説明

車載用空調装置

【課題】空調ダクトを小型化し、ブロアファンより生じる騒音を低減するとともに、車室内に導入する暖風の量及び冷風の量を調整して車室内の温度調整を容易に行うこと。
【解決手段】ブロアファン103は、第1空調室111及び第2空調室112に跨って設置され、第1空調室111及び第2空調室112の双方に空気を取り入れる。調整弁108は、エバポレータ106よりも下流側に設けられ、第2空調室112の空気を車室外に排出する。制御部109は、調整弁108により車室外に排出する空気の排出量、及びブロアファン103により第1空調室111と第2空調室112とに取り入れる空気の取入量を調整することにより、車室内に導入する空気の温度または量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータで走行を行なう電気自動車に好適な車載用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関を駆動源とする自動車等に搭載される車載用空調装置では、暖房用の熱源として内燃機関の排熱を利用することができる。しかし、電気自動車の場合には内燃機関に相当する熱源が存在せず、暖房運転用の熱量を充分に確保することができない。
【0003】
この問題を解決し得るものとして、電気自動車に搭載可能な空調システムが特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に記載された空調システムは、車室外から導入される外気をコンデンサにより加熱して車室内に導入するとともに、車室内から導入される内気をエバポレータにより冷却し熱を回収した後、車室外へ排出するものである。特許文献1では、外気及び内気の2つの流路の各々に、個別にブロアファンが設けられており、各ブロアファンにより2つの流路に取り入れる外気の量及び内気の量が個別に調整され、コンデンサから車室内に導入する暖風の量及びエバポレータから車室内に導入する冷風の量を調整することにより、車室内の温度調整が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−290523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の空調システムは、仕切り板によって仕切って形成された2つの流路の各々に個別にブロアファンを設けるので、空調ダクトを小型化できないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、空調ダクトを小型化し、ブロアファンより生じる騒音を低減することができるとともに、車室内に導入する暖風の量及び冷風の量を調整して車室内の温度調整を容易に行うことができる車載用空調装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車載用空調装置は、冷媒を圧縮するコンプレッサと、圧縮された前記冷媒の温熱を放熱させるコンデンサと、放熱された前記冷媒を膨張させることにより前記冷媒を減圧する膨張部と、減圧された前記冷媒に熱を吸熱させるエバポレータと、を有し、前記コンデンサを収容し、空気を前記コンデンサにより加熱して車室内に導入する空気の流路を形成する第1空調室と、前記エバポレータを収容し、空気を前記エバポレータにより冷却して車室内に導入する空気の流路を形成する第2空調室と、前記第1空調室及び前記第2空調室に跨って設置され、前記第1空調室及び前記第2空調室の双方に空気を取り入れるブロアファンと、前記エバポレータよりも下流側に設けられ、前記第2空調室の空気を車室外に排出する排出手段と、前記排出手段により車室外に排出する空気の排出量、及び前記ブロアファンにより前記第1空調室と前記第2空調室とに取り入れる空気の取入量を調整することにより、前記車室内に導入する空気の温度または量を調整する制御手段と、を有する構成を採る。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、1つのブロアファンと排出手段により、従来と同等に第1空調室と第2空調室とに取り入れる空気の取入量を調整可能としつつ、ブロアファンを1つにしたことで空調ダクトを小型化することができる。また、ブロアファンを1つにしたことでブロアファンより生じる騒音を低減することができるとともに、車室内に導入する暖風の量及び冷風の量を調整して車室内の温度調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係る車載用空調装置の構成を示す図
【図2】本発明の実施の形態2に係る車載用空調装置の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る車載用空調装置100の構成を示す図である。
【0013】
空調ダクト101は、仕切壁102により、第1の流路Bを形成する第1空調室111と、第2の流路Cを形成する第2空調室112とに分離されている。第1空調室111は、コンデンサ104により加熱されて車室内に導入する空気の流路を形成する。第2空調室112は、エバポレータ106により冷却されて車室内に導入する空気の流路を形成する。
【0014】
ブロアファン103は、空調ダクト101の空気を取り入れる側に設けられている。ブロアファン103は、第1空調室111及び第2空調室112に跨って設置されている。これにより、ブロアファン103を1つにすることができるので、2つのブロアファンが設けられていた従来に比べて、空調ダクト101を小型化することができるとともに、騒音を少なくすることができる。ブロアファン103は、空調ダクト101の外部から所定量の空気を第1空調室111及び第2空調室112の双方に取り入れる。ここで、ブロアファン103により取り入れられる空気は、車室外の外気、車室内の内気、または外気と内気との混合気の何れであってもよい。
【0015】
コンデンサ104は、第1空調室111のブロワファン103の下流側に設けられている。コンデンサ104は、コンプレッサ107より供給された高温冷媒と、ブロアファン103により第1空調室111に取り入れられた空気とを熱交換させることにより、冷媒の温熱を放熱させて空気を加熱する。コンデンサ104により加熱された空気は車室内に導入される。コンデンサ104において、空気との間で熱交換された低温冷媒は膨張弁105に供給される。
【0016】
膨張弁105は、コンデンサ104から流入した冷媒を膨張させて冷媒を減圧する。膨張弁105で減圧された冷媒はエバポレータ106に供給される。
【0017】
エバポレータ106は、第2空調室112のブロワファン103の下流側に設けられている。エバポレータ106は、膨張弁105より供給された低温冷媒と、ブロアファン103により第2空調室112に取り入れられた空気とを熱交換させることにより、冷媒に熱を吸熱させて空気を冷却する。エバポレータ106において、冷却された空気は車室内に向けて送られる。エバポレータ106は、空気との間で熱交換した冷媒をコンプレッサ107に供給する。エバポレータ106から車室内に導入される空気は、コンデンサ104を通過した空気との混合気として車室内に導入される。
【0018】
コンプレッサ107は、エバポレータ106からの冷媒を圧縮・加熱する。加熱された冷媒はコンデンサ104に供給される。
【0019】
調整弁108は、第2空調室112のエバポレータ106よりも下流側に設けられている。調整弁108は、制御部109からの制御信号10に基づいて、エバポレータ106により冷却された空気を空調ダクト101の外部へ排出する。
【0020】
即ち、制御部109は、制御信号10を介して、調整弁108の開度調整を行い、第2空調室112から空調ダクト101の外部に排出される空気の排出量を調整する。また、制御部109は、制御信号11を介して、ブロアファン103の回転数を制御して空調ダクト101の外部から第1空調室111及び第2空調室112に取り入れられる空気の取入量を調整する。
【0021】
ブロアファン103により取り入れる空気Aの量は、第1空調室111を流れる空気Bの量と第2空調室112を流れる空気Cの量との総和に等しい。ブロアファン103により取り入れる空気Aの量は、車室内へ導入される混合気Gと車室外に排出される空気Fの排出量との総和に等しい。第2空調室112を流れる空気Cの量は、第2空調室112から車室内に導入される空気Eの量と車室外に排出される空気Fの排出量との総和に等しい。第1空調室から車室内に導入される空気Dの量と、第2空調室112から車室内に導入される空気Eの量との総和は、車室内に導入される混合気Gの量に等しい。
【0022】
上記より、空気Aの量が一定の場合において、冷たい空気Fの排出量を大きくするほど、冷たい空気Eの量は少なくなる。この結果冷気が減少するので、混合気Gの温度を上昇させることができる。
【0023】
また、空気Aの量が一定の場合において、冷たい空気Fの排出量を少なくするほど、冷たい空気Eの量は多くなる。この結果冷気が増加するので、混合気Gの温度を低下させることができる。
【0024】
また、空気Fの排出量が一定の場合において、空気Aの量を多くするほど、暖かい空気Dの量と冷たい空気Eの量との総和が多くなるので、混合気Gの量も多くなる。この結果、混合気Gの風量を多くすることができる。例えば、制御部109は、車室内に送る混合気Gの風量を多くする指示をユーザより受けた際に、空気Aの量を多くする制御を行う。これにより、本実施の形態では、ユーザの指示に応じた風量の混合気Gを車室内に送ることができる。
【0025】
また、空気Fの排出量が一定の場合において、空気Aの量を少なくするほど、暖かい空気Dの量と冷たい空気Eの量との総和が少なくなるので、混合気Gの量も少なくなる。この結果、混合気Gの風量を少なくすることができる。例えば、制御部109は、車室内に送る混合気Gの風量を少なくする指示をユーザより受けた際に、空気Aの量を少なくする制御を行う。これにより、本実施の形態では、ユーザの指示に応じた風量の混合気Gを車室内に送ることができる。
【0026】
このように、本実施の形態によれば、1つのブロアファンと排出手段により、従来と同等に第1空調室と第2空調室とに取り入れる空気の取入量を調整可能としつつ、ブロアファンを1つにしたことで空調ダクトを小型化することができる。
【0027】
また、本実施の形態によれば、ブロアファンを1つにしたことでブロアファンより生じる騒音を低減することができる。
【0028】
また、本実施の形態によれば、調整弁より排出される空気の排出量、及びブロアファンにより取り入れる空気の取入量を調整するので、車室内に導入する暖風の量及び冷風の量を調整して車室内の温度調整を容易に行うことができる。
【0029】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2に係る車載用空調装置200の構成を示す図である。
【0030】
図2に示す車載用空調装置200は、図1に示す実施の形態1に係る車載用空調装置100に対して、駆動部201及びミックスドア202を追加したものである。なお、図2において、図1と同一構成である部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0031】
駆動部201は、制御部109の制御に従って駆動するモータであり、ミックスドア202を回転させる。
【0032】
ミックスドア202は、駆動部201が駆動することにより、駆動部201を回転中心とし、回転角θの範囲内で回転する。ミックスドア202を回転させることにより、空気Dの量及び空気Eの量を調整することができる。従って、調整弁108またはブロアファン103による混合気Gの温度または風量の調整に加えて、ミックスドア202でも混合気Gの温度または風量を調整することができる。
【0033】
このように、本実施の形態によれば、上記の実施の形態1の効果に加えて、ミックスドアを回転させることにより、車室内へ導入する混合気の温度または風量をさらに細かく調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明にかかる車載用空調装置は、例えば電気自動車等の車両に設けるのに好適である。
【符号の説明】
【0035】
100 車載用空調装置
101 空調ダクト
102 仕切壁
103 ブロアファン
104 コンデンサ
105 膨張弁
106 エバポレータ
107 コンプレッサ
108 調整弁
109 制御部
111 第1空調室
112 第2空調室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮するコンプレッサと、圧縮された前記冷媒の温熱を放熱させるコンデンサと、放熱された前記冷媒を膨張させることにより前記冷媒を減圧する膨張部と、減圧された前記冷媒に熱を吸熱させるエバポレータと、を有し、
前記コンデンサを収容し、空気を前記コンデンサにより加熱して車室内に導入する空気の流路を形成する第1空調室と、
前記エバポレータを収容し、空気を前記エバポレータにより冷却して車室内に導入する空気の流路を形成する第2空調室と、
前記第1空調室及び前記第2空調室に跨って設置され、前記第1空調室及び前記第2空調室の双方に空気を取り入れるブロアファンと、
前記エバポレータよりも下流側に設けられ、前記第2空調室の空気を車室外に排出する排出手段と、
前記排出手段により車室外に排出する空気の排出量、及び前記ブロアファンにより前記第1空調室と前記第2空調室とに取り入れる空気の取入量を調整することにより、前記車室内に導入する空気の温度または量を調整する制御手段と、
を有する車載用空調装置。
【請求項2】
前記第1空調室から車室内に導入する空気の導入量、及び前記第2空調室から車室内に導入する空気の導入量を調整するミックスドアをさらに有する請求項1記載の車載用空調装置。
【請求項3】
請求項1記載の車載用空調装置を具備する車両。


【図1】
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【図2】
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