説明

車載制御装置

【課題】揮発性メモリに替えて不揮発性メモリにデータを記憶する構成を採用した場合に、バッテリを一旦外して再接続する簡易な初期化手続きによりデータを初期化する。
【解決手段】ECU21にバッテリ22が接続されると、簡易電源回路49は電源線28の電圧VBATTから簡易電源電圧Vp2を生成し、パワーオンリセット回路51はリセット信号SrをLにする。ラッチ回路50は、バッテリ22が外されたことを示すHのバッテリ状態信号Sbを出力する。その後イグニッションスイッチ23がオンすると、マイコン33のメイン処理部34は、バッテリ状態信号SbがHであることを条件にフラッシュメモリ35を初期化し、電源IC32にセット信号Ssを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリが外されて再び接続された後の動作開始時に不揮発性メモリのデータを初期化する車載制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図17は、車載制御装置のマイコンと電源ICに係る構成を示している(特許文献1参照)。車両のエンジンを制御する電子制御装置1(以下、ECU(Electronic Control Unit)と称す)は、イグニッションスイッチ2がオンされると駆動回路3によりメインリレー4をオン駆動する。メイン電源回路5は、バッテリ6からメインリレー4の接点を通して与えられる電圧VBによりメイン電源電圧VOMを生成し、マイコン7のCPUを含むメイン処理部8に供給する。
【0003】
マイコン7には、メイン電源電圧VOM(5V)で動作するメイン処理部8の他に、例えばRAM9のようにサブ電源電圧VOS(3V/3.3V)で動作する低電圧回路処理部も備えている。そこで、サブ電源回路10は、バッテリ6からメインリレー4の接点を通して与えられる電圧VBによりサブ電源電圧VOS1(3.3V)を生成し、RAM9を含む低電圧回路処理部に供給する。
【0004】
RAM9は、ダイアグデータ、各種センサの学習データなどを記憶しており、イグニッションスイッチ2がオフしている間もこれらのデータを保持し続ける必要がある。サブ電源回路11は、バッテリ6から常時接続の専用配線を通して与えられる電圧VBATTによりサブ電源電圧VOS2(3V)を生成する。サブ電源回路11はRAM9にだけサブ電源電圧VOS2を供給するので、サブ電源回路10よりも出力電流能力が小さく構成されている。サブ電源回路10が定電圧出力動作中は、サブ電源回路11は出力動作を停止する。上記駆動回路3、メイン電源回路5およびサブ電源回路10、11は、1つの電源ICとして構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−105001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、車両の排出ガスを規制し環境保全を図る目的から、各国で車載型故障診断装置であるOBD(On Board Diagnosis System)の搭載を義務付ける法規制が進んでいる。OBDは、所定の診断処理を実行し、故障と確定した時には故障内容を記憶保持するとともに、ウォーニングランプを点灯して運転者に知らせる装置である。診断項目としては、例えば触媒劣化、エンジン失火、酸素センサまたは空燃比センサの不良、排気ガス再循環システム(EGR:Exhaust Gas Recirculation)の不良などが挙げられる。記憶されるデータは、過去の故障診断の実施履歴データ、故障時のエンジン関連データなどである。
【0007】
ウォーニングランプが点灯したためディーラーや修理工場に車両が持ち込まれると、通常はECU1に故障診断ツールが接続されてより詳しいデータ解析が行われる。そして、部品交換などの修理がされたときには、故障診断ツールを用いてダイアグデータや学習データの初期化(消去を含む)が行われる。
【0008】
しかしながら、故障診断ツールを利用できない状況下或いはOBDが搭載されていない車両に対しては、より簡易な消去方法として、ECU1から一旦バッテリ6を外して再接続した後イグニッションスイッチをIGONの位置にした時にデータを初期化する手法が用いられる。この場合、マイコン7は、ミラーRAMを備えており、対をなすRAMの対応するデータを比較して差異が生じたときに、バッテリ6が外されてRAM9のデータが不定になったと判断してRAM9の初期化を実行する。
【0009】
上述したようにECU1のRAM9に記憶されたデータを保持するため、車両を使用しない時でもサブ電源回路11を動作させなければならない。車両にはECU1をはじめ多数のECUが搭載されており、こうした各ECUにおけるメモリバックアップのための暗電流の増加が問題になっている。そこで、従来のRAM9に替えてフラッシュメモリやEEPROMなどの不揮発性メモリを用いることが行われている。しかし、RAM9に替えて不揮発性メモリを採用すると、上述した簡易な手法に従ってバッテリ6を外してもデータの消去ができないという新たな問題が生じる。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、揮発性メモリに替えて不揮発性メモリにデータを記憶する構成を採用した場合に、従来と同様にバッテリを一旦外して再接続する簡易な初期化手続きによりデータを初期化できる車載制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載した車載制御装置は、ダイアグデータや学習データなどのデータを記憶する不揮発性メモリを備え、揮発性メモリ(例えばRAM)を採用した構成のときと同様に、バッテリが外されて再び接続された後の動作開始時に不揮発性メモリのデータを初期化(消去を含む)する。この車載制御装置は、電源立ち上がり検出回路、バッテリ状態保持手段および初期化制御手段を備えている。
【0012】
電源立ち上がり検出回路は、バッテリが接続されているときに常にバッテリ電圧を供給する常時電源供給線の電圧立ち上がり時にリセット信号を出力する。バッテリ状態保持手段は、常時電源供給線から電源供給を受けて動作し、リセット信号が入力されるとバッテリ状態信号を第1状態に設定し、その後初期化制御手段からセット信号が入力されるとバッテリ状態信号を第2状態に設定する。ここで、第1状態とは本動作開始の前にバッテリが外されたことを示しており、第2状態とは本動作開始の前にバッテリが外されていないことを示している。
【0013】
初期化制御手段は、バッテリから電源供給を受けて動作を開始した時に、バッテリ状態保持手段からバッテリ状態信号を入力する。入力したバッテリ状態信号が第1状態である場合には、不揮発性メモリのデータを初期化するとともにバッテリ状態保持手段にセット信号を出力する。入力したバッテリ状態信号が第2状態である場合には、不揮発性メモリのデータを初期化しない。
【0014】
この構成によれば、バッテリが外されない限りデータを不揮発性メモリに記憶することができるので、データを記憶し続けるための電流が不要となり暗電流を低減することができる。そして、揮発性メモリを採用した構成のときと同様の簡易な手法により、不揮発性メモリに記憶されたデータを誤りなく適切に初期化できる。
【0015】
請求項2に記載した手段によれば、初期化制御手段は、電源供給を受けて動作を開始した時に、バッテリ状態信号に関する初期診断処理を実行する。すなわち、初期化制御手段は、入力したバッテリ状態信号が第1状態である場合には、バッテリ状態保持手段にセット信号を出力してからバッテリ状態信号を再度入力し、その入力したバッテリ状態信号が第2状態である場合に正常動作と診断する。そして、正常動作との診断結果を得たことを条件として不揮発性メモリのデータを初期化する。
【0016】
この初期診断処理により、初期化制御手段にバッテリ状態信号の第1状態への固着故障が生じているか否かを診断することができ、故障時において、不揮発性メモリに記憶されたデータを誤って初期化することを防止することができる。
【0017】
請求項3に記載した手段によれば、初期化制御手段は、定期的にバッテリ状態信号に関する定期診断処理を実行する。すなわち、初期化制御手段は、診断フラグを診断状態に設定してからバッテリ状態保持手段にリセット信号を出力し、バッテリ状態保持手段からバッテリ状態信号を入力し、その後バッテリ状態保持手段にセット信号を出力してから診断フラグを非診断状態に設定し、当該入力したバッテリ状態信号が第1状態である場合に正常動作と診断する。これにより、バッテリ状態保持手段の異常などバッテリ状態信号に関する異常を検出できるので、次に電源供給が開始された時の不揮発性メモリの初期化処理の信頼性を高めることができる。
【0018】
加えて、初期化制御手段は、初期診断処理において診断フラグが診断状態である場合には不揮発性メモリのデータを初期化しない。診断フラグが診断状態である場合とは、定期診断処理の実行中に電源が遮断され再び電源が供給された場合なので、バッテリ状態信号は実際のバッテリ状態を反映していない。これにより、定期診断処理に起因して不揮発性メモリに記憶されたデータを誤って初期化することを防止することができる。
【0019】
請求項4に記載した手段によれば、初期化制御手段は、不揮発性のカウンタを備え、電源の供給を受けて動作を開始するごとに、バッテリ状態保持手段から入力したバッテリ状態信号が第1状態であるときにカウンタをインクリメントするとともにバッテリ状態保持手段にセット信号を出力する。そして、カウント値が規定値以上となった場合に不揮発性メモリのデータを初期化する。
【0020】
これによれば、バッテリの取り外し、バッテリの接続および電源の供給からなる一連の操作を規定の回数だけ行うことにより不揮発性メモリのデータが初期化される。その結果、作業者による初期化手順の誤りおよび初期化処理の誤作動による誤消去を防止でき、不揮発性メモリのデータを真に初期化させたい時にだけ確実に初期化できる。
【0021】
請求項5に記載した手段によれば、初期化制御手段は、電源の供給を受けて動作を開始した時に、内燃機関の冷却水温が所定の作業環境温度範囲内にあり、内燃機関の回転数がゼロであり、内燃機関をクランキングしていないことを条件として、バッテリ状態保持手段から入力したバッテリ状態信号が第1状態である場合に、不揮発性メモリのデータを初期化してバッテリ状態保持手段にセット信号を出力する。
【0022】
ディーラーまたは修理工場では、持ち込まれた車両を暫く放置して点検、修理作業環境の温度に近付けた後、点検、修理作業に着手する。検出した水温が所定の作業環境温度範囲内であることを条件とすることにより、作業環境として有り得ない状況下でのメモリデータの初期化を防止できる。また、不揮発性メモリの初期化処理を行うときには、内燃機関を始動させる場合とは異なり内燃機関をクランキングさせない。そこで、検出した回転数がゼロであることおよび内燃機関をクランキングしていないことを条件とすることにより、作業者の初期化意図を正しく反映させることができ、不揮発性メモリのデータを真に初期化させたい時だけ確実に初期化できる。
【0023】
請求項6に記載した手段によれば、初期化制御手段は、電源の供給を受けて動作を開始した時にバッテリ状態保持手段から入力したバッテリ状態信号が第1状態である場合、他の車載制御装置もバッテリが外されて再び接続されたことを検出していることを条件として、不揮発性メモリのデータを初期化してバッテリ状態保持手段にセット信号を出力する。これにより、本車載制御装置がバッテリ状態信号を第1状態と誤認識しても、不揮発性メモリを誤って初期化することを防止できる。
【0024】
請求項7に記載した手段によれば、常時電源供給線を通して与えられるバッテリ電圧から制御用電源電圧を生成する電源回路を備えている。バッテリ状態保持手段は、制御用電源電圧をデータ入力信号とし、セット信号をラッチ制御信号とし、リセット信号をリセット入力信号とし、バッテリ状態信号を出力するラッチ回路により構成されている。
【0025】
請求項8に記載した手段によれば、常時電源供給線を通して与えられるバッテリ電圧から制御用電源電圧を生成する電源回路を備えている。バッテリ状態保持手段は、バッテリ状態信号を記憶可能な不揮発性記憶手段と、リセット信号により不揮発性記憶手段に第1状態を書き込み、セット信号により不揮発性記憶手段に第2状態を書き込む書込制御回路とを備えている。
【0026】
請求項9に記載した車載制御装置は、バッテリから供給される電圧をオンオフするイグニッションスイッチと、当該イグニッションスイッチがオン、オフされたことに応じてそれぞれオン駆動、オフ駆動される電源供給用リレーとを備えた車両に搭載されている。車載制御装置は、イグニッションスイッチを介してバッテリの正側端子に接続される第1電源線、電源供給用リレーの常開接点を介してバッテリの正側端子に接続される第2電源線および電源供給用リレーのコイルを介してバッテリの正側端子に接続される第3電源線を入力とし、これらの中から最も高い電圧を持つ電源線を選択して常時電源供給線として出力する選択手段を備えている。
【0027】
イグニッションスイッチがオフの期間は、電源供給用リレーがオフとされ、電源供給用リレーの常開接点が開いているので、第1電源線と第2電源線はバッテリから切り離された状態となっている。これに対し、第3電源線は、電源供給用リレーのコイルを介してバッテリの正側端子に接続されている。電源供給用リレーのコイルに印加する電圧が感動電圧より小さい場合には常開接点は開状態を維持するので、コイルに流れる電流が(感動電圧/コイル抵抗)よりも小さい電流であれば、電源供給用リレーをオン動作させることなくコイルを通して電源電流を供給することができる。選択手段は3つの電源線のうち最も高い電圧を持つ第3電源線を選択して常時電源供給線として出力する。
【0028】
イグニッションスイッチがオンされると、第1電源線はイグニッションスイッチを介してバッテリに接続されるとともに、第3電源線の電圧を低下させて電源供給用リレーのコイルが通電される。選択手段は3つの電源線のうち最も高い電圧を持つ第1電源線を選択する。電源供給用リレーのコイルに通電されると、リレーの動作時間を経て常開接点が閉じられ、第2電源線にバッテリの電圧が供給される。選択手段は第1電源線または第2電源線を選択する。
【0029】
イグニッションスイッチがオフされると、第1電源線への電源供給は遮断されるので、選択手段は第2電源線を選択する。その後、電源供給用リレーのコイルへの通電が停止すると、上述したように第3電源線はコイルを通して電源供給が可能となる。その一方で、コイルへの通電が停止した後リレーの復帰時間を経て常開接点が開くので、第2電源線への電源供給は遮断され、選択手段は第3電源線を選択する。
【0030】
この選択手段を備えたことにより、バッテリと車載制御装置とを繋ぐ専用配線を設けることなく、既存の第1電源線ないし第3電源線から常時電源を供給可能となる。その結果、車載制御装置全体としての低コスト化および信頼性の向上を図ることができる。
【0031】
請求項10に記載した手段によれば、イグニッションスイッチがオンされたことに応じて第1電源線の電圧が立ち上がった時、遅延回路は、少なくとも第1電源線の電圧がバッテリ電圧に整定するまでの時間を待ってから電源供給用リレーをオン駆動させる。電源供給用リレーをオン駆動すると、第3電源線による電源供給ができなくなり、第1電源線による電源供給に切り替わる。遅延回路を設けたことにより、第1電源線による電源供給への切り替え後に、イグニッションスイッチのチャタリング等に起因して第1電源線の電圧すなわち常時電源供給線の電圧が低下することを防止できる。
【0032】
請求項11に記載した車載制御装置は、バッテリの正側端子に繋がる第1電源線に設けられたイグニッションスイッチと、当該イグニッションスイッチがオンまたはオフされたことに応じてオン駆動またはオフ駆動される電源供給用リレーとを備えた車両に搭載されている。車載制御装置は、電源供給用リレーの常開接点を介してバッテリの正側端子に接続される第2電源線および電源供給用リレーのコイルを介してバッテリの正側端子に接続される第3電源線を入力とし、これらの中からより高い電圧を持つ電源線を選択して常時電源供給線として出力する選択手段を備えている。
【0033】
イグニッションスイッチがオフの期間、電源供給用リレーがオフとされ、電源供給用リレーの常開接点が開いているので、第2電源線はバッテリから切り離された状態となっている。これに対し、第3電源線は、電源供給用リレーのコイルを介してバッテリの正側端子に接続されている。コイル電流が小さければ、電源供給用リレーをオン動作させることなくコイルを通して電源電流を供給することができる。そこで、選択手段は第2電源線と第3電源線のうちより高い電圧を持つ第3電源線を選択して常時電源供給線として出力する。
【0034】
イグニッションスイッチがオンされると、電源供給用リレーのコイルに通電され常開接点が閉じられるので、第2電源線にバッテリの電圧が供給される。選択手段は第3電源線に替えて第2電源線を選択する。イグニッションスイッチがオフされた後、電源供給用リレーのコイルへの通電が停止すると、第3電源線はコイルを通して電源供給が可能となる。その一方で、コイルへの通電が停止した後、第2電源線への電源供給は遮断される。選択手段は第2電源線に替えて第3電源線を選択する。
【0035】
この選択手段を備えたことにより、バッテリと車載制御装置とを繋ぐ専用配線を設けることなく、既存の第2電源線または第3電源線により常時電源を供給可能となる。その結果、車載制御装置全体としての低コスト化および信頼性の向上を図ることができる。
【0036】
請求項12に記載した手段によれば、選択手段の出力線とグランドとの間にコンデンサを備えている。このコンデンサは、第2電源線の電圧がバッテリ状態保持手段によるバッテリ状態信号の保持動作に十分な電圧となるまでの期間、選択手段の出力電圧がバッテリ状態保持手段によるバッテリ状態信号の保持動作に十分な電圧を維持する。
【0037】
電源供給用リレーをオン駆動すると、第3電源線による電源供給ができなくなる。一方、電源供給用リレーのコイルに通電されると、リレーの動作時間を経てから常開接点が閉じられ、第2電源線にバッテリの電圧が供給される。上記コンデンサを設けることにより、第3電源線の電圧低下から第2電源線の電圧がバッテリ状態信号の保持動作に十分な電圧に上昇するまでの期間、選択手段の出力電圧を上記保持動作に十分な電圧に確実に維持することができる。
【0038】
請求項13に記載した手段によれば、第2電源線とグランドとの間にコンデンサを備えている。このコンデンサは、イグニッションスイッチがオフされた後電源供給用リレーがオフ駆動されたとき、第3電源線の電圧がバッテリ状態保持手段によるバッテリ状態信号の保持動作に十分な電圧となるまでの期間、第2電源線の電圧がバッテリ状態保持手段によるバッテリ状態信号の保持動作に十分な電圧を維持する。このコンデンサを設けたことにより、イグニッションスイッチがオフ操作されたときに常時電源供給線の電圧が低下することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す電子制御装置の構成図
【図2】簡易電源回路の構成図
【図3】バッテリを接続したときのリセット信号Sr、バッテリ状態信号Sbおよびセット信号Ssの波形図
【図4】メモリデータの初期化処理を示すフローチャート
【図5】本発明の第2の実施形態を示す図1相当図
【図6】バッテリの接続状態および電圧VB1、VB3、VB2の波形を示す図
【図7】本発明の第3の実施形態を示す図1相当図
【図8】図6相当図
【図9】本発明の第4の実施形態を示すバッテリ外れ検出回路のブロック構成図
【図10】本発明の第5の実施形態を示す初期診断処理のフローチャート
【図11】定期診断処理のフローチャート
【図12】診断処理を実行するときのバッテリ状態信号Sbと診断フラグを示す図
【図13】本発明の第6の実施形態を示す図4相当図
【図14】本発明の第7の実施形態を示す図4相当図
【図15】本発明の第8の実施形態を示す車載制御システムの概略構成図
【図16】図4相当図
【図17】従来技術を示す図1相当図
【発明を実施するための形態】
【0040】
各実施形態において実質的に同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態について図1ないし図4を参照しながら説明する。図1は、車載制御装置としてエンジン(内燃機関)を制御する電子制御装置21(以下、ECU21と称す)の構成を示している。車両には、バッテリ22からの電圧をオンオフするイグニッションスイッチ23と、イグニッションスイッチ23がオンまたはオフされたことに応じてオン駆動またはオフ駆動されるメインリレー24(電源供給用リレー)が設けられている。
【0041】
ECU21の端子21a、21b、21c、21dは、それぞれ電源線25、26、27、28に設けられた電源端子である。電源線25は、イグニッションスイッチ23を介してバッテリ22の正側端子に接続されている。電源線26は、メインリレー24の常開接点24aを介してバッテリ22の正側端子に接続されている。電源線27は、メインリレー24のコイル24bを介してバッテリ22の正側端子に接続されている。電源線28は、バッテリ22の正側端子に直接接続されており、ECU21にバッテリ22が接続されているときに常にバッテリ電圧VBを供給する常時電源供給線に相当する。以下の説明において、これら電源線25、26、27、28の電圧をそれぞれVB1、VB2、VB3、VBATTとし、バッテリ22の電圧をVBとする。
【0042】
第2電源線26とグランドとの間には、ダイオード29とツェナーダイオード30が並列に接続されている。ツェナーダイオード30は、ロードダンプなどにより生じるサージ電圧を制限する。電源線27に介在するダイオード31は逆流を防止する。
【0043】
ECU21は、電源IC32とマイコン33を備えている。電源IC32は、電源線26の電圧VB2に基づいてメイン電源電圧VOM(5V)とサブ電源電圧VOS(3.3V)を生成してマイコン33に供給する。また、イグニッションスイッチ23がオンされた時にメインリレー24をオン駆動する。さらに、イグニッションスイッチ23がオンされる前にECU21からバッテリ22が外されたか否かを示すバッテリ状態信号Sbをマイコン33に出力する。
【0044】
マイコン33は、CPUを主体としてメイン電源電圧VOMで動作するメイン処理部34(初期化制御手段)と、フラッシュメモリ(不揮発性メモリ)を含みサブ電源電圧VOSで動作する低電圧回路処理部とを備えている。フラッシュメモリには、ダイアグデータや学習データを記憶して後述する初期化処理の対象となるフラッシュメモリ35と、エンジンの制御プログラム等を記憶して初期化処理の対象とならないフラッシュメモリ(図示せず)とから構成されている。
【0045】
電源IC32において、リレー制御回路36は、電源線25の電圧VB1により動作し、駆動許可信号SdがHレベルになるとMOSFET37をオンしてメインリレー24をオン駆動する。本実施形態では、電圧VB1を駆動許可信号Sdとしているので、電圧VB1が立ち上がると直ちにMOSFET37がオンする。リレー制御回路36は、イグニッションスイッチ23がオフされた後も、マイコン33から電源維持信号Shが入力されている間はMOSFET37をオンし続ける。
【0046】
メイン電源回路38は、電源線26の電圧VB2を入力し、マイコン33のメイン処理部34を動作させるメイン電源電圧VOMを生成する。その構成は、基準電圧生成回路39(バンドギャップリファレンス)、オペアンプ40、トランジスタ41および分圧抵抗42a、42b(電圧検出回路42)からなるシリーズレギュレータである。
【0047】
サブ電源回路43も、電源線26の電圧VB2を入力し、マイコン33のフラッシュメモリ35を含む低電圧回路処理部を動作させるサブ電源電圧VOSを生成する。その構成は、上記基準電圧生成回路39、オペアンプ44、トランジスタ45および分圧抵抗46a、46b(電圧検出回路46)からなるシリーズレギュレータである。
【0048】
簡易電源回路47は、電源線28の電圧VBATTを入力して簡易電源電圧Vp1を生成しソークタイマ48に供給する。簡易電源回路49は、電源線28の電圧VBATTを入力して簡易電源電圧Vp2(制御用電源電圧)を生成し、後述するラッチ回路50とパワーオンリセット回路51に供給する。これら簡易電源回路47、49は、図2に示すように定電流回路52、逆極性に直列に接続されたツェナーダイオード53、54、トランジスタ55および抵抗56から構成されている。ツェナーダイオード53、54のツェナー電圧を5Vに設定すれば、ほぼ5Vの簡易電源電圧Vp1、Vp2を出力する。なお、ソークタイマ48は、イグニッションスイッチ23がオフされた後、所定時間が経過する毎に定期的にメインリレー24をオンさせるものである。
【0049】
ラッチ回路50、パワーオンリセット回路51およびマイコン33は、イグニッションスイッチ23がオンされる前にECU21からバッテリ22が外されたか否かを検出するバッテリ外れ検出回路を構成している。パワーオンリセット回路51は、一旦外されたバッテリ22が再び接続されて、常時電源供給線である電源線28の電圧VBATTが立ち上がり、それとともに簡易電源回路49が出力する簡易電源電圧Vp2が立ち上がった時にリセット信号Srを出力する電源立ち上がり検出回路である。
【0050】
ラッチ回路50は、簡易電源電圧Vp2を電源電圧およびデータ入力信号Dとし、マイコン33のメイン処理部34から出力されるセット信号Ssをラッチ制御信号Lとし、上記リセット信号Srをリセット入力信号/Rとし、反転出力端子/Qからバッテリ状態信号Sbを出力するバッテリ状態保持手段である。ラッチ回路50は、ラッチ制御信号LがHレベルのときに、データ入力信号Dの反転信号を反転出力端子/Qからそのまま出力し、ラッチ制御信号LがLレベルに変化すると、その時のデータ入力信号Dの反転信号を保持して反転出力端子/Qから出力する。反転出力端子/Qから出力されるバッテリ状態信号SbのHレベルは第1状態に相当し、Lレベルは第2状態に相当する。なお、セット信号Ssは抵抗57によりプルダウンされている。
【0051】
次に、図3および図4を参照しながら本実施形態の作用を説明する。既述したように、OBDの法規制を受ける車両のECU21は、所定の診断処理を実行し、故障と確定した時にはダイアグデータや学習データをフラッシュメモリ35に記憶するとともにウォーニングランプを点灯する必要がある。また、OBDの法規制を受けない車両のECU21も、故障状態の特定に資するようにダイアグデータや学習データをフラッシュメモリ35に記憶している。
【0052】
車両に故障が生じてディーラーや修理工場で修理が行われた場合、フラッシュメモリ35に記憶されているダイアグデータや学習データの初期化を行う必要がある。ここで言うデータの初期化とは、データの消去および/または初期値の設定である。本実施形態のECU21は、より簡易な初期化方法として、ECU21から一旦バッテリ22を外して再接続した後イグニッションスイッチ23をオンした時にデータを初期化するメモリデータの初期化処理を実行可能である。こうしたメモリデータの初期化方法は、後述する各実施形態でも同様である。
【0053】
図3は、外されたバッテリ22を接続したときのリセット信号Sr、バッテリ状態信号Sbおよびセット信号Ssの各波形を示している。時刻taでECU21にバッテリ22が接続されると、簡易電源回路49は、電源線28の電圧VBATTを入力として簡易電源電圧Vp2を生成する。ラッチ回路50とパワーオンリセット回路51は、この簡易電源電圧Vp2により動作可能となる。パワーオンリセット回路51は、時刻taからtbまでの間リセット信号SrをLレベルにする。その結果、ラッチ回路50はリセットされ、バッテリ22が外されたことを示すHレベル(第1状態)のバッテリ状態信号Sbを出力する。
【0054】
その後、車両のキーシリンダにキーが挿入されキーロータがIGONの位置になると、イグニッションスイッチ23がオンする。リレー制御回路36は直ちにMOSFET37をオンし、電源IC32はメインリレー24をオン駆動してマイコン33にメイン電源電圧VOMおよびサブ電源電圧VOSを供給する。マイコン33は、図示しないパワーオンリセット回路によりリセット信号が与えられると動作を開始する。
【0055】
マイコン33のメイン処理部34は、動作開始時の初期化ルーチンの一つとして図4に示すメモリデータの初期化処理を実行する。電源IC32からバッテリ状態信号Sbを入力し(ステップS1)、Hレベルであるか否かを判断する(ステップS2)。Hレベル(YES)の場合には、フラッシュメモリ35に記憶されたデータ(全データまたは特定のデータ)を初期化する(ステップS3)。その後、図3に示す時刻tcにおいて電源IC32にパルス状のセット信号Ssを出力する(ステップS4)。これによりラッチ回路50はセットされ、バッテリ状態信号Sbはバッテリ22が外されていないことを示すLレベル(第2状態)になる。
【0056】
その後、イグニッションスイッチ23がオフされるとマイコン33への電源は遮断されるが、電源線28には常時バッテリ電圧VBが供給されているので、ラッチ回路50はLレベルのバッテリ状態信号Sbを出力し続ける。そして、再びイグニッションスイッチ23がオンされたとき、マイコン33は再び上記メモリデータの初期化処理を実行する。このときは、入力したバッテリ状態信号SbがLレベルであるため、ステップS2でNOと判断してフラッシュメモリ35の初期化処理は実行されない。すなわち、バッテリ22が外されて再び接続された後、イグニッションスイッチ23が最初にオンした直後にのみ、フラッシュメモリ35の初期化処理が実行される。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によればダイアグデータや学習データを不揮発性メモリであるフラッシュメモリ35に記憶するので、RAMに記憶する従来のECU1(図17参照)で必要であったサブ電源回路11が不要になる。これにより、イグニッションスイッチ23がオフされている期間に流れる暗電流が格段に小さくなるとともに、電源IC32のチップサイズを縮小できる。
【0058】
RAMを採用していた従来のECU1と同様の手法、すなわちECU21から一旦バッテリ22を外して再接続した後イグニッションスイッチ23をオンした時にフラッシュメモリ35に記憶されたダイアグデータや学習データを誤りなく適切に初期化することができる。
【0059】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図5および図6を参照しながら説明する。図5に示すように、本実施形態ではECU21とバッテリ22とを常時接続する専用配線(電源線28)が省かれている。図5に示すECU21は図1に示したものと同様の機能を有しているが、電源IC61の構成が異なるとともに、電源線26とグランドとの間にコンデンサ62が接続されている点が異なる。電源線25、26、27は、それぞれ第1電源線、第2電源線、第3電源線に相当する。
【0060】
電源IC61は、バッテリ22から第2電源線26を通して供給される電圧に基づいてメイン電源電圧VOMとサブ電源電圧VOSを生成し、バッテリ22から第1、第2、第3電源線25、26、27の何れかを通して供給される電圧に基づいて簡易電源電圧Vp1、Vp2を生成する。
【0061】
選択回路63(選択手段)は、第1、第2、第3電源線25、26、27を入力とし、これらの中から最も高い電圧を持つ電源線を選択し、その選択した電圧VB(SEL)(より正確にはダイオード63a、63b、63cの順方向電圧Vfだけ低下した電圧)を電源線64に対し出力する。電源線64は、ECU21にバッテリ22が接続されている限り常にバッテリ電圧VBを供給する常時電源供給線に相当する。選択回路63は、カソードが電源線64に接続された3つのダイオード63a、63b、63cから構成されており、これらの各アノードはそれぞれ電源線25、26、27に接続されている。
【0062】
タイマ65(遅延回路)は、第1電源線25の電圧VB1により動作する。タイマ65は、イグニッションスイッチ23がオンされて第1電源線25の電圧VB1が立ち上がった時、イグニッションスイッチ23のチャタリングがなくなって第1電源線25の電圧VB1がバッテリ電圧VBに整定するまでの時間が経過した後、リレー制御回路36に対し駆動許可信号Sdを出力する。リレー制御回路36は、駆動許可信号Sdを入力するとMOSFET37をオンしてメインリレー24をオン駆動する。
【0063】
次に、図6を参照しながら本実施形態の作用を説明する。図6は、上から順にバッテリ22の接続状態、第1電源線25の電圧VB1、第3電源線27の電圧VB3、第2電源線26の電圧VB2の波形を表している。時刻t1でECU21にバッテリ22が接続されると、第3電源線27の電圧VB3は、メインリレー24のコイル24bを通してバッテリ電圧VBに近い電圧になる。このとき、イグニッションスイッチ23はオフであり、メインリレー24もオフしているので、第1電源線25の電圧VB1と第2電源線26の電圧VB2はともに0Vである。従って、メイン電源電圧VOMとサブ電源電圧VOSは生成されず、MOSFET37もオフ状態となっている。
【0064】
選択回路63は、電源線25、26、27のうち最も高い電圧を持つ電源線を選択する。すなわち、ダイオード63cが導通し、電源線64にはバッテリ22からコイル24b、ダイオード31、63cを通してバッテリ電圧VBが与えられる。これに伴い電源線64の電圧VB(SEL)を入力とする簡易電源回路47、49が動作を開始し、それぞれ簡易電源電圧Vp1、Vp2を出力する。
【0065】
この時刻t1は図3に示した時刻taに対応し、ラッチ回路50とパワーオンリセット回路51は簡易電源電圧Vp2により動作可能となる。このとき、パワーオンリセット回路51はLレベルのリセット信号Srを出力する。その結果、ラッチ回路50は、リセットされ、バッテリ22が外されたことを示すHレベル(第1状態)のバッテリ状態信号Sbを出力する。
【0066】
この場合、メインリレー24のコイル24bに上記動作に伴う電流が流れる。しかし、メインリレー24は、コイル24bに感動電圧より小さい電圧を印加する限り常開接点24aは開状態を維持するので、上記動作電流が(感動電圧/コイル抵抗)よりも小さい電流であれば、メインリレー24をオン動作させることなくコイル24bを通して動作電流を供給することができる。ソークタイマ48、ラッチ回路50、パワーオンリセット回路51等は何れも消費電流が小さいので、メインリレー24がオンすることはない。
【0067】
その後、時刻t2でイグニッションスイッチ23がオンされると、第1電源線25はイグニッションスイッチ23を介してバッテリ22に接続される。この時、イグニッションスイッチ23の接点にチャタリングが生じる場合がある。チャタリングが発生している途中でリレー制御回路36がMOSFET37をオンすると、第3電源線27の電圧VB3がほぼ0Vに低下した状態で、第1電源線25の電圧VB1も一時的に0Vになる虞があり、選択回路63を介した電源線64の電圧VB(SEL)が一時的に低下する可能性がある。
【0068】
そこで、タイマ65は、イグニッションスイッチ23がオンされた時点から、チャタリングがなくなり第1電源線25の電圧VB1がバッテリ電圧VBに整定するのに十分な時間が経過した後、リレー制御回路36に対し駆動許可信号Sdを出力する。リレー制御回路36は、駆動許可信号Sdの入力によりMOSFET37をオンする(時刻t3)。選択回路63は、電源線25、26、27のうち最も高い電圧を持つ第1電源線25を選択する。すなわち、ダイオード63aが導通し、電源線64にはバッテリ22からイグニッションスイッチ23、ダイオード63aを通してバッテリ電圧VBが与えられる。
【0069】
メインリレー24のコイル24bが通電されると、リレーの動作時間を経て常開接点24aが閉じられ、第2電源線26にバッテリ電圧VBが供給される(時刻t4)。メイン電源回路38とサブ電源回路43は、第2電源線26の電圧VB2を入力とし、それぞれメイン電源電圧VOMとサブ電源電圧VOSを生成する。これに伴いマイコン33は動作を開始し、メイン処理部34は図4に示したメモリデータの初期化処理を実行する。選択回路63は、第1電源線25または第2電源線26を選択し、電源線64の電圧VB(SEL)をバッテリ電圧VBに維持する。
【0070】
時刻t5でイグニッションスイッチ23がオフされると、第1電源線25への電源供給は遮断される。しかし、リレー制御回路36は、マイコン33から電源維持信号Shが入力されていると、その電源維持信号Shの電圧を電源電圧としてMOSFET37をオンし続ける。この間(時刻t5〜t6)、選択回路63は第2電源線26を選択し、電源線64の電圧VB(SEL)をバッテリ電圧VBに維持する。
【0071】
その後、時刻t6でマイコン33が電源維持信号Shの出力を停止すると、リレー制御回路36はMOSFET37をオフする。メインリレー24のコイル24bへの通電が停止すると、再び第3電源線27の電圧VB3がほぼバッテリ電圧VBまで上昇する。その一方で、コイル24bへの通電が停止した後リレーの復帰時間が経過すると、常開接点24aが開き、第2電源線26への電源供給が遮断されるので、メイン電源回路38とサブ電源回路43は動作を停止する。
【0072】
第2電源線26とグランドとの間に接続されたコンデンサ62は、この切り替わり時において、第3電源線27の電圧VB3がラッチ回路50によるバッテリ状態信号Sbの保持動作に十分な電圧となるまでの期間、第2電源線26の電圧がラッチ回路50によるバッテリ状態信号Sbの保持動作に十分な電圧となるように維持する。選択回路63は、時刻t7で第2電源線26に替えて第3電源線27を選択し、電源線64の電圧VB(SEL)をバッテリ電圧VBに維持する。
【0073】
このように、バッテリ22が外されない限り電源線64には常時バッテリ電圧VBが供給されているので、ラッチ回路50はLレベルのバッテリ状態信号Sbを出力し続ける。この間、再びイグニッションスイッチ23がオンされたときは、入力したバッテリ状態信号SbがLレベルであるため、フラッシュメモリ35の初期化処理は実行されない。その後、時刻t8でバッテリ22が外されると、全ての電源線25、26、27への電源供給が途絶えるため、電源線64の電圧VB(SEL)も0Vになり、ラッチ回路50を含めECU21は動作を停止する。ただし、フラッシュメモリ35のデータは保持される。
【0074】
以上説明したように、本実施形態によってもバッテリ外れの検出およびフラッシュメモリ35の初期化について第1の実施形態と同様の作用および効果が得られる。第1電源線25、第2電源線26、第3電源線27の電圧VB1、VB2、VB3を入力し、これらの中から最も高い電圧を選択する選択回路63を備えたことで、バッテリ22が接続されている限り電源線64にバッテリ電圧VBに応じた電圧VB(SEL)を常時供給することが可能になる。その結果、バッテリ22とECU21とを繋ぐ常時給電のための専用配線が不要となり、低コスト化および信頼性の向上を図ることができる。
【0075】
リレー制御回路36は、イグニッションスイッチ23がオンされた時、タイマ65からの駆動許可信号Sdに基づいて、少なくとも第1電源線25の電圧VB1がバッテリ電圧VBに整定するまでの時間を待ってからメインリレー24をオン駆動する。これにより、イグニッションスイッチ25の接点にチャタリングが生じても、そのチャタリング発生中は第3電源線27の電圧VB3を電源線64の電圧VB(SEL)として供給することができ、安定した常時給電が可能となる。また、第2電源線26とグランドとの間に、第2電源線26の電圧低下を遅延させるコンデンサ62を備えたので、メインリレー24がオフ駆動されたときの過渡状態においても電源線64の電圧VB(SEL)が低下することを防止でき、安定した常時給電が可能となる。
【0076】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について図7および図8を参照しながら説明する。図7に示すように、本実施形態も第2の実施形態と同様にECU21とバッテリ22とを常時接続する専用配線(電源線28)が省かれている。本実施形態の電源IC71は、上述した電源IC61(図5参照)に対し選択回路72の構成が異なるとともに、電源線64とグランドとの間にコンデンサ73が付加されている点が異なる。
【0077】
選択回路72(選択手段)は、電源線26、27を入力とし、両者の中からより高い電圧を持つ電源線を選択し、その選択した電圧VB(SEL)(より正確にはダイオード72b、72cの順方向電圧Vfだけ低下した電圧)を電源線64(常時電源供給線)に対し出力する。リレー制御回路36は、第1の実施形態と同様にして第1電源線25の電圧VB1が立ち上がるとMOSFET37をオンしてメインリレー24をオン駆動する。
【0078】
次に、図8を参照しながら、本実施形態の作用について説明する。図8は、図6と同様にバッテリ22の接続状態、第1電源線25の電圧VB1、第3電源線27の電圧VB3、第2電源線26の電圧VB2の波形を表している。時刻t11でECU21にバッテリ22が接続されると、選択回路72は、電源線26、27のうちより高い電圧を持つ電源線27を選択する。すなわち、バッテリ22から電源線27に介在するコイル24b、ダイオード31、72cを通して電源線64にバッテリ電圧VBが与えられる。このとき、電源線64に接続されたコンデンサ73はバッテリ電圧VBに充電される。
【0079】
これに伴い電源線64の電圧VB(SEL)を入力とする簡易電源回路47、49が動作を開始し、ラッチ回路50とパワーオンリセット回路51は簡易電源電圧Vp2により動作可能となる。このとき、パワーオンリセット回路51はLレベルのリセット信号Srを出力する。その結果、ラッチ回路50は、リセットされ、バッテリ22が外されたことを示すHレベル(第1状態)のバッテリ状態信号Sbを出力する。
【0080】
時刻t12でイグニッションスイッチ23がオンされると、第1電源線25はイグニッションスイッチ23を介してバッテリ22に接続される。リレー制御回路36は、第1電源線25の電圧VB1が立ち上がったことに応じてMOSFET37をオンする(時刻t13)。これにより第3電源線27の電圧VB3がほぼ0Vにまで低下し、メインリレー24のコイル24bが通電する。この通電により常開接点24aが閉じられ、第2電源線26にバッテリ電圧VBが供給される(時刻t14)。選択回路72は、時刻t14以降第2電源線26を選択する。
【0081】
時刻t13で第3電源線27の電圧VB3がほぼ0Vにまで低下した後、時刻t14を過ぎて第2電源線26の電圧VB2がバッテリ電圧VBに安定するまでの期間、電源線26、27から供給される電源電圧が一時的に途絶えることになる。コンデンサ73は、メインリレー24がオン駆動された時点から、第2電源線26の電圧VB2がラッチ回路50によるバッテリ状態信号Sbの保持動作に十分な電圧となるまでの期間、電源線64の電圧がラッチ回路50によるバッテリ状態信号Sbの保持動作に十分な電圧となるように維持する。
【0082】
時刻t15でイグニッションスイッチ2がオフされ、時刻t16でマイコン33が電源維持信号Shの出力を停止すると、リレー制御回路36はMOSFET37をオフする。メインリレー24のコイル24bへの通電が停止すると、再び第3電源線27の電圧VB3がほぼバッテリ電圧VBまで上昇する。その一方で、コイル24bへの通電が停止した後リレーの復帰時間が経過すると、常開接点24aが開き、第2電源線26への電源供給が遮断される。
【0083】
この切り替わり時において、コンデンサ62は、第3電源線27の電圧VB3が電源線64の電圧VB(SEL)として十分に上昇する前に第2電源線26の電圧VB2が低下するのを防止する。さらに、コンデンサ73は、仮に第3電源線27の電圧VB3が十分に上昇する前に第2電源線26の電圧VB2が低下した場合でも、電源線64の電圧VB(SEL)が低下するのを防止する。選択回路72は、時刻t17以降第3電源線27を選択し、電源線64の電圧VB(SEL)をバッテリ電圧VBに維持する。
【0084】
このように、バッテリ22が外されない限り電源線64には常時バッテリ電圧VBが供給されているので、ラッチ回路50はLレベルのバッテリ状態信号Sbを出力し続ける。この間、再びイグニッションスイッチ23がオンされたときは、入力したバッテリ状態信号SbがLレベルであるため、フラッシュメモリ35の初期化処理は実行されない。その後、時刻t18でバッテリ22が外されると、電源線26、27への電源供給が途絶えるため、電源線64の電圧VB(SEL)も徐々に低下して0Vになる。
【0085】
以上説明したように、本実施形態によってもバッテリ外れの検出およびフラッシュメモリ35の初期化について第1の実施形態と同様の作用および効果が得られる。メインリレー24のコイル24bへの通電開始から常開接点24aが閉じるまでのリレー動作時間が短ければ、バッテリ22が接続されている限り、電圧VB2、VB3の何れかはバッテリ電圧VBまたはそれに近い電圧を保持している。
【0086】
従って、第2電源線26の電圧VB2と第3電源線27の電圧VB3を入力し、何れか高い電圧を選択する選択回路72を備えることで、バッテリ22が接続されている限り電源線64にバッテリ電圧VBまたはそれに近い電圧を常時供給することが可能になる。その結果、バッテリ22とECU21とを繋ぐ常時給電のための専用配線が不要となり、低コスト化および信頼性の向上を図ることができる。
【0087】
電源線64とグランドとの間にコンデンサ73を備えているので、メインリレー24がオン駆動された時点から、ラッチ回路50が第2電源線26からの電源供給によりバッテリ状態信号Sbの保持動作が可能となるまでの期間、電源線64の電圧VB(SEL)を上記バッテリ状態信号Sbの保持動作に十分な電圧に維持する。これにより、イグニッションスイッチ23がオンされたときに電源線64の電圧VB(SEL)が低下することを防止できる。また、コンデンサ73は、メインリレー24がオフ駆動されたときにも電源線64の電圧VB(SEL)が低下することを防止する。従って、コンデンサ73を備えた本実施形態では、コンデンサ62を省略することもできる。
【0088】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について図9を参照しながら説明する。図9は、ECU21の電源IC内に設けられたバッテリ外れ検出回路のブロック構成を示している。バッテリ状態保持手段として、ラッチ回路50に替えて書込制御回路81を備えている点が上述した各実施形態と異なる。なお、図9において、電源線28に替えて電源線64としてもよい。
【0089】
書込制御回路81は、不揮発性記憶手段であるフラッシュメモリ82を備えており、簡易電源回路49で生成された簡易電源電圧Vp2により動作する。フラッシュメモリ82は、イグニッションスイッチ23がオンされる前にECU21からバッテリ22が外されたか否かを示すバッテリ状態信号Sbを記憶している。書込制御回路81は、上述したラッチ回路50と同様に機能する。
【0090】
すなわち、ECU21にバッテリ22が接続されると、書込制御回路81は、パワーオンリセット回路51から出力されるLレベルのリセット信号Srにより、フラッシュメモリ82内のバッテリ状態信号Sbを1(第1状態)に書き換え、マイコン33に対しHレベルのバッテリ状態信号Sbを出力する。これに対し、マイコン33からセット信号Ssを入力すると、バッテリ状態信号Sbを0(第2状態)に書き換え、マイコン33に対しLレベルのバッテリ状態信号Sbを出力する。本実施形態によっても上述した各実施形態と同様の作用および効果が得られる。
【0091】
(第5の実施形態)
次に、バッテリ外れ検出回路の異常検出に係る第5の実施形態について図10ないし図12を参照しながら説明する。上述したように、フラッシュメモリ35には、故障診断の実施履歴データ、故障時のエンジン関連データなどOBDの法規制上必要なデータが記憶されている。また、OBDの法規制を受けない車両でも、故障状態の特定に有益なデータが記憶されている。従って、フラッシュメモリ35を誤って初期化しない観点からバッテリ外れ検出回路には高い信頼性が要求される。
【0092】
例えば、ラッチ回路50にバッテリ状態信号Sbが常時Hレベルとなる固着故障が生じると、バッテリ22が外されていないにもかかわらず、イグニッションスイッチ23がオンする度にフラッシュメモリ35の初期化処理が実行されてしまう。このため、イグニッションスイッチ23のオンからオフまでを1トリップとし、各トリップでの故障診断結果をフラッシュメモリ35に記憶し、2度の故障診断で同じ故障を検知したときに確定的な故障と判定する2トリップ診断を実施することができなくなる。また、燃料噴射制御などにおける学習制御が困難となる。
【0093】
逆に、ラッチ回路50にバッテリ状態信号Sbが常時Lレベルとなる固着故障が生じると、バッテリ22を外したにもかかわらずバッテリ外れを検出できない。例えば、ECU21は、バッテリ外れを検出した時にイモビライザの装着の有無を検出する。このため、初期データとしてイモビライザの装着なしを記憶したECU21をイモビライザが装着されている車両に搭載しても、バッテリ外れを検出しない限りECU21はイモビライザの装着を認識することができない。
【0094】
こうしたバッテリ状態信号Sbに関する故障の有無を診断するため、マイコン33のメイン処理部34は、図10に示す初期診断処理と図11に示す定期診断処理を実行する。図12(a)、(b)は、それぞれ初期診断処理、定期診断処理を行うときのバッテリ状態信号Sbおよび診断フラグを示している。診断フラグは、定期診断処理中であることを示すフラグであり、不揮発性メモリであるフラッシュメモリ35に記憶されている。
【0095】
メイン処理部34は、イグニッションスイッチ23がオンしている間、図11に示す定期診断処理を定期的に実行する。診断開始時にはバッテリ状態信号SbはLレベルになっている。この診断処理はエンジンの動作状態が所定条件を満たす場合にだけ実行される(ステップS21)。メイン処理部34は、診断フラグを1(診断状態に相当)に設定し(ステップS22)、ラッチ回路50にリセット信号Srを出力する(ステップS23)。図示しないが、ラッチ回路50のリセット入力信号/Rには、パワーオンリセット回路51からのリセット信号Srとマイコン33からのリセット信号Srとの論理和が入力されるようになっている。
【0096】
メイン処理部34は、ラッチ回路50から入力したバッテリ状態信号SbがHレベルか否かを判断する(ステップS24)。Hレベル(YES)の場合には、ラッチ回路50にセット信号Ssを出力し(ステップS25)、ラッチ回路50から再び入力したバッテリ状態信号SbがLレベルか否かを判断する(ステップS26)。Lレベル(YES)の場合には、バッテリ外れ検出回路は正常に動作していると判断する。その後、診断フラグを0(非診断状態に相当)に設定して終了する(ステップS27)。
【0097】
これに対し、リセット信号Srを出力してもバッテリ状態信号SbがHレベルにならない場合(ステップS24:NO)およびセット信号Ssを出力してもバッテリ状態信号SbがLレベルに戻らない場合(ステップS26:NO)には異常動作と判断する。このとき、異常を示すダイアグデータをフラッシュメモリ35に記憶し、ウォーニングランプを点灯して運転者に知らせる(ステップS28)。その後、診断フラグを0に設定して終了する(ステップS27)。
【0098】
続いて、図10に示す初期診断処理を説明する。メイン処理部34は、イグニッションスイッチ23がオンすると、初期化ルーチンの一つとして初期診断処理およびフラッシュメモリ35の初期化処理を実行する。この初期診断処理は、ラッチ回路50から入力したバッテリ状態信号SbがHレベルの時にだけ実行される(ステップS11)。
【0099】
メイン処理部34は、バッテリ状態信号SbがHレベルの場合(ステップS11:YES)、診断フラグが1(診断状態)か否かを判断する(ステップS12)。0(非診断状態)の場合には、ラッチ回路50にセット信号Ssを出力し(ステップS13)、ラッチ回路50から再び入力したバッテリ状態信号SbがLレベルに戻ったか否かを判断する(ステップS14)。ここでLレベル(YES)の場合には、バッテリ外れ検出回路は正常に動作していると判断し、フラッシュメモリ35に記憶されたデータを初期化する(ステップS15)。一方、Lレベル(NO)の場合には、バッテリ外れ検出回路に異常があると判断し、フラッシュメモリ35の初期化処理を実行しない。
【0100】
また、診断フラグが1の場合(ステップS12:YES)には、上述した定期診断処理の途中でイグニッションスイッチ23がオフされたものであるため、バッテリ状態信号SbがHレベルであってもバッテリ22は外されていない。そこで、メイン処理部34は、診断フラグとバッテリ状態信号Sbの状態を初期化するため、診断フラグを0に設定し(ステップS16)、ラッチ回路50にセット信号Ssを出力する(ステップS17)。この場合、フラッシュメモリ35の初期化は実行しない。
【0101】
以上説明した本実施形態によれば、イグニッションスイッチ23がオンされた時にバッテリ状態信号SbがHレベルの場合、初期診断処理を実行しバッテリ状態信号Sbが正常に変化することを確認してからフラッシュメモリ35を初期化する。これにより、ラッチ回路50の出力がHレベルに固着する故障によりフラッシュメモリ35を誤って初期化することを防止することができる。
【0102】
マイコン33のメイン処理部34は、定期診断処理を実行することにより、バッテリ外れ検出回路に生じた故障をイグニッションスイッチ23がオフする前に検出することができる。異常を検出すると、ダイアグデータをフラッシュメモリ35に記憶するとともにウォーニングランプを点灯して運転者に知らせる。メイン処理部34は、次にイグニッションスイッチ23がオンされた時に当該ダイアグデータを参照することにより、回路故障時にフラッシュメモリ35を誤って初期化することを防止することができる。
【0103】
定期診断処理では、マイコン33がラッチ回路50にリセット信号Srを出力し、一時的にバッテリ状態信号SbをHレベル(バッテリ外れ)に変更する。この時にイグニッションスイッチ23がオフされると、次にイグニッションスイッチ23がオンされたときにバッテリが外されたものと誤判定してしまう。これに対し、本実施形態では、定期診断処理の実行中であることを示す診断フラグをフラッシュメモリ35に記憶し、イグニッションスイッチ23がオンされたときにその診断フラグを参照する。これによりフラッシュメモリ35を誤って初期化することを防止することができる。
【0104】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について図13を参照しながら説明する。図13は、イグニッションスイッチ23がオンされるごとにマイコン33のメイン処理部34が1度だけ実行するメモリデータの初期化処理である。この初期化処理は、図4に示した初期化処理を一層確実化するものである。
【0105】
メイン処理部34は、電源ICからバッテリ状態信号Sbを入力し(ステップS31)、Hレベルであるか否かを判断する(ステップS32)。Hレベル(YES)の場合には、不揮発性メモリ例えばフラッシュメモリ35に記憶されるカウント値(すなわち不揮発性のカウンタ)をインクリメントし、セット信号Ssを出力する(ステップS34)。Lレベル(NO)の場合には、ステップS33、S34の処理をスキップする。続いて、メイン処理部34は、カウント値が2(規定値)以上か否かを判断し(ステップS35)、カウント値が2以上(YES)の場合にはフラッシュメモリ35に記憶されたデータを初期化し(ステップS36)、カウント値を0にリセットする。カウント値が2未満(NO)の場合にはメモリデータの初期化を行わない。なお、規定値は2に限られない。
【0106】
本実施形態によれば、フラッシュメモリ35に記憶されたデータを初期化するには、ECU21からバッテリ22を外して再接続しイグニッションスイッチ23をオンする操作を2度以上実施することが必要となる。従って、作業者による初期化手順の誤りおよび初期化処理の誤作動による誤消去を確実に防止でき、フラッシュメモリ35に記憶されたデータを真に初期化させたい時にだけ確実に初期化できる。
【0107】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について図14を参照しながら説明する。ECU21からバッテリ22を外して再接続した後イグニッションスイッチ23をオンすることでメモリデータを初期化する簡易な初期化方法は、通常ディーラーや修理工場で行われる。この場合の点検作業、修理作業および初期化作業は、車両を放置して冷やした後に行われるのが通例である。また、初期化作業では、作業者はキーシリンダにキーを挿入してキーロータをIGONの位置まで回すが、エンジンを始動させる意図を持たないのでSTART位置までは回さない。従って、スタータモータを起動させるクランキングは行われない。
【0108】
図14に示すメモリデータの初期化処理は、こうした作業環境を考慮することで図4に示した初期化処理を一層確実化するものである。マイコン33のメイン処理部34は、エンジンを冷却する冷却水の温度を検出し(ステップS41)、その冷却水温が作業環境温度範囲内(例えば0℃以上80℃以下)であるか否かを判断する(ステップS42)。車両を放置して冷やした作業状態では、冷却水温も作業環境の温度に近付くからである。なお、ここに示した作業環境温度範囲の値は一例であって適宜変更することができる。
【0109】
冷却水温が作業環境温度範囲内(YES)と判断すると、次にクランク角信号のパルス数を算出することによりエンジンの回転数を検出し(ステップS43)、その回転数がゼロであるか否かを判断する(ステップS44)。後述するクランキングを含め、エンジンが回転する状況ではメモリデータの初期化処理が実行されることはないからである。
【0110】
回転数がゼロ(YES)であると、作業者の意図を確認するため時間待ち処理を行う(ステップS45)。この待ち時間は、エンジンを始動させる場合にキーロータをIGONの位置に回してから更にSTART位置に回すまでに要すると見込まれる時間より長く設定すればよい。その後、クランキングがないか否かを判断する(ステップS46)。ここでクランキングがない(YES)と判断すると、図4に示したステップS1〜S4に相当するステップS47〜S50を順次実行する。上述した判断ステップS42、S44、S46、S48でNOと判断した場合には、直ちに処理を終了する。
【0111】
本実施形態によれば、作業環境として有り得ない状況下ではメモリデータの初期化処理は実行されない。また、エンジンの動作時やクランキングがあったときにも実行されない。従って、作業環境および作業者の初期化意図を正しく反映させることができ、作業者による初期化手順の誤りおよび初期化処理の誤作動による誤消去を確実に防止でき、フラッシュメモリ35に記憶されたデータを真に初期化させたい時にだけ確実に初期化できる。なお、クランキング時を避けることにより、バッテリ電圧の低下による誤判定を防ぐこともできる。
【0112】
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態について図15および図16を参照しながら説明する。図15(a)は、車載ECU相互の接続を概念的に示すシステム構成図である。エンジンECU21、自動変速機を制御するATECU91および制動時の車輪スリップの抑制制御を行うABSECU92は、車載ネットワークの1つであるCAN(Controller Area Network)によりバス93を介して通信可能とされている。
【0113】
他の車載制御装置であるATECU91とABSECU92も、イグニッションスイッチ23がオンされる前にバッテリ22が外されたか否かを検出し、同様のバッテリ状態信号Sbを出力可能である。また、図10に示す初期診断処理を実行し、バッテリ外れ検出回路の故障の有無すなわちバッテリ状態信号Sbに関する自己のダイアグデータを取得可能となっている。
【0114】
図16は、エンジンECU21のマイコン33が実行するメモリデータの初期化処理である。マイコン33のメイン処理部34は、ECU21のバッテリ状態信号Sbを入力し(ステップS51)、Hレベルであるか否かを判断する(ステップS52)。Hレベル(YES)の場合には、ATECU91とABSECU92からCANによりダイアグデータを入力し(ステップS53)、バッテリ外れ検出についてATECU91とABSECU92が正常動作しているか否かを判断する(ステップS54)。
【0115】
正常動作している場合には、ATECU91とABSECU92からCANによりバッテリ状態信号Sbを入力し(ステップS55)、これらのバッテリ状態信号Sbが何れもHレベルであるか否かを判断する(ステップS56)。この条件が満たされる場合、すなわち図15(b)に等価的にロジック回路で示すように、エンジンECU21、ATECU91およびABSECU92のバッテリ状態信号Sbが全てHレベルの場合に、フラッシュメモリ35に記憶されたデータを初期化し(ステップS57)、セット信号Ssを出力する(ステップS58)。ECU21のバッテリ状態信号SbがLレベルの場合(ステップS52:NO)、ATECU91またはABSECU92のバッテリ外れ検出回路に異常がある場合(ステップS54:NO)には、直ちに初期化処理を終了する。
【0116】
本実施形態によれば、エンジンECU21のみならず他のECU例えばATECU91とABSECU92でも同時にバッテリ外れを検出した場合にのみメモリデータの初期化処理が実行される。従って、フラッシュメモリ35を誤って初期化することを一層確実に防止することができる。他の車載制御装置は、ATECU91とABSECU92に限られない。
【0117】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形、拡張を行うことができる。
【0118】
フラッシュメモリ35に替えてEEPROMなどの不揮発性メモリを備えてもよい。
第5の実施形態において、図10に示す初期診断処理と図11に示す定期診断処理の何れか一方だけを実行してもよい。初期診断処理だけを実行する場合には、ステップS12、S16、S17の処理は不要である。
【0119】
第6、第7、第8の実施形態を任意に組み合わせてもよい。例えば、ECU21からバッテリ22を外して再接続しイグニッションスイッチ23をオンする操作を2回以上実施し、各回において冷却水温が作業環境温度範囲内であり、回転数がゼロであり、クランキングが行われず、バッテリ状態信号SbがHレベルの条件が成立したときに、フラッシュメモリ35に記憶されたデータを初期化する構成としてもよい。
【0120】
また、ECU21からバッテリ22を外して再接続しイグニッションスイッチ23をオンする操作を2回以上実施し、各回においてエンジンECU21とATECU91やABSECU92などの他の車載制御装置とがともにバッテリ外れを検出したときに、フラッシュメモリ35に記憶されたデータを初期化する構成としてもよい。
【0121】
また、ECU21のマイコン33が、冷却水温が作業環境温度範囲内であり、回転数がゼロであり、クランキングが行われず、バッテリ状態信号SbがHレベルの条件が成立したと判断し、且つ、エンジンECU21とATECU91やABSECU92などの他の車載制御装置とがともにバッテリ外れを検出したときに、フラッシュメモリ35に記憶されたデータを初期化する構成としてもよい。
【0122】
第2の実施形態において、イグニッションスイッチ23のチャタリングがなく或いはチャタリング期間が短いことにより、イグニッションスイッチ23がオン操作された時の第1電源線25の電圧整定が十分に早く、第1電源線25の電圧VB1と第3電源線27の電圧VB3が同時に低下することがなければ、タイマ65は省略可能である。
【0123】
タイマ65は、イグニッションスイッチ23の接点にチャタリングが生じても、リレー制御回路36がMOSFET37を短周期で繰り返しオンオフ駆動することを回避する作用も有している。このような観点からは、第1、第3の実施形態においてもタイマ65を設けることが好ましい。
【0124】
第2、第3の実施形態において、メインリレー24のコイル24bへの通電が停止された時、第3電源線27の電圧VB3が電源線64の電圧VB(SEL)として十分に上昇した後に第2電源線26の電圧VB2が低下する場合には、電圧維持手段であるコンデンサ62は省略可能である。
【0125】
第3の実施形態において、メインリレー24のコイル24bへの通電開始から常開接点24aが閉じるまでのリレー動作時間が短ければ、第3電源線27の電圧VB3が低下してから第2電源線26の電圧VB2が立ち上がるまでの時間も短くなる。この場合、コンデンサ73を具備せずともパワーオンリセット回路51がリセット信号SrをHレベルに維持できれば、コンデンサ73を省略してもよい。
【0126】
第2の実施形態においても、電源線64とグランドとの間にコンデンサ73を設けてもよい。コンデンサ73を設けることにより電源線64の電圧低下を防止できれば、タイマ65およびコンデンサ62を省略してもよい。
【符号の説明】
【0127】
図面中、21は電子制御装置(車載制御装置)、22はバッテリ、23はイグニッションスイッチ、24はメインリレー(電源供給用リレー)、24aは常開接点、25は電源線(第1電源線)、26は電源線(第2電源線)、27は電源線(第3電源線)、28、64は電源線(常時電源供給線)、34はメイン処理部(初期化制御手段)、35はフラッシュメモリ(不揮発性メモリ)、49は簡易電源回路(電源回路)、50はラッチ回路(バッテリ状態保持手段)、51はパワーオンリセット回路(電源立ち上がり検出回路)、62、73はコンデンサ、63、72は選択回路(選択手段)、65はタイマ(遅延回路)、81は書込制御回路、82はフラッシュメモリ(不揮発性記憶手段)、91はATECU(他の車載制御装置)、92はABSECU(他の車載制御装置)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不揮発性メモリを備え、バッテリが外されて再び接続された後の動作開始時に前記不揮発性メモリのデータを初期化可能な車載制御装置であって、
バッテリが接続されているときに常にバッテリ電圧を供給する常時電源供給線の電圧立ち上がり時にリセット信号を出力する電源立ち上がり検出回路と、
前記常時電源供給線から電源供給を受けて動作し、前記リセット信号が入力されるとバッテリ状態信号を第1状態に設定し、その後セット信号が入力されると前記バッテリ状態信号を第2状態に設定するバッテリ状態保持手段と、
電源供給を受けて動作を開始した時に前記バッテリ状態保持手段から前記バッテリ状態信号を入力し、入力したバッテリ状態信号が前記第1状態である場合には、前記不揮発性メモリのデータを初期化するとともに前記バッテリ状態保持手段にセット信号を出力する初期化制御手段とを備えていることを特徴とする車載制御装置。
【請求項2】
前記初期化制御手段は、前記入力したバッテリ状態信号が前記第1状態である場合には、前記バッテリ状態保持手段にセット信号を出力してから前記バッテリ状態信号を再度入力し、その入力したバッテリ状態信号が前記第2状態である場合に正常動作との診断結果を得る初期診断処理を実行し、正常動作との診断結果を得たことを条件として前記不揮発性メモリのデータを初期化することを特徴とする請求項1記載の車載制御装置。
【請求項3】
前記初期化制御手段は、定期的に、診断フラグを診断状態に設定してから前記バッテリ状態保持手段にリセット信号を出力し、前記バッテリ状態保持手段から前記バッテリ状態信号を入力し、その後前記バッテリ状態保持手段にセット信号を出力してから前記診断フラグを非診断状態に設定し、当該入力したバッテリ状態信号が前記第1状態である場合に正常動作との診断結果を得る定期診断処理を実行し、前記初期診断処理において前記診断フラグが診断状態である場合には前記不揮発性メモリのデータを初期化しないことを特徴とする請求項2記載の車載制御装置。
【請求項4】
前記初期化制御手段は、不揮発性のカウンタを備え、電源の供給を受けて動作を開始するごとに、前記バッテリ状態保持手段から入力したバッテリ状態信号が前記第1状態であるときに前記カウンタをインクリメントするとともに前記バッテリ状態保持手段にセット信号を出力し、カウント値が規定値以上となった場合に前記不揮発性メモリのデータを初期化することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の車載制御装置。
【請求項5】
前記初期化制御手段は、電源の供給を受けて動作を開始した時に、内燃機関の冷却水温が所定の作業環境温度範囲内にあり、内燃機関の回転数がゼロであり、内燃機関をクランキングしていないことを条件として、前記バッテリ状態保持手段から入力したバッテリ状態信号が前記第1状態である場合に、前記不揮発性メモリのデータを初期化して前記バッテリ状態保持手段にセット信号を出力することを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の車載制御装置。
【請求項6】
前記初期化制御手段は、電源の供給を受けて動作を開始した時に前記バッテリ状態保持手段から入力したバッテリ状態信号が前記第1状態である場合、他の車載制御装置もバッテリが外されて再び接続されたことを検出していることを条件として、前記不揮発性メモリのデータを初期化して前記バッテリ状態保持手段にセット信号を出力することを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の車載制御装置。
【請求項7】
前記常時電源供給線を通して与えられるバッテリ電圧から制御用電源電圧を生成する電源回路を備え、
前記バッテリ状態保持手段は、前記制御用電源電圧をデータ入力信号とし、前記セット信号をラッチ制御信号とし、前記リセット信号をリセット入力信号とし、前記バッテリ状態信号を出力するラッチ回路により構成されていることを特徴とする請求項1ないし6の何れかに記載の車載制御装置。
【請求項8】
前記常時電源供給線を通して与えられるバッテリ電圧から制御用電源電圧を生成する電源回路を備え、
前記バッテリ状態保持手段は、前記バッテリ状態信号を記憶可能な不揮発性記憶手段と、前記リセット信号により前記不揮発性記憶手段に前記第1状態を書き込み、前記セット信号により前記不揮発性記憶手段に前記第2状態を書き込む書込制御回路とを備えていることを特徴とする請求項1ないし6の何れかに記載の車載制御装置。
【請求項9】
バッテリから供給される電圧をオンオフするイグニッションスイッチと、当該イグニッションスイッチがオン、オフされたことに応じてそれぞれオン駆動、オフ駆動される電源供給用リレーとを備えた車両に搭載され、
前記イグニッションスイッチを介して前記バッテリの正側端子に接続される第1電源線、前記電源供給用リレーの常開接点を介して前記バッテリの正側端子に接続される第2電源線および前記電源供給用リレーのコイルを介して前記バッテリの正側端子に接続される第3電源線を入力とし、これらの中から最も高い電圧を持つ電源線を選択して前記常時電源供給線として出力する選択手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし8の何れかに記載の車載制御装置。
【請求項10】
前記イグニッションスイッチがオンされたことに応じて前記第1電源線の電圧が立ち上がった時、少なくとも前記第1電源線の電圧がバッテリ電圧に整定するまでの時間を待ってから前記電源供給用リレーをオン駆動させる遅延回路を備えていることを特徴とする請求項9記載の車載制御装置。
【請求項11】
バッテリの正側端子に繋がる第1電源線に設けられたイグニッションスイッチと、当該イグニッションスイッチがオンまたはオフされたことに応じてオン駆動またはオフ駆動される電源供給用リレーとを備えた車両に搭載され、
前記電源供給用リレーの常開接点を介して前記バッテリの正側端子に接続される第2電源線および前記電源供給用リレーのコイルを介して前記バッテリの正側端子に接続される第3電源線を入力とし、これらの中からより高い電圧を持つ電源線を選択して前記常時電源供給線として出力する選択手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし8の何れかに記載の車載制御装置。
【請求項12】
前記電源供給用リレーがオン駆動された時点から、前記第2電源線の電圧が前記バッテリ状態保持手段による前記バッテリ状態信号の保持動作に十分な電圧となるまでの期間、前記選択手段の出力電圧が前記バッテリ状態保持手段による前記バッテリ状態信号の保持動作に十分な電圧を維持するように、前記選択手段の出力線とグランドとの間にコンデンサを備えていることを特徴とする請求項9ないし11の何れかに記載の車載制御装置。
【請求項13】
前記イグニッションスイッチがオフされた後前記電源供給用リレーがオフ駆動されたとき、前記第3電源線の電圧が前記バッテリ状態保持手段による前記バッテリ状態信号の保持動作に十分な電圧となるまでの期間、前記第2電源線の電圧が前記バッテリ状態保持手段による前記バッテリ状態信号の保持動作に十分な電圧を維持するように、前記第2電源線とグランドとの間にコンデンサを備えていることを特徴とする請求項9ないし12の何れかに記載の車載制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−24111(P2013−24111A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158794(P2011−158794)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】