説明

軟弱地盤における建物の基礎構造

【課題】軟弱地盤の層の厚さが大きく、沈下量が大きい場合でも、許容限度を越えて建物が傾かないように基礎地盤の不同沈下を抑制できると共に、建物が傾いた場合でもこの傾きを容易に修正できる建物の基礎構造を提供する。
【解決手段】ベタ基礎14による建物側基盤層15と、表層改良工法による地盤側基盤層16と、これらの間に挟み込まれる、扁平な断面形状から内部に流体圧力が負荷されて膨張変形する複数の膨張鋼管17とからなり、且つ表層改良工法による地盤側基盤層16は、これの全体に分散配置さ下方の地盤に設けられた複数の摩擦杭18の上端部と接合して形成されている。基礎地盤13の不同沈下によって地盤側基盤層16に生じる傾きを摩擦杭18で抑制すると共に、住宅建築物12に生じる傾きを、建物側基盤層15と地盤側基盤層16との間に挟み込まれた一又は複数の膨張鋼管17を選択して膨張させることで修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱地盤における建物の基礎構造に関し、特に、軟弱地盤の上方に建築される建物に基礎地盤の不同沈下による傾きが生じた際に、建物の傾きを修正できるようにした軟弱地盤における建物の基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば後背湿地、臨海埋立地、三角州低地、おぼれ谷、海岸砂州等を構成する地盤は、泥炭質の地盤や圧密の進行の遅い地盤等によって形成されていることから、軟弱地盤となっている場合が多い。このような軟弱地盤は、地盤支持力が小さく、また引き続き圧密沈下を生じ易いことから、軟弱地盤の上方に建物を構築する場合には、構築された建物に不同沈下(不等沈下)等の沈下が生じやすい。特に軟弱地盤の層の厚さが大きいと、不同沈下による影響が顕著になる。
【0003】
建物の基礎地盤に生じるこのような不同沈下を効果的に、且つ確実に防止するには、支持杭として、例えば鋼管杭を、軟弱地盤よりも下方の支持層まで打ち込む工法が一般に採用されているが(例えば、特許文献1参照)、支持杭を支持層まで打ち込む工法では、支持層までの深さが相当程度に深くなると、多くの時間とコストがかかることになる。
【0004】
これに対して、基礎地盤の不同沈下をある程度許容し、許容限度を越えて建物が傾いた場合にれを修正できるようにした沈下修正基礎構造も開発されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の沈下修正基礎構造では、基礎地盤の表層部分に設けた受圧盤と建物の基礎との間に介在させて、扁平な断面形状から内部に流体圧力が負荷されて膨張変形する複数の加圧膨張体として、例えば膨張鋼管を配設しておき、膨張鋼管の内部に流体を加圧供給して膨張させることにより、建物の沈下による傾きを修正できるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−60363号公報
【特許文献2】特開2007−154525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の沈下修正基礎構造では、鋼管杭を支持層まで打ち込むことなく、基礎地盤の不同沈下による建物の傾きの修正を簡易に行えるようにして、工期や施工コストを効果的に削減すること可能であるが、軟弱地盤の層の厚さが大きく、沈下量が大きい場合でも、基礎地盤の不同沈下や建物の傾きに対してより効果的に対応できるようにするためには、さらなる開発が望まれている。また、特許文献2の沈下修正基礎構造では、不同沈下による傾きが予想される部分の基礎地盤や、建物の基礎を適宜補強して、膨張鋼管を配設しておくものであるが、基礎地盤の不同沈下や建物の傾きは、予想できない部分や方向に生じることもあるため、これらの不同沈下や傾き対して、より柔軟に対応できるようにすることが望まれている。
【0007】
本発明は、軟弱地盤の層の厚さが大きく、沈下量が大きい場合でも、許容限度を越えて建物が傾かないように効果的に基礎地盤の不同沈下を抑制できると共に、許容限度を越えて建物が傾いた場合でも、この傾きを容易に修正することのできる軟弱地盤における建物の基礎構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、軟弱地盤の上方に建築される建物に基礎地盤の不同沈下による傾きが生じた際に、建物の傾きを修正できるようにした軟弱地盤における建物の基礎構造であって、鉄筋コンクリート製のベタ基礎による建物側基盤層と、表層改良工法によって形成された地盤側基盤層と、前記建物側基盤層と前記地盤側基盤層との間に挟み込まれて任意の位置に設置される、扁平な断面形状から内部に流体圧力が負荷されて膨張変形する複数の加圧膨張体とを含み、且つ前記表層改良による地盤側基盤層は、該地盤側基盤層の全体に分散配置されて該地盤側基盤層の下方の地盤に設けられた複数の摩擦杭の上端部と接合して形成されており、前記基礎地盤の不同沈下によって前記地盤側基盤層に生じる傾きを前記摩擦杭で抑制すると共に、前記建物に生じる傾きを、前記建物側基盤層と前記地盤側基盤層との間に挟み込まれた一又は複数の加圧膨張体を選択して膨張させることで修正する軟弱地盤における建物の基礎構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
そして、本発明の軟弱地盤における建物の基礎構造では、前記摩擦杭が、柱状改良工法によって形成された摩擦杭であることが好ましい。
【0010】
また、本発明の軟弱地盤における建物の基礎構造では、前記加圧膨張体が、扁平な断面形状から内部に流体圧力が負荷されて膨張変形する膨張鋼管であることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の軟弱地盤における建物の基礎構造では、前記ベタ基礎の底盤部の内部に鉄筋が上下2段に配筋されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の軟弱地盤における建物の基礎構造によれば、軟弱地盤の層の厚さが大きく、沈下量が大きい場合でも、許容限度を越えて建物が傾かないように効果的に基礎地盤の不同沈下を抑制できると共に、許容限度を越えて建物が傾いた場合でも、この傾きを容易に修正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る軟弱地盤における建物の基礎構造の構成を説明する略示正面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る軟弱地盤における建物の基礎構造の構成を説明する、建物を省略して示す略示斜視図である。
【図3】加圧膨張体の配設状況、及びベタ基礎の内部の配筋状況を説明する部分断面図である。
【図4】(a)は膨張鋼管を例示する斜視図、(b)は(a)のA−Aに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1及び図2に示す本発明の好ましい一実施形態に係る軟弱地盤における建物の基礎構造10は、例えば軟弱地盤11の上方に形成された造成地に、建物として例えば住宅建築物12を建築する際に、基礎地盤13の不同沈下によって住宅建築物12が大きく傾くのを抑制すると共に、住宅建築物12に傾きが生じた場合でも、この傾きを容易に修正することができるようにするために、住宅建築物11の建築時に設けられるものである。これによって、本実施形態の建物の基礎構造10は、軟弱地盤11の層の厚さが大きく、支持層19までの深さが深い場合でも、鋼管杭等の支持杭を支持層19まで打ち込むこことなく、安価に且つ安定した状態で軟弱地盤11の上方に住宅建築物12を建築できるようにするものである。なお、図2、図3においては、本実施形態の基礎構造10が設けられる住宅建築物10の要部として、躯体部分を省略した、べた基礎14よりも下方の部分のみが示されている。
【0015】
そして、本実施形態の建物の基礎構造10は、軟弱地盤11の上方に建築される住宅建築物12に基礎地盤13の不同沈下による傾きが生じた際に、住宅建築物12の傾きを修正できるようにした基礎構造であって、鉄筋コンクリート製のベタ基礎14による建物側基盤層15と、表層改良工法によって形成された地盤側基盤層16と、建物側基盤層15と地盤側基盤層16との間に挟み込まれて任意の位置に設置される、扁平な断面形状から内部に流体圧力が負荷されて膨張変形する複数の加圧膨張体としての膨張鋼管17を含んでおり、且つ表層改良工法による地盤側基盤層16は、当該地盤側基盤層16の全体に分散配置されて地盤側基盤層16の下方の地盤に設けられた複数の摩擦杭18の上端部と接合して形成されており、基礎地盤13の不同沈下によって地盤側基盤層16に生じる傾きを摩擦杭18で抑制すると共に、住宅建築物12に生じる傾きを、建物側基盤層15と地盤側基盤層16との間に挟み込まれた一又は複数の膨張鋼管17を選択して膨張させることで修正することができるようになっている。
【0016】
本実施形態では、建物の基礎構造10を構成する建物側基盤層15は、住宅建築物12の基礎である鉄筋コンクリート製のベタ基礎14によって形成されている。ベタ基礎14は、住宅建築物12が建築される領域の基礎地盤13の全体を覆って配置される底盤部14aと、住宅建築物12の外壁や、主要部分の仕切り壁の下部に沿って配置される立上り部14bとからなる公知の構造を備えるものであり、図3にも示すように、例えば後述する表層改良工法による地盤側基盤層16の上面に砕石層20を敷設して鉄筋21を配筋した後に、コンクリート22を打設することによって形成されることになる。ベタ基礎14の上方には、例えば立上り部14bの上端面に土台を取り付けて、住宅建築物12の躯体部分が構築されることになる。また、ベタ基礎14は、住宅建築物12の荷重を、底盤部14aによる大きな接地面を介して、安定した状態で基礎地盤13に支持させることができるようになっている。
【0017】
ここで、本実施形態では、建物側基盤層15としてのベタ基礎14の底盤部14aの内部には、通常のベタ基礎の底盤部よりも強度を向上させるために、好ましくは鉄筋21が上下2段に配筋されていて、いわゆるダブル配筋となっている。ベタ基礎14の底盤部14aの内部に鉄筋21がダブル配筋されていて、底盤部14aの全体に亘ってその強度が向上していることにより、底盤部14aの下面側の任意の位置に膨張鋼管17等の加圧膨張体を配設してこれらを膨張させた場合でも、加圧膨張体を配設した部分に何等補強を施すことなく、ベタ基礎14が砕石層20から持ち上がる際の偏荷重等によるひび割れの発生等の、底盤部14aの損傷を効果的に回避することが可能になる。これによって、例えば強度の大きな立上り部14bが立設する部分や、傾きを予想して予め補強した部分に限定されることなく、ベタ基礎14の底盤部14aの任意の位置に膨張鋼管17等の加圧膨張体を配設することが可能になって、基礎地盤13の不同沈下や住宅建築物12の傾きの発生に対して、より柔軟に対応することが可能になる。
【0018】
また、本実施形態では、ベタ基礎14の底盤部14aの適宜の位置に、例えば発泡ウレタン注入孔(図示せず)が、分散配置されて複数の箇所に設けられており、べた基礎14をリフトアップした際に生じる建物側基盤層15と地盤側基盤層16との間の隙間に、発泡ウレタンを注入充填して固化させることにより、リフトアップした後の建物側基盤層15を、地盤側基盤層16によって安定した状態で支持させることができるようになっている。
【0019】
本実施形態の建物の基礎構造10を構成する地盤側基盤層16は、表層改良工法(浅層混合処理工法)によって形成された面状固結体として設けられている。表層改良工法は、基礎地盤13の表層部分の土砂に、例えば石灰、セメント等のセメント系固化材を混合し、例えば30〜50cm程度の層厚毎に攪拌と転厚を繰り返すことによって所望の厚さの地盤改良層を形成する公知の工法である。本実施形態では、建物側基盤層15は、表層改良工法により、ベタ基礎14よりも一回り大きな平面領域に、例えば50〜200cm程度の厚さを有する、Fcが例えば150〜1000kN/m2程度、許容地耐力が例えば30〜200kN/m2程度の面状固結体として形成される。
【0020】
地盤側基盤層16は、基礎地盤13に対する広い接地面積によって、住宅建築物12の重量を分散しながら基礎地盤13に均等に伝達すると共に、後述するように住宅建築物12の傾きを修正するために膨張鋼管17を加圧膨張させてべた基礎14をリフトアップする際には、リフトアップするための反力を受ける反力盤としても機能する。また、地盤側基盤層16は、地震時に地盤の液状化を抑制する表面拘束効果を発揮することも可能である。
【0021】
さらに、本実施形態では、建物の基礎構造10を構成する地盤側基盤層16は、建物側基盤層15と地盤側基盤層16との間に挟み込まれる加圧膨張体として、好ましくは膨張鋼管17が用いられる。膨張鋼管17は、扁平にプレスされた断面形状から内部に流体圧力が負荷されて膨張変形する機能を有する公知の部材であり、膨張鋼管18は、トンネル工法として公知のナトム(NATM)工法において、地山を支持するために例えばコンクリートが吹き付けられたトンネルの内面から地山中に打ち込まれるロックボルトとして用いられる、例えば溶融亜鉛めっき鋼板や高耐食溶融めっき鋼板等からなる公知のものであり(例えば、特開昭55−12300号公報、特開昭57−77798号公報参照)、例えば特開2007−154525号公報に記載のように、これに適宜改良を加えて、住宅建築物11の沈下修正用の部材として使用することができる。
【0022】
また、膨張鋼管17として、より好ましくは、例えば特開2008−50763号公報に記載された、図4(a),(b)に示すような膨張型鋼管を用いることができる。図4(a),(b)に示す膨張鋼管17は、一端に水密用スリーブ17aが装着され、他端に高圧水注水孔を有するスリーブ17bが装着されたロックボルトを、例えば一旦膨張させて径を拡大した後に、上下からプレス圧を加える等して扁平化した断面形状としたものであり、これによって扁平な状態からの膨張高さ、すなわち膨張による沈下修正量を大きくすることが可能になる。
【0023】
本実施形態では、膨張鋼管17は、図3に示すように、表層改良工法による地盤側基盤層16の上面に敷設された砕石層20の中に、例えば上下の面を建物側基盤層15及び地盤側基盤層16に各々接触させつつ扁平な状態で埋設されて、建物側基盤層15と地盤側基盤層16との間に挟み込まれて設置されることになる。また膨張鋼管17は、ベタ基礎14の立上り部14bが立設する部分に限定されることなく、建物側基盤層15の下面の所望の位置に自由に配置することができ、本実施形態では、任意の方向の不同沈下や住宅建築物12の傾きに効率良く対応できるように、図2に示すように、例えばベタ基礎14による略矩形形状の建物側基盤層15の4辺部を略3分割する位置に高圧水注水孔を有するスリーブ17bを各々臨ませると共に、これらの辺部と垂直に延設させた状態で、膨張鋼管17が、建物側基盤層15の全体にバランス良く合計8箇所に設置されることになる。
【0024】
ここで、建物側基盤層15と地盤側基盤層16との間に挟み込まれた膨張鋼管17は、基礎地盤13の不同沈下によって地盤側基盤層16と共に住宅建築物12が、許容限度の傾斜(例えば5/1000)を越えて傾いた際に、その傾きの方向に応じて、8箇所の膨張鋼管17のうち、一又は複数の膨張鋼管17を選択して高圧水を供給することによって膨張させることで、図1に示すように、建物側基盤層15をリフトアップして、不同沈下による住宅建築物12の傾きを容易に修正できるようにするものである。
【0025】
なお、本実施形態では、建物側基盤層15と地盤側基盤層16との間に挟み込まれる、扁平な断面形状から内部に流体圧力が負荷されて膨張変形する加圧膨張体として、上述の膨張鋼管17の他、例えば特開2007−154525号公報に記載された、扁平に畳まれた状態から内部に流体圧力が負荷されて膨張変形する膨張袋体等の、その他の種々の加圧膨張体を用いることもできる。
【0026】
そして、本実施形態では、地盤側基盤層16と共に建物の基礎構造10を構成する摩擦杭18は、好ましくは柱状改良工法(深層混合処理工法)によって形成された摩擦杭となっており、地盤側基盤層16と一体して挙動できるように、その上端部を地盤側基盤層16に接合して地盤側基盤層16の下方の地盤に設けられている。柱状改良工法は、攪拌羽根が取り付けられた攪拌ロッドを所定の深さで地中に挿入し、例えばセメント等のセメント系固化材を噴射しつつ攪拌ロッドを回転して、柱状固結体を地中に形成する公知の工法である。
【0027】
本実施形態では、柱状改良工法による摩擦杭18は、例えばφ400〜φ800、L=5.0〜6.0mの杭径及び長さで、例えば90〜400cm程度のピッチで、地盤側基盤層16の全体に分散配置されて15本形成されている。また、例えば摩擦杭18を、地盤側基盤層16の底部の設計高さより天端高さが高くなるように地中に先行して形成しておき、表層改良工法によって地盤側基盤層16を形成する際に、表層部分の地盤を、柱状改良工法による摩擦杭18の杭頭部と共に掘り起こしてこれらと混合しながら地盤側基盤層16を形成することにより、摩擦杭18の上端部を地盤側基盤層16に容易に接合することが可能である。
【0028】
このようにして形成された摩擦杭18は、表層改良工法による地盤側基盤層16と一体となって挙動し、基礎地盤13に不同沈下が生じる際に地盤側基盤層16が傾こうとする動きに効果的に抵抗することで、基礎地盤13の不同沈下及び地盤側基盤層16の傾きを効果的に抑制することが可能になる。また、摩擦杭18は、その周面の基礎地盤13との摩擦力によって、表層改良工法による地盤側基盤層16の支持力を増大することで、べた基礎14をリフトアップする際の地盤側基盤層16の反力盤としての機能を効果的に向上させることが可能になる。
【0029】
なお、摩擦杭18としては、柱状改良工法による摩擦杭の他、鋼管杭、コンクリート杭、木杭等、その他の種々の杭を用いることもでき、例えばこれらの杭の杭頭部を表層改良工法による地盤側基盤層16の底部に食い込ませるようにして地盤側基盤層16を形成することで、摩擦杭の上端部と地盤側基盤層16とを接合して、これらが一体となって挙動できるようにすることも可能である。
【0030】
そして、上述のように、本実施形態の軟弱地盤おける建物の基礎構造10は、ベタ基礎14による建物側基盤層15と、表層改良工法による地盤側基盤層16と、建物側基盤層15と地盤側基盤層16との間に挟み込まれる膨張鋼管17とからなり、且つ表層改良工法による地盤側基盤層16は、これの下方の地盤に設けられた複数の摩擦杭18の上端部と接合して形成されており、基礎地盤13の不同沈下によって地盤側基盤層16に生じる傾きを摩擦杭18で抑制すると共に、住宅建築物12に生じる傾きを、建物側基盤層15と地盤側基盤層16との間に挟み込まれた一又は複数の膨張鋼管17を選択して膨張させることで修正することができるので、軟弱地盤11の層の厚さが大きく、沈下量が大きい場合でも、許容限度(例えば5/1000)を越えて建物が傾かないように効果的に基礎地盤の不同沈下を抑制できると共に、許容限度を越えて建物が傾いた場合でも、膨張鋼管17を膨張させて、この傾きを容易に修正することが可能になる。
【0031】
また、本実施形態の建物の基礎構造10によれば、建物側基盤層15としてのベタ基礎14の底盤部14aに鉄筋21が上下2段に配筋されていて、底盤部14aの全体に亘ってその強度が向上しているので、任意の位置に膨張鋼管17等の加圧膨張体を配設することが可能になって、任意の方向に生じる基礎地盤13の不同沈下や住宅建築物12の傾きに対して、より柔軟に対応することが可能になる。
【0032】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、ベタ基礎の内部に鉄筋を上下2段に配筋する必要は必ずしもなく、その他の構造によって、ベタ基礎の底盤部の強度を全体に亘って向上させることも可能である。
【符号の説明】
【0033】
10 軟弱地盤おける建物の基礎構造
11 軟弱地盤
12 住宅建築物(建物)
13 基礎地盤
14 ベタ基礎
14a ベタ基礎の底盤部
14b ベタ基礎の立上り部
15 建物側基盤層
16 地盤側基盤層
17 膨張鋼管(加圧膨張体)
18 摩擦杭
19 支持層
20 砕石層
21 鉄筋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟弱地盤の上方に建築される建物に基礎地盤の不同沈下による傾きが生じた際に、建物の傾きを修正できるようにした軟弱地盤における建物の基礎構造であって、
鉄筋コンクリート製のベタ基礎による建物側基盤層と、表層改良工法によって形成された地盤側基盤層と、前記建物側基盤層と前記地盤側基盤層との間に挟み込まれて任意の位置に設置される、扁平な断面形状から内部に流体圧力が負荷されて膨張変形する複数の加圧膨張体とを含み、
且つ前記表層改良による地盤側基盤層は、該地盤側基盤層の全体に分散配置されて該地盤側基盤層の下方の地盤に設けられた複数の摩擦杭の上端部と接合して形成されており、
前記基礎地盤の不同沈下によって前記地盤側基盤層に生じる傾きを前記摩擦杭で抑制すると共に、前記建物に生じる傾きを、前記建物側基盤層と前記地盤側基盤層との間に挟み込まれた一又は複数の加圧膨張体を選択して膨張させることで修正する軟弱地盤における建物の基礎構造。
【請求項2】
前記摩擦杭が、柱状改良工法によって形成された摩擦杭である請求項1に記載の軟弱地盤における建物の基礎構造。
【請求項3】
前記加圧膨張体が、扁平な断面形状から内部に流体圧力が負荷されて膨張変形する膨張鋼管である請求項1又は2に記載の軟弱地盤における建物の基礎構造。
【請求項4】
前記ベタ基礎の底盤部の内部に鉄筋が上下2段に配筋されている請求項1〜3のいずれかに記載の軟弱地盤における建物の基礎構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−236249(P2010−236249A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84804(P2009−84804)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【出願人】(592260572)日新鋼管株式会社 (26)
【Fターム(参考)】