説明

軟X線放射を用いる感応性エレクトロニクスの非破壊汚染除去のためのシステム及び方法

電子装置のエンクロージャ内にある生物学的病原体を除去する方法を提供する。その方法は、電気装置のエンクロージャを覆うように用いられる材料を特定する段階と、エンクロージャを覆う材料を透過するようにX線放射を調整する段階と、電子装置の方に拡散放射角度を有するX線放射を方向付ける段階と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、生物学的に有害な汚染の除去に関し、更に、高感度の電子装置の非破壊汚染除去のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軍人が汚染された環境下で任務を行うとき、任務を支援するために用いられる電子装置のための汚染除去システムについての極めて大きい要請が存在している。高感度の電子装置の材料の完全性を維持する能力は、何れの汚染除去システムにおいても重要な条件である。これは、そのような電子装置に関連する高コストの観点から特に真実である。更に、汚染除去システムは可搬型であり、任務に対して最小の影響のみを有するものでなければならない。
【0003】
放射線滅菌法は、一般に、塩素等の反応性酸化剤又は高温高圧蒸気殺菌法を用いることに比べてあまり害を与えない。例えば、石英被覆付き水銀ランプ発光の254nmの紫外光は有効な表面滅菌法であるが、残念ながら、その光は、一枚の紙さえ透過することができない。それとは対照的に、米国の郵便業務で用いられている10MeVの電子ビームによる汚染除去は、ターゲットに対してかなりの損傷をもたらし、高価な且つ扱い難い固定された基礎設備(施設、電力及び遮蔽)を必要とする。
【0004】
軟X線は、有効で、非破壊的な、低温の、無薬剤滅菌法を提供する。しかしながら、電子装置の汚染除去のためにこの方法を合わせ込む必要がある。ここでの説明は、本発明に関連する背景の情報を単に提供するのみであり、従来技術を構成するものではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、電子装置のエンクロージャ内に存在する生物学的病原体を除去するために提供される。本発明は、電子装置のエンクロージャを覆うために用いられる材料を特定する段階と、エンクロージャを覆う材料を透過させるX線放射を調整する段階と、電子装置の方に拡散放射角度を有するX線放射を方向付ける段階とを有する。
【0006】
更なる適用可能な領域については、以下の詳細説明から明らかになる。詳細説明及び特定の実施例は単ある例示目的であるように意図され、本発明の範囲を限定するように意図されていない。
【0007】
ここで示す図は、単に例示目的であり、決して本発明の範囲を限定するように意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】電子装置についての例示としての汚染除去技術を示すフロー図である。
【図2】異なる光子エネルギーを有するX線放射がどのようにポリプロピレン・プラスチックに侵入するかを示すグラフである。
【図3】例示としての生物学的病原体についての死滅時間を示すグラフである。
【図4】プラスチック環境下で組み込まれた胞子とX線放射の相互作用の強度を示すグラフである。
【図5】従来のX線源を示す図である。
【図6】放射を拡散するように改善されたX線源を示す図である。
【図7】例示としての汚染除去システムを示す図である。
【図8】複数種類のX線ヘッドが備えられた汚染除去システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、電子装置についての迅速な且つ非破壊的な汚染除去技術を示している。汚染環境に曝されるとき、生物学的病原体が曝されている電子装置の外側表面から入り込む可能性がある。この場合、X線放射が、その装置の内側の区画においてみられる生物学的病原体に対して用いられることが可能である。X線放射は、電子装置内に備えられることが可能である他の種類の汚染除去装置を殺菌するように用いられることが可能である。
【0010】
先ず、外側表面と最も深い汚染サイトとの間の汚染された装置の構成要素を有する材料、それらの厚さ及び密度が参照番号12に示しているように決定される。X線放射は、その場合、装置の外側表面の材料に侵入するように参照番号14において調整されることが可能である。異なる光子エネルギーのX線放射は異なる深さまで異なる材料において侵入する。装置を構成するのに用いられる材料IのX線透過率は次式で与えられ、
【数1】

ここで、σは吸収材料の原子断面積であり、nは個数密度であり、LはX線が吸収材料を透過する経路長である。異なる材料の複数の層の組み合わせについては、全透過率は次式で表される。
【数2】

各々の材料の原子断面積は光子エネルギーの関数である。K殻結合エネルギー以上では、原子断面積は、光子エネルギーの逆二乗として変化する。この強い関係は、エネルギーに対する透過率Tの広い範囲で得られる。X線放射についてのエネルギーレベルは、好適に選択され、その場合、T=e−1である。
【0011】
理想的なX線光子エネルギーは、汚染を有する材料をちょうど透過するが、それ以上は透過しないものである。高エネルギー放射を用いると、入射エネルギーの大部分は、重大なエネルギー付与を伴うことなく、ターゲットを透過する、他方、軟X線は材料の短い深さまでに吸収され、それ故、埋め込まれた汚染の位置までは侵入しない。それ故、電子装置の外側表面を透過するために必要な最も低い光子エネルギーを選択することは好ましいことである。異なる種類の電子装置については、装置の平均吸収深さに最も適合するエネルギーの比較的狭い範囲が存在する。
【0012】
図2は、典型的なプラスチック(即ち、2.5mmのポリプロピレン・プラスチック)についてのX線光子透過曲線を示している。5keVにおいては、放射の数%のみがプラスチックを透過し、その場合、プラスチックの他の側のバクテリアは生存する可能性がある。12keVにおいては、殆どの放射が、バクテリアと相互作用することなく、プラスチックを透過する。しかしながら、8KeVにおいては、放射は、何れの組み込まれたバクテリアも死滅させるようにプラスチックを効率的に透過する。それ故、8keVの光子エネルギーを有するX線放射は、プラスチックの外側表面を有する電子装置にとって好ましい。比較のために、22keVを有する放射は1mmのアルミニウムを透過すると判定された。それらのエネルギーレベルは、シリコンが吸収し、それ故、装置を構成する半導体の構成要素に影響しない1.8keVを上回ることに注目される。しかしながら、そのエネルギーレベルは、チップ実装が一部の遮蔽を十分に与えるには低い。
【0013】
殆どの電子装置は変化している構成要素を有するため、幾つかの鮮鋭のピークを有するソーススペクトルを用いることは有利である。例えば、ソースはスペクトルに2つのピークを有することが可能であり、1つのピークはプラスチックを透過し、第2のピークはアルミニウムを透過する。これは、銅−銀又は銅−カドミウム等の合金から成るアノード、又は銅アノード上のより高いZ金属のパターニングされたメッキにより達成されることが可能である。ある範囲に対する線放射を常に伴いつつ、制動放射のような広いスペクトル照射は、実質的に低いエネルギー部分はターゲットを透過しない一方、高エネルギーテールは透過して失われる。コンプトン散乱は、それらの低エネルギーにおいては殆ど無視できる。8keVのシリコンにおいては、光電子断面積は、コンプトン散乱の大きさより略3桁大きい。22keVのカーボンにおいては、2原子断面積が匹敵し、病原体の死滅機構に関しては下で説明される。
【0014】
装置内に存在する生物学的病原体が既知であるとき、X線放射は、有害要素を滅菌又は死滅させるように更に調整されることが可能である。例えば、装置に適用される放射線量(即ち、放射の持続時間)がまた、決定される。この概念の実用性については、実用可能性実験により実証された。炭疽菌についての無害な代用である枯草菌の10個の胞子のサンプルが、先ず、試験環境下に置かれ、主に約8keVの光子エネルギーを有する銅アノードソースからのX線放射線量に暴露される。複数の照射及び制御サンプルは、その場合、一週間、35℃のsoy broth中で個別に培養される。1つ又はそれ以上の生存胞子を有するサンプルは濁った注入液をもたらす一方、完全に滅菌されたサンプルは澄んだままの状態にある。1.5J/cm以上の投与量において、全てのサンプルは完全に滅菌された。不完全に澄んだままの状態であるサンプルに対して供給される最も高い線量は0.117J/cmであった。従って、10個の胞子についての8keVの死滅線量はそれらの値の間のどこかにある。図3は、上限の死滅線量及び下限の死滅線量についての入力電力の関数としての10個の胞子の完全な死滅のために必要な照射時間を示している。胞子を死滅させることは最もやりがいのある滅菌の課題であると考えられている。細菌胞子を死滅させるのに十分な放射線量は、みずみずしい活性の細菌及び他の生物学的病原体を死滅させるために必要な放射線量よりかなり大きい。従って、活性な細菌及び他の生物学的病原体についての放射線量は、類似する方法で経験的に導き出されることが可能である。
【0015】
汚染された環境の数センチメートルを透過するのにエネルギー的に十分である何れかの放射は、個々の胞子との小さい非弾性断面積を必ず有する。その場合、光子エネルギーが低ければ低い程、胞子との相互作用が生じる可能性は高くなる。実際には、胞子の周囲の透過についてのX線の要求及び胞子による吸収についてのX線の要求の組み合わせは、図4に示すバンドパス曲線をもたらす。その曲線のピークは、汚染環境X線透過機能により決定される低エネルギーカットオフ近傍にあることに留意されたい。
【0016】
更に、軟X線吸収イベントにより生成される電子は、胞子への最大エネルギー移動をもたらすように、理想的に適合される。細菌胞子(正確には、“内生胞子”という)は、異なる環境条件下に置かれるときに、特定の細菌が増殖する潜在的状態である。それは、かなりの水の損失(20%以下)、ミネラル(特に、カルシウム)の濃度、複数の外側の皮膜形成及び有効に皺になる代謝により特徴付けられる。軟X線が内生胞子に吸収されるとき、速く移動する一次光電子及びゆっくり反跳するイオンが生成される。その光電子は、二次イオン化をもたらし、それらの経路に沿って進む二次電子を生成する内生胞子の本体を横断する。その結果、複数の電荷移動の弾道がもたらされる。この損傷テールは、皮膜又はDNAのような重要な分子等の特定の構造を著しく崩壊させる場合に、内生胞子にとって致死的である。反応性薬種がまた、生成されるイオン及びフリーラジカル全てのために、イオン化軌道に沿って生じることが可能である。
【0017】
8keVの一次光電子については、プロトンの平均自由行程は略1μmである、又は内生胞子の大きさに殆ど適切に適合される。より高いエネルギーにおいては、一次光電子は、その一次光電子の十分なエネルギーが付与されるかなり前に、内生胞子から出てしまう。例えば、20keVにおいては、平均自由行程は約9μmである。コンプトン散乱により生成される電子は、コンプトン散乱がより高いエネルギープロセスであるために、同様の問題を有する。
【0018】
汚染除去のアプリケーションについてのX線源の設計は、画像化のために用いられる従来のX線管とは品質的に異なる。重要なことに、X線出射領域は、照射されるボリュームにおける鮮鋭なシャドーが回避されるように大きい必要がある。鮮鋭である場合、高コントラストのシャドーが生じ、微細な病原体は、照射を免れ、好ましい滅菌を回避する可能性がある。X線は電子の衝突を受けるアノード材料の最外数μmから出射されるため、その電子ビームは、最大有効ソースサイズを得るようにアノードの全表面に亘って衝突するように均一に広げられる必要がある。このために、電子を案内する電界は、最大有効な広がりを得るように、カソードから広げられ、アノードを均一に横断するようにうまく生成される必要がある。このようなX線源における電界分布を操作する技術を、本明細書においいては“電界彫刻”と称することにする。
【0019】
画像化アプリケーションのために用いられている従来のX線源は、図5に示すように、点源エミッタとして設計されている。手短には、X線源30は、電気伝導性であって、設置された真空エンクロージャ33内に収容されたカソード31及びアノード32を有する。カソード31は、負荷抵抗35を介して電源36に電気的に結合されている。作動中、カソードは、電源36により電力供給されるとき、電子を出射する。出射された電子(破線37で示されている経路)は、電界に従い、電子がアノードの表面に衝突するとき、順次にX線放射38(破線で示されている)を出射するアノードの方に加速される。カソードは、負荷抵抗と出射された電子電流との積に等しい電圧(自己バイアス電圧)を得る。カソードの得られた負電圧、エンクロージャの接地及びアノードの正の高電圧の組み合わせは3要素電子レンズを構成し、そのレンズは、狭い点に電子電流密度をフォーカシングする。X線放射の全てがこの点で生成される。画像化アプリケーションにおいては好ましいことに、この点源の構成は、吸収器の背後の位置に対する強度のプロットで示されるように、吸収材料39(アプリケーションにおいて、例えば、半導体装置、リード線又はワイヤ等の汚染環境下にあるオブジェクト)の鮮鋭なシャドーがもたらされる。これは、生物学的有害性を分かり難くし、汚染除去効率を著しく低減させる可能性がある。
【0020】
拡散式X線ランプを製造するためには、X線を出射するアノード表面の大きい領域が必要である。このことは、電子電流が広く広げられることを必要とし、フォーカシング効果を回避する。改善されたX線源について、図6に示している。3つの主な改善が、この電子の広がりを達成するように、従来の設計に対して施されている。第1に、カソード41は、何れの自己バイアス電圧を回避するように接地に電気的に結合され、負荷抵抗は取り外されている。第2に、アノードの表面形状は、凹形に曲面化されている。第3に、電界彫刻電極43と称される補助電極が、カソードに近接して電子電流を供給するように位置付けられ、可変電圧44によりによりバイアスされている。それらの変更の何れか1つは一部の結果をもたらすが、それら3つ変更の組み合わせは、電界線が広がるようにし、電子電流45がアノード表面に亘って均一に衝突するようにする。また、これは、X線軌道47により示されているように、拡散される吸収器46の照明をもたらす。用語“拡散される放射角度”とは、汚染環境下で吸収材料により捉えられる大きい放射表面積の特徴を有するソースに対して称せられる。局所的に照射されない領域を有することを回避するように最も低いシャドーコントラストをもたらす。吸収器の背後で結果として得られるX線強度パターンは0にはならず、そのことは、病原体が吸収器の背後に存在する場合でさえ、それらの病原体が尚も照射されることを意味する。拡散放射角度は、カメラの焦点比又はF数に類似する指標により数値化されることが可能である。例えば、拡散放射角度は、ソースから、X線スポットの大きさにより規定される、照射されるオブジェクトまでの距離として規定される“F数”により測定されることが可能である。殆どの従来のX線源については、ソースサイズは約100μm又はそれ以下であり、それ故、“F数”は約10000である。本明細書で実施される拡散放射角度は、4つ以下の最終設計ゴールを伴う10以下の“F数”を与える。
【0021】
更に、このX線源は、アノードに対してできるだけ近接するように出力ウィンドウを位置付けることによりかなり広い角度に亘って照射するように構成されることが可能である。X線は、電子電流により衝突されるアノード表面の最初の数μmにおいて生成される。活性なアノード表面の方への明確な視野方向の照射領域における何れの位置においても、X線を受け入れる。出力ウィンドウの設計及び位置は、照射される立体角の略全2Ssteradianで透過するように構成されることが可能である。
【0022】
更に、その放射は、生物学的有害性をカバーする、取り囲む又は遮蔽する材料を十分に透過する必要がある。そのX線放射は、生物学的有害性と相互作用することに失敗した汚染材料を透過する必要はない。高エネルギーX線光子は密な材料を透過するが、結果として得られる光子の散乱断面積は小さい。従って、より大きいX線光子線束が必要であり、それは、十分な死滅のための線量を得るより長い暴露時間に繋がる。これは、汚染除去される必要がある材料と整合性があるX線光子エネルギーを選択することが有利であることが理由である。
【0023】
X線源により生成される光子エネルギーは、アノード材料の賢明な選択により洗練されることが可能である。これは、次式のように、kアルファX線エネルギーがある元素の原子数の平方に依存することを示し、
α(Z−1)
ここで、EはX線光子エネルギーであり、Zはアノード材料の原子番号である。例えば、モリブデン(Z=42)のアノードを有するX線源は、18keVの光子エネルギーを有する放射を生成する。それとは対照的に、銀(Z=47)のアノードは、22keVの光子エネルギーを有する放射を生成することが可能である。X線源は、電子装置の内側の汚染除去放射を与える種々の材料組成により透過を確実にするように異なるアノード材料により製造されることが想定される。X線源が、タングステン−トリウム合金、タンタル及び他のような熱イオンエミッタを有する種々の種類のカソード、並びに金属ワイヤ又はカーボンナノチューブのような新材料であることが可能である冷カソードを用いることが可能である。
【0024】
図7は、この技術を実施するように用いられることが可能である、例示としての可搬型のカート状汚染除去システムを示している。汚染除去システムは、放射チャンバと、その放射チャンバを放射するように備えられた1つ又はそれ以上のX線ヘッドとを有する。それらのX線ヘッドの各々は、上記のように拡散放射角度を有するX線放射を生成する。X線ヘッドは、超高強度の誘電性絶縁体を用いることによりコンパクトになり、その重量は減少される。真空密封性は永続するように作られる。ベリリウム製ウィンドウは安全に閉じられ、放射の遮蔽を伴わずに作動を回避するようにインターロックがインストールされる。
【0025】
図8を参照するに、汚染除去システムは、好適には、複数のX線ヘッドを備えている。一実施形態においては、異なる複数のX線ヘッドが、チャンバ内で異なる角度で方向付けられる。このように、異なるX線ヘッドは、汚染除去されるオブジェクトに依存してX線放射を生成するように選択されることが可能である。例えば、それらのX線ヘッドの各々は、プラスチック材料を透過するために適切である銅アノードを用いることが可能であるが、オブジェクトの外側表面の1つのみがプラスチックから成ることが可能である。この実施例においては、外側のプラスチック表面の方に方向付けられたX線ヘッドが、オブジェクトを透過するように用いられる。
【0026】
他の例示としての実施形態においては、異なるX線ヘッドが、異なる光子エネルギーレベルでX線放射を生成することが可能である。例えば、1つのX線ヘッドは銅アノードを用いる一方、他のX線ヘッドは、銀アノードを用いることが可能である。従って、異なる複数のX線ヘッドが、汚染されるオブジェクトの材料に依存して用いられることが可能である。同様に、異なる複数のX線ヘッドが、同じオブジェクトの異なるエンクロージャを透過するように用いられることが可能であり、ここで、異なるエンクロージャは、異なる材料の中に入れられることが可能である。
【0027】
X線放射はまた、電子装置の外側表面の汚染除去のために用いられることが可能である。そのために、可搬型汚染除去装置が、低エネルギーのX線放射(例えば、8keV)を生成するX線ヘッドの一集合と、高エネルギーのX線放射(例えば、15乃至30keV)を生成するX線ヘッドの他の集合とを備えることが可能である。より低エネルギーのX線は、より大きい散乱断面積を有し、従って、何れかのオブジェクトの外側表面の生物学的病原体と強く相互作用する。他方、より高エネルギーのX線が、オブジェクトの外側表面を透過するために必要である。X線を透過させて、蛍光を発生させることによりオブジェクトのエンクロージャ内の生物学的病原体と相互作用することが可能である。変換効率は低いが、それらの光子は、900倍大きい散乱断面積を有し、それにより、キャビティ内の有効な汚染除去を行うことができる。
【0028】
代替の構成においては、汚染除去システムは、表面の汚染除去を達成するように紫外線源が備えられることが可能である。従来の紫外線ランプは、市場で容易に入手可能である。紫外線放射は、生物学的病原体を除去して滅菌するために有効であることが照明された。例えば、254nmにおいてUV照射のための死滅線量が測定された。枯草菌については、45mJ/cm2で供給される線量は、表面における病原体の99.9%の死滅率を達成した。全ての光子が吸収されるため、線量は小さい。しかしながら、紫外線放射は材料を透過しない。それ故、X線ヘッドがまた、内部汚染除去について上記した方法で用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子装置のエンクロージャ内にある生物学的病原体を除去する方法であって:
前記電気装置の前記エンクロージャを覆うように用いられる材料を特定する段階;
前記エンクロージャを覆う前記材料を透過するようにX線放射を調整する段階;及び
前記電子装置の方に拡散放射角度を有するX線放射を方向付ける段階;
を有する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、X線放射を調整する前記段階は、前記電子装置の前記エンクロージャを覆う前記材料を透過するために必要な前記X線放射についての光子エネルギーレベルを決定する段階を更に有する、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記エンクロージャを覆う前記材料がプラスチックであるとき、約8keVの光子エネルギーを有するX線放射を生成する段階を更に有する、方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、前記エンクロージャを覆う前記材料がアルミニウムであるとき、約22keVの光子エネルギーを有するX線放射を生成する段階を更に有する、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、X線放射を調整する前記段階は、前記電子装置の前記エンクロージャを覆う前記材料を透過するために必要な最低エネルギーレベルを選択する段階を更に有する、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、X線放射を調整する前記段階は、前記電子装置内にあるとして疑わしい生物学的病原体を死滅させるために必要なX線放射線量を決定する段階を更に有する、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、カソードからアノードの凹状表面の方に電子を加速することにより拡散放射角度を有するX線放射を生成する段階を更に有する、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、自己バイアス電圧を最小化するようにカソードを電気的に接地することにより拡散放射角度を有するX線放射を生成する段階を更に有する、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記X線放射を整形するためのカソードに近接して二次電子を備えることにより拡散放射角度を有するX線放射を生成する段階を更に有する、方法。
【請求項10】
汚染除去されるオブジェクトを収容するように適合されたチャンバ;及び
X線放射を前記チャンバに放射するように備えられ、拡散放射角度を有するX線放射を出射するように動作するX線放射源;
を有する汚染除去システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−516409(P2010−516409A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547414(P2009−547414)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/051893
【国際公開番号】WO2008/134099
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(594071675)ハリス コーポレイション (287)
【氏名又は名称原語表記】Harris Corporation
【Fターム(参考)】