説明

軟質部材構造及び軟質部材の製造方法

【課題】表面が傷付きにくく、耐久性に優れた軟質部材構造及び軟質部材の製造方法を提供する。
【解決手段】軟質部材構造4は、軟質な基材層5と、柔軟な非発泡材よりなる非発泡材層2と、ハイブリッド塗膜よりなる表面層3とを有する。非発泡材層2としては、ウレタン塗料、ポリウレタン塗料、アクリルウレタン塗料、軟質塩化ビニル塗料など柔軟性を有した有機塗料特にウレタン系塗料の塗膜が好適である。表面層3を構成するハイブリッド塗膜としては、有機塗料中にシリカナノ微粒子を配合したものが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軟質部材構造及び軟質部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟質層と、この軟質層を覆う防水層とを有した浴室用クッション材が特開2000−237081号に記載されている。同号では、例えば発泡ウレタンからなる弾性材の表面を熱可塑性エラストマーからなる表面軟質層で覆っている(第0019段落)。同号には、この表面軟質層の表面に伸縮性のあるウレタン系塗料を塗布することも記載されている(第0032段落)。
【特許文献1】特開2000−237081号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
熱可塑性エラストマーよりなる表面軟質層や、その上に形成されることがあるウレタン系塗膜は、硬度が不足し、傷付き易い。
【0004】
本発明は、表面が傷付きにくく、耐久性に優れた軟質部材構造及び軟質部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の軟質部材構造は、軟質の基材層と、該基材層を覆う軟質の非発泡材よりなる非発泡材層と、該非発泡材層を覆う、無機粒子が配合された有機塗料の塗膜よりなる表面層と、からなるものである。
【0006】
請求項2の軟質部材構造は、請求項1において、無機粒子がシリカのナノ粒子であることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3の軟質部材構造は、請求項2において、有機塗料の固形分中のシリカのナノ粒子の含有量が15〜60重量%であることを特徴とするものである。
【0008】
請求項4の軟質部材構造は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記基材層が多孔性材からなることを特徴とするものである。
【0009】
請求項5の軟質部材の製造方法は、軟質の基材層の表面に非発泡性の有機塗料を塗布し、その後、無機粒子が配合された有機塗料を塗布することを特徴とするものである。
【0010】
なお、本発明における軟質部材は、25℃における弾性率が100kgf/mm以下のものである。
【0011】
また、本発明における表面層は、10℃から50℃までの温度域で100kgf/mm以下の弾性率を示すものが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の軟質部材構造では、表面を無機粒子が配合された有機塗料の塗膜で覆っており、この塗膜(以下、ハイブリッド塗膜ということがある。)は傷付きにくく、耐久性に優れる。また、このハイブリッド塗膜は、下地基材層及び非発泡材層の伸縮に柔軟に追従して伸縮するので、ヒビ割れなどの亀裂が入ることが防止される。
【0013】
このハイブリッド塗膜形成用の塗料としては、有機塗料成分に対しシリカナノ微粒子を配合したものが好適である。このシリカナノ微粒子の配合量を、塗料固形分中で15〜60重量%とすることにより、傷付きや亀裂を十分に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について図面を参照してさらに詳細に説明する。図1は実施の形態に係る軟質部材構造の断面図である。
【0015】
本発明の軟質部材構造4は、図1に示すように、軟質な基材層5と、該基材層5を覆う柔軟な非発泡材よりなる非発泡材層2と、この非発泡材層2を覆うハイブリッド塗膜よりなる表面層3とを有する。
【0016】
非発泡材層2としては、ウレタン塗料、ウレア塗料、ポリウレタン塗料、アクリルウレタン塗料、軟質塩化ビニル塗料など柔軟性を有した有機塗料特にウレタン系塗料の塗膜が好適である。
【0017】
この非発泡材層2の厚さは1〜3mm特に1〜2.5mm程度が好適である。
【0018】
この非発泡材層2の表面を覆う表面層3を構成するハイブリッド塗膜としては、マトリックス成分としての有機塗料中にシリカナノ微粒子を配合したものが好適である。このシリカナノ微粒子の粒径は5〜150nm程度が好適である。
【0019】
マトリックス成分としての有機塗料としてはウレタン系、アクリル系などが好適である。なお、シリカナノ微粒子の分散性及び有機マトリックス成分との親和性を高めるために、微量のシランカップリング剤を配合してもよい。
【0020】
シリカナノ微粒子の配合量は、塗料固形分中において15〜60重量%特に20〜55重量%とりわけ30〜51重量%であることが好ましい。なお、シリカナノ微粒子の配合量が過度に少ないと硬度が不足し、軟質シートや軟質マットの表面が傷付き易くなる。逆に、シリカナノ微粒子の配合量が過度に多いと、硬度が過度に高くなり、軟質シートや軟質マットの表面にヒビ割れ等の亀裂が生じ易くなるおそれがある。
【0021】
この表面層3の厚さは10〜30μm特に10〜20μm程度が好適である。
【0022】
なお、表面層3は、図1の通り、軟質部材構造4の小口面も覆うことが好ましい。これにより、水等が小口面から侵入することが防止される。また、軟質部材構造4の小口面にコーキングを施した場合、後でコーキングを剥すときに、コーキングを奇麗に剥すことができる。
【0023】
基材層5としては、発泡ウレタン、発泡ポリオレフィン(例えば発泡ポリエチレン)などの発泡樹脂や、発泡ゴム(例えば発泡EPDM、発泡ウレタンゴムなど)が好ましい。この基材層5の厚みは5〜50mm特に10〜30mm程度が好ましい。
【0024】
なお、図1では非発泡材層2は基材層5の小口面(側端面)を覆っていないが、図2,3のように、非発泡材層2は基材層5の小口面を覆ってもよい。
【0025】
この軟質部材構造4の軟質部材は、好ましくは、基材層5の上に非発泡材層2を塗布形成し、その上に表面層3を形成することにより製造される。
【実施例】
【0026】
実施例1〜5
シリカナノ微粒子と、ウレタンポリマーと、イソシアネート架橋剤とを表1に示す割合にて配合した有機無機ハイブリッド塗料を作成した。なお、シランカップリング剤を微量添加した。
【0027】
大きさ15×15×3cmの発泡ウレタン製の基材層5の表面に軟質塩化ビニル樹脂を塗布して厚み2.5mmの塗膜よりなる非発泡材層2を形成し、その上に上記ハイブリッド塗料を塗布し、厚み20μmのハイブリッド塗膜よりなる表面層3を形成した。
【0028】
この軟質部材構造4の鋼球落球衝撃試験を次のようにして行った。
上記軟質部材構造4をパーティクルボード(厚さ20mm)の上に上向きに載せ、上方10cmから1cmピッチで直径5cm、重量530gの鋼球を落下させ、塗膜のヒビ割れ発生状況を観察した。
【0029】
また、大きさ50×50×1cmの発泡EPDM製の軟質基材層の表面に軟質塩化ビニル樹脂を塗布して厚み2.5mmの塗膜よりなる軟質非発泡層を形成し、その上に上記ハイブリッド塗料を塗布し、厚み20μmのハイブリッド塗膜よりなる表面層を形成した。
【0030】
この軟質部材構造の耐傷試験を次のようにして行った。
軟質部材構造の上に質量4kgの砂が入った容器を置き、この容器を軟質部材構造の上で20cm/secで1.5万回引きずり、その後、塗膜の傷の発生状況を観察した。
結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
比較例1,2
シリカナノ微粒子の配合量を表1の通りゼロ又は著しく少なくして同様の試験を行った。結果を表1に示す。
【0033】
比較例3
シリカナノ微粒子を配合していないアクリルウレタン系塗料を用いて同様の試験を行った。結果を表1に示す。
【0034】
表1より、実施例1〜5、特にシリカナノ微粒子を30〜51重量部配合した実施例2〜4は、耐傷性、耐衝撃性に著しく優れることが認められる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施の形態に係る軟質部材構造の断面図である。
【図2】実施の形態に係る軟質部材構造の断面図である。
【図3】実施の形態に係る軟質部材構造の断面図である。
【符号の説明】
【0036】
2 非発泡材層
3 表面層
4 軟質部材構造
5 基材層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質の基材層と、該基材層を覆う軟質の非発泡材よりなる非発泡材層と、該非発泡材層を覆う、無機粒子が配合された有機塗料の塗膜よりなる表面層と、からなる軟質部材構造。
【請求項2】
請求項1において、無機粒子がシリカのナノ粒子であることを特徴とする軟質部材構造。
【請求項3】
請求項2において、有機塗料の固形分中のシリカのナノ粒子の含有量が15〜60重量%であることを特徴とする軟質部材構造。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記基材層が多孔性材からなることを特徴とする軟質部材構造。
【請求項5】
軟質の基材層の表面に非発泡性の有機塗料を塗布し、その後、無機粒子が配合された有機塗料を塗布することを特徴とする軟質部材の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−229933(P2007−229933A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50539(P2006−50539)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】