説明

車載情報端末

【課題】車両が走行を開始したときに、ユーザの好みの楽曲を再生できる車載情報端末を提供する。
【解決手段】判定部2において、車両から入力されるACC信号、エンジン動作信号および車速信号に基づいて、車両が走行を開始したか否かを判定する。走行を開始したと判定した場合は、設定管理部3に記録されているユーザ設定を読み出して車両制御部4に出力し、車両制御部4において、そのユーザ設定の内容に応じてオーディオ、映像またはエアコンの制御を行う。これにより、車両に備えられたオーディオ装置に対して、それまでに出力されている音声に替えて、予めユーザにより設定された楽曲を再生出力させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音楽再生機能を有する車載情報端末に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザが予め走行経路上に所定の地点とその地点で再生する楽曲とを設定しておくことにより、その地点を通過したときにユーザの好みの楽曲を自動的に再生できるナビゲーション装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−90155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるナビゲーション装置では、予め設定した地点を通過したときにしかユーザの好みの楽曲を再生できない。しかし、それ以外に車両が走行を開始したときにも、ユーザの好みの楽曲を再生したいという要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明による車載情報端末は、車両が走行を開始したか否かを判定する判定手段と、予めユーザにより設定された楽曲を記憶する設定管理手段と、判定手段により車両が走行を開始したと判定された場合、車両に備えられたオーディオ装置に対して、それまでに出力されている音声に替えて、設定管理手段により記憶された楽曲を再生出力させる車両制御手段とを備えるものである。
請求項2の発明は、請求項1の車載情報端末において、車両制御手段がオーディオ装置に対して設定管理手段により記憶された楽曲を再生出力させたときに、その楽曲の情報を表示する表示手段をさらに備えるものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車両が走行を開始したか否かを判定し、走行を開始したと判定した場合は、車両に備えられたオーディオ装置に対して、それまでに出力されている音声に替えて、予めユーザにより設定されて記憶された楽曲を再生出力させる。このようにしたので、車両が走行を開始したときに、ユーザの好みの楽曲を再生することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の一実施形態による車載情報端末の機能ブロックを図1に示す。この図に示される車載情報端末1は、車両に搭載されて使用され、車両が走行を開始したことを検出すると、予めユーザにより設定された動作内容、たとえば所定の音楽または映像の再生や、エアコンの温度調節などを自動的に実行するものである。車載情報端末1は、判定部2、設定管理部3および車両制御部4を有している。設定管理部3には、走行開始時に実行する動作内容がユーザ設定として記憶されている。
【0008】
判定部2は、車両から出力されるACC(アクセサリ)信号、エンジン動作信号および車速信号を入力し、それに基づいて車両が走行を開始したか否かを判定する。走行を開始したと判定した場合は、設定管理部3に記録されているユーザ設定を読み出して車両制御部4に出力する。車両制御部4は、そのユーザ設定の内容に応じてオーディオ、映像またはエアコンの制御を行う。たとえば、車両に備えられたオーディオ装置に対して、それまでに出力されているCDやラジオ放送などの音声に替えて、ユーザ設定において設定された楽曲を再生出力させる。なお、この楽曲の内容は設定管理部3により記憶されている。あるいは、ビデオ装置を制御してDVD再生を行ったり、エアコン装置を制御して温度調節を行ったりする。このようにして、車両が走行を開始したときには、予め設定された動作内容を実行する。
【0009】
図2は、上記に説明したような車載情報端末のうち、走行開始時に所定の音楽を再生するものを例として、その具体的なハードウェア構成例を示した図である。この車載情報端末1は、出発地から目的地までの推奨経路を地図上に表示して車両を目的地まで案内する一般的なナビゲーション機能を有している。さらに加えて、音楽CDから音楽データを取り込んで記録しておき、必要に応じてユーザの好きな音楽を再生出力すると共に、車両の走行開始時には、ユーザ設定において設定された内容に従って、その中の所定の楽曲を自動的に再生出力することができる。
【0010】
図2の車載情報端末1は、ナビゲーション部10、判定制御ユニット11、再生出力部12、HDD13、CD/DVDドライブ14およびモニタ15を有している。再生出力部12には、入力された音声信号を不図示のスピーカへ出力して音声を出力するためのオーディオ装置20が接続されている。
【0011】
ナビゲーション部10は、マイクロプロセッサやROM、RAM等を用いて構成される演算処理部101と、GPS衛星から受信するGPS信号や自車両の運動状態の検出結果などに基づいて自車両の現在地を検出する現在地検出部102と、ユーザからの要求入力を受け付けるための入力操作部103とを有している。なお、現在地検出部102には車両からの車速信号が入力されており、これによって現在地検出部102は自車両の運動状態を検出することができる。この車速信号は、現在地検出部102を介して判定制御ユニット11にも出力される。
【0012】
入力操作部103を介してユーザから目的地が設定されると、現在地検出部102を用いて現在地を検出した後、演算処理部101により、HDD13に記録されている地図データを読み出して周知のナビゲーション処理を行う。こうしてナビゲーション部10において現在地から目的地までの推奨経路を求め、モニタ15に車両を目的地まで誘導するための地図表示などを行うことで、車載情報端末1においてナビゲーション機能が実現される。
【0013】
上記のように、入力操作部103を操作して目的地を設定することで、ユーザは車載情報端末1に対してナビゲーション機能の実行を要求することができる。さらにユーザは、入力操作部103の操作により、音楽データの記録再生機能の実行を車載情報端末1に対して要求することもできる。音楽データの記録再生機能の要求がユーザによって行われると、その要求内容は判定制御ユニット11に通知される。なお、入力操作部103としては、たとえばモニタ15と一体化されたタッチパネルや、リモコンなどを用いることができる。
【0014】
判定制御ユニット11は、ユーザからの要求に応じて音楽データの記録再生処理を実行する。音楽データの記録を行う場合には、HDD13とCD/DVDドライブ14を制御することにより、CD/DVDドライブ14にセットされた音楽CDから音楽データを読み込んでHDD13に書き込む。このような処理はリッピングと呼ばれている。HDD13には、書き込まれた音楽データが楽曲単位で記録される。
【0015】
一方、音楽データの再生を行う場合には、前述のリッピング処理によってHDD13に記録された音楽データ、あるいは、CD/DVDドライブ14にセットされた音楽CDに記録された音楽データのいずれかを、楽曲単位で再生することができる。判定制御ユニット11においてHDD13とCD/DVDドライブ14のいずれかを制御して音楽データを読み込み、その音楽データを再生出力部12において音声信号に変換することにより、オーディオ装置2に音声信号が出力されて、スピーカから音楽が再生出力される。なお、このとき音楽CDの再生と並行してリッピング処理を行うこともできる。
【0016】
また判定制御ユニット11は、車両の走行開始時に所定の音楽を再生するための処理を実行する。具体的には、判定制御ユニット11に入力されるACC信号、エンジン動作信号および車速信号に基づいて、車両が走行を開始したか否かを判定する。なお、前述のように車速信号は現在地検出部102を介して入力される。そして、車両が走行を開始したと判定した場合には、HDD13に記録されている音楽データの中から予めユーザ設定において設定された楽曲の音楽データを抽出し、再生出力部12に出力する。これにより、オーディオ装置2に所定の楽曲の音声信号が出力されて、スピーカから再生出力される。このようにして、図1の判定部2、設定管理部3および車両制御部4に相当する動作を判定制御ユニット11において行うことにより、予め設定された音楽を車両走行開始時に再生出力することができる。
【0017】
次に、ユーザ設定画面の例を図3に示す。ユーザ設定を行うときには、この画面がモニタ15に表示される。ここでは、走行開始時切替機能として、車両の走行開始時に自動的に実行する動作の内容をユーザが任意に設定することができる。図3の例では、「音楽を再生する」、「映像を再生する」、「エアコンを切り替える」の各動作うち、チェックボックス21をチェックすることにより、「音楽を再生する」の機能が選択されている様子が示されている。このようにしておくと、判定制御ユニット11において前述したような処理が実行されて、指定欄22に表示された「楽曲A」が車両の走行開始時に自動的に再生出力される。なお、指定欄22に表示する楽曲の名称は、HDD13に音楽データが記録された楽曲の中からユーザが任意に指定することができる。
【0018】
上記のようにして「楽曲A」を自動的に再生するよう設定しておいたときに、車両の走行開始前と開始後にモニタ15に表示される画面の例を図4と図5にそれぞれ示す。図4は走行開始前における自車位置マーク23を道路地図上に表した画面である。車両が走行を開始して自車位置が変化すると、道路地図上の自車位置マーク23が変化して図5に示す画面が表示される。この画面では音楽再生ウィンドウ24により、楽曲名「楽曲A」とアーティスト名「アーティストX」を表示している。このようにして、走行開始と共に再生出力を開始した楽曲の情報を表示する。
【0019】
なお、以上の説明はあくまで一例であるため、他の内容の情報を表示することとしてもよい。たとえば、楽曲のアルバム名などを表示してもよいし、ユーザが予め表示する情報の内容を設定しておいてもよい。また、エアコンの温度を調節する場合には、その調節温度などを表示してもよい。これ以外にも、走行開始時に実行する動作内容に合わせて、様々な情報を表示することができる。
【0020】
以上説明したような処理を図2の車載情報端末1において実行するときのフローチャートを図6に示す。このフローチャートは、判定制御ユニット11により実行されるものである。ステップS1では、車両から入力されるACC信号に基づいて、車両のACC電源がONであるか否かを判定する。ACC信号が入力されていれば、ACC電源がONであると判定して次のステップS2へ進む。ステップS2では、車両から入力されるエンジン動作信号に基づいて、車両のエンジンが始動しているか否かを判定する。エンジン動作信号が入力されていれば、エンジンが始動していると判定して次のステップS3へ進む。
【0021】
ステップS3では、ユーザ設定を読み込む。このユーザ設定は、図3のユーザ設定画面によって予め設定されたものである。ステップS4では、車速変化カウント値を0にクリアする。この車速変化カウント値は、車速の増加回数をカウントするために記録されている数値であり、車速が増加したときに、後述のステップS6においてその値が1つ増加される。
【0022】
ステップS5では、車両から現在地検出部102を介して入力される車速信号に基づいて、車速が増加したか否かを判定する。車速が増加した場合は次のステップS6へ進み、記録されている車速変化カウント値を1つ増加して、ステップS7へ進む。一方、ステップS5において車速が増加していないと判定された場合は、ステップS6へ進まずにステップS5を繰り返す。
【0023】
ステップS7では、車速変化カウント値が1であるか否かを判定する。車速変化カウント値が1である場合はステップS8へ進み、1以外の値である場合はステップS5へ戻る。ステップS8では、ステップS3で読み込んだユーザ設定を確認することにより、再生する楽曲を判断する。ステップS9では、ステップS8のユーザ設定の確認結果に従って、再生出力する音楽を変更する。このとき、HDD13に記録されている音楽データの中から、ユーザ設定において設定されている楽曲の音楽データを抽出して、再生出力部12へ出力する。ステップS9を実行した後は、ステップS5へ戻る。以上説明したようにして、車両の走行開始時に予め設定された所定の音楽を再生する。
【0024】
なお、上記の説明では、HDDに音楽データを記録しておき、走行開始時にその記録された音楽データを用いて所定の音楽を再生するものについて、具体的な処理内容の例を説明した。しかし、図6のステップS9においてラジオ放送出力やCD再生を自動的に行うようにすることで、所定の音楽を出力するようにしてもよい。さらに、図1のように映像やエアコンの制御を行う場合についても、図6のフローチャートによって実現することができる。具体的には、図6のステップS1〜S8の処理を実行することにより車両が走行を開始したか否かを判定した後、ステップS9において、再生音楽を変更する替わりに、DVD再生などを行って所定の映像を出力したり、車両のエアコン機器を制御して温度調節を行ったりすることができる。
【0025】
以上説明した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)判定部2において車両が走行を開始したか否かを判定し、走行を開始したと判定した場合は、車両制御部4において、車両に備えられたオーディオ装置に対して、それまでに出力されている音声に替えて、予めユーザにより設定されて設定管理部3に記憶された楽曲を再生出力させる。具体的には、判定制御ユニット11において、ACC電源がONであるか否かを判定したり(ステップS1)、エンジンが始動しているか否かを判定したり(ステップS2)、車速が増加したか否かを判定したり(ステップS5)、車速変化カウント値が1であるか否かを判定したりする(ステップS7)ことにより、車両が走行を開始したか否かを判定する。そして、走行を開始したと判定した場合は、ユーザ設定を確認し(ステップS8)、その内容に従って再生出力する音楽を変更する(ステップS9)。このようにしたので、車両が走行を開始したときに、ユーザの好みの楽曲を再生することができる。
【0026】
(2)車両制御部4がオーディオ装置に対して設定管理部3により記憶されている楽曲を再生出力させたときに、モニタ15において音楽再生ウィンドウ24を表示することにより、その楽曲の情報を表示することとした。このようにしたので、車両の走行開始と共に再生を開始した楽曲の情報をユーザに知らせることができる。
【0027】
なお、以上説明した実施の形態では、車両から出力されるACC信号、エンジン動作信号および車速信号に基づいて、車両が走行を開始したか否かを判定していた。しかし、その他の方法によって車両が走行を開始したか否かを判定するようにしてもよい。たとえば、タクシーにおいて本発明を適用する場合には、課金を開始するための乗車ボタンを押したときに車両が走行を開始したと判定するようにしてもよい。このようにすれば、乗客を乗せたときに運転手が特に意識することなく、所定の音楽や映像を出力したり、エアコンの温度調節を行ったりすることができる。
【0028】
また、以上説明した実施の形態では、音楽CDより音楽データを読み取ってHDDへ書き込む例について説明したが、一般の市販音楽CDに限らず、音楽データが記録されたCD−R、MD、DVD、あるいは各種メモリカード類など、様々な記録メディアより音楽データを読み取ることができる。さらに、ラジオやテレビからのアナログ音声信号を取り込み、アナログ・デジタル変換を行ってデータ化した後にHDDへ書き込むようにしてもよい。
【0029】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も、本発明の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態による車載情報端末の機能ブロック図である。
【図2】車載情報端末のうち走行開始時に所定の音楽を再生するものの具体的なハードウェア構成例を示す図である。
【図3】ユーザ設定画面の例を示す図である。
【図4】車両の走行開始前に表示される画面の例を示す図である。
【図5】車両の走行開始後に表示される画面の例を示す図である。
【図6】車両の走行開始時に予め設定された所定の音楽を再生するときに実行されるフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
1 車載情報端末
2 判定部
3 設定管理部
4 車両制御部
10 ナビゲーション部
11 判定制御ユニット
12 再生出力部
13 HDD
14 CD/DVDドライブ
15 モニタ
20 オーディオ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行を開始したか否かを判定する判定手段と、
予めユーザにより設定された楽曲を記憶する設定管理手段と、
前記判定手段により車両が走行を開始したと判定された場合、前記車両に備えられたオーディオ装置に対して、それまでに出力されている音声に替えて、前記設定管理手段により記憶された楽曲を再生出力させる車両制御手段とを備えることを特徴とする車載情報端末。
【請求項2】
請求項1の車載情報端末において、
前記車両制御手段が前記オーディオ装置に対して前記設定管理手段により記憶された楽曲を再生出力させたときに、その楽曲の情報を表示する表示手段をさらに備えることを特徴とする車載情報端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−213118(P2006−213118A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−26294(P2005−26294)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】