説明

車載装置の固定具

【課題】 曲面形成のダッシュボードの表面へ良好にフィットでき、車両の振動や温度変化など過酷な条件下でも吸着力を安定に得ることができ、固定を強固に行えるが貼り直しが容易であり、はがした後の表面の汚損がない車載装置の固定具を提供すること
【解決手段】 板材21の裏面にボールジョイント22を一体に設けてジョイントベース2とし、板材21は車載装置9の底面の取り付け部92に嵌め合わせる。基台1の上面にはボールジョイントの受け座を設け、連係したジョイントベース側(車載装置)を姿勢の変更が自在に支持し、基台1の底面に粘着性シート3を取り付ける。粘着性シート3は柔軟性が高いゲル状のシート材とし、吸盤31を複数形成する。吸盤31は、なめらかな曲面形状のくぼみ32と環状の隆起部33からなるものとし、これらは隣り合う間隔を最小限に狭く設定するが、隣との間に谷間部分を設定して互いが干渉しない配列にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載装置の固定具に関するもので、より具体的には、GPS受信機などの表示パネルを有する車載装置を支持して車室内の所定位置に固定させるための車載装置の固定具の構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
車載装置の多くは、運転者が操作する都合からダッシュボード上に固定する配置を採ることが多い。例えばGPS受信機などの表示パネルを有する車載装置では、運転者の操作性はもちろん、視認性も良好に得るため、ダッシュボードの上面で運転の妨げにならない位置を選ぶことになる。
【0003】
ダッシュボード上へ固定するには、両面粘着テープを用いて貼り付ける方法が簡単ではあるが、貼り直しが困難であること、並びに、はがした際に粘着物が残ってダッシュボードが汚れる等の問題がある。
【0004】
そこで例えば特許文献1などに見られるように、吸盤を用いて吸着により車載機器の支持,固定を行う技術の提案がある。なお、吸盤を利用した技術は比較的によく知られており、また、車載装置の固定具ではないが、特許文献2には、シャワーノズル支持具の取り付け面に吸盤を多数設ける構成としたものの提案が見られる。
【特許文献1】特開2006−347138号公報
【特許文献2】実開昭62−133766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1,2のように、吸盤を利用した支持,固定の技術は比較的によく知られてはいるが、車両への適用という条件を考えると吸着力を安定に得ることは容易とは言えない。
【0006】
つまり、車室内は夏期では温度が80℃程度に上昇し、冬期では氷点下に下がる場合もあって過酷であり、走行時の車両の振動も伝わる。また、特許文献1にも指摘があるように、ダッシュボードの表面はシボ加工の細かい凹凸があり、デザイン上から平面ではなく曲面に形成されている。これらの点を考慮すると、特許文献1に示すように大きな吸盤を単に1つ設ける構成をとった場合、吸盤に車両の振動が伝わり吸着部分にわずかでも空気がしみ込むと、吸着が不良になり剥がれることになる。また、曲面形成のダッシュボードの表面に対して、フィット性が良好とは言えないという欠点がある。
【0007】
また、吸盤を一つだけ設ける構成をとった場合、必要な吸着力を得るためには吸盤の高さを高くする必要がある。またその高さを有する1つの吸盤を安定的に支えるために吸盤を外側等から支える構造が必要となり、さらに全体の高さが高くなってしまうという問題があった。特に、表示装置を備える機器の場合、表示装置の表示画面を運転者が見やすい高さに設置したいため、組み付けの高さを低くしたい場合があるが、このように一つの吸盤で支えると、機器の設置位置の高さを低く抑えることが困難であった。
【0008】
この発明は上述した課題を解決するもので、その目的は、固定具の高さを全体的に低く抑えつつ、強い吸着力を発揮することができる車載装置の固定具を提供することにある。さらに、他の目的としては、曲面形成のダッシュボードの表面であっても良好にフィットでき、車両の振動や温度変化など過酷な条件下でも吸着力を安定に得ることができ、固定を強固に行えるとともに、貼り直しも容易であり、はがした後の表面の汚損がない車載装置の固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明に係る車載装置の固定具は、(1)車載装置の基部へ着脱可能に組み付けて車内の所定位置へ固定させるものであって、車載装置の底面の取り付け部に嵌め合う板材であり当該板材の裏面に連結手段を有するジョイントベースと、連結手段の受け座を有する基台とを備えて、柔軟性を有するゲル状のシート材からなる粘着性シートを基台の底面に取り付け、粘着性シートには、放物線状などのなめらかな曲面形状のくぼみと当該くぼみを囲む環状の隆起部からなる吸盤を複数(好ましくは多数)配列させて形成する構成にする。車載装置としては各種のものがあるが、例えば表示装置(表示パネル)を有するものがある。また、車内の所定位置とは、例えば、ダッシュボードの上面などがある。もちろんの、車載装置や、その設置位置は、上記例示したものに限られるものではない。
【0010】
(2)車載装置の底面の取り付け部に、柔軟性を有するゲル状のシート材からなる粘着性シートを有し、粘着性シートには、放物線状などのなめらかな曲面形状のくぼみと当該くぼみを囲む環状の隆起部からなる吸盤を複数(好ましくは多数)配列させて形成する構成にすることもよい。柔軟性は、高い方が取付面に対する密着性もよくなるので好ましい。粘着性シートは、予め設けていても良いし、着脱可能として取り付け部に対してユーザ等が取り付けるようにしても良い。
【0011】
(3)上記(1)の発明を前提とし、粘着性シートは、基台の底面に対して異種材料の一体化成形により一体に形成する構成もよい。
【0012】
(4)上記(1)あるいは(3)の発明を前提とし、連結手段は球状体を連係させるボールジョイントとすることができる。
【0013】
(5)上記(1)から(4)の発明を前提とし、吸盤の配列は隣との間に谷間部分を設定し、隆起部が互いに干渉しない並び列とする。
【0014】
(6)上記(1)から(5)の発明を前提とし、吸盤は粘着性シートの表面サイズに対して1/4〜1/16程度の大きさとする。例えば1つの吸盤の大きさを1/4とすると、2×2の配列(4個)とすると、効率よく吸盤を粘着シートの前面に配置することができる。同様に、1つの吸盤の大きさを1/9とすると、3×3の配列(9個)とし、1つの吸盤の大きさを1/16とすると、4×4の配列(16個)とすることで、効率よく吸盤を粘着シートの前面に配置することができる。もちろん、これ以外の寸法・配置でも良い。
【0015】
(7)上記(1)から(6)の発明を前提とし、吸盤は隣り合う間隔を最小限に狭く設定し、粘着性シートの表面に対して最大数が並ぶ配列とする。
【0016】
(8)上記(1)から(7)の発明を前提とし、車載装置は、本体の上面に押し込み操作を行う操作部を有する構成としたものとする。
【0017】
(9)上記(1)の発明を前提とし、車載装置の底面の取り付け部と前記基台の底面の取り付け部との双方に、前記粘着性シートの形状に合う粘着シート取り付け部を有するようにするとよい。
【0018】
(10)上記(1)から(9)の発明を前提とし、粘着性シートの表面における前記複数の吸盤の前記曲面形状のくぼみと、当該くぼみを囲む環状の隆起部の形状は、少なくとも異なる2種類の形状を有する構成とすることができる。つまり、本発明では、複数(好ましくは多数)の吸盤のそれぞれの形状は、単一(同一形状)にしても良いし、多様なもの(例えば数種類(例えば2種類))としてもよい。
【0019】
異なる種類としては、例えば、一部の曲面形状のくぼみを他の一部の曲面形状のくぼみとは異なるくぼみ形状ないしくぼみの大きさとしたり、一部の吸盤の環状の隆起部の環の直径を、他の一部の吸盤の環状の隆起部の環の直径と異なるものとしたりするとよい。そして、異なる形状の吸盤は、例えばランダムに配置したり、交互に配置したりするとよい。
【0020】
本発明では、吸盤を複数(好ましくは多数)配列したため、1つ1つの吸盤の高さを小さくしても、固定具全体としての吸着力を高くすることができる。その結果、固定具の全体の高さを低く抑えつつ、強固な固着力を得ることができる。よって、例えば、車載装置として表示装置を有する場合などであって、見やすさ・視認性からの要求からその表示装置の高さを抑えて設置したい場合でも、固定具の高さを低く抑えることができるので、係る要求を満たすことができる。更に、固定具全体で強固な吸着を得ることができるため、比較的重量のある車載装置であっても、確実に固定できる。
【0021】
さらに、粘着性シートはゲル状のシート材からなるのでそもそも柔軟性を有し、ダッシュボードの表面のような曲面形成の相手面へ良好に密着させることができ、フィット性がよい。また、柔軟性が高いゲル状のシート材なので振動の吸収作用があり、車両の振動を良好に吸収できる。そして、粘着性シートには複数の吸盤を配列させるので、それら吸盤により相手面へ吸着させることができ、それらの吸着力でもって固定が行える。
【0022】
ここで、“複数”は、好ましくは4個以上とするのがよい。4個の場合、例えば、仮想四角形の頂点に配置することで、バランス良く配列することができる。更に、9個以上とすれば、4個の場合に比べて1つ1つの吸盤の形状の高さを小さくすることができ、上述の作用効果をより発揮することができるとともに、9個とした場合には、3×3の配列を取ることで、バランス良く配列することができる。もちろん、9個とした場合でも、3×3の配列に必ずしもする必要はない。さらには、実施形態のように、16個(4×4の配列)以上とすると、さらによい。実際には、粘着性シートの面積及び形状との関係で「決めるとよく」、(6)に記載の比率で個数は算出して決定すると特によい。
【0023】
ゲル状のシート材は車室内の使用環境を考慮した材料選定を行うことになり、ポリエチレン系やスチレン系あるいはシリコン系の合成樹脂材料によれば十分な耐候性を得ることができる。
【0024】
吸盤それぞれでは、くぼみが放物線状などのなめらかな曲面形状なので、押しつけ時に相手面へ良好に密着でき、空気がスムーズに抜き出る。複数の吸盤は隣との間に谷間部分を設定し、隆起部が互いに干渉しない並び列にするので、くぼみからの空気の排出が干渉することなく行える。これら吸盤は隣り合う間隔を最小限に狭く設定し、粘着性シートの表面に対して最大数が並ぶ配列とするので、吸着力を最大限に得ることができる。
【0025】
更に、車載装置の底面の取り付け部と前記基台の底面の取り付け部との双方に、前記粘着性シートの形状に合う粘着シート取り付け部を有するようにした場合、車載装置を適切な高さに設置できる。特に、表示手段を有する車載装置では、表示の見やすい高さに容易に設置できる。また、無線受信手段を有する車載装置では、受信状況が良い高さに容易に設置できる。しかも粘着シートを車載装置の取り付け部用のものと基台の取り付け部用のものを別に作る必要がなく、コストを抑えることができる。
【0026】
吸盤を多様な形状とした場合、様々な種類の取り付け面の状態(例えば車種等によって異なるダッシュボードの素材や表面加工方法によって異なる取付面の状態)に対応できるようになり、特定の車種等で取り付けがうまくいかないという問題を抑制できる。すなわち、多様な車種等で良好な取り付け状態を得ることができる。
【0027】
更に、吸盤の大きさや形状、吸盤の配置パターンは、上記に例示列挙したものに限ることはなく、使用時における粘着性シートの温度分布や振動分布に基づいて決定するとよい。すなわち、配置パターンとして、粘着シートの全面にわたりN×M(N,Mは同じでも良いし異なっていても良い)で網目(格子状の各交点)のように整列配置してもよいが、これに限ることはなく、例えば粘着シートの周辺部(辺縁部)にのみ複数の吸盤を配置する構成が考えられる。しかし、粘着性シートの温度分布に基づく決定として、例えば、粘着性シートの周辺部と中心部の温度分布の違いに着目した配置パターンとするとよく、例えば、吸盤の配置パターンを、吸盤を粘着シートの周辺部と中心部との双方に設けるパターンとしたり、吸盤の中心点を粘着性シートの中心を中心とした複数の同心円上に複数配置するパターンとしたりするとよい。このようにすることで、例えば、車両のダッシュボード上など、周辺部の温度が中心部の温度より高くなる場合などには、周辺部の吸盤が吸着力を有しなくなる場合であっても、中心部に近い吸盤によって吸着力を保持することが可能となる。同様に、車載機器と車両との関係から現れる振動分布に基づいて吸盤の大きさや形状、吸盤の配置パターンを決定するとよい。例えば、中心に比較的大きな吸盤を設け、周辺部に向かうにしたがって比較的小さな吸盤を設けるようにするとよい。なお振動分布としては、例えば通常走行時やアイドリング時、加減速時の振動分布を用いるとよい。つまり、各吸盤の大きさきも、全体で全て同じにしても良いし、上述したように温度分布や振動分布等を考慮して適宜異ならせても良い。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る車載装置の固定具では、吸盤を複数(好ましくは多数)配列したため、固定具の高さを全体的に低く抑えつつ、強い吸着力を発揮することができる。粘着性シートの材質を適切に選定しており、ゲル状のシート材に吸盤を適切に設けているので、曲面形成のダッシュボードの表面へ良好にフィットでき、車両の振動や温度変化など過酷な条件下でも吸着力を安定に得ることができる。その結果、固定が強固に行える
【0029】
この場合、粘着性シートが部材として持つ柔軟性,粘着性を利用し、複数を配列させた吸盤の吸着力を利用しているので、従来の両面粘着テープを用いた貼り付けとは違って貼り直しが容易であり、はがした後の表面の汚損はもちろんない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1は本発明の好適な一実施の形態を示している。本形態において、車載装置の固定具は、表示パネル91を有する車載装置9などの基部へ着脱可能に組み付けてダッシュボード等へ固定させるものであって、基台1とジョイントベース2とを備える。ジョイントベース2を車載装置9へ連係させ、基台1上で車載装置9の姿勢の変更を自在にした支持を行わせる構成になっている。
【0031】
ジョイントベース2には、略長方形状の板材21の裏面にボールジョイント22を一体に設ける。これは車載装置9の底面の取り付け部92に板材21が嵌め合い、着脱が自在に行えるようにしている。基台1の上面には図2(b)に示すように、ボールジョイント22の受け座11を設け、ジョイントベース2の姿勢変更が自在に行える構成になっている。
【0032】
基台1の底面には粘着性シート3を取り付けている。この粘着性シート3は、柔軟性が高いゲル状のシート材からなり、吸盤31を多数配列させて形成している。この配置する吸盤の個数は、実施形態では、16個としているが、その数は任意に設定でき、16個よりも少なくても良いし、多くても良い。また、配列パターンも、碁盤の目(格子状の交点)に規則正しく小さい仮想正方形の各頂点に配列するものに限ることはなく、格子状の交点であっても、仮想長方形の各頂点に配列しても良いし、さらには、格子状ではなく、任意の配置パターンを取ることができる。そして、配置バランスも全体で均等にしても良いし、適宜アンバランスにしても良い。
【0033】
吸盤31は、放物線状などのなめらかな曲面形状のくぼみ32と、当該くぼみ32を囲む環状の隆起部33とからなり、寸法サイズは図2(a)に示すように、粘着性シート3の表面サイズに対して1/4から1/16程度の大きさとすることが好ましい。本実施形態では、図1,図2等に示すように、吸盤31を4×4に整列させ、合計16個を用いていることから、個々の吸盤31は、粘着性シート3の表面サイズに対して1/16程度の寸法に設定している。実施形態では、全ての吸盤31のサイズを同じサイズとしているが、異ならせても良い。但し、高さについてはあまりその差が大きいと個々の吸盤が適切に取付面に接触できなくなるおそれもあるので、等しいかその差を少なく抑える必要がある。
【0034】
これら吸盤31は隣り合う間隔を最小限に狭く設定し、粘着性シート3の表面に対して最大数が並ぶ配列とする。また、並び列については図2(c)に示すように、吸盤31の配列は隣との間に谷間部分を設定し、隆起部33が互いに干渉しない並び列になっている。
【0035】
この吸盤31の寸法形状は、各種に設定できるが、例えば、直径は5mm〜20mmとし、深さは1mm〜5mmとすることができる。係る寸法形状の場合、特に、固定対象(取付面)がダッシュボードにした場合に好適となる(高さを低く抑えつつ、十分な吸着力を発揮できる)。
【0036】
なお、本実施形態では、各吸盤の寸法形状を同一にしたが、適宜異ならせ、複数種類の形態からなる吸盤を適宜の配置にすることもできる。
【0037】
粘着性シート3(ゲル状のシート材)は、ポリエチレン系やスチレン系あるいはシリコン系の合成樹脂材料から形成し、これは車両のダッシュボードへ装着した際の使用環境を考慮した耐候性を有するものが好ましい。また、金型を用いた量産性を考慮する必要もあり、ゲル状のシート材は熱可塑性を有するとともに熱硬化性を有するものが好ましい。車内の温度は夏期では80℃程度に上昇するので、合成樹脂材料としては溶融温度が車内温度よりも十分に大きい値、例えば150℃以上の値を有するものが好ましい。
【0038】
粘着性シート3は図3に示すように、基台1の底面に組み付けることになる。この組み付けは、接着剤を用いて貼り付けてもよいが、ゲル状のシート材が有している粘着力により粘着させる構成にすることもできる。また、粘着性シート3の裏側の組み付け面にも吸盤31を配列させて形成し、それら吸盤31の吸着力により基台1の底面に吸着させる構成にしてもよい。さらに、粘着性シート3は、基台1の底面に対して異種材料の一体化成形により一体に形成する構成にしてもよい。
【0039】
本発明に係る固定具は、図4に各部を分離して示しているが、ジョイントベース2および基台1が車載装置9の基部に連係して組み付くことになる。そして、ダッシュボード等への装着には、基台1を目標位置へ位置合わせして単に上から押さえ込むだけでよく、粘着性シート3の吸盤31が吸着することで固定が完了する。
【0040】
車載装置9は図4に示すように、本体の上面にカードスロット93を設け、メモリカードを押し込み操作するようにしている。この本体の上面に配置する操作部は、押し込み操作する操作部が好ましく、例えば押しボタンスイッチなどがある。カードスロット93は、取り出し操作のためのバネ機構を有する構成とし、メモリカードを挿入した際にバネ機構が作用力をロックし、取り出しはメモリカードを引き出し操作するのではなく、再度押し込み操作することでバネ機構のロックが解除し、取り出しが行えるようにしている。
【0041】
本実施形態では、カードスロット93などの押し込み操作部を本体の上面に配置したため、以下の作用効果を奏する。すなわち、ダッシュボード等へ固定した装着状態において、メモリカードの装着操作を比較的に頻繁に行うことになるため、押し込み操作の力が本体側から基台1側へ加わることになる。この力は粘着性シート3を押しつける作用力となるので、押し込み操作部を操作するたびに吸盤31の吸着を増補でき、固着を強固にすることができる。
【0042】
本発明にあっては、粘着性シート3はゲル状のシート材からなるのでそもそも柔軟性が高く、ダッシュボードの表面のような曲面形成の相手面へ良好に密着させることができ、フィット性がよい。また、柔軟性が高いゲル状のシート材なので振動の吸収作用があり、車両の振動を良好に吸収できる。そして、粘着性シート3には多数(例えば16個)の吸盤31を配列させるので、それら吸盤31により相手面へ吸着させることができ、それらの吸着力でもって固定が行える。
【0043】
ゲル状のシート材は、上述したように車室内の使用環境を考慮した材料選定を行うものであり、ポリエチレン系やスチレン系あるいはシリコン系の合成樹脂材料によれば十分な耐候性を得ることができる。したがって、車室内での温度変化には良好に対応でき、柔軟性が高いという基本性質は安定的に発現する。
【0044】
吸盤31それぞれでは、くぼみ32が放物線状などのなめらかな曲面形状なので、押しつけ時に相手面へ良好に密着でき、空気がスムーズに抜き出る。このため、吸盤31は相手面へ良好にフィットさせることができ、吸着力を強く得ることができる。
【0045】
複数の吸盤31は、隣との間に谷間部分を設定し、隆起部33が互いに干渉しない並び列にするので、くぼみ32からの空気の排出が干渉することなく行えて吸着力を安定に得ることができる。これら吸盤31は隣り合う間隔を最小限に狭く設定し、粘着性シート3の表面に対して最大数が並ぶ配列とするので、吸着力を最大限に得ることができる。
【0046】
したがって、本発明に係る固定具によれば、曲面形成のダッシュボードの表面へ良好にフィットでき、車両の振動や温度変化など過酷な条件下でも吸着力を安定に得ることができる。その結果、固定が強固に行える
【0047】
この場合、粘着性シート3が部材として持つ柔軟性,粘着性を利用し、複数を配列させた吸盤31の吸着力を利用しているので、従来の両面粘着テープを用いた貼り付けとは違って貼り直しが容易であり、はがした後の表面の汚損はもちろんない。
【0048】
また、ジョイントベース2にボールジョイント22を設けて基台1と連結するので、車載装置9の姿勢の変更が容易であり自由度が高い。姿勢の変更を行う操作では、ボールジョイント22の動きが受け座11から基台1の底面側へ伝わるので、これは吸盤31を押しつける作用力になる。したがって、車載装置9の姿勢を変更操作するたびに吸盤31の吸着を増補でき、固着を強固にすることができる。
【0049】
粘着性シート3は図5に示すように、略方形に形成し、車載装置9に対して直に組み付ける構成を採ることもよい。つまり、粘着性シート3は、車載装置9の底面の取り付け部92に嵌め合う形状とし、取り付け部92へ直接に組み付ける構成にする。この場合、基台1を利用しない構成なので、ダッシュボード等への装着において全体の高さを低くすることができ、利用者が望む適切な高さにすることができる。
【0050】
そして、基台1は図6に示すように、底面の取り付け部を略方形に形状変更し、図5に示す略方形の粘着性シート3を組み付ける構成にすることもできる。このような構成によれば、粘着性シート3は基台1に対して、あるいは車載装置9の取り付け部92に対して、選択的に組み付けすることができる。したがって、装着形態(装着高さ)の選択肢が増し、利用者の選択の自由度を大きくできる。例えば車載装置9がGPS受信機などでは、電波の受信状態が良好となる高さを選択でき、あるいは表示の見やすい高さを選択するなど、装着形態を容易に変更でき、適切な高さにすることができる。
【0051】
また、粘着性シート3には吸盤31を設けない構成とし、当該ゲル状のシート材がもともと有している粘着性を利用する構成にすることでもよい。この場合でも、例えば、車載装置9の姿勢を変更したり、上面(例えば、カードスロット部分)を下方に向けて押したりする作用により、使用時にも接着力・粘着力が強められ、長期にわたり固定をしっかり行なえるという効果を発揮することができる。
【0052】
なお、表示パネルの寸法形状は、大小各種のものを用いることができる。また、本発明の車載装置は、必ずしも表示装置を備えていなくても良い。但し、本実施形態では、多数の吸盤を配列したことにより、固定具の高さを低く抑えることと、全体の吸着力を大きくすることができたことに鑑みると、表示パネルを備えた車載装置は好ましいものの一つとなる。
【0053】
なおまた、上記の実施形態では、1枚の粘着シートを用いて構成したが、複数枚用いることもできる。一例としては、車載装置の底面の取り付け部と、基台の底面の取り付け部との双方に、それぞれ粘着性シートの形状に合う粘着シート取り付け部を有するようにして対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る車載装置の固定具の好適な一実施の形態を示す斜視図であり、当該固定具へ連結させる車載装置を分離して示している。
【図2】固定具の基台を示し、底面側から見た平面図(a)、ボールジョイント受け座の部分での断面図(b)、吸盤の並び列部分での断面図(c)である。
【図3】粘着性シートの基台への組み付けを説明する斜視図である。
【図4】固定具と車載装置との連係および車両への装着を説明する斜視図である。
【図5】粘着性シートの他例であり、車載装置へ直に連係させる装着を説明する斜視図である。
【図6】図5に示す粘着性シートの基台への組み付けを説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
1 基台
11 受け座
2 ジョイントベース
21 板材
22 ボールジョイント
3 粘着性シート
31 吸盤
32 くぼみ
33 隆起部
9 車載装置
91 表示パネル
92 取り付け部
93 カードスロット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載装置の基部へ着脱可能に組み付けて車内の所定位置へ固定させる車載装置の固定具であって、
前記車載装置の底面の取り付け部に嵌め合う板材であり当該板材の裏面に連結手段を有するジョイントベースと、
前記連結手段の受け座を有する基台と、を備え、
柔軟性を有するゲル状のシート材からなる粘着性シートを前記基台の底面に取り付け、前記粘着性シートには、放物線状などのなめらかな曲面形状のくぼみと当該くぼみを囲む環状の隆起部からなる吸盤を複数配列させて形成することを特徴とする車載装置の固定具。
【請求項2】
車載装置の基部へ着脱可能に組み付けて車内の所定位置へ固定させる車載装置の固定具であって、
前記車載装置の底面の取り付け部に、柔軟性を有するゲル状のシート材からなる粘着性シートを有し、前記粘着性シートには、放物線状などのなめらかな曲面形状のくぼみと当該くぼみを囲む環状の隆起部からなる吸盤を複数配列させて形成することを特徴とする車載装置の固定具。
【請求項3】
前記粘着性シートは、前記基台の底面に対して異種材料の一体化成形により一体に形成することを特徴とする請求項1に記載の車載装置の固定具。
【請求項4】
前記連結手段は球状体を連係させるボールジョイントとすることを特徴とする請求項1あるいは3の何れか1項に記載の車載装置の固定具。
【請求項5】
前記吸盤の配列は隣との間に谷間部分を設定し、前記隆起部が互いに干渉しない並び列であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の車載装置の固定具。
【請求項6】
前記吸盤は前記粘着性シートの表面サイズに対して1/4〜1/16程度の大きさとすることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の車載装置の固定具。
【請求項7】
前記吸盤は、隣り合う間隔を最小限に狭く設定し、前記粘着性シートの表面に対して最大数が並ぶ配列とすることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の車載装置の固定具。
【請求項8】
前記車載装置は、本体の上面に押し込み操作を行う操作部を有する構成としたものであることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の車載装置の固定具。
【請求項9】
前記車載装置の底面の取り付け部と前記基台の底面の取り付け部との双方に、前記粘着性シートの形状に合う粘着シート取り付け部を有することを特徴とする請求項1に記載の車載装置の固定具。
【請求項10】
前記粘着性シートの表面における前記複数の吸盤の前記曲面形状のくぼみと、当該くぼみを囲む環状の隆起部の形状は、少なくとも異なる2種類の形状を有する構成としたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の車載装置の固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−220597(P2009−220597A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63988(P2008−63988)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(391001848)株式会社ユピテル (238)
【Fターム(参考)】