説明

車載用アンテナシステム

【課題】スポイラ内に複数のアンテナを配置する場合において、アンテナ相互間で及ぼし合う電磁界的な影響を抑制することを目的とする。
【解決手段】 スポイラ10の後方部には、第1アンテナ18が配置されている。第1アンテナ18は、スポイラ10後方の外周に沿って延伸する第1アンテナ樹脂ベース20、第1アンテナ樹脂ベース20上に延伸方向を揃えて配置された2本の第1アンテナ素子22Aおよび22B、ならびに、第1アンテナ樹脂ベース20上に配置された第1接続基板24を備える。第2アンテナ28は、線状の第2アンテナ素子30、第2アンテナ素子30が接続される第2接続基板32、ならびに、第2アンテナ素子30および第2接続基板32が配置される第2アンテナ樹脂ベース34を備える。第2アンテナ素子30は、第1アンテナ18が占有していない領域を曲折して伸びる線状曲折導体をなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用アンテナシステムに関し、車両の中空外装部品内にアンテナが配置されたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車載用のアンテナとして、ポールアンテナが広く用いられている。ポールアンテナは棒状のアンテナであり、車両のボデーに立てて固定される。ポールアンテナは、車両から突出しているため、車両の美観を奏する部品の一つとなる。しかしながら、車両の外部にアンテナが現れないデザインを好むユーザもいる。そこで、モノポールアンテナの他、スポイラの内部にアンテナ素子が設けられたスポイラアンテナもまた広く用いられている。スポイラは、車両のボデーに取り付けられ、車両の空気の流れを調整する部材であり、車両の美観を奏する部材ともなる。スポイラには、車両のリアウィンドウの上部に設けられる庇状のものや、車両の後部に設けられた翼状のものがある。以下の特許文献1および2には、車載用のスポイラアンテナが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−177484号公報
【特許文献2】特開2008−283609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両には、使用周波数帯の異なる複数の無線機器が搭載されることが多い。この場合、スポイラ内には複数のアンテナを配置することが好ましい。しかし、複数のアンテナを近接して配置すると、複数のアンテナが相互に電磁界的な影響を及ぼし合い、特性が劣化することがある。
【0005】
本発明は、スポイラ内に複数のアンテナを配置する場合において、アンテナ相互間で及ぼし合う電磁界的な影響を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両の中空外装部品の内部に配置される車載用アンテナシステムにおいて、前記中空外装部品の筐体の延伸方向に沿って、当該筐体内に配置される線状の第1アンテナと、前記第1アンテナと共に前記筐体内に配置される線状の第2アンテナと、を備え、前記第2アンテナは、前記第1アンテナの側方に位置する接続端と、前記第1アンテナに占有されていない前記筐体内の領域において、前記接続端から曲折しながら伸びる曲折線状導体と、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る車載用アンテナシステムは、望ましくは、前記曲折線状導体は、前記第1アンテナの一端を側方に見ながら、前記筐体の外周壁の方向に伸びる第1延伸区間と、前記延伸区間の終端から、前記第1アンテナから離れる方向に前記筐体の形状に沿って延伸する第2延伸区間と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スポイラ内に複数のアンテナを配置する場合において、アンテナ相互間で及ぼし合う電磁界的な影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】スポイラアンテナシステムが搭載される車両を示す図である。
【図2】第1実施形態に係るスポイラアンテナシステムの構成を示す図である。
【図3】第2アンテナが配置されている領域を拡大して示した図である。
【図4】第2アンテナの回路図を示す図である。
【図5】第2アンテナの設計パラメータを説明する図である。
【図6】各アンテナ角度についての無線信号の受信レベルを示す図である。
【図7】第1実施形態に係るスポイラアンテナシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1には、第1実施形態に係るスポイラアンテナシステムが搭載される車両100が示されている。この車両100に実装されたスポイラ10は、プラスチック樹脂等で形成された中空の外装部品である。図1に示されているスポイラ10は、リアウィンドウ12の上部に設けられ、庇状の形状を有する。
【0011】
図2には、本実施形態に係るスポイラアンテナシステム14の構成が示されている。ただし、この図はスポイラ10の筐体16の上面が取り除かれた様子を示したものである。図2の上方向および下方向は、それぞれ、車両100の後方向および前方向に対応し、図2の左方向および右方向は、それぞれ、車両進行方向を見て右方向および左方向に対応する。
【0012】
スポイラ10の後方部には、AMラジオ放送およびFMラジオ放送の電波を受信する第1アンテナ18が配置されている。第1アンテナ18は、スポイラ10後方の外周に沿って延伸する第1アンテナ樹脂ベース20、第1アンテナ樹脂ベース20上に延伸方向を揃えて配置された2本の第1アンテナ素子22Aおよび22B、ならびに、第1アンテナ樹脂ベース20上に配置された第1接続基板24を備える。第1アンテナ素子22Bの一端は第1アンテナ素子22Aに接続され、第1アンテナ素子22Aは第1接続基板24に接続されている。第1接続基板24から引き出された導線26は車両内に搭載されたラジオ受信機に接続されている。
【0013】
第1アンテナ18より車両左側には、DAB(Digital Audio Broadcast)等のディジタルラジオ放送を受信する第2アンテナ28が配置されている。図3は、第2アンテナ28が配置されている領域を拡大して示した図である。第2アンテナ28は、線状の第2アンテナ素子30、第2アンテナ素子30が接続される第2接続基板32、ならびに、第2アンテナ素子30および第2接続基板32が配置される第2アンテナ樹脂ベース34を備える。
【0014】
第2アンテナ素子30は、導体で形成された接続側パターン36、中間パターン38、および外側パターン40によって形成され、第1アンテナ18が占有していない領域を曲折して伸びる線状曲折導体をなす。接続側パターン36は、第2接続基板32から車両左側方向に伸びる。中間パターン38は、接続側パターン36の終端から筐体16の後方の外周をなす壁に向かって伸びる。外側パターン40は、中間パターン38の終端から筐体16の形状に沿って第1アンテナ18から離れる方向に伸びる。すなわち、第2アンテナ素子30は、第1アンテナ素子22Aおよび22Bのそれぞれの一端を側方に見ながら、第2接続基板32から筐体16の後方の外周をなす壁に向かって伸び、さらに、第1アンテナ18から離れる方向に筐体16の形状に沿って伸びる。
【0015】
図4には、第2アンテナ28の回路図が示されている。第2アンテナ素子28は、第2接続基板32において同軸ケーブル42の内導体に接続されている。同軸ケーブル42は、第2接続基板32から引き出され、車両の内部に搭載されたDAB受信機48に接続されている。同軸ケーブル42の外導体は、第2接続基板32に実装されたコンデンサ46を介して、第2接続基板32の接地導体パターンに接続されている。第2接続基板32の接地導体パターンは、車両のボデーに接続されている。
【0016】
図3に示される構造では、スポイラ10の筐体16に穴が開けられており、第2接続基板32の接地導体パターンは、その穴を通る帯状の導体であるグランドプレート44を介してボデーに接続されている。グランドプレート44は、第2接続基板32の接地導体パターンを突出させたものであってもよい。また、グランドプレート44には、先端部にボルトを溶接したものを採用してもよい。この場合、ボデーに開けられた穴にボルトが通され、ボルトとナットによってグランドプレート44の先端部がボデーに固定される。
【0017】
なお、第2アンテナ素子30と同軸ケーブル42の内導体との間には、インピーダンス整合回路を設けてもよい。また、コンデンサ46のキャパシタンス値は、コンデンサ46がインピーダンス整合素子として機能するよう決定してもよい。
【0018】
次に、第2アンテナ28の設計について説明する。図5は第2アンテナ28の設計パラメータを説明する図である。第2アンテナ素子30は、第1アンテナ素子22Bの一端(第1アンテナ基準点S)から下方に距離hだけ隔てた点Pから伸びる中間パターン38として簡略モデル化されている。中間パターン38の一端と接地導体との間には、受信レベル計Eが接続されている。第2アンテナ28は、点Pおよび第1アンテナ基準点Sを結ぶ基準線Lと、中間パターン38とがなすアンテナ角度θを設計パラメータとする。すなわち、受信レベル計Eで検出される無線信号のレベルが十分な値となるよう、アンテナ角度θが設定される。
【0019】
また、中間パターン38と第1アンテナ基準点Sとの距離であるアンテナ間距離Dを設計パラメータとしてもよい。ここで、アンテナ間距離Dは、第1アンテナ基準点Sから中間パターン38に対して引いた垂線の長さとして定義される。すなわち、受信レベル計Eで検出される無線信号のレベルが十分な値となるよう、アンテナ間距離Dが設定される。
【0020】
図6には、アンテナ角度θを、θ=0°、θ=45°、およびθ=60°とした場合のそれぞれについて、無線信号の受信レベルを比較した実測の結果である。横軸は周波数を示し、縦軸はログスケールで表された受信レベルである。なお、θ=0°、θ=45°、およびθ=60°は、それぞれ、アンテナ間距離D=0、D=λ/30、およびλ/18に対応する。λは、第2アンテナ28で受信される電波の波長である。これより、θ=45°の場合において受信レベルが最も大きいことがわかる。図2および図3に示される第2アンテナ28については、このような設計方法に基づいて中間アンテナの配置位置および方向を決定することができる。
【0021】
なお、第1アンテナ18による影響を軽減するという観点から、第2アンテナ素子30は、第1アンテナ18からできるだけ遠ざけることが好ましい。そこで、アンテナ角度θは任意とし、受信レベルに基づきアンテナ間距離Dを設定してもよい。例えば、アンテナ間距離Dを変化させ、第1アンテナ18が受信レベルに影響がない程度のアンテナ間距離Dを求めてもよい。本実施形態においては、例えば、アンテナ距離Dをλ/30以上とする。
【0022】
ここでは、受信レベル計Eで検出される無線信号のレベルに基づく設計法について述べた。このような設計法の代わりに、受信レベル計Eを信号源に置き換えた設計法を採用してもよい。この場合、信号源から出力される無線信号に基づき第2アンテナ28から放射される電波のレベルをシミュレーションまたは実験によって求める。そして、放射される電波の指向特性、またはレベルが最適となるようアンテナ角度θまたはアンテナ間距離Dを決定する。アンテナの相反定理により、アンテナの送信特性が良好であれば受信特性は良好となるため、このような設計法が可能となる。
【0023】
本実施形態に係るスポイラアンテナシステム14によれば、スポイラ10内に第1アンテナ18および第2アンテナ28を配置する場合において、第1アンテナ18が第2アンテナ28に与える電磁界的な影響を抑制することができる。
【0024】
次に、第2実施形態に係るスポイラアンテナシステム50について説明する。図7には、その構成が示されている。図3に示される構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。本実施形態に係るスポイラアンテナシステム50は、第2アンテナ素子30の中間パターン38および外側パターン40をクランク形状にしたものである。
【0025】
中間パターン38は、第1中間パターン38−1、第2中間パターン38−2および第3中間パターン38−3を備える。第1中間パターン38−1は、接続側パターン36の終端からアンテナ角度θの方向に伸びる。第2中間パターン38−2は、第1中間パターン38−1の終端から第1アンテナ18から離れる方向に伸びる。第3中間パターン38−3は、第2中間パターン38−2の終端からアンテナ角度θの方向に伸びる。第1中間パターン38−1と第2中間パターン38−2との間に挟まれる領域には、第1アンテナ素子22Bの一端が位置する。
【0026】
第1中間パターン38−1と第2中間パターン38−2の向きを定めるアンテナ角度θは、第1実施形態に係るスポイラアンテナシステム14のアンテナ角度θと同様にして決定することができる。
【0027】
外側パターン40は、第1外側パターン40−1、第2外側パターン40−2および第3外側パターン40−3を備える。第1外側パターン40−1は、第3中間パターン38−3の終端から第1アンテナ18から離れる方向に筐体16の形状に沿って伸びる。第2外側パターン40−2は、第1外側パターン40−1の終端からスポイラ10内に入り込む方向に伸びる。第3外側パターン40−3は、第2外側パターン40−2の終端から第1外側パターン40−1から離れる方向に伸びる。
【0028】
このような中間パターン38および外側パターン40の形状によれば、スポイラ10内において第1アンテナ18が占有していない残りの領域を有効に利用して第2アンテナ28が配置される。これによって、スポイラ10の大きさを変更することなく2つのアンテナをスポイラ10内に配置することができる。
【0029】
次に第2アンテナ28の設計例を示す。ここで、λは第2アンテナ28で受信される電波の波長である。例えば、174MHz〜240MHzを使用周波数帯域とするDABの電波を受信する場合、λは、その中心周波数207MHzの電波の波長である1.45mとする。
【0030】
接続側パターン36は、長さをλ/55とし、幅をλ/125とした。第1中間パターン38−1は、長さをλ/38とし、幅をλ/45とした。第2中間パターン38−2は、長さをλ/38とし、幅をλ/125とした。第3中間パターン38−3は、長さをλ/17とし、幅をλ/88とした。第1外側パターン40−1は、長さをλ/15とし、幅をλ/188とした。第2外側パターン40−2は、長さをλ/45とし、幅をλ/188とした。第3外側パターン40−3は、長さをλ/43とし、幅をλ/188とした。グランドプレート44は、長さをλ/8とし、幅をλ/150とした。
【0031】
第1アンテナ18による影響を軽減するという観点から、第2アンテナ素子30は、第1アンテナ18からできるだけ遠ざけることが好ましい。そこで、本設計例おいては、第2中間パターン38−2から第1アンテナ素子22Bまでの最短距離F1および第3中間パターン38−3から第1アンテナ素子22Bまでの最短距離F2をλ/18以上とした。
【0032】
上記では、第1アンテナ18をAMラジオまたはFMラジオに用い、第2アンテナ28をDABの受信機に用いる実施形態について説明した。これらのアンテナは、テレビ、携帯電話等、その他の無線機に用いられるものであってもよい。また、上記では、スポイラ10内に第1アンテナ18および第2アンテナ28を配置する実施形態について説明した。これらのアンテナは、バンパー、サイドミラー等、中空の外装部品の内部に配置することとしてもよい。この場合においても、第2アンテナ素子30は、中空の外装部品内において第1アンテナ18が占有していない領域を曲折して伸びる線状曲折導体をなすものとする。そして、第2アンテナ素子30は、その特性が第1アンテナ18による影響を受けない程度に第1アンテナ18から距離を隔てたものとする。
【符号の説明】
【0033】
10 スポイラ、12 リアウィンドウ、14,50 スポイラアンテナシステム、16 筐体、18 第1アンテナ、20 第1アンテナ樹脂ベース、22A,22B 第1アンテナ素子、24 第1接続基板、26 導線、28 第2アンテナ、30 第2アンテナ素子、32 第2接続基板、34 第2アンテナ樹脂ベース、36 接続側パターン、38 中間パターン、38−1 第1中間パターン、38−2 第2中間パターン、38−3 第3中間パターン、40 外側パターン、40−1 第1外側パターン、40−2 第2外側パターン、40−3 第3外側パターン、42 同軸ケーブル、44 グランドプレート、46 コンデンサ、48 DAB受信機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の中空外装部品の内部に配置される車載用アンテナシステムにおいて、
前記中空外装部品の筐体の延伸方向に沿って、当該筐体内に配置される線状の第1アンテナと、
前記第1アンテナと共に前記筐体内に配置される線状の第2アンテナと、を備え、
前記第2アンテナは、
前記第1アンテナの側方に位置する接続端と、
前記第1アンテナに占有されていない前記筐体内の領域において、前記接続端から曲折しながら伸びる曲折線状導体と、
を含むことを特徴とする車載用アンテナシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用アンテナシステムにおいて、
前記曲折線状導体は、
前記第1アンテナの一端を側方に見ながら、前記筐体の外周壁の方向に伸びる第1延伸区間と、
前記延伸区間の終端から、前記第1アンテナから離れる方向に前記筐体の形状に沿って延伸する第2延伸区間と、
を含むことを特徴とする車載用アンテナシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−93744(P2013−93744A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234619(P2011−234619)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】