説明

車載用フレキシブルフラットケーブル

【課題】簡単な構造でFFCの導体ピッチを接続コネクタの端子収容室のピッチに変換し、FFCをピッチの異なるコネクタに配索方向を変えずに容易に接続できる。
【解決手段】FFCの導体ピッチと相違するピッチで端子収容室を並設しているコネクタと接続する該FFCの端末側にピッチ変換シートの一端を接続しており、前記ピッチ変換シートは、前記FFCと同数の導体を並列配置すると共に絶縁樹脂フィルムで表裏両面を被覆したFFCまたはFPCからなり、該ピッチ変換シートの導体の長さ方向の一端側は前記FFCの導体と同一のピッチで配列した第1ストレート部とすると共に、他端側は前記コネクタの端子収容室のピッチと同一ピッチで配列した第2ストレート部とし、これら両側の第1、第2ストレート部の間を傾斜部で連続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車載用フレキシブルフラットケーブル(FFC)に関し、詳しくは、FFCの導体ピッチと相違するピッチで端子収容室が並設されているコネクタに、FFCを簡単な構造で接続するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の導体を一定のピッチで平行配線していると共に、該複数の導体を絶縁樹脂フィルムで被覆しているフレキシブルフラットケーブル(以下、FFCという)が自動車の配線材として用いられている。FFCの端末に接続するコネクタに並設する端子収容室のピッチは、該コネクタと接続する相手方コネクタの端子ピッチに合わせる必要があることからFFCの導体ピッチと相違する場合が多く、その場合にはFFCの導体ピッチを接続コネクタの端子収容室のピッチに変換する必要がある。そこで、特開2008−146944号公報(特許文献1)では、図6に示すように、FFC1に平行配線される導体2a〜2jの間の絶縁被覆部3b〜3jに所要長さの切れ目を入れて帯状の導体2a〜2jをそれぞれ分離し、各導体2a〜2jを同一方向に折り曲げることにより、FFC1の各導体2a〜2jのピッチを所要ピッチに変換できることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−146944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記構成によれば、FFC1に接続するコネクタの構造を変えることなく、FFC1の各導体2a〜2jのピッチをコネクタの端子収容室のピッチに変換することが可能となる。しかし、導体2a〜2j間の狭幅の絶縁被覆部3b〜3jに長さの異なる切り込みを1本ずつ入れて分離した導体2a〜2jを折り曲げていかなければならず作業性が良くないと共に、FFC1の配索方向を変えないと前記コネクタに接続できないという問題がある。
【0005】
本発明は、簡単な構造でFFCの導体ピッチを該FFCに接続するコネクタの端子収容室のピッチに変換して、FFCをピッチの異なるコネクタに配索方向を変えずに容易に接続できることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、複数の導体を一定ピッチをあけて平行配線すると共に、該複数の導体の表裏両面を絶縁樹脂フィルムで被覆しているフレキシブルフラットケーブル(FFC)であって、
前記FFCの導体ピッチと相違するピッチで端子収容室を並設しているコネクタと接続する該FFCの端末側にピッチ変換シートの一端を接続しており、
前記ピッチ変換シートは、前記FFCと同数の導体を並列配置すると共に絶縁樹脂フィルムで表裏両面を被覆したFFCまたはFPCからなり、該ピッチ変換シートの導体の長さ方向の一端側は前記FFCの導体と同一のピッチで配列した第1ストレート部とすると共に、他端側は前記コネクタの端子収容室のピッチと同一ピッチで配列した第2ストレート部とし、これら両側の第1、第2ストレート部の間を傾斜部で連続していることを特徴とする車載用フレキシブルフラットケーブルを提供している。
【0007】
前記のように本発明では、FFCの導体ピッチと相違するピッチで端子収容室を並設したコネクタと接続するFFCの端末側に、該FFCと同数の導体を並列配置したFFCまたはFPC(フレキシブルプリント基板)からなるピッチ変換シートの一端を接続してピッチ差を吸収させている。前記ピッチ変換シートの導体は、前記のように、FFCの導体と同一ピッチで配列した第1ストレート部と、該FFCに接続するコネクタの端子収容室のピッチと同一ピッチで配列した第2ストレート部と、該第1、第2ストレート部を連続させる傾斜部とからなるため、前記コネクタと接続するFFCの端末にピッチ変換シートの第1ストレート部を接続するだけで、FFCの配索方向を変えることなく、FFCの導体ピッチを第2ストレート部のピッチ、即ち、接続コネクタの端子収容室のピッチに変換することができる。
【0008】
即ち、前記構成によれば、FFCに接続するコネクタの構造を変えることなく、またFFCの各導体間に切り込みを入れて折り曲げたりすることなく、簡単な構造でFFCの導体ピッチを接続コネクタの端子収容室のピッチに変換することができるため、FFCの配索方向を変えることなく、導体ピッチと異なるピッチで端子収容室が並設されたコネクタにFFCを容易に接続することが可能となる。
【0009】
前記FFCの導体と、前記第1、第2ストレート部および傾斜部からなるピッチ変換シートの導体は、ともに同幅の銅箔から形成することが好ましいが、導体幅を相違させていてもよい。前記ピッチ変換シートの第1ストレート部は少なくともFFC端末側の導体と接続できる長さがあればよく、第2ストレート部は少なくともコネクタの端子収容室に挿入される端子を接続できる長さがあればよいため、ピッチ変換シートのサイズは必要に応じて小型化することができる。小型のピッチ変換シートでも導体のピッチ変換が行えるため、狭い車両空間内での配索に好適に用いることができる。
【0010】
前記ピッチ変換シートの第1ストレート部の導体と前記FFCの導体とは、前記絶縁樹脂フィルムを剥離して露出させた導体同士を溶着し、またはコ字形状の端子の両側部を突き刺し固定して、電気接続していることが好ましい。
また、前記ピッチ変換シートの第2ストレート部も絶縁樹脂フィルムを剥離して導体を露出させ、コネクタの端子収容室に挿入される端子を通常のFFCと同様に溶着や加締め等によって接続していることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
前述したように、本発明によれば、FFCの導体ピッチと相違するピッチで端子収容室を並設したコネクタと接続するFFCの端末側に、該FFCと同数の導体を並列配置したFFCまたはFPCからなるピッチ変換シートの一端を接続する構成としている。前記ピッチ変換シートの導体は、FFCの導体と同一ピッチで配列した第1ストレート部と、接続コネクタの端子収容室のピッチと同一ピッチで配列した第2ストレート部と、該第1、第2ストレート部を連続させる傾斜部とからなるため、前記コネクタと接続するFFCの端末に前記ピッチ変換シートの第1ストレート部を接続するだけで、FFCの配索方向を変えることなく、FFCの導体ピッチを接続コネクタの端子収容室のピッチに変換することができる。よって、FFCに接続するコネクタの構造を変えたりFFCの各導体間に切り込みを入れて折り曲げたりすることなく、FFCをピッチの異なるコネクタに配索方向を変えずに容易に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の車載用フレキシブルフラットケーブル(FFC)を示し、(A)は端末に接続するピッチ変換シートおよびコネクタを含む車載用フレキシブルフラットケーブルの概略平面図、(B)はA−A線断面図である。
【図2】ピッチ変換シートの第1、第2ストレート部およびFFCの端末の導体を被覆する絶縁樹脂フィルムを一部剥離した状態を示し、(A)は概略平面図、(B)はB−B線断面図、(C)はC−C線断面図である。
【図3】ピッチ変換シートの第1ストレート部をFFCの端末の導体に接続し、コネクタの端子収容室に挿入する端子をピッチ変換シートの第2ストレート部に接続した状態を示し、(A)は概略平面図、(B)はD−D線断面図である。
【図4】図3のFFCをコネクタに接続した状態を示す概略平面図である。
【図5】ピッチ変換シートの第1ストレート部とFFCの端末の導体との別の接続構造を示す図である。
【図6】従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図5は本発明の実施形態を示している。本実施形態の車載用フレキシブルフラットケーブル(以下、FFCという)10は、図1に示すように、複数(本実施形態では3本)の銅箔からなる導体11を一定ピッチP1をあけて平行配線していると共に、該複数の導体11の表裏両面を絶縁樹脂フィルム12で被覆している。一方、FFC10の端末側に接続するコネクタ20には、FFC10の導体ピッチP1より大きなピッチP2で複数(本実施形態では3個)の端子収容室21を並設しており、本実施形態では、コネクタ20と接続するFFC10の端末側にピッチ変換シート13を接続することにより、FFC10の導体ピッチP1をコネクタ20の端子収容室21のピッチP2に変換している。
【0014】
ピッチ変換シート13は、FFC10の導体11と同幅、同数の銅箔からなる導体14を並列配置し、該導体14の表裏両面を絶縁樹脂フィルム18で被覆したFFCから形成している。ピッチ変換シート13の導体14は、FFC10の導体ピッチP1と同一ピッチで配列した長さ方向一端側の第1ストレート部15と、コネクタ20の端子収容室21のピッチP2と同一ピッチで配列した長さ方向他端側の第2ストレート部16と、第1ストレート部15と第2ストレート部16との間を連続する傾斜部17とからなり、並列配置した前記第1、第2ストレート部15、16および傾斜部17からなる導体14の表裏両面を絶縁樹脂フィルム18で被覆、ラミネートした後、不要なラミネート部分18a、18bをカットすることにより、扇形状のピッチ変換シート13を形成している。
【0015】
ピッチ変換シート13の第1ストレート部15をFFC10端末の導体11に接続するために、図2のように、第1ストレート部15を被覆する絶縁樹脂フィルム18とFFC10端末の導体11を被覆する絶縁樹脂フィルム12の所要部分を剥離し、剥離によって露出させた第1ストレート部15とFFC10端末の導体11を溶着により電気接続している(図3)。
【0016】
また、ピッチ変換シート13の第2ストレート部16にコネクタ20の端子収容室21に挿入する端子22を接続するため、図2のように、第2ストレート部16を被覆する絶縁樹脂フィルム18の所要部分を剥離し、剥離によって露出させた第2ストレート部16に端子22を溶着により接続している(図3)。
【0017】
ピッチ変換シート13の第2ストレート部16に接続した端子22をコネクタ20の端子収容室21に挿入係止することで、ピッチ変換シート13を端末側に接続したFFC10とコネクタ20との接続が完了する(図4)。
【0018】
前記のように、本実施形態では、FFC10の導体ピッチP1と相違するピッチP2で端子収容室21を並設したコネクタ20と接続するFFC10の端末側に、FFC10と同数の導体14を並列配置したFFCからなるピッチ変換シート13の一端を接続している。ピッチ変換シート13の導体14は、FFC10の導体ピッチと同一のピッチP1で配列した第1ストレート部15と、コネクタ20の端子収容室21のピッチと同一ピッチP2で配列した第2ストレート部16と、該第1、第2ストレート部15、16を連続させる傾斜部17とからなるため、コネクタ20と接続するFFC10の端末にピッチ変換シート13の第1ストレート部15を接続するだけで、FFC10の配索方向を変えることなく、FFC10の導体ピッチP1を第2ストレート部16のピッチ、即ちコネクタ20の端子収容室21のピッチP2に変換することができる。よって、FFC10に接続するコネクタ20の構造を変えたりFFC10の各導体間に切り込みを入れて折り曲げたりすることなく、導体ピッチP1と異なるピッチP2で端子収容室21が並設されたコネクタ20にFFC10を配索方向を変えずに容易に接続することが可能となる。
【0019】
なお、本実施形態ではピッチ変換シート13をFFCから形成しているが、印刷配線が施されたFPCから形成していてもよい。また、ピッチ変換シート13の第1ストレート部15をFFC10端末の導体11に接続する構造として、図5に示すように、コ字形状の端子23をピッチ変換シート13の第1ストレート部15側端末とFFC10端末の両側に突き刺し固定して電気接続してもよい。
【符号の説明】
【0020】
10 車載用フレキシブルフラットケーブル(FFC)
11 導体
12 絶縁樹脂フィルム
13 ピッチ変換シート
14 導体
15 第1ストレート部
16 第2ストレート部
17 傾斜部
18 絶縁樹脂フィルム
20 コネクタ
21 端子収容室
22 端子
23 コ字形状の端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導体を一定ピッチをあけて平行配線すると共に、該複数の導体の表裏両面を絶縁樹脂フィルムで被覆しているフレキシブルフラットケーブル(FFC)であって、
前記FFCの導体ピッチと相違するピッチで端子収容室を並設しているコネクタと接続する該FFCの端末側にピッチ変換シートの一端を接続しており、
前記ピッチ変換シートは、前記FFCと同数の導体を並列配置すると共に絶縁樹脂フィルムで表裏両面を被覆したFFCまたはFPCからなり、該ピッチ変換シートの導体の長さ方向の一端側は前記FFCの導体と同一のピッチで配列した第1ストレート部とすると共に、他端側は前記コネクタの端子収容室のピッチと同一ピッチで配列した第2ストレート部とし、これら両側の第1、第2ストレート部の間を傾斜部で連続していることを特徴とする車載用フレキシブルフラットケーブル。
【請求項2】
前記ピッチ変換シートの前記第1ストレート部の導体と前記FFCの導体とは、前記絶縁樹脂フィルムを剥離して露出させた導体同士を溶着し、またはコ字形状の端子の両側部を突き刺し固定して、電気接続している請求項1に記載の車載用フレキシブルフラットケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−243523(P2011−243523A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117003(P2010−117003)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】