説明

車間距離制御装置

【課題】停止車両以外の静止物体を車間制御のターゲットから極力除外し、また、車間制御のターゲットを先行車両から割込車両へ早期に変更することができる車間制御装置を提供する。
【解決手段】運転者がコントロールSW21から停止車両選定指示や割込車両選定指示に対応するコースト操作を行った場合に、停止車両や割込車両をターゲットとして抽出しやすくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車間距離制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、先行車両が存在しない場合には設定車速で定速走行し、定速走行中の自車両より遅い先行車両が存在する場合には、その先行車両を車間制御のターゲットとして、適切な車間距離を保ちながら追従走行する技術が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の技術によれば、被検出物体の速度>0であるとき、その被検出物体は自車両と同一方向に進行する先行車両と判断して車間制御のターゲットとして捉え、被検出物体の速度≦0であるとき、その被検出物体は停止もしくは反対方向に移動しているとして、車間制御のターゲットとして捉えないようにする。
【0004】
また、特許文献2に記載の技術は、レーダの計測した自車両と先行車両との車間距離、及び角度から、自車両と先行車両との横方向の相対速度(横相対速度)を求め、この横相対速度に基づいて隣接車線から自車線前方に車線変更をする割込車両の有無を判定し、割込車両有りと判定されるとその割込車両への追従制御を行う。
【0005】
また、特許文献3に記載の技術では、レーダで計測した先行車両との車間距離と先行車両の横ズレとに応じたカウンタ加算値を設定しておき、カウンタで加算した結果がしきい値を超えるときには、前方の車両を追尾対象の先行車両として選択する。このカウンタ加算値は、近距離の先行車両は判定条件を緩く、遠距離の先行車両は判定条件を厳しく設定するとともに、横ズレ(車線中心線からのズレ)が小さい(車線中心線近傍)先行車両は判定条件を緩く、横ズレが大きい(車線中心から離れる)先行車両は判定条件を厳しく設定する。従って、先行車両の選択の際、近距離を走行している前方車両に対しては判定条件が緩いため、追突の可能性の高い近距離の割込車両等に対して応答を速くすることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2708751号公報
【特許文献2】特開平10−205366号公報
【特許文献3】特開2000−57498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1〜3のような車間制御の機能を拡張させ、追従している先行車両が停止した時には、適切な車間距離を保って停止させるようにした場合には、進行中の先行車両だけでなく、停止中の車両(停止車両)も車間制御のターゲットとすることになる。しかしながら、上記特許文献1の技術では、自車両と同一方向に進行する先行車両のみを車間制御のターゲットとするため、停止車両をターゲットとすることができない。また、レーダが停止車両以外の静止物体(例えば、ガードレール、道路標識、歩行者等)を検出する場合、その静止物体を車間制御のターゲットとしてしまうと誤作動することになる。従って、レーダが停止車両以外の静止物体を検出する場合であっても、その静止物体をターゲットから極力除外する必要がある。
【0008】
また、先行車両と自車両との間に他車両が割り込んでくる場合には、車間制御のターゲットを先行車両から割込車両へ早期に変更する必要がある。これに関連して、上記特許文献2や特許文献3では、横相対速度や横ズレに基づいて早期に変更しようとするものであるが、それは、横相対速度や横ズレを安定的に検出することができる状況に限られる。
【0009】
すなわち、自車両に対して比較的離れた距離から割込車両が割り込んでくる状況であれば、レーダによって、割り込みの早い段階から割込車両を検出することができる。従って、安定的に検出することができた横相対速度や横ズレから、ターゲットを早期に変更することが可能となる。しかしながら、自車両に対して比較的近い距離で割込車両が割り込んでくる状況では、レーダの検知可能範囲が制限されているため、割り込みの早い段階から割込車両を検出することが困難である。従って、横相対速度や横ズレを安定的に検出することができず、結果として、ターゲットを先行車両から割込車両へ早期に変更することができない。
【0010】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたもので、停止車両以外の静止物体を車間制御のターゲットから極力除外し、また、車間制御のターゲットを先行車両から割込車両へ早期に変更することができる車間制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するためになされた請求項1記載の車間制御装置は、自車両前方の車両をターゲットとして、そのターゲットとの車間を制御する車間制御を実行する制御手段を備えたものであって、自車両の運転者が操作する操作手段からの操作情報、及び自車両前方の自車線を含む所定範囲に存在する車両を検出する車両検出手段からの車両情報を取得する情報取得手段と、車両情報から、所定の抽出条件に該当するターゲットを選定するターゲット選定手段と、を備え、ターゲット選定手段は、情報取得手段がターゲットの選定に関する運転者からの指示に対応した操作情報を取得した場合、自車線に停止する停止車両、及び自車線の隣接車線から自車両前方の自車線に進入する割込車両の少なくとも一方の車両をターゲットとするための抽出条件を加えたうえで選定することを特徴とする。
【0012】
これにより、車両検出手段が停止車両以外の静止物体を検出する場合であっても、上記運転者からの指示に対応した操作情報を取得しなければ(運転者の指示がなければ)、自車線に停止する停止車両、及び自車線の隣接車線から自車両前方の自車線に進入する割込車両の少なくとも一方の車両をターゲットとするための抽出条件は追加せず、上記操作情報を取得した場合に限って(運転者の指示がある場合に限って)上記抽出条件を追加するようになるので、自車線に停止する停止車両以外の静止物体をターゲットから極力除外することができる。また、上記操作情報を取得した場合に上記抽出条件を追加するので、自車両に対して比較的近い距離で割込車両が割り込んでくる状況において、車両検出手段が割り込みの早い段階から割込車両を検出することが困難であっても、車間制御のターゲットを割込車両へ早期に変更することが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の車間制御装置によれば、制御手段は、情報取得手段がターゲットの選定に関する運転者からの指示に対応した操作情報を取得した場合、自車両を減速する減速制御、あるいは加速を抑制する加速抑制制御を開始することを特徴とする。これにより、運転者による操作手段の操作によって、自車両の減速、あるいは加速の抑制を開始することが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の車間制御装置によれば、操作手段は、自車両のステアリングホイール近傍に配置され、当該ステアリングホールの上下方向に操作可能なレバー機構であり、レバー機構を上下方向へ継続して操作した操作時間から、情報取得手段の取得した操作情報がターゲットの選定に関する運転者からの指示に対応した操作情報であるかどうかを判定する操作情報判定手段を備えることを特徴とする。
【0015】
これにより、運転者は、レバー機構を上下方向へ操作することにより、停止車両や割込車両をターゲットとして抽出しやすくすることができる。なお、上述したように、情報取得手段がターゲットの選定に関する運転者からの指示に対応した操作情報を取得した場合には自車両を減速する減速制御、あるいは加速を抑制する加速抑制制御を開始する。従って、長時間操作(レバー機構を0.5秒以上程度継続して下げる操作:コースト操作)に対応する操作時間である場合に、ターゲットの選定に関する運転者からの指示に対応した操作情報であると判定することが、車間制御の誤作動を防ぐうえで好ましい。
【0016】
請求項4に記載の車間制御装置では、情報取得手段がターゲットの選定に関する運転者からの指示に対応した操作情報を取得した場合、その操作情報が、停止車両をターゲットとする停止車両選定指示に対応した操作情報であるのか、あるいは、割込車両をターゲットとする割込車両選定指示に対応した操作情報であるのかを判定する指示判定手段を備え、制御手段は、指示判定手段の判定結果に応じて、異なる大きさの減速度が自車両に発生するように減速制御、あるいは前記加速抑制制御を実行することを特徴とする。
【0017】
これにより、停止車両選定指示と割込車両選定指示に応じた大きさの減速度(負の加速度)で自車両を減速、あるいは自車両の加速を抑制させることが可能となる。
【0018】
請求項5に記載の車間制御装置によれば、指示判定手段は、ターゲット選定手段によるターゲットの選定が確定しているときに、情報取得手段がターゲットの選定に関する運転者からの指示に対応する操作情報を取得した場合、割込車両選定指示に対応した操作情報であると判定し、ターゲット選定手段によるターゲットの選定が未確定のときに、情報取得手段がターゲットの選定に関する運転者からの指示に対応する操作情報を取得した場合、停止車両選定指示に対応した操作情報であると判定することを特徴とする。
【0019】
これにより、運転者による操作手段への操作が停車車両選定指示に対応する操作であるのか、割込車両選定指示に対応する操作であるのかを判定することができる。
【0020】
請求項6に記載の車間制御装置では、制御手段は、情報取得手段が停止車両選定指示に対応する操作情報を取得した場合、割込車両選定指示に対応する操作情報を取得した場合に比べて大きな減速度で自車両を減速、あるいは加速を抑制することを特徴とする。
【0021】
自車両に対する相対速度を停止車両と割込車両とで比較した場合、停止車両との相対速度の方が割込車両との相対速度に比べて大きいため、より大きな減速度(負の加速度)で自車両を減速、あるいは加速を抑制させる必要があるからである。
【0022】
請求項7に記載の車間制御装置によれば、制御手段は、情報取得手段が停止車両選定指示に対応する操作情報を取得した場合、ターゲット選定手段によるターゲットの選定が確定するまで、減速制御、あるいは加速抑制制御を継続して実行することを特徴とする。これにより、ターゲットが速やかに選定されないため、車間制御の開始が遅れるようになる場合であっても、自車両の停止車両への接近を遅らせることができる。
【0023】
請求項8に記載の車間制御装置では、情報取得手段は、自車両におけるアクセルペダル操作を検出するアクセル操作検出手段からのアクセル操作情報を取得し、制御手段は、減速制御、あるいは加速抑制制御を継続して実行しているときに、情報取得手段が前記アクセルペダルへの操作介入が行われたとするアクセル操作情報を取得した場合、減速制御、あるいは加速抑制制御の実行を終了することを特徴とする。
【0024】
これにより、運転者によるアクセルペダルへの操作介入によって、減速制御、あるいは加速抑制制御を終了することができる。その結果、減速制御、あるいは加速抑制制御を終了した後に、通常の車間制御(自車両前方に車両が存在しない場合には設定車速で走行させる定速制御)の実行に移行することができる。
【0025】
請求項9に記載の車間制御装置は、情報取得手段の取得した車両情報に基づいて、所定範囲に存在する車両が自車線に存在する自車線確率、及び所定範囲に存在する車両の自車両に対する横方向の位置とその移動量の少なくとも一方を算出する算出手段を備え、ターゲット選定手段は、自車線確率に基づいて抽出するものであり、情報取得手段が割込車両選定指示に対応する操作情報を取得した場合、横方向の位置、及び移動量の少なくとも一方を加味して、ターゲットを抽出することを特徴とする。これにより、割込車両をターゲットとしてより抽出しやすくすることができる。
【0026】
請求項10に記載の車間制御装置では、制御手段は、情報取得手段が割込車両選定指示に対応する操作情報を取得する直前までのターゲットに比べて、自車両からの距離が短い新たなターゲットを選定するまでの間、減速制御、あるいは加速抑制制御を継続して実行することを特徴とする。これにより、ターゲットが速やかに選定されないため、車間制御の開始が遅れるようになる場合であっても、自車両の割込車両への接近を遅らせることができる。
【0027】
請求項11に記載の車間制御装置では、情報取得手段は、自車両におけるアクセルペダル操作を検出するアクセル操作検出手段からのアクセル操作情報を取得し、制御手段は、減速制御、あるいは加速抑制制御を継続して実行しているときに、アクセルペダルへの操作介入が行われたとするアクセル操作情報を情報取得手段が取得した場合、減速制御、あるいは加速抑制制御の実行を終了することを特徴とする。
【0028】
これにより、運転者によるアクセルペダルへの操作介入によって、減速制御、あるいは加速抑制制御を終了することができる。その結果、減速制御、あるいは加速抑制制御を終了した後に、通常の車間制御(自車両前方に車両が存在しない場合には設定車速で走行させる定速制御)の実行に移行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の車間距離制御装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は自車両の車室内のステアリングホイール近傍に配置されるコントロールSW21及び目標車間設定SW22を示す図であり、(b)はコントロールSW21の拡大図であり、(c)は目標車間設定SW22の拡大図である。
【図3】クルーズコントロールの処理フローチャートである。
【図4】運転者指示判定処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】ターゲット選定処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】目標加速度演算処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】通常目標加速度演算処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】目標加速度を算出するための制御マップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明である車間制御装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1に、本発明の車間制御装置が採用された制御系の全体構成を示す。図1に示す車間制御ECU1は、本発明の車間制御装置であり、この車間制御ECU1を中心として、ブレーキECU2、メータECU3、エンジンECU4、レーダセンサ11、車速センサ12、ヨーレートセンサ13、ステアリングセンサ14、コントロールスイッチ(SW)21、目標車間設定スイッチ(SW)22、警報ブザー23によって制御系が構成される。
【0031】
図1に示す制御系は、自車両の全車速(0[km/h]〜約100[km/h])の範囲において、以下の各制御を実現するものである。なお、以下の走行局面1〜4における各制御を総称してクルーズコントロール(クルーズ機能)と呼ぶことにする。
【0032】
[走行局面1]先行車両が存在しない場合には、設定された車速で定速走行する(定速制御)。
【0033】
[走行局面2]定速制御中に自車両より遅い車両に追い付く場合には、その車両をターゲットに選定して、そのターゲットとの適切な車間距離を保って追従走行し、ターゲットが停止した場合にはターゲットとの適切な車間距離を保って自車両を停止し、停止状態を保持する(車間制御)。
【0034】
[走行局面3]定速制御中に停止車両に接近する、又は自車両に比較的近い距離から隣接車線の車両が自車両の前方に進入する(割込車両が割り込む)状況において、運転者から停止車両又は割込車両をターゲットの候補とする停止車両選定指示又は割込車両選定指示を受けた場合には自車両を減速させる(減速制御)、あるいは加速を抑制させる(加速抑制制御)。減速制御、あるいは加速抑制制御の開始後、停止車両又は割込車両をターゲットとして選定した場合には、ターゲットとの適切な車間距離を保って自車両を停止又は追従走行する。
【0035】
なお、停止車両選定指示を受けて減速制御、あるいは加速抑制制御を開始した場合には、ターゲットが確定するまで減速制御、あるいは加速抑制制御を継続して実行し、この減速制御、あるいは加速抑制制御の継続中に運転者によるアクセルペダルの操作介入が行われた場合、減速制御、あるいは加速抑制制御の実行を終了して、定速制御若しくは車間制御へ移行する。
【0036】
また、割込車両選定指示を受けて減速制御、あるいは加速抑制制御を開始した場合には、割込車両選定指示を受ける直前までのターゲットに比べて自車両からの距離が短い新たなターゲットを選定するまで減速制御、あるいは加速抑制制御を継続して実行し、この減速制御、あるいは加速抑制制御の継続中に運転者によるアクセルペダルの操作介入が行われた場合、減速制御、あるいは加速抑制制御の実行を終了して、定速制御若しくは車間制御へ移行する。
【0037】
[走行局面4]自車両が停止状態を保持しているとき、運転者により自車両の発進を許可する指示(発進許可指示)を受けた場合には、自車両を発進させる(加速制御)。
【0038】
レーダセンサ11はスキャン式のレーザレーダであり、自車両の前バンパー部、あるいはその近傍に設けられる。レーダセンサ11は、レーザビームを自車両前方に送出してその反射光から自車両前方の所定範囲に存在する物体(適宜、物標と呼ぶ)を検出する。レーダセンサ11には車間制御ECU1が接続されており、レーダセンサ11は、検出した物体に関する各種データを含んだ先行車情報(車両情報)とダイアグデータを車間制御ECU1に出力する。なお、本実施形態では、レーダセンサ11としてレーザレーダを採用した場合について説明するが、レーダレーダに限らず、ミリ波を用いたミリ波レーダ等を採用することができる。
【0039】
先行車情報は、レーダセンサ11が検出した物体までの距離Z、横位置Xs、相対速度Vr、物体種別(停止物体/移動物体)、自車線確率Pi、及び横相対速度Vsの各種データで構成される。距離Zは、レーダセンサ11の搭載位置を座標原点とし、自車両の前方向をZ軸、このZ軸に対して垂直な方向(自車両の幅方向)をX軸とするZ−X座標平面におけるZ軸上の値を示す。横位置Xsは、車間制御ECU1から入力した推定カーブ半径(推定R)のデータに基づいて、距離Zと自車両に対する物体の方向から算出される横位置Xcを直線路におけるX軸上の横位置Xsに変換して表したものである。すなわち、カーブ路における物体の横位置を直線路における横位置に換算したものである。
【0040】
推定Rは、車間制御ECU1において推定されるものであり、具体的には、自車両の現車速Vnとステアリングの操舵角θに基づいて数式1から推定する。なお、数式1におけるKR、α、βは何れも定数である。
【0041】
(数1)
R=KR×(1+α×Vn2+β×Vn3)/θ
また、直線路における物体の横位置Xsは、上記数式1から推定された推定Rに基づいて数式2により算出する。
【0042】
(数2)
Xs=Xc×Z2/2×R
上記Z−X座標平面では、距離Zと横位置Xsとから、直線路における物体の位置(Xs、Z)を表す。
【0043】
相対速度Vrは、レーダセンサ11が検出した物体と自車両との相対速度を表すものであり、物体と自車両とが接近する場合には負(−)の符号を付し、物体と自車両とが遠ざかる場合には正(+)の符号を付して表すものとする。物体種別は、レーダセンサ11が検出した物体について、相対速度Vrの大きさに基づいて停止(静止)する物体(静止物体)と移動する物体(移動物体)に区別したものである。
【0044】
自車線確率Piは、レーダセンサ11の検出した物体が自車線に存在する確率を表すもので、レーダセンサ11の内部において、直線路における物体の位置(Xs、Z)から予め作成された確率マップに基づいて算出される。この確率マップに基づく自車線確率Piの算出方法は特開平11−45398号公報に記載されている手法を採用することができるので、その説明を省略する。
【0045】
横相対速度Vsは、自車両に対するX軸方向の相対速度であり、Z軸に対し右側を正(+)、左側を負(−)として表す。横相対速度Vsは、距離Zと横位置XsからZ軸に対する角度を求め、その角度と距離Zから計算する。
【0046】
車速センサ12は、自車両の転動輪の回転速度に応じた間隔で車速パルスを出力するセンサであり、各転動輪毎に備えられる。この車速センサ12から出力される車速パルスから自車両の現車速Vnが推定(算出)され、その推定(算出)された車速VnがエンジンECU4に出力される。
【0047】
ヨーレートセンサ13は、上記Z−X座標平面に垂直なY軸回りの角速度(ヨーレートdω/dt)を検出するセンサであり、ステアリングセンサ14は、ステアリングの中立位置(0°:直進状態)からの切れ角(操舵角θ)を検出するセンサである。ヨーレートセンサ13及びステアリングセンサ14は、ヨーレートdω/dt及び操舵角θの検出信号をブレーキECU2へ出力する。
【0048】
コントロールSW21及び目標車間設定SW22は、図2(a)に示すように自車両のステアリングホイール近傍に配置される。同図(a)において、ステアリング軸の向かって右側には、レバー状のコントロールSW21が設けられており、ステアリングホイールには目標車間設定SW22が設けられている。
【0049】
コントロールSW21は、クルーズ機能のON/OFF切り替え、定速制御における車速や車間制御における上限車速の設定、アクセルペダルの操作によることのない加速・減速、クルーズ機能の非制御状態から制御状態への復帰を行うためものである。また、目標車間設定SW22は車間制御における目標車間時間の切り替え(”長”(2.4秒)、”中”(2.0秒)、”短”(1.8秒)の3段階の切り替え)を行うためのものである。
【0050】
図2(b)には、コントロールSW21の拡大図が示されている。コントロールSW21はレバー状をなして、同図(b)の上下方向に操作可能であり、その側部には押し込み操作可能なメインSW21aが設けられている。このメインSW21aを押し込むことにより、車間制御ECU1のクルーズ機能電源がONする。電源ON状態は、クルーズ機能の待機状態であり、定速制御における車速(設定車速)や目標車間時間が設定された後に運転者がクルーズ機能をセットすることにより実際のクルーズ機能に移行する。クルーズ機能のセット(SET)は、コントロールSW21を下方向へ下げる操作(タップダウン操作)を行うことにより実行される。
【0051】
クルーズ機能がセットされた状態で設定車速を増大させる場合には、コントロールSW21を上方向へ上げる操作(タップアップ操作)を行い、設定車速を減少させる場合にはコントロールSW21を下方向へ下げる操作(タップダウン操作)を行うことにより実行される。
【0052】
また、クルーズ機能がセットされた状態で運転者がブレーキペダル操作を行うと、クルーズ機能がキャンセルされることになるが、そのキャンセルされた状態でコントロールSW21を上方向へ上げる操作(タップアップ操作)を行うことにより、クルーズ機能がセットされた元の状態に復帰する(リジューム機能)。
【0053】
上記停止車両選定指示又は割込車両選定指示を出すとともに自車両の減速、あるいは加速の抑制を開始する場合には、コントロールSW21を所定時間(0.5秒程度)以上継続して下方向へ下げる操作(コースト操作)を行うことにより実行される。また、上記発進許可指示を出す場合には、コントロールSW21を所定時間(0.5秒程度)以上継続した上方向へ上げる操作(アクセル操作)を行うことにより実行される。
【0054】
車間制御ECU1では、コントロールSW21からの操作情報を入力した場合、コントロールSW21を上/下方向へ継続して上げ下げ操作した操作時間から、タップアップ操作とアクセル操作の何れの操作であるのか、あるいは、タップダウン操作とコースト操作の何れの操作であるのかを判定する。
【0055】
これにより、運転者は、コントロールSW21を所定時間(0.5秒程度)以上継続して下方向へ操作することにより、停止車両選定指示又は割込車両選定指示を出すことができるようになり、その結果、停止車両や割込車両をクルーズコントロールのターゲットの候補として抽出しやすくすることができる。なお、上述したように、停止車両選定指示又は割込車両選定指示を受けることにより減速制御、あるいは加速抑制制御を開始するため、車間制御ECU1では所定時間(0.5秒程度)以上の操作時間である場合に、停止車両選定指示又は割込車両選定指示に対応した操作情報であると判定することが、クルーズ機能の誤作動を防ぐうえで好ましい。
【0056】
図2(c)には、目標車間設定SW22の拡大図が示されている。目標車間設定SW22は、目標車間時間を3段階に切り替える機能を持つ。目標車間時間は、エンジンONの初期状態では常に”長”(2.4秒)にセットされており、モードスイッチ(MODE)を操作することにより”長”(2.4秒)から”中”(2.0秒)、さらに”短”(1.8秒)に切り替わる。”短”(1.8秒)になってさらに操作すると、目標車間時間は再び”長”(2.4秒)に戻る。
【0057】
警報ブザー23は、車間制御ECU1からのON/OFF信号を受けて警報を発生するものである。車間制御ECU1では、クルーズ機能で発生させることのできる最大加速度を超える加速度が必要であると判断された場合、あるいは、自車両が停止状態を保持している場合に発進可能であると判断された場合などにON信号を警報ブザー23に出力する。
【0058】
車間制御ECU1、ブレーキECU2、メータECU3、及びエンジンECU4は、CAN(Controller Area Network)バスを介して接続され、相互に各種データを送受信する。ブレーキECU3は自車両の制動力を制御する制御装置であり、ヨーレートdω/dt、操舵角θをヨーレートセンサ13及びステアリングセンサ14から入力するとともに、CANバスを介して目標加速度、ブレーキ要求信号を入力する。ブレーキECU2では、ブレーキ要求信号を受けた場合に、自車両に目標加速度が発生するように自車両の制動力を制御し、その制動力の制御状態(ブレーキ)をヨーレートdω/dt、操舵角θとともにCANバスへ出力する。
【0059】
メータECU3は、CANバスから表示データを入力して、ディスプレイやメータ内の各種警告灯の表示制御を行う。エンジンECU4は自車両の駆動力を制御する制御装置であり、車速センサ12から自車両の現車速Vnを入力するとともに、CANバスを介して目標加速度、ダイアグデータを入力する。エンジンECU4は、これらの入力データに基づいてクルーズコントロールを実現する。具体的には、エンジンECU4には何れも図示しない電子スロットルアクチュエータ及びECT(電子制御トランスミッション)ソレノイドが接続されており、車間制御ECU1から供給された目標加速度に応じて電子スロットルアクチュエータを駆動することで、自車両の駆動力が制御される。また、エンジンECU4は、車速センサ12からの現車速Vn及び駆動力の制御状態(アイドル)をCANバスに出力する。
【0060】
車間制御ECU1は、レーダセンサ11から先行車情報とダイアグデータを入力し、コントロールSW21からの操作情報を入力する。また、目標車間設定SW22からは目標車間時間に対応した信号を入力し、CANバスから現車速Vn、操舵角θ、ヨーレートdω/dt、駆動力及び制動力の制御状態の信号を入力する。車間制御ECU1では、これらの入力信号や入力情報に基づいてクルーズコントロールの処理を実行し、その処理により、自車両の目標加速度、ブレーキ要求、表示データを生成するとともに、その生成したデータとダイアグデータをCANバスに出力する。
【0061】
本実施形態の構成は以上のようであり、その動作について、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。図3は、車間制御ECU1及びレーザセンサ11が実行するクルーズコントロールの処理フローチャートである。本処理は、運転者がコントロールSW21のメインスイッチ21aを押し込み(電源ON状態)、設定車速や目標車間時間が設定された後にクルーズ機能のセット(タップダウン操作)を行うことにより開始する。
【0062】
図3に示すステップS10では、レーダセンサ11から先行車情報とダイアグデータを取得する。ステップS20では、CANバスから現車速Vn、操舵角θ、ヨーレートdω/dt、ブレーキECU2における制動力の制御状態(ブレーキ)、エンジンECU4における駆動力の制御状態(アイドル)、の各種データを取得する。
【0063】
ステップS30では図4に示す運転者指示判定処理を実行する。図4のステップS301では、停止車両選定指示フラグ(以下、停止指示フラグfgs)がON(”1”)、又は割込車両選定指示フラグ(以下、割込指示フラグfgi)がON(”1”)であるかどうかを判定する。このステップS301で肯定判断した場合にはステップS307へ処理を進め、否定判断した場合にはステップS302へ処理を進める。
【0064】
ステップS302では、コントロールSW21を操作した方向(上下)及び操作時間から、コントロールSW21からの操作情報がタップアップ操作、タップダウン操作、アクセル操作、及びコースト操作の何れの操作であるのかを判定する。ステップS303では、ステップS302にてコースト操作であると判定した場合、そのコースト操作が停止車両選定指示、又は割込車両選定指示であるかどうかを判定する。
【0065】
ステップS303にて肯定判断される場合にはステップS304へ処理を進め、否定判断される場合には本処理を終了する。ステップS304では、クルーズコントロールのターゲットが確定している(選定済み)であるかどうかを判断する。このステップ304にて肯定判断した場合には、ステップS305にて運転者によるコントロールSW21へのコースト操作は割込車両選定指示に対応した操作であるとして、割込指示フラグfgiをON(”1”)に設定する。一方、ステップS304にて否定判断した場合には、ステップS306にて運転者ントロールSW21へのコースト操作は停止車両選定指示に対応した操作であるとして、停止指示フラグfgsをON(”1”)に設定する。
【0066】
このように、運転者指示判定処理では、クルーズコントロールのターゲットが確定しているときにコースト操作が行われた場合には、そのコースト操作は割込車両選定指示に対応した操作であると判定し、クルーズコントロールのターゲットが未確定のときにコースト操作が行われた場合には、そのコースト操作は停止車両選定指示に対応した操作であると判定する。
【0067】
ステップS301にて肯定判断されると、ステップS307では、停止指示フラグfgsがON(”1”)であるかどうかを判定する。このステップS307にて肯定判断した場合にはステップS308に処理を進め、否定判断した場合(割込指示フラグfgiがON(”1”)である場合)にはステップS311へ処理を進める。
【0068】
ステップS308では、クルーズコントロールのターゲットが確定しているかどうかを判定する。このステップS308にて肯定判断した場合にはステップS309にて停止指示フラグfgsをOFF(”0”)に設定して本処理を終了する。一方、ステップS308にて否定判断した場合にはステップS310に処理を進める。ステップS310では、運転者によるアクセルペダルへの操作介入が行われたかどうかを判定する。このステップS310で肯定判断した場合にはステップS309における上述した処理を行う。一方、ステップS310にて否定判断した場合には、本処理を終了する。
【0069】
ステップS311では、クルーズコントロールのターゲットが変更したかどうかを判定する。すなわち、割込指示フラグfgiがOFF(”0”)からON(”1”)に変化する前と後(割込車両選定指示に対応するコースト操作が行われる前と後)でターゲットが変更したかどうかを判定する。このステップS311で肯定判断した場合には、ステップS312へ処理を進め、否定判断した場合にはステップS314へ処理を進める。
【0070】
ステップS312では、割込指示フラグfgiがOFF(”0”)からON(”1”)に変化する直前まで選定していたターゲットに比べて、割込指示フラグfgiがOFF(”0”)からON(”1”)に変化した後、自車両からの距離が短い新たなターゲットを選定したかどうかを判定する。このステップS312にて肯定判断した場合にはステップS313へ処理を進め、否定判断した場合にはステップS314へ処理を進める。ステップS313では、割込指示フラグfgiをOFF(”0”)に設定して本処理を終了する。
【0071】
ステップS314では、運転者によるアクセルペダルへの操作介入が行われたかどうかを判定する。このステップS314で肯定判断した場合にはステップS313における上述した処理を行う。一方、ステップS314にて否定判断した場合には、本処理を終了する。
【0072】
図3のステップS40では、図5に示すターゲット選定処理を実行する。図5のステップS401では、レーダセンサ11からの先行車情報に含まれる全ての物標を対象に、以下の抽出条件1〜4のうち、抽出条件1 AND (抽出条件2 OR 抽出条件3 OR 抽出条件4)を満たす物標をターゲット(割込車両)候補として抽出する。
【0073】
なお、抽出条件1におけるDz[m]は正の定数であり、抽出条件3におけるVx[km/h]は正の定数である。また、抽出条件4における横位置Xsoは、割込指示フラグfgiがOFF(”0”)からON(”1”)に変化した時点の横位置を示すものであり、Xsxは正の定数である。
【0074】
[抽出条件1]距離Z<(先行車両までの距離Z’+Dz)
[抽出条件2]相対速度Vr<0
[抽出条件3](横位置Xs>0 AND 横相対速度Vs<−Vx) OR (横位置Xs<0 AND 横相対速度Vs>Vx)
[抽出条件4](横位置Xs>0 AND {横位置Xs−横位置Xso}<−Xsx) OR
(横位置Xs<0 AND {横位置Xs−横位置Xso}>Xsx)
抽出条件1は、先行車両より低速で走行する車両の割り込みを想定し、先行車両までの距離Z’よりやや遠い距離の車両もターゲットの候補とするものである。抽出条件3はX軸方向における自車両への接近を横相対速度で表した条件であり、抽出条件4はX軸方向における自車両への接近を横位置の変化(移動量)で表した条件である。
【0075】
ステップS402では、レーダセンサ11からの先行車情報に含まれる全ての物標を対象に、以下の抽出条件5〜7のうち、抽出条件5 OR 抽出条件6 OR 抽出条件7を満たす物標をターゲット(先行車両)候補として抽出する。
【0076】
[抽出条件5]物体種別=移動物体 AND 自車線確率Pi>所定係数
[抽出条件6]停止指示フラグfgs=ON(”1”) AND 自車線確率Pi>所定係数
[抽出条件7]割込指示フラグfgi=ON(”1”) AND 割込車両候補群抽出(ステップS401)にて割込車両候補として抽出された物標
上記抽出条件6及び抽出条件7は、停止指示フラグfgsや割込指示フラグfgiがON(”1”)である場合に抽出条件として加えられる。このように、運転者がコントロールSW21から停止車両選定指示や割込車両選定指示に対応するコースト操作を行った場合に抽出条件6及び抽出条件7が加えられるので、運転者の指示により停止車両や割込車両をターゲットの候補として抽出しやすくすることができる。
【0077】
従って、レーダセンサ11が停止車両以外の静止物体を検出する場合であっても、停止車両選定指示や割込車両選定指示に対応するコースト操作の操作情報を取得しなければ(運転者の指示がなければ)、自車線を走行中の車両とは異なる停止車両や割込車両をターゲットの候補とするための抽出条件を追加せず、上記コースト操作の操作情報を取得した場合に限って(運転者の指示がある場合に限って)抽出条件6及び抽出条件7を追加するようになる。よって、停止車両以外の静止物体をターゲットの候補から極力除外することができるのである。また、上記コースト操作の操作情報を取得した場合に抽出条件6及び抽出条件7を追加するので、自車両に対して比較的近い距離で割込車両が割り込んでくる状況において、レーダセンサ11が割り込みの早い段階から割込車両を検出することが困難であっても、車間制御のターゲットを割込車両へ早期に変更することが可能となる。
【0078】
また、抽出条件7は、割込指示フラグfgi=ON(”1”)である場合に、横位置Xsと横移動量を加味した抽出条件4に該当する物標を抽出する条件であるので、この抽出条件7により、割込車両をターゲットの候補としてより抽出しやすくすることができる。
【0079】
ステップS403では、ステップS402によってターゲット候補が抽出されたかどうかを判定する。このステップS403にて肯定判断した場合には、ステップS404へ処理を進め、否定判断した場合にはステップS406へ処理を進める。
【0080】
ステップS404では、ステップS402にて抽出されたターゲット候補のうち、距離Zが最も短いターゲット候補を最終的なターゲットに選定する。これにより、割込車両がターゲット候補として抽出される場合には、自車両から近い距離で進入する割込車両をターゲットとすることができる。
【0081】
ステップS405では、ステップS404にて選定したターゲットの先行車情報をターゲットデータとして記憶する。ステップS406では、ターゲット未選定である旨のデータをターゲットデータとして記憶する。
【0082】
図3のステップS50では、図6に示す目標加速度演算処理を実行する。図6のステップS501では、図7に示す通常目標加速度演算処理を実行する。図7のステップS511では、上述したターゲット選定処理(図5)によってターゲットの選定が確定(選定済み)であるかどうかを判断する。このステップS511にて肯定判断した場合にはステップS512へ処理を進める。一方、否定判断した場合には、ステップS516にて目標加速度をターゲット未選定(未確定)時の値に設定し、本処理を終了する。
【0083】
ステップS512では、数式3に示す車間偏差比を演算する。なお、数式3における目標車間距離Dは、目標車間時間に現車速Vnを乗じることで得られる。
【0084】
(数3)
車間偏差比[%]=(現在のターゲットの距離Z−目標車間距離D)/目標車間距離D
ステップS513では、ターゲットとの相対速度Vrに対してローパスフィルタ(LPF)処理を施すことで、一時的に過大若しくは過少な大きさを示す相対速度を除外する。ステップS514では、図8に示す制御マップを用い、ステップS512にて演算した車間偏差比とステップS513にてフィルタ処理を施した相対速度に該当する目標加速度を算出する。
【0085】
ステップS515では、ステップS514にて算出した目標加速度と、予め設定された加速度上・下限値(例えば±2[m/s2]程度)とを比較して、目標加速度が正の値(加速側)の場合に、目標加速度>加速度上限値を満たす場合、若しくは、目標加速度が負の値(減速側)の場合に、目標加速度<加速度下限値を満たす場合に、目標加速度を加速度上限値、若しくは、加速度下限値に変更する。
【0086】
図6のステップS502では、停止指示フラグfgsがON(”1”)であるかどうかを判定し、肯定判断した場合にはステップS503へ処理を進め、否定判断した場合にはステップS504へ処理を進める。ステップS503では、自車両に発生させるべく最終的な目標加速度の大きさをALH(例えば−1[m/s2])に設定して、本処理を終了する。
【0087】
ステップS504では、割込指示フラグfgiがON(”1”)であるかどうかを判定し、肯定判断した場合にはステップS505へ処理を進める。一方、ステップS504で否定判断した場合には、運転者による停止車両選定指示や割込車両選定指示がないため、目標加速度を図7の通常目標加速度演算処理にて演算した目標加速度に設定して本処理を終了する。
【0088】
ステップS505では、図7の通常目標加速度演算処理にて演算した目標加速度が、目標加速度>0[m/s2]を満たすかどうかを判定する。このステップS505で肯定判断した場合にはステップS506へ処理を進め、否定判断した場合にはステップS507へ処理を進める。ステップS506では、運転者による割込車両選定指示を最初に受けた場合であるので、自車両に発生させるべく最終的な目標加速度の大きさをALW(例えば−0.07[m/s2])に設定して、本処理を終了する。ステップS507では、自車両に発生させるべく最終的な目標加速度の大きさを、ステップS501通常目標加速度演算処理で算出した目標加速度にALWを加えた大きさに設定する。これにより、割込車両選定指示を受けた後、減速制御、あるいは加速抑制制御中である場合には、その(負の)加速度をさらに大きくすることができる。
【0089】
ここで、ALHとALWはともに負の値を示し、またALH<ALWの関係にある。すなわち、ステップS502及びステップS504では、停止指示フラグfgs及び割込指示フラグfgiから停止車両選定指示であるのか、割込車両選定指示であるのかを判定し、この指示の内容に応じて異なる大きさの(負の)加速度が自車両に発生するようにしている。そして、ALH<ALWの関係からわかるように、運転者による停止車両選定指示を最初に受けた場合には、割込車両選定指示を最初に受けた場合に比べて大きい(負の)加速度で自車両を減速させるようにしている。これは、自車両に対する相対速度を停止車両と割込車両とで比較した場合、停止車両との相対速度の方が割込車両との相対速度に比べて大きいため、より大きな(負)の加速度で自車両を減速させる必要があるからである。
【0090】
このように、コントロールSW21から停止車両選定指示や割込車両選定指示に対応するコースト操作によって自車両の減速、あるいは加速の抑制を開始することが可能となる。なお、この自車両の減速、あるいは加速の抑制は、ターゲットの設定が確定するまで(図4のステップS308にて肯定判断されるまで)継続して実行されることになるので、ターゲットが速やかに選定されないため、車間制御の開始が遅れるようになる場合であっても、自車両の停止車両への接近を遅らせることができる。
【0091】
また、減速制御、あるいは加速抑制制御を継続して実行しているときにアクセルペダルの操作介入が行われた場合(図4のステップS310あるいはステップS314にて肯定判断された場合)には、減速制御、あるいは加速抑制制御の実行を終了する。これにより、運転者によるアクセルペダルへの操作介入によって、減速制御、あるいは加速抑制制御を終了することができる。その結果、減速制御、あるいは加速抑制制御を終了した後に、通常の車間制御(自車両前方に車両が存在しない場合には設定車速で走行させる定速制御)の実行に移行することができる。
【0092】
また、割込車両選定指示を受けて減速制御、あるいは加速抑制制御を開始した場合に、その割込車両選定指示を受ける直前までのターゲットに比べて、自車両からの距離が短い新たなターゲットを選定するまで(図4のステップS312にて肯定判断されるまで)の間は、アクセルペダルからの操作介入がない限り(図4のステップS314にて肯定判断されない限り)、減速制御、あるいは加速抑制制御を継続して実行するようになるため、ターゲットが速やかに選定されないため、車間制御の開始が遅れるようになる場合であっても、自車両の割込車両への接近を遅らせることができる。
【0093】
図3のステップS60では、目標加速度演算処理により演算された目標加速度が負の値である場合にはブレーキ要求信号を出力すべきと判断する。ステップS70では、警報ブザー23から警報を発生させるかどうか(ON/OFF)を判定する。ステップS80では推定Rの推定演算を行い、ステップS90ではレーダセンサ11に現車速Vn、推定Rを出力し、ステップS100では目標加速度、ブレーキ要求、ダイアグ、及び表示データをCANバスへ出力する。
【0094】
このように、本実施形態では、運転者がコントロールSW21から停止車両選定指示や割込車両選定指示に対応するコースト操作を行った場合に、上述した抽出条件6及び抽出条件7が加えられるので、運転者の指示により停止車両や割込車両をターゲットの候補として抽出しやすくすることができる。
【符号の説明】
【0095】
1 車間制御ECU
2 ブレーキECU
3 メータECU
4 エンジンECU
11 レーダセンサ
12 車速センサ
13 ヨーレートセンサ
14 ステアリングセンサ
21 コントロールSW
22 目標車間設定SW
23 警報ブザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両前方の車両をターゲットとして、そのターゲットとの車間を制御する車間制御を実行する制御手段を備えた車間制御装置であって、
前記自車両の運転者が操作する操作手段からの操作情報、及び前記自車両前方の自車線を含む所定範囲に存在する車両を検出する車両検出手段からの車両情報を取得する情報取得手段と、
前記車両情報から、所定の抽出条件に該当するターゲットを選定するターゲット選定手段と、を備え、
前記ターゲット選定手段は、前記情報取得手段がターゲットの選定に関する運転者からの指示に対応した操作情報を取得した場合、前記自車線に停止する停止車両、及び前記自車線の隣接車線から前記自車両前方の自車線に進入する割込車両の少なくとも一方の車両をターゲットとするための抽出条件を加えたうえで選定することを特徴とする車間制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記情報取得手段が前記ターゲットの選定に関する運転者からの指示に対応した操作情報を取得した場合、前記自車両を減速する減速制御、あるいは加速を抑制する加速抑制制御を開始することを特徴とする請求項1記載の車間制御装置。
【請求項3】
前記操作手段は、前記自車両のステアリングホイール近傍に配置され、当該ステアリングホールの上下方向に操作可能なレバー機構であり、
前記レバー機構を上下方向へ継続して操作した操作時間から、前記情報取得手段の取得した操作情報が前記ターゲットの選定に関する運転者からの指示に対応した操作情報であるかどうかを判定する操作情報判定手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の車間制御装置。
【請求項4】
前記情報取得手段が前記ターゲットの選定に関する運転者からの指示に対応した操作情報を取得した場合、その操作情報が、前記停止車両を前記ターゲットとする停止車両選定指示に対応した操作情報であるのか、あるいは、前記割込車両を前記ターゲットとする割込車両選定指示に対応した操作情報であるのかを判定する指示判定手段を備え、
前記制御手段は、前記指示判定手段の判定結果に応じて、異なる大きさの減速度が前記自車両に発生するように前記減速制御、あるいは前記加速抑制制御を実行することを特徴とする請求項2又は3記載の車間制御装置。
【請求項5】
前記指示判定手段は、前記ターゲット選定手段によるターゲットの選定が確定しているときに、前記情報取得手段が前記ターゲットの選定に関する運転者からの指示に対応する操作情報を取得した場合、前記割込車両選定指示に対応した操作情報であると判定し、前記ターゲット選定手段によるターゲットの選定が未確定のときに、前記情報取得手段が前記ターゲットの選定に関する運転者からの指示に対応する操作情報を取得した場合、前記停止車両選定指示に対応した操作情報であると判定することを特徴とする請求項4記載の車間制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記情報取得手段が前記停止車両選定指示に対応する操作情報を取得した場合、前記割込車両選定指示に対応する操作情報を取得した場合に比べて大きな減速度で前記自車両を減速する、あるいは加速を抑制することを特徴とする請求項4又は5記載の車間制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記情報取得手段が前記停止車両選定指示に対応する操作情報を取得した場合、前記ターゲット選定手段によるターゲットの選定が確定するまで、前記減速制御、あるいは前記加速抑制制御を継続して実行することを特徴とする請求項4〜6の何れか1項に記載の車間制御装置。
【請求項8】
前記情報取得手段は、前記自車両におけるアクセルペダル操作を検出するアクセル操作検出手段からのアクセル操作情報を取得し、
前記制御手段は、前記減速制御、あるいは前記加速抑制制御を継続して実行しているときに、前記情報取得手段が前記アクセルペダルへの操作介入が行われたとするアクセル操作情報を取得した場合、前記減速制御、あるいは前記加速抑制制御の実行を終了することを特徴とする請求項7記載の車間制御装置。
【請求項9】
前記情報取得手段の取得した車両情報に基づいて、前記所定範囲に存在する車両が前記自車線に存在する自車線確率、及び前記所定範囲に存在する車両の前記自車両に対する横方向の位置とその移動量の少なくとも一方を算出する算出手段を備え、
前記ターゲット選定手段は、前記自車線確率に基づいて抽出するものであり、前記情報取得手段が前記割込車両選定指示に対応する操作情報を取得した場合、前記横方向の位置、及び移動量の少なくとも一方を加味して、前記ターゲットを抽出することを特徴とする請求項4〜6の何れか1項に記載の車間制御装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記情報取得手段が前記割込車両選定指示に対応する操作情報を取得する直前までのターゲットに比べて、前記自車両からの距離が短い新たなターゲットを選定するまでの間、前記減速制御、あるいは前記加速抑制制御を継続して実行することを特徴とする請求項9記載の車間制御装置。
【請求項11】
前記情報取得手段は、前記自車両におけるアクセルペダル操作を検出するアクセル操作検出手段からのアクセル操作情報を取得し、
前記制御手段は、前記減速制御、あるいは前記加速抑制制御を継続して実行しているときに、前記アクセルペダルへの操作介入が行われたとするアクセル操作情報を前記情報取得手段が取得した場合、前記減速制御、あるいは前記加速抑制制御の実行を終了することを特徴とする請求項9又は10記載の車間制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−178392(P2011−178392A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112257(P2011−112257)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【分割の表示】特願2006−318813(P2006−318813)の分割
【原出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】