説明

車高制御による潜り込み防止装置

【課題】車高調整制御装置に関し、簡素な構成で車両の衝突による潜り込みを効果的に抑止できるようにする。
【解決手段】
自車両に接近する対象物の情報を検出する検知センサ3a,3bと、自車両と該対象物とが衝突する可能性を判定する衝突判定手段5b,5cと、自車両の車高を調整する車高調整手段5fとを備え、車高調整手段5fが、衝突判定手段5b,5cによって衝突可能性があると判定した場合に、自車両の車高を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車高制御による潜り込み防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両同士の衝突において、例えば、車高の高い中型・大型トラックと、これら中型・大型トラックよりも車高の低い一般乗用車等とが衝突する場合、一般乗用車の車体は中型・大型トラックの車体底面と路面とのクリアランスに潜り込んでしまう。また、中型・大型トラックの車体底面部は一般的に剛性の高い車体フレーム等により構成されているが、一般乗用車が衝突によって中型・大型トラックの車体底面に潜り込んでしまった場合、その衝突面は中型・大型トラックの車体底面に設けられた剛性の高いフレーム部と剛性の弱一般乗用車の上部ボディとになる。そのため、衝突による大部分の衝撃をこの剛性の弱い一般乗用車の上部ボディが変形しながら吸収することになり、中型・大型トラックの車体底部に一般乗用車の車体が潜り込んで、一般乗用車の車体に大きな損傷を与えることになる。
【0003】
このような潜り込み現象を防止するための構造として、特許文献1には、中型・大型トラックの運転室下方に配設された車体フレームに、車体の前方に対して傾斜した斜方板を設け、かかる斜方板により、一般乗用車のボンネット上面部に対して、斜め上方から押圧力を確実に作用させることで、衝撃エネルギーを吸収する潜り込み防止構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−18622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、中型大型トラックに設けた斜方板によって、一般乗用車のボンネット上面部に斜め上方から押圧力を作用させることで、衝突によるエネルギーを吸収する構造を採用するため、路面と垂直な車両の面同士(例えばバンパー部同士)による衝突面積を十分に確保できず、一般乗用車のボンネットの路面高さが斜方板の路面高さより低い場合は、確実に潜り込みを防止できないといった課題がある。
【0006】
また、ボンネット上面部の車体前後方向の長さが比較的短い軽乗用車や、ボンネット上面部がほとんど存在しないようなワンボックス型乗用車に対しては、斜め上方からのボンネットへの押圧力のみでは十分に潜り込みを抑止できず、中型・大型トラックの斜方板やフレーム等が軽自動車やワンボックス型乗用車の運転室まで到達し乗り上げてしまう課題もある。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、簡素な構成で、車両の衝突による潜り込みを効果的に抑止できる、車高制御による潜り込み防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、開示の車高制御による潜り込み防止装置は、自車両に接近する対象物の情報を検出する検知センサと、該検知センサからの情報に基づいて、該自車両と該対象物とが衝突する可能性を判定する衝突判定手段と、該自車両の車高を調整する車高調整手段とを備える車高制御による潜り込み防止装置において、該車高調整手段が、該衝突判定手段によって衝突可能性があると判定した場合に、該自車両の車高を調整する。
【0008】
また、該検知センサの情報に基づいて、該自車両と該対象物とが衝突する場合に該自車両に最初に接触しうる該対象物の当接部の路面高さを判断する対象物判断手段をさらに備え、該車高調整手段が、該衝突判定手段によって衝突可能性があると判定した場合に、該自車両のバンパー部の路面高さを該対象物判断手段で判断された該当接部の路面高さとなるように該自車両の車高を調整するようにしてもよい。
【0009】
なお、対象物が車両の場合には、この車両のバンパー部が当接部となる。
また、該自車両が該対象物と衝突する場合の、該自車両の衝突姿勢を設定する衝突姿勢設定手段をさらに備え、該対象物判断手段が、該検知センサからの情報に基づいて、該対象物を予め定めた所定の車両種類の区分に分類し、該衝突姿勢設定手段が、該対象物判断手段における該分類結果に基づいて該自車両の最適な衝突姿勢を設定するとともに、該車高調整手段が、該衝突判定手段によって衝突可能性があると判定した場合に、該自車両を該衝突姿勢となるように該自車両の車高を調整するようにしてもよい。
【0010】
なお、ここでいう最適な衝突姿勢とは、自車両のバンパー部と対象物としての他車両のバンパー部とが相互に接触するように、自車両の車高を調整した衝突姿勢をいう。
また、該検知センサが、該自車両の前方対象物を検知する前方検知センサと、該自車両の後方対象物を検知する後方検知センサと、該自車両の右方対象物を検知する右方検知センサと、該自車両の左方対象物を検知する左方検知センサとからなる構成としてもよい。
【0011】
また、該検知センサが、該自車両の前方対象物を検知する前方検知センサと、該自車両の後方対象物を検知する後方検知センサとからなり、該車高調整手段が、該衝突判定手段によって該自車両前方の対象物と衝突すると判定した場合は、該自車両の前方車高を下げ、該衝突判定手段によって該自車両後方の対象物と衝突すると判定した場合は、該自車両の後方車高を下げるように車高を調整するようにしてもよい。
【0012】
また、該対象物衝突判定手段の判定結果に応じて、運転者に衝突の可能性を報知する運転者報知表示を備えた構成としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
開示の車高制御による潜り込み防止装置によれば、自車両と対象物とが衝突する場合に、対象物を路面とは垂直な面である自車両のバンパー部によって十分な面積を確保しながら受止めるため、衝突による衝撃を効果的に吸収しつつ、対象物の自車両への潜り込みも確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る車高制御による潜り込み防止装置の第一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る第一実施形態の車高制御による潜り込み防止装置の制御内容を示すフローチャート(前段)である。
【図3】本発明に係る第一実施形態の車高制御による潜り込み防止装置の制御内容を示すフローチャート(後段)である。
【図4】本発明に係る第一実施形態の車高制御における検知センサによる前方対象物の情報を検知する様子を示した側面図である。
【図5】本発明に係る第一実施形態の車高制御による自車両と一般乗用車との対面衝突時の衝突形態の一例を示した側面図である。
【図6】本発明に係る第一実施形態の車高制御による自車両と一般乗用車との追突時の衝突形態の一例を示した側面図である。
【図7】本発明に係る第一実施形態の車高制御による自車両と小型トラックとの追突時の衝突形態の一例を示した側面図である。
【図8】本発明の第二実施形態における車高制御による潜り込み防止装置を示すブロック図である。
【図9】本発明の第二実施形態における車高制御による潜り込み防止装置の制御内容を示すフローチャート(前段)である。
【図10】本発明の第二実施形態における車高制御による潜り込み防止装置の制御内容を示すフローチャート(後段)である。
【図11】本発明に係る第二実施形態の車高制御による自車両の最適な衝突姿勢を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面により、本発明を実施するための最良の形態である第一実施形態および、第二実施形態について説明する。
[第一実施形態]
図1は、本発明に係る第一実施形態の車高制御による潜り込み防止装置1を示すブロック図である。図2は、本発明に係る第一実施形態の車高制御による潜り込み防止装置1の制御内容を示すフローチャート(前段)である。図3は、本発明に係る第一実施形態の車高制御による潜り込み防止装置1の制御内容を示すフローチャート(後段)である。図4は、本発明に係る第一実施形態の車高制御における検知センサによる前方対象物の情報を検知する様子を示した側面図である。図5は、本発明に係る第一実施形態の車高制御による自車両(トラック2)と一般乗用車12との対面衝突時の衝突形態の一例を示した側面図である。図6は、本発明に係る第一実施形態の車高制御による自車両(トラック2)と一般乗用車12との追突時の衝突形態の一例を示した模側面図である。また、図7は、本発明に係る第一実施形態の車高制御による自車両(トラック2)と小型トラック13との追突時の衝突形態の一例を示した側面図である。
【0016】
まず、本発明の第一実施形態にかかる車高制御による潜り込み防止装置1は、中型・大型のトラック2に搭載されるもので、前方ミリ波レーダ(車両前方検知センサ)3aと、後方ミリ波レーダ(車両後方検知センサ3b)と、車速センサ4と、車両制御ECU5と、車両前方軸右輪のFRエアサスペンション6aと、車両前方軸左輪のFLエアサスペンション6bと、車両後方軸右輪のRRエアサスペンション7aと、車両後方軸左輪のRLエアサスペンション7bと、運転者報知表示8とを備えて構成されている。
【0017】
ミリ波レーダ3aは、ミリ波の反射により自車両(トラック2)前方にある前方対象物との相対距離や速度等の前方対象物の情報を検出するもので、前方対象物の画像を比較処理することにより、その情報を検出する可視画像式センサや、夜間や悪天候において有効な赤外画像式センサ、対象物にレーザパルス光を放射し、その反射時間を計測するレーザレーダ式センサなどが用いられる。
【0018】
また、後方ミリ波レーダ3bは、自車両(トラック2)後方にある後方対象物の相対距離や速度の情報を検出するもので、センサの種類は前述の前方ミリ波レーダ3aと同様のセンサ類を用いることができる。
車速センサ4は、車輪の回転数に基づいて自車両(トラック2)の走行速度を検出するものであり、この検出結果に応じた出力信号を後述する車両制御ECU5へ出力する。
【0019】
車両制御ECU5は、公知のCPUやROMから構成され、自車走行状態判定部5a(自車走行状態判定手段)と、前方衝突判定部5b(前方衝突判定手段)と、後方衝突判定部5c(後方衝突判定手段)と、前方対象物判断部5d(前方対象物判断手段)と、後方対象物判断部5e(後方対象物判断手段)と、車高調整部5f(車高調整手段)とから構成されている。また、車両制御ECU5は、内蔵するメモリに記録された制御プログラムに従って、詳細を後述する車高調整制御を実行するものである。
【0020】
FRエアサスペンション6aは、自車両(トラック2)の車体と車両前方軸右輪との間に介在するもので、車体と車両前方軸右輪との相対変位による衝撃を空気バネの作用により緩衝するものである。また、この空気バネは図示しない内部圧力調整機構により、車体と車両前方軸右輪との相対位置を調整する機能を備え、この内部圧力調整機構は前述の車高調整部5fからの信号に応じて、車体と車両前方軸右輪との相対位置を調整することで、自車両(トラック2)の車高を上下させるものである。
【0021】
また、FLエアサスペンション6bは、自車両(トラック2)の車体と車両前方軸左輪との間に介在し、RRエアサスペンション7aは、自車両(トラック2)の車体と車両後方軸右輪との間に介在し、RLエアサスペンション7bは、自車両(トラック2)の車体と車両後方軸左輪との間に介在するもので、自車両(トラック2)の車高を調整制御する構成は、前述のFRエアサスペンション6aと同様のため、ここでは説明を省略する。
【0022】
自車走行状態判定部5aは、速度センサ4から送信される自車両(トラック2)の速度情報に基づいて、自車両(トラック2)が停車中もしくは低速走行中、減速中、定速走行中または、加速中であるかを判定するものである。
具体的には、所定時刻TとTにおける自車両(トラック2)の速度VとVとをそれぞれ検出し、速度Vが15km/h以下(0≦V≦15km/h)かつ、速度Vも15km/h以下(0≦V≦15km/h)であれば、自車両(トラック2)の走行状態を停車中もしくは低速走行中と判定する。また、速度V>15km/h,V>15km/hの少なくともいずれかであって、所定期間T〜Tの減速量すなわち、速度VとVの差(V−V)が、正の値である場合(V−V>0)は、自車両(トラック2)の走行状態を減速中と判定する。また、速度V>15km/h,V>15km/hの少なくともいずれかであって、速度VとVの差(V−V)がゼロの場合(V−V=0)は、自車両(トラック2)の走行状態を定速走行中と判定する。一方、V>15km/h,V>15km/hの少なくともいずれかであって、速度VとVの差(V−V)が、負の値である場合(V−V<0)は、自車両(トラック2)の走行状態は加速中と判定する。
【0023】
前方衝突判定部5bは、前述の前方ミリ波レーダ3aによって検出された前方対象物と自車両(トラック2)との相対距離や相対速度等の情報を受信し、この受信情報に基づいて前方対象物と自車両(トラック2)との衝突可能性を判定する。
例えば、自車両(トラック2)と前方対象物との衝突を回避するのに必要な相対距離LRFや相対速度VRFを、路面条件(ウェット・ドライ等)ごとに予め求めておき、この求めておいた所定の基準値(LRF, VRF)と、前方ミリ波レーダ3aによって検出された所定時刻Tにおける路面の条件(ドライ・ウェット等)および、前方対象物との相対距離LRF3と相対速度VRF3との関係を比較することによって、自車両(トラック2)と前方対象物とが衝突するか否かを判定する。
【0024】
具体的な判定内容は、所定時刻Tにおける比較結果が、衝突回避に十分な距離と速度を満たしている場合は、自車両(トラック2)と前方対象物とは衝突しないものと判定する。一方、所定時刻Tにおける比較結果が、衝突回避に十分な距離と速度のいずれか一方の条件でも欠くような場合は、自車両(トラック2)と前方対象物とは衝突するものと判定する。また、前方対象物と衝突するものと判定した場合は、詳細を後述する、自車両(トラック2)の運転室内に設けられた運転者報知表示8に信号を送信する。
【0025】
後方衝突判定部5cは、後方ミリ波レーダ3bによって検出された後方対象物との相対距離や相対速度等の情報を受信し、この受信情報に基づいて後方対象物と自車両(トラック2)との衝突可能性を判定する。
例えば、自車両(トラック2)と後方対象物との衝突を回避するのに必要な相対距離LRRや相対速度VRRを、路面条件(ウェット・ドライ等)ごとに予め求めておき、この求めておいた所定の基準値(LRR, VRR)と、後方ミリ波レーダ3bによって検出された所定時刻Tにおける路面の条件(ドライ・ウェット等)および、後方対象物との相対距離LRR3と相対速度VRR3との関係を比較することによって、自車両(トラック2)と後方対象物とが衝突するか否かを判定する。
【0026】
判定内容は、所定時刻Tにおける比較結果が、衝突回避に十分な相対距離と相対速度を満たしている場合は、自車両(トラック2)と後方対象物とは衝突しないものと判定する。一方、所定時刻Tにおける比較結果が、衝突回避に十分な距離と速度のいずれか一方の条件でも欠くような場合は、自車両(トラック2)と後方対象物と衝突するものと判定する。また、後方対象物と衝突するものと判定した場合は、詳細を後述する、自車両(トラック2)の運転室内に設けられた運転者報知表示8に信号を送信する。
【0027】
前方対象物判断部5dは、前述の前方ミリ波レーダ3aによって検出された前方対象物の大きさ等の情報を受信し、この受信情報に基づいて、前方対象物と自車両(トラック2)とが衝突する場合に、この前方対象物の側面で、自車両(トラック2)の前面(フロントバンパー部2a)に最初に接触しうる当接部の位置(路面高さ)を判断するものである。
【0028】
具体的には、図4に示すように、自車両(トラック2)の前面に備えた前方ミリ波レーダ3aからミリ波を出射することで前方対象物(ガードレール11)から反射してきた電波を受信し、伝搬時間やドップラー効果によって生じる周波数差などを基に、この前方対象物(ガードレール11)の側面で自車両(トラック2)に対し最も突出した部分である突設部11aの位置情報(路面高さh)を測定する。そして、この前方対象物(ガードレール11)の突設部11aの路面高さH(測定値)が、前方対象物(ガードレール11)と自車両(トラック2)とが衝突する場合に、自車両(トラック2)の前面(フロントバンパー部2a)と最初に接触する当接部(突設部)の路面高さであると判断する。
【0029】
また、前方対象物が一般乗用車12で、自車両(トラック2)と一般乗用車12とが正面衝突する場合は、図5に示すように、一般乗用車12で、自車両(トラック2)の前面(フロントバンパー部2a)に最初に接触する当接部(突設部)の路面高さは、一般乗用車12のフロントバンパー部12aの路面高さH(測定値)と判断される。
また、図6に示すように、前方対象物が一般乗用車12であって、この一般乗用車12の後方から自車両(トラック2)が追突するような場合は、一般乗用車12で、自車両(トラック2)の前面(フロントバンパー部2a)と最初に接触する当接部(突設部)の路面高さは、一般乗用車12のリアバンパー部12bの路面高さH(測定値)と判断される。
【0030】
また、前方対象物が自動二輪車であって、この自動二輪車(前方対象物)と自車両(トラック)とが正面衝突するような場合は、自動二輪車(前方対象物)で、自車両(トラック)前面部と最初に接触する当接部(突設部)の路面高さは、自動二輪車の前輪タイヤトレッド面で、その法線方向が自車両の前面(フロントバンパー部2a)と略垂直になるタイヤトレッド面の路面高さ(測定値)と判断される。
【0031】
後方対象物判断部5eは、前述の後方ミリ波レーダ3bによって検出された後方対象物の大きさ等の情報を受信し、この受信情報に基づいて、後方対象物と自車両(トラック2)とが衝突する場合に、この後方対象物の側面で、自車両(トラック2)の後面(リアバンパー部2b)に最初に接触しうる当接部の位置(路面高さ)を判断するもので、その判断手法については、前述の前方対象物判断部5cにおける当接部(突設部)の路面高さの判断手法と同様である。
【0032】
例えば、図7に示すように、後方対象物が小型トラック13であって、この小型トラック13が自車両(トラック2)の後方から追突するような場合は、小型トラック13で、自車両(トラック2)の後方面(リアバンパー部2b)と最初に接触する当接部(突設部)の路面高さは、小型トラック13のフロントバンパー部13aの路面高さH(測定値)と判断される。
【0033】
車高調整部5fは、前述の前方対象物判断部5dによって検出された前方対象物の当接部(突設部)の路面高さと、後方対象物判断部5eとによって検出された後方対象物の当接部(突設部)の路面高さの情報に基づき、自車両(トラック2)の車高調整を行うための信号を、前述のエアサスペンションの内部圧力調整機構に発信するものである。
例えば、前方対象物判断部5dによる前方対象物(一般乗用車12)の当接部(リアバンパー部12b)の路面高さがH(測定値)で、後方対象物判断部5eによる後方対象物(小型トラック13)の当接部(フロントバンパー13a)の路面高さがH(測定値)と判断された場合、車高調整部5fは、FRエアサスペンション6a,FLエアサスペンション6b,RRエアサスペンション7aおよび、RLエアサスペンション7bによって、自車両(トラック2)のフロントバンパー部2aの路面高さがHに、リアバンパー部2bの路面高さがHに調整されるような制御信号を、前述の内部圧力調整機構に発信する。
【0034】
そして、内部圧力調整機構が、前述の車高調整部5fから受信した信号に応じて、FRエアサスペンション6a,FLエアサスペンション6b,RRエアサスペンション7aおよび、RLエアサスペンション7bを調整することで、本発明の第一実施形態にかかる車高調整制御が実行される。
運転者報知表示8は、自車両(トラック2)の運転室内に設けられ、前述の前方衝突判定部5bおよび、後方衝突判定部5cから送信される信号に応じて、運転者に前方対象物や後方対象物との衝突可能性を報知するものである。
【0035】
本発明の第一実施形態にかかる車高制御による潜り込み防止装置1は、上述のように構成されているので、例えば図2,3に示すフローに従って車高調整制御が実施される。
まず、ステップA10では、車両制御ECU5の自車走行状態判定部5aが、車速センサ4により自車両(トラック2)の速度を検出し、ステップA20において、この検出した速度情報に基づいて、自車両(トラック2)が停車中もしくは低速走行中または減速中であるか、定速走行中または加速中であるかを判定する。自車両(トラック2)が停車中もしくは減速中、低速走行中であると判定した場合はステップA30に進み、定速走行中もしくは加速中であると判定した場合はステップA120へと進む。
【0036】
ステップA30では、車両制御ECU5の前方衝突判定部5bが、前方ミリ波レーダ3aにより前方対象物の相対距離や相対速度等の情報を検出し、ステップA40では、車両制御ECU5の後方衝突判定部5cが、後方ミリ波レーダ3bにより後方対象物の相対距離や相対速度等の情報を検出する。その後、ステップA50において、前方衝突判定部5bが、前方対象物との衝突の可能性を判定し、衝突の可能性があると判定した場合は、ステップA60へと進む。一方、ステップA50において、衝突の可能性が無いと判定した場合は、ステップA100へと進む。ステップA60では後方衝突判定部5cが後方対象物との衝突可能性を判定する。このステップA60で後方対象物との衝突可能性があると判定した場合、すなわち自車両(トラック2)が前方対象物と後方対象物との双方と衝突すると判定した場合は、ステップA70,A80へと進む。
【0037】
ステップA70においては、前方対象物判断部5dが、自車両(トラック2)と前方対象物とが衝突する場合に、前方対象物の側面で自車両(トラック2)の前面(フロントバンパー部2a)に最初に接触しうる当接部(突設部)の路面高さを判断する。また、ステップA80において、後方対象物判断部5eが、自車両(トラック2)と後方対象物とが衝突する場合に、後方対象物の側面で自車両(トラック2)の後面(リアバンパー部2b)に最初に接触しうる当接部(突設部)の路面高さを判断する。この判断結果に基づいて、車高調整部5fがエアサスペンションの内部圧力制御機構に信号を送信することで、自車両(トラック2)が前方対象物と後方対象物との双方と衝突するのに適した車高となるように車高調整制御が実行される。なお、ここでいう衝突するに適した車高への車高調整制御とは、自車両(トラック2)のフロントバンパー部2aの路面高さを、前方対象物判断部5dによって判断した前方対象物の当接部(突設部)の路面高さと一致させ、かつ、自車両(トラック2)のリアバンパー部2bの路面高さを、後方対象物判断部5eによって判断した後方対象物の当接部(突設部)の路面高さと一致させるような車高調整制御をいう。
【0038】
また、ステップA60において、後方衝突判定部5cが後方対象物とは衝突可能性が無いと判定した場合、すなわち自車両(トラック2)は前方対象物のみと衝突すると判定した場合は、ステップA90へ進む。
ステップA90においては、前方対象物判断部5dが、自車両(トラック2)と前方対象物とが衝突する場合に、前方対象物の側面で自車両(トラック2)の前面(フロントバンパー部2a)に最初に接触しうる当接部(突設部)の路面高さを判断する。この前方対象物の判断結果に基づいて、車高調整部5fがエアサスペンションの内部圧力制御機構に信号を送信することで、自車両(トラック2)が前方対象物と衝突するのに適した車高となるように車高調整制御が実行される。なお、ここでいう衝突するに適した車高への車高調整制御とは、自車両(トラック2)のフロントバンパー部2aの路面高さを、前方対象物判断部5dによって判断した前方対象物の当接部(突設部)の路面高さと一致させるような車高調整制御をいう。
【0039】
また、ステップA50において、前方対象物との衝突可能性が無いと判定された場合は、ステップA100に進む。そして、このステップA100においては、後方対象物との衝突可能性が判定されるが、このステップA100で後方対象物との衝突可能性があると判定された場合、すなわち前方対象物とは衝突しないが後方対象物とは衝突すると判定された場合は、ステップA110へと進み、後方対象物判断部5eが、自車両(トラック2)と後方対象物とが衝突する場合に、後方対象物の側面で自車両(トラック2)の後面(リアバンパー部2b)に最初に接触しうる当接部(突設部)の路面高さを判断する。
【0040】
この後方対象物の判断結果に基づいて、車高調整部5fがエアサスペンションの内部圧力制御機構に信号を送信することで、自車両(トラック2)が後方対象物と衝突するのに適した車高となるように車高調整制御が実行される。なお、ここでいう衝突するに適した車高への車高調整制御とは、自車両(トラック2)のリアバンパー部2bの路面高さを、後方対象物判断部5eによって判断した後方対象物の当接部(突設部)の路面高さと一致させるような車高調整制御をいう。
【0041】
また、ステップA100において、後方対象物とは衝突しないと判定した場合、すなわち、自車両(トラック2)には前方対象物及び、後方対象物の双方とも衝突しないと判定した場合は、車両制御ECU5による車高調整制御は実行されずにリターンされる。
一方、ステップA20で、自車両(トラック2)が定速走行中もしくは加速中と判定された場合は、ステップA120へと進み、車両制御ECU5の前方衝突判定部5bが、前方ミリ波レーダ3aにより前方対象物の相対距離,相対速度等の情報を検出する。ここで、前方対象物のみを監視対象とするのは、自車両(トラック2)が定速走行中や加速中に、他の車両等と衝突する場合とは、自車両(トラック2)前面での対向車両との正面衝突や、自車両(トラック2)前方に存在する他の車両等へ追突など前方対象物との衝突が主であって、自車両(トラック2)の後方から他の車両等に追突される可能性は低いと考えられるからである。
【0042】
ステップA120において、前方対象物の情報を検出した後、ステップA130においては、前方衝突判定手部5bが、前方対象物との衝突の可能性を判定する。衝突の可能性があると判定した場合は、ステップA140へと進み、前方対象物判断部5dが、自車両(トラック2)と前方対象物とが衝突する場合に、前方対象物の側面で自車両(トラック2)の前面(フロントバンパー部2a)に最初に接触しうる当接部(突設部)の路面高さを判断する。この前方対象物の判断結果に基づいて、車高調整部5fがエアサスペンションの内部圧力制御機構に信号を送信することで、自車両(トラック2)が前方対象物と衝突するのに適した車高となるように車高調整制御が実行される。なお、ここでいう衝突するに適した車高への車高調整制御とは、自車両(トラック2)のフロントバンパー部2aの路面高さを、前方対象物判断部5dによって判断した前方対象物の当接部(突設部)の路面高さと一致させるような車高調整制御をいう。
【0043】
一方、ステップA130において、前方対象物とは衝突しないと判定した場合は、車両制御ECU5による車高調整制御は実行されずにリターンされる。
【0044】
[作用・効果]
以上のような制御内容により、本発明の第一実施形態における車高制御による潜り込み防止装置によれば以下のような作用・効果を奏する。
すなわち、前方対象物や後方対象物が、自車両(トラック2)と衝突する場合に最初に接触しうる当接部(突設部)の路面高さを判断し、この当接部(突設部)の路面高さと自車両(トラック2)のフロントバンパー部2aやリアバンパー部2bの路面高とが略同一の路面高さとなるように車高調整制御を行うため、衝突の際はこの前方対象物や後方対象物を自車両(トラック2)のフロントバンパー部2aやリアバンパー部2bで確実に受止めて衝突する。したがって、衝突による衝撃を自車両(トラック2)のフロントバンパー2aやリアバンパー2bで効果的に吸収するとともに、前方対象物や後方対象物の自車両(トラック2)への潜り込みを確実に防止することができる。
【0045】
また、前方ミリ波レーダ3aや後方ミリ波レーダ3bによって、前方対象物や後方対象物の当接部(突設部)の路面高さを正確に検出し、この検出値に応じて車高調整制御を実行するため、前方対象物や後方対象物が車両である場合に限らず、道路に固設されたガードレールや落下物等の障害物である場合でも、効果的に衝突による潜り込みを防止することができる。
【0046】
また、一般的なトラックはリアオーバハングの距離が長いため、後方対象物の潜り込みを防止すべくリアバンパー部2bの路面高さを低く設定すると、登板時にこのリアバンパー2bが路面接触し破損するおそれがある。しかし、本発明の構成によれば、後方対象物との衝突時にのみリアバンパー2bの路面高さ低くする車高調整制御を実行すれば十分なため、かかる制御によって後方対象物の衝突による潜り込みを確実に防止できるのみならず、通常走行時のリアバンパー2bの路面接触も効果的に回避し、リアバンパー2bの破損も防止することができる。
【0047】
また、前方衝突判定部5bや後方衝突判定部5cが衝突の可能性があると判定した場合は、運転者報知表示8によって、前方衝突、後方衝突、前後双方衝突の衝突形態に応じた警報が事前報知される。したがって、衝突による衝撃を運転者へ与える鞭打ちを防止できるだけでなく、衝突の際のエネルギーを少しでも緩和しうるステアリングやブレーキ操作を行う猶予を運転者に与えることができる。
【0048】
[第二実施形態]
以下、図8〜11に基づき、本発明の第二実施形態について説明する。
図8は、本発明の第二実施形態における車高制御による潜り込み防止装置10を示すブロック図である。図9は、本発明の第二実施形態における車高制御による潜り込み防止装置10の制御内容を示したフローチャート(前段)である。図10は、本発明の第二実施形態における車高制御による潜り込み防止装置10の制御内容を示したフローチャート(後段)である。図11は、本発明に係る第二実施形態の車高制御による自車両(トラック2)の最適な衝突姿勢を示した側面図である。
【0049】
本願発明の第二実施形態における車両制御ECU50は、図8に示すように、上述の第一実施形態の車両制御ECU5に、衝突姿勢設定部5gを新たに付け加えた構成からなるものである。なお、第一実施形態と同一の構成要素については同一の符号を用いて説明する。
本発明の第二実施形態に係る車高制御による潜り込み防止装置10は、中大型車両であるトラック2に搭載されるもので、前方ミリ波レーダ3aと、後方ミリ波レーダ3bと、車速センサ4と、車両制御ECU50と、車両前方軸右輪のFRエアサスペンション6aと、車両前方軸左輪のFLエアサスペンション6bと、車両後方軸右輪のRRエアサスペンション7aと、車両後方軸左輪のRLエアサスペンション7bと、運転者報知表示8とを備えて構成されている。
【0050】
前方ミリ波レーダ3a、後方ミリ波レーダ3b、車速センサ4、車両前方軸右輪のFRエアサスペンション6a、FLエアサスペンション6b、RRエアサスペンション7a、RLエアサスペンション7bおよび、運転者報知表示8については、前述の本発明に係る第一実施形態と同一の構成要素である。
車両制御ECU50は、公知のCPUやROMから構成され、自車走行状態判定部5aと、前方衝突判定部5bと、後方衝突判定部5cと、前方対象物判断部5dと、後方対象物判断部5eと、衝突姿勢設定部5gと、車高調整部5fとから構成されている。また、車両制御ECU50は、内蔵するメモリに記録された制御プログラムに従って、詳細を後述する車高調整制御を実行するものである。
【0051】
なお、第二実施形態における自車走行状態判定部5a,前方衝突判定部5b,後方衝突判定部5cについては、前述の第一実施形態における車両制御ECU5の構成要素と同一の構成であるため、ここでは説明を省略する。
第二実施形態における前方対象物判断部5dは、前方対象物を以下の表1に示すように、第1車種区分である中型トラック・大型トラック・小型バス・中型バス・大型バスまたは、第2車種区分である小型トラック・普通自動車・軽自動車のいずれかの区分に属するかを分類することで、中型・大型トラックである自車両(トラック2)と前方対象物とが衝突した場合に、前方対象物の側面で自車両(トラック2)に最初に接触しうる当接部(突設部)の路面高さを判断するものである。
【0052】
【表1】

【0053】
具体的には、前方ミリ波レーダ3aにより前方対象物の大きさ(全幅W)を受信し、この受信情報に基づいて、前方対象物を表1に示す第1車種区分または、第2車種区分のいずれかの区分に分類する。そして、この前方対象物が衝突の際に自車両(トラック2)と最初に接触しうる当接部(突設部)の路面高さを、この区分毎に予め定めておいた所定の値(平均的なバンパー部の路面高さ)から読取ることで判断する。
【0054】
例えば、受信した前方対象物の全幅Wが2.0m以上(W≧2.0m)の場合は、この前方対象物を第1車種区分として分類する。そして、前方対象物の当接部(突設部)の路面高さは、表1に基づいて区分毎に予め定めておいた第1車種区分の平均的な路面高(第1所定高さH)であると判断される。
また、受信した前方対象物の全幅Wが2.0m未満(W<2.0m)である場合は、この前方対象物を第2車種区分に分類する。そして、前方対象物の当接部(突設部)の路面高さは、表1に基づいて区分毎に予め定めておいた第2車種区分のバンパー部の平均的な路面高さ(第2所定高さH)であると判断される。ここで、第1所定高さHは、第2所定高さHよりも大きい値である(H>H)。なお、本実施形態においては、車両種類の区分を車幅(全幅W)に応じて2区分に分類する例を用いて説明したが、かかる区分の数や車幅Wの基準数値は任意の数に設定可能である。
【0055】
第二実施形態における後方対象物判断部5eは、後方対象物を前述の表1に示すように後方対象物の大きさ(車幅W)に応じて、第1車種区分または、第2車種区分のいずれかの区分に分類することで、自車両(トラック2)と後方対象物とが衝突した場合に、後方対象物側の側面で自車両(トラック2)に最初に接触しうる当接部(突設部)の位置(路面高さ)を判断するものである。なお、その判断手法は、前述の前方対象物判断部5dと同様のため、ここでは説明を省略する。
【0056】
衝突姿勢設定部5gは、前述の前方対象物判断部5dおよび、後方対象物判断部5eの判断結果に基づいて、自車両(トラック2)と前方対象物および後方対象物との最適な衝突姿勢を設定するものである。なお、ここでいう最適な衝突姿勢とは、例えば、前方対象物が前方対象物判断部5dによって第2車種区分に分類され、後方対象物が後方対象物判断部5eによって第1車種区分に分類された場合は、自車両(トラック2)のフロントバンパー2aの路面高さを第2所定高さHとし、リアバンパー2bの路面高さを第1所定高さHとするような衝突姿勢(図11のパターン1)をいう。
【0057】
また、前方対象物が前方対象物判断部5dによって第2車種区分に分類され、後方対象物が後方対象物判断部5eによって第2車種区分に分類された場合は、自車両(トラック2)のフロントバンパー2aの路面高さを第2所定高さHとし、リアバンパー2bの路面高さも第2所定高さHとするような衝突姿勢(図11のパターン2)をいう。
また、前方対象物が前方対象物判断部5dによって第1車種区分に分類され、後方対象物が後方対象物判断部5eによって第2車種区分に分類された場合は、自車両(トラック2)のフロントバンパー2aの路面高さを第1所定高さHとし、リアバンパー2bの路面高さを第2所定高さHとするような衝突姿勢(図11のパターン3)をいう。
【0058】
また、前方対象物が前方対象物判断部5dによって第1車種区分に分類され、後方対象物が後方対象物判断部5eによって第1車種区分に分類された場合は、自車両(トラック2)のフロントバンパー2aの路面高さを第1所定高さHとし、リアバンパー2bの路面高さも第1所定高さHとするような衝突姿勢(図11のパターン4)をいう。
車高調整部5fは、前述の衝突姿勢設定部5gの設定に基づき、各衝突姿勢(図11のパターン1〜4)に応じた車高調整を行うための信号を、前述のエアサスペンションの内部圧力調整機構に発信するものである。
【0059】
本発明の第二実施形態にかかる車高制御による潜り込み防止装置10は、上述のように構成されているので、例えば図9,10に示すフローに従って車高調整制御が実施される。
まず、ステップB10では、車両制御ECU5の自車走行状態判定部5aが、車速センサ4により自車両(トラック2)の速度を検出し、ステップB20において、この検出した速度情報に基づいて、自車両(トラック2)が停車中もしくは低速走行中または減速中であるか、定速走行中または加速中であるかを判定する。自車両(トラック2)が停車中もしくは減速中、低速走行中であると判定した場合はステップB30に進み、定速走行中もしくは加速中であると判定した場合はステップB150へと進む。
【0060】
ステップB30では、車両制御ECU5の前方衝突判定部5bが、前方ミリ波レーダ3aにより前方対象物の相対距離や相対速度等の情報を検出し、ステップB40では、車両制御ECU5の後方衝突判定部5cが、後方ミリ波レーダ3bにより後方対象物の相対距離や相対速度等の情報を検出する。その後、ステップB50において、前方衝突判定部5bが、前方対象物との衝突の可能性を判定し、衝突の可能性があると判定した場合は、ステップB60へと進む。一方、ステップB50において、衝突の可能性が無いと判定した場合は、ステップB120へと進む。ステップB60では後方衝突判定部5cが後方対象物との衝突可能性を判定する。このステップB60で後方対象物との衝突可能性があると判定した場合、すなわち自車両(トラック2)が前方対象物と後方対象物との双方と衝突すると判定した場合は、ステップB70,B80へと進む。
【0061】
ステップB70においては、前方対象物判断部5dが、前方ミリ波レーダ3aにより前方対象物の大きさ(全幅W)を検出し、この検出値に基づいて前方対象物を第1車種区分もしくは第2車種区分に分類することで、前方対象物が自車両(トラック2)と衝突する場合に、最初に接触しうる当接部(突設部)の路面高さ(H,H)を判断する。
また、ステップB80において、後方対象物判断部5eが、後方ミリ波レーダ3bにより後方対象物の大きさ(全幅W)を検出し、この検出値に基づいて後方対象物を第1車種区分もしくは第2車種区分に分類することで、後方対象物が自車両(トラック2)と衝突する場合に、最初に接触しうる当接部(突設部)の路面高さ(H,H)を判断する。
【0062】
その後、ステップB90へと進み、前述のステップB70とB80における判断結果に基づいて、車両制御ECU50の衝突姿勢設定部5gが自車両(トラック2)の衝突に最適な姿勢(図11のパターン1〜4)を設定する。この設定(図11のパターン1〜4)に応じて、車高調整部5fがエアサスペンションの内部圧力制御機構に信号を送信することで、自車両(トラック2)が前方対象物と後方対象物との双方と衝突するのに最適な姿勢(図11のパターン1〜4)となるように車高調整制御が実行される。
【0063】
また、ステップB60において、後方衝突判定部5cが後方対象物とは衝突可能性が無いと判定した場合、すなわち自車両(トラック2)は前方対象物のみと衝突すると判定した場合は、ステップB100へ進む。
ステップB100においては、前方対象物判断部5dが、前方ミリ波レーダ3aにより前方対象物の大きさ(全幅W)を検出し、この検出値に基づいて前方対象物を第1車種区分もしくは第2車種区分に分類することで、前方対象物が自車両(トラック2)と衝突する場合に、最初に接触しうる当接部(突設部)の路面高さ(H,H)を判断する。
【0064】
その後、ステップB110へと進み、前述のステップB100における判断結果に基づいて、車両制御ECU50の衝突姿勢設定部5gが自車両(トラック2)の衝突に最適な姿勢(図11のパターン1,3)を設定する。この設定(図11のパターン1,3)に応じて、車高調整部5fがエアサスペンションの内部圧力制御機構に信号を送信することで、自車両(トラック2)が前方対象物と衝突するのに最適な姿勢(図11のパターン1,3)となるように車高調整制御が実行される。
【0065】
また、ステップB50において、前方対象物との衝突可能性が無いと判定された場合は、ステップB120に進む。そして、このステップB120においては、後方対象物との衝突可能性が判定されるが、このステップB120で後方対象物との衝突可能性があると判定された場合、すなわち前方対象物とは衝突しないが後方対象物とは衝突すると判定された場合は、ステップB130へと進み、後方対象物判断部50eが、後方ミリ波レーダ3bにより後方対象物の大きさ(全幅W)を検出し、この検出値に基づいて後方対象物を第1車種区分もしくは第2車種区分に分類することで、後方対象物が自車両(トラック2)と衝突する場合に、最初に接触しうる当接部(突設部)の路面高さ(H,H)を判断する。
【0066】
その後、ステップB140へと進み、前述のステップB130における判断結果に基づいて、車両制御ECU50の衝突姿勢設定部5gが自車両(トラック2)の衝突に最適な姿勢(図11のパターン1,3)を設定する。この設定(図11のパターン1,3)に応じて、車高調整部5fがエアサスペンションの内部圧力制御機構に信号を送信することで、自車両(トラック2)が後方対象物と衝突するのに最適な姿勢(図11のパターン1,3)となるように車高調整制御が実行される。
【0067】
また、ステップB120において、後方対象物とは衝突しないと判定した場合、すなわち、自車両(トラック2)には前方対象物,後方対象物の双方とも衝突しないと判定した場合は、車両制御ECU50による車高調整制御は実行されずにリターンされる。
一方、ステップB20で、自車両(トラック2)が定速走行中もしくは加速中と判定された場合は、ステップB150へと進み、車両制御ECU50の前方衝突判定部5bが、前方ミリ波レーダ3aにより前方対象物の相対距離,相対速度等の情報を検出する。ここで、前方対象物のみを監視対象とするのは、自車両(トラック2)が定速走行中や加速中に、他の車両等と衝突する場合とは、自車両(トラック2)前面での対向車両との正面衝突や、自車両(トラック2)前方に存在する他の車両等へ追突など前方対象物との衝突が主であって、自車両(トラック2)の後方から他の車両等に追突される可能性は低くいと考えられるからである。
【0068】
ステップB150において、前方対象物の情報を検出した後、ステップB160においては、前方衝突判定部5bが、前方対象物との衝突の可能性を判定する。衝突の可能性があると判定した場合は、ステップB170へと進み、前方対象物判断部5dが、前方ミリ波レーダ3aにより前方対象物の大きさ(車幅W)を検出し、この検出値に基づいて前方対象物を第1車種区分もしくは第2車種区分に分類することで、前方対象物が自車両(トラック2)と衝突する場合に、最初に接触しうる当接部(突設部)の路面高さ(H,H)を判断する。
【0069】
その後、ステップB180へと進み、前述のステップB170における判断結果に基づいて、車両制御ECU50の衝突姿勢設定部5gが自車両(トラック2)の衝突に最適な姿勢(図11のパターン1,3)を設定する。この設定(図11のパターン1,3)に応じて、車高調整部5fがエアサスペンションの内部圧力制御機構に信号を送信することで、自車両(トラック2)が前方対象物と衝突するのに最適な姿勢(図11のパターン1,3)となるように車高調整制御が実行される。
【0070】
一方、ステップB160において、前方対象物とは衝突しないと判定した場合は、車両制御ECU50による車高調整制御は実行されずにリターンされる。
【0071】
[作用・効果]
以上のような制御内容により、本発明の第二実施形態における車高制御による潜り込み防止装置10によれば以下のような作用・効果を奏する。
すなわち、自車両(トラック2)と衝突しうる前方対象物や後方対象物を、その大きさ(全幅)に基づいて予め定めておいた車両種類の区分に分類し、かかる区分に応じて自車両(トラック2)を最適な所定の衝突姿勢(図11のパターン1〜4)となるように車高調整制御を行うため、制御内容が簡素化され、極めて短時間で衝突をする場合においても、確実に潜り込みを防止することができる。
【0072】
また、前方対象物や後方対象物を自車両(トラック2)のフロントバンパー2aやリアバンパー2bで確実に受止めることができるため、衝突による衝撃を自車両(トラック2)のフロントバンパー2aやリアバンパー2bで効果的に吸収することができる。
また、一般的なトラックではリアオーバハングの距離が長いため、登板時におけるリアバンパー2bの路面接触を回避すべく、リアバンパー2bの路面高さをある程度確保する必要があるが、本発明に係る第二実施形態の構成によれば、衝突時のみ自車両(トラック2)を最適な所定の衝突姿勢(図11のパターン1〜4)となるように車高調整制御を行うため、後方対象物の衝突による潜り込みを確実に防止しつつ、通常走行時のリアバンパー2bの路面接触も効果的に回避することができる。
【0073】
また、前方衝突判定部5bや後方衝突判定部5cが衝突の可能性があると判定した場合は、運転者報知表示8によって、前方衝突、後方衝突、前後双方衝突の衝突形態に応じた警報が事前報知される。したがって、衝突による衝撃を運転者へ与える鞭打ちを防止できるだけでなく、衝突の際のエネルギーを少しでも緩和しうるステアリングやブレーキ操作を行う猶予を運転者に与えることができる。
【0074】
[その他]
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
例えば、本発明の第一実施形態及び第二実施形態においては、検知センサ3として前方ミリ波レーダ3aと後方ミリ波レーダ3bとを備えることで、対象物が自車両(トラック2)の前方もしくは後方から衝突する場合のみを想定して説明したが、この前方ミリ波レーダ3aと後方ミリ波レーダ3bとに加え、さらに右側ミリ波レーダ3cと左側ミリ波レーダ3dとを備える構成とすることもできる。
【0075】
すなわち、第一実施形態において、自車両(トラック2)の右側面に対象物としての一般乗用車12が衝突する場合は、この右側ミリ波レーダ3cによって検出した情報に基づいて、車高調整制御部5fが内部圧力調整機構に、FRエアサスペンション6aとRRエアサスペンション7aとを下げるような信号を送信して車高調整制御を実行することにより、右横方向から衝突する一般乗用車12のフロントバンパー部12aを自車両(トラック2)のサイドバンパー部2cで確実に受止めることができる。
【0076】
また、同様に左側ミリ波レーダ3dによって左横方向から衝突する一般乗用車12の情報を検知し、前述の右横方向からの衝突の場合と同様の車高制御を実行すれば、左横方向から衝突する一般乗用車12のフロントバンパー部12aを、自車両(トラック2)のサイドバンパー2cで確実に受止めることができる。
また、第二実施形態においては、自車両の左右方向から衝突する対象物である一般乗用車12の車両種類の区分(第2車種区分)に応じて、右方車高を下げた右傾姿勢や左傾姿勢とすることによっても、一般乗用車12のフロントバンパー部12aを自車両(トラック2)のサイドバンパー部2cで確実に受止めることができる。
【0077】
なお、このような車高調整制御を、自車両(トラック2)が走行中に行うことは、自車両(トラック2)の走行を不安定にさせるため好ましくないが、例えば、自車両(トラック2)が停車中であるか、又は所定の低速度走行中である場合のみ実施するようにすれば、自車両(トラック2)の右側面又は左側面に衝突する対象物(一般乗用車12)の潜り込みを効果的に防ぐことができる。
【0078】
また、本発明の第二実施形態では、前方対象物および後方対象物としての他車両を、その車幅(全幅W)に応じて2区分に分類し、かかる区分に応じて予め定め所定の高に車高調整制御を実施する潜り込み防止装置を説明したが、より簡素な制御内容とすることもできる。
例えば、前方対象物や後方対象物としての他車両を、中型・大型トラックである自車両(トラック2)と同種の第1車種区分に分類した場合は車高調整制御を実施せず、自車両(トラック2)よりも車幅の小さい第2車種区分に分類した場合にのみ車高調整制御を実施するようにしてもよい。
【0079】
また、前方対象物や後方対象物の大きさにかかわらず、前方対象物を検出した場合には、自車両(トラック2)の前方車高を予め定めた所定の路面高さまで下げ、後方対象物を検出した場合には、自車両(トラック2)の後方車高を予め定めた所定の路面高さまで下げ、前方対象物および後方対象物の双方を検出した場合には、自車両(トラック2)の前方車高と後方車高との双方を予め定めた所定の路面高さまで下げるように、自車両(トラック2)の車高を制御する構成としてもよい。
【0080】
この場合も、より制御内容が簡素化されるとともに、前方対象物や後方対象物の潜り込みを確実に防止することができる。
また、本発明の第一実施形態及び第二実施形態においては、自車両(トラック2)をキャビン(運転室)とシャシとが一体化した中大型トラックを用いて説明したが、例えば、シャシを別体としてコンテナー等を牽引するタイプのトレーラー式トラックにも適用可能である。
【0081】
また、エアサスペンションを装着した車両であれば、トラック2に限られず、例えばバスや、ミキサー車などの特殊大型車両にも適用可能である。この場合も、上述の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 第一実施形態に係る車高制御による潜り込み防止装置
2 トラック
3a 前方ミリ波レーダ
3b 後方ミリ波レーダ
4 車速センサ
5 第一実施形態に係る車両制御ECU
5a 自車走行状態判定部
5b 前方衝突判定部
5c 後方衝突判定部
5d 前方対象物判断部
5e 後方対象物判断部
5g 車高調整部
5f 衝突姿勢設定部
6a FRエアサスペンション
6b FLエアサスペンション
7a RRエアサスペンション
7d RLエアサスペンション
8 運転者報知表示
10 第一実施形態に係る車高制御による潜り込み防止装置
11 前方対象物(ガードレール)
12 一般乗用車
13 小型トラック
50 第二実施形態に係る車両制御ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に接近する対象物の情報を検出する検知センサと、
該検知センサからの情報に基づいて、該自車両と該対象物とが衝突する可能性を判定する衝突判定手段と、
該自車両の車高を調整する車高調整手段とを備える車高制御による潜り込み防止装置において、
該車高調整手段が、該衝突判定手段によって衝突可能性があると判定した場合に、該自車両の車高を調整する
ことを特徴とする車高制御による潜り込み防止装置。
【請求項2】
該検知センサの情報に基づいて、該自車両と該対象物とが衝突する場合に該自車両に最初に接触しうる該対象物の当接部の路面高さを判断する対象物判断手段をさらに備え、
該車高調整手段が、該衝突判定手段によって衝突可能性があると判定した場合に、
該自車両のバンパー部の路面高さを該対象物判断手段で判断された該当接部の路面高さとなるように該自車両の車高を調整する
ことを特徴とする請求項1記載の車高制御による潜り込み防止装置。
【請求項3】
該自車両が該対象物と衝突する場合の、該自車両の衝突姿勢を設定する衝突姿勢設定手段をさらに備え、
該対象物判断手段が、該検知センサからの情報に基づいて、該対象物を予め定めた所定の車両種類の区分に分類し、
該衝突姿勢設定手段が、該対象物判断手段における該分類結果に基づいて該自車両の最適な衝突姿勢を設定するとともに、
該車高調整手段が、該衝突判定手段によって衝突可能性があると判定した場合に、該自車両を該衝突姿勢となるように該自車両の車高を調整する
ことを特徴とする請求項2記載の車高制御による潜り込み防止装置。
【請求項4】
該検知センサが、該自車両の前方対象物を検知する前方検知センサと、該自車両の後方対象物を検知する後方検知センサと、該自車両の右方対象物を検知する右方検知センサと、該自車両の左方対象物を検知する左方検知センサとからなる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車高制御による潜り込み防止装置。
【請求項5】
該検知センサが、該自車両の前方対象物を検知する前方検知センサと、該自車両の後方対象物を検知する後方検知センサとからなり、
該車高調整手段が、該衝突判定手段によって該自車両前方の対象物と衝突すると判定した場合は、該自車両の前方車高を下げ、該衝突判定手段によって該自車両後方の対象物と衝突すると判定した場合は、該自車両の後方車高を下げるように車高を調整する
ことを特徴とする請求項1記載の車高制御による潜り込み防止装置。
【請求項6】
該対象物衝突判定手段の判定結果に応じて、運転者に衝突の可能性を報知する運転者報知表示を備えた
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車高制御による潜り込み防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−68205(P2011−68205A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219319(P2009−219319)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】