の形態6では、m=3.8に設定し、これに伴なって位置合わせ係数PがP=21.2とされる。これ以外では、実施の形態6は、実施の形態1と同じに構成される。
【0139】
実施の形態6では、実施の形態1と同様に、信号処理器50が、図4のステップS13において、受信データSdをDFT処理するように構成される。DFT処理に代わって、FFT処理することが考えられるが、このFFT処理では、係数mが、1/2の整数倍でないと、ステップS13における空間のチャネル方向の受信データ処理を行なうことがでない。実施の形態6では、係数mが3.8であり、これは1/2の整数倍ではないが、信号処理器50が、ステップS13において、受信データSdをDFT処理することにより、ステップS13における空間のチャネル方向の受信データSdの処理を行なうことができる。
【0140】
図11は、実施の形態6における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す。この図11(a)〜図11(e)は、それぞれ図3(a)〜図3(e)にそれぞれ対応するが、実施の形態6では、係数mが3.8とされたために、具体的な経路差が相違し、また、アンテナの等価配置における仮想送信アンテナT1/T2の間隔が相違する。その他は、図3(a)〜図3(e)と同じである。
【0141】
実施の形態6では、係数mが3.8であり、間隔D=3.8dであるので、受信アンテナR1〜R4は、アンテナの配置ラインA−Aに沿って、送信アンテナT2から、それぞれ間隔6.8d、5.8d、4.8d、3.8dだけ離れている。したがって、送信パルスP2の送信時において、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図11(a)の左側に示すように、送信アンテナT2の等位相面t2からそれぞれ+6.8Δr、+5.8Δr、+4.8Δr、+3.8Δrだけ離れる。
【0142】
送信パルスP1の送信時においても、図11(a)の右側に示すように、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、送信アンテナT2の等電位面t2から、それぞれ+6.8Δr、+5.8Δr、+4.8Δr、+3.8Δrだけ離れる。なお、図11(a)において、送信アンテナT1、T2の等位相面t1,t2の間の経路差は、+10.6Δrである。
【0143】
送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における経路差を総合して考えると、図11(b)のようになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図11(b)の左側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+6.8Δr、+5.8Δr、+4.8Δr、+3.8Δrだけ離れる。送信アンテナT2、T1の間の経路差が+10.6Δrであるので、送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図11(b)の右側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+17.4Δr、+16.4Δr、+15.4Δr、+14.4Δrだけ離れる結果となる。
【0144】
図11(b)に示す経路差を位相差に置き換えると、図11(c)に示す通りになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図11(c)の左側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−6.8Δφ、−5.8Δφ、−4.8Δφ、−3.8Δφの位相差を持つことになる。送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図11(c)の右側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−17.4Δφ、−16.4Δφ、−15.4Δφ、−14.4Δφの位相差を持つことになる。
【0145】
図11(c)に示す位相差は、送信アンテナT1、T2が、受信アンテナアレイ20の両側にそれぞれ間隔D(D=3.8d)だけ離れて配置された実施の形態6において、送信アンテナT2を基準とした位相差であるが、ここで、実施の形態6において、送信アンテナT1の位置を仮想的に送信アンテナT2の位置に合わせるための、位置合わせ位相調整量θPを考える。実施の形態6において、この位置合わせ位相調整量θPは、+21.2Δφであり、位置合わせ係数P=21.2と位相差Δφを乗算したものである。位置合わせ係数Pは、P=6+4mで求められ、実施の形態6ではm=3.8であるので、位置合わせ係数Pは+21.2となる。位相調整量θPは、図11(c)の右側に示す送信パルスP1の送信時における各位相差に、それぞれ加算される。図11(c)の左側に示す送信パルスP2の送信時における各位相差には、位相調整量θPは加算されない。この位置合わせ位相調整量θPを送信パルスP1の送信時における各位相差に加算することにより、図11(e)に示すように、2つの送信アンテナT1、T2が、同じ位置に配置された1つの仮想送信アンテナT1/T2に等価される。
【0146】
仮想送信アンテナT1/T2を基準とした場合、図11(e)に示すアンテナの等価配置が得られる。送信パルスP2の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図11(d)の左側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ−6.8Δφ、−5.8Δφ、−4.8Δφ、−3.8Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の左側に、等価的な受信アンテナアレイ20Lを形成する結果になる。また、送信パルスP1の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図11(d)の右側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準にして、それぞれ+3.8Δφ、+4.8Δφ、+5.8Δφ、+6.8Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の右側に、等価的な受信アンテナアレイ20Rを形成する結果になる。
【0147】
等価的な受信アンテナアレイ20Lは、送信アンテナT2から送信される送信パルスP2に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Lの受信アンテナR1〜R4は、図11(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH1〜CH4を形成する。これらの受信チャネルCH1〜CH4は、奇数アドレス受信データSdoに対応し、受信チャネルCH1〜CH4では、それぞれ奇数アドレス受信データSdoの受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oがそれぞれ得られる。
【0148】
等価的な受信アンテナアレイ20Rは、送信アンテナT1から送信される送信パルスP1に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Rの受信アンテナR1〜R4は、図11(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH5〜CH8を形成する。これらの受信チャネルCH5〜CH8は、偶数アドレス受信データSdeに対応し、受信チャネルCH5〜CH8では、それぞれ偶数アドレス受信データSdeの受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eがそれぞれ得られる。
【0149】
実施の形態6でも、図4のステップS16において、ステップS12の出力、すなわちステップS13でDBF処理を受ける前の偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに基づいて、角度情報Iθ1〜Iθ4が算出されるので、この角度情報Iθ1〜Iθ4を、位置合わせ位相調整量θPを加算した角度情報に変換するため、角度情報Iθ1〜Iθ4に、符号反転補正が行なわれる。
【0150】
実施の形態6において、角度情報Iθ1〜Iθ4に単に符号反転補正を行なうだけで、角度情報Iθ1〜Iθ4が、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報に変換される理由について、例えば受信チャネルペアCH1/CH5の間で角度情報Iθ1を算出する場合を例にして説明する。偶数アドレス受信データSd1eは受信チャネルCH5で得られ、また奇数アドレス受信データSd1oは受信チャネルCH1で得られるが、これらの受信データSd1e、Sd1oは、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データであり、位置合わせ位相調整量θPが加算されておらず、図11(c)に示すように、それぞれ−17.4Δφ、−6.8Δφの位相差を持つ。これらの受信データSd1e、Sd1oの間の位相差をφbとすると、この位相差φbは、φb=−17.4Δφ−(−6.8Δφ)=−10.6Δφとなる。これに対して、位置合わせ位相調整量θPを加算した後の受信データSd1e、Sd1oは、図11(d)に示すように、それぞれ+3.8Δφ、−6.8Δφの位相差を持っており、これらの間の位相差をφcとすると、この位相差φcは、φc=+3.8Δφ−(−6.8Δφ)=10.6Δφとなる。すなわち、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データSd1から算出された位相差φbを、位置合わせ位相調整量θPを加算した位相差φcに変換するには、−符号を+符号に補正する符号反転補正を行なえばよい。他の受信チャネルペアCH2/CH6、CH3/CH7、CH4/CH8で算出される角度情報Iθ2、Iθ3、Iθ4にも、同じ符号反転補正が行なわれ、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報とされる。
【0151】
この実施の形態6では、D=3.8dとすることにより、アンテナ開口径LをL=10.6dに拡大することができ、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、角度情報Iθの精度を向上することができる。
【0152】
実施の形態5では、有効測角範囲Rθが、−4.8度≦Rθ≦+4.8度であるが、実施の形態6では、アンテナ開口径Lが、L=10.6dであり、間隔dを、例えば実用的な値、d=0.6λとすると、L=6.36λとなる。このアンテナ開口径L=6.36λを素子間隔Edとし、位相差φ1を−π≦φ1≦+πとすると、(式5)から、有効測角範囲Rθは、−4.5度≦Rθ≦+4.5度となる。
【0153】
このように実施の形態6では、D=3.8dとすることにより、アンテナ開口径LをL=10.6dに拡大し、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、より正確な角度情報Iθを得ることができ、併せて、有効角度範囲Rθを、実用的に±4.5度の範囲とすることができる。
【0154】
実施の形態7.
実施の形態6では、係数mを、m=3.8としたが、実施の形態7では、係数mをm=4.5に設定し、これに伴なって位置合わせ係数PがP=+24.0とされる。これ以外では、実施の形態7は、実施の形態1と同じに構成される。
【0155】
図12は、実施の形態7における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す。この図12(a)〜図12(e)は、それぞれ図3(a)〜図3(e)にそれぞれ対応するが、実施の形態7では、係数mが4.5とされたために、具体的な経路差が相違し、また、アンテナの等価配置における仮想送信アンテナT1/T2の間隔が相違する。その他は、図3(a)〜図3(e)と同じである。
【0156】
実施の形態7では、係数mが4.5であり、間隔D=4.5dであるので、受信アンテナR1〜R4は、アンテナの配置ラインA−Aに沿って、送信アンテナT2から、それぞれ間隔7.5d、6.5d、5.5d、4.5dだけ離れている。したがって、送信パルスP2の送信時において、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図12(a)の左側に示すように、送信アンテナT2の等位相面t2からそれぞれ+7.5Δr、+6.5Δr、+5.5Δr、+4.5Δrだけ離れる。
【0157】
送信パルスP1の送信時においても、図12(a)の右側に示すように、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、送信アンテナT2の等電位面t2から、それぞれ+7.5Δr、+6.5Δr、+5.5Δr、+4.5Δrだけ離れる。なお、図12(a)において、送信アンテナT1、T2の等位相面t1、t2の間の経路差は、+12.0Δrである。
【0158】
送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における経路差を総合して考えると、図12(b)のようになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図12(b)の左側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+7.5Δr、+6.5Δr、+5.5Δr、+4.5Δrだけ離れる。送信アンテナT2、T1の間経路差が+12.0Δrであるので、送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図12(b)の右側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+19.5Δr、+18.5Δr、+17.5Δr、+16.5Δrだけ離れる結果となる。
【0159】
図12(b)に示す経路差を位相差に置き換えると、図12(c)に示す通りになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図12(c)の左側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−7.5Δφ、−6.5Δφ、−5.5Δφ、−4.5Δφの位相差を持つことになる。送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図12(c)の右側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−19.5Δφ、−18.5Δφ、−17.5Δφ、−16.5Δφの位相差を持つことになる。
【0160】
図12(c)に示す位相差は、送信アンテナT1、T2が、受信アンテナアレイ20の両側にそれぞれ間隔D(D=4.5d)だけ離れて配置された実施の形態7において、送信アンテナT2を基準とした位相差であるが、ここで、実施の形態7において、送信アンテナT1の位置を仮想的に送信アンテナT2の位置に合わせるための、位置合わせ位相調整量θPを考える。実施の形態7において、この位置合わせ位相調整量θPは、+24.0Δφであり、位置合わせ係数P=24.0と位相差Δφを乗算したものである。位置合わせ係数Pは、P=6+4mで求められ、実施の形態7ではm=4.5であるので、位置合わせ係数Pは24.0となる。位相調整量θPは、図12(c)の右側に示す送信パルスP1の送信時における各位相差に、それぞれ加算される。図12(c)の左側に示す送信パルスP2の送信時における各位相差には、位相調整量θPは加算されない。この位置合わせ位相調整量θPを送信パルスP1の送信時における各位相差に加算することにより、図12(e)に示すように、2つの送信アンテナT1、T2が、同じ位置に配置された1つの仮想送信アンテナT1/T2に等価される。
【0161】
仮想送信アンテナT1/T2を基準とした場合、図12(e)に示すアンテナの等価配置が得られる。送信パルスP2の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図12(d)の左側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ−7.5Δφ、−6.5Δφ、−5.5Δφ、−4.5Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の左側に、等価的な受信アンテナアレイ20Lを形成する結果になる。また、送信パルスP1の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図12(d)の右側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準にして、それぞれ+4.5Δφ、+5.5Δφ、+6.5Δφ、+7.5Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の右側に、等価的な受信アンテナアレイ20Rを形成する結果になる。
【0162】
等価的な受信アンテナアレイ20Lは、送信アンテナT2から送信される送信パルスP2に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Lの受信アンテナR1〜R4は、図12(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH1〜CH4を形成する。これらの受信チャネルCH1〜CH4は、奇数アドレス受信データSdoに対応し、受信チャネルCH1〜CH4では、それぞれ奇数アドレス受信データSdoの受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oがそれぞれ得られる。
【0163】
等価的な受信アンテナアレイ20Rは、送信アンテナT1から送信される送信パルスP1に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Rの受信アンテナR1〜R4は、図12(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH5〜CH8を形成する。これらの受信チャネルCH5〜CH8は、偶数アドレス受信データSdeに対応し、受信チャネルCH5〜CH8では、それぞれ偶数アドレス受信データSdeの受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eがそれぞれ得られる。
【0164】
実施の形態7でも、図4のステップS16において、ステップS12の出力、すなわちステップS13でDBF処理を受ける前の偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに基づいて、角度情報Iθ1〜Iθ4が算出されるので、この角度情報Iθ1〜Iθ4を、位置合わせ位相調整量θPを加算した角度情報に変換するため、角度情報Iθ1〜Iθ4に、符号反転補正が行なわれる。
【0165】
実施の形態7において、角度情報Iθ1〜Iθ4に単に符号反転補正を行なうだけで、角度情報Iθ1〜Iθ4が、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報に変換される理由について、例えば受信チャネルペアCH1/CH5の間で角度情報Iθ1を算出する場合を例にして説明する。偶数アドレス受信データSd1eは受信チャネルCH5で得られ、また奇数アドレス受信データSd1oは受信チャネルCH1で得られるが、これらの受信データSd1e、Sd1oは、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データであり、位置合わせ位相調整量θPが加算されておらず、図12(c)に示すように、それぞれ−19.5Δφ、−7.5Δφの位相差を持つ。これらの受信データSd1e、Sd1oの間の位相差をφbとすると、この位相差φbは、φb=−19.5Δφ−(−7.5Δφ)=−12.0Δφとなる。これに対して、位置合わせ位相調整量θPを加算した後の受信データSd1e、Sd1oは、図12(d)に示すように、それぞれ+4.5Δφ、−7.5Δφの位相差を持っており、これらの間の位相差をφcとすると、この位相差φcは、φc=+4.5Δφ−(−7.5Δφ)=12.0Δφとなる。すなわち、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データSd1から算出された位相差φbを、位置合わせ位相調整量θPを加算した位相差φaに変換するには、−符号を+符号に補正する符号反転補正を行なえばよい。他の受信チャネルペアCH2/CH6、CH3/CH7、CH4/CH8で算出される角度情報Iθ2、Iθ3、Iθ4にも、同じ符号反転補正が行なわれ、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報とされる。
【0166】
この実施の形態7では、D=4.5dとすることにより、アンテナ開口径LをL=12.0dに拡大することができ、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、角度情報Iθの精度を向上することができる。
【0167】
実施の形態6では、有効測角範囲Rθが、−4.5度≦Rθ≦+4.5度であるが、これに対し、実施の形態7では、アンテナ開口径Lが、L=12.0dであり、間隔dを、例えば実用的な値、d=0.6λとすると、L=7.2λとなる。このアンテナ開口径L=7.2λを素子間隔Edとし、位相差φ1を−π≦φ1≦+πとすると、(式5)から、有効測角範囲Rθは、−4.0度≦Rθ≦+4.0度となる。
【0168】
このように実施の形態7では、D=4.5dとすることにより、アンテナ開口径LをL=12.0dに拡大し、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、より正確な角度情報Iθを得ることができ、併せて、有効角度範囲Rθを、実用的に±4.0度の範囲とすることができる。
【0169】
実施の形態8.
実施の形態7では、係数mを、m=4.5としたが、実施の形態8では、係数mをm=6.0に設定し、これに伴なって位置合わせ係数PがP=30.0とされる。これ以外では、実施の形態8は、実施の形態1と同じに構成される。
【0170】
図13は、実施の形態8における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す。この図13(a)〜図13(e)は、それぞれ図3(a)〜図3(e)にそれぞれ対応するが、実施の形態8では、係数mが6.0とされたために、具体的な経路差が相違し、また、アンテナの等価配置における仮想送信アンテナT1/T2の間隔が相違する。その他は、図3(a)〜図3(e)と同じである。
【0171】
実施の形態8では、係数mが6.0であり、間隔D=6.0dであるので、受信アンテナR1〜R4は、アンテナの配置ラインA−Aの沿って、送信アンテナT2から、それぞれ間隔9.0d、8.0d、7.0d、6.0dだけ離れている。したがって、送信パルスP2の送信時において、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図13(a)の左側に示すように、送信アンテナT2の等位相面t2から、それぞれ+9.0Δr、+8.0Δr、+7.0Δr、+6.0Δrだけ離れる。
【0172】
送信パルスP1の送信時においても、図13(a)の右側に示すように、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、送信アンテナT2の等電位面t2から、それぞれ+9.0Δr、+8.0Δr、+7.0Δr、+6.0Δrだけ離れる。なお、図13(a)において、送信アンテナT1、T2の等位相面t1、t2の間の経路差は、+15.0Δrである。
【0173】
送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における経路差を総合して考えると、図13(b)のようになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図13(b)の左側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+9.0Δr、+8.0Δr、+7.0Δr、+6.0Δrだけ離れる。送信アンテナT2、T1の等位相面t1、t2の間の経路差が+15.0Δrであるので、送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図13(b)の右側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+24.0Δr、+23.0Δr、+22.0Δr、+21.0Δrだけ離れる結果となる。
【0174】
図13(b)に示す経路差を位相差に置き換えると、図13(c)に示す通りになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図13(c)の左側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−9.0Δφ、−8.0Δφ、−7.0Δφ、−6.0Δφの位相差を持つことになる。送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図13(c)の右側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−24.0Δφ、−23.0Δφ、−22.0Δφ、−21.0Δφの位相差を持つことになる。
【0175】
図13(c)に示す位相差は、送信アンテナT1、T2が、受信アンテナアレイ20の両側にそれぞれ間隔D(D=6.0d)だけ離れて配置された実施の形態8において、送信アンテナT2を基準とした位相差であるが、ここで、実施の形態8において、送信アンテナT1の位置を仮想的に送信アンテナT2の位置に合わせるための、位置合わせ位相調整量θPを考える。実施の形態8において、この位置合わせ位相調整量θPは、+30.0Δφであり、位置合わせ係数P=+30.0と位相差Δφを乗算したものである。位置合わせ係数Pは、P=6+4mで求められ、実施の形態8ではm=6.0であるので、位置合わせ係数Pは+30.0となる。位相調整量θPは、図13(c)の右側に示す送信パルスP1の送信時における各位相差に、それぞれ加算される。図13(c)の左側に示す送信パルスP2の送信時における各位相差には、位相調整量θPは加算されない。この位置合わせ位相調整量θPを送信パルスP1の送信時における各位相差に加算することにより、図13(e)に示すように、2つの送信アンテナT1、T2が、同じ位置に配置された1つの仮想送信アンテナT1/T2に等価される。
【0176】
仮想送信アンテナT1/T2を基準とした場合、図13(e)に示すアンテナの等価配置が得られる。送信パルスP2の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図13(d)の左側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ−9.0Δφ、−8.0Δφ、−7.0Δφ、−6.0Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の左側に、等価的な受信アンテナアレイ20Lを形成する結果になる。また、送信パルスP1の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図13(d)の右側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準にして、それぞれ+6.0Δφ、+7.0Δφ、+8.0Δφ、+9.0Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の右側に、等価的な受信アンテナアレイ20Rを形成する結果になる。
【0177】
等価的な受信アンテナアレイ20Lは、送信アンテナT2から送信される送信パルスP2に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Lの受信アンテナR1〜R4は、図13(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH1〜CH4を形成する。これらの受信チャネルCH1〜CH4は、奇数アドレス受信データSdoに対応し、受信チャネルCH1〜CH4では、それぞれ奇数アドレス受信データSdoの受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oがそれぞれ得られる。
【0178】
等価的な受信アンテナアレイ20Rは、送信アンテナT1から送信される送信パルスP1に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Rの受信アンテナR1〜R4は、図13(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH5〜CH8を形成する。これらの受信チャネルCH5〜CH8は、偶数アドレス受信データSdeに対応し、受信チャネルCH5〜CH8では、それぞれ偶数アドレス受信データSdeの受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eがそれぞれ得られる。
【0179】
実施の形態8でも、図4のステップS16において、ステップS12の出力、すなわちステップS13でDBF処理を受ける前の偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに基づいて、角度情報Iθ1〜Iθ4が算出されるので、この角度情報Iθ1〜Iθ4を、位置合わせ位相調整量θPを加算した角度情報に変換するため、角度情報Iθ1〜Iθ4に、符号反転補正が行なわれる。
【0180】
実施の形態8において、角度情報Iθ1〜Iθ4に単に符号反転補正を行なうだけで、角度情報Iθ1〜Iθ4が、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報に変換される理由について、例えば受信チャネルペアCH1/CH5の間で角度情報Iθ1を算出する場合を例にして説明する。偶数アドレス受信データSd1eは受信チャネルCH5で得られ、また奇数アドレス受信データSd1oは受信チャネルCH1で得られるが、これらの受信データSd1e、Sd1oは、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データであり、位置合わせ位相調整量θPが加算されておらず、図13(c)に示すように、それぞれ−24.0Δφ、−9.0Δφの位相差を持つ。これらの受信データSd1e、Sd1oの間の位相差をφbとすると、この位相差φbは、φb=−24.0Δφ−(−9.0Δφ)=−15.0Δφとなる。これに対して、位置合わせ位相調整量θPを加算した後の受信データSd1e、Sd1oは、図13(d)に示すように、それぞれ+6.0Δφ、−9.0Δφの位相差を持っており、これらの間の位相差をφcとすると、この位相差φcは、φc=+6.0Δφ−(−9.0Δφ)=15.0Δφとなる。すなわち、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データSd1から算出された位相差φbを、位置合わせ位相調整量θPを加算した位相差φcに変換するには、−符号を+符号に補正する符号反転補正を行なえばよい。他の受信チャネルペアCH2/CH6、CH3/CH7、CH4/CH8で算出される角度情報Iθ2、Iθ3、Iθ4にも、同じ符号反転補正が行なわれ、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報とされる。
【0181】
この実施の形態8では、D=6.0dとすることにより、アンテナ開口径LをL=15.0dに拡大することができ、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、角度情報Iθの精度を向上することができる。
【0182】
実施の形態7では、有効測角範囲Rθが、−4.0度≦Rθ≦+4.0度であるが、これに対し、実施の形態8では、アンテナ開口径Lが、L=15.0dであり、間隔dを、例えば実用的な値、d=0.6λとすると、L=9.0λとなる。このアンテナ開口径L=9.0λを素子間隔Edとし、位相差φ1を−π≦φ1≦+πとすると、(式5)から、有効測角範囲Rθは、−3.2度≦Rθ≦+3.2度となる。
【0183】
このように実施の形態8では、D=6.0dとすることにより、アンテナ開口径LをL=15.0dに拡大し、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、より正確な角度情報Iθを得ることができ、併せて、有効角度範囲Rθを、実用的に±3.2度の範囲とすることができる。
【0184】
実施の形態9.
実施の形態1〜8では、それぞれ係数mを2.0、2.5、2.7、3.2、3.5、3.8、4.5、6.0に設定したが、この実施の形態9では、一般化して係数mとし、これに伴なって位置合わせ係数PがP=6+4mとされる。この発明では、係数mは1よりも大きな任意の値とされる。これ以外では、実施の形態9は、実施の形態1と同じに構成される。
【0185】
実施の形態9では、実施の形態1と同様に、信号処理器50が、図4のステップS13において、受信データSdをDFT処理するように構成される。DFT処理に代わって、FFT処理とすることが考えられるが、このFFT処理では、係数mが、1/2の整数倍でないと、ステップS13における空間のチャネル方向の受信データ処理を行なうことがでない。実施の形態9では、係数mが1よりも大きい任意の値であり、これは1/2の整数倍とならない場合も含むが、信号処理器50が、ステップS13において、受信データSdをDFT処理することにより、ステップS13における空間のチャネル方向の受信データSdの処理を行なうことができる。
【0186】
図14は、実施の形態9における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す。この図14(a)〜図14(e)は、それぞれ図3(a)〜図3(e)にそれぞれ対応するが、実施の形態9では、具体的な経路差が係数mを用いて一般化され、またアンテナの等価配置における仮想送信アンテナT1/T2の間隔も係数mを用いて一般化される。その他は、図3(a)〜図3(e)と同じである。
【0187】
実施の形態9では、間隔D=mdであるので、受信アンテナR1〜R4は、アンテナの配置ラインA−Aに沿って、送信アンテナT2から、それぞれ間隔(m+3)d、(m+2)d、(m+1)d、mdだけ離れている。したがって、送信パルスP2の送信時において、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図14(a)の左側に示すように、送信アンテナT2の等位相面t2から、それぞれ+(m+3)Δr、+(m+2)Δr、+(m+1)Δr、+mΔrだけ離れる。
【0188】
送信パルスP1の送信時においても、図14(a)の右側に示すように、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、送信アンテナT2の等電位面t2から、それぞれ+(m+3)Δr、+(m+2)Δr、+(m+1)Δr、+mΔrだけ離れる。なお、図14(a)において、送信アンテナT1、T2の等位相面t1、t2の間の経路差は、+(3+2m)Δrである。
【0189】
送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における経路差を総合して考えると、図14(b)のようになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図14(b)の左側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+(m+3)Δr、+(m+2)Δr、+(m+1)Δr、+mΔrだけ離れる。送信アンテナT2、T1の等位相面t1、t2の間の経路差が+(3+2m)Δrであるので、送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図14(b)の右側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+(6+3m)Δr、+(5+3m)Δr、+(4+3m)Δr、+(3+3m)Δrだけ離れる結果となる。
【0190】
図14(b)に示す経路差を位相差に置き換えると、図14(c)に示す通りになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図14(c)の左側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−(m+3)Δφ、−(m+2)Δφ、−(m+1)Δφ、−mΔφの位相差を持つことになる。送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図14(c)の右側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−(6+3m)Δφ、−(5+3m)Δφ、−(4+3m)Δφ、−(3+3m)Δφの位相差を持つことになる。
【0191】
図14(c)に示す位相差は、送信アンテナT1、T2が、受信アンテナアレイ20の両側にそれぞれ間隔D(D=md)だけ離れて配置された実施の形態9において、送信アンテナT2を基準とした位相差であるが、ここで、実施の形態9において、送信アンテナT1の位置を仮想的に送信アンテナT2の位置に合わせるための、位置合わせ位相調整量θPを考える。実施の形態9において、この位置合わせ位相調整量θPは、+(6+4m)Δφであり、位置合わせ係数P=+(6+4m)と位相差Δφを乗算したものである。位相調整量θPは、図14(c)の右側に示す送信パルスP1の送信時における各位相差に、それぞれ加算される。図14(c)の左側に示す送信パルスP2の送信時における各位相差には、位相調整量θPは加算されない。この位置合わせ位相調整量θPを送信パルスP1の送信時における各位相差に加算することにより、図14(e)に示すように、2つの送信アンテナT1、T2が、同じ位置に配置された1つの仮想送信アンテナT1/T2に等価される。
【0192】
仮想送信アンテナT1/T2を基準とした場合、図14(e)に示すアンテナの等価配置が得られる。送信パルスP2の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図14(d)の左側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ−(m+3)Δφ、−(m+2)Δφ、−(m+1)Δφ、−mΔφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の左側に、等価的な受信アンテナアレイ20Lを形成する結果になる。また、送信パルスP1の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図14(d)の右側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準にして、それぞれ+mΔφ、+(m+1)Δφ、+(m+2)Δφ、+(m+3)Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の右側に、等価的な受信アンテナアレイ20Rを形成する結果になる。
【0193】
等価的な受信アンテナアレイ20Lは、送信アンテナT2から送信される送信パルスP2に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Lの受信アンテナR1〜R4は、図14(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH1〜CH4を形成する。これらの受信チャネルCH1〜CH4は、奇数アドレス受信データSdoに対応し、受信チャネルCH1〜CH4では、それぞれ奇数アドレス受信データSdoの受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oがそれぞれ得られる。
【0194】
等価的な受信アンテナアレイ20Rは、送信アンテナT1から送信される送信パルスP1に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Rの受信アンテナR1〜R4は、図14(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH5〜CH8を形成する。これらの受信チャネルCH5〜CH8は、偶数アドレス受信データSdeに対応し、受信チャネルCH5〜CH8では、それぞれ偶数アドレス受信データSdeの受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eがそれぞれ得られる。
【0195】
実施の形態9でも、図4のステップS16において、ステップS12の出力、すなわちステップS13でDBF処理を受ける前の偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに基づいて、角度情報Iθ1〜Iθ4が算出されるので、この角度情報Iθ1〜Iθ4を、位置合わせ位相調整量θPを加算した角度情報に変換するため、角度情報Iθ1〜Iθ4に、符号反転補正が行なわれる。
【0196】
実施の形態9において、角度情報Iθ1〜Iθ4に単に符号反転補正を行なうだけで、角度情報Iθ1〜Iθ4が、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報に変換される理由について、例えば受信チャネルペアCH1/CH5の間で角度情報Iθ1を算出する場合を例にして説明する。偶数アドレス受信データSd1eは受信チャネルCH5で得られ、また奇数アドレス受信データSd1oは受信チャネルCH1で得られるが、これらの受信データSd1e、Sd1oは、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データであり、位置合わせ位相調整量θPが加算されておらず、図14(c)に示すように、それぞれ−(6+3m)Δφ、−(m+3)Δφの位相差を持つ。これらの受信データSd1e、Sd1oの間の位相差をφbとすると、この位相差φbは、φb=−(6+3m)Δφ−(−(m+3)Δφ)=−(3+2m)Δφとなる。これに対して、位置合わせ位相調整量θPを加算した後の受信データSd1e、Sd1oは、図14(d)に示すように、それぞれ+mΔφ、−(m+3)Δφの位相差を持っており、これらの間の位相差をφcとすると、この位相差φcは、φc=+mΔφ−(−(m+3)Δφ)=(3+2m)Δφとなる。すなわち、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データSd1から算出された位相差φbを、位置合わせ位相調整量θPを加算した位相差φcに変換するには、−符号を+符号に補正する符号反転補正を行なえばよい。他の受信チャネルペアCH2/CH6、CH3/CH7、CH4/CH8で算出される角度情報Iθ2、Iθ3、Iθ4にも、同じ符号反転補正が行なわれ、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報とされる。
【0197】
この実施の形態9では、アンテナ開口径Lは、L=(2m+3)dで表わすことができ、係数mを1より大きい任意の値とすることにより、アンテナ開口径Lを拡大し、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、角度情報Iθの精度を向上することができる。受信アンテナアレイ20において、間隔dを隔てて等間隔に配置される受信アンテナの数をnとすれば、アンテナ開口径Lは、L=(2m+n−1)dで表わすことができる。実施の形態1〜9では、受信アンテナの数nが4とされたが、この数nを2以上の任意の整数としても、同様にアンテナ開口径Lを拡大することができる。
【0198】
この発明では、係数mが1よりも大きな任意の値とされ、この係数mが大きくなるのに伴なって、アンテナ開口径Lを大きくし、角度情報Iθの分解能Δθを小さくすることができる。しかし、反面、係数mが大きくなるのに伴なって、有効測角範囲Rθは、小さくなる。有効測角範囲Rθは、m=1.1のときに、±9.2度の範囲となるが、実施の形態1〜8のように、mが2.0、2,5、2.7、3.2、3.5、3.8、4.5、6.0と大きくなるのに伴ない、それぞれ±6.0度、±5.7度、±5.1度、±4.8度、±4.5度、±4.0度、±3.2度の範囲と小さくなり、m=10のときに、±2.1度の範囲となる。
【0199】
この発明による車載レーダ装置100では、アンテナ開口径Lを大きくする第1条件と、必要な有効測角範囲Rθを確保する第2条件の両方を満足されることが望まれる。これらの第1、第2条件の両方を満足するには、具体的には、係数mを、1.1≦m≦10.0を満足する任意に値とすることが望ましい。係数mが10.0を超えれば、有効測角範囲Rθが小さくなり過ぎる。また、その中でも、係数mを、2.0≦m≦6.0を満足する任意の値とすることが望ましい。さらに、係数mを、2.5≦m≦4.5を満足する任意の値とすることが望ましい。
【0200】
車載レーダ装置100のアプリケーションが要求する測角範囲に基づいて、有効測角範囲Rθを決定し、この有効測角範囲Rθを満足する中で、係数mをできるだけ大きくし、アンテナ開口径Lをできるだけ大きく設定することも、有効である。
【0201】
他の実施の形態
実施の形態1では、図4のステップS13においてDBF処理を受ける前の、ステップS12の出力を利用して、ステップS7において、角度情報Iθを算出している。言い換えれば、受信チャネルペアCH1/CH5、CH2/CH6、CH3/CH7、CH4/CH8のそれぞれの受信データに基づき、角度情報Iθを算出している。しかし、これに代わり、ビームフォーマ法を用いることもできる。このビームフォーマ法は、8つの受信チャネルCH1〜CH8の受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4e、Sd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oに対して、図5に示すと同様なDBF処理を行ない、その出力に基づいて、角度情報Iθを算出する。
【0202】
このビームフォーマ法はすでに知られた処理であり、その詳細な説明は省略するが、このビームフォーマ法を実施の形態1に適用した場合、アンテナ開口径Lを、L=10.0d、すなわち、図3(e)の受信チャネルCH1と受信チャネルCH8との間の間隔まで拡大することができ、それに応じて角度情報Iθの分解能Δθを小さくすることができる。ビームフォーマ法を実施の形態2〜9に適用した場合には、アンテナ開口径Lを、それぞれ、L=11.0d、L=11.4d、L=12.4d、L=13.0d、13.6d、L=15.0d、L=18.0d、L=(2m+6)dまで、拡大することができる。
【0203】
また、ビームフォーマ法に代わって、すでに知られているMUSIC(Multiple Signal Classification)アルゴリズムまたはESPRIT(Estimationof Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)アルゴリズムを使用することもできる。ESPRITアルゴリズムは、MUSICアルゴリズムから派生したアルゴリズムである。これらのアルゴリズムは、分解能Δθを決める比(λ/L)よりも近接した角度の複数波を分解して測角することができることから、超分解能測角アルゴリズムと呼ばれている。
【0204】
これらのMUSICアルゴリズムまたはESPRITアルゴリズムを実施の形態1に適用した場合、アンテナ開口径Lを、ビームフォーマ法を実施の形態1に適用した場合と同様に、L=10.0d、すなわち、図3(e)の受信チャネルCH1と受信チャネルCH8との間の間隔まで拡大することができ、それに応じて角度情報Iθの分解能Δθを小さくすることができる。これらのMUSICアルゴリズムまたはESPRITアルゴリズムを実施の形態2〜9に適用した場合にも、ビームフォーマ法を実施の形態2〜9に適用した場合と同じ値まで、アンテナ開口径Lを拡大することができる。
【0205】
この発明の各種の変形または変更は、関連する熟練技術者が、この発明の範囲と精神を逸脱しない中で実現可能であって、この発明に記載された各実施の形態には制限されないことと理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0206】
この発明による車載レーダ装置は、自動車などに各種車両に搭載される車載レーダ装置として利用される。
【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1】この発明による車載レーダ装置に実施の形態1を示す構成図である。
【図2】実施の形態1の動作説明図である。
【図3】実施の形態1における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す説明図である。
【図4】実施の形態1における信号処理器の動作を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態1におけるDBF処理の説明図である。
【図6】角度情報の算出原理を示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態2における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す説明図である。
【図8】この発明の実施の形態3における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す説明図である。
【図9】この発明の実施の形態4における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す説明図である。
【図10】この発明の実施の形態5における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す説明図である。
【図11】この発明の実施の形態6における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す説明図である。
【図12】この発明の実施の形態7における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す説明図である。
【図13】この発明の実施の形態8における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す説明図である。
【図14】この発明の実施の形態9における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0208】
100:車載レーダ装置、10:アンテナ装置、20:受信アンテナアレイ、
R1〜R4:受信アンテナ、T1、T2:送信アンテナ、30:送信系、
40;受信系、50;信号処理器。
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車などの車両に搭載される車載レーダ装置に関するものであり、とくに、少なくとも目標に関する角度情報を算出するように構成された車載レーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
目標に関する角度情報は、目標の存在する方向を表わす情報であり、一般に車載レーダ装置において、角度情報はビームを走査することにより得ることができる。
【0003】
例えば機械走査方式では、ビームは機械的に走査される。この機械走査方式では、隣接する2つの受信アンテナについて、ビームが重なる領域で目標の検出を行ない、各領域でのビート信号の受信強度に基づいて、目標に関する角度情報を求める。しかしながら、ビート信号の受信強度は、様々な要因の影響を受けやすい。したがって、受信強度を用いるよりも、ビート信号の位相を用いて角度情報を求めるものが提案されている。このビート信号の位相を用いることにより、角度分解能を向上し、角度情報の算出精度を向上することができる。
【0004】
この位相を用いて角度情報を得る技術として、デジタル・ビーム・フォーミング(digital beam formingであって、以下、DBFと略称する)処理が知られている。このDBF処理では、送信アンテナから送信され、目標で反射した送信パルスを複数の受信アンテナにて同時に受信し、その受信データを利用して、様々なビームパターンをデジタル信号処理により形成する。従来のフェーズドアレー方式のレーダ装置では、各アンテナに対してアナログ移相器を接続するが、DBF処理では、アナログ移相器の機能、およびアナログ移相器の出力をアナログ的に合成する機能を、デジタル信号処理により実現しているものと考えることができる。このDBF処理では、受信パルスの到来方向毎に、受信パルスの受信電力強度と位相とが検出されることになり、この位相を用いて目標に関する角度情報を高精度に算出することが可能となる。
【0005】
このDBF処理を採用すれば、機械走査方式のようにアンテナを機械的に駆動する必要がないため、駆動機構が不要となり、結果として振動に強く、しかも小型化、軽量化された車載レーダ装置を得ることができる。また、フェーズドアレー方式のレーダ装置と比べ、アナログ移相器が不要となるので、車載レーダ装置の低コスト化を図ることができる。
【0006】
また、一般に受信データの位相を用いて角度情報を得る場合、角度分解能はアンテナ開口径が大きいほど、向上することが知られている。しかしながら、アンテナ装置を限られたスペースに配置する車載レーダでは、そのスペースの制約のため、角度分解能に限界がある。
【0007】
下記特許文献1の図4には、互いに間隔dを隔てて並べて配置された複数の受信アンテナで構成された受信アンテナアレイに対し、その両端部にそれぞれ間隔dを置いて2つの送信アンテナを設け、これらの2つの送信アンテナから、時分割に交互に送信パルスを送信し、各受信アンテナで得られた受信データを用いて、DBF処理を実施することにより、アンテナ開口径を等価的に約2倍に拡大し、角度分解能を向上するものが開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−198312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特開文献1には、アンテナ開口径をさらに拡大することは開示されておらず、目標に関する角度情報の分解能をさらに向上し、角度情報の算出精度をさらに向上することが望まれる。
【0010】
この発明は、この課題を解決するためになされたもので、限られたアンテナサイズで角度分解能を向上し、角度情報の算出精度をさらに向上させることのできる車載レーダ装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明による車載レーダ装置は、複数の受信アンテナを含む受信アンテナアレイと、2つの送信アンテナを有し、前記2つの送信アンテナから、時分割で交互に送信パルスを送信し、前記送信パルスが目標で反射した受信パルスを前記各受信アンテナで受信し、得られた各受信データを用いて、少なくとも前記目標に関する角度情報を算出する車載レーダ装置であって、前記受信アンテナアレイは、間隔dを隔てて前記複数の受信アンテナを並べて構成され、前記2つの送信アンテナは、前記受信アンテナアレイの各端部に位置する前記受信アンテナからそれぞれ間隔Dを隔てて配置され、前記間隔Dは、前記間隔dよりも大きな任意の値に設定されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明による車載レーダ装置では、受信アンテナアレイが、間隔dを隔てて複数の受信アンテナを並べて構成され、2つの送信アンテナが、前記受信アンテナアレイの各端部に位置する前記受信アンテナからそれぞれ間隔Dを隔てて配置され、前記間隔Dは、前記間隔dよりも大きな任意の値に設定されるので、アンテナ開口径を等価的にさらに拡大することができ、目標に関する角度情報を、より高い精度で算出することができる。
【0013】
この発明の前記以外の他の目的、特徴、観点および効果は、以下の図面を参照した詳細な説明に基づき、さらに明確とされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図面を参照して、この発明のいくつかの実施の形態について説明する。
【0015】
実施の形態1.
(1)実施の形態1の構成の説明
図1は、この発明による車載レーダ装置の実施の形態1を示すブロック図である。この実施の形態1は、自動車などの車両に搭載される車載レーダ装置100である。この車載レーダ装置100は、それを搭載した車両の前方を走行する前方車両などの目標を検出し、この目標との間の車間距離、相対速度を出力し、また、その目標に関する角度情報を出力する。
【0016】
車載レーダ装置100は、アンテナ装置10と、送信系30と、受信系40と、信号処理器50を含む。まず、アンテナ装置10は、受信アンテナアレイ20と、2つの送信アンテナT1、T2を含む。受信アンテナアレイ20は、4つの受信アンテナR1、R2、R3、R4を有する。受信アンテナR1〜R4および送信アンテナT1、T2は、例えば、互いに同じ種類で、同じ仕様のアンテナで構成され、具体的には、プリント基板上に形成されたパッチアンテナとされる。
【0017】
受信アンテナR1〜R4および送信アンテナT1、T2は、それらの中心点が共通の配置ラインA−Aに沿って並ぶように配置される。これらの各アンテナR1〜R4、T1、T2は、機械的な走査を受けずに固定される。図1において、受信アンテナR1は、受信アンテナアレイ20の一端に配置され、この受信アンテナR1から受信アンテナアレイ20の他端に向かって、受信アンテナR2、R3、R4が、この順序で配置される。受信アンテナR4は、受信アンテナアレイ20の他端に配置される。受信アンテナR2、R3は、受信アンテナR1、R4の間に配置される。
【0018】
受信アンテナR1、R2、R3、R4は、間隔dを隔てて、等間隔に並べて配置される。受信アンテナR1、R2の間隔d、受信アンテナR2、R3の間隔d、および受信アンテナR3、R4の間隔dは、互いに等しい。
【0019】
2つの送信アンテナT1、T2は、受信アンテナアレイ20の両端部から間隔をおいて配置される。送信アンテナT1は、受信アンテナR1から間隔Dを隔てて配置される。送信アンテナT2は、受信アンテナR4から間隔Dを隔てて配置される。送信アンテナT1と受信アンテナR1の間隔D、および送信アンテナT2と受信アンテナR4の間隔Dは、互いに等しい。この間隔Dは、間隔dよりも大きく、D>dの関係とされる。実施の形態1では、D=2dとされる。
【0020】
送信系30は、送信アンテナT1、T2と、送信用スイッチ31と、アンプ32、33と、分配器34と、4分配器35と、電圧制御発振器36と、信号処理器50を含む。信号処理器50は、受信系40にも共用される。この送信系30は、2つの送信アンテナT1、T2から、時分割に、交互に送信パルスP1、P2を放射する。
【0021】
信号処理器50は、電圧制御発振器36に対して、変調電圧信号Vmを供給する。電圧制御発振器36は、VCO(Voltage controlledOscilator)で構成され、変調電圧信号Vmに応じて周波数変調された送信信号Stを発生し、この送信信号Stを分配器34に供給する。送信信号Stは、周波数変調された連続波である。分配器34は、アンプ32を通じて送信信号Stを送信用スイッチ31に供給するとともに、アンプ33を通じて送信信号Stを4分配器35に供給する。4分配器35は、送信信号Stを4つのローカル送信信号St1〜St4に分配する。
【0022】
送信用スイッチ31は、アンプ32で増幅された送信信号Stを受け、また、信号処理器50から送信切換信号Ssを受ける。送信用スイッチ31は、アンプ32に接続されたa端子と、送信アンテナT1に接続されたb端子と、送信アンテナT2に接続されたc端子を有する。この送信用スイッチ31は、a端子がb端子に接続される第1オン状態と、a端子がc端子に接続される第2オン状態と、a端子がb端子とc端子の何れにも接続されないオフ状態とを選択することができ、送信切換信号Ssに基づいて、第1オン状態とオフ状態と第2オン状態とを切換える。第1オン状態では、送信信号Stは送信アンテナT1に供給され、第2オン状態では、送信信号Stは送信アンテナT2に供給されるが、オフ状態では、何れの送信アンテナT1、T2にも送信信号Stは供給されない。
【0023】
送信用スイッチ31は、送信切換信号Ssに基づいて、第1オン状態からオフ状態となり、このオフ状態から第2オン状態に切換えられる。また、第2オン状態からオフ状態になり、このオフ状態から第1オン状態に切換えられる。この送信用スイッチ31の切換動作に基づき、送信信号Stは、送信アンテナT1、T2に時分割に交互に供給される。その結果、送信アンテナT1、T2は、それぞれ送信信号Stがパルス変調された送信パルスP1、P2を放射する。送信パルスP1、P2は、送信アンテナT1、T2から、時分割に、交互に空間に向けて放射される。
【0024】
受信系40は、受信アンテナアレイ20と、ミキサ回路41と、A/D変換回路42と、信号処理器50を含む。この受信系40は、送信パルスP1、P2が目標で反射して到来する受信パルスS1、S2を受信し、これらの受信パルスS1、S2に対応する受信データSdを生成して、この受信データSdを信号処理器50で処理する。
【0025】
受信アンテナアレイ20は、受信パルスS1、S2を受信し、受信信号Srを発生する。この受信信号Srは、受信アンテナR1〜R4によって得られる受信信号Sr1〜Sr4の総称である。受信アンテナR1によって得られる受信信号Sr1には、受信パルスS1に対応する受信信号Sr11と、受信パルスS2に対応する受信信号Sr12が、交互に現われる。受信アンテナR2によって得られる受信信号Sr2には、受信パルスS1に対応する受信信号Sr21と、受信パルスS2に対応する受信信号Sr22が交互に現われる。受信アンテナR3によって得られる受信信号Sr3には、受信パルスS1に対応する受信信号Sr31と、受信パルスS2に対応する受信信号Sr32が交互に現われる。受信アンテナR4によって得られる受信信号Sr4には、受信パルスS1に対応する受信信号Sr41と、受信パルスS2に対応する受信信号Sr42が交互に現われる。
【0026】
ミキサ回路41は、受信信号Srとローカル送信信号St1〜St4を受けて、受信ビート信号Sbを発生する。ミキサ回路41は、4つのミキサ411〜414を有し、これらのミキサ411〜414は、それぞれ受信アンテナアレイ20の受信アンテナR1〜R4にそれぞれ接続される。ミキサ411は、受信信号Sr1とローカル送信信号St1を受け、受信信号Sr1にローカル送信信号St1を混合して、受信ビート信号Sb1を発生する。この受信ビート信号Sb1には、受信パルスS1に対応する受信ビート信号Sb11と、受信パルスS2に対応する受信ビート信号Sb12が交互に現われる。
【0027】
同様に、ミキサ412、413、414は、それぞれ受信信号Sr2、Sr3、Sr4とローカル送信信号St2、St3、St4を受け、受信ビート信号Sb2、Sb3、Sb4を発生する。受信ビート信号Sb2には、受信パルスS1に対応する受信ビート信号Sb21と、受信パルスS2に対応する受信ビート信号Sb22が交互に現われる。受信ビート信号Sb3には、受信パルスS1に対応する受信ビート信号Sb31と、受信パルスS2に対応する受信ビート信号Sb32が交互に現われる。また、受信ビート信号Sb4には、受信パルスS1に対応する受信ビート信号Sb41と、受信パルスS2に対応する受信ビート信号Sb42が交互に現われる。受信ビート信号Sbは、これらの受信ビート信号Sb1〜Sb4の総称である。
【0028】
受信パルスS1、S2は、送信アンテナT1、T2から放射された送信パルスP1、P2が目標で反射され、受信アンテナR1〜R4で受信される。このため、受信ビート信号Sb1〜Sb4は、送信信号Stに対する周波数変化Δfを含み、また受信ビート信号Sb1〜Sb4の間の位相差φを含んでいる。周波数変化Δfは、目標までの距離情報IDと、目標の相対速度情報ISを演算するのに使用され、また、位相差φは目標に関する角度情報Iθを演算するのに使用される。
【0029】
A/D変換回路42は、受信ビート信号Sbを受信レンジゲート0〜Nのそれぞれでサンプリングし、それぞれのサンプリング値をデジタル信号に変換し、受信データSdを発生する。A/D変換回路42は、4つのA/D変換器421〜424を有し、これらのA/D変換器421〜424は、それぞれミキサ411〜414に接続される。A/D変換器421は、ミキサ411からの受信ビート信号Sb1を受信レンジゲート0〜Nのそれぞれでサンプリングし、それぞれのサンプリング値をデジタル信号に変換し、受信データSd1を発生する。この受信データSd1には、受信パルスS1に対応する受信データSd11と、受信パルスS2に対応する受信データSd12が交互に現われる。
【0030】
同様に、A/D変換器422、423、424は、それぞれミキサ412、413、414からの受信ビート信号Sb2、Sb3、Sb4を受信レンジゲート0〜Nのそれぞれでサンプリングし、それぞれのサンプリング値をデジタル信号に変換して、受信データSd2、Sd3、Sd4を発生する。受信データSd2には、受信パルスS1に対応する受信データSd21と、受信パルスS2に対応する受信データSd22が交互に現われる。受信データSd3には、受信パルスS1に対応する受信データSd31と、受信パルスS2に対応する受信データSd32が交互に現われる。受信データSd4には、受信パルスS1に対応する受信データSd41と、受信パルスS2に対応する受信データSd42が交互に現われる。受信データSdは、これらの受信データSd1〜Sd4の総称である。
【0031】
信号処理器50は、受信データSdに対する信号処理を行なう。この信号処理器50は、目標が存在するかどうかの目標検出情報ITを出力し、また、送信パルスP1、P2とそれらに対応した受信パルスS1、S2との周波数変化Δfに基づいて目標までの距離情報IDと、目標の相対速度情報ISを出力する。信号処理器50は、さらに受信パルスS1、S2から得られた受信データSdの位相差φに基づき、目標に関する角度情報Iθを出力する。
【0032】
(2)実施の形態1の動作の説明
さて、実施の形態1について、その動作を説明する。図2は、実施の形態1の車載レーダ装置100の送受信動作を示す説明図である。図2の横軸は、時間軸である。図2(a)は送信信号Stの周波数変化を、図2(b)は送信信号Stに対応した送信パルス列を、図2(c)は送信パルス列に対応した送信パルスP1と受信パルスS1を、図2(d)は送信パルス列に対応した送信パルスP2と受信パルスS2を、図2(e)は受信パルスS1に対応した受信ビート信号Sbとそれに対する受信レンジゲートを、また図2(f)は受信パルスS2に対応した受信ビート信号Sbとそれに対する受信レンジゲートをそれぞれ示す。
【0033】
送信信号Stは、図2(a)に示すように、周波数が三角波状に変化する周波数変調部分Fmを含む。この周波数変調部分Fmは、所定の時間間隔T0を置いて間欠的に発生される。この周波数変調部分Fmは、信号処理器50から電圧制御発振器36に供給される変調電圧信号Vmに基づいて発生される。
【0034】
周波数変調部分Fmは、アップチャープucとダウンチャープdcを含む。アップチャープucでは、送信信号Stの周波数がf1からf2へ直線的に上昇する。ダウンチャープdcでは、送信信号Stの周波数がf2からf1へ直線的に低下する。ダウンチャープdcは、アップチャープucに続いて現われる。
【0035】
実施の形態1では、アップチャープucおよびダウンチャープdcに、それぞれ送信パルス列が設定される。具体的には、この送信パルス列は、アップチャープucおよびダウンチャープdcのそれぞれにおいて、互いに等間隔に1024個のアドレスに時分割され、これらの各アドレスは、順次アドレス0〜1023にアドレス付けされ、アドレスゲート0〜1023とされる。この送信パルス列は、送信切換信号Ssに基づいて、送信用スイッチ31が設定する。
【0036】
送信パルス列は、512個の偶数のアドレスゲート0、2、・・・、1022と、512個の奇数アドレスゲート1、3、・・・、1023を含む。偶数のアドレスゲート0、2、・・・、1022と、奇数のアドレスゲート1、3、・・・、1023は、交互に発生される。各偶数のアドレスゲートでは、それぞれ送信信号Stが送信アンテナT1に供給され、送信パルスP1が送信アンテナT1から送信される。言い換えれば、送信パルスP1は、偶数のアドレスゲート0、2、・・・、1022のそれぞれにおいて、間欠的に送信される。また、奇数のアドレスゲート1、3、・・・、1023では、それぞれ送信信号Stが送信アンテナT2に供給され、送信パルスP2が送信アンテナT2から送信される。言い換えれば、送信パルスP2は、奇数のアドレスゲート1、3・・・、1023のそれぞれにおいて、間欠的に送信される。図2(b)は、1つのダウンチャープdcにおける送信パルス列を例示する。
【0037】
図2(c)には、送信パルス列の偶数のアドレスゲート、具体的にはアドレスゲート0とアドレスゲート2に対応する2つの送信パルスP1が例示される。図2(d)には、送信パルス列の奇数のアドレスゲート、具体的には、アドレスゲート1とアドレスゲート3に対応する2つの送信パルスP2が例示される。アドレスゲート0、1、2、・・・、1023は、それぞれアドレス期間Tiを持つ。偶数のアドレスゲート0、2、・・・、1022のそれぞれのアドレス期間Tiの冒頭では、それぞれ送信用スイッチ31が第1オン状態となり、そのa端子がb端子に接続され、送信パルスP1がそれぞれ持続時間Twを持って送信される。また、奇数のアドレスゲート1、3、・・・、1023のそれぞれのアドレス期間Tiの冒頭では、それぞれ送信用スイッチ31が第2オン状態となり、そのa端子がc端子に接続されるので、送信パルスP2がそれぞれ持続時間Twを持って送信される。このように、アドレスゲート0、1、2、・・・のそれぞれのアドレス期間Tiでは、冒頭に送信パルスP1、P2が持続時間Twを持って送信され、その残りの期間(Ti−Tw)では、送信用スイッチ31はオフ状態となり、送信パルスP1、P2は送信されない。
【0038】
偶数のアドレスゲート0、2、・・・、1022では、それぞれ送信パルスP1に基づいて、受信パルスS1が受信される。この受信パルスS1に対応する受信ビート信号Sb1e、Sb2e、Sb3e、Sb4eが、図2(e)に示される。受信ビート信号Sb1e、Sb2e、Sb3e、Sb4eは、それぞれ受信ビート信号Sb1、Sb2、Sb3、Sb4に含まれる。これらの受信ビート信号Sb1e、Sb2e、Sb3e、Sb4eには、図2(e)に示すように、受信レンジゲート0〜Nが設定される。受信ビート信号Sb1e、Sb2e、Sb3e、Sb4eは、それぞれA/D変換器421〜424により、受信レンジゲート0〜Nのそれぞれにおいてサンプリングされ、それぞれのサンプリング値は、A/D変換器421〜424でデジタル信号に変換され、受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eとなる。これらの受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eを偶数アドレス受信データSdeと総称する。この偶数アドレス受信データSdeが得られる状態は、送信パルスP1の送信時に対応する。
【0039】
奇数のアドレスゲート1、3、・・・、1023では、それぞれ送信パルスP2に基づいて、受信パルスS2が受信される。この受信パルスS2に対応する受信ビート信号Sb1o、Sb2o、Sb3o、Sb4oが、図2(f)に示される。受信ビート信号Sb1o、Sb2o、Sb3o、Sb4oは、それぞれ受信ビート信号Sb1、Sb2、Sb3、Sb4に含まれる。これらの受信ビート信号Sb1o、Sb2o、Sb3o、Sb4oには、図2(f)に示すように、受信レンジゲート0〜Nが設定される。受信ビート信号Sb1o、Sb2o、Sb3o、Sb4oは、A/D変換器421〜424により、受信レンジゲート0〜Nのそれぞれにおいてサンプリングされ、それぞれのサンプリング値は、A/D変換器421〜424でデジタル信号に変換され、受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oとなる。これらの受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oを奇数アドレス受信データSdoと総称する。この奇数アドレス受信データSdoが得られる状態は、送信パルスP2の送信時に対応する。
【0040】
アップチャープucおよびダウンチャープdcでは、それぞれアドレスゲート0、1、2、・・・、1023の進行に伴ない、偶数アドレス受信データSdeと、奇数アドレス受信データSdoが交互に発生する結果となる。なお、受信レンジゲートの数は(N+1)であり、これは7〜10とされる。
【0041】
(3)実施の形態1におけるアンテナの等価配置の説明
実施の形態1は、アンテナの等価配置を改善し、アンテナ開口径を拡大して、目標に関する角度情報の算出精度を向上するものである。図3は、実施の形態1における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す説明図である。図3(a)は、受信アンテナR1〜R4の受信経路差を示す。図3(a)の左側には、送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信経路差が、またその右側には、送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信経路差が示される。図3(b)は、送信アンテナT2を基準として、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における受信経路差を示す。図3(c)は、送信アンテナT2を基準として、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における受信位相差を示す。図3(d)は、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における位置合わせ位相調整後の受信位相差を示す。図3(e)は、実施の形態1におけるアンテナ装置10の等価配置を示す。
【0042】
送信パルスP2の送信時には、図3(a)の左側に示すように、送信パルスP2が、送信アンテナT2から矢印P2方向に放射され、受信パルスS2が、受信アンテナR1〜R4に矢印S2方向に入射する。また、送信パルスP1の送信時には、図3(a)の右側に示すように、送信パルスP1が、送信アンテナT1から矢印P1方向に放射され、受信パルスS1が、受信アンテナR1〜R4に矢印S1方向に入射する。アンテナの配置ラインA−Aに直交する基準面に対する受信パルスS1、S2の入射角をθとする。受信パルスS2、S1は、短い時間間隔で受信されるので、矢印S2、S1は互いに平行と見なすことができる。受信パルスS2、S1について、受信アンテナR1〜R4の等位相面を符号r1〜r4で表わし、また、これらの等位相面r1〜r4の両側に、送信アンテナT1、T2の等位相面t1、t2を表わす。等位相面r1〜r4は、それぞれ受信アンテナR1〜R4の中心点を通り、矢印S2、S1に直交する。等位相面t2、t1は、それぞれ送信アンテナT2、T1の中心点を通り、矢印S2、S1に直交する。
【0043】
実施の形態1では、間隔D=2dであるので、受信アンテナR1〜R4は、アンテナの配置ラインA−Aに沿って、送信アンテナT2から、それぞれ間隔5d、4d、3d、2dだけ離れている。したがって、送信パルスP2の送信時において、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図3(a)の左側に示すように、送信アンテナT2の等位相面t2から、それぞれ+5Δr、+4Δr、+3Δr、+2Δrだけ離れる。なお、Δr=d×sinθである。
【0044】
送信パルスP1の送信時においても、図3(a)の右側に示すように、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、送信アンテナT2の等電位面t2から、それぞれ+5Δr、+4Δr、+3Δr、+2Δrだけ離れる。なお、図3(a)において、送信アンテナT1、T2の等位相面t1、t2の間の経路差は、+Δ7rである。
【0045】
送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における経路差を総合して考えると、図3(b)のようになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図3(b)の左側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+5Δr、+4Δr、+3Δr、+2Δrだけ離れる。送信アンテナT2の等位相面t2と送信アンテナT1の等位相面t1との間の経路差が+7Δrであるので、送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図3(b)の右側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+12Δr、+11Δr、+10Δr、+9Δrだけ離れる結果となる。
【0046】
図3(b)に示す経路差を位相差に置き換えると、図3(c)に示す通りになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図3(c)の左側に示す通り、送信アンテナT2を基準として、それぞれ−5Δφ、−4Δφ、−3Δφ、−2Δφの位相差を持つことになる。送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図3(c)の右側に示す通り、送信アンテナT2を基準として、それぞれ−12Δφ、−11Δφ、−10Δφ、−9Δφの位相差を持つことになる。
【0047】
図3(c)に示す位相差は、送信アンテナT1、T2が、受信アンテナアレイ20の両側にそれぞれ間隔Dだけ離れて配置された実施の形態1において、送信アンテナT2を基準とした位相差であるが、ここで、送信アンテナT1の位置を仮想的に送信アンテナT2の位置に合わせるための、位置合わせ位相調整量θPを考える。実施の形態1において、この位置合わせ位相調整量θPは、+14Δφであり、位置合わせ係数P=+14と位相差Δφを乗算したものである。位置合わせ係数Pは、間隔Dと間隔dについて、D=md(mは係数)としたとき、P=6+4mで求められ、実施の形態1では、m=2であるので、位置合わせ係数Pは+14となる。この位置合わせ係数Pは、アンテナ装置10の間隔Dと間隔dとの間の係数mに依存して決定されるので、係数mが特定されると、一義的に求めることができる。位相調整量θPは、図3(c)の右側に示す送信パルスP1の送信時における各位相差に、それぞれ加算される。図3(c)の左側に示す送信パルスP2の送信時における各位相差には、位相調整量θPは加算されない。この位置合わせ位相調整量θPを送信パルスP1の送信時における各位相差に加算することにより、図3(e)に示すように、2つの送信アンテナT1、T2が、同じ位置に配置された1つの仮想送信アンテナT1/T2に等価される。
【0048】
仮想送信アンテナT1/T2を基準とした場合、図3(e)に示すアンテナの等価配置が得られる。送信パルスP2の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図3(d)に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ−5Δφ、−4Δφ、−3Δφ、−2Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の左側に、等価的な受信アンテナアレイ20Lを形成する結果になる。また、送信パルスP1の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図3(d)に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準にして、それぞれ+2Δφ、+3Δφ、+4Δφ、+5Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の右側に、等価的な受信アンテナアレイ20Rを形成する結果になる。
【0049】
等価的な受信アンテナアレイ20Lは、送信アンテナT2から送信される送信パルスP2に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Lの受信アンテナR1〜R4は、図3(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH1〜CH4を形成する。これらの受信チャネルCH1〜CH4は、奇数アドレス受信データSdoに対応し、受信チャネルCH1〜CH4では、それぞれ奇数アドレス受信データSdoの受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oがそれぞれ得られる。
【0050】
等価的な受信アンテナアレイ20Rは、送信アンテナT1から送信される送信パルスP1に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Rの受信アンテナR1〜R4は、図3(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH5〜CH8を形成する。これらの受信チャネルCH5〜CH8は、偶数アドレス受信データSdeに対応し、受信チャネルCH5〜CH8では、それぞれ偶数アドレス受信データSdeの受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eがそれぞれ得られる。
【0051】
(4)実施の形態1における信号処理器50の動作の説明
図4は、実施の形態1における信号処理器50の動作を示すフローチャートである。このフローチャートは、スタートとエンドとの間に6つのステップS11〜S16を含む。最初のステップS11では、偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに対して、時間軸方向の高速フーリエ変換(Fast Fourier Transformであり、以下FFTと略称する)処理を行なう。この時間軸方向のFFT処理では、図2の横軸である時間軸方向に、偶数アドレス受信データSdeと奇数アドレス受信データSdoをFFT処理する。この時間軸方向のFFTは、図2(e)(f)に示す各受信レンジゲート0〜Nのそれぞれに対応して実行される。
【0052】
次のステップS12では、ステップS11でFFT処理された偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに対し、位相補正θCを行なう。この位相補正θCは、キャリブレーション補正とも呼ばれる。この位相補正θCは、偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに含まれる受信アンテナR1〜R4と送信アンテナT1、T2のハードウエア的な位相誤差、および送信用スイッチ31の切換タイミングの時間的誤差を補正する。
【0053】
次のステップS13では、ステップS12で位相補正θCを受けた偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoのそれぞれに対し、空間方向DBFを行なう。このステップS13は、2つのステップS131、S132を含む。ステップS131は、受信データSdに対する入射角位相調整を行なうステップであり、またステップS132は、ステップS131に続き、受信データSdを複素加算するステップである。これらのステップS131、S132を含むステップS13では、離散フーリエ変換(DiscreteFourier Transformであり、以下DFTと略称する)処理が行なわれる。具体的には、偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoのそれぞれに対し、空間で受信アンテナR1〜R4が並ぶ方向、言い換えれば、図3(e)において、各受信チャネルCH1〜CH8が並ぶ方向にDFT処理を行なう。この空間のチャネル方向のDFT処理に基づいて、DBF処理が行なわれる。
【0054】
ステップS131には、位置合わせ係数Pが与えられる。この位置合わせ係数Pは、図3(c)と図3(d)の間に示された位相調整量θP=14Δφにおける位置合わせ係数であり、実施の形態1では、P=+14とされる。ステップS131では、この位置合わせ係数Pを受け、位置合わせ位相調整量θPを偶数アドレス受信データSdeに加算する。
【0055】
また、ステップS131では、同時に入射角θに対する位相調整を行なう。この入射角θに対する位相調整は、図3(c)(d)におけるΔφを調整することに相当する。ステップS132では、ステップS131において、入射角θに対する位相調整を受けた偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoを複素加算する。
【0056】
図5は、ステップS131における入射角θに対する位相調整と、ステップS132における複素加算の原理を示す説明図である。ステップS131では、受信データSd1〜Sd4のそれぞれに含まれた偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoのそれぞれに対し、受信パルスS1、S2の様々な入射角θを想定した位相調整が実行される。このステップS131における位相調整は、位相スキャニング調整とも呼ばれる。このステップS131における位相調整に基づいて、ステップS132における複素加算が実行され、その結果、受信パルスS1、S2の実際の入射角θaに対応する受信データSde、Sdoが強められ、またこの実際の入射角θa以外の入射角θbに対応する受信データSde、Sdoが弱められる。
【0057】
図5(a)は、受信アンテナR1〜R4と、これらの受信アンテナR1〜R4により得られた受信データSd1〜Sd4を示す。これらの受信データSd1〜Sd4は、具体的には、それぞれ偶数アドレス受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4e、および奇数アドレス受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oであるが、受信データSd1〜Sd4で代表して示す。この受信データSd1〜Sd4は、デジタルデータであるが、解り易くするために、波形信号として示している。図5(b)は、これらの受信データSd1〜Sd4に対し、ステップS131における位相調整として、受信パルスS2、S1の実際の入射角θaに対応する位相調整を与えた場合における受信データSd1〜Sd4の変化を示す。図5(c)は、受信データSd1〜Sd4に対し、ステップS131における位相調整として、受信パルスS2、S1の実際の入射角θa以外の入射角θbに対応する位相調整を与えた場合における受信データSd1〜Sd4の変化を示す。図5(d)は、図5(b)(c)に基づいて、ステップS132で得られる加算受信データSDの受信電力強度特性Csdを示す。
【0058】
受信データSd1〜Sd4は、図5(a)に示すように、時間軸に対して傾斜した同相位相線φaに沿って互いに同じ位相を持つものとする。ステップS131における位相調整が、受信パルスS2、S1の実際の入射角θaとされた場合には、図5(b)に示すように、受信データSd1〜Sd4の同位相線φaが、時間軸と直行するように、互いに同じ位相に揃えられるので、ステップS132でそれらを複素加算した加算受信データSDは、受信データSd1〜Sd4の受信電力強度が互いに強め合うように加算され、ビームが形成される。これに対し、ステップS131における位相調整が、受信パルスS2、S1の実際の入射角θaと異なる入射角θbとされた場合には、図5(c)に示すように、受信データSd1〜Sd4の同位相線φaが、時間軸の方向に傾斜した状態となるので、ステップS132でそれらの受信データを複素加算した加算受信データSDは、受信電力強度が小さくなる。
【0059】
ステップS132で得られる加算受信データSDに関する受信電力強度特性Csdが、図5(d)に示される。図5(d)において、横軸は入射角θであり、縦軸は加算受信データSDの受信電力強度である。図5(d)では、受信パルスS2、S1の実際の入射角θaの方位に、加算受信データSDの受信電力強度の最大ピークSpが得られる。
【0060】
次のステップS14では、目標検出処理が実行される。この目標検出処理では、図5(d)で得られた加算受信データSDの受信電力強度特性Csdを用いて、所定の閾値を越える最大ピークSpが存在するかどうかが判定され、所定の閾値を越える最大ピークSpが存在すると判定された場合には、目標が存在することを表わす目標検出情報ITが出力される。この目標検出情報ITは、例えば、レーダ装置100を搭載した車両の前方に、前方車両が存在することを意味する。
【0061】
次のステップS15は、ステップS14から目標検出情報ITが出力されたときに、その目標に対する距離情報IDと、その目標の相対速度情報ISを出力する。これらの距離情報IDおよび相対速度情報ISは、送信信号と受信信号の周波数差から同時に算出される。この算出処理はよく知られているので、詳細な説明は省略する。
【0062】
次のステップS16では、ステップS14から目標検出情報ITが出力されたときに、この目標に関する角度情報Iθが算出される。実施の形態1では、受信チャネルCH1〜CH4で得られた奇数アドレス受信データSdoと、受信チャネルCH5〜CH8で得られた偶数アドレス受信データSdeの間で、目標に関する角度情報Iθが算出される。具体的には、受信チャネルCH1、CH5からなる受信チャネルペアCH1/CH5、受信チャネルCH2、CH6からなる受信チャネルペアCH2/CH6、受信チャネルCH3、CH7からなる受信チャネルペアCH3/CH7、および受信チャネルCH4、CH8からなる受信チャネルペアCH4/CH8に基づいて、目標に関する角度情報Iθが算出される。これらの各受信チャネルペアにおける2つの受信チャネルの間のアンテナ開口径Lは、D=2dであるので、L=7dとなる。D=dとした従来のアンテナ装置では、L=5dであるので、実施の形態1では、アンテナ開口径Lを従来のアンテナ装置よりも拡大することができる。このアンテナ開口径Lの拡大により、角度情報Iθの分解能が向上し、より正確な角度情報Iθを得ることができる。
【0063】
この角度情報Iθは、ステップS12の出力、すなわちステップS13でDBF処理を受ける前の偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに基づいて、算出される。受信チャネルCH1〜CH4では、それぞれ奇数アドレス受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oが得られる。受信チャネルCH5〜CH8では、それぞれ偶数アドレス受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eが得られる。受信チャネルペアCH1/CH5では、受信データSd1o、Sd1eから角度情報Iθ1を算出する。受信チャネルCH2/CH6では、受信データSd2o、Sd2eから角度情報Iθ2を算出する。受信チャネルペアCH3/CH7では、受信データSd3o、Sd3eから角度情報Iθ3を算出する。受信チャネルCH4/CH8では、受信データSd4o、Sd4eから角度情報Iθ4を算出する。
【0064】
図6は、これらの角度情報Iθ1〜Iθ4を算出する原理を説明するための説明図である。図6では、2つのアンテナ素子Ra、Rbが素子間隔Edを隔てて配置されたアンテナアレイを想定し、このアンテナアレイに対し、入射角θ1の方向から受信波S1(t)が入射され、それぞれのアンテナ素子Ra、Rbから受信信号ra(t)、rb(t)が得られる場合を考える。受信波S1(t)の到来波面を符号Swで示す。受信信号ra(t)、rb(t)は、到来波S1(t)に対しそれぞれ0、およびφ1の位相を持つものとする。言い換えれば、受信信号ra(t)と受信信号rb(t)との位相差がφ1である。
【0065】
このとき、2つのアンテナ素子Ra、Rbから得られる受信信号ra(t)、rb(t)は、ノイズを無視すると、次式で表わすことができる。
ra(t)=S1(t)
rb(t)=ejφ1S1(t)・・・(式1)
(式1)から受信信号ra(t)とrb(t)の関係を導出すると、次の(式2)が得られる。
rb(t)=ra(t)ejφ1・・・(式2)
この(式2)から、受信信号ra(t)、rb(t)の間の位相差φ1は、次の(式3)で求めることができる。
φ1=arg{rb(t)/ra(t)}・・・(式3)
【0066】
また、図6から位相差φ1は、素子間隔Edと次の(式4)の関係にある。なお、(式4)において、λは受信波S1(t)の波長である。
φ1=(2π/λ)Ed×sinθ1・・・(式4)
この式をθ1について解くと、次の(式5)が得られる。
θ1=sin−1(λ×φ1/2π×Ed)・・・(式5)
(式5)に(式3)を代入すると入射角θ1が求められる。つまり、受信信号ra(t)とrb(t)の位相差φ1から、入射角θ1を得ることができる。
【0067】
実施の形態1の受信チャネルペアCH1/CH5では、受信データSd1eが受信信号ra(t)に、受信データSd1oが受信信号rb(t)に、受信チャネルCH1、CH5の間のアンテナ開口径Lが素子間隔Edに、角度情報Iθ1が角度θ1にそれぞれ対応し、(式5)に基づき、角度情報Iθ1を求める。また、受信チャネルペアCH2/CH6では、受信データSd2eが受信信号ra(t)に、受信データSd2oが受信信号rb(t)に、受信チャネルCH2、CH6の間のアンテナ開口径Lが素子間隔Edに、角度情報Iθ2が角度θ1にそれぞれ対応し、(式5)に基づき、角度情報Iθ2を求める。
【0068】
同様に、受信チャネルペアCH3/CH7では、受信データSd3eが受信信号ra(t)に、受信データSd3oが受信信号rb(t)に、受信チャネルCH3、CH7の間のアンテナ開口径Lが素子間隔Edに、角度情報Iθ3が角度θ1にそれぞれ対応し、(式5)に基づき、角度情報Iθ3を求める。また、受信チャネルペアCH4/CH8では、受信データSd4eが受信信号ra(t)に、受信データSd4oが受信信号rb(t)に、受信チャネルCH4、CH8の間のアンテナ開口径Lが素子間隔Edに、角度情報Iθ4が角度θ1にそれぞれ対応し、(式5)に基づき、角度情報Iθ4を求める。ステップS16では、例えば、これらの角度情報Iθ1〜Iθ4を平均して目標に関する角度情報Iθを算出する。
【0069】
実施の形態1では、ステップS12の出力、すなわちステップS13でDBF処理を受ける前の偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに基づいて、角度情報Iθ1〜Iθ4が算出されるので、この角度情報Iθ1〜Iθ4には、位置合わせ位相調整量θPが加算されていない。しかし、これらの角度情報Iθ1〜Iθ4は、単に符号反転補正を行なうだけで、位置合わせ位相調整量θPを加算した角度情報に変換することができる。ステップS16で求められた角度情報Iθ1〜Iθ4には、符号反転補正が行なわれる。
【0070】
角度情報Iθ1〜Iθ4に単に符号反転補正を行なうだけで、角度情報Iθ1〜Iθ4が、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報に変換される理由について、説明する。例えば受信チャネルペアCH1/CH5の間で角度情報Iθ1を算出する場合について、この符号反転補正について説明する。偶数アドレス受信データSd1eは受信チャネルCH5で得られ、また奇数アドレス受信データSd1oは受信チャネルCH1で得られるが、これらの受信データSd1e、Sd1oは、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データであり、位置合わせ位相調整量θPが加算されておらず、図3(c)に示すように、それぞれ−12Δφ、−5Δφの位相差を持つ。これらの受信データSd1e、Sd1oの間の位相差をφbとすると、この位相差φbは、φb=−12Δφ−(−5Δφ)=−7Δφとなる。これに対して、位置合わせ位相調整量θPを加算した後の受信データSd1e、Sd1oは、図3(d)に示すように、それぞれ+2Δφ、−5Δφの位相差を持っており、これらの間の位相差をφcとすると、この位相差φcは、φc=+2Δφ−(−5Δφ)=7Δφとなる。すなわち、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データSd1から算出された位相差φbを、位置合わせ位相調整量θPを加算した位相差φcに変換するには、−符号を+符号に補正する符号反転補正を行なえばよい。他の受信チャネルペアCH2/CH6、CH3/CH7、CH4/CH8で算出される角度情報Iθ2、Iθ3、Iθ4にも、同じ符号反転補正が行なわれ、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報とされる。
【0071】
(5)実施の形態1の効果の説明
実施の形態1では、目標に関する角度情報Iθは、各受信チャネルペアから算出した角度情報Iθ1〜Iθ4を平均して算出される。角度情報Iθ1〜Iθ4の分解能Δθは、Δθ=(λ/L)で定義される。実施の形態1では、送信アンテナT1、T2と受信アンテナアレイ20との間隔Dが、受信アンテナR1〜R4の間隔dに対し、D=2dに設定され、その結果、アンテナ開口径Lは拡大され、L=7dとなるので、分解能Δθをより小さくすることができ、より正確な角度情報Iθを得ることができる。
【0072】
次に、車載レーダ装置100の有効測角範囲Rθついて、説明する。この有効測角範囲Rθは、車載レーダ装置100が、受信パルスS1、S2に基づいて、目標に関する角度情報Iθを正確に測定できる角度範囲である。(式4)で表わされるφ1は、位相差であり、この位相差φ1が−πと+πの間にある範囲において、(式5)に基づいて、入射角θ1を、曖昧さを含まずに、正確に求めることができる。言い換えれば、(式5)において、φ1を−πと+πの間の範囲としたときの入射角θ1の範囲が、有効測角範囲Rθである。
【0073】
この有効測角範囲Rθは、素子間隔Edが大きくなれば、それに伴なって小さくなる。一例として、素子間隔EdをEd=0.6λとし、位相差φ1を−π≦φ1≦+πとすると、(式5)から、有効測角範囲Rθは、−56度≦Rθ≦+56度となる。これに対し、実施の形態1では、アンテナ開口径Lは、L=7dであり、間隔dを、例えば実用的な値、d=0.6λとすると、L=4.2λとなる。このアンテナ開口径L=4.2λを素子間隔Edとし、位相差φ1を−π≦φ1≦+πとすると、(式5)から、有効測角範囲Rθは、−6.8度≦Rθ≦+6.8度となる。
【0074】
このように実施の形態1では、D=2dとすることにより、アンテナ開口径LをL=7dに拡大し、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、より正確な角度情報Iθを得ることができ、併せて、有効角度範囲Rθを、実用的に±6.8度の範囲とすることができる。
【0075】
(6)実施の形態1の一般的な説明
実施の形態1では、送信アンテナT1、T2と受信アンテナアレイ20との間隔Dが、受信アンテナR1〜R4の間隔dに対し、D=2dの関係に設定され、その結果、アンテナ開口径Lを、L=7dに拡大することができた。この発明は、一般的には、間隔Dを間隔dよりも大きくすることを特徴とする。言い換えれば、間隔Dと間隔dについて、D=md(mは係数)の関係とした場合に、係数mを1よりも大きくすることが特徴である。この係数mは、実用的には、1.1≦m≦10.0を満足する任意の値とされる。実施の形態1は、m=2.0とした場合に相当する。
【0076】
実施の形態2.
実施の形態2では、係数mをm=2.5に設定し、これに伴なって、位置合わせ係数PがP=+16とされる。これ以外では、実施の形態2は、実施の形態1と同じに構成される。
【0077】
図7は、実施の形態2における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す。この図7(a)〜図7(e)は、それぞれ図3(a)〜図3(e)にそれぞれ対応するが、実施の形態2では、係数mが2.5とされたために、具体的な経路差が相違し、また、アンテナの等価配置における仮想送信アンテナT1/T2の間隔が相違する。その他は、図3(a)〜図3(e)と同じである。
【0078】
実施の形態2では、係数mが2.5であり、間隔D=2.5dであるので、受信アンテナR1〜R4は、アンテナの配置ラインA−Aに沿って、送信アンテナT2から、それぞれ間隔5.5d、4.5d、3.5d、2.5dだけ離れている。したがって、送信パルスP2の送信時において、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図7(a)の左側に示すように、送信アンテナT2の等位相面t2から、それぞれ+5.5Δr、+4.5Δr、+3.5Δr、+2.5Δrだけ離れる。
【0079】
送信パルスP1の送信時においても、図7(a)の右側に示すように、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、送信アンテナT2の等電位面t2から、それぞれ+5.5Δr、+4.5Δr、+3.5Δr、+2.5Δrだけ離れる。なお、図7(a)において、送信アンテナT1、T2の等位相面t1、t2の間の経路差は、+Δ8rである。
【0080】
送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における経路差を総合して考えると、図7(b)のようになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図7(b)の左側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+5.5Δr、+4.5Δr、+3.5Δr、+2.5Δrだけ離れる。送信アンテナT2、T1の間の経路差が+8Δrであるので、送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図7(b)の右側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+13.5Δr、+12.5Δr、+11.5Δr、+10.5Δrだけ離れる結果となる。
【0081】
図7(b)に示す経路差を位相差に置き換えると、図7(c)に示す通りになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図7(c)の左側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−5.5Δφ、−4.5Δφ、−3.5Δφ、−2.5Δφの位相差を持つことになる。送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図7(c)の右側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−13.5Δφ、−12.5Δφ、−11.5Δφ、−10.5Δφの位相差を持つことになる。
【0082】
図7(c)に示す位相差は、送信アンテナT1、T2が、受信アンテナアレイ20の両側にそれぞれ間隔D(D=2.5d)だけ離れて配置された実施の形態2において、送信アンテナT2を基準とした位相差であるが、ここで、送信アンテナT1の位置を仮想的に送信アンテナT2の位置に合わせるための、位置合わせ位相調整量θPを考える。実施の形態2において、この位置合わせ位相調整量θPは、+16Δφであり、位置合わせ係数Pと位相差Δφを乗算したものである。位置合わせ係数Pは、P=6+4mで求められ、実施の形態2では、m=2.5であるので、位置合わせ係数Pは+16となる。位相調整量θPは、図7(c)の右側に示す送信パルスP1の送信時における各位相差に、それぞれ加算される。図7(c)の左側に示す送信パルスP2の送信時における各位相差には、位相調整量θPは加算されない。この位置合わせ位相調整量θPを送信パルスP1の送信時における各位相差に加算することにより、図7(e)に示すように、2つの送信アンテナT1、T2が、同じ位置に配置された1つの仮想送信アンテナT1/T2に等価される。
【0083】
仮想送信アンテナT1/T2を基準とした場合、図7(e)に示すアンテナの等価配置が得られる。送信パルスP2の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図7(d)の左側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ−5.5Δφ、−4.5Δφ、−3.5Δφ、−2.5Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の左側に、等価的な受信アンテナアレイ20Lを形成する結果になる。また、送信パルスP1の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図7(d)の右側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ+2.5Δφ、+3.5Δφ、+4.5Δφ、+5.5Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の右側に、等価的な受信アンテナアレイ20Rを形成する結果になる。
【0084】
等価的な受信アンテナアレイ20Lは、送信アンテナT2から送信される送信パルスP2に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Lの受信アンテナR1〜R4は、図7(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH1〜CH4を形成する。これらの受信チャネルCH1〜CH4は、奇数アドレス受信データSdoに対応し、受信チャネルCH1〜CH4では、それぞれ奇数アドレス受信データSdoの受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oがそれぞれ得られる。
【0085】
等価的な受信アンテナアレイ20Rは、送信アンテナT1から送信される送信パルスP1に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Rの受信アンテナR1〜R4は、図7(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH5〜CH8を形成する。これらの受信チャネルCH5〜CH8は、偶数アドレス受信データSdeに対応し、受信チャネルCH5〜CH8では、それぞれ偶数アドレス受信データSdeの受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eがそれぞれ得られる。
【0086】
実施の形態2でも、図4のステップS16において、ステップS12の出力、すなわちステップS13でDBF処理を受ける前の偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに基づいて、角度情報Iθ1〜Iθ4が算出されるので、この角度情報Iθ1〜Iθ4を、位置合わせ位相調整量θPを加算した角度情報に変換するため、角度情報Iθ1〜Iθ4に、符号反転補正が行なわれる。
【0087】
実施の形態2において、角度情報Iθ1〜Iθ4に単に符号反転補正を行なうだけで、角度情報Iθ1〜Iθ4が、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報に変換される理由について、例えば受信チャネルペアCH1/CH5の間で角度情報Iθ1を算出する場合を例にして説明する。偶数アドレス受信データSd1eは受信チャネルCH5で得られ、また奇数アドレス受信データSd1oは受信チャネルCH1で得られるが、これらの受信データSd1e、Sd1oは、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データであり、位置合わせ位相調整量θPが加算されておらず、図7(c)に示すように、それぞれ−13.5Δφ、−5.5Δφの位相差を持つ。これらの受信データSd1e、Sd1oの間の位相差をφbとすると、この位相差φbは、φb=−13.5Δφ−(−5.5Δφ)=−8Δφとなる。これに対して、位置合わせ位相調整量θPを加算した後の受信データSd1e、Sd1oは、図7(d)に示すように、それぞれ+2.5Δφ、−5.5Δφの位相差を持っており、これらの間の位相差をφcとすると、この位相差φcは、φc=+2.5Δφ−(−5.5Δφ)=8Δφとなる。すなわち、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データSd1から算出された位相差φbを、位置合わせ位相調整量θPを加算した位相差φcに変換するには、−符号を+符号に補正する符号反転補正を行なえばよい。他の受信チャネルペアCH2/CH6、CH3/CH7、CH4/CH8で算出される角度情報Iθ2、Iθ3、Iθ4にも、同じ符号反転補正が行なわれ,位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報とされる。
【0088】
この実施の形態2では、D=2.5dとすることにより、アンテナ開口径LをL=8dに拡大することができ、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、角度情報Iθの精度を向上することができる。
【0089】
実施の形態1では、有効測角範囲Rθが、−6.8度≦Rθ≦+6.8度であるが、実施の形態2では、アンテナ開口径Lが、L=8dであり、間隔dを、例えば実用的な値、d=0.6λとすると、L=4.8λとなる。このアンテナ開口径L=4.8λを素子間隔Edとし、位相差φ1を−π≦φ1≦+πとすると、(式5)から、有効測角範囲Rθは、−6.0度≦Rθ≦+6.0度となる。
【0090】
このように実施の形態2では、D=2.5dとすることにより、アンテナ開口径LをL=8dに拡大し、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、より正確な角度情報Iθを得ることができ、併せて、有効角度範囲Rθを、実用的に±6.0度の範囲とすることができる。
【0091】
実施の形態3.
実施の形態2では、係数mを、m=2.5としたが、実施の形態3では、係数mをm=2.7に設定し、これに伴なって位置合わせ係数PがP=16.8とされる。これ以外では、実施の形態3は、実施の形態1と同じに構成される。
【0092】
実施の形態3では、実施の形態1と同様に、信号処理器50が、図4のステップS13において、受信データSdをDFT処理するように構成される。ステップS13において、DFT処理に代わって、FFT処理することが考えられるが、このFFT処理では、係数mが、1/2の整数倍でないと、ステップS4における空間のチャネル方向の受信データ処理を行なうことがでない。実施の形態3では、係数mが2.7であり、これは1/2の整数倍ではないが、信号処理器50がステップS13において、受信データSdをDFT処理することにより、ステップS13における空間のチャネル方向の受信データSdの処理を行なうことができる。
【0093】
図8は、実施の形態3における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す。この図8(a)〜図8(e)は、それぞれ図3(a)〜図3(e)にそれぞれ対応するが、実施の形態3では、係数mが2.7とされたために、具体的な経路差が相違し、また、アンテナの等価配置における仮想送信アンテナT1/T2の間隔が相違する。その他は、図3(a)〜図3(e)と同じである。
【0094】
実施の形態3では、係数mが2.7であり、間隔D=2.7dであるので、受信アンテナR1〜R4は、アンテナの配置ラインA−Aに沿って、送信アンテナT2から、それぞれ間隔5.7d、4.7d、3.7d、2.7dだけ離れているので、送信パルスP2の送信時において、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図8(a)の左側に示すように、送信アンテナT2の等位相面t2からそれぞれ+5.7Δr、+4.7Δr、+3.7Δr、+2.7Δrだけ離れる。
【0095】
送信パルスP1の送信時においても、図8(a)の右側に示すように、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、送信アンテナT2の等電位面t2から、それぞれ+5.7Δr、+4.7Δr、+3.7Δr、+2.7Δrだけ離れる。なお、図8(a)において、送信アンテナT1、T2の等位相面t1、t2の間の経路差は、8.4Δrである。
【0096】
送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における経路差を総合して考えると、図8(b)のようになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図8(b)の左側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+5.7Δr、+4.7Δr、+3.7Δr、+2.7Δrだけ離れる。送信アンテナT2、T1の間の経路差が+8.4Δrであるので、送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図8(b)の右側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+14.1Δr、+13.1Δr、+12.1Δr、+11.1Δrだけ離れる結果となる。
【0097】
図8(b)に示す経路差を位相差に置き換えると、図8(c)に示す通りになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図8(c)の左側に示す通り、送信アンテナT2を基準として、それぞれ−5.7Δφ、−4.7Δφ、−3.7Δφ、−2.7Δφの位相差を持つことになる。送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図8(c)の右側に示す通り、送信アンテナT2を基準としてそれぞれ−14.1Δφ、−13.1Δφ、−12.1Δφ、−11.1Δφの位相差を持つことになる。
【0098】
図8(c)に示す位相差は、送信アンテナT1、T2が、受信アンテナアレイ20の両側にそれぞれ間隔D(D=2.7d)だけ離れて配置された実施の形態3において、送信アンテナT2を基準とした位相差であるが、ここで、実施の形態3において、送信アンテナT1の位置を仮想的に送信アンテナT2の位置に合わせるための、位置合わせ位相調整量θPを考える。実施の形態3において、この位置合わせ位相調整量θPは、+16.8Δφであり、位置合わせ係数P=16.8と位相差Δφを乗算したものである。位置合わせ係数Pは、P=6+4mで求められ、実施の形態3ではm=2.7であるので、位置合わせ係数Pは、+16.8となる。位相調整量θPは、図8(c)の右側に示す送信パルスP1の送信時における各位相差に、それぞれ加算される。図8(c)の左側に示す送信パルスP2の送信時における各位相差には、位相調整量θPは加算されない。この位置合わせ位相調整量θPを送信パルスP1の送信時における各位相差に加算することにより、図8(e)に示すように、2つの送信アンテナT1、T2が、同じ位置に配置された1つの仮想送信アンテナT1/T2に等価される。
【0099】
仮想送信アンテナT1/T2を基準とした場合、図8(e)に示すアンテナの等価配置が得られる。送信パルスP2の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図8(d)の左側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ−5.7Δφ、−4.7Δφ、−3.7Δφ、−2.7Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の左側に、等価的な受信アンテナアレイ20Lを形成する結果になる。また、送信パルスP1の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図8(d)の右側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ+2.7Δφ、+3.7Δφ、+4.7Δφ、+5.7Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の右側に、等価的な受信アンテナアレイ20Rを形成する結果になる。
【0100】
等価的な受信アンテナアレイ20Lは、送信アンテナT2から送信される送信パルスP2に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Lの受信アンテナR1〜R4は、図8(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH1〜CH4を形成する。これらの受信チャネルCH1〜CH4は、奇数アドレス受信データSdoに対応し、受信チャネルCH1〜CH4では、それぞれ奇数アドレス受信データSdoの受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oがそれぞれ得られる。
【0101】
等価的な受信アンテナアレイ20Rは、送信アンテナT1から送信される送信パルスP1に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Rの受信アンテナR1〜R4は、図8(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH5〜CH8を形成する。これらの受信チャネルCH5〜CH8は、偶数アドレス受信データSdeに対応し、受信チャネルCH5〜CH8では、それぞれ偶数アドレス受信データSdeの受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eがそれぞれ得られる。
【0102】
実施の形態3でも、図4のステップS16において、ステップS12の出力、すなわちステップS13でDBF処理を受ける前の偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに基づいて、角度情報Iθ1〜Iθ4が算出されるので、この角度情報Iθ1〜Iθ4を、位置合わせ位相調整量θPを加算した角度情報に変換するため、角度情報Iθ1〜Iθ4に、符号反転補正が行なわれる。
【0103】
実施の形態3において、角度情報Iθ1〜Iθ4に単に符号反転補正を行なうだけで、角度情報Iθ1〜Iθ4が、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報に変換される理由について、例えば受信チャネルペアCH1/CH5の間で角度情報Iθ1を算出する場合を例にして説明する。偶数アドレス受信データSd1eは受信チャネルCH5で得られ、また奇数アドレス受信データSd1oは受信チャネルCH1で得られるが、これらの受信データSd1e、Sd1oは、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データであり、位置合わせ位相調整量θPが加算されておらず、図8(c)に示すように、それぞれ−14.1Δφ、−5.7Δφの位相差を持つ。これらの受信データSd1e、Sd1oの間の位相差をφbとすると、この位相差φbは、φb=−14.1Δφ−(−5.7Δφ)=−8.4Δφとなる。これに対して、位置合わせ位相調整量θPを加算した後の受信データSd1e、Sd1oは、図8(d)に示すように、それぞれ+2.7Δφ、−5.7Δφの位相差を持っており、これらの間の位相差をφcとすると、この位相差φcは、φc=+2.7Δφ−(−5.7Δφ)=8.4Δφとなる。すなわち、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データSd1から算出された位相差φbを、位置合わせ位相調整量θPを加算した位相差φaに変換するには、−符号を+符号に補正する符号反転補正を行なえばよい。他の受信チャネルペアCH2/CH6、CH3/CH7、CH4/CH8で算出される角度情報Iθ2、Iθ3、Iθ4にも、同じ符号反転補正が行なわれ、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報とされる。
【0104】
この実施の形態3では、D=2.7dとすることにより、アンテナ開口径LをL=8.4dに拡大することができ、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、角度情報Iθの精度を向上することができる。
【0105】
実施の形態2では、有効測角範囲Rθが、−6.0度≦Rθ≦+6.0度であるが、実施の形態3では、アンテナ開口径Lが、L=8.4dであり、間隔dを、例えば実用的な値、d=0.6λとすると、L=5.04λとなる。このアンテナ開口径L=5.04λを素子間隔Edとし、位相差φ1を−π≦φ1≦+πとすると、(式5)から、有効測角範囲Rθは、−5.7度≦Rθ≦+5.7度となる。
【0106】
このように実施の形態3では、D=2.7dとすることにより、アンテナ開口径LをL=8.4dに拡大し、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、より正確な角度情報Iθを得ることができ、併せて、有効角度範囲Rθを、実用的に±5.7度の範囲とすることができる。
【0107】
実施の形態4.
実施の形態3では、係数mを、m=2.7としたが、実施の形態4では、m=3.2に設定し、これに伴なって位置合わせ係数PがP=18.8とされる。これ以外では、実施の形態4は、実施の形態1と同じに構成される。
【0108】
実施の形態4では、実施の形態1と同様に、信号処理器50が、図4のステップS13において、受信データSdをDFT処理するように構成される。ステップS13において、DFT処理に代わって、FFT処理とすることが考えられるが、このFFT処理では、係数mが、1/2の整数倍でないと、ステップS4における空間のチャネル方向の受信データ処理を行なうことがでない。実施の形態4では、係数mが3.2であり、これは1/2の整数倍ではないが、信号処理器50が、ステップS13において、受信データSdをDFT処理することにより、ステップS13における空間のチャネル方向の受信データSdの処理を行なうことができる。
【0109】
図9は、実施の形態4における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す。この図9(a)〜図9(e)は、それぞれ図3(a)〜図3(e)にそれぞれ対応するが、実施の形態4では、係数mが3.2とされたために、具体的な経路差が相違し、また、アンテナの等価配置における仮想送信アンテナT1/T2の間隔が相違する。その他は、図3(a)〜図3(e)と同じである。
【0110】
実施の形態4では、係数mが3.2であり、間隔D=3.2dであるので、受信アンテナR1〜R4は、アンテナの配置ラインA−Aに沿って、送信アンテナT2から、それぞれ間隔6.2d、5.2d、4.2d、3.2dだけ離れている。したがって、送信パルスP2の送信時において、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図9(a)の左側に示すように、送信アンテナT2の等位相面t2から、それぞれ+6.2Δr、+5.2Δr、+4.2Δr、+3.2Δrだけ離れる。
【0111】
送信パルスP1の送信時においても、図9(a)の右側に示すように、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、送信アンテナT2の等電位面t2から、それぞれ+6.2Δr、+5.2Δr、+4.2Δr、+3.2Δrだけ離れる。なお、図9(a)において、送信アンテナT1、T2の等位相面t1、t2の間の経路差は、9.4Δrである。
【0112】
送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における経路差を総合して考えると、図9(b)のようになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図9(b)の左側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+6.2Δr、+5.2Δr、+4.2Δr、+3.2Δrだけ離れる。送信アンテナT2、T1の間の経路差が+9.4Δrであるので、送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図9(b)の右側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+15.6Δr、+14.6Δr、+13.6Δr、+12.6Δrだけ離れる結果となる。
【0113】
図9(b)に示す経路差を位相差に置き換えると、図9(c)に示す通りになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図9(c)の左側に示す通り、送信アンテナT2を基準として、それぞれ−6.2Δφ、−5.2Δφ、−4.2Δφ、−3.2Δφの位相差を持つことになる。送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図9(c)の右側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−15.6Δφ、−14.6Δφ、−13.6Δφ、−12.6Δφの位相差を持つことになる。
【0114】
図9(c)に示す位相差は、送信アンテナT1、T2が、受信アンテナアレイ20の両側にそれぞれ間隔D(D=3.2d)だけ離れて配置された実施の形態4において、送信アンテナT2を基準とした位相差であるが、ここで、実施の形態4において、送信アンテナT1の位置を仮想的に送信アンテナT2の位置に合わせるための、位置合わせ位相調整量θPを考える。実施の形態4において、この位置合わせ位相調整量θPは、+18.8Δφであり、位置合わせ係数P=18.8と位相差Δφを乗算したものである。位置合わせ係数Pは、P=6+4mで求められ、実施の形態4ではm=3.2であるので、位置合わせ係数Pは18.8となる。位相調整量θPは、図9(c)の右側に示す送信パルスP1の送信時における各位相差に、それぞれ加算される。図9(c)の左側に示す送信パルスP2の送信時における各位相差には、位相調整量θPは加算されない。この位置合わせ位相調整量θPを送信パルスP1の送信時における各位相差に加算することにより、図9(e)に示すように、2つの送信アンテナT1、T2が、同じ位置に配置された1つの仮想送信アンテナT1/T2に等価される。
【0115】
仮想送信アンテナT1/T2を基準とした場合、図9(e)に示すアンテナの等価配置が得られる。送信パルスP2の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図9(d)の左側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ−6.2Δφ、−5.2Δφ、−4.2Δφ、−3.2Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の左側に、等価的な受信アンテナアレイ20Lを形成する結果になる。また、送信パルスP1の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図9(d)の右側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ+3.2Δφ、+4.2Δφ、+5.2Δφ、+6.2Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の右側に、等価的な受信アンテナアレイ20Rを形成する結果になる。
【0116】
等価的な受信アンテナアレイ20Lは、送信アンテナT2から送信される送信パルスP2に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Lの受信アンテナR1〜R4は、図9(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH1〜CH4を形成する。これらの受信チャネルCH1〜CH4は、奇数アドレス受信データSdoに対応し、受信チャネルCH1〜CH4では、それぞれ奇数アドレス受信データSdoの受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oがそれぞれ得られる。
【0117】
等価的な受信アンテナアレイ20Rは、送信アンテナT1から送信される送信パルスP1に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Rの受信アンテナR1〜R4は、図9(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH5〜CH8を形成する。これらの受信チャネルCH5〜CH8は、偶数アドレス受信データSdeに対応し、受信チャネルCH5〜CH8では、それぞれ偶数アドレス受信データSdeの受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eがそれぞれ得られる。
【0118】
実施の形態4でも、図4のステップS16において、ステップS12の出力、すなわちステップS13でDBF処理を受ける前の偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに基づいて、角度情報Iθ1〜Iθ4が算出されるので、この角度情報Iθ1〜Iθ4を、位置合わせ位相調整量θPを加算した角度情報に変換するため、角度情報Iθ1〜Iθ4に、符号反転補正が行なわれる。
【0119】
実施の形態4において、角度情報Iθ1〜Iθ4に単に符号反転補正を行なうだけで、角度情報Iθ1〜Iθ4が、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報に変換される理由について、例えば受信チャネルペアCH1/CH5の間で角度情報Iθ1を算出する場合を例にして説明する。偶数アドレス受信データSd1eは受信チャネルCH5で得られ、また奇数アドレス受信データSd1oは受信チャネルCH1で得られるが、これらの受信データSd1e、Sd1oは、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データであり、位置合わせ位相調整量θPが加算されておらず、図9(c)に示すように、それぞれ−15.6Δφ、−6.2Δφの位相差を持つ。これらの受信データSd1e、Sd1oの間の位相差をφbとすると、この位相差φbは、φb=−15.6Δφ−(−6.2Δφ)=−9.4Δφとなる。これに対して、位置合わせ位相調整量θPを加算した後の受信データSd1e、Sd1oは、図9(d)に示すように、それぞれ+3.2Δφ、−6.2Δφの位相差を持っており、これらの間の位相差をφcとすると、この位相差φcは、φc=+3.2Δφ−(−6.2Δφ)=9.4Δφとなる。すなわち、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データSd1から算出された位相差φbを、位置合わせ位相調整量θPを加算した位相差φcに変換するには、−符号を+符号に補正する符号反転補正を行なえばよい。他の受信チャネルペアCH2/CH6、CH3/CH7、CH4/CH8で算出される角度情報Iθ2、Iθ3、Iθ4にも、同じ符号反転補正が行なわれ、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報とされる。
【0120】
この実施の形態4では、D=3.2dにすることにより、アンテナ開口径LをL=9.4dに拡大することができ、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、角度情報Iθの精度を向上することができる。
【0121】
実施の形態3では、有効測角範囲Rθが、−5.7度≦Rθ≦+5.7度であるが、実施の形態4では、アンテナ開口径Lが、L=9.4dであり、間隔dを、例えば実用的な値、d=0.6λとすると、L=5.64λとなる。このアンテナ開口径L=5.64λを素子間隔Edとし、位相差φ1を−π≦φ1≦+πとすると、(式5)から、有効測角範囲Rθは、−5.1度≦Rθ≦+5.1度となる。
【0122】
このように実施の形態4では、D=3.2dとすることにより、アンテナ開口径LをL=9.4dに拡大し、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、より正確な角度情報Iθを得ることができ、併せて、有効角度範囲Rθを、実用的に±5.1度の範囲とすることができる。
【0123】
実施の形態5.
実施の形態4では、係数mを、m=3.2としたが、実施の形態5では、係数mをm=3.5に設定し、これに伴って位置合わせ係数PがP=20.0とされる。これ以外では、実施の形態5は、実施の形態1と同じに構成される。
【0124】
図10は、実施の形態5における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す。この図10(a)〜図10(e)は、それぞれ図3(a)〜図3(e)にそれぞれ対応するが、実施の形態5では、係数mが3.5とされたために、具体的な経路差が相違し、また、アンテナの等価配置における仮想送信アンテナT1/T2の間隔が相違する。その他は、図3(a)〜図3(e)と同じである。
【0125】
実施の形態5では、係数mが3.5であり、間隔D=3.5dであるので、受信アンテナR1〜R4は、アンテナの配置ラインA−Aに沿って、送信アンテナT2から、それぞれ間隔6.5d、5.5d、4.5d、3.5dだけ離れている。したがって、送信パルスP2の送信時において、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図10(a)の左側に示すように、送信アンテナT2の等位相面t2から、それぞれ+6.5Δr、+5.5Δr、+4.5Δr、+3.5Δrだけ離れる。
【0126】
送信パルスP1の送信時においても、図10(a)の右側に示すように、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、送信アンテナT2の等電位面t2から、それぞれ+6.5Δr、+5.5Δr、+4.5Δr、+3.5Δrだけ離れる。なお、図10(a)において、送信アンテナT1、T2の等位相面t1、t2の間の経路差は、+10.0Δrである。
【0127】
送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における経路差を総合して考えると、図10(b)のようになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図10(b)の左側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+6.5Δr、+5.5Δr、+4.5Δr、+3.5Δrだけ離れる。送信アンテナT2、T1の間の経路差が+10.0Δrであるので、送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図10(b)の右側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+16.5Δr、+15.5Δr、+14.5Δr、+13.5Δrだけ離れる結果となる。
【0128】
図10(b)に示す経路差を位相差に置き換えると、図10(c)に示す通りになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図10(c)の左側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−6.5Δφ、−5.5Δφ、−4.5Δφ、−3.5Δφの位相差を持つことになる。送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図10(c)の右側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−16.5Δφ、−15.5Δφ、−14.5Δφ、−13.5Δφの位相差を持つことになる。
【0129】
図10(c)に示す位相差は、送信アンテナT1、T2が、受信アンテナアレイ20の両側にそれぞれ間隔D(D=3.5d)だけ離れて配置された実施の形態5において、送信アンテナT2を基準とした位相差であるが、ここで、実施の形態5において、送信アンテナT1の位置を仮想的に送信アンテナT2の位置に合わせるための、位置合わせ位相調整量θPを考える。実施の形態5において、この位置合わせ位相調整量θPは、+20.0Δφであり、位置合わせ係数P=20.0と位相差Δφを乗算したものである。位置合わせ係数Pは、P=6+4mで求められ、実施の形態5ではm=3.5であるので、位置合わせ係数Pは+20.0となる。位相調整量θPは、図10(c)の右側に示す送信パルスP1の送信時における各位相差に、それぞれ加算される。図10(c)の左側に示す送信パルスP2の送信時における各位相差には、位相調整量θPは加算されない。この位置合わせ位相調整量θPを送信パルスP1の送信時における各位相差に加算することにより、図10(e)に示すように、2つの送信アンテナT1、T2が、同じ位置に配置された1つの仮想送信アンテナT1/T2に等価される。
【0130】
仮想送信アンテナT1/T2を基準とした場合、図10(e)に示すアンテナの等価配置が得られる。送信パルスP2の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図10(d)の左側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ−6.5Δφ、−5.5Δφ、−4.5Δφ、−3.5Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の左側に、等価的な受信アンテナアレイ20Lを形成する結果になる。また、送信パルスP1の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図10(d)の右側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準にして、それぞれ+3.5Δφ、+4.5Δφ、+5.5Δφ、+6.5Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の右側に、等価的な受信アンテナアレイ20Rを形成する結果になる。
【0131】
等価的な受信アンテナアレイ20Lは、送信アンテナT2から送信される送信パルスP2に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Lの受信アンテナR1〜R4は、図10(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH1〜CH4を形成する。これらの受信チャネルCH1〜CH4は、奇数アドレス受信データSdoに対応し、受信チャネルCH1〜CH4では、それぞれ奇数アドレス受信データSdoの受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oがそれぞれ得られる。
【0132】
等価的な受信アンテナアレイ20Rは、送信アンテナT1から送信される送信パルスP1に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Rの受信アンテナR1〜R4は、図10(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH5〜CH8を形成する。これらの受信チャネルCH5〜CH8は、偶数アドレス受信データSdeに対応し、受信チャネルCH5〜CH8では、それぞれ偶数アドレス受信データSdeの受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eがそれぞれ得られる。
【0133】
実施の形態5でも、図4のステップS16において、ステップS12の出力、すなわちステップS13でDBF処理を受ける前の偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに基づいて、角度情報Iθ1〜Iθ4が算出されるので、この角度情報Iθ1〜Iθ4を、位置合わせ位相調整量θPを加算した角度情報に変換するため、角度情報Iθ1〜Iθ4に、符号反転補正が行なわれる。
【0134】
実施の形態5において、角度情報Iθ1〜Iθ4に単に符号反転補正を行なうだけで、角度情報Iθ1〜Iθ4が、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報に変換される理由について、例えば受信チャネルペアCH1/CH5の間で角度情報Iθ1を算出する場合を例にして説明する。偶数アドレス受信データSd1eは受信チャネルCH5で得られ、また奇数アドレス受信データSd1oは受信チャネルCH1で得られるが、これらの受信データSd1e、Sd1oは、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データであり、位置合わせ位相調整量θPが加算されておらず、図10(c)に示すように、それぞれ−16.5Δφ、−6.5Δφの位相差を持つ。これらの受信データSd1e、Sd1oの間の位相差をφbとすると、この位相差φbは、φb=−16.5Δφ−(−6.5Δφ)=−10.0Δφとなる。これに対して、位置合わせ位相調整量θPを加算した後の受信データSd1e、Sd1oは、図10(d)に示すように、それぞれ+3.5Δφ、−6.5Δφの位相差を持っており、これらの間の位相差をφcとすると、この位相差φcは、φc=+3.5Δφ−(−6.5Δφ)=10.0Δφとなる。すなわち、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データSd1から算出された位相差φbを、位置合わせ位相調整量θPを加算した位相差φcに変換するには、−符号を+符号に補正する符号反転補正を行なえばよい。他の受信チャネルペアCH2/CH6、CH3/CH7、CH4/CH8で算出される角度情報Iθ2、Iθ3、Iθ4にも、同じ符号反転補正が行なわれ、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報とされる。
【0135】
この実施の形態5では、D=3.5dとすることにより、アンテナ開口径LをL=10.0dに拡大することができ、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、角度情報Iθの精度を向上することができる。
【0136】
実施の形態4では、有効測角範囲Rθが、−5.1度≦Rθ≦+5.1度であるが、実施の形態5では、アンテナ開口径Lが、L=10.0dであり、間隔dを、例えば実用的な値、d=0.6λとすると、L=6.0λとなる。このアンテナ開口径L=6.0λを素子間隔Edとし、位相差φ1を−π≦φ1≦+πとすると、(式5)から、有効測角範囲Rθは、−4.8度≦Rθ≦+4.8度となる。
【0137】
このように実施の形態5では、D=3.5dとすることにより、アンテナ開口径LをL=10.0dに拡大し、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、より正確な角度情報Iθを得ることができ、併せて、有効角度範囲Rθを、実用的に±4.8度の範囲とすることができる。
【0138】
実施の形態6.
実施の形態5では、係数mを、m=3.5としたが、実施の形態6では、m=3.8に設定し、これに伴なって位置合わせ係数PがP=21.2とされる。これ以外では、実施の形態6は、実施の形態1と同じに構成される。
【0139】
実施の形態6では、実施の形態1と同様に、信号処理器50が、図4のステップS13において、受信データSdをDFT処理するように構成される。DFT処理に代わって、FFT処理することが考えられるが、このFFT処理では、係数mが、1/2の整数倍でないと、ステップS13における空間のチャネル方向の受信データ処理を行なうことがでない。実施の形態6では、係数mが3.8であり、これは1/2の整数倍ではないが、信号処理器50が、ステップS13において、受信データSdをDFT処理することにより、ステップS13における空間のチャネル方向の受信データSdの処理を行なうことができる。
【0140】
図11は、実施の形態6における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す。この図11(a)〜図11(e)は、それぞれ図3(a)〜図3(e)にそれぞれ対応するが、実施の形態6では、係数mが3.8とされたために、具体的な経路差が相違し、また、アンテナの等価配置における仮想送信アンテナT1/T2の間隔が相違する。その他は、図3(a)〜図3(e)と同じである。
【0141】
実施の形態6では、係数mが3.8であり、間隔D=3.8dであるので、受信アンテナR1〜R4は、アンテナの配置ラインA−Aに沿って、送信アンテナT2から、それぞれ間隔6.8d、5.8d、4.8d、3.8dだけ離れている。したがって、送信パルスP2の送信時において、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図11(a)の左側に示すように、送信アンテナT2の等位相面t2からそれぞれ+6.8Δr、+5.8Δr、+4.8Δr、+3.8Δrだけ離れる。
【0142】
送信パルスP1の送信時においても、図11(a)の右側に示すように、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、送信アンテナT2の等電位面t2から、それぞれ+6.8Δr、+5.8Δr、+4.8Δr、+3.8Δrだけ離れる。なお、図11(a)において、送信アンテナT1、T2の等位相面t1,t2の間の経路差は、+10.6Δrである。
【0143】
送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における経路差を総合して考えると、図11(b)のようになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図11(b)の左側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+6.8Δr、+5.8Δr、+4.8Δr、+3.8Δrだけ離れる。送信アンテナT2、T1の間の経路差が+10.6Δrであるので、送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図11(b)の右側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+17.4Δr、+16.4Δr、+15.4Δr、+14.4Δrだけ離れる結果となる。
【0144】
図11(b)に示す経路差を位相差に置き換えると、図11(c)に示す通りになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図11(c)の左側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−6.8Δφ、−5.8Δφ、−4.8Δφ、−3.8Δφの位相差を持つことになる。送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図11(c)の右側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−17.4Δφ、−16.4Δφ、−15.4Δφ、−14.4Δφの位相差を持つことになる。
【0145】
図11(c)に示す位相差は、送信アンテナT1、T2が、受信アンテナアレイ20の両側にそれぞれ間隔D(D=3.8d)だけ離れて配置された実施の形態6において、送信アンテナT2を基準とした位相差であるが、ここで、実施の形態6において、送信アンテナT1の位置を仮想的に送信アンテナT2の位置に合わせるための、位置合わせ位相調整量θPを考える。実施の形態6において、この位置合わせ位相調整量θPは、+21.2Δφであり、位置合わせ係数P=21.2と位相差Δφを乗算したものである。位置合わせ係数Pは、P=6+4mで求められ、実施の形態6ではm=3.8であるので、位置合わせ係数Pは+21.2となる。位相調整量θPは、図11(c)の右側に示す送信パルスP1の送信時における各位相差に、それぞれ加算される。図11(c)の左側に示す送信パルスP2の送信時における各位相差には、位相調整量θPは加算されない。この位置合わせ位相調整量θPを送信パルスP1の送信時における各位相差に加算することにより、図11(e)に示すように、2つの送信アンテナT1、T2が、同じ位置に配置された1つの仮想送信アンテナT1/T2に等価される。
【0146】
仮想送信アンテナT1/T2を基準とした場合、図11(e)に示すアンテナの等価配置が得られる。送信パルスP2の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図11(d)の左側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ−6.8Δφ、−5.8Δφ、−4.8Δφ、−3.8Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の左側に、等価的な受信アンテナアレイ20Lを形成する結果になる。また、送信パルスP1の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図11(d)の右側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準にして、それぞれ+3.8Δφ、+4.8Δφ、+5.8Δφ、+6.8Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の右側に、等価的な受信アンテナアレイ20Rを形成する結果になる。
【0147】
等価的な受信アンテナアレイ20Lは、送信アンテナT2から送信される送信パルスP2に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Lの受信アンテナR1〜R4は、図11(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH1〜CH4を形成する。これらの受信チャネルCH1〜CH4は、奇数アドレス受信データSdoに対応し、受信チャネルCH1〜CH4では、それぞれ奇数アドレス受信データSdoの受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oがそれぞれ得られる。
【0148】
等価的な受信アンテナアレイ20Rは、送信アンテナT1から送信される送信パルスP1に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Rの受信アンテナR1〜R4は、図11(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH5〜CH8を形成する。これらの受信チャネルCH5〜CH8は、偶数アドレス受信データSdeに対応し、受信チャネルCH5〜CH8では、それぞれ偶数アドレス受信データSdeの受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eがそれぞれ得られる。
【0149】
実施の形態6でも、図4のステップS16において、ステップS12の出力、すなわちステップS13でDBF処理を受ける前の偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに基づいて、角度情報Iθ1〜Iθ4が算出されるので、この角度情報Iθ1〜Iθ4を、位置合わせ位相調整量θPを加算した角度情報に変換するため、角度情報Iθ1〜Iθ4に、符号反転補正が行なわれる。
【0150】
実施の形態6において、角度情報Iθ1〜Iθ4に単に符号反転補正を行なうだけで、角度情報Iθ1〜Iθ4が、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報に変換される理由について、例えば受信チャネルペアCH1/CH5の間で角度情報Iθ1を算出する場合を例にして説明する。偶数アドレス受信データSd1eは受信チャネルCH5で得られ、また奇数アドレス受信データSd1oは受信チャネルCH1で得られるが、これらの受信データSd1e、Sd1oは、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データであり、位置合わせ位相調整量θPが加算されておらず、図11(c)に示すように、それぞれ−17.4Δφ、−6.8Δφの位相差を持つ。これらの受信データSd1e、Sd1oの間の位相差をφbとすると、この位相差φbは、φb=−17.4Δφ−(−6.8Δφ)=−10.6Δφとなる。これに対して、位置合わせ位相調整量θPを加算した後の受信データSd1e、Sd1oは、図11(d)に示すように、それぞれ+3.8Δφ、−6.8Δφの位相差を持っており、これらの間の位相差をφcとすると、この位相差φcは、φc=+3.8Δφ−(−6.8Δφ)=10.6Δφとなる。すなわち、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データSd1から算出された位相差φbを、位置合わせ位相調整量θPを加算した位相差φcに変換するには、−符号を+符号に補正する符号反転補正を行なえばよい。他の受信チャネルペアCH2/CH6、CH3/CH7、CH4/CH8で算出される角度情報Iθ2、Iθ3、Iθ4にも、同じ符号反転補正が行なわれ、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報とされる。
【0151】
この実施の形態6では、D=3.8dとすることにより、アンテナ開口径LをL=10.6dに拡大することができ、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、角度情報Iθの精度を向上することができる。
【0152】
実施の形態5では、有効測角範囲Rθが、−4.8度≦Rθ≦+4.8度であるが、実施の形態6では、アンテナ開口径Lが、L=10.6dであり、間隔dを、例えば実用的な値、d=0.6λとすると、L=6.36λとなる。このアンテナ開口径L=6.36λを素子間隔Edとし、位相差φ1を−π≦φ1≦+πとすると、(式5)から、有効測角範囲Rθは、−4.5度≦Rθ≦+4.5度となる。
【0153】
このように実施の形態6では、D=3.8dとすることにより、アンテナ開口径LをL=10.6dに拡大し、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、より正確な角度情報Iθを得ることができ、併せて、有効角度範囲Rθを、実用的に±4.5度の範囲とすることができる。
【0154】
実施の形態7.
実施の形態6では、係数mを、m=3.8としたが、実施の形態7では、係数mをm=4.5に設定し、これに伴なって位置合わせ係数PがP=+24.0とされる。これ以外では、実施の形態7は、実施の形態1と同じに構成される。
【0155】
図12は、実施の形態7における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す。この図12(a)〜図12(e)は、それぞれ図3(a)〜図3(e)にそれぞれ対応するが、実施の形態7では、係数mが4.5とされたために、具体的な経路差が相違し、また、アンテナの等価配置における仮想送信アンテナT1/T2の間隔が相違する。その他は、図3(a)〜図3(e)と同じである。
【0156】
実施の形態7では、係数mが4.5であり、間隔D=4.5dであるので、受信アンテナR1〜R4は、アンテナの配置ラインA−Aに沿って、送信アンテナT2から、それぞれ間隔7.5d、6.5d、5.5d、4.5dだけ離れている。したがって、送信パルスP2の送信時において、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図12(a)の左側に示すように、送信アンテナT2の等位相面t2からそれぞれ+7.5Δr、+6.5Δr、+5.5Δr、+4.5Δrだけ離れる。
【0157】
送信パルスP1の送信時においても、図12(a)の右側に示すように、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、送信アンテナT2の等電位面t2から、それぞれ+7.5Δr、+6.5Δr、+5.5Δr、+4.5Δrだけ離れる。なお、図12(a)において、送信アンテナT1、T2の等位相面t1、t2の間の経路差は、+12.0Δrである。
【0158】
送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における経路差を総合して考えると、図12(b)のようになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図12(b)の左側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+7.5Δr、+6.5Δr、+5.5Δr、+4.5Δrだけ離れる。送信アンテナT2、T1の間経路差が+12.0Δrであるので、送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図12(b)の右側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+19.5Δr、+18.5Δr、+17.5Δr、+16.5Δrだけ離れる結果となる。
【0159】
図12(b)に示す経路差を位相差に置き換えると、図12(c)に示す通りになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図12(c)の左側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−7.5Δφ、−6.5Δφ、−5.5Δφ、−4.5Δφの位相差を持つことになる。送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図12(c)の右側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−19.5Δφ、−18.5Δφ、−17.5Δφ、−16.5Δφの位相差を持つことになる。
【0160】
図12(c)に示す位相差は、送信アンテナT1、T2が、受信アンテナアレイ20の両側にそれぞれ間隔D(D=4.5d)だけ離れて配置された実施の形態7において、送信アンテナT2を基準とした位相差であるが、ここで、実施の形態7において、送信アンテナT1の位置を仮想的に送信アンテナT2の位置に合わせるための、位置合わせ位相調整量θPを考える。実施の形態7において、この位置合わせ位相調整量θPは、+24.0Δφであり、位置合わせ係数P=24.0と位相差Δφを乗算したものである。位置合わせ係数Pは、P=6+4mで求められ、実施の形態7ではm=4.5であるので、位置合わせ係数Pは24.0となる。位相調整量θPは、図12(c)の右側に示す送信パルスP1の送信時における各位相差に、それぞれ加算される。図12(c)の左側に示す送信パルスP2の送信時における各位相差には、位相調整量θPは加算されない。この位置合わせ位相調整量θPを送信パルスP1の送信時における各位相差に加算することにより、図12(e)に示すように、2つの送信アンテナT1、T2が、同じ位置に配置された1つの仮想送信アンテナT1/T2に等価される。
【0161】
仮想送信アンテナT1/T2を基準とした場合、図12(e)に示すアンテナの等価配置が得られる。送信パルスP2の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図12(d)の左側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ−7.5Δφ、−6.5Δφ、−5.5Δφ、−4.5Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の左側に、等価的な受信アンテナアレイ20Lを形成する結果になる。また、送信パルスP1の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図12(d)の右側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準にして、それぞれ+4.5Δφ、+5.5Δφ、+6.5Δφ、+7.5Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の右側に、等価的な受信アンテナアレイ20Rを形成する結果になる。
【0162】
等価的な受信アンテナアレイ20Lは、送信アンテナT2から送信される送信パルスP2に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Lの受信アンテナR1〜R4は、図12(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH1〜CH4を形成する。これらの受信チャネルCH1〜CH4は、奇数アドレス受信データSdoに対応し、受信チャネルCH1〜CH4では、それぞれ奇数アドレス受信データSdoの受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oがそれぞれ得られる。
【0163】
等価的な受信アンテナアレイ20Rは、送信アンテナT1から送信される送信パルスP1に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Rの受信アンテナR1〜R4は、図12(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH5〜CH8を形成する。これらの受信チャネルCH5〜CH8は、偶数アドレス受信データSdeに対応し、受信チャネルCH5〜CH8では、それぞれ偶数アドレス受信データSdeの受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eがそれぞれ得られる。
【0164】
実施の形態7でも、図4のステップS16において、ステップS12の出力、すなわちステップS13でDBF処理を受ける前の偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに基づいて、角度情報Iθ1〜Iθ4が算出されるので、この角度情報Iθ1〜Iθ4を、位置合わせ位相調整量θPを加算した角度情報に変換するため、角度情報Iθ1〜Iθ4に、符号反転補正が行なわれる。
【0165】
実施の形態7において、角度情報Iθ1〜Iθ4に単に符号反転補正を行なうだけで、角度情報Iθ1〜Iθ4が、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報に変換される理由について、例えば受信チャネルペアCH1/CH5の間で角度情報Iθ1を算出する場合を例にして説明する。偶数アドレス受信データSd1eは受信チャネルCH5で得られ、また奇数アドレス受信データSd1oは受信チャネルCH1で得られるが、これらの受信データSd1e、Sd1oは、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データであり、位置合わせ位相調整量θPが加算されておらず、図12(c)に示すように、それぞれ−19.5Δφ、−7.5Δφの位相差を持つ。これらの受信データSd1e、Sd1oの間の位相差をφbとすると、この位相差φbは、φb=−19.5Δφ−(−7.5Δφ)=−12.0Δφとなる。これに対して、位置合わせ位相調整量θPを加算した後の受信データSd1e、Sd1oは、図12(d)に示すように、それぞれ+4.5Δφ、−7.5Δφの位相差を持っており、これらの間の位相差をφcとすると、この位相差φcは、φc=+4.5Δφ−(−7.5Δφ)=12.0Δφとなる。すなわち、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データSd1から算出された位相差φbを、位置合わせ位相調整量θPを加算した位相差φaに変換するには、−符号を+符号に補正する符号反転補正を行なえばよい。他の受信チャネルペアCH2/CH6、CH3/CH7、CH4/CH8で算出される角度情報Iθ2、Iθ3、Iθ4にも、同じ符号反転補正が行なわれ、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報とされる。
【0166】
この実施の形態7では、D=4.5dとすることにより、アンテナ開口径LをL=12.0dに拡大することができ、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、角度情報Iθの精度を向上することができる。
【0167】
実施の形態6では、有効測角範囲Rθが、−4.5度≦Rθ≦+4.5度であるが、これに対し、実施の形態7では、アンテナ開口径Lが、L=12.0dであり、間隔dを、例えば実用的な値、d=0.6λとすると、L=7.2λとなる。このアンテナ開口径L=7.2λを素子間隔Edとし、位相差φ1を−π≦φ1≦+πとすると、(式5)から、有効測角範囲Rθは、−4.0度≦Rθ≦+4.0度となる。
【0168】
このように実施の形態7では、D=4.5dとすることにより、アンテナ開口径LをL=12.0dに拡大し、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、より正確な角度情報Iθを得ることができ、併せて、有効角度範囲Rθを、実用的に±4.0度の範囲とすることができる。
【0169】
実施の形態8.
実施の形態7では、係数mを、m=4.5としたが、実施の形態8では、係数mをm=6.0に設定し、これに伴なって位置合わせ係数PがP=30.0とされる。これ以外では、実施の形態8は、実施の形態1と同じに構成される。
【0170】
図13は、実施の形態8における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す。この図13(a)〜図13(e)は、それぞれ図3(a)〜図3(e)にそれぞれ対応するが、実施の形態8では、係数mが6.0とされたために、具体的な経路差が相違し、また、アンテナの等価配置における仮想送信アンテナT1/T2の間隔が相違する。その他は、図3(a)〜図3(e)と同じである。
【0171】
実施の形態8では、係数mが6.0であり、間隔D=6.0dであるので、受信アンテナR1〜R4は、アンテナの配置ラインA−Aの沿って、送信アンテナT2から、それぞれ間隔9.0d、8.0d、7.0d、6.0dだけ離れている。したがって、送信パルスP2の送信時において、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図13(a)の左側に示すように、送信アンテナT2の等位相面t2から、それぞれ+9.0Δr、+8.0Δr、+7.0Δr、+6.0Δrだけ離れる。
【0172】
送信パルスP1の送信時においても、図13(a)の右側に示すように、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、送信アンテナT2の等電位面t2から、それぞれ+9.0Δr、+8.0Δr、+7.0Δr、+6.0Δrだけ離れる。なお、図13(a)において、送信アンテナT1、T2の等位相面t1、t2の間の経路差は、+15.0Δrである。
【0173】
送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における経路差を総合して考えると、図13(b)のようになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図13(b)の左側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+9.0Δr、+8.0Δr、+7.0Δr、+6.0Δrだけ離れる。送信アンテナT2、T1の等位相面t1、t2の間の経路差が+15.0Δrであるので、送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図13(b)の右側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+24.0Δr、+23.0Δr、+22.0Δr、+21.0Δrだけ離れる結果となる。
【0174】
図13(b)に示す経路差を位相差に置き換えると、図13(c)に示す通りになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図13(c)の左側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−9.0Δφ、−8.0Δφ、−7.0Δφ、−6.0Δφの位相差を持つことになる。送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図13(c)の右側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−24.0Δφ、−23.0Δφ、−22.0Δφ、−21.0Δφの位相差を持つことになる。
【0175】
図13(c)に示す位相差は、送信アンテナT1、T2が、受信アンテナアレイ20の両側にそれぞれ間隔D(D=6.0d)だけ離れて配置された実施の形態8において、送信アンテナT2を基準とした位相差であるが、ここで、実施の形態8において、送信アンテナT1の位置を仮想的に送信アンテナT2の位置に合わせるための、位置合わせ位相調整量θPを考える。実施の形態8において、この位置合わせ位相調整量θPは、+30.0Δφであり、位置合わせ係数P=+30.0と位相差Δφを乗算したものである。位置合わせ係数Pは、P=6+4mで求められ、実施の形態8ではm=6.0であるので、位置合わせ係数Pは+30.0となる。位相調整量θPは、図13(c)の右側に示す送信パルスP1の送信時における各位相差に、それぞれ加算される。図13(c)の左側に示す送信パルスP2の送信時における各位相差には、位相調整量θPは加算されない。この位置合わせ位相調整量θPを送信パルスP1の送信時における各位相差に加算することにより、図13(e)に示すように、2つの送信アンテナT1、T2が、同じ位置に配置された1つの仮想送信アンテナT1/T2に等価される。
【0176】
仮想送信アンテナT1/T2を基準とした場合、図13(e)に示すアンテナの等価配置が得られる。送信パルスP2の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図13(d)の左側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ−9.0Δφ、−8.0Δφ、−7.0Δφ、−6.0Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の左側に、等価的な受信アンテナアレイ20Lを形成する結果になる。また、送信パルスP1の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図13(d)の右側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準にして、それぞれ+6.0Δφ、+7.0Δφ、+8.0Δφ、+9.0Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の右側に、等価的な受信アンテナアレイ20Rを形成する結果になる。
【0177】
等価的な受信アンテナアレイ20Lは、送信アンテナT2から送信される送信パルスP2に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Lの受信アンテナR1〜R4は、図13(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH1〜CH4を形成する。これらの受信チャネルCH1〜CH4は、奇数アドレス受信データSdoに対応し、受信チャネルCH1〜CH4では、それぞれ奇数アドレス受信データSdoの受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oがそれぞれ得られる。
【0178】
等価的な受信アンテナアレイ20Rは、送信アンテナT1から送信される送信パルスP1に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Rの受信アンテナR1〜R4は、図13(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH5〜CH8を形成する。これらの受信チャネルCH5〜CH8は、偶数アドレス受信データSdeに対応し、受信チャネルCH5〜CH8では、それぞれ偶数アドレス受信データSdeの受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eがそれぞれ得られる。
【0179】
実施の形態8でも、図4のステップS16において、ステップS12の出力、すなわちステップS13でDBF処理を受ける前の偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに基づいて、角度情報Iθ1〜Iθ4が算出されるので、この角度情報Iθ1〜Iθ4を、位置合わせ位相調整量θPを加算した角度情報に変換するため、角度情報Iθ1〜Iθ4に、符号反転補正が行なわれる。
【0180】
実施の形態8において、角度情報Iθ1〜Iθ4に単に符号反転補正を行なうだけで、角度情報Iθ1〜Iθ4が、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報に変換される理由について、例えば受信チャネルペアCH1/CH5の間で角度情報Iθ1を算出する場合を例にして説明する。偶数アドレス受信データSd1eは受信チャネルCH5で得られ、また奇数アドレス受信データSd1oは受信チャネルCH1で得られるが、これらの受信データSd1e、Sd1oは、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データであり、位置合わせ位相調整量θPが加算されておらず、図13(c)に示すように、それぞれ−24.0Δφ、−9.0Δφの位相差を持つ。これらの受信データSd1e、Sd1oの間の位相差をφbとすると、この位相差φbは、φb=−24.0Δφ−(−9.0Δφ)=−15.0Δφとなる。これに対して、位置合わせ位相調整量θPを加算した後の受信データSd1e、Sd1oは、図13(d)に示すように、それぞれ+6.0Δφ、−9.0Δφの位相差を持っており、これらの間の位相差をφcとすると、この位相差φcは、φc=+6.0Δφ−(−9.0Δφ)=15.0Δφとなる。すなわち、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データSd1から算出された位相差φbを、位置合わせ位相調整量θPを加算した位相差φcに変換するには、−符号を+符号に補正する符号反転補正を行なえばよい。他の受信チャネルペアCH2/CH6、CH3/CH7、CH4/CH8で算出される角度情報Iθ2、Iθ3、Iθ4にも、同じ符号反転補正が行なわれ、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報とされる。
【0181】
この実施の形態8では、D=6.0dとすることにより、アンテナ開口径LをL=15.0dに拡大することができ、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、角度情報Iθの精度を向上することができる。
【0182】
実施の形態7では、有効測角範囲Rθが、−4.0度≦Rθ≦+4.0度であるが、これに対し、実施の形態8では、アンテナ開口径Lが、L=15.0dであり、間隔dを、例えば実用的な値、d=0.6λとすると、L=9.0λとなる。このアンテナ開口径L=9.0λを素子間隔Edとし、位相差φ1を−π≦φ1≦+πとすると、(式5)から、有効測角範囲Rθは、−3.2度≦Rθ≦+3.2度となる。
【0183】
このように実施の形態8では、D=6.0dとすることにより、アンテナ開口径LをL=15.0dに拡大し、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、より正確な角度情報Iθを得ることができ、併せて、有効角度範囲Rθを、実用的に±3.2度の範囲とすることができる。
【0184】
実施の形態9.
実施の形態1〜8では、それぞれ係数mを2.0、2.5、2.7、3.2、3.5、3.8、4.5、6.0に設定したが、この実施の形態9では、一般化して係数mとし、これに伴なって位置合わせ係数PがP=6+4mとされる。この発明では、係数mは1よりも大きな任意の値とされる。これ以外では、実施の形態9は、実施の形態1と同じに構成される。
【0185】
実施の形態9では、実施の形態1と同様に、信号処理器50が、図4のステップS13において、受信データSdをDFT処理するように構成される。DFT処理に代わって、FFT処理とすることが考えられるが、このFFT処理では、係数mが、1/2の整数倍でないと、ステップS13における空間のチャネル方向の受信データ処理を行なうことがでない。実施の形態9では、係数mが1よりも大きい任意の値であり、これは1/2の整数倍とならない場合も含むが、信号処理器50が、ステップS13において、受信データSdをDFT処理することにより、ステップS13における空間のチャネル方向の受信データSdの処理を行なうことができる。
【0186】
図14は、実施の形態9における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す。この図14(a)〜図14(e)は、それぞれ図3(a)〜図3(e)にそれぞれ対応するが、実施の形態9では、具体的な経路差が係数mを用いて一般化され、またアンテナの等価配置における仮想送信アンテナT1/T2の間隔も係数mを用いて一般化される。その他は、図3(a)〜図3(e)と同じである。
【0187】
実施の形態9では、間隔D=mdであるので、受信アンテナR1〜R4は、アンテナの配置ラインA−Aに沿って、送信アンテナT2から、それぞれ間隔(m+3)d、(m+2)d、(m+1)d、mdだけ離れている。したがって、送信パルスP2の送信時において、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図14(a)の左側に示すように、送信アンテナT2の等位相面t2から、それぞれ+(m+3)Δr、+(m+2)Δr、+(m+1)Δr、+mΔrだけ離れる。
【0188】
送信パルスP1の送信時においても、図14(a)の右側に示すように、受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、送信アンテナT2の等電位面t2から、それぞれ+(m+3)Δr、+(m+2)Δr、+(m+1)Δr、+mΔrだけ離れる。なお、図14(a)において、送信アンテナT1、T2の等位相面t1、t2の間の経路差は、+(3+2m)Δrである。
【0189】
送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、送信パルスP2の送信時および送信パルスP1の送信時における経路差を総合して考えると、図14(b)のようになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図14(b)の左側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+(m+3)Δr、+(m+2)Δr、+(m+1)Δr、+mΔrだけ離れる。送信アンテナT2、T1の等位相面t1、t2の間の経路差が+(3+2m)Δrであるので、送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の等位相面r1〜r4は、図14(b)の右側に示す通り、送信アンテナT2の等位相面t2を基準として、それぞれ+(6+3m)Δr、+(5+3m)Δr、+(4+3m)Δr、+(3+3m)Δrだけ離れる結果となる。
【0190】
図14(b)に示す経路差を位相差に置き換えると、図14(c)に示す通りになる。送信パルスP2の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図14(c)の左側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−(m+3)Δφ、−(m+2)Δφ、−(m+1)Δφ、−mΔφの位相差を持つことになる。送信パルスP1の送信時における受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、経路差に依存して、図14(c)の右側に示す通り、送信アンテナT2を基準にして、それぞれ−(6+3m)Δφ、−(5+3m)Δφ、−(4+3m)Δφ、−(3+3m)Δφの位相差を持つことになる。
【0191】
図14(c)に示す位相差は、送信アンテナT1、T2が、受信アンテナアレイ20の両側にそれぞれ間隔D(D=md)だけ離れて配置された実施の形態9において、送信アンテナT2を基準とした位相差であるが、ここで、実施の形態9において、送信アンテナT1の位置を仮想的に送信アンテナT2の位置に合わせるための、位置合わせ位相調整量θPを考える。実施の形態9において、この位置合わせ位相調整量θPは、+(6+4m)Δφであり、位置合わせ係数P=+(6+4m)と位相差Δφを乗算したものである。位相調整量θPは、図14(c)の右側に示す送信パルスP1の送信時における各位相差に、それぞれ加算される。図14(c)の左側に示す送信パルスP2の送信時における各位相差には、位相調整量θPは加算されない。この位置合わせ位相調整量θPを送信パルスP1の送信時における各位相差に加算することにより、図14(e)に示すように、2つの送信アンテナT1、T2が、同じ位置に配置された1つの仮想送信アンテナT1/T2に等価される。
【0192】
仮想送信アンテナT1/T2を基準とした場合、図14(e)に示すアンテナの等価配置が得られる。送信パルスP2の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図14(d)の左側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準として、それぞれ−(m+3)Δφ、−(m+2)Δφ、−(m+1)Δφ、−mΔφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の左側に、等価的な受信アンテナアレイ20Lを形成する結果になる。また、送信パルスP1の送信時においては、受信アンテナR1〜R4の受信信号Sr1〜Sr4は、図14(d)の右側に示すように、仮想送信アンテナT1/T2を基準にして、それぞれ+mΔφ、+(m+1)Δφ、+(m+2)Δφ、+(m+3)Δφの位相差を持ち、仮想送信アンテナT1/T2の右側に、等価的な受信アンテナアレイ20Rを形成する結果になる。
【0193】
等価的な受信アンテナアレイ20Lは、送信アンテナT2から送信される送信パルスP2に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Lの受信アンテナR1〜R4は、図14(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH1〜CH4を形成する。これらの受信チャネルCH1〜CH4は、奇数アドレス受信データSdoに対応し、受信チャネルCH1〜CH4では、それぞれ奇数アドレス受信データSdoの受信データSd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oがそれぞれ得られる。
【0194】
等価的な受信アンテナアレイ20Rは、送信アンテナT1から送信される送信パルスP1に対応しており、等価的な受信アンテナアレイ20Rの受信アンテナR1〜R4は、図14(e)に示すように、それぞれ受信チャネルCH5〜CH8を形成する。これらの受信チャネルCH5〜CH8は、偶数アドレス受信データSdeに対応し、受信チャネルCH5〜CH8では、それぞれ偶数アドレス受信データSdeの受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4eがそれぞれ得られる。
【0195】
実施の形態9でも、図4のステップS16において、ステップS12の出力、すなわちステップS13でDBF処理を受ける前の偶数アドレス受信データSdeおよび奇数アドレス受信データSdoに基づいて、角度情報Iθ1〜Iθ4が算出されるので、この角度情報Iθ1〜Iθ4を、位置合わせ位相調整量θPを加算した角度情報に変換するため、角度情報Iθ1〜Iθ4に、符号反転補正が行なわれる。
【0196】
実施の形態9において、角度情報Iθ1〜Iθ4に単に符号反転補正を行なうだけで、角度情報Iθ1〜Iθ4が、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報に変換される理由について、例えば受信チャネルペアCH1/CH5の間で角度情報Iθ1を算出する場合を例にして説明する。偶数アドレス受信データSd1eは受信チャネルCH5で得られ、また奇数アドレス受信データSd1oは受信チャネルCH1で得られるが、これらの受信データSd1e、Sd1oは、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データであり、位置合わせ位相調整量θPが加算されておらず、図14(c)に示すように、それぞれ−(6+3m)Δφ、−(m+3)Δφの位相差を持つ。これらの受信データSd1e、Sd1oの間の位相差をφbとすると、この位相差φbは、φb=−(6+3m)Δφ−(−(m+3)Δφ)=−(3+2m)Δφとなる。これに対して、位置合わせ位相調整量θPを加算した後の受信データSd1e、Sd1oは、図14(d)に示すように、それぞれ+mΔφ、−(m+3)Δφの位相差を持っており、これらの間の位相差をφcとすると、この位相差φcは、φc=+mΔφ−(−(m+3)Δφ)=(3+2m)Δφとなる。すなわち、ステップS13でDBF処理を受ける前の受信データSd1から算出された位相差φbを、位置合わせ位相調整量θPを加算した位相差φcに変換するには、−符号を+符号に補正する符号反転補正を行なえばよい。他の受信チャネルペアCH2/CH6、CH3/CH7、CH4/CH8で算出される角度情報Iθ2、Iθ3、Iθ4にも、同じ符号反転補正が行なわれ、位置合わせ位相調整量θPを加えた角度情報とされる。
【0197】
この実施の形態9では、アンテナ開口径Lは、L=(2m+3)dで表わすことができ、係数mを1より大きい任意の値とすることにより、アンテナ開口径Lを拡大し、角度情報Iθの分解能Δθを小さくし、角度情報Iθの精度を向上することができる。受信アンテナアレイ20において、間隔dを隔てて等間隔に配置される受信アンテナの数をnとすれば、アンテナ開口径Lは、L=(2m+n−1)dで表わすことができる。実施の形態1〜9では、受信アンテナの数nが4とされたが、この数nを2以上の任意の整数としても、同様にアンテナ開口径Lを拡大することができる。
【0198】
この発明では、係数mが1よりも大きな任意の値とされ、この係数mが大きくなるのに伴なって、アンテナ開口径Lを大きくし、角度情報Iθの分解能Δθを小さくすることができる。しかし、反面、係数mが大きくなるのに伴なって、有効測角範囲Rθは、小さくなる。有効測角範囲Rθは、m=1.1のときに、±9.2度の範囲となるが、実施の形態1〜8のように、mが2.0、2,5、2.7、3.2、3.5、3.8、4.5、6.0と大きくなるのに伴ない、それぞれ±6.0度、±5.7度、±5.1度、±4.8度、±4.5度、±4.0度、±3.2度の範囲と小さくなり、m=10のときに、±2.1度の範囲となる。
【0199】
この発明による車載レーダ装置100では、アンテナ開口径Lを大きくする第1条件と、必要な有効測角範囲Rθを確保する第2条件の両方を満足されることが望まれる。これらの第1、第2条件の両方を満足するには、具体的には、係数mを、1.1≦m≦10.0を満足する任意に値とすることが望ましい。係数mが10.0を超えれば、有効測角範囲Rθが小さくなり過ぎる。また、その中でも、係数mを、2.0≦m≦6.0を満足する任意の値とすることが望ましい。さらに、係数mを、2.5≦m≦4.5を満足する任意の値とすることが望ましい。
【0200】
車載レーダ装置100のアプリケーションが要求する測角範囲に基づいて、有効測角範囲Rθを決定し、この有効測角範囲Rθを満足する中で、係数mをできるだけ大きくし、アンテナ開口径Lをできるだけ大きく設定することも、有効である。
【0201】
他の実施の形態
実施の形態1では、図4のステップS13においてDBF処理を受ける前の、ステップS12の出力を利用して、ステップS7において、角度情報Iθを算出している。言い換えれば、受信チャネルペアCH1/CH5、CH2/CH6、CH3/CH7、CH4/CH8のそれぞれの受信データに基づき、角度情報Iθを算出している。しかし、これに代わり、ビームフォーマ法を用いることもできる。このビームフォーマ法は、8つの受信チャネルCH1〜CH8の受信データSd1e、Sd2e、Sd3e、Sd4e、Sd1o、Sd2o、Sd3o、Sd4oに対して、図5に示すと同様なDBF処理を行ない、その出力に基づいて、角度情報Iθを算出する。
【0202】
このビームフォーマ法はすでに知られた処理であり、その詳細な説明は省略するが、このビームフォーマ法を実施の形態1に適用した場合、アンテナ開口径Lを、L=10.0d、すなわち、図3(e)の受信チャネルCH1と受信チャネルCH8との間の間隔まで拡大することができ、それに応じて角度情報Iθの分解能Δθを小さくすることができる。ビームフォーマ法を実施の形態2〜9に適用した場合には、アンテナ開口径Lを、それぞれ、L=11.0d、L=11.4d、L=12.4d、L=13.0d、13.6d、L=15.0d、L=18.0d、L=(2m+6)dまで、拡大することができる。
【0203】
また、ビームフォーマ法に代わって、すでに知られているMUSIC(Multiple Signal Classification)アルゴリズムまたはESPRIT(Estimationof Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)アルゴリズムを使用することもできる。ESPRITアルゴリズムは、MUSICアルゴリズムから派生したアルゴリズムである。これらのアルゴリズムは、分解能Δθを決める比(λ/L)よりも近接した角度の複数波を分解して測角することができることから、超分解能測角アルゴリズムと呼ばれている。
【0204】
これらのMUSICアルゴリズムまたはESPRITアルゴリズムを実施の形態1に適用した場合、アンテナ開口径Lを、ビームフォーマ法を実施の形態1に適用した場合と同様に、L=10.0d、すなわち、図3(e)の受信チャネルCH1と受信チャネルCH8との間の間隔まで拡大することができ、それに応じて角度情報Iθの分解能Δθを小さくすることができる。これらのMUSICアルゴリズムまたはESPRITアルゴリズムを実施の形態2〜9に適用した場合にも、ビームフォーマ法を実施の形態2〜9に適用した場合と同じ値まで、アンテナ開口径Lを拡大することができる。
【0205】
この発明の各種の変形または変更は、関連する熟練技術者が、この発明の範囲と精神を逸脱しない中で実現可能であって、この発明に記載された各実施の形態には制限されないことと理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0206】
この発明による車載レーダ装置は、自動車などに各種車両に搭載される車載レーダ装置として利用される。
【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1】この発明による車載レーダ装置に実施の形態1を示す構成図である。
【図2】実施の形態1の動作説明図である。
【図3】実施の形態1における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す説明図である。
【図4】実施の形態1における信号処理器の動作を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態1におけるDBF処理の説明図である。
【図6】角度情報の算出原理を示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態2における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す説明図である。
【図8】この発明の実施の形態3における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す説明図である。
【図9】この発明の実施の形態4における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す説明図である。
【図10】この発明の実施の形態5における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す説明図である。
【図11】この発明の実施の形態6における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す説明図である。
【図12】この発明の実施の形態7における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す説明図である。
【図13】この発明の実施の形態8における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す説明図である。
【図14】この発明の実施の形態9における各アンテナの経路差とアンテナの等価配置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0208】
100:車載レーダ装置、10:アンテナ装置、20:受信アンテナアレイ、
R1〜R4:受信アンテナ、T1、T2:送信アンテナ、30:送信系、
40;受信系、50;信号処理器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受信アンテナを含む受信アンテナアレイと、2つの送信アンテナを有し、前記2つの送信アンテナから時分割で交互に送信パルスを送信し、前記送信パルスが目標で反射した受信パルスを前記各受信アンテナで受信し、得られた各受信データを用いて、少なくとも前記目標に関する角度情報を算出する車載レーダ装置であって、
前記受信アンテナアレイは、間隔dを隔てて前記複数の受信アンテナを並べて構成され、前記2つの送信アンテナは、前記受信アンテナアレイの各端部に位置する前記受信アンテナからそれぞれ間隔Dを隔てて配置され、
前記間隔Dは、前記間隔dよりも大きな任意の値に設定されたことを特徴とする車載レーダ装置。
【請求項2】
請求項1記載の車載レーダ装置であって、前記各受信データを処理する信号処理器を有し、この信号処理器が、時間軸に沿って前記各受信データを高速フーリエ変換し、また、前記複数の受信アンテナが並ぶ方向に沿って前記各受信データを離散フーリエ変換することを特徴とする車載レーダ装置。
【請求項3】
請求項1記載の車載レーダ装置であって、前記間隔Dが前記間隔dに対して、D=md(但しmは係数)の関係を有し、前記係数mが、1.1≦m≦10.0を満足する任意の値とされたことを特徴とする車載レーダ装置。
【請求項4】
請求項3記載の車載レーダ装置であって、前記係数mが、2.0≦m≦6.0を満足する任意の値とされたことを特徴とする車載レーダ装置。
【請求項5】
請求項4記載の車載レーダ装置であって、前記係数mが、2.5≦m≦4.5を満足する任意の値とされたことを特徴とする車載レーダ装置。
【請求項1】
複数の受信アンテナを含む受信アンテナアレイと、2つの送信アンテナを有し、前記2つの送信アンテナから時分割で交互に送信パルスを送信し、前記送信パルスが目標で反射した受信パルスを前記各受信アンテナで受信し、得られた各受信データを用いて、少なくとも前記目標に関する角度情報を算出する車載レーダ装置であって、
前記受信アンテナアレイは、間隔dを隔てて前記複数の受信アンテナを並べて構成され、前記2つの送信アンテナは、前記受信アンテナアレイの各端部に位置する前記受信アンテナからそれぞれ間隔Dを隔てて配置され、
前記間隔Dは、前記間隔dよりも大きな任意の値に設定されたことを特徴とする車載レーダ装置。
【請求項2】
請求項1記載の車載レーダ装置であって、前記各受信データを処理する信号処理器を有し、この信号処理器が、時間軸に沿って前記各受信データを高速フーリエ変換し、また、前記複数の受信アンテナが並ぶ方向に沿って前記各受信データを離散フーリエ変換することを特徴とする車載レーダ装置。
【請求項3】
請求項1記載の車載レーダ装置であって、前記間隔Dが前記間隔dに対して、D=md(但しmは係数)の関係を有し、前記係数mが、1.1≦m≦10.0を満足する任意の値とされたことを特徴とする車載レーダ装置。
【請求項4】
請求項3記載の車載レーダ装置であって、前記係数mが、2.0≦m≦6.0を満足する任意の値とされたことを特徴とする車載レーダ装置。
【請求項5】
請求項4記載の車載レーダ装置であって、前記係数mが、2.5≦m≦4.5を満足する任意の値とされたことを特徴とする車載レーダ装置。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図3】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図3】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−47510(P2009−47510A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212911(P2007−212911)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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