説明

車輌灯制御装置

【課題】車輌に設けられた既存の車輌灯を用いて警告を行うことにより、コストの増大を抑制して、車輌の内外への警告を行うことができる車輌灯制御装置を提供する。
【解決手段】車輌灯制御装置1は、障害物センサ23により車輌周辺の障害物までの距離を検知し、障害物までの距離が近いほど車輌の前照灯、尾灯、後退灯、方向指示灯及び車内灯等のランプ2の照度を増加させ、障害物までの距離が遠いほどランプ2の照度を低減させる。車輌灯制御装置1は、速度センサ21が検出する車輌の走行速度を取得し、走行速度が速いほど障害物までの距離が遠くてもランプ2の照度を高める。車輌灯制御装置1は、車輌周辺の障害物を検知した際にランプ2が消灯状態の場合には、ランプ2を点灯させた後、ランプ2の照度調整を行う。また車輌灯制御装置1は、電源からランプ2への電力供給をPWM制御し、デューティ比を調整することでランプ2の照度調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌内外に設けられた前照灯、尾灯、後退灯、方向指示灯及び車内灯等の車輌灯の点灯制御を行う車輌灯制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌にはその内外に多数のランプ(ライト)が設けられており、車輌の乗員によるスイッチ操作などに応じてランプの点灯/消灯の制御が行われる。例えば、車輌の前部にはヘッドランプ又はフォグランプ等の前照灯が設けられ、車輌の後部にはテールランプ又はブレーキランプ等の尾灯、及びバックランプなどの後退灯が設けられ、車輌の前後にはウインカーの方向指示灯が左右にそれぞれ設けられ、車輌内にはルームランプ又はマップランプ等の車内灯が設けられている。
【0003】
また近年の車輌には、車輌周辺に存在する他車輌、歩行者又は道路上の設置物等の物体(障害物)を検知する障害物検知装置が搭載されている場合がある。障害物検知装置には、例えば超音波などを出射し、その反射波を検出することによって、障害物の検知を行う構成のものがあり、また例えば車載カメラが撮像した車輌周辺の画像から画像処理により障害物の検出を行う構成のものがある。障害物検知装置によって車輌周辺に障害物が検知された場合、ブザーなどによる警告音の出力又は車内のディスプレイなどへの警告メッセージの表示等の方法により、車輌の運転者に対して警告を与えることができる。
【0004】
特許文献1においては、自車輌又は他車輌の少なくとも一方の乗員に、車輌の衝突予知の警報を瞬時に且つ確実に認知させ、更には車輌の衝突方向を迅速に且つ確実に認知させることができる車輌用衝突警報装置が提案されている。この車輌用衝突警報装置は、車輌のウインドウ、ルームミラー及びサイドミラーにそれぞれ発光装置を設け、車輌の衝突を予知した場合に衝突方向の発光装置を発光させることによって、車輌内及び車輌外への報知を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−314016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、車輌周辺の障害物を検知した場合に、ブザーなどにより警告音を出力する構成では、例えば車輌のオーディオ装置にて楽曲の再生などが行われていると、運転者が警告音を聞き逃す虞がある。また車輌周辺の障害物を検知した場合に、ディスプレイなどへ警告メッセージを表示する構成では、運転者は必ずしもディスプレイを見ているとは限らないため、ディスプレイに表示された警告メッセージを見逃す虞がある。また、警告対象は車内の運転者などのみであり、車外への警告を行うことはできない。
【0007】
また特許文献1に記載の車輌用衝突警報装置は、車輌のウインドウ、ルームミラー及びサイドミラーに設けられた発光装置を用いて警告を行う構成であるが、これらの発光装置は従来の車輌に搭載されているものではない。このため、車輌に多数の発光装置を新たに設ける必要があり、コストが増大するという問題がある。また車輌中における機器の配設スペース及びケーブルの敷設スペース等は限られているため、多数の発光装置を車輌に搭載し、各発光装置へ接続する電源ケーブル及び点灯制御用の信号ケーブル等の多数のケーブルを敷設することは容易ではない。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、車輌に設けられた既存の車輌灯を用いて警告を行うことにより、コストの増大を抑制して、車輌の内外への警告を行うことができる車輌灯制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る車輌灯制御装置は、車輌の周辺に存在する物体までの距離を検知する検知手段と、該検知手段が検知した物体までの距離に応じて、前記車輌に設けられた車輌灯の照度を調整する調整手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る車輌灯制御装置は、前記調整手段が、前記物体までの距離が近いほど前記車輌灯の照度を増加させ、前記物体までの距離が遠いほど前記車輌灯の照度を低減させるようにしてあることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る車輌灯制御装置は、前記車輌の走行速度を取得する速度取得手段を更に備え、前記調整手段は、前記速度取得手段が取得した走行速度に応じて、前記車輌灯の照度を調整するようにしてあることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る車輌灯制御装置は、前記車輌のブレーキに対する操作量を取得するブレーキ操作量取得手段を更に備え、前記調整手段は、前記ブレーキ操作量取得手段が取得した操作量に応じて、前記車輌灯の照度を調整するようにしてあることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る車輌灯制御装置は、前記調整手段が、前記検知手段が前記車輌の周辺に物体が存在することを検知した際に前記車輌灯が消灯状態の場合、該車輌灯を点灯して、照度の調整を行うようにしてあることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る車輌灯制御装置は、前記車輌灯には、前照灯、尾灯、後退灯、方向指示灯及び車内灯を含み、前記調整手段は、前記前照灯、尾灯、後退灯、方向指示灯及び車内灯の全てを点灯するようにしてあることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る車輌灯制御装置は、前記調整手段が、電源からの電力を断続的に供給して前記車輌灯を点灯するようにしてあり、電力の供給/非供給の比率を調整することにより、前記車輌灯の照度を調整するようにしてあることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る車輌灯制御装置は、前記電源の出力電圧値を検出する電圧検出手段を更に備え、前記調整手段は、前記電圧検出手段が検出した出力電圧値に応じて、前記車輌灯の照度を調整するようにしてあることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る車輌灯制御装置は、前記制御手段が、電源から前記車輌灯へ供給する電力の電圧値を調整することにより、前記車輌灯の照度を調整するようにしてあることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、他車輌、歩行者又は道路上の設置物等の物体が車輌の周辺に存在するか否かを検知すると共に、車輌周辺に存在する物体までの距離を検知することができる検知手段を車輌に搭載する。車輌の前照灯、尾灯、後退灯、方向指示灯及び/又は車内灯等の車輌灯の点灯を制御する車輌灯制御装置は、検知手段が検知した物体までの距離に応じて、車輌灯の照度(明るさ)を調整する。
これにより例えば、後続車の運転手などが車輌灯の点灯を確実に認識でき、本発明の車輌灯制御装置を有する車輌が急停車するなどの虞を事前に察知することができる。即ち、周辺の他車輌又は歩行者等に対する警告を行うことができる。
また例えば、車輌灯制御装置が車内灯の点灯制御を行う構成の場合には、車内灯の照度が変化することによって、この車輌の運転手に警告を与えることができる。
なお、本発明の車輌灯制御装置は、既存の車輌灯を用いて警告を行う構成であるため、コストの増大を抑制することができる。
【0019】
また、本発明においては、車輌から物体までの距離が近いほど車輌灯の照度を増加させ、距離が遠いほど車輌灯の照度を低減させる。これにより、物体までの距離が近く、車輌とこの物体との衝突などの可能性が高い場合には、車輌灯の照度を高めることができる。よって、車輌灯による車輌の内外への警告を効果的に行うことができる。
【0020】
また、本発明においては、車輌に搭載された車速センサなどにて検出される走行速度の情報を車輌灯制御装置が取得し、取得した走行速度に応じて車輌灯の照度を調整する。車輌が高速走行を行っている際には、車輌周辺に存在する物体との衝突の危険性が高まるため、例えば走行速度が速いほど車輌灯の照度を高める、また例えば走行速度が速いほど物体までの距離が遠くても車輌灯の照度をたかめる等の照度調整を行うことによって、車輌灯による車輌の内外への警告を効果的に行うことができ、事故を未然に防止することができる。
【0021】
また、本発明においては、ブレーキに対する運転者の操作量を検出するセンサが車輌に搭載されている場合、このセンサが検出するブレーキの操作量を車輌灯制御装置が取得し、取得したブレーキの操作量に応じて車輌灯の照度を調整する。車輌の運転者がブレーキを強く踏んだ場合(操作量が大きい場合)には、周辺に存在する物体に車輌が衝突するなどの虞があるため、例えばブレーキの操作量が大きいほど車輌灯の照度を高めるなどの照度調整を行うことによって、車輌灯による車輌外への警告を確実に行うことができる。
【0022】
また、本発明においては、車輌の周辺に物体が存在することを検知した際に車輌灯が消灯状態の場合には、車輌灯制御装置はまず消灯状態の車輌灯を点灯させた後、この車輌灯の照度を調整する。これにより、運転者が車輌灯を点灯させる操作を行っていない場合であっても、車輌灯を用いた車輌内外への警告を確実に行うことができる。
【0023】
また、本発明においては、車輌灯制御装置が制御する車輌灯には、前照灯、尾灯、後退灯、方向指示灯及び車内灯を含み、車輌灯制御装置は、これらの車輌灯の全てを点灯させて照度の調整を行う。多数の車輌灯を点灯させて警告を行うことによって、車輌灯を用いた警告をより効果的に行うことができる。
【0024】
また、本発明においては、バッテリ又はオルタネータ等の電源からの電力を断続的に車輌灯へ供給する、例えば車輌灯への電力供給をPWM(Pulse Width Modulation)制御により行う構成とする。このとき車輌灯制御装置は、電源から車輌灯への電力の供給/非供給の比率(所謂、デューティ比)を調整することによって、車輌灯の照度制御を行う。これにより車輌灯の照度の増減を簡単且つ確実に行うことができると共に、車輌灯による電力消費を低減することができる。
【0025】
また、本発明においては、電源の出力電圧値を検出し、この電圧値に応じて車輌灯制御装置が車輌灯の照度を調整する。例えば、バッテリ電圧の低下などにより電源の出力電圧値が低下した場合、車輌灯の照度が低下する虞がある。即ち、車輌灯の照度は電源の出力電圧値に応じて変動する虞がある。そこで車輌灯制御装置が電源の出力電圧値に応じた車輌灯の照度の調整を行うことによって、電源の出力電圧値の変動に対して照度を一定に保つことが可能となり、車輌周辺の物体までの距離などに応じて車輌灯の照度を調整する場合に、車輌灯による警告をより確実に行うことができる。
【0026】
また、本発明においては、電源から車輌灯へ供給する電力の電圧値を調整することによって、車輌灯の照度制御を行う。これにより車輌灯の照度の増減を簡単且つ確実に行うことができる。また電源電圧を昇圧する回路を用いることによって、車輌灯の照度をより高めることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明による場合は、車輌周辺に存在する物体までの距離に応じて車輌灯の照度を調整する構成とすることにより、車輌と物体との距離が近づいて事故などが発生する虞がある場合に、車輌灯の照度を増加させて後続車の運転手などへ車輌灯による警告を確実に行うことができ、車内灯の照度変化により運転者へ警告を行うことができる。また、既存の車輌灯を用いて警告を行う構成とすることによって、コストの増大を抑制することができる。よって、本発明の車輌灯制御装置は、コストの増大を抑制しつつ、車輌の内外への警告を確実に行って、車輌の事故発生を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1に係る車輌灯制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る車輌灯制御装置が行うランプの照度調整を説明するための模式図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る車輌灯制御装置が行うランプの照度調整処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態1の変形例に係る車輌灯制御装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る車輌灯制御装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る車輌灯制御装置の構成を示すブロック図である。図において1は、車輌(図示は省略する)に搭載されたランプ(車輌灯)2の点灯/消灯及び点灯時の照度を制御する車輌灯制御装置である。ランプ2は、ヘッドランプ若しくはフォグランプ等の前照灯、テールランプ若しくはブレーキランプ等の尾灯、バックランプなどの後退灯、ウインカーなどの方向指示灯、又は、ルームランプ若しくはマップランプ等の車内灯などの車輌に搭載された種々の車輌灯である。
【0030】
車輌灯制御装置1は、車輌に搭載されたオルタネータ5及びバッテリ6等の電源からランプ2への電力供給経路中に配されており、電源からランプ2への電力の供給/非供給の切り替え、及び電力の供給量の制御を行うことによって、ランプ2の点灯制御を行う。オルタネータ5は、車輌のエンジン(図示は省略する)の動作に伴って発電を行う発電器である。またバッテリ6は、オルタネータ5が発電した電力を蓄積するものであり、車輌のエンジン停止時にはランプ2及びその他の車載機器へ蓄積した電力を供給する。
【0031】
車輌灯制御装置1は、速度センサ21、点灯スイッチ22及び障害物センサ23から与えられる情報に応じてランプ2の点灯制御を行っている。速度センサ21は、車輌の適所に搭載された走行速度を検出するセンサであり、検出した走行速度を車輌灯制御装置1へ通知する。点灯スイッチ22は、車輌の運転席近傍に搭載され、車輌の運転者によるランプ2の点灯/消灯操作を受け付けるためのスイッチであり、運転者による操作状態(即ち、スイッチのオン/オフ状態)を車輌灯制御装置1へ通知する。障害物センサ23は、例えば車輌の前後左右の四隅に搭載され、超音波などを出射してその反射波を検知することにより、車輌周辺に他車輌、歩行者又は道路上の設置物等の障害物が存在しているか否か、及び障害物が存在していればその障害物までの距離を検知し、検知結果を車輌灯制御装置1へ通知する。
【0032】
また車輌灯制御装置1は、制御部11、電力供給切替部12及び電圧計13等を備えて構成されている。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置、及びRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等のメモリ素子等を有して構成されており、車輌灯に係る種々の演算処理及び電力供給切替部12の動作の制御処理を行う。
【0033】
電力供給切替部12は、制御部11から与えられる制御信号に応じてオルタネータ5及びバッテリ6の電源からランプ2への電力の供給/非供給を切り替えるものである。電力供給切替部12は、例えば電源及びランプ2間の電力供給経路中に配されたスイッチング素子などにより実現され、制御部11からの制御信号に応じてスイッチング素子のオン/オフを切り替えて電力供給経路の接続/遮断を行うことにより、電力の供給/非供給を切り替えることができる。電圧計13は、オルタネータ5及びバッテリ6の電源の出力電圧を測定し、測定結果の電圧値を制御部11へ通知する。
【0034】
車輌灯制御装置1の制御部11には、電圧計13が測定した電源の出力電圧値と、速度センサ21が検出した車輌の走行速度と、点灯スイッチ22のオン/オフ状態と、障害物センサ23による障害物の有無及び障害物までの距離の検知結果とが入力されており、これらの情報に基づいてランプ2の点灯制御を行っている。以下に、車輌灯制御装置1が行うランプ2の制御について詳細に説明する。
【0035】
制御部11は、点灯スイッチ22のオン/オフ状態を取得し、点灯スイッチ22がオン状態であればランプ2を点灯させ、点灯スイッチ22がオフ状態であればランプ2を消灯させる制御を行う。このとき制御部11は、電圧計13が測定した電源の出力電圧値に応じたデューティ比のパルス信号を制御信号として電力供給切替部12へ出力する。電力供給切替部12は、制御部11から与えられた制御信号に応じて電源からランプ2への電力供給経路の接続/遮断(スイッチング素子のオン/オフ)を行うことによって、デューティ比に応じた電力供給量にて、即ちデューティ比に応じた照度にてランプ2を点灯させる。
【0036】
車輌灯制御装置1が行う制御信号のデューティ比に応じたランプ2の点灯制御は、所謂PWM方式の制御方法である。このとき制御部11が出力する制御信号のデューティ比は、下記の(式1)にて算出することができる。なお(式1)において、変数Vは電圧計13が測定した電源の出力電圧値であり、Vaは定数である。
デューティ比 = (Va/V)2 …(式1)
【0037】
制御部11が(式1)にて算出されるデューティ比の制御信号を出力することにより、電源の出力電圧値が変動した場合であっても、ランプ2へはVa[V]の直流電圧印加に相当する電力が安定して供給される。即ち、電圧計13が検出する出力電圧値Vが減少した場合には、制御部11が出力する制御信号のデューティ比が増加し、また、出力電圧値Vが増加した場合には、制御信号のデューティ比が減少するため、ランプ2への供給電力量が略一定に保たれる。例えばVa=12に設定された場合、電源の出力電圧値の変動の影響を受けることなく、ランプ2は12Vの直流電圧が印加された場合と同等の照度で点灯する。
【0038】
また、車輌灯制御装置1は、障害物センサ23により車輌周辺に障害物が検知された場合に、ランプ2の照度を調整する処理を行う。なお、障害物センサ23により障害物が検知された場合には、点灯スイッチ22がオフ状態であっても、車輌制御装置1はランプ2を点灯させ、照度の調整を行う。
【0039】
図2は、本発明に係る車輌灯制御装置1が行うランプ2の照度調整を説明するための模式図であり、障害物センサ23が検知した障害物との距離を横軸とし、ランプ2の照度を縦軸としたグラフを示してある。また、車輌灯制御装置1は、速度センサ21が検出する車輌の走行速度に応じてランプ2の照度調整のパターンを変更するようにしてあり、図2(a)には走行速度が60km/h未満の場合を示し、図2(b)には走行速度が60km/h以上の場合を示してある。
【0040】
速度センサ21が検出した車輌の走行速度が60km/h未満の場合、車輌灯制御装置1は、障害物センサ23が検知した障害物との距離が2.5m以下であるか、更には1m以下であるかを判定し、この判定結果に応じてランプ2の照度を調整する。例えば、車輌灯制御装置1は、障害物との距離が2.5mより遠い場合、12Vの直流電圧印加に相当する照度でランプ2を点灯させるべく、上述の(式1)においてVa=12に設定したデューティ比の制御信号を制御部11から電力供給切替部12へ出力する。また例えば、車輌灯制御装置1は、障害物との距離が2.5m以下であり且つ1mより遠い場合、13Vの直流電圧印加に相当する照度でランプ2を点灯させるべく、上述の(式1)においてVa=13に設定したデューティ比の制御信号を制御部11から電力供給切替部12へ出力する。また例えば、車輌灯制御装置1は、障害物との距離が1m以下の場合、デューティ比=1(100%)の制御信号を制御部11から電力供給切替部12へ出力する。
【0041】
また、速度センサ21が検出した車輌の走行速度が60km/h以上の場合、車輌灯制御装置1は、障害物センサ23が検知した障害物との距離が4.5m以下であるか、更には2m以下であるかを判定し、この判定結果に応じてランプ2の照度を調整する。例えば、車輌灯制御装置1は、障害物との距離が4.5mより遠い場合、12Vの直流電圧印加に相当する照度でランプ2を点灯させるべく、上述の(式1)においてVa=12に設定したデューティ比の制御信号を制御部11から電力供給切替部12へ出力する。また例えば、車輌灯制御装置1は、障害物との距離が4.5m以下であり且つ2mより遠い場合、13Vの直流電圧印加に相当する照度でランプ2を点灯させるべく、上述の(式1)においてVa=13に設定したデューティ比の制御信号を制御部11から電力供給切替部12へ出力する。また例えば、車輌灯制御装置1は、障害物との距離が2m以下の場合、デューティ比=1(100%)の制御信号を制御部11から電力供給切替部12へ出力する。
【0042】
このように、車輌灯制御装置1は、障害物センサ23が検知した障害物との距離が短くなるほどに、ランプ2の照度を増加させるよう制御信号のデューティ比を段階的に増加させる。これにより、ランプ2を車内灯とすれば、車輌の運転者に障害物の接近を車内灯の点灯及び車内灯の照度の変化により警告することができる。またランプ2が車内又は車外のいずれのものであっても、後続車などの他車輌に対して、この車輌が障害物に接近しており、急停車などを行う可能性があることを警告することができる。
【0043】
また車輌灯制御装置1は、車輌の高速走行時と低速走行時とでランプ2の照度を異なるタイミングで調整する。即ち車輌灯制御装置1は、低速走行時と比較して、高速走行時においては障害物との距離が遠い段階でランプ2の照度を増加させる。これにより、車輌が高速走行している際に障害物の存在を運転者へ速やかに警告することができ、周辺の他車輌に対して速やかに警告することができる。
【0044】
なお具体的には、車輌灯制御装置1は、速度センサ21が検出する車輌の走行速度と、障害物センサ23が検知する障害物までの距離とに基づいて、上述の(式1)の定数Vaを設定することにより、図2に示すランプ2の照度調整を行っている。このために、車輌灯制御装置1の制御部11は、走行速度及び障害物までの距離と、定数Vaの値とが対応付けられたテーブル情報などを予めROMなどに記憶している。
【0045】
図3は、本発明の実施の形態1に係る車輌灯制御装置1が行うランプ2の照度調整処理の手順を示すフローチャートであり、車輌灯制御装置1の制御部11が行う処理である。車輌灯制御装置1の制御部11は、まず、速度センサ21が検出する車輌の走行速度を取得し(ステップS1)、電圧計13が測定する電源の電圧値を取得し(ステップS2)、点灯スイッチ22のスイッチ状態を取得し(ステップS3)、障害物センサ23による障害物の有無及び障害物までの距離の検知結果を取得する(ステップS4)。
【0046】
次いで、制御部11は、ステップS4にて取得した障害物センサ23の検知結果から、車輌の周辺に障害物が存在するか否かを判定する(ステップS5)。障害物が存在しない場合(S5:NO)、制御部11は、ステップS3にて取得した点灯スイッチ22のスイッチ状態に応じたランプ2の点灯制御(点灯スイッチ22がオン状態の場合にランプ2を点灯し、オフ状態の場合にランプ2を消灯する制御)を行い(ステップS6)、ステップS1へ処理を戻して、上述の処理を繰り返し行う。
【0047】
障害物が存在する場合(S5:YES)、制御部11は、ランプ2が既に点灯状態であるか否かを更に判定する(ステップS7)。ランプ2が点灯状態でない場合(S7:NO)、即ちランプ2が消灯状態の場合、制御部11は、ランプ2を点灯して(ステップS8)、ステップS9へ処理を進める。ランプ2が点灯状態の場合(S7:YES)、制御部11は、ステップS9へ処理を進める。
【0048】
次いで、制御部11は、上述の(式1)に基づくデューティ比の算出を行う(ステップS9)。このとき制御部11は、ステップS1にて取得した車輌の走行速度と、ステップS4にて取得した障害物までの距離とを基に、図2に示した対応関係から、(式1)の定数Vaの値を設定し、ステップS2にて取得した電源の電圧値を(式1)の変数Vに代入することによってデューティ比を算出する。
【0049】
制御部11は、算出したデューティ比の制御信号を電力供給切替部13へ出力することによってランプ2の照度調整を行う(ステップS10)。その後、制御部11は、例えば車輌のイグニッションスイッチがオフ操作されるなど、ランプ2の照度調整処理を終了させる操作がなされたか否かを判定し(ステップS11)、終了操作がなされていない場合(S11:NO)、ステップS1へ処理を戻して上述の処理を繰り返し行い、また、終了操作がなされた場合(S11:YES)、ランプ2の照度調整処理を終了する。
【0050】
以上の構成の車輌灯制御装置1においては、障害物センサ23により車輌周辺の障害物までの距離を検知し、障害物までの距離が近いほどランプ2の照度を増加させ、障害物までの距離が遠いほどランプ2の照度を低減させる構成とすることにより、後続車の運転手などがランプ2の点灯を確実に認識でき、車輌灯制御装置1を有する車輌が急停車するなどの虞を事前に察知することができると共に、車輌灯制御装置1が車内灯の点灯制御を行う構成の場合には、ランプ2の照度が変化することによって、障害物の存在を車輌の運転手に警告することができる。またランプ2には、車輌のヘッドランプ若しくはフォグランプ等の前照灯、テールランプ若しくはブレーキランプ等の尾灯、バックランプなどの後退灯、ウインカーなどの方向指示灯、又は、ルームランプ若しくはマップランプ等の車内灯など、既存の車輌灯を用いて警告を行う構成とすることにより、コストの増大を抑制することができる。
【0051】
また、車輌が高速走行を行っている際には、車輌周辺の障害物との衝突の危険性が高まるため、速度センサ21が検出する車輌の走行速度を車輌灯制御装置1が取得し、走行速度が速いほどランプ2の照度を高める、又は走行速度が速いほど障害物までの距離が遠くてもランプ2の照度を高める等の照度調整を行うことによって、ランプ2による車輌の内外への警告を効果的に行うことができ、事故を未然に防止することができる。
【0052】
また、障害物センサ23により車輌周辺の障害物を検知した際にランプ2が消灯状態の場合には、車輌灯制御装置1は、まず消灯状態のランプ2を点灯させた後、このランプ2の照度調整を行う構成とすることにより、運転者がランプ2を点灯させる操作を行っていない場合であっても、ランプ2を用いた車輌内外への警告を確実に行うことができる。
【0053】
また、車輌灯制御装置1が制御するランプ2には車輌の前照灯、尾灯、後退灯、方向指示灯及び車内灯を含み、車輌灯制御装置1はこれらの全てのランプ2を点灯させて照度調整を行う。多数のランプ2を点灯させて警告を行うことによって、ランプ2を用いた警告をより効果的に行うことができる。
【0054】
また、車輌灯制御装置1は、オルタネータ5及びバッテリ6からランプ2への電力供給をPWM制御し、デューティ比を調整することでランプ2の照度調整を行う構成とすることにより、ランプ2の照度の増減を簡単且つ確実に行うことができると共に、ランプ2による電力消費を低減することができる。また、車輌灯制御装置1は、オルタネータ5及びバッテリ6の電源の電圧値を電圧計13にて測定し、この電圧値に応じて(式1)に基づくデューティ比を算出する構成とすることにより、例えばバッテリ6の電圧低下などにより電源の電圧値が低下した場合にランプ2の照度が低下する虞があるが、電圧値の低下に応じてデューティ比を高めることができ、電源の電圧値の変動に対してランプ2の照度を一定に保つことができ、ランプ2による警告をより確実に行うことができる。
【0055】
なお、本実施の形態においては、障害物センサ23が超音波の出射及び反射波の検知により障害物を検知する構成としたが、これに限るものではなく、例えばカメラを用いて車輌周辺を撮像し、撮像により得られた画像に対する画像処理を行って障害物を検知する構成としてもよく、その他の構成としてもよい。また、車輌灯制御装置1が電圧計13を内部に備える構成としたが、これに限るものではなく、速度センサ21、点灯スイッチ22及び障害物センサ23と同様に、車輌灯制御装置1の外部に搭載された電圧計から測定結果を取得する構成としてもよい。また、速度センサ21、点灯スイッチ22及び障害物センサ23を車輌灯制御装置1の内部に備える構成としてもよい。また、速度センサ21、点灯スイッチ22及び障害物センサ23からの情報が車輌灯制御装置1へそれぞれ直接的に入力される構成としたが、これに限るものではなく、CAN(Controller Area Network)又はLIN(Local Interconnect Network)等のネットワークを介して速度センサ21、点灯スイッチ22及び障害物センサ23と車輌灯制御装置1とが情報の送受信を行う構成としてもよい。
【0056】
また、図1においてはランプ2を1つのみ図示してあるが、これに限るものではなく、車輌灯制御装置1が制御するランプ2は複数であってよく、この場合に車輌灯制御装置1は複数のランプ2に対応して電力供給切替部12を複数備え、制御部11が各電力供給切替部12へ制御信号を与える構成とすればよい。また、図2に示した走行速度及び障害物まで距離と、ランプ2の照度との対応関係は一例であって、これに限るものではない。
【0057】
(変形例)
図4は、本発明の実施の形態1の変形例に係る車輌灯制御装置1aの構成を示すブロック図である。変形例に係る車輌灯制御装置1aは、車輌のブレーキに対する運転者の操作量を検知するブレーキセンサ24から検知結果が与えられており、ブレーキの操作量に応じてランプ2の照度調整を行うことができる。例えば、車輌灯制御装置1aは、上述の(式1)に基づいてデューティ比の算出を行う際に、ブレーキの操作量が閾値を超えるか否かを判定し、閾値を超えた場合には(式1)の定数Vaの値を10%増してデューティ比を算出する。
【0058】
これにより車輌灯制御装置1aは、ブレーキの操作量が大きい場合にランプ2の照度を増加させることができる。このため、車輌の運転者がブレーキを強く踏んだ場合(ブレーキの操作量が閾値を超えた場合)には、車輌周辺に存在する障害物に車輌が衝突するなどの虞があるが、車輌灯制御装置1aがブレーキの操作量が大きいほどランプ2の照度を高めることによって、車輌灯による車輌外への警告を確実に行うことができる。
【0059】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2に係る車輌灯制御装置201の構成を示すブロック図である。実施の形態2に係る車輌灯制御装置201は、実施の形態1に係る車輌灯制御装置1が備える電力供給切替部12に代えて、DC/DCコンバータ212を備えている。DC/DCコンバータ212は、オルタネータ5及びバッテリ6の電源から入力された直流電力を、制御部211の制御に応じた電圧値の直流電力に変換してランプ2へ供給するものである。
【0060】
制御部211は、電圧計13が測定した電源の電圧値、速度センサ21が検出した車輌の走行速度、点灯スイッチ22の操作状態、及び障害物センサ23の検知結果に応じて、DC/DCコンバータ212の出力電圧値を決定する。このとき制御部211は、図2に示した対応関係に基づいて走行速度及び障害物までの距離から出力電圧値を決定することができる。制御部211は、決定した出力電圧値の直流電力を出力するように、DC/DCコンバータ212へ制御信号を与えてその動作を制御する。
【0061】
また制御部211は、電圧計13が測定した電圧値(DC/DCコンバータ212への入力電圧値に相当する)に応じて、DC/DCコンバータ212の制御を行う。即ち制御部211は、電源の電圧値が変動した場合であっても、DC/DCコンバータ212の出力電圧値が変動しないように、DC/DCコンバータ212の制御を行う。
【0062】
以上の構成の実施の形態2に係る車輌灯制御装置201は、DC/DCコンバータ212を用いてランプ2の点灯制御及び照度調整を行う構成としても、実施の形態1に係る車輌灯制御装置1と同様の点灯制御及び照度調整を行うことができ、同様の効果を得ることができる。
【0063】
なお、実施の形態2に係る車輌灯制御装置201のその他の構成は、実施の形態1に係る車輌灯制御装置1の構成と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0064】
1、1a 車輌灯制御装置
2 ランプ(車輌灯)
5 オルタネータ
6 バッテリ
11 制御部(調整手段、速度取得手段、ブレーキ操作量取得手段)
12 電力供給切替部
13 電圧計(電圧検出手段)
21 速度センサ
22 点灯スイッチ
23 障害物センサ(検知手段)
24 ブレーキセンサ
201 車輌灯制御装置
211 制御部
212 DC/DCコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌の周辺に存在する物体までの距離を検知する検知手段と、
該検知手段が検知した物体までの距離に応じて、前記車輌に設けられた車輌灯の照度を調整する調整手段と
を備えること
を特徴とする車輌灯制御装置。
【請求項2】
前記調整手段は、
前記物体までの距離が近いほど前記車輌灯の照度を増加させ、
前記物体までの距離が遠いほど前記車輌灯の照度を低減させるようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載の車輌灯制御装置。
【請求項3】
前記車輌の走行速度を取得する速度取得手段を更に備え、
前記調整手段は、前記速度取得手段が取得した走行速度に応じて、前記車輌灯の照度を調整するようにしてあること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車輌灯制御装置。
【請求項4】
前記車輌のブレーキに対する操作量を取得するブレーキ操作量取得手段を更に備え、
前記調整手段は、前記ブレーキ操作量取得手段が取得した操作量に応じて、前記車輌灯の照度を調整するようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の車輌灯制御装置。
【請求項5】
前記調整手段は、前記検知手段が前記車輌の周辺に物体が存在することを検知した際に前記車輌灯が消灯状態の場合、該車輌灯を点灯して、照度の調整を行うようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の車輌灯制御装置。
【請求項6】
前記車輌灯には、前照灯、尾灯、後退灯、方向指示灯及び車内灯を含み、
前記調整手段は、前記前照灯、尾灯、後退灯、方向指示灯及び車内灯の全てを点灯するようにしてあること
を特徴とする請求項5に記載の車輌灯制御装置。
【請求項7】
前記調整手段は、電源からの電力を断続的に供給して前記車輌灯を点灯するようにしてあり、電力の供給/非供給の比率を調整することにより、前記車輌灯の照度を調整するようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の車輌灯制御装置。
【請求項8】
前記電源の出力電圧値を検出する電圧検出手段を更に備え、
前記調整手段は、前記電圧検出手段が検出した出力電圧値に応じて、前記車輌灯の照度を調整するようにしてあること
を特徴とする請求項7に記載の車輌灯制御装置。
【請求項9】
前記制御手段は、電源から前記車輌灯へ供給する電力の電圧値を調整することにより、前記車輌灯の照度を調整するようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の車輌灯制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−63187(P2011−63187A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217445(P2009−217445)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】