説明

車載装置

【課題】快適性の維持と燃費性能の向上を図る。
【解決手段】現在位置情報と道路勾配情報に基づいて車両の走行先に上り勾配の区間が存在することを判定した場合、当該上り勾配の開始地点以降の予め定められた距離区間を1つの起伏区間dとして特定するとともに、当該起伏区間における頂上地点を特定し(S206、S208)、車両が起伏区間に進入したことを判定した場合、車両用空調装置におけるコンプレッサをオフ制御し(S216)、車両が頂上地点に到達したことを判定した場合、コンプレッサをオン制御する(S220)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置を制御する機能を備えた車載装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用空調装置では、エンジン等の走行用の動力源の駆動力を利用して冷媒を圧縮するコンプレッサを駆動することにより冷房機能(エアコン機能)を実現している。このため、車両用空調装置の冷房機能を連続して使用すると、コンプレッサで消費される電力量も大きくなり、燃費性能が悪化してしまうといった問題がある。
【0003】
そこで、車両走行中に、上り坂になるとエアコンのスイッチが切れ、下り坂又は平地になるとエアコンのスイッチが入るようにして、燃費の向上を図るようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−46021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された装置のようなエアコンスイッチを用いて車両用空調装置におけるコンプレッサのオンオフ制御を実施する構成では、車両の走行地点の道路勾配に応じて瞬時にエアコンのスイッチが切り替わるため、例えば、短い区間でアップダウンが繰り返されるような経路では、頻繁にエアコンスイッチが切り替わり、快適性が低下してしまうといった問題がある。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みたもので、快適性の維持と燃費性能の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、車両用空調装置を制御する機能を備えた車載装置であって、車両の現在位置を特定するための現在位置情報を取得する現在位置情報取得手段と、道路勾配を特定するための道路勾配情報を取得する道路勾配情報取得手段と、現在位置情報および道路勾配情報に基づいて車両の走行先に上り勾配の区間が存在することを判定した場合、当該上り勾配の開始地点以降の予め定められた距離区間を1つの起伏区間として特定するとともに、当該起伏区間における頂上地点を特定する頂上地点特定手段と、現在位置情報に基づいて車両が起伏区間に進入したことを判定した場合、車両用空調装置における冷媒を圧縮するコンプレッサをオフ制御するコンプレッサオフ制御手段と、現在位置情報に基づいて車両が頂上地点に到達したことを判定した場合、コンプレッサをオン制御する第1のコンプレッサオン制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、現在位置情報および道路勾配情報に基づいて車両の走行先に上り勾配の区間が存在することを判定した場合、当該上り勾配の開始地点以降の予め定められた距離区間を1つの起伏区間として特定するとともに、当該起伏区間における頂上地点を特定し、現在位置情報に基づいて車両が起伏区間に進入したことを判定した場合、車両用空調装置における冷媒を圧縮するコンプレッサをオフ制御し、現在位置情報に基づいて車両が頂上地点に到達したことを判定した場合、コンプレッサをオン制御するので、例えば、短い区間でアップダウンが繰り返されるような経路で、頻繁にエアコンスイッチが切り替わるといったことが防止され、快適性の維持と燃費性能の向上を図ることができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、現在位置情報に基づいて車両が起伏区間の始点の手前の区間を含む一定距離区間に位置することを判定した場合、コンプレッサをオン制御する第2のコンプレッサオン制御手段を備えたことを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、現在位置情報に基づいて車両が起伏区間の始点の手前の区間を含む一定距離区間に位置することを判定した場合、コンプレッサがオン制御されるので、起伏区間に進入する前に車室内を空調することができ、乗員の快適性を向上することができる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、車両用空調装置に対する乗員の操作履歴を収集して記憶手段に記憶させる処理を実施する操作履歴記憶処理手段を備え、頂上地点特定手段は、記憶手段に記憶された乗員の操作履歴に基づいて乗員の好みの温度設定を推定するとともに、推定した乗員の好みの温度設定が低いほど、区間長が短くなるように起伏区間の区間長を特定することを特徴としている。
【0012】
このような構成によれば、推定した乗員の好みの温度設定が低いほど、区間長が短くなるように起伏区間の区間長が特定される。すなわち、車両が上り勾配の区間に進入してコンプレッサがオフ制御されたとしても比較的短い時間で頂上地点に到達して、コンプレッサがオン制御されるので、燃費の悪化を避けつつ、ユーザの不快感を少なくすることができる。また、逆に、推定した乗員の好みの温度設定が高い場合、区間長が長くなるように起伏区間の区間長が特定される。すなわち、コンプレッサがオフとなる時間が長くなるので、燃費の悪化を避けつつ、ユーザの嗜好に合うような空調を行うことができる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、車両用空調装置は、車室内温度を検出する温度検出手段により検出された温度が予め設定された設定温度よりも高い上限制限温度に達すると車室内温度を低下させ、温度検出手段により検出された温度が設定温度よりも低い下限制限温度に達すると車室内温度を上昇させて、車室内温度が一定範囲内に維持されるように自動制御するようになっており、車室内温度が、推定手段により推定された乗員の好みの温度設定に適すように上限制限温度および下限制限温度の変更を指示する情報を車両用空調装置へ通知する制限温度変更通知手段と、を備えたことを特徴としている。
【0014】
このような構成によれば、車室内温度が、乗員の好みの温度設定に適すように上限制限温度および下限制限温度の変更を指示する情報が車両用空調装置へ通知されるので、更に、乗員の快適性を向上することができる。
【0015】
なお、請求項5に記載の発明のように、制限温度変更通知手段は、推定手段により乗員の好み温度設定が高温であると推定された場合には上限制限温度とともに下限制限温度を上昇させ、乗員の好みの温度設定が低温であると推定された場合には上限制限温度とともに下限制限温度を低下させるように上限制限温度および下限制限温度の変更を指示する情報を通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る車載装置および情報管理サーバの全体構成を示す図である。
【図2】設定温度記憶処理のフローチャートである。
【図3】車両用空調装置制御処理のフローチャートである。
【図4】起伏区間の区間長が短い場合と長い場合の車両用空調装置のコンプレッサのオフ区間の比較について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る車載装置、車両用空調装置および情報管理サーバの全体構成を図1に示す。本車載装置は、車両に搭載されたナビゲーション装置1として構成されており、車両用空調装置6を制御する機能を備えている。なお、本実施形態における車両は、エンジンを走行用の動力源として走行するものである。また、本ナビゲーション装置1は、無線基地局2、電話局3等により構成されるネットワーク網を介して情報センタに設置された情報管理サーバ5と通信することが可能となっている。
【0018】
本ナビゲーション装置1は、位置検出器10、表示装置11、スイッチ入力部12、メモリ13、音声出力部14、地図データ入力装置15、データ通信部16および制御部17を備えている。
【0019】
位置検出器10は、いずれも周知の地磁気センサ、ジャイロスコープ、距離センサ、GPS受信機を有し、これらセンサにより入力される現在位置および向きを特定するための情報を制御部17に出力する。
【0020】
表示装置11は、液晶等のディスプレイを有し、当該ディスプレイに制御部17より入力される映像信号に応じた映像を表示させる。
【0021】
スイッチ入力部12は、表示装置11のディスプレイに重ねて設けられたタッチスイッチ、表示装置11のディスプレイの周囲に設けられたメカニカルスイッチ等によって構成され、ユーザのスイッチ操作に応じた信号を制御部17に出力する。
【0022】
メモリ13は、ROM、RAM、フラッシュメモリ等によって構成されている。ROMには、制御部17によって実行されるプログラムが記憶されている。
【0023】
音声出力部14は、音声を出力するスピーカにより構成されており、制御部17より入力される音声信号に応じた音声を出力する。
【0024】
地図データ入力装置15は、地図データが記憶された地図データ記憶媒体(図示せず)から地図データを入力するための装置である。地図データには、各リンクの距離、道路勾配、道路種別、車線数、一方通行規制、信号機の位置等を表す道路情報、位置検出精度を向上するためのいわゆるマップマッチングデータ、川、湖、海、鉄道、施設などの位置、形状、名称を表す背景データ、各地の施設の名称、所在位置、施設種類等を示す施設データ等が含まれる。なお、地図データ記憶媒体としては、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディ
スクドライブ、メモリカード等がある。
【0025】
データ通信部16は、DCM(Data Communication Module)や携帯電話等を用いて構成されるもので、外部と無線による双方向通信を行うための装置である。
【0026】
制御部17は、CPU、I/O等を備えたコンピュータとして構成されるもので、メモリ13のROMに記憶されたプログラムに従って各種処理を実施する。制御部17の処理としては、位置検出器10より入力される情報に基づいて現在位置、向き等を特定する現在位置特定処理、自車位置周辺の地図上に自車位置マークを表示させる地図表示処理、ダイクストラ法等を用いて出発地から目的地に至る最適な経路を探索する経路探索処理、探索された経路に従って経路案内を行う経路案内処理等がある。
【0027】
情報管理サーバ5は、サーバ本体50、通信部51およびデータベース52を備えている。
【0028】
サーバ本体50は、CPU、メモリ、ハードディスクドライブ、I/O等を備えたコンピュータとして構成されており、CPUはハードディスクドライブに記憶されたプログラムに従って各種処理を実施する。
【0029】
通信部51は、無線基地局2、電話局3等により構成されるネットワーク網を介して外部と双方向通信を行うための装置である。
【0030】
サーバ本体50の処理としては、各地で発生する事故情報、渋滞情報等を収集して各車両へ交通情報を配信する交通情報配信処理等がある。
【0031】
車両用空調装置6は、車室内の温度を検出する内気センサ、車室外の温度を検出する外気センサ、操作を行うための操作パネル、吹出口モードを切り替えるための各種電動アクチュエータ、各種制御を行うエアコンECU(いずれも図示せず)を備えている。
【0032】
なお、操作パネルには、車両用空調装置6の作動スイッチ、エアコンのオン・オフを切り替えるエアコンスイッチ、車両用空調装置6の自動制御を設定・解除するオートスイッチ、運転モードの切替スイッチ、吸込口モードを切り替える吸込口モードスイッチ、吹出口モードを切り替える吹出口モードスイッチ、送風機12の風量設定スイッチ、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ等が設けられている。
【0033】
また、車両用空調装置6は、エンジンの駆動力を利用して冷媒を圧縮するコンプレッサを駆動することにより冷房機能(エアコン機能)を実現する。
【0034】
本実施形態におけるナビゲーション装置1は、車両の走行先に上り勾配の区間が存在することを判定した場合、上り勾配の開始地点から、先方の予め定められた距離に達するまでの区間を1つの起伏区間として特定し、当該起伏区間中で最も高度の高い頂上地点を特定し、この頂上地点と車両の位置関係に従って車両用空調装置のコンプレッサを制御する車両用空調装置制御処理を実施する。
【0035】
また、本実施形態におけるナビゲーション装置1は、ユーザの車両用空調装置6に対する各種操作の操作履歴を収集してメモリ13に記憶させる操作履歴記憶処理を実施するようになっており、このメモリ13に記憶した操作履歴に基づいて推定される乗員の温度設定の好みに従って空調制御を行う。
【0036】
まず、図2に従って、設定温度記憶処理について説明する。車両のイグニッションスイッチがオン状態になると、本ナビゲーション装置1は動作状態となり、制御部17は、図2に示す処理を開始する。
【0037】
まず、車両用空調装置6から設定温度を表す設定温度情報を取得する(S100)。具体的には、車両用空調装置6に対して設定温度を表す設定温度情報の送信要求を行って、車両用空調装置6から設定温度を表す設定温度情報を取得する。
【0038】
次に、取得した設定温度情報に基づく車両用空調装置6の設定温度をメモリ13に蓄積記憶させる(S102)。具体的には、設定温度と、設定された回数を関連付けてメモリ13に蓄積記憶させ、本処理を終了する。このように、一定周期毎に収集された設定温度情報に基づく車両用空調装置6の設定温度がメモリ13に蓄積記憶される。
【0039】
次に、図3に従って、車両用空調装置制御処理について説明する。車両のイグニッションスイッチがオン状態になると、制御部17は図2に示した処理を並行して、図3に示す処理を周期的に実施する。
【0040】
まず、車両の現在位置を特定するための現在位置情報を取得する(S200)。
【0041】
次に、道路勾配を特定するための道路勾配特定情報を取得する(S202)。具体的には、現在位置情報により特定される現在位置を中心とする一定領域(例えば、半径5キロメートルの領域)に含まれる各道路区間の道路勾配情報を取得する。
【0042】
次に、現在位置情報および道路勾配特定情報に基づいて車両の走行先に上り勾配区間が存在するか否かを判定する(S204)。具体的には、車両が走行中の道路および走行方向を特定し、車両の走行先に上り勾配区間が存在するか否かを判定する。
【0043】
次に、起伏区間を特定する(S206)。具体的には、現在位置情報および道路勾配情報に基づいて車両の走行先に上り勾配の区間が存在するか否かを判定し、上り勾配の区間が存在すると判定した場合、当該上り勾配の開始地点を始点として、当該始点より先方の予め定められた距離に達するまでの区間を1つの起伏区間として特定する。本実施形態では、図2に示した設定温度記憶処理によりメモリ13に蓄積記憶された車両用空調装置6の設定温度に基づいて乗員の好みの温度設定を推定し、乗員の好みの温度設定が低いほど、区間長が短くなるように起伏区間の区間長を特定する。具体的には、乗員の好みの温度設定に応じて変化する温度係数Kを用いて起伏区間の区間長dを求める。より具体的には、一定時間をt、起伏区間の平均車速をv、乗員の好みの温度設定に応じて変化する温度係数をKとして、起伏区間長d=t×v×Kを算出する。なお、起伏区間の平均車速vは、起伏区間の制限速度および渋滞情報を考慮して算出されたものを情報管理サーバ5より取得して特定することができる。また、温度係数Kは、乗員の好みの温度設定が低いほど小さく、乗員の好みの温度設定が高いほど大きくなるようになっている。例えば、乗員の好みの温度設定が23℃と推定された場合には、K=0.5、乗員の好みの温度設定が25℃と推定された場合には、K=1.0、乗員の好みの温度設定が27℃と推定された場合には、K=1.5となる。
【0044】
次に、起伏区間中で最も高度の高い頂上地点を特定する(S208)。なお、起伏区間中で最も高度の高い頂上地点は、起伏区間中の各区間の道路勾配に基づいて算出することができる。
【0045】
次に、車両が起伏区間の始点の手前の区間を含む一定距離区間に進入したか否かを判定する(S210)。
【0046】
ここで、車両が起伏区間の始点の手前の区間を含む一定距離区間に進入していない場合、S210の判定はNOとなり、S210の判定を繰り返し実施する。
【0047】
そして、車両が起伏区間の始点の手前の区間を含む一定距離区間に進入すると、車両用空調装置6のコンプレッサをオン制御する(S212)。具体的には、車両用空調装置6に対してコンプレッサをオンするように指示する情報を送出する。このとき、好みの設定温度が低いユーザほど、この一定距離区間を長くするようにしてもよい。このようにすれば、暑がりのユーザほどエアコンの空調時間が長くなり、このあとコンプレッサがオフになった場合の不快感をより軽減できるようになる。
【0048】
次に、車両が起伏区間に進入したか否かを判定する(S214)。ここで、車両が起伏区間に進入していない場合、S214の判定を繰り返し実施する。そして、車両が起伏区間に進入すると、S214の判定はYESと成り、次に、車両用空調装置6のコンプレッサをオフ制御する(S216)。具体的には、車両用空調装置6に対してコンプレッサをオフするように指示する情報を送出する。
【0049】
次に、S208にて特定した頂上地点に車両が到達したか否かを判定する(S218)。ここで、頂上地点に車両が到達するまで、S218の判定を繰り返し実施し、頂上地点に車両が到達すると、S218の判定はYESとなり、次に、車両用空調装置6のコンプレッサをオン制御する(S220)。具体的には、車両用空調装置6に対してコンプレッサをオンするように指示する情報を送出し、S200へ戻る。
【0050】
図4に、起伏区間dの区間長が短い場合と長い場合の車両用空調装置6のコンプレッサのオフ区間の比較を示す。(a)には、起伏区間dの区間長が短い場合のコンプレッサのオフ区間が示されており、(b)には、起伏区間dの区間長が長い場合のコンプレッサのオフ区間が示されている。なお、図4(a)、(b)における起伏区間dは、直線距離ではなく、起伏に沿って走行した距離(道なり距離)を表している。図4(a)に示すように、起伏区間dの区間長が短い場合には、頻繁に車両用空調装置6のコンプレッサがオンとなったりオフとなったりする。これに対し、図4(b)に示すように、起伏区間dの区間長が長い場合には、車両用空調装置6のコンプレッサがオフとなる区間が長くなる。すなわち、起伏区間dの区間長が長い方が車両用空調装置6のコンプレッサで消費されるエネルギー量が少なくてすむため燃費性能が向上する。
【0051】
上記した構成によれば、現在位置情報および道路勾配情報に基づいて車両の走行先に上り勾配の区間が存在することを判定した場合、当該上り勾配の開始地点を始点として、当該始点より先方の予め定められた距離に達するまでの区間を1つの起伏区間として特定するとともに、当該起伏区間における頂上地点を特定し、現在位置情報に基づいて車両が起伏区間に進入したことを判定した場合、車両用空調装置における冷媒を圧縮するコンプレッサをオフ制御し、現在位置情報に基づいて車両が頂上地点に到達したことを判定した場合、コンプレッサをオン制御するので、例えば、短い区間でアップダウンが繰り返されるような経路で、頻繁にエアコンスイッチが切り替わるといったことが防止され、快適性の維持と燃費性能の向上を図ることができる。
【0052】
また、現在位置情報に基づいて車両が起伏区間の始点の手前の区間を含む一定距離区間に位置することを判定した場合、コンプレッサがオン制御されるので、起伏区間に進入する前に車室内を空調することができ、乗員の快適性を向上することができる。
【0053】
また、推定した乗員の好みの温度設定が低いほど、区間長が短くなるように起伏区間の区間長が特定される。すなわち、車両が上り勾配の区間に進入してコンプレッサがオフ制御されたとしても比較的短い時間で頂上地点に到達して、コンプレッサがオン制御されるので、燃費の悪化を避けつつ、ユーザの不快感を少なくすることができる。また、逆に、推定した乗員の好みの温度設定が高い場合、区間長が長くなるように起伏区間の区間長が特定される。すなわち、コンプレッサがオフとなる時間が長くなるので、燃費の悪化を避けつつ、ユーザの嗜好に合うような空調を行うことができる。
【0054】
(第2実施形態)
本実施形態における車両用空調装置6は、検出された車室内温度が予め設定された設定温度よりも高い上限制限温度に達すると車室内温度を低下させ、検出された車室内温度が設定温度よりも低い下限制限温度に達すると車室内温度を上昇させて、車室内温度が一定範囲内に維持されるように自動制御する機能を備えている。
【0055】
また、車両用空調装置6の設定温度を収集してメモリ13に蓄積記憶させるとともに、メモリ13に蓄積記憶された設定温度から乗員の好みの温度設定を推定する。
【0056】
また、本実施形態における制御部17は、図3に示した車両用空調装置制御処理を実施する際に、車室内温度が、推定した乗員の好みの温度設定に適すように上限制限温度および下限制限温度の変更を指示するようになっている。具体的には、乗員の好み温度設定が高温であると推定された場合には上限制限温度とともに下限制限温度を上昇させ、乗員の好みの温度設定が低温であると推定された場合には上限制限温度とともに下限制限温度を低下させるように車両用空調装置6に通知する。
【0057】
このように、車室内温度が、乗員の好みの温度設定に適すように上限制限温度および下限制限温度の変更を指示する情報が車両用空調装置へ通知されるので、更に、乗員の快適性を向上することができる。
【0058】
(その他の実施形態)
上記第1実施形態では、起伏区間における最も高度の高い地点を頂上地点として特定したが、必ずしも最も高度の高い地点を頂上地点として特定する必要はなく、例えば、起伏区間における2番目に高い地点を頂上地点としてもよく、また、起伏区間における2番目の頂点を頂上地点としてもよい。
【0059】
また、上記第1実施形態では、上り勾配の開始地点を始点として、当該始点より先方の予め定められた距離に達するまでの区間を1つの起伏区間として特定したが、必ずしも上り勾配の開始地点を始点として起伏区間を特定する必要はなく、例えば、上り勾配の開始地点以降の予め定められた距離区間を1つの起伏区間として特定するようにしてもよい。
【0060】
また、上記第1、第2実施形態では、S202にて、各道路区間の道路勾配情報を取得して、車両の走行先に上り勾配区間が存在するか否かを判定したが、例えば、各道路区間における標高情報を取得して、車両の走行先に上り勾配区間が存在するようにしてもよい。
【0061】
また、区間毎の燃費および車両用空調装置6で消費された燃費を計測してナビゲーション装置1の表示装置11に表示させるようにしてもよい。
【0062】
また、上記したナビゲーション装置1による車両用空調装置6に対する制御についての快適性等に関するアンケート画面をナビゲーション装置1の表示装置11に表示させ、このアンケート画面の表示に従って乗員により入力された評価の結果をナビゲーション装置1から情報管理サーバ50に送信させ、情報管理サーバ50側で集計するようにしてもよい。そして、集計した評価結果を乗員の走行時におけるコンプレッサ制御に活用するようにすることもできる。例えば、似たような嗜好(設定温度)の他の乗員のアンケート結果を活用すると好ましい。そのために具体的には、地点と快適性とを紐付けてアンケートをとるようにする。すなわち以下の項目を関連させてアンケートをとるのである。
【0063】
1)地点情報
2)コンプレッサ制御方法
3)ユーザ種別
まず、地点情報とは実際に本発明のコンプレッサ制御が行われた地点であり、これはナビゲーション装置の現在位置情報取得手段(GPS受信機等)から取得できる情報である。次に、コンプレッサ制御方法とは起伏区間をどのように特定したかや頂点をどの地点としたのか、そしてコンプレッサをどの地点からどの地点までオンし、またオフしたのか(あるいはオンオフの時間)を含む情報である。そしてユーザ種別とはユーザが好む設定温度ごとにユーザを区分したもので、例えば、23℃を好むユーザの種別は「23℃を好むユーザ」といったように層別できる。
【0064】
そして、アンケートはどの地点でどの制御方法がどの種別のユーザにとって快適性の面で評価が高いかを識別できる形式で収集するのである。そして、サーバ50を介してこの情報を車載機へ取り込み、コンプレッサの制御方法として活用するようにする。例えば、ある温度を好むユーザが、自分が一度も走行したことのない山道を走行しようとする場合であっても、同じ温度を好む別のユーザの実績に基づいてコンプレッサの制御が行えるようになる。
【0065】
このようにすれば、車載装置ではじめから適切な制御方法をいちいち演算して特定することなく、ユーザの快適性に配慮した燃費向上のためのコンプレッサ制御が苦もなくおこなえるようになる。
【0066】
なお、上記のアンケートは1)〜3)を関連づけていたが、これに限らず、さらに走行時の天候や時間帯、季節なども加味して関連づけてもよい。このようにすれば状況に応じてさらにきめ細かなコンプレッサ制御が苦もなく行えるようになる。
【0067】
また、上記実施形態では、定期的に車両用空調装置6の設定温度を蓄積記憶して乗員の好みの温度設定を推定したが、このような例に限定さえるものではなく、例えば、起伏区間を走行中における乗員の設定温度の変更操作を収集して、乗員の好みの温度設定を推定するようにしてもよい。また、例えば、起伏区間を走行中に乗員のより設定温度が上げられた場合は、コンプレッサの駆動時間(オン時間)が長すぎたものと推定し、反対に、起伏区間を走行中に乗員のより設定温度が下げられた場合は、コンプレッサの駆動時間(オン時間)が短すぎたものと推定し、次回走行時のコンプレッサのオンオフ制御に反映させるようにしてもよい。すなわち、コンプレッサのオン時間が長すぎた場合には次回は短くし、逆に短すぎた場合には次回は長くするようにする。ここで、より好ましくはコンプレッサがオン又はオフとなってからユーザが設定温度を変更するまでの時間を計測、記憶しておき、次回はこの時間よりも長い時間、あるいは短い時間だけコンプレッサをオン又はオフするとよい。このようにすればよりユーザの快適性に配慮することが可能となる。
【0068】
なお、上記実施形態における構成と特許請求の範囲の構成との対応関係について説明すると、S200が現在位置情報取得手段に相当し、S202が道路勾配情報取得手段に相当し、S204、S206、S208が頂上地点特定手段および推定手段に相当し、S210、S212がコンプレッサオフ制御手段に相当し、S218、S220が第1のコンプレッサオン制御手段に相当し、S210、S212が第2のコンプレッサオン制御手段に相当し、メモリ13が記憶手段に相当し、車両用空調装置6の内気センサが温度検出手段に相当し、S100、S102が操作履歴記憶処理手段に相当する。
【符号の説明】
【0069】
1 ナビゲーション装置
2 無線基地局
3 電話局
5 管理サーバ
6 車両用空調装置
10 位置検出器
11 表示装置
12 スイッチ入力部
13 メモリ
14 音声出力部
15 地図データ入力装置
16 データ通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用空調装置を制御する機能を備えた車載装置であって、
車両の現在位置を特定するための現在位置情報を取得する現在位置情報取得手段と、
道路勾配を特定するための道路勾配情報を取得する道路勾配情報取得手段と、
前記現在位置情報および前記道路勾配情報に基づいて前記車両の走行先に上り勾配の区間が存在することを判定した場合、当該上り勾配の開始地点以降の予め定められた距離区間を1つの起伏区間として特定するとともに、当該起伏区間における頂上地点を特定する頂上地点特定手段と、
前記現在位置情報に基づいて前記車両が前記起伏区間に進入したことを判定した場合、前記車両用空調装置における冷媒を圧縮するコンプレッサをオフ制御するコンプレッサオフ制御手段と、
前記現在位置情報に基づいて前記車両が前記頂上地点に到達したことを判定した場合、前記コンプレッサをオン制御する第1のコンプレッサオン制御手段と、を備えたことを特徴とする車載装置。
【請求項2】
前記現在位置情報に基づいて前記車両が前記起伏区間の始点の手前の区間を含む一定距離区間に位置することを判定した場合、前記コンプレッサをオン制御する第2のコンプレッサオン制御手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記車両用空調装置に対する乗員の操作履歴を収集して記憶手段に記憶させる処理を実施する操作履歴記憶処理手段を備え、
前記頂上地点特定手段は、前記記憶手段に記憶された前記乗員の操作履歴に基づいて乗員の好みの温度設定を推定するとともに、推定した前記乗員の好みの温度設定が低いほど、区間長が短くなるように前記起伏区間の区間長を特定することを特徴とする請求項1または2に記載の車載装置。
【請求項4】
前記車両用空調装置は、車室内温度を検出する温度検出手段により検出された温度が予め設定された設定温度よりも高い上限制限温度に達すると車室内温度を低下させ、温度検出手段により検出された温度が設定温度よりも低い下限制限温度に達すると車室内温度を上昇させて、車室内温度が一定範囲内に維持されるように自動制御するようになっており、
前記車室内温度が、前記頂上地点特定手段により推定された乗員の好みの温度設定に適すように前記上限制限温度および前記下限制限温度の変更を指示する情報を前記車両用空調装置へ通知する制限温度変更通知手段と、を備えたことを特徴とする請求項3に記載の車載装置。
【請求項5】
前記制限温度変更通知手段は、前記推定手段により乗員の好み温度設定が高温であると推定された場合には上限制限温度とともに下限制限温度を上昇させ、乗員の好みの温度設定が低温であると推定された場合には上限制限温度とともに下限制限温度を低下させるように前記上限制限温度および前記下限制限温度の変更を指示する情報を通知することを特徴とする請求項4に記載の車載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−106671(P2012−106671A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258076(P2010−258076)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】