説明

車載運動器具

【課題】車室内での適度な運動を可能とする車載運動器具を提供する。
【解決手段】シート1は、リクライニング装置4によって背もたれ部3を回動させることで、背もたれ部3と座部2との間のリクライニング角度を調節可能である。リクライニング装置4は、背もたれ部3を前方にばね付勢する付勢手段と、リクライニング角度を固定するロック状態および当該固定を解除する解除状態を切替可能なロック手段とを有し、操作レバー5の引き上げ操作時にのみロック手段を解除状態とする。操作レバー5の引き上げ状態は、保持ボタン8が押操作されることで保持される。使用者Hにおいては、ロック手段を解除状態に保持した状態で、背中で背もたれ部3を押圧し、付勢手段のばね力に抗して背もたれ部3を後傾させることにより、腹部や背部の筋群を伸縮させる運動が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車等の車室内で使用される車載運動器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、幹線道路や高速道路の整備が進むことに伴い、長距離の移動手段として乗用車等の車両が利用される機会が多くなっている。また、たとえば都心部などでは、近距離の移動であっても渋滞により車両での移動時間が比較的長くなることが多々ある。
【0003】
このように車両での移動時間が比較的長時間になる場合、特に助手席や後部座席の同乗者においては、身体を動かす機会が殆どなく筋肉の収縮が殆ど行われないため、血液循環が悪化し、各部の筋肉に凝りを生じたり、むくみを生じたりする可能性がある。これらの症状を予防・緩和するための手段として、車載用のシートにマッサージ装置を組み込んだものが提供されている。
【0004】
一例としては、深部静脈血栓症の発生を予防するために、車室内のシートに着座した姿勢の乗員のふくらはぎをマッサージするマッサージ装置をシートに具備することが提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【0005】
ただし、この種のマッサージ装置では、所定のマッサージ効果は得られるものの、使用者が実際に運動する場合のように筋群を伸縮(緊張・弛緩)させるものではないため、筋群の強化など、実際の運動と同等の効果は期待できない。一方で、車両での移動時間を有効に利用するために、車室内でも適度な運動を行いたいという要望は従来からある。
【特許文献1】特開2004−216941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、標準的な乗用車等の車室内においては、人が立ち上がって歩き回るほどのスペースはなく、また、スポーツジムや住宅内で用いられる運動器具は大型のものが多いため、このような運動器具を車室内に持ち込んで運動することも困難である。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであって、車室内での適度な運動を可能とする車載運動器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、車室内に設置され使用者の臀部を支持する座部および使用者の背中に当接する背もたれ部を具備したシートからなり、背もたれ部が座部の後端部に設けた回動軸周りで回動することにより座部との間のリクライニング角度を調節可能であって、前記リクライニング角度を小さくする向きに背もたれ部をばね付勢する付勢手段と、前記リクライニング角度を固定するロック状態と前記固定を解除する解除状態が切替可能なロック手段と、ロック手段を解除状態に保持することで、使用者の背中で付勢手段のばね力に抗して背もたれ部を押圧可能とする保持手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、保持手段にてロック手段を解除状態に保持することで、背もたれ部が座部に対して回動可能になるから、この状態において、使用者は、付勢手段のばね力に抗して背中で背もたれ部を押圧し上半身を後方に倒すことにより腹部や背部の筋群を伸縮させることができ、また、付勢手段のばね力により腹部の筋群への負担を抑えながら上半身を起こすことができる。すなわち、車室内のシートを利用して車室内での適度な運動が可能になる。
【0010】
請求項2の発明は、使用者が車室内のシートに着座した姿勢で使用する車載運動器具であって、使用者の左右の足をそれぞれ載せる左右一対の足置台を備え、各足置台が上下の位置がそれぞれ変化することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、使用者の左右の足をそれぞれ載せた状態で左右一対の足置台の上下の位置を変化させることで、使用者においては、脚部の筋群を伸縮させてウォーキングと類似の効果を得ることができるので、車室内での適度な運動が可能になる。また、このように脚部の筋群を伸縮させることは、深部静脈血栓症の予防にもつながる。なお、足置台は、使用者の足による踏み込みを受けて上下位置が変化する構成であってもよいが、モータなどの動力を受けて自動的に上下位置が変化する構成であってもよい。
【0012】
請求項3の発明は、車室内に設置され使用者の臀部を支持する座部および使用者の背中に当接する背もたれ部を具備したシートからなり、座部のうち使用者の臀部に当接する座面を所定範囲内で傾斜させる駆動装置を備え、駆動装置が時間経過に伴って座面の傾斜角度を変化させることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、駆動装置にて座部の座面を所定範囲内で傾斜させ、時間経過に伴って座面の傾斜角度を変化させることにより、使用者の身体を揺動させることができるので、使用者においては上半身のバランスをとろうとして腹部や背部の筋群を伸縮させる運動が可能となる。また、使用者の上半身の揺動に伴い使用者の脚部に作用する自重が変化するので、使用者に膝の屈伸をほとんど行わせることなく、主に大腿部の筋群を緊張・弛緩させることができ、膝に負担を掛けることなく大腿部の筋群の強化が可能になる。すなわち、車室内のシートを利用して車室内での適度な運動が可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、車室内での適度な運動が可能になるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下の各実施形態で説明する車載運動器具は、乗用車等の車両に用いられ、車室内のシートに着座する使用者によって使用されるものである。以下では、後部座席に設けられた車載運動器具を一例として説明するが、本発明の車載運動器具は助手席や運転席にも設けることができるものである。なお、運転席に関しては、シフトレンジがパーキング(P)レンジにあるときのみ車載運動器具を利用できる構成として、走行中には車載運動器具を利用できないようにすることも考えられる。
【0016】
(実施形態1)
本実施形態の車載運動器具は、図2に示すように車室内に設けられ使用者の臀部を支持する座部2および使用者の背中に当接する背もたれ部3を具備したシート1からなるものであって、当該シート1の背もたれ部3を当該シート1の座部2に対してリクライニング可能(つまり、前後方向に傾動可能)とするリクライニング装置4と、リクライニング装置4を操作するための操作レバー5とを備えている。
【0017】
すなわち、背もたれ部3は、座部2の後端側に位置するリクライニング装置4に設けられた回動軸6回りで回動可能であって、リクライニング装置4の操作に従って座面(座部2の上面)2aとの間の角度(以下、リクライニング角度という)θを調節可能に構成されている。ここでは、リクライニング角度θの調節範囲は、90〜180度の間に制限されているものとする。したがって、リクライニング角度θを90度近くに調節した状態では、背もたれ部3が起き上がった状態となり、使用者は上半身を略直立させた姿勢でシート1に着座することができ、リクライニング角度θを大きくするに従って背もたれ部3が後方に傾倒し、使用者は上半身を後方に倒すことが可能になる。
【0018】
リクライニング装置4は、背もたれ部3をばね付勢する付勢手段(図示せず)と、背もたれ部3の回動を禁止するロック手段(図示せず)とを具備しており、常時は、ロック手段にて背もたれ部3の回動を禁止することでリクライニング角度θを固定している。付勢手段は、たとえば回動軸6の軸心を中心とする渦巻きばねからなり、背もたれ部3を前傾させる(リクライニング角度θを小さくする)向きにばね付勢する。
【0019】
ロック手段は、リクライニング角度θを固定するロック状態と、前記固定を解除する(つまり、背もたれ部3を回動可能とする)解除状態とを切替可能に構成されている。具体的な構成例を挙げると、たとえば回動軸6を中心として背もたれ部3と共に回動する歯車と、当該歯車の外周面に対向配置され当該歯車に噛合する歯列部材とを用い、歯列部材を歯車の半径方向に移動させることでロック状態と解除状態とが切り替えられる。ロック手段におけるロック状態および解除状態の切り替えは、操作レバー5の操作によって行われる。
【0020】
操作レバー5は、シート1の座部2側方に設けられ、後端部がシート1に枢支された構成を有し、常時は、先端部(前端部)が下方にばね付勢されている。本実施形態では、この操作レバー5が上方に引き上げられている間のみ、ロック手段が解除状態に切り替わるものとする。
【0021】
しかして、操作レバー5が引き上げられている間にはロック手段が解除状態となり、背もたれ部3を座部2に対して回動させることができるので、使用者は、操作レバー5を引き上げながら、背中で背もたれ部3を押圧したり付勢手段のばね力にて背もたれ部3を復帰(前傾)させたりすることにより、リクライニング角度θを調節可能となる。
【0022】
また、本実施形態では、シート1の座部2に、シート1に着座した使用者の足を載せるためのオットマン7が取り付けられている。オットマン7は、座部2の前端部回りで回動することにより、座部2の下方に収納された収納状態と、図2に2点鎖線で示すように略水平にまで持ち上げられた使用状態とが切替可能であって、この切替操作は図示しないオットマン用レバーによって為されるものとする。したがって、オットマン7が使用状態にあるとき、シート1に着座する使用者は足(膝下)をオットマン7に載せることによりリラックスした姿勢をとることができる。
【0023】
ところで、本実施形態の車載運動器具は、上記リクライニングの機構を利用して使用者に運動させるようにしたものであって、上述した構成に加えて、操作レバー5を引き上げた状態に保持する(つまり、ロック手段を解除状態に保持する)保持手段を有している。
【0024】
ここでは、保持手段は操作レバー5の後端部に設けられた保持ボタン8からなり、操作レバー5を引き上げた状態で当該保持ボタン8を押操作することにより操作レバー5が引き上げられた状態に保持される。この状態で再度保持ボタン8を押操作すると、操作レバー5の保持が解除され、操作レバー5は下方に復帰する。
【0025】
次に、上述した構成の車載運動器具を用いて使用者Hが運動する方法について図1を参照して説明する。なお、図1ではオットマン7を使用状態にして運動を行う例を示しているが、オットマン7を収納状態にしても同様の運動を行うことは可能である。
【0026】
使用者Hは、図1(a)に示すように車載運動器具としてのシート1に着座した状態で、操作レバー5を引き上げてリクライニング装置4のロック手段を解除状態とし、このとき保持ボタン8を押操作することでリクライニング装置4のロック手段を解除状態に保持する。これにより、背もたれ部3が座部2に対して回動可能になるので、使用者Hは、背中で背もたれ部3を押圧し、付勢手段のばね力に抗して背もたれ部3を後傾させる(リクライニング角度θを大きくする)ことにより、腹部や背部の筋群を伸縮させる運動が可能になる。
【0027】
図1(b)に示すように背もたれ部3を最後方にまで倒した後は、リクライニング装置4のロック手段を解除状態に保持したまま、使用者Hが上半身を起こすことで、背もたれ部3が前傾し(リクライニング角度θが小さくなり)、図1(a)の状態に復帰する。このとき、付勢手段のばね力が使用者Hの上半身を起こす向きに作用するため、使用者Hにおいては、付勢手段に補助されながら腹部の筋群への負担を小さく抑えながら上半身を起こすことができる。
【0028】
使用者Hは、上述した上半身の後傾動作(図1(a)の状態から図1(b)の状態への動作)と、上半身の前傾動作(図1(b)の状態から図1(a)の状態への動作)とを、必要に応じて交互に繰り返すことで運動することができる。運動を終了する際には、リクライニング角度θを所望の角度に調節し、保持ボタン8を押操作することで操作レバー5を下方に復帰させ、リクライニング装置4のロック手段をロック状態に切り替える。
【0029】
以上説明した上半身の後傾、前傾動作により、使用者Hは腹部や背部の筋群を伸縮させて適度な運動を行うことができる。しかも、上半身を起こす際には付勢手段のばね力が補助的に作用するので、運動能力の低い使用者Hであっても運動することが容易になる。さらに、本実施形態の車載運動器具は、車室内に設けられているシート1を利用して運動可能としたものであるから、車室内の見映えを悪くすることなく車室内に設置することが可能である。
【0030】
ここで、上記運動時における筋群への負担の大きさは付勢手段のばね力によって変化するので、付勢手段のばね力は上記運動に適した大きさに設定されることが望ましく、また、付勢手段のばね力の大きさを任意に調節できる手段を設けてもよい。
【0031】
また、背もたれ部3にマッサージ用の施療子を内蔵することでマッサージ機能をシート1に付加してもよく、この場合、上述した運動の後に使用者の上半身にマッサージを施すことで、血行を促進し筋群の疲労回復を早める効果が期待できる。
【0032】
(実施形態2)
本実施形態の車載運動器具は、図3に示すようにシート1に着座した姿勢の使用者Hの足元に配置される筐体9と、筐体9の上面からの高さが可変となる左右一対の足置台10とを備えている。なお、実施形態1と共通の構成要素については同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0033】
筐体9は、前後方向および左右方向に比べて上下方向の寸法が小さい薄箱状に形成されており、シート1に取り付けられたガイドレール11に沿って前後方向に移動することにより、座部2の下方の収納位置と、当該収納位置から前方に引き出された使用位置との間を移動可能に構成されている。この筐体9は、常時は収納位置に収納されているが、車載運動器具の使用時には使用者Hによって使用位置まで引き出される。
【0034】
足置台10は、筐体9の上面であって、着座姿勢にある使用者Hの左右の足HL,HRに対応する各位置にそれぞれ設けられている。各足置台10は、それぞれ板状に形成されており、使用者の足(足裏の全体)HL,HRが載る大きさに形成された上面を足置面10aとして、足置面10aに足裏を接触させるように使用者Hの足HL,HRを載せることで使用者Hの足HL,HR位置を規制する。ここでは摩擦係数の大きい材料ないし形状を足置台10の足置面10aに採用することにより、足置台10に載せた使用者Hの足HL,HRが滑ることを防止している。
【0035】
筐体9内部には、左右の各足置台10をそれぞれ支持し各足置台10の上下位置を可変とする支持装置(図示せず)が収納されている。支持装置は、たとえば周知のクランク機構を用いて成り、使用者Hの足HL,HRによる踏み込みを受けて左右の足置台10を交互に上下動させるように構成される。ここで、足置台10の移動量は、筐体9の上面からの高さが0cmとなる下限位置と筐体9の上面からの高さが十数cmとなる上限位置との間に制限されるものとする。この支持装置は、筐体9に設けた図示しない操作部を操作することにより、両方の足置10台を下限位置に位置させる待機モードと、いずれか一方の足置台10を上限位置に位置させる運動モードとを切替可能であって、筐体9を収納位置に収納する際には待機モードが選択されることとする。
【0036】
ここにおいて、足置台10は、上下位置が変化する際に、筐体9の上面に沿う面内での位置を変化させるものであってもよい。この場合、足置台10の上下位置の変化に伴い、支持装置にて当該足置台10を前後方向あるいは左右方向に移動させることが考えられる。また、支持装置は、各足置台10の後端部を支点として各足置台10をそれぞれ回動させることにより、その上下位置を変化させるものであってもよく、この場合には、足置台10の移動時に足置面10aの傾斜角度が変化するため、足置台10に載せた使用者Hの足首を屈伸することができる。
【0037】
次に、上述した構成の車載運動器具を用いて使用者Hが運動する方法について説明する。
【0038】
使用者Hは、シート1に着座した状態で車載運動器具の筐体9を使用位置まで引き出して、左足HLおよび右足HRを各足置台10にそれぞれ載せるとともに、操作部を操作して支持装置を運動モードに切り替える。このとき、いずれか一方の足置台(ここでは左側とする)10が上限位置にあるので、使用者Hは、当該足置台10を一方の足HLで踏み込むことにより下限位置にまで移動させることができる。これにより、他方の足置台10が下限位置から上限位置まで移動することとなり、他方の足HRが持ち上がる。続いて、使用者Hは、前記他方の足置台10を他方の足HRで踏み込むことにより下限位置にまで移動させる。これにより、前記一方の足置台10が上限位置に復帰することとなり、前記一方の足HLが持ち上がる。
【0039】
使用者Hは、上述した左右の足HL,HRによる踏み込み動作を交互に繰り返すことで、左右の足HL,HRを交互に上げ下げする運動を行うことができる。運動を終了する際には、操作部を操作して支持装置を待機モードに切り替え、筐体9を収納位置に収納する。
【0040】
以上説明した足の上げ下げにより、使用者Hは脚部の筋群を伸縮させてウォーキングと類似の適度な運動を行うことができ、血行の促進、筋群の強化を図ることができる。このように脚部の筋群を伸縮させることは、深部静脈血栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)の予防にもつながるため、長時間の乗車時などには特に有効である。さらに、本実施形態の車載運動器具は、常時はシート1の下方に収納されるものであるから、車室内の見映えを悪くすることなく車室内に設置することが可能である。
【0041】
また、支持装置は、モータなどの動力を用いて左右の足置台10を自動で交互に上下動させる構成としてもよい。この場合、使用者Hは自発的ないし能動的に運動することなく単に足置台10に足HL,HRを載せているだけでも、支持装置の駆動力を受けた足置台10の移動に伴い他動的に運動することができる。すなわち、使用者Hが自発的ないし能動的に行う運動に比べて使用者Hの負担が小さくなるため、運動を継続的に行うことが容易になる。
【0042】
なお、筐体9は車室の床に埋め込まれる構成であってもよい。
【0043】
(実施形態3)
本実施形態の車載運動器具は、図5に示すように車室内に設けられ使用者の臀部を支持する座部2および使用者の背中に当接する背もたれ部3を具備したシート1からなるものであって、当該シート1の座部2のうち使用者の臀部に当接する座面2aを所定範囲内で傾斜させる駆動装置13を備えている。なお、実施形態1と共通の構成要素については同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0044】
駆動装置13は、図5に示すように座部2に内蔵され、弾力性を有しポンプ(図示せず)からの空気の給排気に応じて膨張収縮する複数個の空気袋13aを有している。図5の例では、6個の空気袋13aが座面2aの前後方向に2列、左右方向に3列となるように配置されている。ここで、各空気袋13aとポンプとの間には、ポンプから送出される空気を各空気袋13aに分配する分配弁(図示せず)が設けられている。分配弁は、電磁弁等によってポンプからの空気を空気袋13aに給気する状態と、空気袋13aの空気を排気する状態とを各空気袋13aごとに個別に切り替え可能に構成されている。しかして、空気袋13aに空気が給気されると、当該空気袋13aは膨張して座面2aのうち当該空気袋13aに対応する部位を押し上げ、逆に、空気袋13aの空気が排気されると、当該空気袋13aは収縮して座面2aのうち当該空気袋13aに対応する部位を下げる。なお、空気袋13a内の空気は、空気袋13aに使用者の身体から作用する押圧力によって排気することが可能である。
【0045】
ここにおいて、駆動装置13は、ポンプおよび分配弁にそれぞれ制御信号を送ることによってポンプおよび分配弁の動作を制御する制御部(図示せず)を備えている。当該制御部には使用者からの操作入力を受け付ける操作入力部(図示せず)が接続されており、制御部は、当該操作入力部からの入力に応じて制御信号を生成することにより、ポンプおよび分配弁を制御して各空気袋13aにおける空気の給排気を個別に制御する。つまり、車載運動器具の運転、停止等の操作は操作入力部にて行うことができる。制御部においては複数の動作モードが設定されており、使用者は操作入力部の操作によってこれら複数の動作モードから所望の動作モードを選択して車載運動器具を動作させるものとする。ここでいう動作モードの例としては、各空気袋13aを所定の順番で膨張させることで座面2aを起伏させる動作モードや、各空気袋13aをランダムに膨張させることで座面2aを起伏させる動作モードなどがある。
【0046】
また、座部2の前端部には、半円弧状で両端が座部2に連結されたグリップ14が設けられており、使用者は、当該グリップ14を握持することで安定した姿勢で運動を行うことが可能になっている。
【0047】
なお、駆動装置13の電源は、車両のバッテリ(図示せず)から直接供給されるようにしてもよいし、イグニッションラインから分岐して供給されるようにしてもよい。前者の構成であれば、駆動装置13をイグニッションスイッチのオンオフに関わらず作動させることができ、後者の構成であれば、イグニッションスイッチがオンの場合にのみ駆動装置13を作動させることができる。
【0048】
次に、上述した構成の車載運動器具を用いて使用者が運動する方法について説明する。
【0049】
使用者は、車載運動器具としてのシート1に着座した状態で、背もたれ部3に背中を当接させないように、両手でグリップ14を握った前かがみの姿勢をとる。この状態で、操作入力部を操作して駆動装置13を作動させると、空気袋13aが膨張収縮して座面2aを起伏させ、座面2aが所定範囲内で傾斜する。このとき、座面2aの傾斜角度は制御部の動作モードに従って時間経過に伴い変化するので、シート1に着座した姿勢の使用者の上半身が揺動する。
【0050】
以上説明した上半身の揺動動作により、使用者は上半身のバランスをとろうとして腹部や背部の筋群(主に骨盤、背骨周りの筋群)を伸縮させることで適度な運動を行うことができる。また、使用者が足を床につけた状態では、使用者の上半身の揺動に伴い使用者の脚部に作用する自重が変化するので、使用者に膝の屈伸をほとんど行わせることなく、主に大腿部の筋群を緊張・弛緩させることができ、膝に負担を掛けることなく大腿部の筋群の強化が可能になる。さらに、本実施形態の車載運動器具は、車室内に設けられているシート1を利用して運動可能としたものであるから、車室内の見映えを悪くすることなく車室内に設置することが可能である。
【0051】
なお、座面2aを傾斜させるための駆動装置13は、上述したように空気袋13aを用いたものに限らず、たとえばモータを動力源として座部のフレーム(図示せず)を変形させることにより座面2aを傾斜させるものであってもよい。
【0052】
また、上記各実施形態の構成を組み合わせて複合的な運動が可能な車載運動器具を構成してもよく、これにより、使用者は車室内で様々な運動を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態1の使用例を示し、(a)は背もたれ部を起こした状態、(b)は背もたれ部を倒した状態の概略側面図である。
【図2】同上の構成を示す概略側面図である。
【図3】本発明の実施形態2の構成を示す概略側面図である。
【図4】本発明の実施形態3の構成を示す要部の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
1 シート
2 座部
3 背もたれ部
4 リクライニング装置
5 操作レバー
6 回動軸
8 保持ボタン(保持手段)
10 足置台
13 駆動装置
H 使用者
HL,HR 足


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に設置され使用者の臀部を支持する座部および使用者の背中に当接する背もたれ部を具備したシートからなり、背もたれ部は座部の後端部に設けた回動軸周りで回動することにより座部との間のリクライニング角度を調節可能であって、前記リクライニング角度を小さくする向きに背もたれ部をばね付勢する付勢手段と、前記リクライニング角度を固定するロック状態と前記固定を解除する解除状態が切替可能なロック手段と、ロック手段を解除状態に保持することで、使用者の背中で付勢手段のばね力に抗して背もたれ部を押圧可能とする保持手段とを備えることを特徴とする車載運動器具。
【請求項2】
使用者が車室内のシートに着座した姿勢で使用する車載運動器具であって、使用者の左右の足をそれぞれ載せる左右一対の足置台を備え、各足置台は上下の位置がそれぞれ変化することを特徴とする車載運動器具。
【請求項3】
車室内に設置され使用者の臀部を支持する座部および使用者の背中に当接する背もたれ部を具備したシートからなり、座部のうち使用者の臀部に当接する座面を所定範囲内で傾斜させる駆動装置を備え、駆動装置は時間経過に伴って座面の傾斜角度を変化させることを特徴とする車載運動器具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−105448(P2010−105448A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277393(P2008−277393)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】