説明

車載用の中継接続ユニット

【課題】2本の通信線と接続した特定電子制御ユニットの一方の通信線へのメッセージ送信に通信異常が発生しても、該通信線へのメッセージの送信を継続する。
【解決手段】車載用通信システム10の中継接続ユニット20であって、第1、第2通信線Bの双方に接続されて特定メッセージMの送受信を直接行う特定ECU30に第1、第2通信線を介して接続され、該特定ECUの送信する特定メッセージMを受信する受信部21と、受信部で受信した第1、第2通信線に送信する特定メッセージMの数、受信周期を記録する第1、第2受信カウンタ25Bと、第1、第2受信カウンタに記録された特定メッセージ数等を判定値と比較して、特定ECUから第1または第2通信線へ特定メッセージの送信に異常が発生していることを検知した場合に、一方の通信線から受信した特定メッセージMを受信していない他方の通信線に中継する処理部23とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用の中継接続ユニットに関し、詳しくは、第1通信線と第2通信線の間に接続し、電子制御ユニット間のメッセージの送受信を中継する中継接続ユニットにおいて、前記2重系統の第1、第2通信線の双方に接続してメッセージの送受信を中継接続ユニットの中継を介さずに直接行う重要度の高い特定電子制御ユニットを備えている場合において、該特定電子制御ユニットの送信メッセージに通信異常が発生しても中継接続ユニットで通信を継続できるようにするものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載される電装品および電機装置の数は、車両の高機能化および高性能化に伴って急増しており、車両内の配線が複雑化すると共に大規模化している。
そこで、車両内の配線の本数増加を抑制すべく、車載電装品を制御するECUをシートやドアのボディ系、エンジンやスロットル等のパワートレイン系などに区分けしてグループ化し、グループ毎にグループ内に属するECUを通信線で接続すると共に、異なるECUに接続した通信線間に中継接続ユニット(ゲートウェイユニット)を介設し、該中継接続ユニットでグループ内のECU間の通信の中継を行う車載用通信システムが採用されている。
このように、車両に搭載した多数のECUをグループ別とし、かつ、各グループ内ではECUに接続した通信線を中継接続ユニットと接続するシステムとすることで、配線数の低減化を図ると共に、中継接続ユニットを介したECU間の通信の高速化を図っている。
【0003】
前記した車載用通信システムにおいては、通信線上に存在する複数のECUのうちいずれかが故障して通信異常が発生すると、車両や電装品の制御に支障をきたすこととなる。よって、通信異常を発生させているECUを早期に特定して、通信異常に対する対処を迅速に開始することが好ましい。
【0004】
そこで、特開2006−287739号公報(特許文献1)において、ECUの通信異常の判定を行う中継接続ユニットが提案されている。
前記中継接続ユニットは、受信するメッセージの受信回数をカウントする受信カウンタを備え、所定期間内にメッセージを受信した受信回数と、中継接続ユニットが受信すべきメッセージの回数である判定値とを比較することで、該メッセージがECUから送信されていない、もしくはメッセージの送信周期が異常である等の通信異常を検知している。
メッセージの通信異常を検知した場合には、中継接続ユニットは異常なメッセージを送信したECUに送信を抑制させている。
【0005】
一方、電子制御ユニットを夫々接続した第1通信線と第2通信線の間に中継接続ユニットを介在させている車載用通信システムにおいて、重要度が高くメッセージ送信数が多い等の理由で電子制御ユニットから前記第1通信線と第2通信線の2重系統の通信線に対してメッセージを同時に送信する必要がある場合、第1通信線及び第2通信線に送信するメッセージが多数ある場合に、第1通信線と第2通信線の双方に電子制御ユニットを接続する場合がある。
以下、前記2重系統の第1、第2通信線に同時にメッセージを送信する電子制御ユニットを特定電子制御ユニットと称す。
前記特定電子制御ユニットを第1通信線と第2通信線に直接接続することで、特定電子制御ユニットは中継接続ユニットを介さずに同じメッセージを第1通信線と第2通信線の双方に送信するため、中継接続ユニットは特定電子制御ユニットの送信したメッセージ(特定メッセージ)の中継処理を行う必要がなく、中継接続ユニットの中継処理が増加しない。また、特定メッセージを中継接続ユニットでの中継を介さずに送信するため、特定メッセージの通信速度を高速化することができる。
【0006】
前記のような特定電子制御ユニットを接続した車載用通信システムに特許文献1の中継接続ユニットを用いた場合、中継接続ユニットは特定電子制御ユニットが送信する特定メッセージの中継処理は行わないが、特定メッセージが送信される第1通信線及び第2通信線と接続しているので、特定メッセージを受信することはできる。
このため、中継接続ユニットに特定メッセージの受信回数をカウントする受信カウンタを備え、特定メッセージの受信回数を判定値と比較することで、特定電子制御ユニットの通信異常を検知することができる。
【0007】
【特許文献1】特開2006−287739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記のように第1通信線及び第2通信線の双方に接続された特定電子制御ユニットが同じ特定メッセージを両方の通信線に送信している場合に、例えば、特定電子制御ユニットに通信異常が発生して第1通信線に対して特定メッセージを送信できなくなると、特許文献1の中継接続ユニットでは、受信している特定メッセージから通信異常は検知していても中継処理は行っていないため、第2通信線から受信している特定メッセージを第1通信線に中継することはできず、第1通信線に特定メッセージが送信されない状態が続くという問題がある。
【0009】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、2重系統の第1、第2通信線に接続された特定電子制御ユニットのメッセージ送信に通信異常が発生しても、通信を維持できる機能を中継接続ユニットに持たせることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、
電子制御ユニットを夫々接続した第1通信線と第2通信線の間に接続し、前記第1、第2通信線に接続された電子制御ユニット間のメッセージの送受信を中継する中継接続ユニットであって、
前記第1、第2通信線の双方に接続されてメッセージの送受信を直接行う特定電子制御ユニットに前記第1、第2通信線を介して接続され、該特定電子制御ユニットの送信するメッセージを受信する受信部と、
前記受信部で受信した前記特定電子制御ユニットから前記第1通信線に送信する前記メッセージの数または/および受信周期を記録する第1受信カウンタと、
前記受信部で受信した前記特定電子制御ユニットから前記第2通信線に送信する前記メッセージの数または/および受信周期を記録する第2受信カウンタと、
前記第1受信カウンタと第2受信カウンタに記録されたメッセージ数または/および周期を判定値と比較して、前記特定電子制御ユニットから前記第1通信線または第2通信線へメッセージの送信に異常が発生していることを検知した場合に、一方の通信線から受信した前記特定電子制御ユニットのメッセージを受信していない他方の通信線に中継する処理部と、
を備えることを特徴とする中継接続ユニットを提供している。
【0011】
前記構成によれば、中継接続ユニットは特定電子制御ユニットが第1通信線及び第2通信線に送信するメッセージを受信し、メッセージの数または/および周期を第1受信カウンタ及び第2受信カウンタで記録しているので、該メッセージ数または/および周期を用いて特定電子制御ユニットの第1通信線または第2通信線へのメッセージの送信に通信異常が発生しているか否かを検知することができる。
また、特定電子制御ユニットが第1通信線と第2通信線に同じメッセージを送信している場合に、例えば、第1通信線へ特定電子制御ユニットが送信したメッセージを中継接続ユニットが受信できず、特定電子制御ユニットの通信異常を検知した場合には、中継接続ユニットは特定電子制御ユニットに代わり、第2通信線から受信したメッセージを第1通信線に中継する。
このため、特定電子制御ユニットの他方の通信線へのメッセージ送信に通信異常が発生しても、一方の通信線から受信したメッセージを該他方の通信線へ送信することで、他方の通信線へのメッセージの送信を確実に継続することができる。
【0012】
前記特定電子制御ユニットは走行系機器を制御する重要な電子制御ユニットであり、多数のセンサ等が接続されて第1通信線及び第2通信線へメッセージの送信回数が多い場合や、メッセージのデータ長が長い場合に、本発明の中継接続ユニットは好適に用いられる。
特定電子制御ユニットは、例えばハイブリッド自動車のエンジン制御に関わる電子制御ユニットである。
本発明の中継接続ユニットは、特定電子制御ユニットの他方の通信線への重要メッセージの送信に異常が発生した場合であっても、一方の通信線から受信した重要メッセージを他方の通信線に確実に中継するので、他方の通信線に接続され重要メッセージを必要とする電子制御ユニットは重要メッセージを確実に受信することができる。
特定電子制御ユニットが正常にメッセージ送信を行っている場合は、特定電子制御ユニットは直接第1通信線及び第2通信線にメッセージの送信を行い、中継接続ユニットは該メッセージの中継を行わないため、特定電子制御ユニットが送信するメッセージ数が多い場合やメッセージのデータ長が長い場合であっても、中継接続ユニットの中継処理が増加することがない。
【0013】
本発明の中継接続ユニットは、受信するメッセージと中継送信先との関係を示したルーティングマップを備えた記憶部を備え、
前記処理部は、前記特定電子制御ユニットから前記第1通信線または第2通信線にメッセージが送信されていないことを検知した場合に、前記特定電子制御ユニットのメッセージの中継先通信線を前記ルーティングマップに加える書き換えを前記記憶部に指令することが好ましい。
【0014】
中継接続ユニットが中継するメッセージと中継送信先の通信線は全てルーティングマップに記録されており、処理部はルーティングマップに従ってメッセージを中継する。
このため、中継接続ユニットが特定電子制御ユニットの通信異常を検知すると、特定電子制御ユニットのメッセージの中継先通信線をルーティングマップに加える書き換えを行うことで、中継接続ユニットは特定電子制御ユニットに代わり、一方の通信線から受信した前記特定電子制御ユニットのメッセージを受信していない他方の通信線に中継することができる。
【0015】
前記処理部は、前記一方の通信線から受信した前記特定電子制御ユニットのメッセージの受信専用のIDを、他方の通信線に中継する場合は中継用のIDに変更することが好ましい。
特定電子制御ユニットは第1通信線及び第2通信線に同じIDを持った同じメッセージを送信しており、中継接続ユニットが一方の通信線から受信した特定電子制御ユニットのメッセージのIDを変更することで、他方の通信線には特定電子制御ユニットが直接送信したメッセージと異なるIDを持ったメッセージを送信することができる。
他方の通信線に接続され、特定電子制御ユニットから送信されるメッセージを受信する電子制御ユニットは、予め受信専用のメッセージのIDと中継用のIDを記録しており、特定電子制御ユニットが直接送信したメッセージと中継接続ユニットを経由したメッセージを判別して受信することができる。
【0016】
特に、特定電子制御ユニットが他方の通信線には不定期もしくは異常な周期でメッセージを送信して通信異常となっている場合は、他方の通信線には特定電子制御ユニットが送信する周期異常メッセージと、中継接続ユニットが一方の通信線から受信したメッセージを他方の通信線に中継している正常なメッセージの両方が送信されることになる。
他方の通信線に接続された電子制御ユニットは、両方のIDのメッセージを受信した場合には、中継用のIDのメッセージのみを受信して電子制御ユニットに接続された電子機器等の制御に使用する。
このように、中継接続ユニットが中継送信先の通信線にメッセージを中継する際にメッセージのIDを変更することで、該メッセージが送信された通信線に接続されている電子制御ユニットは、中継接続ユニットを介した周期異常でないメッセージを判別して使用することができると共に、同内容のメッセージの受信を防ぐことができる。
【0017】
前記処理部は、前記第1受信カウンタと第2受信カウンタに記憶されたメッセージ数または/および受信周期を判定値と比較し、前記特定電子制御ユニットからのメッセージの送信が行われていない状態から送信が行われた状態に復帰したことを検知した場合に、前記ルーティングマップから特定電子制御ユニットのメッセージの中継送信先を削除する書き換えを前記記憶部に指令することが好ましい。
特定電子制御ユニットが通信異常の状態から正常な通信状態に復帰した場合には、中継接続ユニットはルーティングマップを書き換えることで、一方の通信線から受信した前記特定電子制御ユニットのメッセージを、該メッセージを受信していない他方の通信線に中継することを停止することができる。
【発明の効果】
【0018】
前述したように、本発明の中継接続ユニットによれば第1通信線と第2通信線の間に接続し、電子制御ユニット間のメッセージの送受信を中継する中継接続ユニットにおいて、前記2重系統の第1、第2通信線の双方に接続してメッセージの送受信を中継接続ユニットの中継を介さずに直接行う特定電子制御ユニットを備えている場合において、中継接続ユニットは特定電子制御ユニットが第1及び第2通信線に送信するメッセージを受信し、メッセージの数または/および周期を第1受信カウンタ及び第2受信カウンタで記録しているので、該メッセージ数または/および周期を用いて特定電子制御ユニットの第1通信線または第2通信線へのメッセージの送信に通信異常が発生しているか否かを検知することができる。
【0019】
また、特定電子制御ユニットが第1通信線と第2通信線に同じメッセージを送信しており、中継接続ユニットが他方の通信線からメッセージを正常に受信できず特定電子制御ユニットの該通信異常を検知した場合には、中継接続ユニットは特定電子制御ユニットに代わり、一方の通信線から受信した特定電子制御ユニットのメッセージを他方の通信線に中継するため、該他方の通信線へメッセージの送信を確実に継続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図5は本発明の第1実施形態を示す。
図1は本発明の中継接続ユニット20を備えた車載用通信システム10を示す。中継接続ユニット20(ゲートウェイユニット)は第1通信線11A及び第2通信線11Bとの間に接続すると共に、第1通信線11Aには電子制御ユニット(ECU)12A−1、12A−2、第2通信線11BにはECU12B−1、12B−2を夫々接続している。
さらに、特定ECU30を第1通信線11A及び第2通信線11Bの双方に接続しており、特定ECU30はID及びメッセージ内容が同一の特定メッセージMA、MBの送受信を第1通信線11A及び第2通信線11Bに直接行っている。
本実施形態の車載用通信システム10の通信プロトコルは、CANプロトコルを用いており、アクセス方式はCSMA/CAとし、最大通信速度は1Mbpsとしている。
【0021】
中継接続ユニット20は、特定ECU30から一方の通信線への特定メッセージMの送信に異常が発生したことを検知すると、他方の通信線11から特定メッセージMを受信し、該特定メッセージMのIDを書き換えて中継特定メッセージMCとし、中継接続ユニット20のルーティングマップRMを書き換えて、特定ECU30から特定メッセージMの受信ができない一方の通信線11へ中継特定メッセージMCを中継している。
また、中継接続ユニット20は異なる通信線11に属するECU12間のECUメッセージmの送受信を中継している。
【0022】
車載用通信システム10で送受信される特定メッセージM及びECUメッセージmのフレームは、図2に示すようにID部13とデータ部14を備えており、ID部13には、特定メッセージMまたはECUメッセージmを送信する特定ECU30またはECU12により受信専用IDが付されている。また、データ部14には特定メッセージM及びECUメッセージmの内容を示すデータが含まれている。
【0023】
図3は中継接続ユニット20の構成を示すブロック図である。
中継接続ユニット20は第1通信線11Aに接続された受信部21A及び送信部22Aと、第2通信線11Bに接続された受信部21B及び送信部22Bと、処理部23と、記憶部24を備えている。
受信部21Aは特定ECU30から第1通信線11Aに送信された特定メッセージMAを受信している。また、受信部21Aには第1受信カウンタ25Aを設けており、受信した特定メッセージMAの数NAおよび受信周期T1Aを記録している。
さらに、受信部21Aは第1通信線11Aに接続されたECU12A−1、12A−2から送信されたECUメッセージmの受信を行っている。なお、ECU12からのECUメッセージmについては受信カウンタを設けていない。
受信部21Bも受信部21Aと同様の構成としており、特定ECU30から第2通信線11Bに送信された特定メッセージMBを受信していると共に、第2受信カウンタ25Bを設けており、受信した特定メッセージMBの数NBおよび受信周期T1Bを記録している。
送信部22は特定メッセージMA、MB、ECUメッセージmを各通信線11に送信している。
【0024】
処理部23は、中継処理部26と、ルーティングマップ変更部27と、ID変更部28と、通信異常検知部29を備えている。
中継処理部26は、特定ECU30が一方の通信線11へ通信異常となっている場合に、他方の通信線から受信した特定メッセージMを一方の通信線11へ中継している。
また、ECU12からECUメッセージmを受信すると、ルーティングマップRMを参照して中継送信先の通信線を判別して該通信線にECUメッセージmを送信している。
【0025】
通信異常検知部29は、第1受信カウンタ25A及び第2受信カウンタ25Bに定期的にアクセスして、各カウンタに記録された特定メッセージ数Nおよび受信周期T1を読み出す。所定期間T2内に受信した特定メッセージMの数Nおよび受信周期T1を予め通信異常検知部29に備えた判定値と比較することで特定ECU30の通信異常を検知している。
例えば、所定期間T2を、特定ECU30が特定メッセージMA、MBを送信する送信周期T3の6倍、判定値を5と定めた場合、所定期間T2の間に受信した特定メッセージMの数Nが5回より少なければ、特定ECU30に通信異常が発生していると判断する。
また、例えば、第1受信カウンタ25A及び第2受信カウンタ25Bの特定メッセージMの受信周期T1の判定値(判定周期)を3と定めた場合、受信周期T1が、特定ECU30が特定メッセージMA、MBを送信する送信周期T3の3倍以上であれば、特定ECU30に通信異常が発生していると判断する。
【0026】
ID変更部28では、通信異常検知部29が特定ECU30の一方の通信線への通信異常を検知した場合に、正常に送信されている他方の通信線から受信した特定メッセージMAまたはMBの受信専用IDを、予め記憶している中継用IDに変更している。中継用IDに変更された特定メッセージMを中継特定メッセージMCと称す。
【0027】
ルーティングマップ変更部27は、通信異常検知部29が特定ECU30の一方の通信線への通信異常を検知した場合に、中継特定メッセージMCの中継用のIDと中継送信先通信線とを示す情報を、記憶部24に記憶した通常ルーティングマップRM1に加えて通信異常ルーティングマップRM2とする書き換えを記憶部24に指令している。
また、通信異常検知部29が特定ECU30の通信が正常に行われていることを検知した場合には、通信異常ルーティングマップRM2から特定ECU30の特定メッセージMの中継送信先を削除して通常ルーティングマップRM1とする書き換えを記憶部24に指令している。
【0028】
記憶部24は、受信した特定メッセージMと中継送信先通信線との関係を示すルーティングマップRMを備えている。特定ECU30が正常に特定メッセージMを送信している場合には、特定ECU30が送信する特定メッセージMについては記載されておらず、異なる通信線に属する特定ECU30以外のECU12間で送受信されるECUメッセージmを中継するための通常ルーティングマップRM1を記憶している。
図4(A)は通常ルーティングマップRM1の例を示しており、特定ECU30以外のECU12から送信されたID1〜4がどの通信線に中継されるかを示している。
【0029】
一方、通信異常検知部29が特定ECU30の一方の通信線への通信異常を検知した場合には、ルーティングマップ変更部27からの指令により、他方の通信線から受信した特定ECU30の特定メッセージMを一方の通信線へ中継するための通信異常ルーティングマップRM2に書き換えられる。
図4(B)は通信異常ルーティングマップRM2の例を示しており、通常ルーティングマップRM1に中継特定メッセージMCの中継用IDと中継送信先が追加されている。即ち、通信異常ルーティングマップRM2は通常ルーティングマップRM1を含んでいる。
例えば、第1通信線11Aから受信した特定ECU30の特定メッセージMAの受信専用IDは中継用ID10と書き換えられ、中継送信先として第2通信線11Bが指定されている。同様に、第2通信線11Bから受信した特定ECU30の特定メッセージMBの受信専用IDは中継用ID20と書き換えられ、中継送信先として第1通信線11Aが指定されている。
【0030】
次に、中継接続ユニット20の動作について図5のフローチャートを用いて説明する。
例として、特定ECU30が第1通信線11A及び第2通信線11Bに受信専用IDが30である特定メッセージMA、MBを送信しているときに、図1に示すように、特定ECU30が第1通信線11Aに特定メッセージMAの送信が行うことができない通信異常が発生した場合を考える。
【0031】
ステップS1は特定ECU30から第1通信線11A及び第2通信線11Bに送信された特定メッセージMA、MBを受信部21で受信している。
ステップS2では、第1受信カウンタ25A及び第2受信カウンタ25Bで、受信した特定メッセージMA、MBの数NA、NBをカウントしている。
ステップS3では、通信異常検知部29は周期的に第1受信カウンタ25A及び第2受信カウンタ25Bから受信した特定メッセージMA、MBの数NA、NBを読み出し、予め備えた判定値と比較している。判定値よりも受信した特定メッセージ数Nが小さい場合には通信異常が発生しているとしてステップS4に進む。また、受信した特定メッセージ数Nが判定値以上であれば通信異常は発生していないと判断してステップS8に進む。
特定ECU30は第1通信線11Aに特定メッセージMAを送信できない場合、第1受信カウンタ25Aの特定メッセージ数Nは0となるため判定値よりも小さくなり、通信異常検知部29は通信異常が発生していると判断する。
【0032】
ステップS4では、ルーティングマップ変更部27は、例えば図4(A)に示す通常ルーティングマップRM1を、中継用IDと中継送信先を加えた図4(B)に示す通信異常ルーティングマップRM2に書き換えるよう記憶部24に指令を出している。中継用IDと中継送信先は予めルーティングマップ変更部27が記憶している。
なお、既に記憶部24のルーティングマップRMが通信異常ルーティングマップRM2となっている場合には、ルーティングマップ変更部27はルーティングマップRMを書き換えずに既に記憶されたものを用いてもよい。
【0033】
ステップS5では、ID変更部28は、正常に送信されている第2通信線11Bから受信した特定メッセージMBの受信専用のID30を、中継用のID20に変更し、中継特定メッセージMCとしている。
ステップS6では、中継処理部26はIDが変更された中継特定メッセージMCの中継処理を行っている。通信異常ルーティングマップRM2を参照して中継用ID10の中継送信先が第2通信線11Bであることを判別し、送信部22を介して第2通信線11Bに中継特定メッセージMCの送信を行う。
ステップS7では、特定ECU30の特定メッセージMの中継ではなく、異なる通信線に属する特定ECU30以外のECU12間で送受信されるECUメッセージmの中継である通常中継処理を行っている。通信異常ルーティングマップRM2には通常ルーティングマップRM1が含まれているので、通信異常ルーティングマップRM2を参照して通常中継処理を行う。
【0034】
ステップS8では、ステップS3で特定ECU30のメッセージ送信に異常が無いと判断された場合に、ルーティングマップ変更部27が、通信異常ルーティングマップRM2から特定ECU30の特定メッセージMの中継送信先を削除して通常ルーティングマップRM1に書き換えるよう記憶部24に指令を出している。なお、既に記憶部24のルーティングマップRMが通常ルーティングマップRM1となっている場合には、書き換えを行わずにそのまま使用してもよい。
【0035】
なお、特定ECU30が正常に各通信線に送信を行っている場合には、ステップS1で特定ECU30から第1通信線11A及び第2通信線11Bに送信された特定メッセージMを受信部21で受信し、ステップS2では、第1受信カウンタ25A及び第2受信カウンタ25Bにより、受信した特定メッセージMの数をカウントし、ステップS3で通信異常が発生していないと判断されてステップS8に進む。
ステップS8ではルーティングマップ変更部27からの指令により、記憶部24に通常ルーティングマップRM1が記憶される。
ステップS7では、通常ルーティングマップRM1を参照して、異なる通信線に属する特定ECU30以外のECU12間で送受信されるECUメッセージmの中継を行い、特定ECU30の特定メッセージMの中継には関与しない。
【0036】
前記のように第2通信線11Bに送信された中継特定メッセージMCは、第2通信線11Bに接続されたECU12B−1、12B−2が受信する。
ECU12Bは特定ECU30から送信される特定メッセージMBの受信専用IDだけでなく、中継特定メッセージMCの中継用IDを予め記憶しており、中継特定メッセージMCを受信して自身に接続された電子機器等の制御に使用する。
【0037】
なお、特定ECU30からも特定メッセージMBが異常な周期で送信されている場合には、第2通信線11Bには中継特定メッセージMCと異常周期の特定メッセージMBが送信されることになるが、ECU12は中継特定メッセージMCを選択して電子機器等の制御に使用する。
【0038】
前記構成によれば、中継接続ユニット20は特定ECU30が第1通信線11A及び第2通信線11Bに送信する特定メッセージMを受信し、特定メッセージMの数または/および受信周期を第1受信カウンタ25A及び第2受信カウンタ25Bで記録しているので、該特定メッセージ数または/および周期を用いて特定電子制御ユニットの第1通信線11Aまたは第2通信線11Bへの特定メッセージMの送信に通信異常が発生しているか否かを検知することができる。
また、特定ECU30が第1通信線11Aと第2通信線11Bに同じ特定メッセージMを送信しており、中継接続ユニット20が他方の通信線から特定メッセージMを正常に受信できず特定ECU30の該通信異常を検知した場合には、中継接続ユニット20は特定ECU30に代わり、一方の通信線から受信した特定ECU30の特定メッセージMを他方の通信線に中継するため、該他方の通信線へ特定メッセージMの送信を確実に継続することができる。
【0039】
なお、中継接続ユニット20の記憶部24に予め通常ルーティングマップRM1と通信異常ルーティングマップRM2の2つを備えていてもよい。この場合、処理部23にルーティングマップ変更部27は不要となり、通信異常検知部29が特定ECU30の一方の通信線への通信異常を検知した場合に、中継処理部26は通信異常ルーティングマップRM2を記憶部24から読み出し、中継処理を行う。通常ルーティングマップRM1と通信異常ルーティングマップRM2を切り替えることで、ルーティングマップRMの書き換えを行わずにすみ、中継接続ユニット20の処理時間が短くなる。
また、通信プロトコルはCANに限定されるものではなく、LINやFlexRayなどの車載LANのプロトコルであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の中継接続ユニットを接続した車載用通信システムの構成図である。
【図2】メッセージのフレームの説明図である。
【図3】中継接続ユニットの構成を示すブロック図である。
【図4】(A)は通常ルーティングマップの例であり、(B)は通信異常ルーティングマップの例である。
【図5】中継接続ユニットの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
11A 第1通信線
11B 第2通信線
12 電子制御ユニット(ECU)
20 中継接続ユニット
21 受信部
22 送信部
23 処理部
24 記憶部
25A 第1受信カウンタ
25B 第2受信カウンタ
26 中継処理部
27 ルーティングマップ変更部
28 ID変更部
29 通信異常検知部
30 特定ECU
m ECUメッセージ
MA、MB 特定メッセージ
MC 中継特定メッセージ
RM1 通常ルーティングマップ
RM2 通信異常ルーティングマップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子制御ユニットを夫々接続した第1通信線と第2通信線の間に接続し、前記第1、第2通信線に接続された電子制御ユニット間のメッセージの送受信を中継する中継接続ユニットであって、
前記第1、第2通信線の双方に接続されてメッセージの送受信を直接行う特定電子制御ユニットに前記第1、第2通信線を介して接続され、該特定電子制御ユニットの送信するメッセージを受信する受信部と、
前記受信部で受信した前記特定電子制御ユニットから前記第1通信線に送信する前記メッセージの数または/および受信周期を記録する第1受信カウンタと、
前記受信部で受信した前記特定電子制御ユニットから前記第2通信線に送信する前記メッセージの数または/および受信周期を記録する第2受信カウンタと、
前記第1受信カウンタと第2受信カウンタに記録されたメッセージ数または/および周期を判定値と比較して、前記特定電子制御ユニットから前記第1通信線または第2通信線へメッセージの送信に異常が発生していることを検知した場合に、一方の通信線から受信した前記特定電子制御ユニットのメッセージを受信していない他方の通信線に中継する処理部と、
を備えることを特徴とする車載用の中継接続ユニット。
【請求項2】
前記第1、第2通信線を介して接続する前記特定電子制御ユニットは、走行系機器を制御する電子制御ユニットである請求項1に記載の車載用の中継接続ユニット。
【請求項3】
受信するメッセージと中継送信先との関係を示したルーティングマップを有する記憶部を備え、
前記処理部は、前記特定電子制御ユニットから前記第1通信線または第2通信線にメッセージが送信されていないことを検知した場合に、前記特定電子制御ユニットのメッセージの中継先通信線を前記ルーティングマップに加える書き換えを前記記憶部に指令する請求項1または請求項2に記載の車載用の中継接続ユニット。
【請求項4】
前記処理部は、前記一方の通信線から受信した前記特定電子制御ユニットのメッセージの受信専用のIDを、他方の通信線に中継する場合は中継用のIDに変更している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車載用の中継接続ユニット。
【請求項5】
前記処理部は、前記第1受信カウンタと第2受信カウンタに記憶されたメッセージ数または/および受信周期を判定値と比較し、前記特定電子制御ユニットからのメッセージの送信が行われていない状態から送信が行われた状態に復帰したことを検知した場合に、前記ルーティングマップから特定電子制御ユニットのメッセージの中継送信先を削除する書き換えを前記記憶部に指令する請求項3または請求項4に記載の車載用の中継接続ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−227591(P2008−227591A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58750(P2007−58750)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】