説明

車載搭載品

【課題】車体から突設したブラケットに車載搭載品を固定する場合において、車載搭載品のブラケット取付部内におけるブラケットのガタツキを抑制する。
【解決手段】車載搭載品10に一体的に成形された取付部20は、ブラケット30の挿入方向に貫通孔21を形成した矩形状の枠部22を備え、枠部22の外壁部24内面の中央部にブラケット30に穿設された係止孔33に挿入係止される係止爪26を突設している一方、外壁部24と対向する内壁部23内面の両側部に一対のバネ片部28を突設し、これら一対のバネ片部28はブラケット30の挿入方向に延在すると共に外壁部24側に向けて傾斜しており、枠部22内の係止爪26とバネ片部28の間にブラケット30が挿入され、該ブラケット30の係止孔33に係止爪26が係止されると共に、ブラケット30の係止孔33の両側部の背面側が前記バネ片部28で係止方向に付勢される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車載搭載品に関し、詳しくは、車体から突設したブラケットに取り付けて、該ブ
ラケットを介して、ワイヤハーネスのプロテクタや電気接続箱等からなる車載搭載品を車体に固定するものに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車載搭載品としては、電気接続箱のケース本体やワイヤハーネスを挿通するプロテクタのケース本体、あるいはワイヤハーネスを挿通するコルゲートチューブに外嵌するクランプなどが挙げられる。電気接続箱やワイヤハーネスを車体に固定するときは、従来より、車体パネルにボルト固定あるいは溶接固定されたブラケットを、電気接続箱のケース本体あるいはワイヤハーネスに取り付けられたプロテクタやクランプに挿入係止して固定している。
【0003】
図5(A)(B)は、前記車載搭載品とブラケットとの取付構造として周知の例を示す(実開平6−43309号参照)。
クランプ1は、略半円弧状をなす取付部材2と保持部材3とをヒンジ4を介して開閉可能に接続してなり、ワイヤハーネスW/Hに外装されたコルゲートチューブTに取付部材2と保持部材3とを外嵌し、ロック爪5aを被ロック部5bに係止することによって、取付部材2と保持部材3とを閉じ状態でロック結合する。取付部材2の自由端側にはブラケット9に取り付けられる係止部6を形成している。該係止部6は、ブラケット9を挿通可能な挿通孔6aを設けた枠体からなり、該係止部6内には、弾性の係止舌片6bを備えると共に、該係止舌片6bの挿通孔6a側の側面に係止爪6cを突設し、挿通孔6aに挿入されたブラケット9の係止孔9aに前記係止孔6cを嵌め込んで、ブラケット9に取付部材2をロック状態で取り付ける構成としている。
【0004】
しかしながら、図6に示すように、前記挿通孔6aに挿入されたブラケット9と、係止部6の内壁6dとの間には隙間7があるうえ、挿通孔6a内にブラケット9を押さえ込むリブ等を備えていないため、該挿通孔6a内でブラケット9のガタツキが生じ、異音発生の原因になっていた。
【0005】
【特許文献1】実開平6−43309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、車体から突設したブラケットに取り付けられる車載搭載品において、該車載搭載品内に挿入係止されるブラケットのガタツキを解消し、異音発生を防止することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、車体から突設したブラケットに固定される取付部を備えた車載搭載品であって、
前記取付部は、前記ブラケットの挿入方向に貫通した矩形状の枠部を備え、
前記枠部の外壁部内面の中央部に前記ブラケットに穿設された係止孔に挿入係止される係止爪を突設している一方、前記外壁部と対向する内壁部内面の両側部に一対のバネ片部を突設し、これら一対のバネ片部はブラケット挿入方向に延在すると共に外壁部側に向けて傾斜しており、
前記枠部内の係止爪とバネ片部の間に前記ブラケットが挿入され、該ブラケットの係止孔に前記係止爪が係止されると共に、該ブラケットの係止孔の両側部の背面側が前記一対のバネ片部で係止方向に付勢されることを特徴とする車載搭載品を提供している。
【0008】
前記構成の車載搭載品は、前記バネ片部が、取付部の枠部内に挿入されたブラケットを前記外壁部側に押さえ付けるため、該枠部内におけるブラケットのガタツキを抑えることができると共に、ガタツキによる異音発生も防止できる。
【0009】
また、ブラケットの板厚の差異はバネ片部の撓みで吸収することができるため、1種類の金型で成形された取付部を、板厚の異なる多様なブラケットに対して共用でき、汎用性が高まり、コストを抑えることができる。
【0010】
前記取付部が固定される前記車体から突設するブラケットは金属板からなり、該ブラケットの長方形状の下向き差込部の下部の幅方向の中央部に前記係止孔が穿設されており、前記取付部の上側開口から下向きに差し込まれるものであり、
前記取付部に設ける前記バネ片部は前記内壁部内面の上部から下向きに突出し、該バネ片部の突出長さは取付部の上下高さの1/3〜1/2とすると共に厚さは一定としている。
【0011】
バネ片部の突出長さを取付部の上下高さの1/3〜1/2としているのは、1/3未満ではバネ片部の撓み量が少なくなり、ブラケット板厚の共用範囲も狭くなり、1/2超ではバネ片部の撓み量が大きくなりすぎるためにブラケットの押さえ込み力が弱まり、ガタツキを抑制できなくなることに因る。
【0012】
前記取付部は、電気接続箱あるいはワイヤハーネスを挿通するプロテクタのケース本体の外面に一体的に成形しており、あるいはワイヤハーネスに挿通するコルゲートチューブに外嵌するクランプに一体的に成形している。
【発明の効果】
【0013】
上述したように本発明によれば、取付部の枠部内に挿入されたブラケットを前記バネ片部で係止方向に付勢するため、該ブラケットを外壁部側に押さえつけることができ、枠部内におけるブラケットのガタツキを抑制できると共に、ガタツキによる異音発生を防止することができる。
【0014】
また、バネ片部の撓みによってブラケットの板厚の差異を吸収することができるため、該ブラケットを挿入係止する取付部を備えた車載搭載品の汎用性が高まり、コストを低減することができる。
さらに、バネ片部の突出長さを取付部の上下高さの1/3〜1/2とすることにより、板厚の異なるブラケットに対する汎用性と、バネ片部によるブラケットの押さえ込み力とをバランスよく備えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4に、本発明の第一実施形態に係るワイヤハーネス用のプロテクタ10を示す。
プロテクタ10は、ワイヤハーネスWを挿通する上面開口のプロテクタ本体11と、該プロテクタ本体11の上面開口に被せてロック結合する蓋12とを別体として備えている。これらプロテクタ本体11と蓋12は、それぞれ樹脂で一体成形している。
【0016】
前記プロテクタ本体11は、底壁14の幅方向両側縁より側壁15を立設した樋形状の電線挿通部13を備え、該電線挿通部13の長さ方向の両端には、底壁14を突出させてテープ巻き舌片16を設けている。
電線挿通部13の側壁15の上端部外面には、後述のロック爪19と嵌合する蓋用ロック枠部17を複数箇所に突設している。また、電線挿通部13の一方の側壁15の外面には、後述のブラケット30への取付部20を一体に突設している。
【0017】
前記取付部20は、上下方向に挿通孔21を貫通させた矩形状の枠部22を備え、該枠部22の内壁部23を、プロテクタ本体11の側壁15と一体化して連続させている。図2(A)(B)に示すように、前記内壁部23と対向する外壁部24の内面には、両側にスリット27を設けて下端を自由端とした帯板状の係止用舌片25を形成し、該係止用舌片25の内壁部23側面に、ブラケット30に穿設された係止孔33に挿入係止される係止爪26を突設している。また、内壁部23の内面の両側部には、前記係止爪26を挟む両側位置に向かって、上下方向に延在する一対のバネ片部28を突設している。
【0018】
前記バネ片部28は、前記内壁部23の内面の上部から突設した基部28aと、該基部28aから下向きに突出したバネ部28bとからなり、基部28a側からバネ部28bの先端28cにかけて、外壁部24への近接方向に傾斜し、バネ部28bの先端28cを前記係止用舌片25に接触させている。
バネ片部28の突出長さ(上下高さ)L1は、取付部20の上下高さH1の1/3〜1/2の範囲内とし、本実施形態では1/2としている。
また、前記バネ部28bの厚さT1は、その全長にわたって一定としている。
【0019】
ブラケット30は、図1に示すようにL字状に屈曲した金属板からなり、水平部31を車体パネルPにボルト固定して、長方形状の下向き差込部32を車体パネルPから突設している。該下向き差込部32の下部の幅方向の中央部には係止孔33を穿設している。
【0020】
前記蓋12は、プロテクタ本体11の上面開口の前面を閉鎖する上壁18と、該上壁18の幅方向両側縁より下方に突設したロック爪19とを備えている。
【0021】
前記構成のプロテクタ10を用いてワイヤハーネスWを車体パネルPに固定するときは、図3に示すように、まず、ワイヤハーネスWをプロテクタ10のプロテクタ本体11に挿通し、該プロテクタ本体11の上面に蓋12を被せてロック爪19と蓋用ロック枠部17とをロック結合すると共に、ワイヤハーネスWをプロテクタ本体11のテープ巻き舌片16にテープ34で巻きつけて位置決め固定する。
次いで、図4に示すように、車体パネルPから突設したブラケット30の下向き差込部32を前記プロテクタ本体11の取付部20の貫通孔21の上側開口から下向きに差し込み、該下向き差込部32の係止孔33に、取付部20の枠部22内に突設した係止爪26を挿入係止して、ブラケット30にプロテクタ10をロック固定する。
【0022】
このとき、ブラケット30の下向き差込部32は、バネ片部28と係止用舌片25との間に挿入され、係止孔33の両側部の背面側が前記バネ片部28によって係止方向に付勢されて、係止用舌片25および外壁部24側に押し付けられる。これにより、貫通孔21内におけるブラケット30のガタツキを抑制できると共に、ガタツキによる異音発生も防止できる。
【0023】
さらに、バネ片部28は、その先端28cが係止用舌片25に接触するように突設されているため、下向き差込部32の板厚が薄い場合でも、該下向き差込部32の背面側に圧接してガタツキを抑えることができる。また、下向き差込部32の板厚が厚い場合は、バネ片部28のバネ部28bが内壁部23側に撓むことによって、係止用舌片25との間に下向き差込部32を挿入できる隙間を形成すると共に、該下向き差込部32の背面側を圧接してガタツキを抑えることができる。
前記バネ片部28は、その突出長さL1を取付部20の上下高さH1の1/2としているため、板厚の異なる多様なブラケットを十分なバネ力で押さえ込むことができる。
【0024】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、電気接続箱のケース本体や、ワイヤハーネスを挿通するコルゲートチューブに外嵌するクランプに前記取付部20を一体的に成形してもよい。また、取付部20は、ブラケット30を下側から上向きに差し込む構造としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第一実施形態に係るプロテクタとブラケットを示す全体斜視図である。
【図2】図1に示すプロテクタ本体の取付部を示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図3】図1に示すプロテクタにワイヤハーネスを挿通してブラケットに固定した状態を示す斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線断面構造説明図である。
【図5】(A)(B)は従来例を示す図である。
【図6】従来例の問題点を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 プロテクタ(車載搭載品)
11 プロテクタ本体
20 取付部
21 貫通孔
22 枠部
23 内壁部
24 外壁部
26 係止爪
28 バネ片部
30 ブラケット
32 下向き差込部
33 係止孔
W ワイヤハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体から突設したブラケットに固定される取付部を備えた車載搭載品であって、
前記取付部は、前記ブラケットの挿入方向に貫通した矩形状の枠部を備え、
前記枠部の外壁部内面の中央部に前記ブラケットに穿設された係止孔に挿入係止される係止爪を突設している一方、前記外壁部と対向する内壁部内面の両側部に一対のバネ片部を突設し、これら一対のバネ片部はブラケット挿入方向に延在すると共に外壁部側に向けて傾斜しており、
前記枠部内の係止爪とバネ片部の間に前記ブラケットが挿入され、該ブラケットの係止孔に前記係止爪が係止されると共に、該ブラケットの係止孔の両側部の背面側が前記一対のバネ片部で係止方向に付勢されることを特徴とする車載搭載品。
【請求項2】
前記取付部が固定される前記車体から突設するブラケットは金属板からなり、該ブラケットの長方形状の下向き差込部の下部の幅方向の中央部に前記係止孔が穿設されており、前記取付部の上側開口から下向きに差し込まれるものであり、
前記取付部に設ける前記バネ片部は前記内壁部内面の上部から下向きに突出し、該バネ片部の突出長さは取付部の上下高さの1/3〜1/2とすると共に厚さは一定としている請求項1に記載の車載搭載品。
【請求項3】
電気接続箱あるいはワイヤハーネスを挿通するプロテクタのケース本体の外面に前記取付部を一体的に成形しており、あるいはワイヤハーネスに挿通するコルゲートチューブに外嵌するクランプに前記取付部を一体的に成形している請求項1または請求項2に記載の車載搭載品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−286327(P2008−286327A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132845(P2007−132845)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】