転がり案内装置
【課題】 方向転換路内における転動体の蛇行を可及的に防止しつつも、無限循環路の周方向に沿った転動体列の長さ変化を吸収可能であり、もって転動体の循環を円滑化し、案内軸に対する移動部材の運動の円滑化を達成可能な転がり案内装置を提供する。
【解決手段】 転動体の転走面を備えた案内軸と、前記転走面を転走する多数の転動体を介して前記案内軸に組み付けられると共に前記転動体の無限循環路を有し、前記案内軸に沿って移動自在な移動部材とを備えた転がり案内装置であって、前記無限循環路は、前記案内軸と移動部材との間で転動体が荷重を負荷しながら転動する負荷通路と、前記負荷通路と平行に設けられた転動体戻し通路と、前記負荷通路と転動体戻し通路の端部同士を連結する一対の方向転換路とを備え、前記移動部材は、前記方向転換路内を無負荷状態で転走する転動体を当該方向転換路の内周側又は外周側へ向けて付勢する隙間排除手段を有している。
【解決手段】 転動体の転走面を備えた案内軸と、前記転走面を転走する多数の転動体を介して前記案内軸に組み付けられると共に前記転動体の無限循環路を有し、前記案内軸に沿って移動自在な移動部材とを備えた転がり案内装置であって、前記無限循環路は、前記案内軸と移動部材との間で転動体が荷重を負荷しながら転動する負荷通路と、前記負荷通路と平行に設けられた転動体戻し通路と、前記負荷通路と転動体戻し通路の端部同士を連結する一対の方向転換路とを備え、前記移動部材は、前記方向転換路内を無負荷状態で転走する転動体を当該方向転換路の内周側又は外周側へ向けて付勢する隙間排除手段を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールやローラといった多数の転動体を介して移動部材と案内軸とが移動自在に組付けられた転がり案内装置に係り、特に、前記移動部材が転動体の無限循環路を備えた転がり案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の転がり案内装置としては、例えば特開2008−275069に開示される直線案内装置が知られている。この直線案内装置は、機械装置の固定部に敷設される案内軸としての軌道レールと、転動体としての多数のボールを介して前記軌道レールに組み付けられる移動部材としての移動ブロックとから構成されている。前記軌道レールはその長手方向に沿ってボールの転走面を有する一方、前記移動ブロックはボールの無限循環路を有しており、軌道レールを転走したボールが移動ブロックの無限循環路内を循環することにより、前記移動ブロックが軌道レールに沿って移動できるように構成されている。また、無限循環路内で前後するボール同士の相互摩擦を低減するため、ボールの球面と摺接する凹面座を備えた樹脂性のスペーサが無限循環路内にボールと交互に配列された構成も知られている。
【0003】
前記移動ブロックに備えられたボールの無限循環路は、前記ボールが軌道レールと移動ブロックとの間で荷重を負荷しながら転走する負荷通路と、この負荷通路と平行に設けられた転動体戻し通路と、前記負荷通路と転動体戻し通路の端部同士を連結する一対の方向転換路とから構成されており、各方向転換路はボールの転走方向を180°変更するために略半円状に形成されている。また、前記転動体戻し通路及び方向転換路はボールが荷重から解放された状態で転走する無負荷通路として構成されており、これら通路の内径はボール直径よりも大きく形成されている。
【0004】
このため、軌道レールに沿って移動ブロックが移動すると、前記負荷通路内のボールは当該負荷通路内を自転しながら移動するが、かかるボールが負荷通路から方向転換路に排出されると、自ら自転して移動することはなく、負荷通路から続けて排出される後続のボールに押されながら方向転換路内を進行することになる。そして、後続のボールに押されながら転動体戻し通路及び方向転換路を進行したボールは再び負荷通路に進入し、かかる負荷通路内で自ら自転した後、今度は先行するボールを押すようにして方向転換路に排出され、これによって無限循環路内におけるボールの循環が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−275069
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前述したように方向転換路及び転動体戻し通路はボール直径よりも大きな内径に形成されていることから、後続のボールからの押圧力によってボールの無限循環が行われると、ボールが方向転換路及び転動体戻し通路の内部で蛇行し易く、方向転換路の内部ではボール同士が干渉し合ってその動きが悪化し易いといった課題があった。特に、軌道レールを鉛直方向に沿って配設している場合には、転動体戻し通路内のボールが自重によって下側に位置する方向転換路に降下してくるため、当該方向転換路においてボールの動きが悪化し易かった。
【0007】
前記方向転換路の内部におけるボールの蛇行を防止するためには、かかる方向転換路の断面形状をボールの断面形状に近づけ、ボールとその周囲の通路との隙間を極小にすることが重要である。しかし、方向転換路はその複雑な形状故に樹脂材料の射出成形によって製作される場合が殆どであり、方向転換路の形状及び寸法の精度を高めるには限界があった。
【0008】
一方、転がり案内装置の荷重負荷能力を考慮した場合、前記移動ブロックの無限循環路にはボールの循環方向に沿って当該ボールを隙間なく配列するのが好ましいと言える。しかし、方向転換路内におけるボールの位相変化に伴って、無限循環路の周方向に沿ったボール列の長さは微小変化を周期的に繰り返すので、仮に無限循環路内に隙間なくボールを配列し、且つ、方向転換路内におけるボール周囲の隙間を極小にすると、無限循環路がボール列の長さ変化を吸収することができず、ボールの循環が困難となってしまう。
【0009】
従って、移動ブロックの無限循環路内にボールを隙間なく配列するのであれば、ボール列の長さ変化に対応する必要上、ボールとその周囲の通路との隙間を極小にすることはできず、この点においても方向転換路及び転動体戻し通路の内部におけるボールの蛇行を防止することができなかった。
【0010】
このような課題は、転動体としてボールを使用した場合に限らず、ローラを使用した場合でも同様に発生する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、方向転換路内における転動体の蛇行を可及的に防止しつつも、転動体の循環に伴う無限循環路の周方向に沿った転動体列の長さ変化を吸収することが可能であり、もって無限循環路内における転動体の循環を円滑化して、案内軸に対する移動部材の運動の円滑化を達成することが可能な転がり案内装置を提供することにある。
【0012】
すなわち、本発明は、転動体の転走面を備えた案内軸と、前記転走面を転走する多数の転動体を介して前記案内軸に組み付けられると共に前記転動体の無限循環路を有し、前記案内軸に沿って移動自在な移動部材とを備えた転がり案内装置であって、前記無限循環路は、前記案内軸と移動部材との間で転動体が荷重を負荷しながら転動する負荷通路と、前記負荷通路と平行に設けられた転動体戻し通路と、前記負荷通路と転動体戻し通路の端部同士を連結する一対の方向転換路とを備え、前記移動部材は、前記方向転換路内を無負荷状態で転走する転動体を当該方向転換路の内周側又は外周側へ向けて付勢する隙間排除手段を有している。
【発明の効果】
【0013】
このように構成された本発明の転がり案内装置によれば、前記移動部材には前記方向転換路内を転走する転動体を当該方向転換路の内周側又は外周側に付勢する隙間排除手段が設けられているので、転動体は方向転換路の内部をその内周側又は外周側に寄せられた状態で転走することになり、方向転換路の内周壁と転動体との隙間を極小にする加工が困難な場合であっても、かかる方向転換路の内部で転動体が蛇行するのを可及的に防止することが可能となる。
【0014】
また、前記隙間排除手段は前記方向転換路内を転走する転動体を当該方向転換路の内周側又は外周側に付勢しているに過ぎないので、転動体の循環に伴って無限循環路の周方向に沿った転動体列の長さが繰り返し変化しても、これを吸収して変位することが可能である。
【0015】
このため、方向転換路内におけるボールの整列状態が最適化され、無限循環路内におけるボールの循環を円滑化することができ、軌道軸に対する移動部材の運動の円滑化を達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用可能な転がり案内装置の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示した転がり案内装置のII−II線断面図である。
【図3】図1に示した転がり案内装置のエンドプレート及びリターンピースを示す斜視図である。
【図4】図1に示した転がり案内装置におけるボールの無限循環路の詳細を示す要部拡大断面図である。
【図5】方向転換路内におけるボールの位相を説明する図である。
【図6】図5に示す状態からボールの位相が変化した状態を示す図である。
【図7】本発明の隙間排除手段によるボールの整列状態を示す図である。
【図8】本発明の第一実施形態を示す方向転換路の断面図である。
【図9】本発明の第二実施形態を示す方向転換路の断面図である。
【図10】本発明の第三実施形態を示す無限循環路の要部拡大断面図である。
【図11】本発明の第四実施形態を示す無限循環路の要部拡大断面図である。
【図12】本発明の第五実施形態を示すブロック本体とエンドプレートとの分解断面図である。
【図13】第五実施形態におけるブロック本体とエンドプレートとの組立て状態を示す断面図である。
【図14】本発明の第六実施形態を示す無限循環路の要部拡大断面図である。
【図15】第六実施形態に係る誘導部材の詳細を示す斜視図である。
【図16】第六実施形態に係る誘導部材が方向転換路内においてボールを付勢している状態を示す断面図である。
【図17】第六実施形態に係る誘導部材がボールによって押し拡げられた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の転がり案内装置を詳細に説明する。
【0018】
図1及び図2は、本発明を適用可能な転がり案内装置の一例を示すものである。この転がり案内装置は、直線状に形成された長尺な軌道レール1と、転動体としての多数のボール3を介して前記軌道レール1に組み付けられると共にこれらボール3の無限循環路を有する移動ブロック2とから構成されており、ボール3が前記無限循環路内を循環することにより、前記移動ブロック2が軌道レール1に跨るようにして該軌道レール1上を自在に往復運動するように構成されている。ここで、前記軌道レールは本発明の案内軸に、前記移動ブロックは本発明の移動部材に相当する。
【0019】
前記軌道レール1は断面略矩形状に形成されており、長手方向に沿った両側面には凹部10が形成されており、結果として各側面の肩部に突堤11が形成されている。各突堤11の上下にはボールの転走面12が形成されており、軌道レール全体では4条の転走面12が形成されている。各転走面12は軌道レール1の底面に対して45°の角度で傾斜しており、前記突堤11の上側に位置する転走面12は斜め上方へ45°の角度で面する一方、下側に位置する転走面12は斜め下方へ45°の角度で面している。また、かかる軌道レール1には長手方向に沿って所定の間隔で固定ボルトの取付け孔13が形成されており、当該軌道レール1を機械装置などに敷設する際に利用される。尚、前記軌道レール1に対する転走面12の配置、傾斜角度及びその条数は、前記移動ブロック2に必要される負荷能力に応じて適宜変更して差し支えない。また、この例では転動体としてボールを使用する例を説明するが、ローラを転動体とするものであっても差し支えない。
【0020】
一方、前記移動ブロック2は前記軌道レール1の一部を収容する案内溝を有して略溝型に形成されており、軌道レール1に対してこれに跨がるようにして配置されている。この移動ブロック2は、金属製のブロック本体4と、このブロック本体4を挟むようにして当該ブロック本体4の両端面に固定された一対の合成樹脂製エンドプレート5とから構成されている。前記エンドプレート5は取付けボルト50によってブロック本体4の端面に対して固定される。
【0021】
図2に示されるように、前記ブロック本体4は機械装置などの取付け面41が形成された主桁部4a、及びこの主桁部4aと直交する一対の脚部4bを備えて断面略溝型に形成されている。前記主桁部4aには前記取付け面41及び固定ボルトが螺合するタップ孔42が形成される一方、各脚部4bの内側にはボール3が転走する負荷転走面43がそれぞれ形成されている。前記軌道レール1の転走面12と前記ブロック本体4の負荷転走面43は互いに対向し、ボール3が移動ブロック2と軌道レール1との間で荷重を負荷しながら転走する負荷通路を構成する。すなわち、ブロック本体4には4条の負荷転走面43が形成されている。この実施形態において、各負荷転走面43の長手方向に直交する断面は、ボール3の球面よりも僅かに大きな曲率半径のサーキュラーアーク状をなしているが、その形状は適宜設計変更することができる。前記軌道レール1に形成された転走面12も同様なサーキュラーアーク状に形成されている。また、各脚部4bには各負荷通路に対応した4条の転動体戻し通路44が形成されている。これら転動体戻し通路44の断面形状は転動体としてのボールの断面形状よりも大きく形成されており、ボール3が荷重から開放された状態で負荷通路内とは逆方向へ転走するようになっている。
【0022】
尚、図2中において、符号45はブロック本体4の脚部4bと軌道レール1の側面との間を密封するシール部材である。また、符号46は前記ブロック本体4にねじ止めされた保持器プレートであり、前記移動ブロック2を軌道レール1から抜き取った際に、ボール3が負荷通路から転がり落ちるのを防止している。
【0023】
図3は前記エンドプレート5を示す斜視図であり、かかるエンドプレート5を前記ブロック本体4との当接面側から観察したものである。このエンドプレート5にはボール3の方向転換路を構成する複数のボール誘導溝51が形成されている。これらボール誘導溝51はブロック本体4の各負荷転走面43に対応して設けられており、軌道レール1を取り囲むようにしてエンドプレート5の4ヶ所に形成されている。各ボール誘導溝51は前記ブロック本体4の負荷通路及びボール戻し通路44と対向すべく長孔状の開口を有しており、内部には略U字状に湾曲した外周側案内面52を有している。この外周側案内面52は前記負荷通路とボール戻し通路44との間でボール3を案内し、ボール3の進行方向を180°転換する。この外周側案内面52の前記軌道レール1に面した端部は僅かに切り欠かれて掬い上げ部53が形成されており、軌道レール1の転走面12に接しながら負荷通路を転走してきたボール3はこの掬い上げ部53に乗り上げるようにして前記ボール誘導溝51内に収容される。
【0024】
一方、前記エンドプレート5の各ボール誘導溝51にはリターンピース6が嵌合している。このリターンピース6は半円柱状に形成されており、その外周面には前記ボール誘導溝51内の外周側案内面52と対向する内周側案内面61が凹曲面として設けられている。また、前記内周側案内面61の両側にはエンドプレートと嵌合する半円状の位置決め部62が形成されており、これら位置決め部62は、前記エンドプレート4の各ボール誘導溝51の中央に形成された一対の係止溝54に嵌合する。従って、リターンピース6の位置決め部62をボール誘導溝51の係止溝54に嵌合させると、かかるリターンピース6がボール誘導溝51の中央に位置決めされ、エンドプレート5に設けられた外周側案内面52とリターンピース6に設けられた内周側案内面61とが互いに対向して、ボール5の直径よりも大きな内径の前記方向転換路が完成する。
【0025】
そして、このようにリターンピース6を装着したエンドプレート5をブロック本体4に固定することにより、ブロック本体4の負荷通路と転動体戻し通路44とが略半円状に形成された方向転換路によって連結され、前記移動ブロック2にボール3の無限循環路が完成することになる。
【0026】
図4はボール3の無限循環路の様子を示した断面図である。ボール3は負荷通路47において軌道レール1の転走面12及びブロック本体4の負荷転走面43に接触し、軌道レール1とブロック本体4との間に作用する荷重を負荷しながら前記負荷通路47内を転走する。図4中において、ブロック本体4及びエンドプレート5から構成される移動ブロック2が軌道レール1に対して紙面左方向へ移動する場合、ボール3は前記負荷転走面43に対して右方向へ転走し、かかる負荷転走面43の終端から転がり出ると、荷重から解放されて無負荷状態に移行すると共に、エンドプレート5の掬い上げ部53によって軌道レール1の転走面12から分離され、方向転換路55に進入する。方向転換路55に進入したボール3は半円状に延びる当該方向転換路55に案内されてその進行方向を180°変更し、ブロック本体4の転動体戻し通路44に進入する。ボール3は前記転動体戻し通路44を無負荷状態で進行した後、図4には示されていない反対側のエンドプレート5の方向転換路に進入する。ボール3はこの方向転換路においてその進行方向を180°変更し、負荷通路47の入口に戻される。そして、再び軌道レール1の転走面12及びブロック本体4の負荷転走面43に接触し、軌道レール1とブロック本体4との間に作用する荷重を負荷しながら前記負荷通路47内を転走することになる。このようにしてボール3は負荷状態、無負荷状態を交互に繰り返しながら、無限循環路の内部を循環し、それによって移動ブロック2が軌道レール1に沿って運動することが可能となっている。
【0027】
ボール3は前記方向転換路55及び転動体戻し通路44の内部を無負荷状態で転走することから、かかる方向転換路55及び転動体戻し通路44の断面形状はボール3のそれよりも大きな形状が与えられており、ボール3と方向転換路55の内周壁との間には隙間が存在する。このため、図4に示すように、ボール3は方向転換路55の内部で外周側案内面52に接触したり、あるいは内周側案内面61に接触したりと、ふらつき易い。また、負荷通路47から方向転換路55に進入するボール3は後続のボール3に押されながら当該方向転換路55内を進行するので、この点においてもボール3が方向転換路55内で一定の軌跡を経ずに蛇行し易いと言える。そして、このような蛇行が生じた場合、方向転換路55内のボール同士が互いに干渉し合ってその動きに抵抗が作用し易く、無限循環路内におけるボール3の円滑な循環が阻害され、ひいては軌道レール1に対する移動ブロック2の滑らかな運動が阻害されるおそれがある。
【0028】
一方、方向転換路55や転動体戻し通路44の断面形状をボール3のそれに可及的に近づけることによって、当該ボール3の無負荷状態を確保しながらその蛇行を防止することは可能である。しかし、方向転換路55に位置する数個のボール3から構成されるボール列の長さは当該方向転換路55内におけるボール3の位相によって周期的に変化するので、仮にボール3が無限循環路の周方向に沿って隙間なく配列されているとすると、方向転換路55はボール列の循環に伴う周期的な長さ変化を吸収する必要がある。例えば、図5及び図6に示すように、6個のボール3a〜3fが方向転換路55を通過する場合を想定すると、図5のようにボール3dの中心が方向転換路55の入口から角度30°の位置に存在している時と、その時点からボール3がその半径分だけ進行し、図6のようにボール3dの中心が方向転換路55の入口から角度60°の位置に達した時とでは、無限循環路内に配列されたボール列の長さは後者の方が若干長くなっている。
【0029】
このため、図5に示す状態で無限循環路内の周方向に沿ってボール3を隙間なく配列したとすると、その状態からボール3が方向転換路55内で半個分だけ進行すると、ボール同士が押し合ってその整列状態が崩れ、方向転換路55内においてはボール3が内周側案内面61から離れて蛇行を生じることになる。従って、方向転換路55内においては、ボール3を外周側案内面52又は内周側案内面61に沿って整列させることも重要であるが、ボール3同士の干渉を緩和するために、方向転換路55の通路幅がボール3の挙動に対応して柔軟に変化することが必要である。尚、図6は方向転換路55内におけるボール3の位相変化を説明する便宜上、ボール3を内周側案内面61に沿って整列させているが、前述の説明のように、図5に示す場合よりもボール列の長さは長くなっているので、ボール3を内周側案内面61に沿って整列させることは困難である。
【0030】
そこで、本発明では移動部材としての前記移動ブロック2に対して、方向転換路55内のボール3を内周側案内面61又は外周側案内面52に向けて付勢する隙間排除手段を設け、ボール3が前記内周側案内面61又は外周側案内面52のいずれかと接触しながら方向転換路55内を進行するように構成した。図7は方向転換路55内のボール3を内周側案内面61に向けて付勢した状態を示す断面図であり、矢線で示すようにボール3にはリターンピース6に設けられた内周側案内面に向かう付勢力が作用し、ボール3は内周側案内面61との当接を維持しながら方向転換路55内を進行する。
【0031】
図8は前記隙間排除手段の第一の実施形態を示すものであり、ボール3の進行方向と直交する方向における前記方向転換路55の断面図を示している。方向転換路55の外周側案内面52には前記押圧手段としての2条の可撓性リブ80が形成されており、これらの可撓性リブ80はボール3の進行方向に沿って方向転換路55の全長にわたって設けられている。かかる可撓性リブ80は前記エントプレート5と一体に成形されたものであっても良いし、エンドプレート5の外周側案内面52に対して接着したものであっても良い。
【0032】
これら可撓性リブ80はその先端が弾性変形した状態でボール3に当接しており、ボール3は2条の可撓性リブ80に押圧されて方向転換路55の内径側に位置するリターンピース6に向けて付勢されている。すなわち、方向転換路55内を進行するボール3は、外周側案内面52と接触することなく、内周側案内面61上を転動するようにして方向転換路55内を進行する。これによって方向転換路55内におけるボール3の蛇行が防止され、無限循環路内におけるボール3の円滑な循環を達成することが可能となる。また、前記可撓性リブ80はボール3をリターンピース6に向けて付勢していることから、方向転換路55に位置するボール3は互いに接近する方向へ付勢されていることになるが、ボール同士が強く押し合うような状況下では、逆に、当該ボール3が可撓性リブ80を押し返すので、方向転換路55内においてボール同士が強く干渉し合うことはなく、この点においても無限循環路内でボール3を円滑に循環させることが可能である。
【0033】
この可撓性リブ80は方向転換路55の内部だけでなく、転動体戻し通路44にも設けることが可能である。具体的には、前記ブロック本体4に対して直接転動体戻し通路44を形成するのではなく、合成樹脂製のパイプ体を転動体戻し通路として前記ブロック本体4に具備させ、かかるパイプ体の内部にその長手方向に沿って可撓性リブを設けることができる。この転動体戻し通路44内の可撓性リブは、前記方向転換路55の可撓性リブ80と連続するように設けることができる。このように構成すれば、転動体戻し通路内におけるボールの蛇行も防止することができ、無限循環路内におけるボール3の循環を一層円滑なものとすることができる。
【0034】
また、図9は前記隙間排除手段の第二実施形態を示すものである。図8に示す第一実施形態ではボール3を付勢する可撓性リブ80を方向転換路55の外周側案内面52に設けたが、この第二実施形態では、前記隙間排除手段としての可撓性リブ81がリターンピース6の内周側案内面61に設けられている。かかる可撓性リブ81はリターンピース6の周方向に沿って内周側案内面61の全長にわたって設けられている。この場合、前記可撓性リブ81はその先端が弾性変形した状態でボール3に当接し、ボール3は2条の可撓性リブ81に押圧されてリターンピース6からエンドプレート5に向けて放射状に付勢されている。すなわち、方向転換路55内を進行するボール3は、リターンピース6の内周側案内面61と接触することなく、外周側案内面52上を転動するようにして方向転換路55内を進行する。これによっても方向転換路55内におけるボール3の蛇行が防止され、無限循環路内におけるボール3の円滑な循環を達成することが可能となる。尚、この第二実施形態では可撓性リブ81が方向転換路55内のボール3を外周側案内面に向けて付勢しているので、方向転換路55内に位置するボール3は互いに離間する方向へ付勢されており、方向転換路55内においてボール3同士が強く干渉し合うことはない。
【0035】
図10は前記隙間排除手段の第三実施形態を示すものである。この第三実施形態では、前記エンドプレート5が隙間排除手段としての弾性支持部材82を介してブロック本体4に接続されており、ボール3が存在しない状態で、方向転換路55の通路幅Wはボール3の直径よりも僅かに小さく設定されている。このため、ボール3が方向転換路55に存在する状態では、前記弾性支持部材82が変形することによって方向転換路55の通路幅Wがボール3の直径まで拡張され、エンドプレート5に対しては弾性支持部材82の復元力に起因する付勢力がブロック本体4に向けて作用することになる。前記弾性支持部材82としては、ゴムシートや発泡体等を利用することができる。
【0036】
この第三実施形態によれば、方向転換路55内に存在するボール3は、図10中に矢印で示すように、エンドプレート5の外周側案内面52によってリターンピース6の方向へ押圧されるので、ボール3は内周側案内面61に対して軽く押し付けられた状態となり、ボール3は内周側案内面61に接触した状態を保ちながら当該方向転換路55を進行することになる。これにより、方向転換路55内におけるボール3の蛇行が防止され、無限循環路内におけるボール3の円滑な循環を達成することが可能となる。また、前記エンドプレート5がボール3をリターンピース6に向けて付勢していることから、第一実施形態と同様に、方向転換路55に位置するボール同士が強く押し合うような状況下では、当該ボール3がエンドプレート5を押し返すので、方向転換路55内においてボール同士が強く干渉し合うことはなく、この点においても無限循環路内でボール3を円滑に循環させることが可能である。
【0037】
また、図11は前記隙間排除手段の第四実施形態を示すものである。図10に示す第三実施形態では前記弾性支持部材82によってエンドプレート5をブロック本体4に向けて引き付け、それによって方向転換路55の外周側案内面52でボール3を内周側案内面61に向けて付勢するように構成した。しかし、この第四の実施形態では、隙間排除手段としての弾性支持部材83がリターンピース6とブロック本体4との間に設けられ、リターンピース6をブロック本体4に固定されたエンドプレート5に向けて付勢している。ボール3が存在しない状態で、方向転換路55の通路幅Wがボール3の直径よりも僅かに小さく設定されている点は第三実施形態と同じであり、ボール3が方向転換路55に存在する状態では前記弾性支持部材83が変形することによって方向転換路55の通路幅Wがボール3の直径まで拡張されるようになっている。
【0038】
この第四実施形態では前述の第三実施形態とは逆に、図11中に矢印で示すように、方向転換路55内に存在するボール3がリターンピース6の内周側案内面61によってエンドプレート5の方向へ押圧されるので、ボール3は外周側案内面52に対して放射状に軽く押し付けられた状態となり、ボール3は外周側案内面52に接触した状態を保ちながら当該方向転換路55を進行することになる。これにより、方向転換路55内におけるボール3の蛇行が防止され、無限循環路内におけるボール3の円滑な循環を達成することが可能となる。
【0039】
図12及び図13は前記隙間排除手段の第五実施形態を示すものである。前述の第三実施形態ではブロック本体4とエンドプレート5とを接合する弾性支持部材82がエンドプレート5をブロック本体4に向けて引き付ける方向の付勢力を発揮するように構成したが、この第五実施形態では、エンドプレート5をブロック本体4に固定する取付けボルト50をスプリング84に挿通し、かかるスプリング84がエンドプレトート5をブロック本体4の端面に向けて付勢するように構成した。
【0040】
図12に示すように、前記取付けボルト50はスプリング84に挿通された後に、エンドプレート5に形成されたボルト取付け孔56にも挿通され、かかる取付けボルトの雄ねじかブロック本体4の端面に形成された雌ねじ孔48に対して締結している。前記スプリング84としてはコイルスプリングやスプリングワッシャを使用することができる。このとき、取付けボルト50は完全には締結せず、その頭部が前記スプリング84をエンドプレート5との間で圧縮し、且つ、前記スプリング84を完全に押しつぶさない程度に締結される。これにより、エンドプレート5は圧縮されたスプリング84の発揮する付勢力でブロック本体4の端面に対して押し付けられる。
【0041】
エンドプレート5がブロック本体4の端面と接触している状態は前記方向転換路55にボール3が存在しない状態であり、このとき方向転換路55の通路幅Wはボール3の直径よりも僅かに小さく設定されている。この点は前述の第三実施形態と同じである。このため、ボール3が方向転換路55に存在する状態では、図13に示すように、前記スプリング84が更に圧縮されることによってエンドプレート5がブロック本体4から僅かに浮き上がり、方向転換路55の通路幅Wがボール3の直径まで拡張され、エンドプレート5に対してはスプリング84の付勢力がブロック本体4に向けて作用することになる。
【0042】
このため、第三実施形態と同様に、方向転換路55内に存在するボール3はエンドプレート5の外周側案内面52によってリターンピース6の方向へ押圧されるので、ボール3は内周側案内面61に対して軽く押し付けられた状態となり、方向転換路55内におけるボール3の蛇行が防止される。
【0043】
換言すれば、前述の第三実施形態〜第五実施形態では、前記エンドプレート5又はリターンピース6のいずれか一方が前記外周側案内面52と内周側案内面61とを接近させる方向へ付勢されており、それによって方向転換路55の幅Wをボール3の直径と略同一の大きさにまで狭め、かかる方向転換路55内におけるボール3の蛇行を防止しようとするものである。
【0044】
図14は前記隙間排除手段の第六実施形態を示すものである。この第六実施形態では、前記方向転換路55内に線状部材から形成した2本の誘導部材85を並列に配設し、これら誘導部材85によって方向転換路55内を転走するボール3をリターンピース6の内周側案内面61に向けて付勢している。すなわち、前記誘導部材85が本発明の隙間排除手段に相当している。この第六実施形態では方向転路55内に設けた誘導部材85がボール3を直接リターンピース6に向けて押圧しており、かかる意味においてのこの実施形態は前述の第一実施形態に近似している。
【0045】
図15は前記誘導部材85を示す斜視図である。この誘導部材は断面円形状の金属製の線状部材から製作されており、その長手方向の両端には前記方向転換路55に収容される一対の湾曲部85aが設けられる一方、一対の湾曲部85aを繋ぐ直線領域は前記移動ブロック2の負荷通路47に対応した保持部85bとなっている。また、前記湾曲部85aと保持部85bとの境界にはボール3の転走方向に対して斜めに屈曲した掬い上げ部85cが設けられており、この掬い上げ部85cは方向転換路55の入口付近、すなわちボール3が負荷通路47を転走し終えて荷重から開放された位置に対応している。この誘導部材85は、2本を一組として各無限循環路に組み込まれ、前記湾曲部85aをエンドプレート5のボール誘導溝51に挿入すると共に、かかる湾曲部85aの先端をブロック本体4の端面に嵌合させることで、前記移動ブロック2に装着される。
【0046】
前記誘導部材85は2本一組で前記移動ブロック2の無限循環路に対して装着されるが、その際、前記保持部85b同士の幅Aはボール3の直径よりも小さく設定されている。図14に示すように、ボール3は保持部85bとブロック本体4の負荷転走面43との間に配列されており、2本の誘導部材85の間から軌道レール1の転走面12に接触している。このとき、ボール3は誘導部材85の保持部85bに接触しておらず、軌道レール1の転走面12及びブロック本体4の負荷転走面43に接触し、荷重を負荷しながら負荷通路47を転走している。そして、一対の保持部85bの間隔Aがボール直径よりも小さく設定されていることから、軌道レール1から移動ブロック2を抜き取っても、ボール3が負荷通路47から脱落しないようになっている。
【0047】
また、図15に示すように、前記湾曲部85a同士の幅Bは前述した保持部85aの幅Aに比べて狭く設定されており、2本の誘導部材85の間隔が前記掬い上げ部85cにおいて幅Aから幅Bに連続的に変化するように構成されている。このため、前記保持部85bに沿って移動ブロック2の負荷通路47を転走していたボール3は当該負荷通路47を転走し終えて方向転換路55に進入すると、徐々に幅が狭くなる掬い上げ部85cによって軌道レール1の転走面12から持ち上げられる。そして、ボールは幅Bに設定された誘導部85aに接触しながら方向転換路55内を転走する。
【0048】
つまり、この誘導部材85は一方の方向転換路55から負荷通路47を経て他方の方向転換路55へ至る経路で、ボール3を連続的に案内していることになる。また、方向転換路55内において、ボール3は前記誘導部材85の湾曲部85aに案内されて進行方向を変化させることから、この第六実施形態では前記エンドプレート5の外周側案内面52は特にボール3を案内する作用を発揮しておらず、かかるエンドプレート5は方向転換路55のカバーとしてのみ機能している。
【0049】
図16は、前記誘導部材85の湾曲部85aが方向転換路55内のボール3をリターンピース6の内周側案内面61に向けて付勢している状態を示す断面図である。この状態で、方向転換路55内に位置する一組の湾曲部85aは、ボール3に接触することでその間隔が当該湾曲部85aの初期間隔Bよりも大きなB1(>B)に押し拡げられており、これら一組の湾曲部85aがその間隔をBに復元しようとする弾性力によって、ボール3がリターンピース6の内周側案内面61に向けて付勢されている。すなわち、図16の状態では方向転換路55内のボール3に対してこれらを内周側案内面61に接触させる力が作用し、ボール3は内周側案内面61に接触した状態で整列していることになる。
【0050】
一方、方向転換路内に位置するボール同士が強く押し合うような状況下では、当該ボール3が湾曲部85aを外周側案内面に向けて押し返すことになるが、その際、図17に矢線で示すように、方向転換路55内に配置された一組の湾曲部85aはそれらの間隔が拡がり、それに伴ってボール3の外周側案内面52に向けた移動が許容されることになる。
【0051】
従って、この第六実施形態においても、方向転換路55内におけるボール3の蛇行が防止されると共に、方向転換路55内においてボール同士が強く干渉し合うことはなく、無限循環路内におけるボール3の円滑な循環を達成することが可能となる。
【0052】
以上説明してきたように、本発明の転がり案内装置によれば、方向転換路55内を進行するボール3は各実施形態で示した隙間排除手段によって当該方向転換路の内周側案内面又は外周側案内面に向けて付勢されているので、内周側案内面61又は外周側案内面に沿って転動するようにして方向転換路55内を進行し、方向転換路55内におけるボール3の蛇行が防止される。また、方向転換路内に位置するボール同士が強く押し合うような状況下では、逆に、当該ボール3が隙間排除手段の付勢力に抗して当該隙間排除手段を押し返すので、方向転換路55内においてボール同士が強く干渉し合うこともない。従って、無限循環路内におけるボール3の円滑な循環を達成することが可能となる。
【0053】
また、前記隙間排除手段が方向転換路55内を進行するボール3を当該方向転換路の内周側案内面に向けて付勢している場合、ボール3は互いに接近する方向へ付勢されているので、例えば互いに隣接するボールの間に摩擦軽減のためのスペーサを介装する際、ボールとスペーサとが確実に接触するようになり、ボールの間からスペーサが抜け落ちたり、スペーサが横倒しになったりというトラブルを未然に防止することが可能となる。
【0054】
また、方向転換路の外周側案内面52又は内周側案内面61に可撓性リブ80,81を設けた前述の第一実施形態又は第二実施形態の転がり案内装置は、従来のエンドプレート又はリターンピースを可撓性リブ付きのものに交換するだけで容易に実施することができ、また、可撓性リブを備えたエンドプレート又はリターンピースは合成樹脂の射出成形などで容易に製作することが可能であり、低コストでこれを実現することができる。
【0055】
更に、線状部材から形成された2本一組の誘導部材を負荷通路及び方向転換路に配置した前述の第六実施形態によれば、かかる誘導部材が負荷通路と方向転換路との間でボールを連続的に案内し、且つ、ボールを軌道レールの転走面から掬い上げる機能も発揮するので、負荷通路と方向転換路との接続部分におけるボールの転走に作用する抵抗を小さくすることができ、方向転換路におけるボールの蛇行防止機能と相まって無限循環路内におけるボールの循環を一層円滑化することが可能となる。
【0056】
尚、本発明を適用可能な転がり案内装置は前述の第一実施形態〜第六実施形態に限られるものではなく、転動体の無限循環路を有しているものであれば、例えばボールスプラインやボールブッシュ等に適用することが可能である。
【0057】
また、本発明は転動体としてボールを利用した転がり案内装置に限られるものではなく、転動体としてローラを利用した転がり案内装置にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…軌道レール、2…移動ブロック、3…ボール、4…ブロック本体、5…エンドプレート、6…リターンピース、44…転動体戻し通路、47…負荷通路、52…外周側案内面、55…方向転換路、61…内周側案内面、
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールやローラといった多数の転動体を介して移動部材と案内軸とが移動自在に組付けられた転がり案内装置に係り、特に、前記移動部材が転動体の無限循環路を備えた転がり案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の転がり案内装置としては、例えば特開2008−275069に開示される直線案内装置が知られている。この直線案内装置は、機械装置の固定部に敷設される案内軸としての軌道レールと、転動体としての多数のボールを介して前記軌道レールに組み付けられる移動部材としての移動ブロックとから構成されている。前記軌道レールはその長手方向に沿ってボールの転走面を有する一方、前記移動ブロックはボールの無限循環路を有しており、軌道レールを転走したボールが移動ブロックの無限循環路内を循環することにより、前記移動ブロックが軌道レールに沿って移動できるように構成されている。また、無限循環路内で前後するボール同士の相互摩擦を低減するため、ボールの球面と摺接する凹面座を備えた樹脂性のスペーサが無限循環路内にボールと交互に配列された構成も知られている。
【0003】
前記移動ブロックに備えられたボールの無限循環路は、前記ボールが軌道レールと移動ブロックとの間で荷重を負荷しながら転走する負荷通路と、この負荷通路と平行に設けられた転動体戻し通路と、前記負荷通路と転動体戻し通路の端部同士を連結する一対の方向転換路とから構成されており、各方向転換路はボールの転走方向を180°変更するために略半円状に形成されている。また、前記転動体戻し通路及び方向転換路はボールが荷重から解放された状態で転走する無負荷通路として構成されており、これら通路の内径はボール直径よりも大きく形成されている。
【0004】
このため、軌道レールに沿って移動ブロックが移動すると、前記負荷通路内のボールは当該負荷通路内を自転しながら移動するが、かかるボールが負荷通路から方向転換路に排出されると、自ら自転して移動することはなく、負荷通路から続けて排出される後続のボールに押されながら方向転換路内を進行することになる。そして、後続のボールに押されながら転動体戻し通路及び方向転換路を進行したボールは再び負荷通路に進入し、かかる負荷通路内で自ら自転した後、今度は先行するボールを押すようにして方向転換路に排出され、これによって無限循環路内におけるボールの循環が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−275069
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前述したように方向転換路及び転動体戻し通路はボール直径よりも大きな内径に形成されていることから、後続のボールからの押圧力によってボールの無限循環が行われると、ボールが方向転換路及び転動体戻し通路の内部で蛇行し易く、方向転換路の内部ではボール同士が干渉し合ってその動きが悪化し易いといった課題があった。特に、軌道レールを鉛直方向に沿って配設している場合には、転動体戻し通路内のボールが自重によって下側に位置する方向転換路に降下してくるため、当該方向転換路においてボールの動きが悪化し易かった。
【0007】
前記方向転換路の内部におけるボールの蛇行を防止するためには、かかる方向転換路の断面形状をボールの断面形状に近づけ、ボールとその周囲の通路との隙間を極小にすることが重要である。しかし、方向転換路はその複雑な形状故に樹脂材料の射出成形によって製作される場合が殆どであり、方向転換路の形状及び寸法の精度を高めるには限界があった。
【0008】
一方、転がり案内装置の荷重負荷能力を考慮した場合、前記移動ブロックの無限循環路にはボールの循環方向に沿って当該ボールを隙間なく配列するのが好ましいと言える。しかし、方向転換路内におけるボールの位相変化に伴って、無限循環路の周方向に沿ったボール列の長さは微小変化を周期的に繰り返すので、仮に無限循環路内に隙間なくボールを配列し、且つ、方向転換路内におけるボール周囲の隙間を極小にすると、無限循環路がボール列の長さ変化を吸収することができず、ボールの循環が困難となってしまう。
【0009】
従って、移動ブロックの無限循環路内にボールを隙間なく配列するのであれば、ボール列の長さ変化に対応する必要上、ボールとその周囲の通路との隙間を極小にすることはできず、この点においても方向転換路及び転動体戻し通路の内部におけるボールの蛇行を防止することができなかった。
【0010】
このような課題は、転動体としてボールを使用した場合に限らず、ローラを使用した場合でも同様に発生する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、方向転換路内における転動体の蛇行を可及的に防止しつつも、転動体の循環に伴う無限循環路の周方向に沿った転動体列の長さ変化を吸収することが可能であり、もって無限循環路内における転動体の循環を円滑化して、案内軸に対する移動部材の運動の円滑化を達成することが可能な転がり案内装置を提供することにある。
【0012】
すなわち、本発明は、転動体の転走面を備えた案内軸と、前記転走面を転走する多数の転動体を介して前記案内軸に組み付けられると共に前記転動体の無限循環路を有し、前記案内軸に沿って移動自在な移動部材とを備えた転がり案内装置であって、前記無限循環路は、前記案内軸と移動部材との間で転動体が荷重を負荷しながら転動する負荷通路と、前記負荷通路と平行に設けられた転動体戻し通路と、前記負荷通路と転動体戻し通路の端部同士を連結する一対の方向転換路とを備え、前記移動部材は、前記方向転換路内を無負荷状態で転走する転動体を当該方向転換路の内周側又は外周側へ向けて付勢する隙間排除手段を有している。
【発明の効果】
【0013】
このように構成された本発明の転がり案内装置によれば、前記移動部材には前記方向転換路内を転走する転動体を当該方向転換路の内周側又は外周側に付勢する隙間排除手段が設けられているので、転動体は方向転換路の内部をその内周側又は外周側に寄せられた状態で転走することになり、方向転換路の内周壁と転動体との隙間を極小にする加工が困難な場合であっても、かかる方向転換路の内部で転動体が蛇行するのを可及的に防止することが可能となる。
【0014】
また、前記隙間排除手段は前記方向転換路内を転走する転動体を当該方向転換路の内周側又は外周側に付勢しているに過ぎないので、転動体の循環に伴って無限循環路の周方向に沿った転動体列の長さが繰り返し変化しても、これを吸収して変位することが可能である。
【0015】
このため、方向転換路内におけるボールの整列状態が最適化され、無限循環路内におけるボールの循環を円滑化することができ、軌道軸に対する移動部材の運動の円滑化を達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用可能な転がり案内装置の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示した転がり案内装置のII−II線断面図である。
【図3】図1に示した転がり案内装置のエンドプレート及びリターンピースを示す斜視図である。
【図4】図1に示した転がり案内装置におけるボールの無限循環路の詳細を示す要部拡大断面図である。
【図5】方向転換路内におけるボールの位相を説明する図である。
【図6】図5に示す状態からボールの位相が変化した状態を示す図である。
【図7】本発明の隙間排除手段によるボールの整列状態を示す図である。
【図8】本発明の第一実施形態を示す方向転換路の断面図である。
【図9】本発明の第二実施形態を示す方向転換路の断面図である。
【図10】本発明の第三実施形態を示す無限循環路の要部拡大断面図である。
【図11】本発明の第四実施形態を示す無限循環路の要部拡大断面図である。
【図12】本発明の第五実施形態を示すブロック本体とエンドプレートとの分解断面図である。
【図13】第五実施形態におけるブロック本体とエンドプレートとの組立て状態を示す断面図である。
【図14】本発明の第六実施形態を示す無限循環路の要部拡大断面図である。
【図15】第六実施形態に係る誘導部材の詳細を示す斜視図である。
【図16】第六実施形態に係る誘導部材が方向転換路内においてボールを付勢している状態を示す断面図である。
【図17】第六実施形態に係る誘導部材がボールによって押し拡げられた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の転がり案内装置を詳細に説明する。
【0018】
図1及び図2は、本発明を適用可能な転がり案内装置の一例を示すものである。この転がり案内装置は、直線状に形成された長尺な軌道レール1と、転動体としての多数のボール3を介して前記軌道レール1に組み付けられると共にこれらボール3の無限循環路を有する移動ブロック2とから構成されており、ボール3が前記無限循環路内を循環することにより、前記移動ブロック2が軌道レール1に跨るようにして該軌道レール1上を自在に往復運動するように構成されている。ここで、前記軌道レールは本発明の案内軸に、前記移動ブロックは本発明の移動部材に相当する。
【0019】
前記軌道レール1は断面略矩形状に形成されており、長手方向に沿った両側面には凹部10が形成されており、結果として各側面の肩部に突堤11が形成されている。各突堤11の上下にはボールの転走面12が形成されており、軌道レール全体では4条の転走面12が形成されている。各転走面12は軌道レール1の底面に対して45°の角度で傾斜しており、前記突堤11の上側に位置する転走面12は斜め上方へ45°の角度で面する一方、下側に位置する転走面12は斜め下方へ45°の角度で面している。また、かかる軌道レール1には長手方向に沿って所定の間隔で固定ボルトの取付け孔13が形成されており、当該軌道レール1を機械装置などに敷設する際に利用される。尚、前記軌道レール1に対する転走面12の配置、傾斜角度及びその条数は、前記移動ブロック2に必要される負荷能力に応じて適宜変更して差し支えない。また、この例では転動体としてボールを使用する例を説明するが、ローラを転動体とするものであっても差し支えない。
【0020】
一方、前記移動ブロック2は前記軌道レール1の一部を収容する案内溝を有して略溝型に形成されており、軌道レール1に対してこれに跨がるようにして配置されている。この移動ブロック2は、金属製のブロック本体4と、このブロック本体4を挟むようにして当該ブロック本体4の両端面に固定された一対の合成樹脂製エンドプレート5とから構成されている。前記エンドプレート5は取付けボルト50によってブロック本体4の端面に対して固定される。
【0021】
図2に示されるように、前記ブロック本体4は機械装置などの取付け面41が形成された主桁部4a、及びこの主桁部4aと直交する一対の脚部4bを備えて断面略溝型に形成されている。前記主桁部4aには前記取付け面41及び固定ボルトが螺合するタップ孔42が形成される一方、各脚部4bの内側にはボール3が転走する負荷転走面43がそれぞれ形成されている。前記軌道レール1の転走面12と前記ブロック本体4の負荷転走面43は互いに対向し、ボール3が移動ブロック2と軌道レール1との間で荷重を負荷しながら転走する負荷通路を構成する。すなわち、ブロック本体4には4条の負荷転走面43が形成されている。この実施形態において、各負荷転走面43の長手方向に直交する断面は、ボール3の球面よりも僅かに大きな曲率半径のサーキュラーアーク状をなしているが、その形状は適宜設計変更することができる。前記軌道レール1に形成された転走面12も同様なサーキュラーアーク状に形成されている。また、各脚部4bには各負荷通路に対応した4条の転動体戻し通路44が形成されている。これら転動体戻し通路44の断面形状は転動体としてのボールの断面形状よりも大きく形成されており、ボール3が荷重から開放された状態で負荷通路内とは逆方向へ転走するようになっている。
【0022】
尚、図2中において、符号45はブロック本体4の脚部4bと軌道レール1の側面との間を密封するシール部材である。また、符号46は前記ブロック本体4にねじ止めされた保持器プレートであり、前記移動ブロック2を軌道レール1から抜き取った際に、ボール3が負荷通路から転がり落ちるのを防止している。
【0023】
図3は前記エンドプレート5を示す斜視図であり、かかるエンドプレート5を前記ブロック本体4との当接面側から観察したものである。このエンドプレート5にはボール3の方向転換路を構成する複数のボール誘導溝51が形成されている。これらボール誘導溝51はブロック本体4の各負荷転走面43に対応して設けられており、軌道レール1を取り囲むようにしてエンドプレート5の4ヶ所に形成されている。各ボール誘導溝51は前記ブロック本体4の負荷通路及びボール戻し通路44と対向すべく長孔状の開口を有しており、内部には略U字状に湾曲した外周側案内面52を有している。この外周側案内面52は前記負荷通路とボール戻し通路44との間でボール3を案内し、ボール3の進行方向を180°転換する。この外周側案内面52の前記軌道レール1に面した端部は僅かに切り欠かれて掬い上げ部53が形成されており、軌道レール1の転走面12に接しながら負荷通路を転走してきたボール3はこの掬い上げ部53に乗り上げるようにして前記ボール誘導溝51内に収容される。
【0024】
一方、前記エンドプレート5の各ボール誘導溝51にはリターンピース6が嵌合している。このリターンピース6は半円柱状に形成されており、その外周面には前記ボール誘導溝51内の外周側案内面52と対向する内周側案内面61が凹曲面として設けられている。また、前記内周側案内面61の両側にはエンドプレートと嵌合する半円状の位置決め部62が形成されており、これら位置決め部62は、前記エンドプレート4の各ボール誘導溝51の中央に形成された一対の係止溝54に嵌合する。従って、リターンピース6の位置決め部62をボール誘導溝51の係止溝54に嵌合させると、かかるリターンピース6がボール誘導溝51の中央に位置決めされ、エンドプレート5に設けられた外周側案内面52とリターンピース6に設けられた内周側案内面61とが互いに対向して、ボール5の直径よりも大きな内径の前記方向転換路が完成する。
【0025】
そして、このようにリターンピース6を装着したエンドプレート5をブロック本体4に固定することにより、ブロック本体4の負荷通路と転動体戻し通路44とが略半円状に形成された方向転換路によって連結され、前記移動ブロック2にボール3の無限循環路が完成することになる。
【0026】
図4はボール3の無限循環路の様子を示した断面図である。ボール3は負荷通路47において軌道レール1の転走面12及びブロック本体4の負荷転走面43に接触し、軌道レール1とブロック本体4との間に作用する荷重を負荷しながら前記負荷通路47内を転走する。図4中において、ブロック本体4及びエンドプレート5から構成される移動ブロック2が軌道レール1に対して紙面左方向へ移動する場合、ボール3は前記負荷転走面43に対して右方向へ転走し、かかる負荷転走面43の終端から転がり出ると、荷重から解放されて無負荷状態に移行すると共に、エンドプレート5の掬い上げ部53によって軌道レール1の転走面12から分離され、方向転換路55に進入する。方向転換路55に進入したボール3は半円状に延びる当該方向転換路55に案内されてその進行方向を180°変更し、ブロック本体4の転動体戻し通路44に進入する。ボール3は前記転動体戻し通路44を無負荷状態で進行した後、図4には示されていない反対側のエンドプレート5の方向転換路に進入する。ボール3はこの方向転換路においてその進行方向を180°変更し、負荷通路47の入口に戻される。そして、再び軌道レール1の転走面12及びブロック本体4の負荷転走面43に接触し、軌道レール1とブロック本体4との間に作用する荷重を負荷しながら前記負荷通路47内を転走することになる。このようにしてボール3は負荷状態、無負荷状態を交互に繰り返しながら、無限循環路の内部を循環し、それによって移動ブロック2が軌道レール1に沿って運動することが可能となっている。
【0027】
ボール3は前記方向転換路55及び転動体戻し通路44の内部を無負荷状態で転走することから、かかる方向転換路55及び転動体戻し通路44の断面形状はボール3のそれよりも大きな形状が与えられており、ボール3と方向転換路55の内周壁との間には隙間が存在する。このため、図4に示すように、ボール3は方向転換路55の内部で外周側案内面52に接触したり、あるいは内周側案内面61に接触したりと、ふらつき易い。また、負荷通路47から方向転換路55に進入するボール3は後続のボール3に押されながら当該方向転換路55内を進行するので、この点においてもボール3が方向転換路55内で一定の軌跡を経ずに蛇行し易いと言える。そして、このような蛇行が生じた場合、方向転換路55内のボール同士が互いに干渉し合ってその動きに抵抗が作用し易く、無限循環路内におけるボール3の円滑な循環が阻害され、ひいては軌道レール1に対する移動ブロック2の滑らかな運動が阻害されるおそれがある。
【0028】
一方、方向転換路55や転動体戻し通路44の断面形状をボール3のそれに可及的に近づけることによって、当該ボール3の無負荷状態を確保しながらその蛇行を防止することは可能である。しかし、方向転換路55に位置する数個のボール3から構成されるボール列の長さは当該方向転換路55内におけるボール3の位相によって周期的に変化するので、仮にボール3が無限循環路の周方向に沿って隙間なく配列されているとすると、方向転換路55はボール列の循環に伴う周期的な長さ変化を吸収する必要がある。例えば、図5及び図6に示すように、6個のボール3a〜3fが方向転換路55を通過する場合を想定すると、図5のようにボール3dの中心が方向転換路55の入口から角度30°の位置に存在している時と、その時点からボール3がその半径分だけ進行し、図6のようにボール3dの中心が方向転換路55の入口から角度60°の位置に達した時とでは、無限循環路内に配列されたボール列の長さは後者の方が若干長くなっている。
【0029】
このため、図5に示す状態で無限循環路内の周方向に沿ってボール3を隙間なく配列したとすると、その状態からボール3が方向転換路55内で半個分だけ進行すると、ボール同士が押し合ってその整列状態が崩れ、方向転換路55内においてはボール3が内周側案内面61から離れて蛇行を生じることになる。従って、方向転換路55内においては、ボール3を外周側案内面52又は内周側案内面61に沿って整列させることも重要であるが、ボール3同士の干渉を緩和するために、方向転換路55の通路幅がボール3の挙動に対応して柔軟に変化することが必要である。尚、図6は方向転換路55内におけるボール3の位相変化を説明する便宜上、ボール3を内周側案内面61に沿って整列させているが、前述の説明のように、図5に示す場合よりもボール列の長さは長くなっているので、ボール3を内周側案内面61に沿って整列させることは困難である。
【0030】
そこで、本発明では移動部材としての前記移動ブロック2に対して、方向転換路55内のボール3を内周側案内面61又は外周側案内面52に向けて付勢する隙間排除手段を設け、ボール3が前記内周側案内面61又は外周側案内面52のいずれかと接触しながら方向転換路55内を進行するように構成した。図7は方向転換路55内のボール3を内周側案内面61に向けて付勢した状態を示す断面図であり、矢線で示すようにボール3にはリターンピース6に設けられた内周側案内面に向かう付勢力が作用し、ボール3は内周側案内面61との当接を維持しながら方向転換路55内を進行する。
【0031】
図8は前記隙間排除手段の第一の実施形態を示すものであり、ボール3の進行方向と直交する方向における前記方向転換路55の断面図を示している。方向転換路55の外周側案内面52には前記押圧手段としての2条の可撓性リブ80が形成されており、これらの可撓性リブ80はボール3の進行方向に沿って方向転換路55の全長にわたって設けられている。かかる可撓性リブ80は前記エントプレート5と一体に成形されたものであっても良いし、エンドプレート5の外周側案内面52に対して接着したものであっても良い。
【0032】
これら可撓性リブ80はその先端が弾性変形した状態でボール3に当接しており、ボール3は2条の可撓性リブ80に押圧されて方向転換路55の内径側に位置するリターンピース6に向けて付勢されている。すなわち、方向転換路55内を進行するボール3は、外周側案内面52と接触することなく、内周側案内面61上を転動するようにして方向転換路55内を進行する。これによって方向転換路55内におけるボール3の蛇行が防止され、無限循環路内におけるボール3の円滑な循環を達成することが可能となる。また、前記可撓性リブ80はボール3をリターンピース6に向けて付勢していることから、方向転換路55に位置するボール3は互いに接近する方向へ付勢されていることになるが、ボール同士が強く押し合うような状況下では、逆に、当該ボール3が可撓性リブ80を押し返すので、方向転換路55内においてボール同士が強く干渉し合うことはなく、この点においても無限循環路内でボール3を円滑に循環させることが可能である。
【0033】
この可撓性リブ80は方向転換路55の内部だけでなく、転動体戻し通路44にも設けることが可能である。具体的には、前記ブロック本体4に対して直接転動体戻し通路44を形成するのではなく、合成樹脂製のパイプ体を転動体戻し通路として前記ブロック本体4に具備させ、かかるパイプ体の内部にその長手方向に沿って可撓性リブを設けることができる。この転動体戻し通路44内の可撓性リブは、前記方向転換路55の可撓性リブ80と連続するように設けることができる。このように構成すれば、転動体戻し通路内におけるボールの蛇行も防止することができ、無限循環路内におけるボール3の循環を一層円滑なものとすることができる。
【0034】
また、図9は前記隙間排除手段の第二実施形態を示すものである。図8に示す第一実施形態ではボール3を付勢する可撓性リブ80を方向転換路55の外周側案内面52に設けたが、この第二実施形態では、前記隙間排除手段としての可撓性リブ81がリターンピース6の内周側案内面61に設けられている。かかる可撓性リブ81はリターンピース6の周方向に沿って内周側案内面61の全長にわたって設けられている。この場合、前記可撓性リブ81はその先端が弾性変形した状態でボール3に当接し、ボール3は2条の可撓性リブ81に押圧されてリターンピース6からエンドプレート5に向けて放射状に付勢されている。すなわち、方向転換路55内を進行するボール3は、リターンピース6の内周側案内面61と接触することなく、外周側案内面52上を転動するようにして方向転換路55内を進行する。これによっても方向転換路55内におけるボール3の蛇行が防止され、無限循環路内におけるボール3の円滑な循環を達成することが可能となる。尚、この第二実施形態では可撓性リブ81が方向転換路55内のボール3を外周側案内面に向けて付勢しているので、方向転換路55内に位置するボール3は互いに離間する方向へ付勢されており、方向転換路55内においてボール3同士が強く干渉し合うことはない。
【0035】
図10は前記隙間排除手段の第三実施形態を示すものである。この第三実施形態では、前記エンドプレート5が隙間排除手段としての弾性支持部材82を介してブロック本体4に接続されており、ボール3が存在しない状態で、方向転換路55の通路幅Wはボール3の直径よりも僅かに小さく設定されている。このため、ボール3が方向転換路55に存在する状態では、前記弾性支持部材82が変形することによって方向転換路55の通路幅Wがボール3の直径まで拡張され、エンドプレート5に対しては弾性支持部材82の復元力に起因する付勢力がブロック本体4に向けて作用することになる。前記弾性支持部材82としては、ゴムシートや発泡体等を利用することができる。
【0036】
この第三実施形態によれば、方向転換路55内に存在するボール3は、図10中に矢印で示すように、エンドプレート5の外周側案内面52によってリターンピース6の方向へ押圧されるので、ボール3は内周側案内面61に対して軽く押し付けられた状態となり、ボール3は内周側案内面61に接触した状態を保ちながら当該方向転換路55を進行することになる。これにより、方向転換路55内におけるボール3の蛇行が防止され、無限循環路内におけるボール3の円滑な循環を達成することが可能となる。また、前記エンドプレート5がボール3をリターンピース6に向けて付勢していることから、第一実施形態と同様に、方向転換路55に位置するボール同士が強く押し合うような状況下では、当該ボール3がエンドプレート5を押し返すので、方向転換路55内においてボール同士が強く干渉し合うことはなく、この点においても無限循環路内でボール3を円滑に循環させることが可能である。
【0037】
また、図11は前記隙間排除手段の第四実施形態を示すものである。図10に示す第三実施形態では前記弾性支持部材82によってエンドプレート5をブロック本体4に向けて引き付け、それによって方向転換路55の外周側案内面52でボール3を内周側案内面61に向けて付勢するように構成した。しかし、この第四の実施形態では、隙間排除手段としての弾性支持部材83がリターンピース6とブロック本体4との間に設けられ、リターンピース6をブロック本体4に固定されたエンドプレート5に向けて付勢している。ボール3が存在しない状態で、方向転換路55の通路幅Wがボール3の直径よりも僅かに小さく設定されている点は第三実施形態と同じであり、ボール3が方向転換路55に存在する状態では前記弾性支持部材83が変形することによって方向転換路55の通路幅Wがボール3の直径まで拡張されるようになっている。
【0038】
この第四実施形態では前述の第三実施形態とは逆に、図11中に矢印で示すように、方向転換路55内に存在するボール3がリターンピース6の内周側案内面61によってエンドプレート5の方向へ押圧されるので、ボール3は外周側案内面52に対して放射状に軽く押し付けられた状態となり、ボール3は外周側案内面52に接触した状態を保ちながら当該方向転換路55を進行することになる。これにより、方向転換路55内におけるボール3の蛇行が防止され、無限循環路内におけるボール3の円滑な循環を達成することが可能となる。
【0039】
図12及び図13は前記隙間排除手段の第五実施形態を示すものである。前述の第三実施形態ではブロック本体4とエンドプレート5とを接合する弾性支持部材82がエンドプレート5をブロック本体4に向けて引き付ける方向の付勢力を発揮するように構成したが、この第五実施形態では、エンドプレート5をブロック本体4に固定する取付けボルト50をスプリング84に挿通し、かかるスプリング84がエンドプレトート5をブロック本体4の端面に向けて付勢するように構成した。
【0040】
図12に示すように、前記取付けボルト50はスプリング84に挿通された後に、エンドプレート5に形成されたボルト取付け孔56にも挿通され、かかる取付けボルトの雄ねじかブロック本体4の端面に形成された雌ねじ孔48に対して締結している。前記スプリング84としてはコイルスプリングやスプリングワッシャを使用することができる。このとき、取付けボルト50は完全には締結せず、その頭部が前記スプリング84をエンドプレート5との間で圧縮し、且つ、前記スプリング84を完全に押しつぶさない程度に締結される。これにより、エンドプレート5は圧縮されたスプリング84の発揮する付勢力でブロック本体4の端面に対して押し付けられる。
【0041】
エンドプレート5がブロック本体4の端面と接触している状態は前記方向転換路55にボール3が存在しない状態であり、このとき方向転換路55の通路幅Wはボール3の直径よりも僅かに小さく設定されている。この点は前述の第三実施形態と同じである。このため、ボール3が方向転換路55に存在する状態では、図13に示すように、前記スプリング84が更に圧縮されることによってエンドプレート5がブロック本体4から僅かに浮き上がり、方向転換路55の通路幅Wがボール3の直径まで拡張され、エンドプレート5に対してはスプリング84の付勢力がブロック本体4に向けて作用することになる。
【0042】
このため、第三実施形態と同様に、方向転換路55内に存在するボール3はエンドプレート5の外周側案内面52によってリターンピース6の方向へ押圧されるので、ボール3は内周側案内面61に対して軽く押し付けられた状態となり、方向転換路55内におけるボール3の蛇行が防止される。
【0043】
換言すれば、前述の第三実施形態〜第五実施形態では、前記エンドプレート5又はリターンピース6のいずれか一方が前記外周側案内面52と内周側案内面61とを接近させる方向へ付勢されており、それによって方向転換路55の幅Wをボール3の直径と略同一の大きさにまで狭め、かかる方向転換路55内におけるボール3の蛇行を防止しようとするものである。
【0044】
図14は前記隙間排除手段の第六実施形態を示すものである。この第六実施形態では、前記方向転換路55内に線状部材から形成した2本の誘導部材85を並列に配設し、これら誘導部材85によって方向転換路55内を転走するボール3をリターンピース6の内周側案内面61に向けて付勢している。すなわち、前記誘導部材85が本発明の隙間排除手段に相当している。この第六実施形態では方向転路55内に設けた誘導部材85がボール3を直接リターンピース6に向けて押圧しており、かかる意味においてのこの実施形態は前述の第一実施形態に近似している。
【0045】
図15は前記誘導部材85を示す斜視図である。この誘導部材は断面円形状の金属製の線状部材から製作されており、その長手方向の両端には前記方向転換路55に収容される一対の湾曲部85aが設けられる一方、一対の湾曲部85aを繋ぐ直線領域は前記移動ブロック2の負荷通路47に対応した保持部85bとなっている。また、前記湾曲部85aと保持部85bとの境界にはボール3の転走方向に対して斜めに屈曲した掬い上げ部85cが設けられており、この掬い上げ部85cは方向転換路55の入口付近、すなわちボール3が負荷通路47を転走し終えて荷重から開放された位置に対応している。この誘導部材85は、2本を一組として各無限循環路に組み込まれ、前記湾曲部85aをエンドプレート5のボール誘導溝51に挿入すると共に、かかる湾曲部85aの先端をブロック本体4の端面に嵌合させることで、前記移動ブロック2に装着される。
【0046】
前記誘導部材85は2本一組で前記移動ブロック2の無限循環路に対して装着されるが、その際、前記保持部85b同士の幅Aはボール3の直径よりも小さく設定されている。図14に示すように、ボール3は保持部85bとブロック本体4の負荷転走面43との間に配列されており、2本の誘導部材85の間から軌道レール1の転走面12に接触している。このとき、ボール3は誘導部材85の保持部85bに接触しておらず、軌道レール1の転走面12及びブロック本体4の負荷転走面43に接触し、荷重を負荷しながら負荷通路47を転走している。そして、一対の保持部85bの間隔Aがボール直径よりも小さく設定されていることから、軌道レール1から移動ブロック2を抜き取っても、ボール3が負荷通路47から脱落しないようになっている。
【0047】
また、図15に示すように、前記湾曲部85a同士の幅Bは前述した保持部85aの幅Aに比べて狭く設定されており、2本の誘導部材85の間隔が前記掬い上げ部85cにおいて幅Aから幅Bに連続的に変化するように構成されている。このため、前記保持部85bに沿って移動ブロック2の負荷通路47を転走していたボール3は当該負荷通路47を転走し終えて方向転換路55に進入すると、徐々に幅が狭くなる掬い上げ部85cによって軌道レール1の転走面12から持ち上げられる。そして、ボールは幅Bに設定された誘導部85aに接触しながら方向転換路55内を転走する。
【0048】
つまり、この誘導部材85は一方の方向転換路55から負荷通路47を経て他方の方向転換路55へ至る経路で、ボール3を連続的に案内していることになる。また、方向転換路55内において、ボール3は前記誘導部材85の湾曲部85aに案内されて進行方向を変化させることから、この第六実施形態では前記エンドプレート5の外周側案内面52は特にボール3を案内する作用を発揮しておらず、かかるエンドプレート5は方向転換路55のカバーとしてのみ機能している。
【0049】
図16は、前記誘導部材85の湾曲部85aが方向転換路55内のボール3をリターンピース6の内周側案内面61に向けて付勢している状態を示す断面図である。この状態で、方向転換路55内に位置する一組の湾曲部85aは、ボール3に接触することでその間隔が当該湾曲部85aの初期間隔Bよりも大きなB1(>B)に押し拡げられており、これら一組の湾曲部85aがその間隔をBに復元しようとする弾性力によって、ボール3がリターンピース6の内周側案内面61に向けて付勢されている。すなわち、図16の状態では方向転換路55内のボール3に対してこれらを内周側案内面61に接触させる力が作用し、ボール3は内周側案内面61に接触した状態で整列していることになる。
【0050】
一方、方向転換路内に位置するボール同士が強く押し合うような状況下では、当該ボール3が湾曲部85aを外周側案内面に向けて押し返すことになるが、その際、図17に矢線で示すように、方向転換路55内に配置された一組の湾曲部85aはそれらの間隔が拡がり、それに伴ってボール3の外周側案内面52に向けた移動が許容されることになる。
【0051】
従って、この第六実施形態においても、方向転換路55内におけるボール3の蛇行が防止されると共に、方向転換路55内においてボール同士が強く干渉し合うことはなく、無限循環路内におけるボール3の円滑な循環を達成することが可能となる。
【0052】
以上説明してきたように、本発明の転がり案内装置によれば、方向転換路55内を進行するボール3は各実施形態で示した隙間排除手段によって当該方向転換路の内周側案内面又は外周側案内面に向けて付勢されているので、内周側案内面61又は外周側案内面に沿って転動するようにして方向転換路55内を進行し、方向転換路55内におけるボール3の蛇行が防止される。また、方向転換路内に位置するボール同士が強く押し合うような状況下では、逆に、当該ボール3が隙間排除手段の付勢力に抗して当該隙間排除手段を押し返すので、方向転換路55内においてボール同士が強く干渉し合うこともない。従って、無限循環路内におけるボール3の円滑な循環を達成することが可能となる。
【0053】
また、前記隙間排除手段が方向転換路55内を進行するボール3を当該方向転換路の内周側案内面に向けて付勢している場合、ボール3は互いに接近する方向へ付勢されているので、例えば互いに隣接するボールの間に摩擦軽減のためのスペーサを介装する際、ボールとスペーサとが確実に接触するようになり、ボールの間からスペーサが抜け落ちたり、スペーサが横倒しになったりというトラブルを未然に防止することが可能となる。
【0054】
また、方向転換路の外周側案内面52又は内周側案内面61に可撓性リブ80,81を設けた前述の第一実施形態又は第二実施形態の転がり案内装置は、従来のエンドプレート又はリターンピースを可撓性リブ付きのものに交換するだけで容易に実施することができ、また、可撓性リブを備えたエンドプレート又はリターンピースは合成樹脂の射出成形などで容易に製作することが可能であり、低コストでこれを実現することができる。
【0055】
更に、線状部材から形成された2本一組の誘導部材を負荷通路及び方向転換路に配置した前述の第六実施形態によれば、かかる誘導部材が負荷通路と方向転換路との間でボールを連続的に案内し、且つ、ボールを軌道レールの転走面から掬い上げる機能も発揮するので、負荷通路と方向転換路との接続部分におけるボールの転走に作用する抵抗を小さくすることができ、方向転換路におけるボールの蛇行防止機能と相まって無限循環路内におけるボールの循環を一層円滑化することが可能となる。
【0056】
尚、本発明を適用可能な転がり案内装置は前述の第一実施形態〜第六実施形態に限られるものではなく、転動体の無限循環路を有しているものであれば、例えばボールスプラインやボールブッシュ等に適用することが可能である。
【0057】
また、本発明は転動体としてボールを利用した転がり案内装置に限られるものではなく、転動体としてローラを利用した転がり案内装置にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…軌道レール、2…移動ブロック、3…ボール、4…ブロック本体、5…エンドプレート、6…リターンピース、44…転動体戻し通路、47…負荷通路、52…外周側案内面、55…方向転換路、61…内周側案内面、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転動体の転走面を備えた案内軸と、
前記転走面を転走する多数の転動体を介して前記案内軸に組み付けられると共に前記転動体の無限循環路を有し、前記案内軸に沿って移動自在な移動部材とを備え、
前記無限循環路は、前記案内軸と移動部材との間で転動体が荷重を負荷しながら転動する負荷通路と、前記負荷通路と平行に設けられた転動体戻し通路と、前記負荷通路と転動体戻し通路の端部同士を連結する一対の方向転換路とを備え、
前記移動部材は、前記方向転換路内を無負荷状態で転走する転動体を当該方向転換路の内周側又は外周側へ向けて付勢する隙間排除手段を有することを特徴とする転がり案内装置。
【請求項2】
前記隙間排除手段は前記方向転換路の外周側案内面又は内周側案内面に対し転動体の進行方向に沿って設けられた可撓性リブであり、前記可撓性リブはその先端が弾性変形した状態で転動体に当接して、かかる転動体を対向する内周側案内面又は外周側案内面に付勢することを特徴とする請求項1記載の転がり案内装置。
【請求項3】
前記転動体戻し通路には当該転動体戻し通路の内周面に転動体を付勢する可撓性リブが転動体の進行方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項2記載の転がり案内装置。
【請求項4】
前記隙間排除手段は線状部材から形成されて並列に配設された二本一組の誘導部材であり、
前記誘導部材は、前記方向転換路に収容される一対の湾曲部と、これら湾曲部を繋ぐと共に前記負荷通路に対応した保持部とを備えていることを特徴とする請求項1記載の転がり案内装置。
【請求項1】
転動体の転走面を備えた案内軸と、
前記転走面を転走する多数の転動体を介して前記案内軸に組み付けられると共に前記転動体の無限循環路を有し、前記案内軸に沿って移動自在な移動部材とを備え、
前記無限循環路は、前記案内軸と移動部材との間で転動体が荷重を負荷しながら転動する負荷通路と、前記負荷通路と平行に設けられた転動体戻し通路と、前記負荷通路と転動体戻し通路の端部同士を連結する一対の方向転換路とを備え、
前記移動部材は、前記方向転換路内を無負荷状態で転走する転動体を当該方向転換路の内周側又は外周側へ向けて付勢する隙間排除手段を有することを特徴とする転がり案内装置。
【請求項2】
前記隙間排除手段は前記方向転換路の外周側案内面又は内周側案内面に対し転動体の進行方向に沿って設けられた可撓性リブであり、前記可撓性リブはその先端が弾性変形した状態で転動体に当接して、かかる転動体を対向する内周側案内面又は外周側案内面に付勢することを特徴とする請求項1記載の転がり案内装置。
【請求項3】
前記転動体戻し通路には当該転動体戻し通路の内周面に転動体を付勢する可撓性リブが転動体の進行方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項2記載の転がり案内装置。
【請求項4】
前記隙間排除手段は線状部材から形成されて並列に配設された二本一組の誘導部材であり、
前記誘導部材は、前記方向転換路に収容される一対の湾曲部と、これら湾曲部を繋ぐと共に前記負荷通路に対応した保持部とを備えていることを特徴とする請求項1記載の転がり案内装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−2625(P2013−2625A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138137(P2011−138137)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】
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