車載表示装置
【課題】車両用メータ等の車両状態に関する情報を表示する車載表示装置において、車両の状態に応じた奥行き方向の表現を可能とすること。
【解決手段】車両用メータ1は、ハーフミラー10、鏡50及びハーフミラー10と鏡50の間に設けられたアクリル板40を有する。アクリル板40は、内部に掘り込まれる形で形成された像形状42及び反射部44を有する。反射部44に光を照射するLED60が設けられる。鏡50にはアクチュエータ80が接続される。LED60からの光は、反射部44を介して像形状42に当てられて像を発光する。その像の光はハーフミラー10と鏡50の間で反射、透過が繰り返されることで、像が多重された多重像が表示される。さらに、鏡50に接続されたアクチュエータ80が車両の状態に応じて制御されて、鏡50の位置が変更される。その結果、表示される多重像の形状が変更される。
【解決手段】車両用メータ1は、ハーフミラー10、鏡50及びハーフミラー10と鏡50の間に設けられたアクリル板40を有する。アクリル板40は、内部に掘り込まれる形で形成された像形状42及び反射部44を有する。反射部44に光を照射するLED60が設けられる。鏡50にはアクチュエータ80が接続される。LED60からの光は、反射部44を介して像形状42に当てられて像を発光する。その像の光はハーフミラー10と鏡50の間で反射、透過が繰り返されることで、像が多重された多重像が表示される。さらに、鏡50に接続されたアクチュエータ80が車両の状態に応じて制御されて、鏡50の位置が変更される。その結果、表示される多重像の形状が変更される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、車速やエンジン回転数などの車両状態に関する情報を表示する車載表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、像を奥行き方向に多重表示させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1の技術では、前壁がハーフミラーで形成され、後壁が鏡で形成された箱体内に発光体が設けられる。これによれば、発光体が発光させた像の光は、前壁のハーフミラーにおいて、一部が透過し一部が反射される。ハーフミラーで反射された光は、後壁の鏡において、ハーフミラーの側に反射される。その反射された光は、ハーフミラーにおいて、一部が透過される。このように、発光体からの光は、複数の経路を経てハーフミラーを透過することになるので、表側からこのハーフミラーを見た場合には、発光体から発光された像が奥行き方向に多重されて表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭58−74287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、車速やエンジン回転数などの車両状態に関する物理量の計測値を表示する車両用メータにおいては、設計制約や設置スペースの関係上、奥行き表現には限界があり、深い奥行きの表現が困難であった。つまり、従来の車両用メータにおいては、目盛が形成された文字盤や液晶ディスプレイ等の平面の表示面にその計測値が表示され、例えば車両の前後方向に関する情報を表示する場合には、表示面の上下方向などに置き換えて表示する必要があった。
【0005】
この点、特許文献1の技術では、像が奥行き方向に多重されて表示されることから、奥行き方向の表現であるとも考えられる。しかしながら、特許文献1の技術における多重表示は常に同じ表示であるので、変化する車両状態に関する情報の奥行き方向の表現にその特許文献1の技術をそのまま適用することはできない。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、車両用メータ等の車両状態に関する情報を表示する車載表示装置において、車両の状態に応じた奥行き方向の表現を可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の車載表示装置は、視認者側に配置され、裏側から入射された光の一部は反射され一部は透過されるハーフミラーと、
前記ハーフミラーの裏側の前記ハーフミラーで反射された光が入射される位置に配置され、入射された光を前記ハーフミラー側に反射させる鏡と、
前記ハーフミラーと前記鏡の間に配置され、特定の像を前記ハーフミラーに向けて発光させる発光体と、
搭載された車両の状態に応じて、前記鏡を動かして前記ハーフミラーに対する前記鏡の位置を変更させる鏡位置変更手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
これによれば、ハーフミラーと鏡の間に特定の像を発光させる発光体が設けられるので、表側からハーフミラーを見た場合、発光体で発光された像が奥行き方向に多重された形で表示される。そして、鏡位置変更手段が、車両の状態に応じてハーフミラーに対する鏡の位置を変更させるので、車両の状態に応じて、多重表示された像の形状を変化させることができる。つまり、車両の状態に応じた奥行き表現をすることができる。その結果、直感的に車両の状態を確認させることができる。
【0009】
また、本発明の車載表示装置において、前記鏡位置変更手段は、前記ハーフミラーに対する前記鏡の距離を変更させることを特徴とする。
【0010】
これによれば、ハーフミラーに対する鏡の距離が変更されるので、多重表示された像の各像の間隔を、大きくしたり小さくしたりすることができる。
【0011】
また、本発明の車載表示装置において、前記鏡位置変更手段は、前記ハーフミラーに対する前記鏡の角度を変更させることを特徴とする。
【0012】
これによれば、ハーフミラーに対する鏡の角度が変更されるので、その変更された角度に応じた方向に連なるように、多重表示された像の形状を変化させることができる。
【0013】
また、本発明の車載表示装置において、前記発光体に光を照射する光源を備え、
前記発光体は、光透過性を有する材料が前記像の形状に加工されたものであり、前記光源からの光が前記像の形状に当てられることで前記像を発光させることを特徴とする。
【0014】
このように、光源からの光を受けて像を発光させることにより、複雑な形状の像も簡易に発光させることができる。
【0015】
また、本発明の車載表示装置は、前記車両の状態に関する物理量の計測値を表示する車両用メータに組み込まれたことを特徴とする。
【0016】
これによれば、車両用メータにおける従来の平面的な表現に加え、像の多重表示、つまり奥行き方向の表現もなされることになるので、得られる情報が多くなり特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】車両用メータ1の正面図である。
【図2】図1中のA−A線で切ったときの車両用メータ1の断面図である。
【図3】車両用メータ1の各部品のうちの一部の斜視図を示した図である。
【図4】アクリル板40の円盤部46の正面図である。
【図5】正面方向から鏡50及び各アクチュエータ80を見た図である。
【図6】LED60から発光された光の挙動を説明する図である。
【図7】表示される多重像を説明する図である。
【図8】鏡50を遠ざけた場合に表示される多重像を説明する図である。
【図9】鏡50を近づけた場合に表示される多重像を説明する図である。
【図10】鏡50を下向きに傾けた場合に表示される多重像を説明する図である。
【図11】鏡50を左向きに傾けた場合に表示される多重像を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る車載表示装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態では、車速等を表示する車両用メータの機能の一部として、本発明の車載表示装置を適用した例について説明する。図1は、本実施形態の車両用メータ1の正面図である。また、図2は、図1中のA−A線で切ったときの車両用メータ1の断面図である。なお、このA−A線は、図1の正面図における車両用メータ1の中心を通る上下方向の線である。なお、図2では、図1の文字盤20の図示を省略している。また、図3は、車両用メータ1の各部品のうち、本発明の車載表示装置に関連するものの斜視図を示した図である。なお、図3では、見やすくするために、各部品の右半分の図示を省略している。先ず、これら図1〜図3を参照しながら、車両用メータ1の構成を説明する。
【0019】
車両用メータ1は、運転者が運転中に容易にその表示を確認できるようにするために、例えば車両のフロントガラスの下辺りにおいて、表示面が運転席と対向するように設けられる。その車両用メータ1は、図1に示すように、円状の表示面に、指標21、22が形成され、その指標21、22を指針30で指示するアナログ式の指針計器として構成される。
【0020】
具体的には、車両用メータ1は、円盤状のハーフミラー10を有する。そのハーフミラー10は、一方の面10a(表面)が視認者側に面するように設けられ、他方の面10b(裏面)に入射された光の一部を透過させ一部を反射させるハーフミラーである。ハーフミラー10の中心には、指針軸31が挿通される挿通孔11が形成されている。
【0021】
挿通孔11には、先端がハーフミラー10の表面10a側に突出される形で、指針軸が挿通される。その指針軸31(厳密にはその先端)には指針30が接続されている。その指針30は、文字盤20に形成された指標21、22を指示するものであり、指針軸31の回転にしたがって、指針軸31周りにハーフミラー10の表面10aに沿って動かされる。なお、後述するアクリル板40で発光された光が、挿通孔11から漏れないようにするために、その挿通孔11は、ハーフミラー10の表面10a側に突出された指針軸31の先端よりも小さくされている。
【0022】
ハーフミラー10の周囲を取り囲むようにリング状の文字盤20が設けられる。その文字盤20は、例えばポリカーボネート等の光透過性を有する材料で形成されたものである。文字盤20の表面には、指標としての目盛21及びその目盛21の値である車速を示した数字22が、ハーフミラー10の外周に沿う形で円弧状に形成されている。それら指標21、22は、文字盤20の表面において、指標21、22以外の部分に印刷が施されることにより、形成される。文字盤20の裏側には、文字盤20に光を照射するLED(図示外)が設けられる。そして、そのLEDからの光が文字盤20の指標21、22が形成された部分を透過することにより、それら指標21、22が発光表示される。
【0023】
また、文字盤20の下部には、車速以外の他の車両に関する物理量の計測値を表示する表示領域23が設けられている。その表示領域23には、燃料残量を示す指標23a、走行距離を示す指標23b(トリップメータ)及びエンジン冷却水の水温を示す指標23cが形成されており、インジケータ表示やデジタル表示によって、それら指標23a〜23cを指示するようになっている。
【0024】
図2に示すように、ハーフミラー10の裏側には、アクリル板40及び鏡50が設けられる。アクリル板40は、ハーフミラー10と鏡50の間に設けられている。そのアクリル板40は、光透過性を有し、かつ、その内部を光が導光できる導光性を有するアクリル樹脂で形成されたものである。アクリル板40は、ハーフミラー10と同じ大きさの円盤状の円盤部46を有し、その円盤部46の中心において円状の開口43が形成されている。その開口43の周部に一体的に接続され、開口43から鏡50の側に延びた円筒状の円筒部45が、アクリル板40の一部を構成するものとして設けられる。その円筒部45は、後述するLED60からの光を円盤部46まで導光させる部分である。
【0025】
また、アクリル板40(特に円盤部46)は、本発明の「発光体」に相当し、光を受けることで特定の像を発光するものである。そのために、アクリル板40の円盤部46は、その裏面46b(鏡50側の面)において、堀込み41が形成されている。そして、その堀込み41の底部42が、光が当たった際に、特定の像として発光される部分とされる。また、その像が発光される方向がハーフミラー10の方向となるように、堀込み41の角度が調整されている。以下、堀込み41の底部42を像形状42と言う。つまり、像形状42は、円盤部46の内部に掘り込まれる形で形成されている。ここで、図4は、アクリル板40の円盤部46を図1の正面方向からみたときの図を示している。図4に示すように、像形状42は、針が各方向に放射したごとくの形状、換言すると星状の形状とされた複数の星状形状42aが、開口43の周囲においてリング状に配置された形状とされる。また、像形状42の中心は、開口43から偏心しており、具体的には、像形状42は、図4の正面視における円盤部46の下方に偏心して形成されている。
【0026】
また、円盤部46の開口43の周囲において反射部44が形成されている。その反射部44は、開口43の周囲に形成されたテーパー状の面である。換言すると、反射部44は開口43の孔面を構成し、その孔面は、円盤部46の表面46aにいくほど徐々に開口43の孔径が大きくされる面である。その反射部44の面の角度は、円筒部45から入射される光を、円盤部46の内部に形成された像形状42の方向に反射できる角度とされ、例えば、円盤部46の面46a、46bに対して45度の角度とされる。
【0027】
アクリル板40の円筒部45のリング状の端面45aに対向する形で、その端面45aに光を照射する複数のLED60が設けられる。それらLED60は、円筒部45の端面45aの全領域に光を照射できるように、端面45aの形状に合わせてリング状に配置されている(図3参照)。LED60は、RGBの各色の光を発光できるとともに、各色の光の量が調整されることで他の色の光も発光できるものとされる。
【0028】
鏡50は、アクリル板40の円盤部46の裏側に設けられ、ハーフミラー10、円盤部46と同じ大きさの円盤状とされている。また、鏡50の中心には、アクリル板40の円筒部45及びその円筒部45の内側に設けられる指針軸31が挿通される挿通孔55が形成されている。その鏡50の表面50a(ハーフミラー10側の面)は、その表面50aに入射された光をハーフミラー10の側に反射させる鏡とされている。
【0029】
また、アクリル板40で発光された光が周囲から漏れないようにするために、図2に示すように、ハーフミラー10、アクリル板40及び鏡50の周囲を取り囲む形で、遮光性を有する遮光板70が設けられている。この遮光板70は、ハーフミラー10、アクリル板40及び鏡50の形状(円盤状)に合わせて円筒状とされている。上記したハーフミラー10及びアクリル板40の円盤部46は、それぞれ、周囲が遮光板70に固定されている。
【0030】
鏡50の裏面50bに接続される形で、複数のアクチュエータ80が設けられる。ハーフミラー10に近づく方向を前方向、遠ざかる方向を後ろ方向とすると、それらアクチュエータ80は、鏡50を前方向若しくは後ろ方向に移動させ又は傾きを変えるためのものである。ここで、図5は、各アクチュエータ80の鏡50における接続位置を説明する図であり、図1の正面方向から鏡50及び各アクチュエータ80を見た図を示している。なお、図5では、鏡50の表面50a側を示しているので、各アクチュエータ80を隠れ線で示している。
【0031】
図5に示すように、4つのアクチュエータ80a〜80dが鏡50の裏面50bに接続されている。図5に示すように、鏡50の上部51、下部52、左部53、右部54を定めたときに、上部51と左部53の間(左上部)に第一のアクチュエータ80aが設けられ、上部51と右部54の間(右上部)に第二のアクチュエータ80bが設けられ、下部52と左部53の間(左下部)に第三のアクチュエータ80cが設けられ、下部52と右部54の間(右下部)に第四のアクチュエータ80dが設けられる。なお、アクチュエータ80の個数や配置位置はこれに限定されるわけではなく、鏡50の位置や傾きを変えることができる個数及び配置位置を適宜定めることができる。
【0032】
各アクチュエータ80は、図2に示すように、それぞれ、鏡50の接続面に対して垂直方向(鏡50の前後方向)に力を加えるものが採用され、例えば、油圧シリンダ、エアシリンダ等が採用される。また、鏡50に直接アクチュエータ80を接続しないで、リンクを介して接続してもよい。このように、各アクチュエータ80はそれぞれ直線上に動作するものであるが、各アクチュエータ80の動作の仕方を互いに異ならせることにより、鏡50を前後方向に移動させることができ、さらに傾きも変えることができる。
【0033】
鏡50の裏側には、LED60や指針軸31の回転を回転させるモータ等が実装された基板(図示外)が設けられる。そして、その基板には、車両用メータ1の全体の動作を制御する制御部90が設けられる(図2参照)。その制御部90は、CPU、ROM、RAM等から構成され、CPUがROMに記憶されたプログラムにしたがった動作をすることで、各種処理を実行する。例えば、制御部90は、車速センサからの車速信号を受信し、その車速信号で示される車速に対応する目盛21を指針30が指示するように、指針軸31が接続されたモータを制御する。また、制御部90は、LED60の点灯を制御することで、アクリル板40に形成された像形状42を発光させて、像が多重された多重像をハーフミラー10の表面10aに表示させる。さらに、制御部90は、多重像の形状を変更するために、各アクチュエータ80を制御することで、ハーフミラー10に対する鏡50の位置(距離、角度)を変更させる。
【0034】
次に、車両メータ用1の動作に関し、特に、多重像の表示に関する動作について説明する。制御部90は、多重像の表示を行う際には、LED60に点灯信号を出力して各LED60を点灯させる。図2に示すように、各LED60からの光は、円筒部45の端面45aに入射される。端面45aに入射された光L1は、円筒部45の内部を進行して反射部44に入射される。反射部44に入射された光L1は、反射部44にて、略直角にて反射される。反射された反射光L2は、反射部44から放射するように円盤部46の内部を進行し、像形状42を構成する各星状形状42a(図4参照)に当てられる。そして、像形状42に当てられた光は、円盤部46の表面46aから出射される。つまり、アクリル板40から像形状42に対応する像が発光されることになる。
【0035】
ここで、図6は、それ以降の動作を説明する図であり、図2と同じ方向から見たときのハーフミラー10、アクリル板40(厳密には円盤部46)、鏡50及び遮光板70を示している。なお、図6では、説明の便宜のために、それら部品10、40、50、70を簡略化して図示している。
【0036】
図6に示すように、アクリル板40の像形状42に当たられた光は、実像101を示した光L3として、ハーフミラー10に向けて進行する。そして、その光L3は、ハーフミラー10において、一部が光L4として透過され、一部が光L5として反射される。光L5は、光透過性を有するアクリル板40を透過して、鏡50に入射される。鏡50に入射された光L5は、その鏡50において、光L6として反射される。光L6は、アクリル板40を透過してハーフミラー10に入射される。そして、上記と同様に、光L6の一部が光L7として透過される。その光L7は、光L5が鏡50に入射された点103及び光L5の経路長に基づいて定まる鏡50の後側の点から発光された虚像102を示した光とされる。なお、光L6の一部は反射されて、ハーフミラー10と鏡50の間で、上記と同様の動作が繰り返される。
【0037】
ここで、図7は、図6の場合におけるハーフミラー10を正面側(視認者側)から見たときの図である。図7に示すように、ハーフミラー10には、リング状の模様が奥行き方向に何重にも重なった像、すなわち多重像100が表示される。その多重像100のうち、一番外側の模様101は、アクリル板40に形成された像形状42を示した実像とされる。そして、その実像101の内側には、何重ものリング状の模様102、つまり虚像102が表示される。また、それら虚像102は、ハーフミラー10と鏡50とが平行とされていることから、内側にいくほど小さいリング状の模様とされている。これによって、ハーフミラー10の部分をあたかも奥行きがあるかの如く表現することができる。また、そのハーフミラー10の表面10a側には指針30が設けられていることと、像形状42が指針30の中心(指針軸31)から偏心されて形成されていることとが相俟って、その指針30自体がハーフミラー10よりも奥行き側に設けられているかの如く表現することができる。
【0038】
また、制御部90は、車両の状態に応じて、アクチュエータ80を制御して、ハーフミラー10に対する鏡50の位置を変更する。以下、鏡50の位置に応じて、多重像がどのように変化するかの具体例を説明する。なお、図6における鏡50の位置及び図7の多重像100の表示を通常の状態(基準)として、その通常の状態に対してどのように変化するかについて説明する。
【0039】
(鏡50を遠ざけた場合)
先ず、図8(a)に示すように、鏡50を基準位置59よりも、ハーフミラー10から遠ざけた場合について説明する。この場合、鏡50は、ハーフミラー10と平行を保持しつつ、ハーフミラー10に対する距離が長くされたことになる。なお、鏡50に接続された4つのアクチュエータ80a〜80d(図5参照)の全てを後退動作させることにより、鏡50をハーフミラー10から遠ざけることができる。
【0040】
図8(b)は、この場合のハーフミラー10を正面側(視認者側)から見たときの図である。図8(b)に示すように、通常の状態と同様に、リング状の模様201aが奥行き方向に多重された多重像201が表示される。ただし、各模様201aの間隔は、通常の状態(図7参照)のそれよりも広くされる(密度が低くされる)。よって、通常の状態よりもさらに奥行きがあるかの如く表現することができる。
【0041】
(鏡50を近づけた場合)
次に、図9(a)に示すように、鏡50を基準位置59よりも、ハーフミラー10に近づけた場合について説明する。この場合、鏡50は、ハーフミラー10と平行を保持しつつ、ハーフミラー10に対する距離が短くされたことになる。なお、鏡50に接続された4つのアクチュエータ80a〜80d(図5参照)の全てを前進動作させることにより、鏡50をハーフミラー10に近づけることができる。
【0042】
図9(b)は、この場合のハーフミラー10を正面側(視認者側)から見たときの図である。図9(b)に示すように、通常の状態と同様に、リング状の模様202aが奥行き方向に多重された多重像202が表示される。ただし、各模様202aの間隔は、通常の状態(図7参照)のそれよりも狭くされる(密度が高くされる)。よって、通常の状態よりも奥行きがないかの如く表現することができる。
【0043】
(鏡50を下向きに傾けた場合)
次に、図10(a)に示すように、鏡50を下向きに傾けた場合について説明する。この場合、鏡50の下部52よりも鏡50の上部51のほうがハーフミラー10に近づいた状態である。なお、鏡50に接続されたアクチュエータ80a〜80dのうち、上側のアクチュエータ80a、80b(図5参照)を前進動作させるとともに、下側のアクチュエータ80c、80d(図5参照)を後退動作させることにより、鏡50を下向きに傾けることができる。
【0044】
図10(b)は、この場合のハーフミラー10を正面側(視認者側)から見たときの図である。図10(b)に示すように、リング状の模様203aが上向きに連なった多重像203が表示される。よって、上側にカーブした奥行きがあるかの如く表現することができる。
【0045】
(鏡50を左向きに傾けた場合)
次に、図11(a)に示すように、鏡50を左向きに傾けた場合について説明する。この場合、鏡50の右部54よりも鏡50の左部53のほうがハーフミラー10に近づいた状態である。なお、鏡50に接続されたアクチュエータ80a〜80dのうち、左側のアクチュエータ80a、80c(図5参照)を前進動作させるとともに、右側のアクチュエータ80b、80d(図5参照)を後退動作させることにより、鏡50を左向きに傾けることができる。
【0046】
図11(b)は、この場合のハーフミラー10を正面側(視認者側)から見たときの図である。図11(b)に示すように、リング状の模様204aが右向きに連なった多重像204が表示される。よって、右側にカーブした奥行きがあるかの如く表現することができる。
【0047】
なお、制御部90は、図8〜図11に示す以外にも、各種のパターンで鏡50の位置を変更することができ、例えば、鏡50を上向きに傾けたり、右向きに傾けたり、さらには、上記のパターンを組み合わせたりもすることができる。そして、この場合、表示される多重像は、鏡50の位置に応じた形状とされる。
【0048】
また、制御部90は、車両の状態に応じて、鏡50の位置を変更させる。例えば、車両にかかる重力加速度に応じて、鏡50の位置を変更させる。例えば、所定の閾値加速度よりも大きな加速度で車両が加速された場合には、図9に示すように、鏡50をハーフミラー10に近づける。これによって、奥行きが小さくされた多重像202が表示されるので、運転者に、車両が加速されていることを実感させることができる。また、例えば、車両が左側にカーブしているときに、右向きに大きな重力加速度(遠心力)がかかっている場合には、図11に示すように、鏡50を左向きに傾ける。これによって、右側にカーブした多重像204が表示されるので、運転者に、右向きに大きな重力加速度(遠心力)がかかっていることを実感させることができる。
【0049】
また、例えば、車両に対する危険要因がある方向に応じて、鏡50の位置を変更させてもよい。例えば、危険要因としての車両周辺の障害物の方向に応じて鏡50の位置を変更させる。例えば、車両の右側に障害物(例えば他車両)が接近してきた場合には、図11に示すように、鏡50を左向きに傾ける。これによって、運転者に、右側から障害物が接近していることを瞬時に把握させることができる。なお、車両の状態に応じて鏡50の位置を変更させる制御部90及びアクチュエータ80が本発明の「鏡位置変更手段」に相当する。
【0050】
さらに、制御部90は、LED60で発光される光の色を変えさせることにより、表示させる多重像の色を変化させることもできる。例えば、図7の通常の状態時においては多重像を水色で表示させ、図8〜図11の各パターンにおいては、水色と異なる色で多重像を表示させる。これによって、より一層演出効果を高めることができるとともに、運転者に注意喚起を促すことができる。さらに、複数のLED60間で、異なる色の光を発光させることで、表示させる多重像の色を部分的に異ならせることもできる。これによって、より一層演出効果を高めることができるとともに、運転者に注意喚起を促すことができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の車両用メータ1では、多重像が表示されるので、メータに奥行き感を出すことができる。また、車両の状態に応じて、多重像の形状が変化するので、運転者に、車両の状態を直感的に確認させることができる。さらに、その多重像がメータの表示面に表示されるので、車速等の情報も確認することができる。
【0052】
なお、本発明に係る車載表示装置は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限りにおいて、各種変形をすることができる。例えば、上記実施形態では、リング状の模様が多重された多重像を表示させた例について説明したが、表示させる多重像はこれに限定されるわけではなく、様々な形状の多重像を表示させてもよい。この場合、多重像の元となる像形状をアクリル板40に形成しておけばよい。また、例えば、LED60の点灯パターンを変更することで、表示させる多重像の形状を変更するようにしてもよい。例えば、上記実施形態において、複数のLED60の全部を点灯するのではなく、一部のLED60のみを点灯させる。これによって、LED60全部を点灯させたときの多重像と異なる多重像を表示させることができる。
【0053】
また、上記実施形態では、アクリル板40に形成された像形状42にLED60からの光を当てさせることで、アクリル板40から像を発光させるようにしていたが、ハーフミラー10と鏡50の間に、特定の像を自らが発光する発光体を設けるようにしてもよい。この場合、例えば、ハーフミラー10と鏡50に、自らが発光する発光体として、複数のLEDで構成されたLEDユニットを設けるようにする。
【符号の説明】
【0054】
1 車両用メータ(車載表示装置)
10 ハーフミラー
30 指針
31 指針軸
40 アクリル板
42 像形状
44 反射部
45 円筒部
46 円盤部(発光体)
50 鏡
60 LED(光源)
70 遮光板
80 アクチュエータ
90 制御部
100、201〜204 多重像
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、車速やエンジン回転数などの車両状態に関する情報を表示する車載表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、像を奥行き方向に多重表示させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1の技術では、前壁がハーフミラーで形成され、後壁が鏡で形成された箱体内に発光体が設けられる。これによれば、発光体が発光させた像の光は、前壁のハーフミラーにおいて、一部が透過し一部が反射される。ハーフミラーで反射された光は、後壁の鏡において、ハーフミラーの側に反射される。その反射された光は、ハーフミラーにおいて、一部が透過される。このように、発光体からの光は、複数の経路を経てハーフミラーを透過することになるので、表側からこのハーフミラーを見た場合には、発光体から発光された像が奥行き方向に多重されて表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭58−74287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、車速やエンジン回転数などの車両状態に関する物理量の計測値を表示する車両用メータにおいては、設計制約や設置スペースの関係上、奥行き表現には限界があり、深い奥行きの表現が困難であった。つまり、従来の車両用メータにおいては、目盛が形成された文字盤や液晶ディスプレイ等の平面の表示面にその計測値が表示され、例えば車両の前後方向に関する情報を表示する場合には、表示面の上下方向などに置き換えて表示する必要があった。
【0005】
この点、特許文献1の技術では、像が奥行き方向に多重されて表示されることから、奥行き方向の表現であるとも考えられる。しかしながら、特許文献1の技術における多重表示は常に同じ表示であるので、変化する車両状態に関する情報の奥行き方向の表現にその特許文献1の技術をそのまま適用することはできない。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、車両用メータ等の車両状態に関する情報を表示する車載表示装置において、車両の状態に応じた奥行き方向の表現を可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の車載表示装置は、視認者側に配置され、裏側から入射された光の一部は反射され一部は透過されるハーフミラーと、
前記ハーフミラーの裏側の前記ハーフミラーで反射された光が入射される位置に配置され、入射された光を前記ハーフミラー側に反射させる鏡と、
前記ハーフミラーと前記鏡の間に配置され、特定の像を前記ハーフミラーに向けて発光させる発光体と、
搭載された車両の状態に応じて、前記鏡を動かして前記ハーフミラーに対する前記鏡の位置を変更させる鏡位置変更手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
これによれば、ハーフミラーと鏡の間に特定の像を発光させる発光体が設けられるので、表側からハーフミラーを見た場合、発光体で発光された像が奥行き方向に多重された形で表示される。そして、鏡位置変更手段が、車両の状態に応じてハーフミラーに対する鏡の位置を変更させるので、車両の状態に応じて、多重表示された像の形状を変化させることができる。つまり、車両の状態に応じた奥行き表現をすることができる。その結果、直感的に車両の状態を確認させることができる。
【0009】
また、本発明の車載表示装置において、前記鏡位置変更手段は、前記ハーフミラーに対する前記鏡の距離を変更させることを特徴とする。
【0010】
これによれば、ハーフミラーに対する鏡の距離が変更されるので、多重表示された像の各像の間隔を、大きくしたり小さくしたりすることができる。
【0011】
また、本発明の車載表示装置において、前記鏡位置変更手段は、前記ハーフミラーに対する前記鏡の角度を変更させることを特徴とする。
【0012】
これによれば、ハーフミラーに対する鏡の角度が変更されるので、その変更された角度に応じた方向に連なるように、多重表示された像の形状を変化させることができる。
【0013】
また、本発明の車載表示装置において、前記発光体に光を照射する光源を備え、
前記発光体は、光透過性を有する材料が前記像の形状に加工されたものであり、前記光源からの光が前記像の形状に当てられることで前記像を発光させることを特徴とする。
【0014】
このように、光源からの光を受けて像を発光させることにより、複雑な形状の像も簡易に発光させることができる。
【0015】
また、本発明の車載表示装置は、前記車両の状態に関する物理量の計測値を表示する車両用メータに組み込まれたことを特徴とする。
【0016】
これによれば、車両用メータにおける従来の平面的な表現に加え、像の多重表示、つまり奥行き方向の表現もなされることになるので、得られる情報が多くなり特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】車両用メータ1の正面図である。
【図2】図1中のA−A線で切ったときの車両用メータ1の断面図である。
【図3】車両用メータ1の各部品のうちの一部の斜視図を示した図である。
【図4】アクリル板40の円盤部46の正面図である。
【図5】正面方向から鏡50及び各アクチュエータ80を見た図である。
【図6】LED60から発光された光の挙動を説明する図である。
【図7】表示される多重像を説明する図である。
【図8】鏡50を遠ざけた場合に表示される多重像を説明する図である。
【図9】鏡50を近づけた場合に表示される多重像を説明する図である。
【図10】鏡50を下向きに傾けた場合に表示される多重像を説明する図である。
【図11】鏡50を左向きに傾けた場合に表示される多重像を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る車載表示装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態では、車速等を表示する車両用メータの機能の一部として、本発明の車載表示装置を適用した例について説明する。図1は、本実施形態の車両用メータ1の正面図である。また、図2は、図1中のA−A線で切ったときの車両用メータ1の断面図である。なお、このA−A線は、図1の正面図における車両用メータ1の中心を通る上下方向の線である。なお、図2では、図1の文字盤20の図示を省略している。また、図3は、車両用メータ1の各部品のうち、本発明の車載表示装置に関連するものの斜視図を示した図である。なお、図3では、見やすくするために、各部品の右半分の図示を省略している。先ず、これら図1〜図3を参照しながら、車両用メータ1の構成を説明する。
【0019】
車両用メータ1は、運転者が運転中に容易にその表示を確認できるようにするために、例えば車両のフロントガラスの下辺りにおいて、表示面が運転席と対向するように設けられる。その車両用メータ1は、図1に示すように、円状の表示面に、指標21、22が形成され、その指標21、22を指針30で指示するアナログ式の指針計器として構成される。
【0020】
具体的には、車両用メータ1は、円盤状のハーフミラー10を有する。そのハーフミラー10は、一方の面10a(表面)が視認者側に面するように設けられ、他方の面10b(裏面)に入射された光の一部を透過させ一部を反射させるハーフミラーである。ハーフミラー10の中心には、指針軸31が挿通される挿通孔11が形成されている。
【0021】
挿通孔11には、先端がハーフミラー10の表面10a側に突出される形で、指針軸が挿通される。その指針軸31(厳密にはその先端)には指針30が接続されている。その指針30は、文字盤20に形成された指標21、22を指示するものであり、指針軸31の回転にしたがって、指針軸31周りにハーフミラー10の表面10aに沿って動かされる。なお、後述するアクリル板40で発光された光が、挿通孔11から漏れないようにするために、その挿通孔11は、ハーフミラー10の表面10a側に突出された指針軸31の先端よりも小さくされている。
【0022】
ハーフミラー10の周囲を取り囲むようにリング状の文字盤20が設けられる。その文字盤20は、例えばポリカーボネート等の光透過性を有する材料で形成されたものである。文字盤20の表面には、指標としての目盛21及びその目盛21の値である車速を示した数字22が、ハーフミラー10の外周に沿う形で円弧状に形成されている。それら指標21、22は、文字盤20の表面において、指標21、22以外の部分に印刷が施されることにより、形成される。文字盤20の裏側には、文字盤20に光を照射するLED(図示外)が設けられる。そして、そのLEDからの光が文字盤20の指標21、22が形成された部分を透過することにより、それら指標21、22が発光表示される。
【0023】
また、文字盤20の下部には、車速以外の他の車両に関する物理量の計測値を表示する表示領域23が設けられている。その表示領域23には、燃料残量を示す指標23a、走行距離を示す指標23b(トリップメータ)及びエンジン冷却水の水温を示す指標23cが形成されており、インジケータ表示やデジタル表示によって、それら指標23a〜23cを指示するようになっている。
【0024】
図2に示すように、ハーフミラー10の裏側には、アクリル板40及び鏡50が設けられる。アクリル板40は、ハーフミラー10と鏡50の間に設けられている。そのアクリル板40は、光透過性を有し、かつ、その内部を光が導光できる導光性を有するアクリル樹脂で形成されたものである。アクリル板40は、ハーフミラー10と同じ大きさの円盤状の円盤部46を有し、その円盤部46の中心において円状の開口43が形成されている。その開口43の周部に一体的に接続され、開口43から鏡50の側に延びた円筒状の円筒部45が、アクリル板40の一部を構成するものとして設けられる。その円筒部45は、後述するLED60からの光を円盤部46まで導光させる部分である。
【0025】
また、アクリル板40(特に円盤部46)は、本発明の「発光体」に相当し、光を受けることで特定の像を発光するものである。そのために、アクリル板40の円盤部46は、その裏面46b(鏡50側の面)において、堀込み41が形成されている。そして、その堀込み41の底部42が、光が当たった際に、特定の像として発光される部分とされる。また、その像が発光される方向がハーフミラー10の方向となるように、堀込み41の角度が調整されている。以下、堀込み41の底部42を像形状42と言う。つまり、像形状42は、円盤部46の内部に掘り込まれる形で形成されている。ここで、図4は、アクリル板40の円盤部46を図1の正面方向からみたときの図を示している。図4に示すように、像形状42は、針が各方向に放射したごとくの形状、換言すると星状の形状とされた複数の星状形状42aが、開口43の周囲においてリング状に配置された形状とされる。また、像形状42の中心は、開口43から偏心しており、具体的には、像形状42は、図4の正面視における円盤部46の下方に偏心して形成されている。
【0026】
また、円盤部46の開口43の周囲において反射部44が形成されている。その反射部44は、開口43の周囲に形成されたテーパー状の面である。換言すると、反射部44は開口43の孔面を構成し、その孔面は、円盤部46の表面46aにいくほど徐々に開口43の孔径が大きくされる面である。その反射部44の面の角度は、円筒部45から入射される光を、円盤部46の内部に形成された像形状42の方向に反射できる角度とされ、例えば、円盤部46の面46a、46bに対して45度の角度とされる。
【0027】
アクリル板40の円筒部45のリング状の端面45aに対向する形で、その端面45aに光を照射する複数のLED60が設けられる。それらLED60は、円筒部45の端面45aの全領域に光を照射できるように、端面45aの形状に合わせてリング状に配置されている(図3参照)。LED60は、RGBの各色の光を発光できるとともに、各色の光の量が調整されることで他の色の光も発光できるものとされる。
【0028】
鏡50は、アクリル板40の円盤部46の裏側に設けられ、ハーフミラー10、円盤部46と同じ大きさの円盤状とされている。また、鏡50の中心には、アクリル板40の円筒部45及びその円筒部45の内側に設けられる指針軸31が挿通される挿通孔55が形成されている。その鏡50の表面50a(ハーフミラー10側の面)は、その表面50aに入射された光をハーフミラー10の側に反射させる鏡とされている。
【0029】
また、アクリル板40で発光された光が周囲から漏れないようにするために、図2に示すように、ハーフミラー10、アクリル板40及び鏡50の周囲を取り囲む形で、遮光性を有する遮光板70が設けられている。この遮光板70は、ハーフミラー10、アクリル板40及び鏡50の形状(円盤状)に合わせて円筒状とされている。上記したハーフミラー10及びアクリル板40の円盤部46は、それぞれ、周囲が遮光板70に固定されている。
【0030】
鏡50の裏面50bに接続される形で、複数のアクチュエータ80が設けられる。ハーフミラー10に近づく方向を前方向、遠ざかる方向を後ろ方向とすると、それらアクチュエータ80は、鏡50を前方向若しくは後ろ方向に移動させ又は傾きを変えるためのものである。ここで、図5は、各アクチュエータ80の鏡50における接続位置を説明する図であり、図1の正面方向から鏡50及び各アクチュエータ80を見た図を示している。なお、図5では、鏡50の表面50a側を示しているので、各アクチュエータ80を隠れ線で示している。
【0031】
図5に示すように、4つのアクチュエータ80a〜80dが鏡50の裏面50bに接続されている。図5に示すように、鏡50の上部51、下部52、左部53、右部54を定めたときに、上部51と左部53の間(左上部)に第一のアクチュエータ80aが設けられ、上部51と右部54の間(右上部)に第二のアクチュエータ80bが設けられ、下部52と左部53の間(左下部)に第三のアクチュエータ80cが設けられ、下部52と右部54の間(右下部)に第四のアクチュエータ80dが設けられる。なお、アクチュエータ80の個数や配置位置はこれに限定されるわけではなく、鏡50の位置や傾きを変えることができる個数及び配置位置を適宜定めることができる。
【0032】
各アクチュエータ80は、図2に示すように、それぞれ、鏡50の接続面に対して垂直方向(鏡50の前後方向)に力を加えるものが採用され、例えば、油圧シリンダ、エアシリンダ等が採用される。また、鏡50に直接アクチュエータ80を接続しないで、リンクを介して接続してもよい。このように、各アクチュエータ80はそれぞれ直線上に動作するものであるが、各アクチュエータ80の動作の仕方を互いに異ならせることにより、鏡50を前後方向に移動させることができ、さらに傾きも変えることができる。
【0033】
鏡50の裏側には、LED60や指針軸31の回転を回転させるモータ等が実装された基板(図示外)が設けられる。そして、その基板には、車両用メータ1の全体の動作を制御する制御部90が設けられる(図2参照)。その制御部90は、CPU、ROM、RAM等から構成され、CPUがROMに記憶されたプログラムにしたがった動作をすることで、各種処理を実行する。例えば、制御部90は、車速センサからの車速信号を受信し、その車速信号で示される車速に対応する目盛21を指針30が指示するように、指針軸31が接続されたモータを制御する。また、制御部90は、LED60の点灯を制御することで、アクリル板40に形成された像形状42を発光させて、像が多重された多重像をハーフミラー10の表面10aに表示させる。さらに、制御部90は、多重像の形状を変更するために、各アクチュエータ80を制御することで、ハーフミラー10に対する鏡50の位置(距離、角度)を変更させる。
【0034】
次に、車両メータ用1の動作に関し、特に、多重像の表示に関する動作について説明する。制御部90は、多重像の表示を行う際には、LED60に点灯信号を出力して各LED60を点灯させる。図2に示すように、各LED60からの光は、円筒部45の端面45aに入射される。端面45aに入射された光L1は、円筒部45の内部を進行して反射部44に入射される。反射部44に入射された光L1は、反射部44にて、略直角にて反射される。反射された反射光L2は、反射部44から放射するように円盤部46の内部を進行し、像形状42を構成する各星状形状42a(図4参照)に当てられる。そして、像形状42に当てられた光は、円盤部46の表面46aから出射される。つまり、アクリル板40から像形状42に対応する像が発光されることになる。
【0035】
ここで、図6は、それ以降の動作を説明する図であり、図2と同じ方向から見たときのハーフミラー10、アクリル板40(厳密には円盤部46)、鏡50及び遮光板70を示している。なお、図6では、説明の便宜のために、それら部品10、40、50、70を簡略化して図示している。
【0036】
図6に示すように、アクリル板40の像形状42に当たられた光は、実像101を示した光L3として、ハーフミラー10に向けて進行する。そして、その光L3は、ハーフミラー10において、一部が光L4として透過され、一部が光L5として反射される。光L5は、光透過性を有するアクリル板40を透過して、鏡50に入射される。鏡50に入射された光L5は、その鏡50において、光L6として反射される。光L6は、アクリル板40を透過してハーフミラー10に入射される。そして、上記と同様に、光L6の一部が光L7として透過される。その光L7は、光L5が鏡50に入射された点103及び光L5の経路長に基づいて定まる鏡50の後側の点から発光された虚像102を示した光とされる。なお、光L6の一部は反射されて、ハーフミラー10と鏡50の間で、上記と同様の動作が繰り返される。
【0037】
ここで、図7は、図6の場合におけるハーフミラー10を正面側(視認者側)から見たときの図である。図7に示すように、ハーフミラー10には、リング状の模様が奥行き方向に何重にも重なった像、すなわち多重像100が表示される。その多重像100のうち、一番外側の模様101は、アクリル板40に形成された像形状42を示した実像とされる。そして、その実像101の内側には、何重ものリング状の模様102、つまり虚像102が表示される。また、それら虚像102は、ハーフミラー10と鏡50とが平行とされていることから、内側にいくほど小さいリング状の模様とされている。これによって、ハーフミラー10の部分をあたかも奥行きがあるかの如く表現することができる。また、そのハーフミラー10の表面10a側には指針30が設けられていることと、像形状42が指針30の中心(指針軸31)から偏心されて形成されていることとが相俟って、その指針30自体がハーフミラー10よりも奥行き側に設けられているかの如く表現することができる。
【0038】
また、制御部90は、車両の状態に応じて、アクチュエータ80を制御して、ハーフミラー10に対する鏡50の位置を変更する。以下、鏡50の位置に応じて、多重像がどのように変化するかの具体例を説明する。なお、図6における鏡50の位置及び図7の多重像100の表示を通常の状態(基準)として、その通常の状態に対してどのように変化するかについて説明する。
【0039】
(鏡50を遠ざけた場合)
先ず、図8(a)に示すように、鏡50を基準位置59よりも、ハーフミラー10から遠ざけた場合について説明する。この場合、鏡50は、ハーフミラー10と平行を保持しつつ、ハーフミラー10に対する距離が長くされたことになる。なお、鏡50に接続された4つのアクチュエータ80a〜80d(図5参照)の全てを後退動作させることにより、鏡50をハーフミラー10から遠ざけることができる。
【0040】
図8(b)は、この場合のハーフミラー10を正面側(視認者側)から見たときの図である。図8(b)に示すように、通常の状態と同様に、リング状の模様201aが奥行き方向に多重された多重像201が表示される。ただし、各模様201aの間隔は、通常の状態(図7参照)のそれよりも広くされる(密度が低くされる)。よって、通常の状態よりもさらに奥行きがあるかの如く表現することができる。
【0041】
(鏡50を近づけた場合)
次に、図9(a)に示すように、鏡50を基準位置59よりも、ハーフミラー10に近づけた場合について説明する。この場合、鏡50は、ハーフミラー10と平行を保持しつつ、ハーフミラー10に対する距離が短くされたことになる。なお、鏡50に接続された4つのアクチュエータ80a〜80d(図5参照)の全てを前進動作させることにより、鏡50をハーフミラー10に近づけることができる。
【0042】
図9(b)は、この場合のハーフミラー10を正面側(視認者側)から見たときの図である。図9(b)に示すように、通常の状態と同様に、リング状の模様202aが奥行き方向に多重された多重像202が表示される。ただし、各模様202aの間隔は、通常の状態(図7参照)のそれよりも狭くされる(密度が高くされる)。よって、通常の状態よりも奥行きがないかの如く表現することができる。
【0043】
(鏡50を下向きに傾けた場合)
次に、図10(a)に示すように、鏡50を下向きに傾けた場合について説明する。この場合、鏡50の下部52よりも鏡50の上部51のほうがハーフミラー10に近づいた状態である。なお、鏡50に接続されたアクチュエータ80a〜80dのうち、上側のアクチュエータ80a、80b(図5参照)を前進動作させるとともに、下側のアクチュエータ80c、80d(図5参照)を後退動作させることにより、鏡50を下向きに傾けることができる。
【0044】
図10(b)は、この場合のハーフミラー10を正面側(視認者側)から見たときの図である。図10(b)に示すように、リング状の模様203aが上向きに連なった多重像203が表示される。よって、上側にカーブした奥行きがあるかの如く表現することができる。
【0045】
(鏡50を左向きに傾けた場合)
次に、図11(a)に示すように、鏡50を左向きに傾けた場合について説明する。この場合、鏡50の右部54よりも鏡50の左部53のほうがハーフミラー10に近づいた状態である。なお、鏡50に接続されたアクチュエータ80a〜80dのうち、左側のアクチュエータ80a、80c(図5参照)を前進動作させるとともに、右側のアクチュエータ80b、80d(図5参照)を後退動作させることにより、鏡50を左向きに傾けることができる。
【0046】
図11(b)は、この場合のハーフミラー10を正面側(視認者側)から見たときの図である。図11(b)に示すように、リング状の模様204aが右向きに連なった多重像204が表示される。よって、右側にカーブした奥行きがあるかの如く表現することができる。
【0047】
なお、制御部90は、図8〜図11に示す以外にも、各種のパターンで鏡50の位置を変更することができ、例えば、鏡50を上向きに傾けたり、右向きに傾けたり、さらには、上記のパターンを組み合わせたりもすることができる。そして、この場合、表示される多重像は、鏡50の位置に応じた形状とされる。
【0048】
また、制御部90は、車両の状態に応じて、鏡50の位置を変更させる。例えば、車両にかかる重力加速度に応じて、鏡50の位置を変更させる。例えば、所定の閾値加速度よりも大きな加速度で車両が加速された場合には、図9に示すように、鏡50をハーフミラー10に近づける。これによって、奥行きが小さくされた多重像202が表示されるので、運転者に、車両が加速されていることを実感させることができる。また、例えば、車両が左側にカーブしているときに、右向きに大きな重力加速度(遠心力)がかかっている場合には、図11に示すように、鏡50を左向きに傾ける。これによって、右側にカーブした多重像204が表示されるので、運転者に、右向きに大きな重力加速度(遠心力)がかかっていることを実感させることができる。
【0049】
また、例えば、車両に対する危険要因がある方向に応じて、鏡50の位置を変更させてもよい。例えば、危険要因としての車両周辺の障害物の方向に応じて鏡50の位置を変更させる。例えば、車両の右側に障害物(例えば他車両)が接近してきた場合には、図11に示すように、鏡50を左向きに傾ける。これによって、運転者に、右側から障害物が接近していることを瞬時に把握させることができる。なお、車両の状態に応じて鏡50の位置を変更させる制御部90及びアクチュエータ80が本発明の「鏡位置変更手段」に相当する。
【0050】
さらに、制御部90は、LED60で発光される光の色を変えさせることにより、表示させる多重像の色を変化させることもできる。例えば、図7の通常の状態時においては多重像を水色で表示させ、図8〜図11の各パターンにおいては、水色と異なる色で多重像を表示させる。これによって、より一層演出効果を高めることができるとともに、運転者に注意喚起を促すことができる。さらに、複数のLED60間で、異なる色の光を発光させることで、表示させる多重像の色を部分的に異ならせることもできる。これによって、より一層演出効果を高めることができるとともに、運転者に注意喚起を促すことができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の車両用メータ1では、多重像が表示されるので、メータに奥行き感を出すことができる。また、車両の状態に応じて、多重像の形状が変化するので、運転者に、車両の状態を直感的に確認させることができる。さらに、その多重像がメータの表示面に表示されるので、車速等の情報も確認することができる。
【0052】
なお、本発明に係る車載表示装置は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限りにおいて、各種変形をすることができる。例えば、上記実施形態では、リング状の模様が多重された多重像を表示させた例について説明したが、表示させる多重像はこれに限定されるわけではなく、様々な形状の多重像を表示させてもよい。この場合、多重像の元となる像形状をアクリル板40に形成しておけばよい。また、例えば、LED60の点灯パターンを変更することで、表示させる多重像の形状を変更するようにしてもよい。例えば、上記実施形態において、複数のLED60の全部を点灯するのではなく、一部のLED60のみを点灯させる。これによって、LED60全部を点灯させたときの多重像と異なる多重像を表示させることができる。
【0053】
また、上記実施形態では、アクリル板40に形成された像形状42にLED60からの光を当てさせることで、アクリル板40から像を発光させるようにしていたが、ハーフミラー10と鏡50の間に、特定の像を自らが発光する発光体を設けるようにしてもよい。この場合、例えば、ハーフミラー10と鏡50に、自らが発光する発光体として、複数のLEDで構成されたLEDユニットを設けるようにする。
【符号の説明】
【0054】
1 車両用メータ(車載表示装置)
10 ハーフミラー
30 指針
31 指針軸
40 アクリル板
42 像形状
44 反射部
45 円筒部
46 円盤部(発光体)
50 鏡
60 LED(光源)
70 遮光板
80 アクチュエータ
90 制御部
100、201〜204 多重像
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視認者側に配置され、裏側から入射された光の一部は反射され一部は透過されるハーフミラーと、
前記ハーフミラーの裏側の前記ハーフミラーで反射された光が入射される位置に配置され、入射された光を前記ハーフミラー側に反射させる鏡と、
前記ハーフミラーと前記鏡の間に配置され、特定の像を前記ハーフミラーに向けて発光させる発光体と、
搭載された車両の状態に応じて、前記鏡を動かして前記ハーフミラーに対する前記鏡の位置を変更させる鏡位置変更手段と、を備えることを特徴とする車両に搭載される車載表示装置。
【請求項2】
前記鏡位置変更手段は、前記ハーフミラーに対する前記鏡の距離を変更させることを特徴とする請求項1に記載の車載表示装置。
【請求項3】
前記鏡位置変更手段は、前記ハーフミラーに対する前記鏡の角度を変更させることを特徴とする請求項1に記載の車載表示装置。
【請求項4】
前記発光体に光を照射する光源を備え、
前記発光体は、前記像の形状に加工されたものであり、前記光源からの光が前記像の形状に当てられることで前記像を発光させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車載表示装置。
【請求項5】
前記車両の状態に関する物理量の計測値を表示する車両用メータに組み込まれたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車載表示装置。
【請求項1】
視認者側に配置され、裏側から入射された光の一部は反射され一部は透過されるハーフミラーと、
前記ハーフミラーの裏側の前記ハーフミラーで反射された光が入射される位置に配置され、入射された光を前記ハーフミラー側に反射させる鏡と、
前記ハーフミラーと前記鏡の間に配置され、特定の像を前記ハーフミラーに向けて発光させる発光体と、
搭載された車両の状態に応じて、前記鏡を動かして前記ハーフミラーに対する前記鏡の位置を変更させる鏡位置変更手段と、を備えることを特徴とする車両に搭載される車載表示装置。
【請求項2】
前記鏡位置変更手段は、前記ハーフミラーに対する前記鏡の距離を変更させることを特徴とする請求項1に記載の車載表示装置。
【請求項3】
前記鏡位置変更手段は、前記ハーフミラーに対する前記鏡の角度を変更させることを特徴とする請求項1に記載の車載表示装置。
【請求項4】
前記発光体に光を照射する光源を備え、
前記発光体は、前記像の形状に加工されたものであり、前記光源からの光が前記像の形状に当てられることで前記像を発光させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車載表示装置。
【請求項5】
前記車両の状態に関する物理量の計測値を表示する車両用メータに組み込まれたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車載表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−30630(P2012−30630A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170246(P2010−170246)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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