説明

軟質および硬質電解質層付き薄膜電池および方法

軟質電解質が負極および/または正極を被覆する硬質電解質の間にある複合多層電解質を有する薄膜電池の製造方法および製造装置ならびに製造される電池。いくつかの実施形態において、それぞれ両面を硬質電解質で被覆された陰極材料(例、LiCoO2)を有する箔コア陰極シートと、両面を硬質電解質で被覆された陽極材料(例、金属リチウム)を有する箔コア陽極シートとが、交互に重なる陰極シートと陽極シートの間に挟まれた軟質(例、重合体ゲル)電解質を用いて積層される。硬質のガラス状電解質層は、充電時に滑らかで硬質の正極金属リチウム層を形成するが、非常に薄い場合、ランダムにスペースをおいて配置されたピンホール/欠陥を有する。硬質層を正極と負極の両方に形成すると、短絡の原因となる樹枝状晶欠陥が一つの電極に形成されても他の電極の欠陥と一列に並ぶことがない。軟質電解質層は、硬質電解質層間の間隙を横断してイオンを伝導するとともにピンホールを修復する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は2005年7月15日に出願された米国特許仮出願第60/699,895号の権利を主張する。本発明は、2003年10月16日出願の、J. Klaassen(本出願の発明者)による米国特許出願第10/895,445号「LiPONをセパレータおよび保護バリアとして有するリチウム/空気電池と方法」、2005年1月6日出願の米国特許出願第11/031,217号「一つ以上の画定可能な層を有する層状バリア構造と方法」、本願と同時に出願された米国特許出願第11/xxx,xxx号「重合体およびLiPON電解質層を有する薄膜電池と方法」(代理人整理番号1327.031us2)および米国特許出願第11/xxx,xxx号「軟質電解質層と硬質電解質層とを有する薄膜電池の製造装置および方法」(代理人整理番号1327.031us3)に関係する。
【0002】
本発明は固体エネルギー蓄積装置に関し、より具体的には、軟質(例、重合体)電解質層と、電解質層および/または保護バリアとしての一つ以上の硬質層(例、LiPON)とを有する薄膜(例、リチウム)電池装置の製造方法および製造装置、並びにこれらによって作製されるセルおよび/または電池に関する。
【背景技術】
【0003】
例えばコンピュータ、携帯電話、追跡システム、スキャナーなどのような多くの携帯機器にはエレクトロニクスが組み込まれている。携帯機器の欠点は、機器に電源を搭載する必要があることである。典型的には、携帯機器は電源に電池を使用する。電池は、少なくとも機器が使用されている間は、機器に電力を供給するのに十分な容量を持たなければならない。電池容量を十分にすると、電源が装置の他の部分に比べ非常に重い、および/または大きいものとなる場合がある。従って、より小さく軽く、十分なエネルギーを蓄積できる電池(すなわち電源)が望まれている。携帯用電子機器および非携帯用電子機器の用途では、例えば超コンデンサのようなその他のエネルギー蓄積装置や、例えば光電池や燃料電池等のようなエネルギー変換装置が電池の替わりに電源として使用されている。
【0004】
従来の電池のもう一つの欠点は、そのいくつかが、洩れる、あるいは政府の規制対象となり得る潜在的に毒性の材料から作られている、という点にある。従って、安全な固体で充電/放電ライフサイクルの長い再充電可能な電源の提供が望まれている。
【0005】
エネルギー蓄積装置の一種に固体、薄膜電池がある。薄膜電池の例は、それぞれここに参照し組み入れる特許文献1;特許文献2;特許文献3;特許文献4;特許文献5;特許文献6;特許文献7;特許文献8;特許文献9;特許文献10および特許文献11に記載されている。特許文献2は、薄膜電池、特にマイクロ電池とその製造方法に関するもので、電子機器のバックアップまたは第一集積電源としての用途を有している。特許文献3は、薄膜電池構造体の製造方法およびシステムに関し、これは、ウェブ状基板が自動的に各工程を通過する際に、薄膜電池の要素膜が前記基板上に複数の堆積工程を利用して順に堆積される方法によって形成される。
【0006】
Mark L. JensonとJody J. Klaassen(本出願の発明者)が2004年10月19日に発行され、本発明の譲受人に譲受された「集積電池装置の方法および装置」と言う名称の特許文献12(ここに参照し組み入れる)は、一連の堆積工程を移動する重合体ウェブ上に薄膜リチウム電池を、高速かつ低温で堆積するための方法を記載している。
【0007】
(ここに参照し組み入れる特許文献13に記載されるように、)K. M. AbrahamとZ. Jiangは、プロピレンカーボネート/エチレンカーボネート/LiPF6電解質溶液で膨潤したポリアクリロニトリル膜から成る非水性重合体を有したセルを実証した。この有機電解質膜は、リチウム金属箔陽極と炭素複合陰極の間に挟まれて空気−リチウムセルを形成した。この有機電解質を利用することにより、酸素または乾燥空気中で良好なセル性能を発揮することが出来た。
【0008】
ここで、電池の陽極(アノード)は、正極(電池が放電する際の陽極)であり、そして電池の陰極(カソード)は、負極(電池が放電する際の陰極)を意味する。(充電操作の際には正極が陰極で負極が陽極となるが、ここにおける陽極−陰極と言う用語はサイクルの放電部分を反映するものである。)
【0009】
2003年8月12日にAllcockらに発行された「ゲル重合体電解質としてのポリホスファゼン」と言う名称の特許文献14(ここに参照し組み入れる)は、(i)イオン伝導度を向上する側鎖と、機械的安定性を向上させる疎水性の非伝導性側鎖との比率を調整したポリホスファゼンと、(ii)例えばプロピレンカーボネートのような、ゲル重合体電解質のイオン伝導度および物理的性質に影響を与える低分子添加剤と、(iii)例えばリチウムトリフルオロメタンスルホネートのような、ゲル重合体電解質のイオン伝導度に影響を与える金属塩とを含み、室温におけるイオン伝導度が約10-5S/cm以上の、重合体電解質に有用な共置換直鎖ポリホスファゼン重合体、並びに、このポリホスファゼン重合体およびゲル重合体電解質の作製方法について記載している。Allcockらは、ポリ(オルガノホスファゼン)に基づく、固体重合体電解質(SPE;solid-polymer electrolyte)用に広く研究されてきたシステムについて検討している。この種の重合体には、リン-窒素骨格に特有の柔軟性と、高分子の置換型合成による側鎖改質の容易さによって、SPE用途に相応しい候補がある。ホスファゼンSPE(固体重合体電解質)に用いられた最初のポリ(オルガノホスファゼン)は、ポリ[ビス(2−(2′−メトキシエトキシエトキシ)ホスファゼン](以下、MEEP)であった。この重合体は、1983年にShriver,Allcockおよび共同研究者によって開発されたもの(非特許文献1)で、特許文献14に説明されている。
【0010】
また、下記のものもある:特許文献15(酸性、塩基性エラストマーサブユニットを有する重合体電解質、公開/発行日2006年5月30日);特許文献16(架橋剤、およびこれを使用した架橋性固体重合体電解質,2004年8月31);特許文献17(固体重合体電解質用ポリアルキレンオキシド重合体組成物,2004年4月27日);特許文献18(ポリホスファゼン重合体,2002年5日21);特許文献19(エピハロヒドリン重合体を含む帯電防止性プラスチック材料,2002年4月9日);特許文献20(重合体電解質組成物,2001年4月10日);特許文献21(単一イオン導電性重合体電解質、導電性組成物およびそれより作製される電池、1999年12月7日);特許文献22(固体重合体電解質、電池および前記電解質を用いた固体二層コンデンサならびにその製造プロセス、1999年2月23日);特許文献23(制御された分子量と多分散性を有するポリホスファゼンの合成、1997年12月16日);特許文献24(重合体電解質、これを用いた電池および固体二層コンデンサ、ならびにその製造方法、1997年9月9日);特許文献25(単一イオン導電性重合体電解質を含む電池、1997年5月27日);特許文献26(固体重合体電解質、これを用いた電池および固体二層コンデンサ、ならびにその製造方法、1997年1月28日);特許文献27(ポリホスファゼン含有クラウンエーテルおよびそれに関連するイオン伝導用固体溶質としてのポタンド側基、1996年10月22日);特許文献28(免疫アジュバントとしてのホスファゼン電解質、1996年10月8日);特許文献29(ポリホスファゼンのスルホン化、1996年8月20日);特許文献30(紫外線照射による固体電池電解質の架橋方法、1995年5月9日);特許文献31(バナジウムペンタオキシドおよびポリホスファゼンのリチウム二次電池、1994年12月27日);特許文献32(固体電解質、1993年6月15);特許文献33(12‐クラウン‐4エーテルを組み込んだ二次Li電池、1992年5月5日);特許文献34(固体重合体電解質のイオン伝導性向上に有益な可塑剤、1992年4月7日);特許文献35(新規な固体重合体電解質、1991年10月29日);特許文献36(ポリエーテルオキシ置換ポリホスファゼン精製、1987年4月7日);及び特許文献37(ポリホスファゼン化合物および調製方法、1985年06月11日)(全てここに参照し組み入れる)。これらの文献は、それぞれポリホスファゼン重合体および/または他の重合体電解質および/またはリチウム塩、さらにこれらの組み合わせについて検討している。
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,314,765号
【特許文献2】米国特許第5,338,625号
【特許文献3】米国特許第5,445,906号
【特許文献4】米国特許第5,512,147号
【特許文献5】米国特許第5,561,004号
【特許文献6】米国特許第5,567,210号
【特許文献7】米国特許第5,569,520号
【特許文献8】米国特許第5,597,660号
【特許文献9】米国特許第5,612,152号
【特許文献10】米国特許第5,654,084号
【特許文献11】米国特許第5,705,293号
【特許文献12】米国特許第6,805,998号
【特許文献13】米国特許第5,510,209号
【特許文献14】米国特許第6,605,237号
【特許文献15】米国特許第7,052,805号
【特許文献16】米国特許第6,783,897号
【特許文献17】米国特許第6,727,024号
【特許文献18】米国特許第6,392,008号
【特許文献19】米国特許第6,369,159号
【特許文献20】米国特許第6,214,251号
【特許文献21】米国特許第5,998,559号
【特許文献22】米国特許第5,874,184号
【特許文献23】米国特許第5,698,664号
【特許文献24】米国特許第5,665,490号
【特許文献25】米国特許第5,633,098号
【特許文献26】米国特許第5,597,661号
【特許文献27】米国特許第5,567,783号
【特許文献28】米国特許第5,562,909号
【特許文献29】米国特許第5,548,060号
【特許文献30】米国特許第5,414,025号
【特許文献31】米国特許第5,376,478号
【特許文献32】米国特許第5,219,679号
【特許文献33】米国特許第5,110,694号
【特許文献34】米国特許第5,102,751号
【特許文献35】米国特許第5,061,581号
【特許文献36】米国特許第4,656,246号
【特許文献37】米国特許第4,523,009号
【非特許文献1】Blonsky, P. M., et al, Journal of the American Chemical Society, 106, 6854 (1983)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本出願の発明者による米国特許出願第10/895,445号、「LiOPNを保護バリアとしたリチウム/空気電池およびその方法」(ここに参照し組み入れる)は、50nmのクロムに続き500nmの銅を真空スパッタ蒸着して酸化シリコン絶縁層上にクロム接合層を堆積することで、導電性基板(例、銅やアルミニウムなどの金属)上にLiPONを堆積することを含む、リチウム電池の製造方法を記載している。いくつかの実施形態におけるLiPON(窒化リン酸リチウム)の薄膜は、窒素雰囲気中におけるオルトリン酸リチウム(Li3PO4)の低圧(<10mtorr)スパッタ法により形成される。リチウム‐空気電池セルのいくつかの実施形態では、LiPONを銅製陽極電流コレクタコンタクト上に2.5μm厚まで堆積し、LiPON層を通じてプロピレンカルボネート/LiPF6電解質溶液中で電気めっきすることにより、金属リチウム層を銅製陽極電流コレクタコンタクト上に堆積した。いくつかの実施形態において、空気陰極は、プロピレンカルボネート/LiPF6有機電解質溶液で飽和したカーボン粉末/ポリフルオロアクリレート結合剤被覆(Novec‐1700)であった。他の実施形態では、大気中の酸素が陰極反応物として働くように、カーボン粉末を有する陰極電流コレクタコンタクト層を堆積する。この構成では、空気を実質的に陰極表面全体に浸透させる必要があるため、高い電気容量(すなわち、アンペア・時間)を得るために層を緻密に重ねることが難しい。
【0013】
樹枝状晶形成に対する保護が改善され、密度、電気容量、再充電性及び信頼性が改善され、そして小型、低価格の再充電可能なリチウムベース電池が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
いくつかの実施形態において、本発明は、複数の異なる電解質層を組み合わせた電解質構造(例、硬質‐軟質‐硬質)を有する電池を含む。いくつかの実施形態では、薄い(0.1から1.0μmの)LiPON電解質層が、負極上の硬質皮膜として機能し、(特に対応する正極上のLiPON電解質層と対を成した際に)リチウム樹枝状晶の形成を防ぎ、および/または、電池が充電された際に、負極上でまたはその一部として均一(滑らか)な硬い金属リチウム層を提供する。いくつかの実施形態では、電極の一方のみ(例、負極)の上の薄い(0.1から1.0μmの)LiPON電解質層が、十分に長い時間(例、数千の充電・放電サイクル)に渡ってリチウム樹枝状晶の形成を防止しなくてもよい。なぜなら、ピンホールを貫通して成長するリチウムは、電解質を横断してわずか約3μm以下成長するだけで電池を短絡するかもしれないからである(すなわち、陽極から陰極への直接的な金属導通パスを形成する)。正極(例えばLiCoO2を含む電極)にもLiPONを被覆層として使用すると、ピンホールの位置はランダムであるため、これらが(例えば、陽極から陰極に電解質を横切って)配列することが無く、リチウムは電解質中を横方向に成長するようになり、リチウムめっきが(典型的に樹枝状晶を形成する)欠陥部で電池を短絡させないことを二重に保証する。いくつかの実施形態では、軟質電解質層が負極上の硬質電解質層と正極上の硬質電解質層との間の間隙を橋渡しする。両電極において、特に電池が完成し密封されるまでの製造工程において、LiPON層は水蒸気および酸素に対する環境耐性を改善する。いくつかの実施形態において、軟質電解質は、正極上のLiPON層と負極上のLiPON層と間に位置し、これらに接触する固体重合体電解質(SPE)を含む。いくつかの実施形態において、電解質構造は、PEO−LiX(ポリエチレンオキシドリチウムXここで、LiXは例えばLiPF6、LiBF4、LiCF3SO4、CF3SO3Li(リチウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフレートとも呼ばれる)、リチウムビスペルフルオロエタンスルホンイミド、リチウム(ビス)トリフルオロメタンスルホンイミドなどの金属塩)などの重合体電解質を含む。いくつかの実施形態において、電解質構造は、polyPN−LiX(LiXを含むポリホスファゼン;ここでLiXは例えばLiPF6、LiBF4、LiCF3SO4等)などの重合体電解質を含む。いくつかの実施形態では、重合体電解質のイオン伝導性および物理的性質に影響を与えるプロピレンカルボネートなどの低分子添加物を加え、欠陥をより良く充填するとともに接着材としての役割を果たすゲル状電解質を形成する。
【0015】
本発明は、負極および/または正極を被覆する硬質電解質層の間に軟質電解質層を有する複合(例、多層)電解質を備える薄膜電池の製造方法と装置、ならびにこれにより作製される電池を提供する。いくつかの実施形態では、(例えば銅、ニッケル、ステンレス鋼などの)金属箔、スクリーンまたはメッシュ上、または(例えば金属膜をスパッタした、重合体膜、SiO2被覆シリコンウェハー、アルミナもしくはサファイア基板、などの)金属被覆絶縁体上、に堆積された陰極材料(例、LiCoO2)をそれぞれ有し、硬質電解質層で被覆された金属コア陰極シート(いくつかの実施形態では基板の両面にこのような電極を形成する)と、(例えば銅、ニッケル、ステンレス鋼などの)金属箔上、または(例えば金属膜をスパッタした重合体膜、SiO2被覆シリコンウェハー、アルミナもしくはサファイア基板など)金属被覆絶縁体上、に堆積された陽極材料(例、金属リチウム)と、硬質電解質層でやはり被覆された箔コア陽極シート(いくつかの実施形態では基板の両面にこのような電極を形成する)とを有し、このような陰極シートと陽極シートを交互に重ね、その間に軟質電解質(例、重合体ゲル)を挟んで積層する。いくつかの実施形態において、硬質のガラス状電解質は充電時に滑らかな正極金属リチウム層を形成するが、この層が非常に薄く形成された場合、ピンホール/欠陥がランダムに配置される傾向がある。硬質層を正極と負極の両方に形成すると、短絡の原因となる樹枝状晶欠陥が一つの電極に形成されても他の電極の欠陥と一列に並ぶことがない。軟質電解質層は、硬質電解質層間の間隙を横断してイオンを伝導し、および/または、硬質電解質層のピンホール、薄い部分、その他の欠陥を充填する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、説明目的のために多くの具体例を記述するが、当業者は下記の詳細の変形や代替が本発明の範囲内に数多く含まれることを理解するであろう。従って以下に記載する本発明の好適な実施形態は、請求項に記載された本発明の一般性を一切喪失させることなく、また限定を加えずに説明されるものである。
【0017】
下記の好適な実施形態の詳細な記述は、その一部を形成する添付図面を参照するが、これは本発明を実施するための特定の実施形態を説明するためのものである。本発明の範囲から逸脱することなく他の実施形態を利用し、構造的変化を加えることが出来ることを理解されたい。
【0018】
一般に、図中の参照番号の最初の桁はその要素が最初に紹介された図の番号に対応し、複数の図に現れる同一の要素を参照する際には同一の参照番号を使用する。信号(例えば、液圧、液流、または圧力もしくは流れを表す電気信号)、流体を搬送するパイプ、チューブまたは導管、および接続部分は、同一の参照番号またはラベルによって参照される場合があり、その実際の意味は、記述の文脈におけるその用法から明らかなものである。
【0019】
用語
【0020】
本書において、金属と言う用語は、実質的に純粋な単一金属元素と、合金または少なくとも一つが金属元素である二つ以上の元素の組み合わせ、との両者に適用される。
【0021】
基板またはコアという用語は、各種のプロセス操作により所望のマイクロ電子構造に変態する基本加工対象物となる物理的構造物を一般的に指す。いくつかの実施形態において、基板は、導電性材料(銅、ステンレス鋼、アルミニウムなど)、絶縁性材料(サファイア、セラミック、またはプラスチック/重合体絶縁材など)、半導体(シリコンなど)、非半導体、または半導体と非半導体材料の組み合わせなどである。他のいくつかの実施形態において、基板は、シリコンプロセッサーチップなど隣接する構造物の熱膨張係数(CTE;coefficient of thermal expansion)により良く整合する熱膨張係数を基に選定されたコアシート、または(鉄―ニッケル合金などの)材料片などの積層構造物である。このような実施形態のいくつかにおいて、このような基板またはコアは、電気伝導率および/または熱伝導率を基に選定された材料シート(銅、アルミニウム合金など)に積層され、さらに電気絶縁性、安定性およびエンボス加工性を基に選定されたプラスチック層により被覆される。電解質とは、電子の導通が無いまたは電子の導通に対する抵抗が大きなまま、イオン(例、正の電荷を有するリチウムイオン)の動きを可能にすることで電気を通す材料である。電気的セルまたは電池とは、電解質によって分離された陽極と陰極を有する装置である。誘電体とは、例えばプラスチック、セラミックまたはガラスなどの電気を通さない材料である。いくつかの実施形態において、LiPONなどの材料はリチウムのソースとシンクがLiPON層に隣接する際には電解質としての役割を果たし、一方、LiPON中を通過するイオンを形成しない銅やアルミニウムなどの金属層間の配置された際には誘電体としての役割を果たす場合がある。いくつかの実施形態において、装置は、信号や電力を水平方向に伝達する配線と、配線層間で信号や電力を垂直に伝達するビアと、を有する絶縁性プラスチック/重合体(誘電体)を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、薄膜固体電池の陽極部分は、(上述した米国特許出願第10/895,445号記載のように)酸化シリコン絶縁性基板上(または重合体シート上)に50nmのクロム接合層を真空スパッタ堆積し、ついで500nmの銅を堆積することにより作製された導電性基板(例、銅またはアルミニウムなどの金属)上にLiPONを堆積することを含む方法で作製される。その際、いくつかの実施形態において、LiPON(窒化リン酸リチウム)の薄膜は、窒素雰囲気中におけるオルトリン酸リチウム(Li3PO4)の低圧(<10mtorr)スパッタ法、またはLiPONソースからのスパッタ法により形成される。いくつかの実施形態において、LiPONは銅製陽極電流コレクタコンタクト上に0.1μmから2.5μmの厚さで堆積される。いくつかの実施形態では、(電流コレクタコンタクト上に事前に堆積された)LiPON層をプロピレンカルボネート/LiPF6有機電解質溶液中で電気めっきすることにより、金属リチウム層を銅製陽極電流コレクタコンタクト上に形成する。LiPONは、電池製造時の保護層として機能し、組み立てられた電池の中で多層電解質の層の一つとして機能する。(他の実施形態において、陽極の金属リチウム層は組み立て後の電池の初期充電により形成される。)いくつかの実施形態において、薄膜固体電池の陰極部分は、LiCoO2ソースから第一の金属箔上にLiCoO2をスパッタし、その上にLiPON層を堆積するが、この層は組み立てられた電池において、多層電解質のもう一つの層として機能する。いくつかの実施形態では、固体またはゲル重合体電解質が、電池の陽極および陰極間のイオン伝導パスを形成すると共に、二つのLiPON電解質層間の構造的結合または接着に使用される。
【0023】
いくつかの実施形態では、非常に薄い電解質を形成することが望ましい。非常に薄い単一のLiPON層を使用すると、欠陥(例、薄い部分やピンホールなど)が形成され、リチウムイオンが最も抵抗の低いこれらのパスを選択的に通過してスパイク状の金属リチウム樹枝状晶を形成し電池を短絡させる場合がある。非常に薄い単一の固体またはゲル重合体電解質層を使用すると、表面のむら(例、陽極または陰極材料の隆起や突起)により電解質の接触が生じ、電池を短絡させる場合がある。一つは電池の陽極と、もう一つは電池の陰極とに、それぞれ独立して形成された二つの非常に薄いLiPON(硬質)電解質構成層を持つことで、一つの層の薄い部分またはピンホールが、他の層の薄い部分またはピンホールと一列に並ぶことが無くなる。固体および/またはゲル重合体電解質材料で出来た第三の電解質層(例、二つのLiPON層間でリチウムイオンを伝導する軟質重合体電解質)は、何れの電極においても隆起部など表面むらによる短絡を起こさない。何故なら、これらの表面むらがLiPONにより被覆される、および/または、他方の対応する点がLiPONにより被覆されるためである。従って、初期短絡(非常に薄い重合体電解質が陽極と陰極とを接触させることに起因)または後に発生する短絡(一回以上の充電/放電サイクル後に金属リチウム樹枝状晶を形成するLiPON電解質層のピンホールに起因)を発生させる恐れが無く、複数の層の一つ以上(場合によっては全て)を非常に薄く形成することが出来る。さらに、緻密で硬いガラス状LiPON層を使用すると、これを通過するリチウムイオンにより形成される金属リチウム層が緻密で滑らかになる。他の実施形態において、一つ以上のLiPON層に代わり、他の一つ以上の他の硬質および/またはガラス状電解質層が使用される。
【0024】
米国特許第6,605,237号「ゲル重合体電解質としてのポリホスファゼン」は、MEEP(ポリ[ビス(2−(2′−メトキシエトキシエトキシ)ホスファゼン])およびその他の重合体を検討しているが、本発明のいくつかの実施例ではこれらを、二つのLiPON副層間の構造結合体および重合体電解質副層として使用している。結合層として使用されるポリホスファゼン(以下ポリPNと呼称する)は柔軟で粘着質である。その接着力が電極を結合し、その状態に保つ。一方その柔軟性は、欠陥を修復し、および/または、欠陥による電池の性能低下と信頼性低下を防ぐ。他の実施形態では、他の柔軟な、および/またはゲル状のイオン伝導性重合体が使用される。
【0025】
米国特許第4,523,009号、第5,510,209号、第5,548,060号、第5,562,909号、第6,214,251号、第6,392,008号、第6,605,237号および第6,783,897号(すべてここに参照し組み入れる)はそれぞれ、本発明のいくつかの実施形態における一つ以上の電解質構成層として使用できる、またはそれらに含めることができる、ポリホスファゼン重合体および/またはその他の重合体電解質および/またはリチウム塩と化合物について検討している。
【0026】
垂直と言う用語は、基板の主面に実質的に垂直であることを意味するものと定義される。高さまたは深さは、基板の主面に垂直な方向への距離を指す。
【0027】
図1Aは、本発明のある実施形態におけるリチウムセル100の概略断面図である。いくつかの実施形態において、セル100は、(電流コレクタとしての役割を果たす)第一金属箔110と、例えばLiCoO2ターゲットをスパッタすることでその上に堆積されたLiCoO2などの陰極材料112と、さらにその上に堆積された比較的硬い(硬質電解質電流スプレッダとしての役割を果たす)LiPON層114と、を有する第一シート111(陰極または陽極サブアッセンブリ)を備える。いくつかの実施形態において、セル100は、(電流コレクタとしての役割を果たす)第二金属箔120と、その上に堆積された(硬質電解質電流スプレッダ、および後にこの層全面に渡ってめっきされるリチウムの環境バリアとしての役割を果たす)LiPON膜124と、LiPON膜124の全面に渡ってめっきされた(陽極すなわち負極の活性部分を形成する)リチウム層122を有する第二シート121(陽極すなわち負極アッセンブリ)を備える。(ここで、めっきは、電池全体の組み立て前または後に行われる。すなわち、初期に陰極がリチウムを十分に含有する場合、陽極リチウム層は組み立て後の電池初期充電時に形成され、一方、初期の陰極がリチウムを殆ど、あるいは全く含有しない場合、陽極リチウム層は組み立て前に、例えば液体電解質中または溶液中で、外部の金属リチウム犠牲電極から電気めっき等により形成される。)いくつかの実施形態において、重合体電解質のシートまたは層130が第一シート111と第二シート121の間に挟まれる。いくつかの実施形態では、重合体電解質層がLiPON層114とLiPON層124上に堆積される、または、重合体電解質層の一部がLiPON層114とLiPON層124の両者の上に堆積され、その後、第一シート111と第二シート121を押し付けるなどの方法で組み立てが行われる。(いくつかの実施形態では、一対のローラー間で二枚以上のシートを圧着する。)
【0028】
いくつかの実施形態では、硬質‐軟質‐硬質の電解質層を組み合わせることにより、低コスト、高品質、高信頼性、高再充電性電池システムが提供される。いくつかの実施形態において、硬質層は、製造時の保護バリア層の役割を果たし、また充電時に、陽極上に滑らかな硬質リチウム層を得るための、電流スプレッダ電解質の役割を果たす。いくつかの実施形態において、硬質層は、ガラスまたはガラス状電解質材料(例、LiPON)であるか、またはこれらを含む。(セル導電性を高めセル抵抗を低下させるため)これらの硬質層を非常に薄くすると、ランダムに分散したピンホール、突起、その他の欠陥が発生する傾向がある。(層を厚くするとこのような欠陥は消失するが、セル導電性が低下しセル抵抗が増大する。)硬質層が正極と対応する負極との両者に形成されると、一方の電極を被覆する電解質のピンホールおよび他の欠陥は、他方の電極を被覆する電解質のピンホールおよび他の欠陥と一列に並びにくくなる。軟質電解質層は硬質層間の間隙を通じてイオンを伝導すると同時に、硬質電解質被覆のピンホールと他の欠陥を充填する傾向がある。いくつかの実施形態において、軟質電解質層は(セルを一体化するための接着剤、さらには、環境要因からの汚染を低減し軟質電解質層の漏れを低減するための封入剤としての役割を果たす)固体またゲル状の重合体電解質であっても、(スポンジ、スクリーン、またはホスト固体重合体(例、ポリエチレン,ポリプロピレン,フルオロエチレンなど)または硬質電解質層の一つ以上に(例えば、マイクロエンボス加工などによって)形成された溝などの構造要素に任意に注入された、液状電解質であっても良い。
【0029】
いくつかの実施形態において、軟質電解質層は、ポリビニリデンジフルオリド(PVdF)、プロピレンカーボネートおよびリチウム塩を含有するゲルを含む。PVdFはリチウムイオンを伝導しない重合体であり、換言すれば、リチウム塩はPVdFに溶解しない。しかしながらPVdFはリチウム塩が溶解したプロピレンカルボネートなどの液体によって膨潤する場合がある。このようにして作られたゲルは、電解質として使用することができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、各硬質電解質層の厚さは1μm以下であり、また軟質電解質層の厚さは3μm以下である。図1Aに示す構造を下記の表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
図1Bは、本発明のいくつかの実施形態におけるセル101の概略断面図である。いくつかの実施形態において、未充電状態で組み立てられたセル101は、第一シート111(陰極すなわち正極サブアッセンブリ)を備えるが、これは硬質電解質114が陰極材料112膜の水平方向の縁を大きく越え第一の金属箔110に沿って横方向に広がっている点を除き、図1Aに示したものと類似している。いくつかの実施形態における陰極材112(例えばLiCoO2など)は、半導体集積回路に用いられるものと同様なフォトレジストとリソグラフィー工程を用いる方法により画定される。(例えば、陰極材をフォトレジストでマスクするか、または、フォトレジストで被覆されたSiO2などの硬質材料をエッチング後、フォトレジストを除去することで、硬質層(例、SiO2)が陰極材料112(例LiCoO2)の水平方向を画定するマスクの役割を果たすようにし、次いでこのマスクを除去する。)硬質電解質層114(例、LiPON)は陰極材112と共に、陰極材112の側面周辺の基板110上に堆積される。この横方向に延びる硬質LiPON層114は、陰極内のリチウムの側面を密封し、酸素や水蒸気等の環境内の汚染物からリチウムを保護する。いくつかの実施形態において、セル101は、(電流コレクタとして作用する)第二金属箔120と、その上に堆積された(硬質電解質電流スプレッダ、および後にこの層全面に亘ってめっきされるリチウムの環境バリアとして作用する)LiPON膜124と、LiPON膜124によって被覆されていない部分を通じて(電池が全て組み立てられた後に)めっきされてリチウム層122となる部分(図1C参照)の全周囲にマスク119を有する第二シート(リチウムが未だ存在しないことを除いて図1Aと同様な陽極すなわち負極)を備える。(他の実施形態において、マスク層119は、金属箔120に直接堆積されたSiO2などの電気的絶縁体で、金属基板の中央を露出するようにフォトリソグラフでパターン化され、このマスク層上に硬質電解質層LiPON膜124が堆積される。)いくつかの実施形態において、マスク材料119は、フォトリソグラフで画定された横方向に延びるフォトレジストおよび/またはSiO2などの絶縁体である。上述のように、いくつかの実施形態では、軟質重合体電解質130(固体重合体電解質(SPE)、ゲル、または液体重合体電解質)(リチウム伝導性を補助するLiPF6などのリチウム塩を含むポリホスファゼンなど)が第一シート111と第二シート121の間に挟まれている。
【0033】
図1Cは、本発明のいくつかの実施形態におけるリチウムセル102の概略断面図である。いくつかの実施形態において、金属リチウム層122は、組立て(下記の図6Cと図2に記述される方法の組み合わせ)の前にめっきされる。他の実施形態において、(図1Bに示すような)電池101は陽極アッセンブリ121に金属リチウムが無い状態で組み立てられ、陰極112から電解質層114、130、および124を通じ、陽極電流コレクタ120上にリチウムめっきを行い初期充電することで金属リチウム層122を形成する。
【0034】
図2は、本発明のいくつかの実施形態におけるリチウム電池製造プロセス200の概略断面図である。いくつかの実施形態では、一枚以上の両面陽極シート121と、(LiPON層114の内側の箔110の主面両側に陰極材112が堆積した)一枚以上の陰極シート111とを交互に重ね、各シートの間に重合体層130を配置する。陽極シート121のいくつかの実施形態では、陽極材料122がLiPON層124内部の箔120の主面両側に堆積(またはLiPON層124を通じてめっき)されている。(いくつかの実施形態では、この段階までにマスク119で被覆されていないLiPON部を通じて、液体電解質およびリチウム犠牲電極を用い電流コレクタ121上に金属リチウムが予備電気めっきされた後、マスク119(図1B参照)が陽極の外側部から取り除かれていることを留意のこと。)
【0035】
いくつかの実施形態では、軟質重合体電解質層130を液体としてスピンコートしその後乾燥する。他の実施形態では、軟質重合体電解質層130を浸漬被覆する。また他の実施形態では、軟質重合体電解質層130をキャストオン(cast on)する。いくつかの実施形態では、軟質重合体電解質層130を源溶液225から堆積させ、(スキージ221により)「スキージを掛ける」か、および/または、(ドクターブレード222により)「ドクターブレードを掛ける」かして、(事前にLiPON層124と陽極層122とを形成した)各箔コアを有する両面陽極シート121の両面と、(事前に陰極材料層112とLiPON層114を形成した)各箔コアを有する両面陰極シート111の両面と、のそれぞれ所定の位置に塗布する。いくつかの実施形態において、軟質重合体電解質層130は、実質的にオフセット印刷機と同様な装置によって堆積され、この際、液体状軟質重合体電解質材料および/または溶剤混合物(「インク」)が軟質重合体電解質層130の所定の領域に印刷され、そのスタックが(例えば、ある実施形態では加熱された、ゴム被覆鋼製ローラー(例、内部に加熱した油を流したローラー)などの)ローラー250によって「カレンダー状」に積層される。ローラー250は二枚の中心電池層との対比で描かれた図である点を留意すること。
【0036】
いくつかの実施形態では、上記のようなスタックを二つ以上、同様の方法で積層する。他の実施形態では、電池装置の交互の層を一段の加圧工程で積層する。
【0037】
図3は、図2の積層法により得られた、本発明のいくつかの実施形態における並列接続リチウム電池300の断面概略図である。いくつかの実施形態では、最外層111と最外層121は片面となっており、金属面が外側を向いている。他の実施形態において、層111は全て互いに同一(それぞれ箔110の中心面に対し鏡面対象)で、層121も全て互いに同一(それぞれ箔120の中心面に対し鏡面対象)となっている。いくつかの実施形態では、層111の端部が互いに電気的に接続(例えば右側で、半田付け、スポット溶接または圧接)されて外部陰極電流コレクタコンタクト321を形成しており、また層121の端部が互いに電気的に接続(例えば左側で、半田付け、スポット溶接または圧接)されて外部陽極電流コレクタコンタクト322を形成して、その結果、全てのセルが並列に接続され高い電流を出力するようになっている。いくつかの実施形態では、このようにして(各セルの面積に応じ)1から30mAh(ミリアンペア時)またはそれ以上の単セルが形成され、その電池は、これ等並列セルの合計にほぼ等しいAh(アンペア時)容量を有する。
【0038】
【表2】

【0039】
いくつかの実施形態において、陰極材料層112の厚さはそれぞれ約10μmまたはそれ以上である。いくつかの実施形態において、10μmのLiCoO2は理論利用率80%で、繰り返し単位320当たり0.552mAh/cm2を供給し、3.8Vの放電電圧で2.1mAh/cm2を供給する。ある実施形態において、電荷貯蔵密度は約104mAh/cm3で、約19.1mAh/kgである。ある実施形態において、エネルギー貯蔵密度は約395Wh/L(ワット時毎リットル)で、約72.8Wh/kgである。ある実施形態において、繰り返し単位320一つの大きさは10cm×6.5cmで、これは33.6mAhおよび127mWhに対応する。ある実施形態において、長さ約10.8cm、幅6.5cm、厚さ1.8cmの製品パッケージは、3組の繰り返し単位320をそれぞれ格納し、この組を直列に繋いで約12.3Vから約9Vの電圧で3.7Ahの放電を行う。
【0040】
図4は、本発明のいくつかの実施形態における直列接続リチウム電池400の概略断面図である。図示した実施形態において、各シート126は、箔125の一つの主面(図4の上面)にLiPONで被覆された陽極材料と、主面の反対面(図4の下面)にLiPONで被覆された陰極を有する。いくつかの実施形態において、最外層は、図示したように金属面が外側を向いた片面となっている。他の実施形態では、全ての層125は最外層を含め互いに同一である。いくつかの実施形態において、最上層125の端部は、(例えば右側で)電気的に接続して外部陰極電流コレクタコンタクト421を形成し、また最下層126の端部は(例えば左側で)接続して外部陽極電流コレクタコンタクト422を形成して全てのセルを直列接続する。各繰り返し単位420は一つの基本スタック層である。いくつかの実施形態では、各セルの面積に応じ1Ahまたはそれ以上の単セルが形成される。
【0041】
図5Aは、本発明のいくつかの実施形態における並列接続スクリーン陰極電流コレクタコンタクトリチウム電池500の概略断面図である。本実施形態は、箔110に替わって正極に金属スクリーンまたはメッシュ500を使用している点を除き、図3の実施形態と実質的に同様である。これにより、いくつかの実施形態では、LiPON層114で完全に被覆された状態のまま陰極材料112への接触面積を大きくすることができる。いくつかの実施形態において、金属スクリーンまたはメッシュ510は、金属箔にフォトリソグラフで画定された一つ以上の領域を選択的にエッチングすることで形成される。いくつかの実施形態では、LiCoO2を金属スクリーン510上にスパッタリングする。他の実施形態ではLiCoO2粉末で金属スクリーン510を充填する。いくつかの実施形態において、LiCoO2には(スクリーン510上にLiCoO2をスパッタリングしたものであれ、LiCoO2で充填したものであれ)、ポリPNまたは他の重合体電解質材料が注入され、陰極のイオン伝導率を高めている。いくつかの実施形態において、スクリーン510は初期(LiCoO2の堆積前)に約50%の開口を有し、この開口部がLiCoO2および/またはポリPN、もしくは他のイオン伝導向上材で満たされている。
【0042】
いくつかの実施形態において、全ての層511の金属スクリーンまたはメッシュ510は(例えば右側で)互いに電気的に接続し外部陰極電流コレクタコンタクト521を形成しており、層120の端部は(例えば左側で)互いに接続し外部陽極電流コレクタコンタクト522を形成して、全てのセルを並列に接続する。各繰り返し単位520は一つの基本スタック層である。
【0043】
【表3】

【0044】
いくつかの実施形態において、陰極材料層は、80%の充填率で31.25μmのLiCoO2(スクリーン体積の50%)を含み、95%の電気利用率は繰り返し単位当たり1.63mAhr/cm2に対応し、平均放電電圧3.8Vで繰り返し単位当たり6.22mWhr/cm2に対応する。いくつかの実施形態において、LiCoO2にはポリPNまたは他の重合体電解質材料が注入され、陰極中のイオン伝導度を高めている。いくつかの実施形態において、電荷貯蔵密度は218mAhr/cm3および50.35Ahr/kgに等しい。いくつかの実施形態において、電荷貯蔵密度は835Wh/Lおよび192Wh/kgに等しい。いくつかの実施形態における10cm×6.5cm×1cmの繰り返し単位はそれぞれ106mAh;404mWhに対応する。いくつかの実施形態において、製品パッケージ(10.8cm×6.5cm×1.8cm)はそれぞれ直列に接続した80繰り返し単位を3組格納し、12.3Vから9Vの放電電圧で8.5Ahrを出力する。
【0045】
図5Bは、本発明のいくつかの実施形態における直列接続スクリーン陰極コンタクトリチウム電池501の概略断面図である。この実施形態は、金属スクリーンまたはメッシュが箔535(図4の箔110に対応する箔)の底面側に積層されている、または(図1Aの箔110で始まる)箔535の底面側が部分的にのみ選択的にエッチングされることでメッシュ様の品質を有した箔上面と箔底面を形成している点を除き、実質的に図4の実施形態と同様である。これにより、いくつかの実施形態では、LiPON層114で完全に被覆された状態のまま陰極材料112への接触面積を大きくすることができる。いくつかの実施形態において、金属スクリーンまたはメッシュ535は、金属箔にフォトリソグラフで画定された一つ以上の領域を選択的にエッチングすることで形成される。いくつかの実施形態において、最外層は、図示したように金属面が外側を向いた片面となっている。他の実施形態では、最外層を含む全ての層535が互いに同一である。(この場合、外向きの電極層は機能しない。)いくつかの実施形態において、最上層535の端部は(例えば右側で)電気的に接続して外部陰極電流コレクタコンタクト531を形成し、最下層535の端部は(例えば左側で)接続して外部陽極電流コレクタコンタクト532を形成して全てのセルを直列接続する。各繰り返し単位530は一つの基本スタック層である。
【0046】
いくつかの実施形態において、薄い(0.1から1.0μm)LiPON電解質は、負極の硬質被覆として機能し、リチウム樹枝状晶の形成を防ぐ。またこれを正極(すなわちLiCoO2)の被覆として使用すると、欠陥位置においてリチウムめっきが電池を短絡しないことを二重に保証する。両電極において、LiPONは水蒸気や酸素に対する環境抵抗性を高める。
【0047】
いくつかの実施形態では、比較的軟質の固体重合体電解質(SPE)を用いると、完全硬質電解質固体(例えばLiPONのみを電解質とした場合)の構造に比べ、セルの構築が単純化される。軟質重合体電解質は「電解質接着剤」として機能するため、正負両極を別々に組立て、その後の組立工程でこれ等を互いに接着することが可能になる。いくつかの実施形態において、軟質重合体電解質は、液体状態で噴霧またはスキージにより堆積され、その後凝固される。
【0048】
LiPON被覆を使用しない場合、軟質重合体電解質を使用するいくつかの実施形態では、軟質重合体電解質を十分に厚くして機械的剛性、または機械的強度を確保する必要があるが、これはエネルギー密度の低下およびセル抵抗の増加を招く。一方、軟質重合体電解質(「電解質接着剤」)を使用しないと、高エネルギーセルとするためには、LiPON膜が非常に広い範囲にわたり完全状態(欠陥の無い状態)である必要が生じる。これら二つの電解質材料システムを組み合わせると、それぞれを単独で使用した場合の欠点が解消される。
【0049】
本発明の電池セルの陽極には様々な金属を使用することができる。一般的な陽極金属の一つはリチウムである。リチウムは電池の製造、組立て、および使用の間を通じ、酸素と水蒸気から保護されなければならない。亜鉛も本発明のいくつかの実施形態に使用される一般的な陽極金属の一つである。亜鉛は、適当な抑制剤を使用することにより、水溶液中においても優れた安定性と耐食性を有する、電気的に最も陰性な金属である。考案されるいくつかの金属―空気システムと、それらの理論特性を表4にまとめる。
【0050】
【表4】

【0051】
最も軽いアルカリ金属であるリチウムは、電池システムのなかで独特の位置に置かれている。その重量換算した電気化学当量、3.86Ah/g、はどの金属陽極材料よりも高い。表3に掲載された金属の中でリチウムは、最も高い動作電圧と比エネルギーを有している。リチウム陽極を使用することにより、非常に軽く、高エネルギー密度の電池を作ることが出来る。リチウム技術の課題は、実環境で作動する実用的なシステムを提供することにある。水性電解質を用いたリチウムセルを作製することは可能であるが、このようなセルではリチウム金属陽極が水によって腐食されるため適用範囲が限られる。またリチウム陽極は酸素との接触で腐食する場合がある。リチウム‐空気セル内におけるリチウム金属陽極の急速な腐食に対する対策として、LiPONを有機電解質リチウムセル構造内の保護バリアやセパレータに使用する場合がある。
【0052】
いくつかの実施形態では、電解質構造の一部と、リチウム金属陽極の湿度および酸素による腐食に対する保護バリアとの両者の役割を備えたLiPON薄膜をセルに利用する。薄く、柔軟なリチウムセルの構造は、(ここに参照し組み入れる)米国特許第6,805,998号に記載されるような高速ウェブ堆積プロセスに良く適合する。
【0053】
いくつかの実施形態において、本発明の電池(例、参照番号100、300、400、500、600または900)は、補聴器、方位計、携帯電話、追跡システム、スキャナー、デジタルカメラ、可搬式コンピュータ、ラジオ、CDプレーヤ、カセットプレーヤ、スマートカード、その他電池を電源とする装置などに組み込まれる。
【0054】
いくつかの実施形態では、酸素が陰極材料の役割を果たすように、陰極の裏(外)面が空気に曝されている。(または、例えば重合体保護膜を除去して空気に曝すことができる。)いくつかの実施形態において、空気陰極電池は再充電できない一次電池であり、また他の実施形態において、空気陰極電池は再充電可能な二次電池である。
【0055】
本発明の他の実施形態
【0056】
本発明の一つの観点は、LiPON電解質/保護層により被覆されたリチウム陽極と、LiPON電解質/保護層により被覆されたリチウム-層間-材料陰極と、陽極を被覆するLiPON電解質/保護層および陰極を被覆するLiPON電解質/保護層の間に挟まれた重合体電解質材料とを備える装置を含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、陰極はLiCoO2を含む。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態では、陽極が銅陽極電流コレクタコンタクト上に重層する。
【0059】
本発明の別の観点は、表面に導電性陽極電流コレクタコンタクト層を有する基板を設けることと、陽極電流コレクタコンタクト層の上にLiPON電解質/バリア層を堆積することと、重合体電解質を設けることと、陰極電流コレクタコンタクト層を有する陰極基板を設けることと、陰極電流コレクタコンタクト層上にリチウム層間材料を堆積することと、陰極電流コレクタコンタクト層上にLiPON電解質/バリア層を堆積することと、陽極基板と陰極基板との間に重合体電解質があるサンドイッチ構造を形成することとを含む方法にある。いくつかの実施形態では、陽極と陰極の各対の間に重合体電解質が挟まった、複数の陽極基板と複数の陰極基板を有する構造が提供される。
【0060】
本発明のもう一つの観点は、陽極電流コレクタコンタクトと、陽極電流コレクタコンタクトに堆積されたLiPON電解質セパレータと、LiPONと陽極電流コレクタコンタクトとの間にめっきされたリチウム陽極材料と、を備える装置を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、陽極電流コレクタコンタクトは、銅と、重合体を含む基板とを備える。
【0062】
本発明のもう一つの観点は、陽極電流コレクタコンタクト上にLiPONを堆積し陽極基板を形成するための堆積ステーション、陽極電流コレクタコンタクト上にリチウムをめっきするためのめっきステーション、陰極材料を基板上に堆積することにより陰極基板を形成し、陰極材料上にLiPONを堆積する陰極堆積ステーション、および陰極基板と陽極基板とに挟まれた重合体電解質材料を用いて陽極基板を陰極基板に組み付けるアッセンブリステーションとを備える装置を含む。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態において、堆積ステーションはLiPONのスパッタ堆積を備える。
【0064】
いくつかの実施形態において、LiPONは約0.1μmから約1μmの厚さで陽極電流コレクタコンタクト上に堆積される。いくつかの実施形態において、陽極のLiPON層の厚さは0.1μm未満である。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約0.1μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約0.2μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約0.3μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約0.4μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約0.5μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約0.6μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約0.7μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約0.8μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約0.9μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約1.0μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約1.1μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約1.2μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約1.3μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約1.4μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約1.5μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約1.6μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約1.7μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約1.8μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約1.9μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約2.0μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約2.1μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約2.2μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約2.3μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約2.4μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約2.5μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約2.6μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約2.7μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約2.8μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約2.9μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約3μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約3.5μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約4μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約4.5μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約5μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約5.5μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約6μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約7μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約8μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約7μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約9μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約10μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約10μmよりも大である。
【0065】
いくつかの実施形態において、LiPONは約0.1μmから約1μmの厚さで陰極電流コレクタコンタクト上に堆積される。いくつかの実施形態において、陰極のLiPON層の厚さは0.1μm未満である。いくつかの実施形態において、LiPON層の厚さは約0.1μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約0.2μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約0.3μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約0.4μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約0.5μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約0.6μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約0.7μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約0.8μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約0.9μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約1.0μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約1.1μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約1.2μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約1.3μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約1.4μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約1.5μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約1.6μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約1.7μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約1.8μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約1.9μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約2.0μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約2.1μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約2.2μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約2.3μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約2.4μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約2.5μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約2.6μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約2.7μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約2.8μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約2.9μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約3μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約3.5μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約4μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約4.5μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約5μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約5.5μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約6μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約7μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約8μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約7μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約9μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約10μmである。いくつかの実施形態において、このLiPON層の厚さは約10μmよりも大である。
【0066】
いくつかの実施形態において、めっきステーションは、リチウム対極と陽極にめっきされるリチウムの間において、0.6mAで電圧約40mV、密度約0.9mA/cm2の電気めっきを行う。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態において、陽極の予備充電の際に、リチウムはプロピレンカーボネート液/LiPF6(または他の適当なリチウム塩)電解質溶液とLiPONバリア/電解質層を通じて伝導され、(例えばSiO2または重合体基板上の銅箔または銅層などの)陽極コネクタ上または導電性層上にリチウムが湿式めっきされる。
【0068】
図6Aは、めっきマスク119を含む硬質電解質被覆電流コレクタを有する電極600の斜視図である。いくつかの実施形態において、図7Bに示される721のような出発基板は、コンタクトパッド629の付いたパターン化された金属層620を有するようにフォトリソグラフで画定された金属層720(例、銅)を備える。コンタクトパッド629は、(図6Cに示すような)めっきに使用されるほか、完成した電池の外部電導体への接続に使用される。いくつかの実施形態におけるパターン化された金属層620は、(例えばフォトリソグラフで)パターン化された硬質電解質層624(例えば、図1Cに記載された硬質電解質層124において水平方向のエッジを除いたもの)である。いくつかの実施形態では、パターン化された金属層620本体間の金属ビア上に、任意のマスク層119が形成またはパターン化される。(金属層620はパターン化された硬質電解質層624(例、LiPON)を通じリチウムでめっきされている。)いくつかの実施形態において、マスク119は、金属ビアがリチウムでめっきされることを防いでおり、パターン化された硬質電解質層624と金属ビアの界面を封止する。(このようにしないと、水蒸気はたは空気が、この部分にめっきされたリチウムを腐食し間隙を形成して、パターン化された金属層620上のリチウム本体をさらに腐食する原因となる。)パターン化された硬質電解質層624は、残りの周辺部分のパターン化された金属層620の外側まで水平方向に広がるため、これらの部分にはマスクが不要である。これらの部分にはリチウムがめっきされず、パターン化された硬質電解質層624とその下の非伝導性基板との間の封止された界面は損なわれる事なく封止されたまま残る。
【0069】
図6Bは、めっきマスク119のついた硬質電解質被覆電流コレクタを有するもう一つの電極の斜視図である。ここに示すような実施形態では、基板面全体が金属であり、マスク119は硬質電解質層124(例、LiPON)の外周まで堆積および/またはパターン化されている。マスク119は内部開口129を有し、ここからLiPON層124を通じリチウムが基板120(例、金属箔)中央の大部分をめっきする。いくつかの実施形態におけるマスク119は、パターン化されめっき時に所定の位置に残されたフォトレジスト層である。別の実施形態におけるマスク119は、フォトレジストでパターン化され取り除かれた後の、他の材料(堆積したSiO2など)である。さらに別の実施形態におけるマスク119は基板120に直接堆積された材料(SiO2など)で、フォトレジストでパターン化され、フォトレジストを硬質電解質層124(例、LiPON)の堆積前に除去し、リチウムが外周部をめっきするのを防ぐ。(すなわち、いくつかの実施形態ではマスク119がLiPONの下になる。)
【0070】
図6Cは、めっきシステム610の斜視図である。いくつかの実施形態において、一つ以上の電極600および/または電極601が、液体電解質606(例、LiPF6その他の適当な電解質を溶解したプロピレンカルボネートおよび/またはエチレンカルボネートなど)中に部分的または完全に浸漬される。いくつかの実施形態では、リチウム犠牲ブロック605が電解質溶液606中に浸漬し置かれ、リチウム犠牲ブロック605と電極600および/または601との間に適当なめっき電圧を負荷する。いくつかの実施形態において、コンタクトパッド629は、リチウムがそこにめっきされないように液体の外に置かれる。
【0071】
図7A、図7B、図7C、図7D、図7Eおよび図7Fは、いくつかの実施形態の陰極として用いる基板上における銅および酸化銅の原子レベルマトリックス作製の(一連操作700として示した)概略断面図である。図7Aは、出発基板710(例、シリコン、アルミナ、ステンレス鋼、アルミニウム、または重合体、または相違する材料の複合材)の断面図である。いくつかの実施形態では、アルミニウム箔(または、リチウムと自発的に合金を形成し、それにより電池の性能を低下させ得る他の金属)、または、絶縁体もしくは非導電体(例えば、電池から電気を通さないシリコンや重合体など)が、銅またはニッケル(または電気を通し、且つリチウムと容易に合金を形成せず、それにより電池の性能維持に寄与する他の金属)によって被覆される。
【0072】
いくつかの実施形態において、陰極出発材料はリチウムを含まない。(例えば、銅箔もしくはスクリーン、または、(銅の導電層を被覆し、その後表面積の大きなカーボン、もしくは(大きな体積エネルギー密度を有する)Cuxx、またはリチウム電池電極として有用な他の材料で被覆して、任意にポリPNを注入した、絶縁体である。)いくつかの実施形態(図7B参照)では、金属層720(例えば、銅、ニッケル、その他電池の充電・放電時にリチウムと容易に合金化しない適当な金属)が、基板710(例えば、任意にSiO2絶縁層を片面もしくは両面に有するシリコンウェハー、アルミナもしくはガラスウェハー、または重合体膜)の一つ以上の主面(例えば、図に示された上面および/または底面)上に、(例えば、酸素を含まない銅のスパッタリングにより)堆積され、金属被覆基板721を形成する。いくつかの実施形態では、上述した実施形態すべての陽極または陰極に(金属箔111または121に代わって)、金属被覆基板721を電流コレクタベースとして使用することができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、出発基板は、金属層の各対間の平滑層(例、スピンコートしたフォトレジストまたはポリウレタン)と交互に重ねられ、バリアスタック(例えば、ここに参照し組み入れる2005年1月6日出願の米国特許出願第11/031,217号、代理人整理番号:1327.027US1、名称"一つ以上の画定可能な層を有する層状バリア構造と方法")を形成するための複数の金属層(例えばアルミニウムまたは銅製防湿層)を備え、このスタックの最上部金属層は(アルミニウムと異なり)電池の放電・充電の際にリチウムと容易に合金化しない金属(例えば銅など)であることを特徴とする。このような防湿スタックは、時間経過とともに水分および/または酸素を幾分か透過するような基板(例えば、ポリエチレンまたはKaptonTMなどの重合体膜基板など)を封止するのに有用である。
【0074】
リチウムを含まない開始材陰極を使用するいくつかの実施形態では、さらに部分的にO2を含むアルゴン雰囲気中で金属被覆基板721上に銅を(いくつかの実施形態では、時間経過とともに酸素濃度を増加させ、初期に堆積された材料は大部分が銅、そして材料が徐々に銅−酸化銅マトリックス内に多くの酸素が含むように)スパッタする。(例えば、層722中のCu4O(図7C参照)、層724中のCu2O(図7D参照)、層728中のCu+- -および/または層728中のCuO(図7E参照)、または銅基板720を連続させ、層722の大部分をCu4Oとし、次いで層724の大部分をCu2Oとし、次いで層728をCu+- -次いでCuOとする、および/または、銅と酸化銅との原子スケールのマトリックスを形成するなど、原子スケールの銅混合物を形成する。)いくつかの実施形態では、LiPONなどの硬質電解質層714(図7F参照)を仕上がった陰極材料全体に堆積する。
【0075】
図8A、図8B、図8C、図8Dおよび図8Eは、いくつかの実施形態の陰極として用いる基板上における銅および酸化銅の原子レベルマトリックスを作製を(一連操作800として)示した概略断面図である。いくつかの実施形態(図8A参照)では、銅箔711または膜が開始材料である。いくつかの実施形態では、陰極として使用される面(例えば図示の上面および/または底面)を清浄化すするため、出発材料箔をアルゴンでスパッタリングし、次いで部分的にO2を含むアルゴン雰囲気中で銅をスパッタリング法により(いくつかの実施形態では、時間経過とともに酸素濃度を増加させ、初期に堆積された材料は殆ど銅、そして材料が徐々に銅−酸化銅マトリックス内に多くの酸素が含むように)堆積する。(例えば、Cu4O722(図8B参照)、Cu2O724(図8C参照)、Cu+- -および/またはCuO728(図8D参照)、または銅基板720を連続させ、Cu4O722を大部分とし、次いでCu2O724を大部分とし、次いでCu+- -次いでCuO728を大部分とする、および/または、銅と酸化銅との原子スケールのマトリックスを形成するなど、原子スケールの銅‐銅酸化物の混合物を形成する。)いくつかの実施形態では、LiPONなどの硬質電解質層714(図8E参照)を仕上がった陰極材料全体に堆積する。
【0076】
このような実施形態のいくつかでは、金属銅が酸化銅内に広がり(これがいくつかの実施形態ではリチウムをインターカレートし)、リチウムが陰極を出入りするため電気伝導率が改善される。いくつかの実施形態では、事前に堆積したLiPON電解質を通じて陽極にリチウムを電気めっきすることにより、陽極を予備充電する。
【0077】
他の実施形態では、酸化銅および/または銅粉末の一つ以上を銅基板またはスクリーン(すなわち陰極導電層)に粉体圧縮する。さらに別の実施形態では、酸化銅および/または銅粉末の一つ以上を含むインクを、印刷、噴霧、ドクターブレード、その他の方法で陰極導電層に堆積させる。本発明のいくつかの実施形態では、液体プロピレンカルボネート/LiPF6電解質溶液と、リチウムがめっきされる陰極材料および/またはコネクタもしくは導電層のLiPONバリア/電解質層と、を導通するリチウムにより陰極材が充電される。
【0078】
図9は、本発明のある実施形態における並列接続、箔‐基板‐陰極‐電流コレクタコンタクト薄膜電池900の概略断面図である。電池900は並列接続された2つのセルを備え、両面陽極電流コレクタ120が、中心電流コレクタ層120(例、金属箔または金属被覆重合体膜)の両面においてマスク119によって画定されるように、電解質層124(例、LiPON)を通じて電気めっきされた陽極材料122(例、金属リチウム)を有している。いくつかの実施形態において、2つの陰極電流コレクタ110は、それぞれ堆積後にフォトリソグラフ法でパターン化され、硬質電解質層124(例、LiPON)で覆われた陰極材料112(例、LiCoO2)を有している。硬質電解質層124のピンホール992、および/または、硬質電解質層のピンホール991は典型的な単一電解層電池において故障を引き起こす場合があるが、本発明の場合、ピンホールが(例えば、図の垂直方向に)互いに一列並ばない、あるいは、いくつかの実施形態では、軟質重合体電解質130によって満たされる。軟質重合体電解質130はこのような孔を満たし電池を自動的に「治す」役割を果たす。この電池の他の詳細は前述の図3に示された通りである。
【0079】
図10Aは、本発明のいくつかの実施形態における、封入された表面実装型単セルマイクロ電池装置1000の概略断面図を示す。(他の実施形態は上述したセルスタックを使用する。)いくつかの実施形態では、シリコンウェハー基板の面上にこのようなセルを複数作製し、切断して、表面に金属電流コレクタ1010を有するシリコン基板1011を形成し、次いでこの上に陰極材料112と硬質電解質層114を堆積して、陰極部品を形成する。その後、箔基板120と、陽極金属122と、硬質電解質層124とを有する箔陽極を、軟質重合体電解質接着剤130を用いて陰極部品に積層する。そして、この電池を陰極コネクタ1051および陽極コネクタ1052を有するリードフレームに接続し、封入材料1050中に封入し、リードを図示したガルウィング型、もしくはパッケージの下方に巻かれたJ型に成型する。その後、表面実装装置1000を回路基板に半田付けし、回路の他の部品(リアルタイム時計もしくはタイマー、または、スタティックRAM、RFID回路、など)に少量の電池電源を供給することができる。他の実施形態では、代わりに複数の電池セルを使用し、これ等を封入して、より高電流および/または高電圧容量を有する表面実装チップ状電池を形成する。
【0080】
図10Bは、本発明のいくつかの実施形態における(図10Aで上述した)封入された表面実装マイクロ電池装置1000の概観斜視図である。いくつかの実施形態において、箔電池セルスタック(例えば、図3、図4、図5Aおよび/または図5Bに示されたもの、並びに、いくつかの実施形態ではシリコンウェハー基板有り、または無しのもの)がこのようなフォームファクタに封入され、より高電流および/または高電圧容量を有する表面実装チップ状電池を形成する。
【0081】
図11は、本発明のいくつかの実施形態による電池セルの製造方法1100を示すフローシートである。いくつかの実施形態において、方法1100は、陽極材料と陽極材料を被覆する硬質電解質層とを含む第一シートを設けること1110と、陰極材料と陰極材料を被覆する硬質電解質層とを含む第二シート(例、111)を設けること1112と、第一シートの硬質電解質層と第二シートの硬質電解質層との間に軟質(例、重合体)電解質を挟むこと1114とを備える。方法1100のいくつかの実施形態は、図12に示す工程をさらに備える。
【0082】
図12は、本発明のいくつかの実施形態における電池スタックの作製方法1200を示すフローシートである。いくつかの実施形態において、方法1200は、図11の方法1100を実行すること1210と、陽極材料と陽極材料を被覆する硬質電解質層とを含む第三シートを設けること1210と、陰極材料と陰極材料を被覆する硬質電解質層とを含む第四シートを設けることと、第三シートの陽極材料を被覆する電解質層と第四シートの陰極材料を被覆する電解質層との間、ならびに第一シートの陽極材料を被覆する電解質層と第四シートの陰極材料を被覆する電解質層との間に重合体電解質を挟むこと1216とを備える。
【0083】
図13は、電池装置1300(様々な実施形態で、本書に記載された電池装置の一つ以上)を用いる情報処理システム1300(ラップトップコンピュータなど)の分解斜視図である。例えば、様々な例示的実施形態における情報処理システム1300の具体例は、コンピュータ、ワークステーション、サーバ、スーパーコンピュータ、携帯電話、自動車、洗浄機、マルチメディア娯楽機器、その他の装置である。いくつかの実施形態において、回路パッケージ1320は、メモリー1321と、電源(エネルギー蓄積装置1330)と、入力システム1312(キーボード、マウスおよび/または音声認識装置など)と、入出力システム1313(CD、DVD読取りおよび/または書込み装置など)と、入出力システム1314(ディスケットまたは他の磁気媒体読取り/書込み装置など)と、出力システム1311(ディスプレイ、プリンターおよび/またはオーディオ出力装置など)と、無線通信アンテナ1340に接続されたコンピュータプロセッサとを備え、上殻1310と中殻1315と底殻1316とを有する筐体内に納められている。いくつかの実施形態において、エネルギー蓄積装置1330は、筐体の一つ以上の面(すなわち上殻1310、中殻1315および/または底殻1316)上に直接形成されこれらを実質的に覆う薄膜層として、(例えば、真空堆積ステーションで蒸着された薄膜として)堆積または(部分的に組み立てられた電極膜として)積層される。
【0084】
図14は、図13と同様に構成された情報処理システム1400を示す。様々な例示的実施形態において、情報処理システム1400の具体例は、ポケットコンピューター、携帯端末もしくは電子手帳(PDA)、ポケベル、ブラックベリー(商標)型端末、携帯電話、GPSシステム、デジタルカメラ、MP3プレーヤ型娯楽システムおよび/または他の装置である。いくつかの実施形態における回路パッケージ1420は、メモリー1421、電源電池装置1430、入力システム1412(キーボード、ジョイスティック、および/または音声認識装置など)、入出力システム1414(携帯メモリカードスロットまたは外部インターフェースなど)、出力システム1411(ディスプレイ、プリンターおよび/またはオーディオ出力装置など)、無線通信アンテナ1440を備え、上殻1410と底殻1416とを有する筐体内に納められている。いくつかの実施形態における(本書記載の一つ以上の電池装置である)電池装置1430は、筐体の一つ以上の面(すなわち上殻1410および/または底殻1416)上に直接形成されこれらを実質的に覆う薄膜層として堆積される。
【0085】
いくつかの実施形態において、一つ以上の硬質電解質層は、リチウムイオンを伝導するガラス状層である。このような実施形態のいくつかにおいて、少なくとも一つ以上の硬質電解質層は、LiPONを含む。いくつかの実施形態において、第一硬質電解質層と第二硬質電解質層とは、いずれもLiPONである。このような実施形態のいくつかにおいて、それぞれの硬質電解質層は、LiPONソースから一つ以上の電極材料を有する基板上にスパッタされる。このような実施形態のいくつかにおいて、それぞれの硬質電解質層は、リン酸リチウムソースから一つ以上の電極材料を有する基板上に、窒素雰囲気中でスパッタ形成される。実施形態のいくつかにおいて、それぞれの硬質電解質層は、リン酸リチウムソースから一つ以上の電極材料を有する基板上に、窒素雰囲気中でイオンアシスト電圧を掛けスパッタされる。
【0086】
いくつかの実施形態において、軟質電解質層は、室温でゲル状の一つ以上の重合体を含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、軟質電解質層は、ポリホスファゼン重合体を含む。いくつかのこのような実施形態において、軟質電解質層は、共置換直鎖ポリホスファゼン重合体を含む。いくつかの実施形態において、軟質電解質層は、室温でゲル状のポリホスファゼン重合体を含む。いくつかのこのような実施形態において、軟質電解質層は、MEEP(ポリ[ビス(2−(2′−メトキシエトキシエトキシ)ホスファゼン])を含む。
【0088】
いくつかの実施形態において、軟質電解質層は、正極上の硬質電解質の上に軟質電解質層材料を堆積することと、負極上の硬質電解質の上に軟質電解質層材料を堆積することと、正極上の軟質電解質材料と負極上の軟質電解質材料とを互いに押し付けることとによって形成される。
【0089】
いくつかの実施形態において、軟質層は、液状および/またはゲル状電解質材料(例、ポリPN)を注入した重合体マトリックスを含む。このような実施形態のいくつかでは、正極、負極の少なくとも一つの上の加熱重合体材料に格子エンボス加工を施すことにより、重合体マトリックスを形成する。(例えば、高さ約0.1μmから約5μm:いくつかの実施形態では高さ約0.1μm、約0.2μm、約0.3μm、約0.4μm、約0.5μm、約0.6μm、約0.7μm、約0.8μm、約0.9μm、約1.0μm、約1.2μm、約1.4μm、約1.6μm、約1.8μm、約2.0μm、約2.2μm、約2.4μm、約2.6μm、約2.8μm、約3.0μm、約3.5μm、約4μm、約4.5μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μmまたは約10μmのマイクロエンボス加工を行い、隆起構造を形成する。)いくつかのこのような実施形態において、格子エンボス加工は、ドットパターンを形成する。いくつかのこのような実施形態において、格子エンボス加工は、ラインパターンを形成する。このような実施形態のいくつかにおいて、格子エンボス加工は、2方向/2次元のラインパターンを形成する。(例えば、いくつかの実施形態では交差するラインが四角形、三角形、六角形および/またはその他となり、他の実施形態では、円形、四角形、三角形および/またはその他の交差しない幾何学模様を形成する。)他の実施形態では、ラインパターンが、正極上のある方向と負極上の別の方向にそれぞれ一方向に形成される。
【0090】
いくつかの実施形態において、軟質電解質層は、液状および/またはゲル状電解質材料(例、ポリPN)を注入し2つの硬質電解質層間に配置された薄い(例えば0.5から5μm厚の)重合体スポンジまたはスクリーン(例えば、ポリプロピレン製スポンジ)を含む。
【0091】
いくつかのこのような実施形態において、軟質電解質層は、正極上の硬質電解質の上に軟質電解質層材料を堆積することと、負極上の硬質電解質の上に軟質電解質層材料を堆積することと、正極上の軟質電解質材料と負極上の軟質電解質材料とを互いに押し付けることと、によって形成される。このような実施形態のいくつかでは、薄い軟質電解質層の少なくとも一つをドクターブレードで形成する。このような実施形態のいくつかでは、薄い軟質電解質層の少なくとも一つを噴霧法で形成する。このような実施形態のいくつかでは、薄い軟質電解質層の少なくとも一つをシルクスクリーン法で形成する。このような実施形態のいくつかでは、薄い軟質電解質層の少なくとも一つを印刷法で形成する。
【0092】
いくつかの実施形態において、電池は、銅製電流コレクタ層上に堆積したLiCoO2層と、LiCoO2層上に堆積した約1μm厚のLiPON層と、約1μmから3μmのポリホスファゼン/リチウム塩電解質材料とを含む正極材料、ならびに負極上の約1μm厚のLiPON層を備える。いくつかの実施形態において、負極は銅製電流コレクタを備え、その上にLiPONが堆積され、LiPON層を通じて銅製電流コレクタ上にリチウムを湿式めっきすることで予備充電が行われる。いくつかの実施形態において、ポリホスファゼン/リチウム塩電解質材料は、正極上に堆積されたLiPONの上に約1μmのポリホスファゼン/リチウム塩電解質材料を堆積することと、陰極上に堆積されたLiPONの上に約1μmのポリホスファゼン/リチウム塩電解質材料を堆積することと、正極上のポリホスファゼン/リチウム塩電解質材料と負極上のポリホスファゼン/リチウム塩電解質材料とを接触させることとにより形成される。このような実施形態のいくつかにおいて、接触は、ローラー間における圧縮によって行われる。
【0093】
本発明の実施形態のいくつかは、正極、負極、およびこれらの間にある電解質構造を含む電池セルを備えた装置を含み、電解質構造は軟質電解質層と少なくとも一つの硬質電解質層を含む。
【0094】
いくつかの実施形態において、電解質構造は、負極上に硬質電解質層を備え、軟質電解質層が正極と負極上の硬質電解質層との間に挟まれている。いくつかのこのような実施形態において、本発明は正極を被覆する硬質電解質を省略する。
【0095】
いくつかの実施形態において、軟質電解質層は、ポリホスファゼンを含む。いくつかの実施形態において、軟質電解質層は、MEEPを含む。いくつかの実施形態において、軟質電解質層は、例えばLiPF6、LiBF4、LiCF3SO4、CF3SO3Li(リチウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフレートとも呼ばれる)、リチウムビスペルフルオロエタンスルホンイミド、リチウム(ビス)トリフルオロメタンスルホンイミド等のリチウム塩、またはこのような塩の2種類以上の混合物を含む。
【0096】
いくつかの実施形態において、電解質構造は、正極上の硬質電解質層と、負極上の硬質電解質層と、正極上の硬質電解質層と負極上の硬質電解質層とに挟まれた軟質電解質層とを備える。いくつかの実施形態において、正極上の硬質電解質層と負極上の硬質電解質層の厚さはそれぞれ約1μm以下である。いくつかの実施形態において、正極上の硬質電解質層と負極上の硬質電解質層の厚さはそれぞれ約0.5μm以下である。いくつかの実施形態において、軟質電解質層の厚さは約3μm以下である。いくつかの実施形態において、軟質電解質層の厚さは約2μm以下である。いくつかの実施形態において、軟質電解質層の厚さは約1μm以下である。
【0097】
いくつかの実施形態において、正極上の硬質電解質層は、負極上の硬質電解質層と実質的に同一の材料である。いくつかの実施形態において、正極上の硬質電解質層は負極上の硬質電解質層と実質的に同一の厚さを有する。
【0098】
いくつかの実施形態において、正極上の硬質電解質層はLiPONを含み、負極上の硬質電解質層もLiPONを含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、軟質電解質層はゲルを含む。
【0100】
いくつかの実施形態において、軟質電解質層は、ポリビニリデンジフルオリド(PVdF)、プロピレンカーボネートおよびリチウム塩を含有するゲルを含む。PVdFはリチウムイオンを伝導しない重合体であり、すなわち、リチウム塩はPVdFに溶解しない。しかしながらPVdFはリチウム塩が溶解したプロピレンカルボネートなどの液体によって膨潤する場合がある。このようにして作られたゲルは電解質として使用することができる。
【0101】
いくつかの実施形態は、電池セルを包む封入材料と、電池セルから封入材料の外部に接続する一つ以上の導線とをさらに備える。
【0102】
いくつかの実施形態は、電子装置とこの電子装置を格納する筐体をさらに備え、電池セルは筐体の内部で電子装置に電力を供給する。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態は、正極部品を設けることと、負極部品を設けることと、少なくとも負極部品を硬質電解質層で被覆することと、正極部品と、硬質電解質層で被覆された負極部品と、それらの間の軟質電解質層とを用いて電池セルを形成することとを備える方法を含む。
【0104】
本方法の実施形態のいくつかは、正極部品を硬質電解質層で被覆することをさらに含み、ここで、電池セルの電解質構造が、負極上の硬質電解質層と、正極上の硬質電解質層と、正極上の硬質電解質層と負極上の硬質電解質層との間に挟まれた軟質電解質層とを備えている。
【0105】
本方法の実施形態のいくつかにおいて、電解質構造は、正極上の硬質電解質層と、負極上の硬質電解質層と、正極上の硬質電解質層と負極上の硬質電解質層との間に挟まれた軟質電解質層とを備える。
【0106】
本方法のいくつかの実施形態では、正極上の硬質電解質層がLiPONを含み、また負極上の硬質電解質層がLiPONを含む。
【0107】
本方法のいくつかの実施形態において、軟質電解質層は、ポリホスファゼンとリチウム塩とを含む。いくつかの実施形態において、軟質電解質層はMEEPとリチウム塩とを含む。いくつかの実施形態において、リチウム塩は、例えばLiPF6、LiBF4、LiCF3SO4、CF3SO3Li(リチウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフレートとも呼ばれる)、リチウムビスペルフルオロエタンスルホンイミド、リチウム(ビス)トリフルオロメタンスルホンイミド、またはこのような塩の2種類以上の混合物を含む。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態は、硬質電解質層で被覆された正極部品と、硬質電解質層で被覆された負極部品と、電池セルを形成するための、負極部品上の硬質電解質層を正極部品上の硬質電解質層に接続するための電解質的接続手段とを備える装置を含む。
【0109】
いくつかの実施形態において、接続手段は、一つ以上の硬質電解質層における欠陥の修復手段を含む。
【0110】
いくつかの実施形態において、正極上の硬質電解質層はLiPONを含み、負極上の硬質電解質層はLiPONを含む。
【0111】
いくつかの実施形態において、接続手段はMEEPを含む。いくつかの実施形態において、接続手段はポリホスファゼンとリチウム塩とを含む。いくつかの実施形態において、接続手段はMEEPとリチウム塩とを含む。いくつかの実施形態において、リチウム塩は、例えばLiPF6、LiBF4、LiCF3SO4、CF3SO3Li(リチウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフレートとも呼ばれる)、リチウムビスペルフルオロエタンスルホンイミド、リチウム(ビス)トリフルオロメタンスルホンイミド、またはこのような塩の2種類以上の混合物を含む。
【0112】
いくつかの実施形態は、電池セルを囲む封入材料と、電池セルから封入材料の外部に接続する一つ以上の導線とをさらに備える。
【0113】
いくつかの実施形態は、電子部品をさらに備え、電池セルが電子部品の少なくとも一部に電力を供給する。
【0114】
本発明のいくつかの実施形態は、負極と正極と電解質構造とを有する第一電池セルを備えた装置を含み、負極は陽極材料と負極材料の少なくとも一部を被覆するLiPON層を含み、正極は陰極材料と正極材料の少なくとも一部を被覆するLiPON層を含み、さらに電解質構造は負極上のLiPON層と正極上のLiPON層との間に挟まれた重合体電解質材料を含んでいる。
【0115】
いくつかの実施形態において、陰極材料は、正極電流コレクタ材料上に堆積されたLiCoO2を備え、正極のLiPON層が前記LiCoO2上に堆積している。いくつかの実施形態において、正極電流コレクタコンタクト材料は、陰極材料が堆積された金属メッシュを含む。
【0116】
いくつかの実施形態において、負極は、めっき動作中にリチウムと容易に合金化しない金属で作製された負極電流コレクタを備え、負極を被覆するLiPON層を通じて金属リチウムが負極電流コレクタにめっきされる。いくつかの実施形態において、負極電流コレクタの金属は銅を含む。このようないくつかの実施形態において、負極は負極電流コレクタの周囲を被覆するマスク層を備え、負極を被覆するLiPON層を通じて、このマスクで画定された負極電流コレクタの領域に金属リチウムがめっきされる。
【0117】
いくつかの実施形態において、負極材料は電流コレクタ金属層を備え、陽極材料が、負極のLiPON層によって少なくとも部分的に覆われた金属層の2つの主面の少なくとも一つに堆積された金属リチウムを含む。
【0118】
いくつかの実施形態において、陽極材料は、負極金属層の両方の主面(各面は負極のLiPON層によって少なくとも部分的に被覆されている)に堆積される。
【0119】
いくつかの実施形態において、正極は電流コレクタ金属層を備え、陰極材料が金属層の両主面に堆積されており、LiPON層によって少なくとも部分的に被覆される。
【0120】
いくつかの実施形態において、負極は、電流コレクタ金属層を備え、陽極材料は、負極を被覆するLiPON層を通じて負極電流コレクタ金属の両主面上にめっきされた金属リチウムを含む。
【0121】
いくつかの実施形態において、負極は、負極のLiPON層で被覆された電流コレクタコンタクト箔を備え、リチウム陽極材料が電流コレクタコンタクト箔を被覆するLiPON層を通じて電流コレクタコンタクト箔の第一主面上にめっきされた金属リチウムを含み、二次電池セルのリチウム陰極材料が一次電池セル負極の電流コレクタコンタクト箔の第二主面上に堆積され、その後、二次電池セルの陰極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層がスパッタ堆積される。
【0122】
いくつかの実施形態において、正極は電流コレクタ箔を備え、リチウム陰極材料が正極電流コレクタ箔の両主面に堆積され、その後、正極を被覆するLiPONバリア/電解質層がスパッタ堆積される。
【0123】
いくつかの実施形態おいて、正極は、電流コレクタコンタクトメッシュを備え、リチウム陰極材料が電流コレクタコンタクトメッシュの両主面に堆積され、その後、正極を被覆するLiPONバリア/電解質層がスパッタ堆積される。
【0124】
本発明のいくつかの実施形態は、陽極材料と陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを含む第一シートを設けることと、リチウムを含む陰極材料と陰極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを含む第二シートを設けることと、第一シートの陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層と第一陰極シートの陰極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層との間に重合体電解質材料を挟むこととを備える方法を含む。
【0125】
本方法のいくつかの実施形態は、陽極材料と陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを備える第三シートを設けることと、陰極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層を含む陰極材料を備える第四シートを設けることと、第三シートの陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層と第四シートの陰極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層との間に重合体電解質を挟むことと、第一シートの陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層と第四シートの陰極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層との間に重合体電解質を挟むこととをさらに備える。
【0126】
本方法のいくつかの実施形態において、陽極は、LiPON層を通じて銅製陽極電流コレクタコンタクト層上の層として堆積される。
【0127】
本方法のいくつかの実施形態において、リチウムの堆積は、プロピレンカルボネート/LiPF6電解質溶液中における電気めっきにより行われる。
【0128】
本方法のいくつかの実施形態では、第一シートが陰極材料と陰極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層を陽極材料の反対面に備え、第二シートが第二シート上の陰極材料と反対面上のリチウムを含む陽極材料と、陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを備える。また、本方法は、リチウムと陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを含む陽極材料を第一面に備え、リチウムと陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを含む陽極材料を第一面と反対側の第二面に備える第三シートを設けることと、第一シートの陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層と第三シートの陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層との間に重合体電解質材料を挟むこととをさらに備える。
【0129】
本発明のいくつかの実施形態は、リチウムと、第一シートの第一面上で陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを含む陽極材料を備える第一シート、並びに、リチウムと、第二シートの第二面上で陰極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを含む陰極材料を備える第二シート、並びに、第一シートの第一面上のLiPON層と第二シートの第二面上のLiPON層との間で電池セルを形成するためのイオン透過手段を備える装置を含む。
【0130】
いくつかの実施形態において、第一シートは第一シートの第二面にLiPON層を備え、また、本装置は、リチウムと第三シートの第一面で陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを含む陽極材料を備える第三シートと、リチウムと第四シートの第二面で陰極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを含む陰極材料、ならびに、リチウムと第四シートの第一面で陰極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを含む陰極材料とを備える第四シートと、第三シートの第一面上のLiPON層と第四シートの第二面上のLiPON層との間に二次電池セルを形成するためのイオン透過手段と、第一シートの第二面上のLiPON層と第四シートの第一面上のLiPON層との間に三次電池セルを形成するためのイオン透過手段とをさらに備える。
【0131】
いくつかの実施形態において、第一シートは銅製陽極電流コレクタ層を備え、陽極材料は第一シートのLiPON層を通じて銅製陽極電流コレクタ層上に金属リチウム層として堆積されたリチウムを含む。
【0132】
いくつかの実施形態において、金属リチウム層の外周部はマスクによって画定されており、リチウムの堆積は液体プロピレンカルボネート/LiPF6電解質溶液中における電気めっきにより行われる。
【0133】
いくつかの実施形態において、第一シートは第一面の陽極材料とは反対側の第二面上の陰極材料と第一シートの陰極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを備え、また、本装置は、リチウムと第三シートの第一面上の陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを含む陽極材料を有する第三シート、並びに、第一シートの第二面上のLiPON層と第三シートの第一面上のLiPON層との間に直列接続された一対の電池セルを形成するためのイオン透過手段をさらに備える。
【0134】
本発明のいくつかの実施形態は、負極部品に硬質電解質層を堆積する堆積ステーションと、正極部品に硬質電解質層を堆積する堆積ステーションと、負極部品上の硬質電解質層を軟質電解質層を間に挟みつつ正極部品上の硬質電解質に積層して複合電解質構造を形成するための積層ステーションとを備える装置を含む。
【0135】
いくつかの実施形態は、負極部品上の硬質電解質の上に軟質電解質を堆積するための堆積ステーションをさらに備える。いくつかの実施形態において、軟質電解質層は、ポリホスファゼンを含む。
【0136】
いくつかの実施形態は、負極部品上の硬質電解質の上に軟質電解質を堆積するための堆積ステーションと、正極部品上の硬質電解質の上に軟質電解質を堆積するための堆積ステーションとをさらに備える。
【0137】
いくつかの実施形態において、正極部品上に硬質電解質を堆積するステーションはLiPONを含む材料を堆積し、負極部品上に硬質電解質を堆積するステーションはLiPON5を含む材料を堆積し、正極部品上の硬質電解質層上に堆積される軟質電解質を堆積するための堆積ステーションと、負極部品上の硬質電解質層上に堆積される軟質電解質を堆積するための堆積ステーションとは、ポリホスファゼンとリチウム塩を含む材料を堆積する。いくつかの実施形態において、軟質電解質層はMEEPを含む。
【0138】
いくつかの実施形態において、正極上に硬質電解質層を堆積する堆積ステーションはLiPONを含む材料を堆積し、負極上に硬質電解質層を堆積する堆積ステーションはLiPONを含む材料を堆積する。
【0139】
いくつかの実施形態は、硬質電解質層が正極部品上に堆積される前に、正極にLiCoO層を堆積する堆積ステーションをさらに備える。
【0140】
いくつかの実施形態は、硬質電解質層が負極部品上に堆積された後、硬質電解質層を通じて負極上に金属リチウム層をめっきするための電気めっきステーションをさらに備える。
【0141】
いくつかの実施形態は、フォトレジスト層を堆積し、金属リチウム層が形成される負極部品の領域を確定するマスクをパターン化するためのパターン化ステーションをさらに備える。
【0142】
本発明のいくつかの実施形態は、正極部品を設けることと、負極部品を設けことと、負極部品上に硬質電解質層を堆積することと、正極部品上に硬質電解質層を堆積することと、電解質構造を形成するために軟質電解質層を間に挟みつつ負極上の硬質電解質層を正極上の電解質上に積層することとを備える方法を含む。
【0143】
本方法のいくつかの実施形態において、正極部品への硬質電解質の堆積は、LiPON層をスパッタ堆積することを含み、負極部品への硬質電解質の堆積はLiPON層をスパッタ堆積することを含む。
【0144】
本方法のいくつかの実施形態において、軟質電解質層は、ポリホスファゼンとリチウム塩とを含む。
【0145】
いくつかの実施形態は、負極の硬質電解質層上に軟質電解質層を堆積することと、正極の硬質電解質層上に軟質電解質層を堆積することとを備え、積層の際、正極の硬質電解質上の軟質電解質に、負極の硬質電解質上の軟質電解質を押し付ける。
【0146】
いくつかの実施形態において、負極部品の硬質電解質上の軟質電解質層の堆積方法はドクターブレードの使用を含む。
【0147】
いくつかの実施形態において、負極部品の硬質電解質上の軟質電解質層の堆積方法は、液体状の軟質電解質材料の噴霧を含む。
【0148】
いくつかの実施形態において、負極部品の硬質電解質上の軟質電解質層の堆積方法は、液体状の軟質電解質材料のスピンコートを含む。
【0149】
本発明のいくつかの実施形態は、正極部品のソースと、負極部品のソースと、負極部品上への硬質電解質層の堆積手段と、正極部品上への硬質電解質層の堆積手段と、電解質構造を形成するために軟質電解質層を間に挟みつつ、負極上の硬質電解質層を正極上の電解質上に積層する手段とを備える装置を含む。
【0150】
いくつかの実施形態は、負極の硬質電解質層上への軟質電解質層の堆積手段と、正極の硬質電解質層上への軟質電解質層の堆積手段とをさらに備え、積層手段でもって、正極の硬質電解質上の軟質電解質に、負極の硬質電解質上の軟質電解質を押し付ける。
【0151】
いくつかの実施形態において、正極上に堆積された硬質電解質層はLiPONを含み、負極上に堆積された硬質電解質層もLiPONを含む。
【0152】
いくつかの実施形態において、軟質電解質層は、ポリホスファゼンとリチウム塩とを含む。
【0153】
いくつかの実施形態において、軟質電解質層はMEEPを含む。
【0154】
本発明のいくつかの実施形態は、陽極と、陰極と、電解質構造とを備える電池セルを含み、陽極が、電池セルが充電される際にリチウムと、陽極の少なくとも一部を被覆するLiPONバリア/電解質層とを含む陽極材料を備え、陰極が、リチウムと陰極の少なくとも一部を被覆するLiPONバリア/電解質層とを含む陰極材料を備え、電解質構造が、陽極を被覆するLiPONバリア/電解質層と陰極を被覆するLiPONバリア/電解質層との間に挟まれた重合体電解質を備える。
【0155】
本装置のいくつかの実施形態では、陰極材料は、陰極電流コレクタコンタクト材料上に堆積されたLiCoO2を含み、その上に陰極を被覆するLiPONバリア/電解質層が堆積される。
【0156】
本装置のいくつかの実施形態では、陰極材料は、陰極電流コレクタコンタクト材料上に堆積されたLiCoO3を含み、その上に陰極を被覆するLiPONバリア/電解質層が堆積される。
【0157】
本装置のいくつかの実施形態では、リチウム陽極材料は、陽極を被覆するLiPONバリア/電解質層を通じて、銅製陽極電流コレクタコンタクト上または電流コレクタ上にめっきされる。
【0158】
本装置のいくつかの実施形態では、陽極材料は、LiPONバリア/電解質層により少なくとも部分的に被覆された金属シート主面の両面に堆積される。
【0159】
本装置のいくつかの実施形態では、陰極材料が金属シート主面の両面に堆積され、LiPONバリア/電解質層により少なくとも部分的に被覆される。
【0160】
本装置のいくつかの実施形態において、陰極電流コレクタコンタクト材料は、陰極材料が周囲に堆積した金属メッシュを含む。
【0161】
本装置のいくつかの実施形態において、リチウム陽極材料は、電流コレクタコンタクト層を被覆するLiPONバリア/電解質層を通じて、陽極電流コレクタコンタクト箔の両主面上にめっきされる。
【0162】
本装置のいくつかの実施形態では、リチウム陽極材料が、電流コレクタコンタクト箔を被覆するLiPONバリア/電解質層を通じて、陽極電流コレクタコンタクト箔の第一主面上にめっきされ、リチウム陰極材料が陰極電流コレクタコンタクト箔の第二主面上にめっきされ、その後、陰極を被覆するLiPONバリア/電解質層がスパッタ堆積される。
【0163】
本装置のいくつかの実施形態では、リチウム陰極材料が陰極電流コレクタコンタクト箔の両主面上に堆積され、その後、陰極を被覆するLiPONバリア/電解質層がスパッタ堆積される。
【0164】
本装置のいくつかの実施形態では、リチウム陰極材料が陰極電流コレクタコンタクトメッシュの両主面上に堆積され、その後、陰極を被覆するLiPONバリア/電解質層がスパッタ堆積される。
【0165】
いくつかの実施形態において、本発明のもう一つの観点は、リチウムと陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを含む陽極材料を備える第一シートを設けることと、リチウムと陰極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを含む陰極材料を備える第二シートを設けることと、第一シートの陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層と第二シートの陰極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層との間に重合体電解質材料を挟むこととを備える方法を含む。
【0166】
本方法のいくつかの実施形態は、リチウムと陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを含む陽極材料を備える第三シートを設けることと、リチウムと陰極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを含む陰極材料を備える第四シートを設けることと、第三シートの陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層と第四シートの陰極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層との間に重合体電解質を挟むことと、第一シートの陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層と第四シートの陰極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層との間に重合体電解質を挟むこととをさらに備える。
【0167】
本方法のいくつかの実施形態において、陽極はLiPON層を通じて銅製陽極電流コレクタコンタクト層上の層として堆積される。
【0168】
本方法のいくつかの実施形態において、リチウム陽極の堆積はプロピレンカーボネート/LiPF6電解質溶液中における電気めっきにより行われる。
【0169】
本方法のいくつかの実施形態では、第一シートが陰極材料と陰極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを陽極材料の反対面に備え、第二シートが第二シート上の陰極材料と反対面上のリチウムを含む陽極材料と陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを備え、また、本方法は、リチウムと陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを含む陽極材料を第一面に備えることと、リチウムと陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを含む陽極材料を第一面と反対側の第二面とに備える第三シートを設けることと、第一シートの陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層と第三シートの陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層との間に重合体電解質材料を挟むこととをさらに備える。
【0170】
いくつかの実施形態において、本発明のもう一つの観点は、リチウムと陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを含む陽極材料を備える第一シートと、リチウムと陰極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを含む陰極材料を備える第二シートと、第一シートの陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層と第二シートの陰極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層との間に重合体電解質材料を挟む手段とを備える装置を含む。
【0171】
本装置のいくつかの実施形態は、リチウムと陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを含む陽極材料を備える第三シートと、リチウムと陰極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層を含む陰極材料を備える第四シートと、第三シートの陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層と第四シートの陰極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層との間に重合体電解質を挟む手段と、第一シートの陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層と第四シートの陰極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層との間に重合体電解質を挟む手段とを備える。
【0172】
いくつかの実施形態では、第一シートが陽極材料と反対の面に陰極材料と陰極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層を備え、第二シートが陰極材料と反対面上のリチウムを含む陽極材料と、陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを備え、また、本装置は、リチウムと陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを含む陽極材料を第一面に備え、リチウムと陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層とを含む陽極材料を第一面と反対側の第二面に備える第三シートと、第一シートの陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層と第三シートの陽極材料を被覆するLiPONバリア/電解質層との間に重合体電解質材料を挟む手段とをさらに備える。
【0173】
上述の記載は、説明を意図したもので、限定を意図したものではないことを理解すべきである。本書に記載された実施形態の様々な特徴と利点を、様々な実施形態の構造と機能と共に、すでに説明したが、他の多くの実施形態と詳細な変形が、これらの記述に鑑み当業者に明らかになるであろう。従って本発明の範囲は、特許請求の範囲と、このような特許請求の範囲が権利を主張する等価な範囲の全てを参照して決定されるべきである。特許請求の範囲において、「including(含む)」および「in which(その中)」と言う用語は、それぞれ「comprising(備える)」および「wherein(ここにおいて、特徴とする)」という用語と単純に等価な英語として使用される。さらに、「第一」、「第二」、「第三」と言う用語は単にラベルとして使用されるもので、これらの対象物に数値的な要求を課すことを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1A】本発明のいくつかの実施形態におけるリチウムセル100の概略断面図である。
【図1B】本発明のいくつかの実施形態におけるリチウムセル101の概略断面図である。
【図1C】本発明のいくつかの実施形態におけるリチウムセル102の概略断面図である。
【図2】本発明のいくつかの実施形態におけるリチウム電池製造プロセス200の概略断面図である。
【図3】本発明のいくつかの実施形態における並列接続リチウム電池製造300の概略断面図である。
【図4】本発明のいくつかの実施形態における直列接続リチウム電池製造400の概略断面図である。
【図5A】本発明のいくつかの実施形態における並列接続スクリーン陰極電流コレクタコンタクトリチウム電池500の概略断面図である。
【図5B】本発明のいくつかの実施形態における直列接続スクリーン陰極電流コレクタコンタクトリチウム電池501の概略断面図である。
【図6A】めっきマスク119と硬質電解質被覆電流コレクタを有する電極600の斜視図である。
【図6B】めっきマスク119と硬質電解質被覆電流コレクタを有する電極601の斜視図である。
【図6C】めっきシステム610の斜視図である。
【図7A】本発明のいくつかの実施形態において基板上の陰極として用いる銅および酸化銅の原子レベルマトリックスを作製することを示した概略断面図である。
【図7B】本発明のいくつかの実施形態において基板上の陰極として用いる銅および酸化銅の原子レベルマトリックスを作製することを示した概略断面図である。
【図7C】本発明のいくつかの実施形態において基板上の陰極として用いる銅および酸化銅の原子レベルマトリックスを作製することを示した概略断面図である。
【図7D】本発明のいくつかの実施形態において基板上の陰極として用いる銅および酸化銅の原子レベルマトリックスを作製することを示した概略断面図である。
【図7E】本発明のいくつかの実施形態において基板上の陰極として用いる銅および酸化銅の原子レベルマトリックスを作製することを示した概略断面図である。
【図7F】本発明のいくつかの実施形態において基板上の陰極として用いる銅および酸化銅の原子レベルマトリックスを作製することを示した概略断面図である。
【図8A】いくつかの実施形態において銅箔基板上の陰極として用いる銅および酸化銅の原子レベルマトリックスも作製することを示した概略断面図である。
【図8B】いくつかの実施形態において銅箔基板上の陰極として用いる銅および酸化銅の原子レベルマトリックスも作製することを示した概略断面図である。
【図8C】いくつかの実施形態において銅箔基板上の陰極として用いる銅および酸化銅の原子レベルマトリックスも作製することを示した概略断面図である。
【図8D】いくつかの実施形態において銅箔基板上の陰極として用いる銅および酸化銅の原子レベルマトリックスも作製することを示した概略断面図である。
【図8E】いくつかの実施形態において銅箔基板上の陰極として用いる銅および酸化銅の原子レベルマトリックスも作製することを示した概略断面図である。
【図9】本発明のいくつかの実施形態における並列接続箔陰極電流コレクタコンタクトリチウム電池900の概略断面図である。
【図10A】本発明のいくつかの実施形態における封入された表面実装マイクロ電池1000の概略断面図である。
【図10B】本発明のいくつかの実施形態における封入された表面実装マイクロ電池1000の斜視図である。
【図11】本発明のいくつかの実施形態における電池セルの作製方法1100を示したフローシートである。
【図12】本発明のいくつかの実施形態における電池スタックの作製方法1200を示したフローシートである。
【図13】システムの一部である装置の1実施形態の分解斜視図である。
【図14】携帯システムの一部である装置のもう1つの実施形態の分解斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、それらの間の電解質構造とを有する電池セルを備え、前記電解質構造が、軟質電解質層と、少なくとも一つの硬質電解質層とを含むことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記電解質構造が前記負極上に硬質電解質層を含み、前記軟質電解質層が前記正極と、前記負極上の硬質電解質層との間に挟まれていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記軟質電解層がポリホスファゼンとリチウム塩とを含むことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記軟質電解層がMEEPとリチウム塩とを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記電池セルを囲む封入材料と、前記電池セルから前記封入材料の外部に通じる一つ以上の導線とをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
電子装置と、前記電子装置を保持する筐体とをさらに備え、前記電池セルが前記筐体内にあり前記電子装置に電力を供給することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
正極と、負極と、それらの間の電解質構造とを有する電池セルを備え、前記電解質構造が、前記正極上の硬質電解質層と、前記負極上の硬質電解質層とを含み、前記軟質電解質層が前記正極上の硬質電解質と前記負極上の硬質電解質との間に挟まれていることを特徴とする装置。
【請求項8】
前記軟質電解質層がポリホスファゼンを含むことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記正極上の硬質電解質層がLiPONを含み、前記負極上の硬質電解質層がLiPONを含むことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記軟質電解質層がポリホスファゼンを含むことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記軟質電解質層がMEEPを含むことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項12】
電池セルを囲む封入材料と、前記電池セルから前記封入材料の外部に通じる一つ以上の導線とをさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項13】
電子装置と、前記電子装置を保持する筐体とをさらに備え、前記電池セルが前記筐体内にあり前記電子装置に電力を供給することを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項14】
正極部品を設けることと;
負極部品を設けることと;
少なくとも前記負極部品を硬質電解質層で被覆することと;
前記正極部品と、前記硬質電解質層で被覆された負極部品と、それらの間の軟質電解質層とを用いて電池セルを形成することと;
を備える方法。
【請求項15】
前記正極部品を硬質電解質層で被覆することをさらに備え、前記電池セルの電解質構造が、前記負極上の硬質電解質層と、前記正極上の硬質電解質層と、前記正極上の硬質電解質層と前記負極上の硬質電解質層との間に挟まれた軟質電解質層とを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記軟質電解質層がポリホスファゼンとリチウム塩とを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記軟質電解質層がMEEPとリチウム塩とを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
正極部品を設けることと;
負極部品を設けることと;
前記負極部品を硬質電解質層で被覆することと;
前記正極部品を硬質電解質層で被覆することと;
前記硬質電解質層で被覆された正極部品と、前記硬質電解質層で被覆された負極部品と、それらの間の軟質電解質層とを用いて電池セルを形成することと、
を備える方法。
【請求項19】
前記正極上の硬質電解質層がLiPONを含み、前記負極上の硬質電解質層がLiPONを含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記軟質電解質層がポリホスファゼンとリチウム塩とを含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記軟質電解質層がゲルを含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記軟質電解質層がポリビニリデンジフルオリドと、プロピレンカーボネートと、リチウム塩とを含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項23】
硬質電解質層で被覆された正極部品と;硬質電解質層で被覆された負極部品と;電池セルを形成するための、前記負極部品上の硬質電解質層と前記正極部品上の硬質電解質層とを接続するための電解質的接続手段と;を備える装置。
【請求項24】
前記接続手段が、一つ以上の前記硬質電解質層の欠陥を修復するための手段をさらに含むことを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記正極上の硬質電解質層がLiPONを含み、前記負極上の硬質電解質層がLiPONを含むことを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項26】
前記接続手段がポリホスファゼンとリチウム塩とを含むことを特徴とする請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記接続手段がMEEPを含むことを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項28】
電池セルを囲む封入材料と;前記電池セルから前記封入材料の外部に通じる一つ以上の導線とをさらに備えることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項29】
電子装置をさらに備え、前記電池セルが前記電子装置の少なくとも一部に電力を供給することを特徴とする請求項23に記載の装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2009−502011(P2009−502011A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521709(P2008−521709)
【出願日】平成18年7月17日(2006.7.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/027750
【国際公開番号】WO2007/011900
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(505251978)シンベット・コーポレイション (8)
【氏名又は名称原語表記】CYMBET CORPORATION
【Fターム(参考)】