説明

車輪用軸受装置およびその製造方法

【課題】切削代を低減して低コスト化を図ると共に、高負荷の部分の強度を高め、軽量化と高剛性化という相反する課題を解決して軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ハブ輪4が、熱間鍛造工程と、この熱間鍛造工程の後に部分的に施され、表面硬さが所定の硬度差以上になる冷間鍛造工程を備え、車輪取付フランジ6が円周方向複数に分割された複数の部分フランジ6aで構成され、パイロット部12が、その円周方向の複数箇所に切欠きが設けられ、断続した突片状に熱間鍛造で形成され、このパイロット部12が部分フランジ6a間に配置されると共に、熱間鍛造で、車輪取付フランジ6の根元部が先端部よりも厚肉に形成され、冷間鍛造によって薄肉化されて略均一な肉厚に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車輪を回転自在に支承する車輪用軸受装置に関するもので、特に、切削代を低減して低コスト化を図ると共に、高負荷の部分の強度を高め、軽量化と高剛性化という相反する課題を解決して軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪用軸受装置には、懸架装置を構成するナックルとハブ輪との間に複列アンギュラ玉軸受等からなる車輪用軸受を嵌合させた第1世代と称される構造から、外方部材の外周に直接車体取付フランジまたは車輪取付フランジが形成された第2世代構造、また、ハブ輪の外周に一方の内側転走面が直接形成された第3世代構造、あるいは、ハブ輪と等速自在継手の外側継手部材の外周にそれぞれ内側転走面が直接形成された第4世代構造とに大別されている。
【0003】
近年、省資源あるいは公害等の面から燃費向上に対する要求は厳しいものがある。自動車部品において、中でも車輪軸受装置の軽量化はこうした要求に応える要因として注目され、強く望まれて久しい。特に、強度・剛性を保ったまま軽量化することが課題となっている。こうした課題を解決するものとして、図9に示す車輪用軸受装置50が提案されている。
【0004】
この車輪用軸受装置50は従動輪側の第3世代と称され、内方部材51と外方部材52、および複列のボール53、53とを備えている。内方部材51は、中実の軸部54を含むハブ輪55と、このハブ輪55に嵌合された内輪56とを備えている。
【0005】
ハブ輪55は、その一端部に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ57を一体に有し、外周に内側転走面55aと、この内側転走面55aから軸方向に延びる小径段部55bが形成されている。また、車輪取付フランジ57の円周等配位置には車輪を固定するためのハブボルト57aが植設されている。車輪取付フランジ57を挟んで軸部54と反対側には、車輪の位置決めをなす位置決め用筒部58が軸部54と同心に突設されている。
【0006】
ハブ輪55の小径段部55bには、外周に内側転走面56aが形成された内輪56が圧入されている。そして、ハブ輪55の小径段部55bの端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部55cにより、ハブ輪55に対して内輪56が軸方向へ抜けるのを防止している。
【0007】
外方部材52は、中空の軸部59を含んで構成され、外周に懸架装置(図示せず)に取り付けられるための車体取付フランジ52bを一体に有し、内周に複列の外側転走面52a、52aが形成されている。この複列の外側転走面52a、52aと対向する内側転走面55a、56aの間には複列のボール53、53が保持器61を介して転動自在に収容されている。また、車体取付フランジ52bを挟んで軸部59と反対側には、車体の位置決めをなす位置決め用筒部60が軸部59と同心に形成されている。
【0008】
ここで、ハブ輪55では、軸部54と直交する方向に放射状に延びる車輪取付フランジ57が、冷間での側方押し出し成形によって軸部54と一体に形成され、また、成形の際の押し出し残り部によって構成される位置決め用筒部58も軸部54と同心に一体に形成されている。
【0009】
一方、外方部材52では、軸部59と直交する方向に放射状に延びる車体取付フランジ52bが、冷間での側方押し出し成形によって軸部59と一体に形成され、また、成形の際の押し出し残り部によって構成される位置決め用筒部60も軸部59と同心に一体に形成されている。
【0010】
これにより、車輪取付フランジ57および車体取付フランジ52bを圧縮成形する場合と比較して、冷間鍛造で比較的小さな設備を用いて低荷重で成形することができ、後工程での切削加工代が削減されて安価なハブ輪55および外方部材52を得ることができる。
【0011】
また、周方向に連続する円筒状の位置決め用筒部58、60を軸部54、59と一体に高精度で容易に冷間成形することができるので、必要な部分の肉厚を確保した状態で材料歩留まりを良くすることができ、製造コストを低くすることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−111070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述した従来の車輪用軸受装置では、ハブ輪55の車輪取付フランジ57および外方部材52の車体取付フランジ52bを冷間鍛造で成形する場合、その先端部まで素材を充足させるために加工荷重を大きくしなければならず、必然的に設備自体が大型化する。また、冷間鍛造前に素材と金型の滑りを良くするためのボンデ処理を施す必要があり、コスト高騰を招来することになる。ここで、ボンデ処理とは、冷間鍛造成形加工時の成形品と成形金型の摩擦抵抗をなくすためにリン酸塩皮膜(潤滑皮膜)を付ける処理を言う。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、切削代を低減して低コスト化を図ると共に、高負荷の部分の強度を高め、軽量化と高剛性化という相反する課題を解決して軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、外周に固定ボルトを介して車体に取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジと、この車輪取付フランジからアウター側に延びる円筒状のパイロット部を一体に有し、外周に前記複列の外側転走面の一方に対向する内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に嵌合され、外周に前記複列の外側転走面の他方に対向する内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と外方部材間に保持器を介して転動自在に収容された複列の転動体とを備えた車輪用軸受装置において、前記車輪取付フランジが円周方向複数に分割された複数の部分フランジで構成されると共に、前記ハブ輪が、熱間鍛造と冷間鍛造によって形成され、前記冷間鍛造が部分的に施され、この冷間鍛造された部位と冷間鍛造されていない部位との硬度差がHRCスケールで6ポイントまたはHVスケールで47ポイント以上に設定されている。
【0016】
このように、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジと、この車輪取付フランジからアウター側に延びる円筒状のパイロット部を一体に有するハブ輪を備えた第3世代構造の車輪用軸受装置において、車輪取付フランジが円周方向複数に分割された複数の部分フランジで構成され、パイロット部が、その円周方向の複数箇所に切欠きが設けられ、断続した突片状に形成され、このパイロット部が部分フランジ間に形成されると共に、ハブ輪が、熱間鍛造と冷間鍛造によって形成され、前記冷間鍛造が部分的に施され、この冷間鍛造された部位と冷間鍛造されていない部位との硬度差がHRCスケールで6ポイントまたはHVスケールで47ポイント以上に設定されているので、冷間鍛造による加工硬化で、高負荷の部分の強度を高め、軽量化と高剛性化という相反する課題を解決して軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。また、部分的な冷間鍛造によって加工力を小さく抑えることができ、鍛造設備をコンパクト化できると共に、従来のようにボンデ処理を施すまでもなく油潤滑で済み、切削代を低減して低コスト化を図ることができる。
【0017】
また、請求項2に記載の発明のように、前記パイロット部が、その円周方向の複数箇所に切欠きが設けられ、断続した突片状に形成され、このパイロット部が前記部分フランジ間に配置されていれば、ハブ輪の剛性を低下させることなく軽量化を図ることができる。
【0018】
また、請求項3に記載の発明のように、前記冷間鍛造が前記車輪取付フランジの根元部に施されていれば、大きなモーメント荷重が車輪取付フランジに負荷されても効果的に車輪取付フランジの強度を高め、耐久性を向上させることができる。
【0019】
また、請求項4に記載の発明のように、前記冷間鍛造が前記パイロット部に施されていても良い。
【0020】
また、請求項5に記載の発明のように、前記ハブ輪のアウター側の端面からインナー側に向ってすり鉢状に延びる凹所が形成され、この凹所からインナー側の端面に開口する貫通孔が打ち抜き加工によって形成されると共に、前記凹所が前記冷間鍛造によって前記パイロット部の内径部からテーパ状に形成され、前記ハブ輪のアウター側の端部が前記車輪取付フランジの肉厚と略同一の均一な肉厚に形成されていれば、軽量化と高剛性化という相反する課題を同時に解決することができる。
【0021】
また、請求項6に記載の発明のように、前記外方部材が炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、前記冷間鍛造が前記車体取付フランジの根元部に施されていれば、大きなモーメント荷重が車輪取付フランジに負荷されても効果的に車輪取付フランジの強度を高め、耐久性を向上させることができる。
【0022】
また、請求項7に記載の発明のように、前記ハブ輪が炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成されていても良い。
【0023】
また、本発明のうち請求項8に記載の方法発明は、外周に固定ボルトを介して車体に取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジと、この車輪取付フランジからアウター側に延びる円筒状のパイロット部を一体に有し、外周に前記複列の外側転走面の一方に対向する内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に嵌合され、外周に前記複列の外側転走面の他方に対向する内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と外方部材間に保持器を介して転動自在に収容された複列の転動体とを備えた車輪用軸受装置の製造方法において、前記車輪取付フランジが円周方向複数に分割された複数の部分フランジで構成されると共に、前記ハブ輪が、熱間鍛造工程と、この熱間鍛造工程の後に部分的に施され、表面硬さが所定の硬度差以上になる冷間鍛造工程を備え、前記熱間鍛造で、前記車輪取付フランジの根元部が先端部よりも厚肉に形成され、前記冷間鍛造によって薄肉化されて略均一な肉厚に形成されている。
【0024】
このように、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジと、この車輪取付フランジからアウター側に延びる円筒状のパイロット部を一体に有するハブ輪を備えた第3世代構造の車輪用軸受装置において、車輪取付フランジが円周方向複数に分割された複数の部分フランジで構成されると共に、ハブ輪が、熱間鍛造工程と、この熱間鍛造工程の後に部分的に施され、表面硬さが所定の硬度差以上になる冷間鍛造工程を備え、熱間鍛造で、車輪取付フランジの根元部が先端部よりも厚肉に形成され、冷間鍛造によって薄肉化されて略均一な肉厚に形成されているので、冷間鍛造による加工硬化で、大きなモーメント荷重が車輪取付フランジに負荷されても、効果的に車輪取付フランジの強度を高め、耐久性を向上させることができる。また、部分的な冷間鍛造によって切削代を低減すると共に、加工力を小さく抑えることができ、鍛造設備をコンパクト化することができる。
【0025】
また、請求項9に記載の発明のように、前記パイロット部が、その円周方向の複数箇所に切欠きが設けられ、断続した突片状に熱間鍛造によって形成され、このパイロット部が前記部分フランジ間に配置されると共に、当該パイロット部の根元部が冷間鍛造によって形成されていても良い。
【0026】
また、請求項10に記載の発明のように、前記車輪取付フランジの根元部が、前記冷間鍛造によって少なくとも10%薄肉化されていれば、冷間鍛造の加工硬化により強度・剛性が高まるので、強化された分を減肉設計による軽量化をすることが可能になる。
【0027】
また、請求項11に記載の発明のように、前記部分フランジの周方向の側面のうち前記熱間鍛造によって根元部が先端部よりもくびれた形状に形成されると共に、前記冷間鍛造によって前記先端部が金型で拘束された状態で、前記根元部が先端部から漸次末広がりする滑らかな円弧状に形成されれば、素材の塑性流動がスムーズにでき、車輪取付フランジを薄肉化することができ、成形の際の押し出し残り部によってパイロット部をはじめ、車輪取付フランジのインナー側の基部や内側転走面等を精度良く形成することができる。
【0028】
また、請求項12に記載の発明のように、前記ハブ輪のアウター側の端面からインナー側に向ってすり鉢状に延びる凹所が熱間鍛造によって形成され、この凹所が前記パイロット部の内径面から凸の円弧状に形成されると共に、当該凹所が、冷間鍛造によってテーパ状に形成されて減肉化されれば、冷間鍛造による加工硬化で、ハブ輪の強度・剛性を高め、中空化を実現して軽量化を図ることができる。
【0029】
また、請求項13に記載の発明のように、前記車輪取付フランジのハブボルト挿通孔が、前記熱間鍛造で打ち抜き加工され、その後、前記冷間鍛造で所定の内径寸法に形成されると共に、前記ハブボルト挿通孔の熱間鍛造後の内周面の表面硬さに対し、前記冷間鍛造後の硬度上昇が5%未満となるように設定されていれば、ハブボルトとハブボルト挿通孔との硬度差が10HRC以上に設定することが容易になり、ハブボルト挿通孔の内周面が塑性変形してハブボルトのナールがハブボルト挿通孔に充分食い込み、組立作業性を阻害することなくハブボルトのスリップトルクを増大かつ安定化させることができる。
【0030】
また、請求項14に記載の発明のように、前記冷間鍛造が油潤滑によって行われていれば、低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る車輪用軸受装置は、外周に固定ボルトを介して車体に取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジと、この車輪取付フランジからアウター側に延びる円筒状のパイロット部を一体に有し、外周に前記複列の外側転走面の一方に対向する内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に嵌合され、外周に前記複列の外側転走面の他方に対向する内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と外方部材間に保持器を介して転動自在に収容された複列の転動体とを備えた車輪用軸受装置において、前記車輪取付フランジが円周方向複数に分割された複数の部分フランジで構成されると共に、前記ハブ輪が、熱間鍛造と冷間鍛造によって形成され、前記冷間鍛造が部分的に施され、この冷間鍛造された部位と冷間鍛造されていない部位との硬度差がHRCスケールで6ポイントまたはHVスケールで47ポイント以上に設定されているので、冷間鍛造による加工硬化で、高負荷の部分の強度を高め、軽量化と高剛性化という相反する課題を解決して軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。また、部分的な冷間鍛造によって加工力を小さく抑えることができ、鍛造設備をコンパクト化できると共に、従来のようにボンデ処理を施すまでもなく油潤滑で済み、切削代を低減して低コスト化を図ることができる。
【0032】
また、本発明に係る車輪用軸受装置の製造方法は、外周に固定ボルトを介して車体に取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジと、この車輪取付フランジからアウター側に延びる円筒状のパイロット部を一体に有し、外周に前記複列の外側転走面の一方に対向する内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に嵌合され、外周に前記複列の外側転走面の他方に対向する内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と外方部材間に保持器を介して転動自在に収容された複列の転動体とを備えた車輪用軸受装置の製造方法において、前記車輪取付フランジが円周方向複数に分割された複数の部分フランジで構成され、前記パイロット部が、その円周方向の複数箇所に切欠きが設けられ、断続した突片状に形成され、このパイロット部が前記部分フランジ間に形成されると共に、前記ハブ輪が、熱間鍛造工程と、この熱間鍛造工程の後に部分的に施され、表面硬さが所定の硬度差以上になる冷間鍛造工程を備え、前記熱間鍛造で、前記車輪取付フランジの根元部が先端部よりも厚肉に形成され、前記冷間鍛造によって薄肉化されて略均一な肉厚に形成されているので、冷間鍛造による加工硬化で、大きなモーメント荷重が車輪取付フランジに負荷されても、効果的に車輪取付フランジの強度を高め、耐久性を向上させることができる。また、部分的な冷間鍛造によって切削代を低減すると共に、加工力を小さく抑えることができ、鍛造設備をコンパクト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る車輪用軸受装置の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】本発明に係る車輪用軸受装置の製造工程を示すブロック図である。
【図4】(a)は、図1のハブ輪の熱間鍛造後を示す正面図、(b)は、(a)のIV−IV線に沿った縦断面図である。
【図5】(a)は、図1のハブ輪の冷間鍛造後を示す正面図、(b)は、(a)のV−V線に沿った縦断面図である。
【図6】図1のハブ輪の冷間鍛造方法を示す説明図である。
【図7】(a)は、冷間鍛造用のダイスに成形品をセットした状態を示す平面図、(b)は、(a)のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】本発明に係るハブ輪の熱間鍛造後の部位と冷間鍛造後の部位の表面硬さを示すグラフである。
【図9】従来の車輪用軸受装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
外周に固定ボルトを介して車体に取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジと、この車輪取付フランジからアウター側に延びる円筒状のパイロット部を一体に有し、外周に前記複列の外側転走面の一方に対向する内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に嵌合され、外周に前記複列の外側転走面の他方に対向する内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と外方部材間に保持器を介して転動自在に収容された複列の転動体とを備えた車輪用軸受装置の製造方法において、前記ハブ輪が、熱間鍛造工程と、この熱間鍛造工程の後に部分的に施され、表面硬さが所定の硬度差以上になる冷間鍛造工程を備え、前記車輪取付フランジが円周方向複数に分割された複数の部分フランジで構成され、前記パイロット部が、その円周方向の複数箇所に切欠きが設けられ、断続した突片状に前記熱間鍛造で形成され、このパイロット部が前記部分フランジ間に配置されると共に、前記熱間鍛造で、前記車輪取付フランジの根元部が先端部よりも厚肉に形成され、前記冷間鍛造によって薄肉化されて略均一な肉厚に形成されている。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る車輪用軸受装置の一実施形態を示す縦断面図、図2は、図1の正面図、図3は、本発明に係る車輪用軸受装置の製造工程を示すブロック図、図4(a)は、図1のハブ輪の熱間鍛造後を示す正面図、(b)は、(a)のIV−IV線に沿った縦断面図、図5(a)は、図1のハブ輪の冷間鍛造後を示す正面図、(b)は、(a)のV−V線に沿った縦断面図、図6は、図1のハブ輪の冷間鍛造方法を示す説明図、図7(a)は、冷間鍛造用のダイスに成形品をセットした状態を示す平面図、(b)は、(a)のVII−VII線に沿った断面図、図8は、本発明に係るハブ輪の熱間鍛造後の部位と冷間鍛造後の部位の表面硬さを示すグラフである。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側(図1の左側)、中央寄り側をインナー側(図1の右側)という。
【0036】
この車輪用軸受装置は第3世代と呼称される従動輪用であって、内方部材1と外方部材2、これら内方部材1と外方部材2間に収容された複列の転動体(ボール)3、3とを備えている。ここで、内方部材1は、ハブ輪4と、このハブ輪4に圧入された内輪5とを指す。
【0037】
ハブ輪4は、外周のアウター側の端部に円周方向複数(ここでは5つ)に分割された車輪取付フランジ6を一体に有し、外周部には車輪(図示せず)を締結するためのハブボルト7が植設されている。この車輪取付フランジ6は、図2に示すように、ハブボルト挿通孔8の近傍を除く部分を切欠いて、各ボルト挿通孔8の形成部分と略同じ幅でもって、環状の基部から放射状に突出するように形成されている。すなわち、車輪取付フランジ6は、円周方向に離れた複数の部分フランジ6aに分割して形成されている。
【0038】
また、図1に示すように、ハブ輪4の車輪取付フランジ6の基部9にはアウター側に延びる円筒状のブレーキパイロット部10が形成され、ブレーキロータ11の内径面を案内している。さらに、このブレーキパイロット部10からアウター側に延びるホイールパイロット部12が形成されている。このホイールパイロット部12は、ブレーキロータ11に重ねて装着されるホイールハブ13の内径面を案内するもので、前記ブレーキパイロット部10よりも小径に形成されている。そして、その円周方向の複数箇所に切欠きが設けられ、断続した突片状に形成されている。ここでは、この断続したホイールパイロット部12は、複数に分割された部分フランジ6a間に形成されている(図2参照)。これにより、ハブ輪4の剛性を低下させることなく軽量化を図ることができる。
【0039】
ハブ輪4における車輪取付フランジ6からインナー側の外周には内側転走面4aと、この内側転走面4aから軸方向に延びる円筒状の小径段部4bが形成されている。そして、外周に内側転走面5aが形成された内輪5がこの小径段部4bに圧入され、小径段部4bの端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部4cにより、ハブ輪4に対して内輪5が軸方向へ抜けるのを防止している。本実施形態では、このようなセルフリテイン構造を採用することにより、従来のようにナット等で強固に緊締して予圧量を管理する必要がないため、車両への組込性を簡便にすることができると共に、かつ長期間その予圧量を維持することができる。
【0040】
ハブ輪4はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、アウター側の内側転走面4aをはじめ、後述するアウター側のシール19が装着される基部9から小径段部4bに亙り高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。なお、加締部4cは、鍛造後の素材表面硬さ30HRC以下の未焼入れ部としている。これにより、ハブ輪4の剛性が向上すると共に、内輪5との嵌合面のフレッティング摩耗を防止することができ、ハブ輪4の耐久性が向上する。また、加締部4cを塑性変形させる時の加工性が向上すると共に、加工時におけるクラック等の発生を防止してその品質の信頼性が向上する。また、内輪5および転動体3は、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなり、ズブ焼入れにより芯部まで58〜64HRCの範囲で硬化処理されている。
【0041】
なお、本実施形態では、車輪取付フランジ6が、ボルト挿通孔8の近傍を除く部分を切欠いて、各ボルト挿通孔8の形成部分と略同じ幅でもって、その環状の基部から放射状に突出するように形成されたものを例示したが、これに限らず、図示はしないが、ボルト挿通孔の周辺を避けてボルト挿通孔間に、このボルト挿通孔のピッチ円直径より内径側まで深くR形状の切欠きが形成された花形形状をなす車輪取付フランジであっても良い。
【0042】
外方部材2は、外周に懸架装置を構成するナックル(図示せず)に取り付けられる車体取付フランジ14を一体に有し、外周部にボルト挿通孔15が穿設されている。この車体取付フランジ14は、図2に示すように、ボルト挿通孔15の周辺を避けてボルト挿通孔15間に、このボルト挿通孔15のピッチ円直径より内径側まで深くR形状の切欠き16が形成されている。すなわち、車体取付フランジ14は、円周方向に離れた複数(ここでは4つ)の部分フランジ14aに分割して形成されている。さらに、外方部材2のインナー側の端部には、図1に示すように、車体取付フランジ14から軸方向に延びる円筒状のナックルパイロット部17が形成され、このナックルパイロット部17の外径面にナックルが嵌合される。
【0043】
外方部材2はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、その内周には内方部材1の複列の内側転走面4a、5aに対向する複列の外側転走面2a、2aが形成されている。そして、少なくともこれら複列の外側転走面2a、2aが高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理され、内方部材1と外方部材2のそれぞれの転走面間に保持器18、18により複列の転動体3、3が転動自在に収容されている。外方部材2の両端部にはシール19、20が装着され、外方部材2と内方部材1との環状空間を密封している。これらシール19、20により、軸受内部に封入された潤滑グリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。
【0044】
本実施形態では、ハブ輪4の車輪取付フランジ6が、ボルト挿通孔8の近傍を除く部分を切欠いて、各ボルト挿通孔8の形成部分だけが環状の基部から外径側に略同じ幅でもって突出するように形成されているので、外方部材2をナックルに締結する際に、この車輪取付フランジ6に邪魔されることなく、工具にて容易にナックルボルトを締結することができ、組立作業を簡便化することができる。
【0045】
また、ハブ輪4および外方部材2が大幅に除肉され、車輪取付フランジ6および車体取付フランジ14が従来の円板状フランジとは全く異なり、複数の部分フランジ6a、14aに分割されて形成されているので、強度・耐久性を確保しつつ、最軽量化を図ることができる。
【0046】
ここでは、ハブ輪4の外周に直接内側転走面4aが形成された第3世代と呼称される車輪用軸受装置を例示したが、本発明に係る車輪用軸受装置はこうした構造に限定されず、例えば、図示はしないがハブ輪の小径段部に一対の内輪が圧入された、第1世代または第2世代構造からなる車輪用軸受装置であっても良い。なお、転動体3、3をボールとした複列アンギュラ玉軸受で構成された車輪用軸受装置を例示したが、これに限らず転動体に円すいころを使用した複列円すいころ軸受で構成されていても良い。
【0047】
本発明に係る車輪用軸受装置において、ハブ輪4および外方部材2は、熱間鍛造と、その後の冷間鍛造と、2回の鍛造工程によって形成されている。
次に本発明に係るハブ輪4の製造方法について詳細に説明する。ハブ輪4は、図3のブロック図に示すように、素材となるバー材から熱間鍛造加工され、その後、部分的に冷間鍛造加工される。そして、旋削工程を経て熱処理され、研削工程、超仕上げ工程後、組立工程で完成する。
まず、熱間鍛造加工により、図4に示すような所定の鍛造形状に形成されている。具体的には、端面21’、22’をはじめ、車輪取付フランジ6’の両側面23’、24’とパイロット部12、車輪取付フランジ6’の基部9’、内側転走面4a’、カウンタ部25’および小径段部4b’が所定の旋削取代等の取代を残した状態で鍛造加工される。本実施形態では、アウター側の端面21’からインナー側に向ってすり鉢状に延びる凹所26’が形成されると共に、この凹所26’からインナー側の端面2’に開口する貫通孔27が打ち抜き加工によって形成され、ハブ輪4’が中空シャフト化されている。
【0048】
ここで、車輪取付フランジ6’を構成する複数の部分フランジ6a’、6a’の根元部の肉厚が先端部よりも厚肉に形成されると共に、複数の部分フランジ6a’、6a’の周方向の側面(図中2点鎖線にて示す)28は、根元部28aが先端部28bよりもくびれた形状に形成されている。また、凹所26’は、パイロット部12の内径面から凸の円弧状に形成され、中空状のハブ輪4’が車輪取付フランジ6’の肉厚と略同一の均一な肉厚に形成されている。
【0049】
そして、冷間鍛造加工により、図5に示すような所定の鍛造形状に形成されている。具体的には、車輪取付フランジ6の両側面23、24とすり鉢状凹部26が所定の旋削取代を残した状態で鍛造加工される(図中2点鎖線にて示す)。
【0050】
ここで、冷間鍛造される金型は、図6に示すように、アウター側の端面21’と車輪取付フランジ6’のアウター側の側面23’および内周部を形成するポンチ29と、車輪取付フランジ6’のインナー側の側面24’、基部9’、内側転走面4a’、カウンタ部25’および小径段部4b’を形成するダイス30によって構成されている。
【0051】
特に、この冷間鍛造加工では、車輪取付フランジ6’を構成する複数の部分フランジ6a’、6a’の根元部が薄肉化されて先端部と同一に均一に形成されると共に、図7に示すように、車輪取付フランジ6’を構成する複数の部分フランジ6a’、6a’の周方向の側面28の形状・寸法が大きく変更される。すなわち、先端部28bをダイスで拘束した状態で、くびれた根元部28aが冷間鍛造によって先端部28bから漸次末広がりする滑らかな円弧状に形成されると共に、素材のスムーズな塑性流動によって車輪取付フランジ6’が少なくとも10%薄肉化され、この成形の際の押し出し残り部によって根元部28aがダイス形状に形成される。さらに、図5(b)に示すように、凹所26が、車輪取付フランジ6のアウター側の側面24からテーパ状に形成されて減肉化され、中空状のハブ輪4が車輪取付フランジ6の肉厚と略同一の均一な肉厚に形成される。
【0052】
このように、ハブ輪4が、熱間鍛造後に、強度が必要な部位に冷間鍛造が施されているので、冷間鍛造による加工硬化、具体的には、鍛造加工後の表面硬さに対し、図8に示すように、Hv(ヴィッカース硬さ)スケールでは、最小(ΔHvmin.)で47、最大(ΔHvmax.)で99の硬度差、また、HRC(ロックウェル硬さ)スケールでは、最小(ΔHRCmin.)で6、最大(ΔHRCmax.)では12.5の硬度差が得られることが判った。この硬度上昇により高負荷部分の強度を高め、軽量化と高剛性化という相反する課題を解決して軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。また、部分的な冷間鍛造によって加工力を小さく抑えることができ、鍛造設備をコンパクト化できると共に、従来のようにボンデ処理を施すまでもなく油潤滑で済み、切削代を低減して低コスト化を図ることができる。
【0053】
なお、車輪取付フランジ6のハブボルト挿通孔8は、熱間鍛造で打ち抜き加工され、その後、冷間鍛造で所定の内径寸法に形成されてハブボルト7が圧入されるが、本実施形態では、ハブボルト挿通孔8の熱間鍛造後の内周面の表面硬さに対し、冷間鍛造後の硬度上昇が5%未満となるように設定されている。これにより、ハブボルト7とハブボルト挿通孔8との硬度差が10HRC以上に設定することが容易になり、ハブボルト挿通孔8の内周面が塑性変形してハブボルト7のナールがハブボルト挿通孔8に充分食い込み、組立作業性を阻害することなくハブボルト7のスリップトルクを増大かつ安定化させることができる。
【0054】
また、外方部材2は、ハブ輪4と同様、素材となるバー材から熱間鍛造加工され、その後、部分的に冷間鍛造加工される。そして、旋削工程を経て熱処理され、研削工程、超仕上げ工程後、組立工程で完成する。ここで鍛造加工により、図示はしないが、両端面をはじめ、車体取付フランジ14を構成する部分フランジ14aの両側面と、ナックルが外嵌されるナックルパイロット部17と、シール19、20が装着されるシール嵌合面と、複列の外側転走面2a、2aおよび内径面が熱間鍛造と、部分的な冷間鍛造によって所定の旋削取代を残した状態で鍛造加工されている。
【0055】
特に、冷間鍛造加工では、部分フランジ14aが薄肉化され、この成形の際の押し出し残り部によって部分フランジ14aのアウター側の側面と外周面の隅部が所定の曲率半径からなる円弧状に形成されると共に、ハブ輪4の車輪取付フランジ6と同様、複数の部分フランジ14a、14aの周方向の側面が先端部から根元部に向って漸次末広がりする滑らかな円弧状に形成される。これにより、冷間鍛造による加工硬化で、高負荷の部分の強度を高め、軽量化と高剛性化という相反する課題を解決して軸受の長寿命化を図ることができる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、車輪取付フランジを一体に有するハブ輪を備えた第1乃至第3世代構造の車輪用軸受装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 内方部材
2 外方部材
2a 外側転走面
3 転動体
4、4’ ハブ輪
4a、4a’、5a 内側転走面
4b、4b’ 小径段部
4c 加締部
5 内輪
6、6’ 車輪取付フランジ
6a、6a’、14a 部分フランジ
7 ハブボルト
8、15 ボルト挿通孔
9、9’ 車輪取付フランジのインナー側の基部
10 ブレーキパイロット部
11 ブレーキロータ
12 ホイールパイロット部
13 ホイールハブ
14 車体取付フランジ
16 切欠き部
17 ナックルパイロット部
18 保持器
19、20 シール
21、21’、22、22’ 端面
23、23’、24、24’ 車輪取付フランジの側面
25、25’ カウンタ部
26、26’ 凹所
27 貫通孔
28 部分フランジの周方向の側面
28a 部分フランジの根元部
28b 部分フランジの先端部
29 ポンチ
30 ダイス
50 車輪用軸受装置
51 内方部材
52 外方部材
52a 外側転走面
52b 車体取付フランジ
53 ボール
54、59 軸部
55 ハブ輪
55a、56a 内側転走面
55b 小径段部
55c 加締部
56 内輪
57 車輪取付フランジ
57a ハブボルト
58、60 位置決め用筒部
61 保持器
ΔHvmax. ヴィッカーススケールでの硬度差最大
ΔHvmin. ヴィッカーススケールでの硬度差最小
ΔHRCmax. ロックウェルスケールでの硬度差最大
ΔHRCmin. ロックウェルスケールでの硬度差最小

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に固定ボルトを介して車体に取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、
一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジと、この車輪取付フランジからアウター側に延びる円筒状のパイロット部を一体に有し、外周に前記複列の外側転走面の一方に対向する内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に嵌合され、外周に前記複列の外側転走面の他方に対向する内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、
この内方部材と外方部材間に保持器を介して転動自在に収容された複列の転動体とを備えた車輪用軸受装置において、
前記車輪取付フランジが円周方向複数に分割された複数の部分フランジで構成されると共に、
前記ハブ輪が、熱間鍛造と冷間鍛造によって形成され、前記冷間鍛造が部分的に施され、この冷間鍛造された部位と冷間鍛造されていない部位との硬度差がHRCスケールで6ポイントまたはHVスケールで47ポイント以上に設定されていることを特徴とする車輪用軸受装置。
【請求項2】
前記パイロット部が、その円周方向の複数箇所に切欠きが設けられ、断続した突片状に形成され、このパイロット部が前記部分フランジ間に配置されている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項3】
前記冷間鍛造が前記車輪取付フランジの根元部に施されている請求項1または2に記載の車輪用軸受装置。
【請求項4】
前記冷間鍛造が前記パイロット部に施されている請求項1または2に記載の車輪用軸受装置。
【請求項5】
前記ハブ輪のアウター側の端面からインナー側に向ってすり鉢状に延びる凹所が形成され、この凹所からインナー側の端面に開口する貫通孔が打ち抜き加工によって形成されると共に、前記凹所が前記冷間鍛造によって前記パイロット部の内径部からテーパ状に形成され、前記ハブ輪のアウター側の端部が前記車輪取付フランジの肉厚と略同一の均一な肉厚に形成されている請求項1乃至5いずれかに記載の車輪用軸受装置。
【請求項6】
前記外方部材が炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、前記冷間鍛造が前記車体取付フランジの根元部に施されている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項7】
前記ハブ輪が炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成されている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項8】
外周に固定ボルトを介して車体に取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、
一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジと、この車輪取付フランジからアウター側に延びる円筒状のパイロット部を一体に有し、外周に前記複列の外側転走面の一方に対向する内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に嵌合され、外周に前記複列の外側転走面の他方に対向する内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、
この内方部材と外方部材間に保持器を介して転動自在に収容された複列の転動体とを備えた車輪用軸受装置の製造方法において、
前記車輪取付フランジが円周方向複数に分割された複数の部分フランジで構成されると共に、
前記ハブ輪が、熱間鍛造工程と、この熱間鍛造工程の後に部分的に施され、表面硬さが所定の硬度差以上になる冷間鍛造工程を備え、
前記熱間鍛造で、前記車輪取付フランジの根元部が先端部よりも厚肉に形成され、前記冷間鍛造によって薄肉化されて略均一な肉厚に形成されていることを特徴とする車輪用軸受装置の製造方法。
【請求項9】
前記パイロット部が、その円周方向の複数箇所に切欠きが設けられ、断続した突片状に熱間鍛造によって形成され、このパイロット部が前記部分フランジ間に配置されると共に、当該パイロット部の根元部が冷間鍛造によって形成されている請求項8に記載の車輪用軸受装置の製造方法。
【請求項10】
前記車輪取付フランジの根元部が、前記冷間鍛造によって少なくとも10%薄肉化されている請求項8または9に記載の車輪用軸受装置の製造方法。
【請求項11】
前記部分フランジの周方向の側面のうち前記熱間鍛造によって根元部が先端部よりもくびれた形状に形成されると共に、前記冷間鍛造によって前記先端部が金型で拘束された状態で、前記根元部が先端部から漸次末広がりする滑らかな円弧状に形成される請求項8乃至10いずれかに記載の車輪用軸受装置の製造方法。
【請求項12】
前記ハブ輪のアウター側の端面からインナー側に向ってすり鉢状に延びる凹所が熱間鍛造によって形成され、この凹所が前記パイロット部の内径面から凸の円弧状に形成されると共に、当該凹所が、冷間鍛造によってテーパ状に形成されて減肉化される請求項8に記載の車輪用軸受装置の製造方法。
【請求項13】
前記車輪取付フランジのハブボルト挿通孔が、前記熱間鍛造で打ち抜き加工され、その後、前記冷間鍛造で所定の内径寸法に形成されると共に、前記ハブボルト挿通孔の熱間鍛造後の内周面の表面硬さに対し、前記冷間鍛造後の硬度上昇が5%未満となるように設定されている請求項8に記載の車輪用軸受装置の製造方法。
【請求項14】
前記冷間鍛造が油潤滑によって行われている請求項8乃至13いずれかに記載の車輪用軸受装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−197043(P2012−197043A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62967(P2011−62967)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】