説明

転がり軸受

【課題】 ハンドピースの転がり軸受を、騒音や構造の面から改良することである。
【解決手段】医療用または歯科用ハンドピース(3)用であって、外側及び内側軌道輪(23、25)間にころ(22)を、軌道(22a)内に配置して有する転がり軸受(21)、特に小型転がり軸受であって、前記内側軌道輪(25)及び/または前記外側軌道輪(23)の端面に、それぞれ半径方向外向きまたは半径方向内向きに延出するフランジ(23c)及び/またはフランジ(25c)が設けられており、一方のころ列の前記ころ(22)は、一方の軌道輪の前記フランジ(23c)またはフランジ(25c)と他方の軌道輪の軸方向に向き合った位置の端面との間に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用または歯科用ハンドピース用の転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
当該種類のハンドピースの場合、細長いロッド形のものが用いられ、それは、前端部領域に、人体または動物、またはその模型(義歯)を処置するための器具を有するか、そのような器具に連結可能であり、後端部で、いわゆる可撓性供給管に継手によって連結されているか、連結可能である。供給管を介して、駆動モータ用の駆動エネルギ、及び/または照明装置などのための電力エネルギ、及び/または治療媒体をハンドピースに送ることができる。
【0003】
当該種類のハンドピースは、形状及び構造、器具の種類、器具の運動、及び/または駆動の種類に関してさまざまな形態で存在する。直線的または角形に延出したグリップ部分の形のハンドピースがある。器具には、回転器具や、前後運動する器具などがある。駆動部として、ハンドピースは、回転可能に取り付けられた駆動軸を有する機械式駆動部か、好ましくは前側ハンドピース領域内に配置されたタービンまで圧縮空気管を後部から前方に延在させた空気圧駆動部を備えることができる。
【0004】
したがって、当該種類のハンドピースは、その長さ方向のいずれかの領域に、高速から低速までの機能作動を行うように構成されて回転可能に取り付けられた回転部材を有することができる。高速機能作動は、ほとんどの場合、物質除去作業、たとえば、虫歯の除去用の器具に用いられる。しかし、インプラントの設置及び除去のためのインプラント移植の場合のように、機能作動でねじ込み作業を行う器具の場合などで、低い回転速度で駆動される器具を有するハンドピースもある。
【0005】
ハンドピース、即ち、回転部材、特にタービンロータを有する医療用または歯科用ハンドピースは、たとえば、特許文献1に記載されている。これには、タービンロータを、それのタービンホィールの2側部に配置された2つの玉軸受によって回転可能に取り付けた、いわゆるタービンアングルピースが用いられている。
【特許文献1】独国出願公開明細書第2618739号
【0006】
当該種類のハンドピースは、幾つかの要件を満たさなければならない。特に、機能作動で高速回転する器具用、またはそれを備えたハンドピースの場合、うるさい作業は治療中の患者を不快にするため、発生する騒音に関する改善が必要である。これは特に、歯科用ハンドピースなど、患者の頭部付近で使用されるハンドピースに当てはまる。
【0007】
手に適するか、そうでなければ、狭い体腔内で使用することもできる構造寸法にするために、当該種類のハンドピースは、小型構造であることも必要であり、これは、回転部材及びその軸受部材にも当てはまる。ここで、小型構造を確保しながら、簡単かつ迅速で有効な組み付け及び分解が可能であることも、考慮されなければならない。
【0008】
他方、市場での機会を高めるため、ハンドピースを経済的な構造にしなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ハンドピースまたは転がり軸受を、上記要件に関して改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、特許請求の範囲の特徴によって達成される。
【0011】
本発明に従った構造では、ハンドピースは、回転部材を取り付けることを目的とした少なくとも1つの転がり軸受、特に小型転がり軸受を有し、この転がり軸受は、互いに隣り合わせて配置された少なくとも2つのころ列を有する。内輪及び/または外輪が、それぞれ軸方向に両方の転がり軸受ころ列にわたって延在している。これにより、幾つかの利点が得られる。1つには、転がり軸受が、両ころ列にわたって延在する軸受スリーブによって安定する。これによって、転がり軸受に加わる荷重が少なくなると共に、長い実用寿命の円滑な回転作業が得られる。それにより、機能作動で発生する動作騒音が減少することも確認されており、これは特に、高速の転がり軸受または回転部材に重要である。本発明に従った転がり軸受を2つの個別の転がり軸受の代わりに使用することができ、共通の内側及び/または外側軸受スリーブを有する構造形式のため、2部材を互いに共通部材に連結し、したがって、この共通部材をより経済的に製造することができるので、本発明に従った構造は、製造コストの削減ももたらす。共通部材か、共通の構造ユニットに連結することによって、取り扱うべき部品数が減少するため、簡単かつ迅速な組み立ても可能になる。
【0012】
当該種類の転がり軸受は、機能作動で、半径方向荷重力だけでなく、軸方向荷重力も吸収しなければならず、器具が機能作動で軸方向荷重を受ける時、このことがさらに強く見られるであろう。
【0013】
したがって、本発明はさらに、転がり軸受を、軸方向荷重力も吸収するようにそれの安定性に関して改良するという目的も有する。
【0014】
この目的は、特許請求の範囲の特徴によって達成される。
【0015】
本発明の転がり軸受では、ころ列が、軸方向荷重力を吸収することができる。したがって、本発明に従った転がり軸受は、半径方向荷重が生じる場合と、軸方向荷重が生じる場合の両方で使用することができる。ここで、さらなる利点として、ラジアル軸受及びアキシアル軸受が1つの転がり軸受ユニット内に統合されていることがわかるはずであり、これによって、製造コスト、構造寸法、支持能力、及び組み立て及び分解に必要な労力を減少させることができる。
【0016】
この改良は、転がり軸受の簡単かつ低コストの製造方法で実現することができ、これにより、転がり軸受及びハンドピースの競争力も向上する。
【0017】
器具の駆動用の駆動軸チェーンを内部に回転可能に取り付けたハンドピースでは、ハンドピースの長手方向軸を横切って延在する器具収容部の前端部領域及び/または角形ハンドピースの頂点領域には、所望の回転速度及び/または回転方向を考慮に入れる特別な要件が生じる。
【0018】
したがって、本発明は、ハンドピースを、互いに駆動連結されている駆動軸部分に関して改良するというさらなる目的を有する。
【0019】
この目的は、特許請求の範囲の特徴によって達成される。本発明の好都合なさらなる発展が、関連の従属請求項に示されている。
【0020】
特許請求の範囲に従った本発明の構造では、ハンドピースは、さらなる駆動軸部分、すなわち、中間駆動軸部分を有し、これは、前側駆動軸部分の回転方向を逆にすること、及び/または回転速度の高速化または低速化の実現を可能にする。これにより、ハンドピースは、特別な要件、またはより広範囲の要件を満たすことができ、したがって、ハンドピースの適用範囲が広がる。
【0021】
また、本発明は、確実に機能すると共に実用寿命が長く、小型で経済的に製造でき、安定的で、好都合に一体化できると共に安定化させる構造形式にさらに貢献する特徴を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図面を参照しながら、本発明の好都合な構造をさらに詳細に説明する。
【0023】
図1に全体的に1で示された治療装置は、後方装置部分、すなわち、いわゆるコネクタ部分2と、前方装置部分、すなわち、いわゆるハンドピース3とで構成され、これらは、差込形継手4、特に差込/旋回形継手によって、互いに着脱式に連結されている。本実施形態の場合、治療装置1の前端部に、器具6用のホルダ装置5が配置されており、これにより、器具6が前方または側方に突出することができる。ハンドピース3は、直線的か、器具から離れる側へ湾曲または角形に延在することができる。差込/旋回形継手は、断面が丸い継手窪み部7と、わずかな遊びを設けてそれに挿入することができる継手ピン8とによって形成されている。本実施形態では、継手窪み部7は、ハンドピース3の後端部に設けられており、ほぼ円筒形の継手ピン8は、コネクタ部分2から前方に延出している。連結状態にある時、継手窪み部7及び継手ピン8は、ラッチ装置9によって互いに着脱式にラッチ係合されている。これは、一方の継手部材内に半径方向に移動可能に取り付けられたラッチ部材9aを有し、このラッチ部材は、ばね力によってラッチ位置へ押し付けられて、分離隙間を横切り、そこでラッチ部材9aが他方の継手部材のリング溝に係合する。そのようなラッチ装置9には、軸方向引張り力を手動で加えることによって打ち勝つことができ、それにより、ラッチ部材9aは自動的に解除位置へ押し進められる。
【0024】
コネクタ部分2は、図示しない制御装置に接続された可撓性供給管2aに接続されている。ハンドピース3は好ましくは、継手ピン8に回転自在に取り付けられており、それによって取り扱いが改善される。差込/旋回形継手4内に、治療または駆動媒体(たとえば、水、圧縮空気または水/空気混合物(スプレー))用の少なくとも1本の媒体管10が挿通されている。媒体管10は、継手窪み部7及び継手ピン8間の半径方向(図示せず)または中空円筒形の分離隙間内を軸方向(図示せず)またはZ字形に通り、それにより、継手ピン8または継手窪み部7内のリング溝の部分の分離隙間を通過することによって、いずれの回転位置にあっても、媒体の流通を確保することができる。流通路の両側において、継手窪み部7の壁か、継手ピン8の外側面のリング溝内に配置することができるシールリング8aによって、分離隙間が密封されている。これにより、360°以上にわたる自由回転性が確保される。媒体管10は、治療装置1の後端部からその前端部領域まで延在し、それは、一部では装置本体内のチャネルとして、あるいはチューブまたはパイプとして延びることができる。媒体管10は、治療装置1の前端部領域で治療装置から開き、それにより、出口開口10aを治療場所の方に、または器具6の先端に向けることができる。
【0025】
同一または同様部材には同一の参照記号を付けて示している本発明のすべての実施形態の場合、ハンドピース3内に、回転部材12が転がり軸受で回転可能に取り付けられている。図1に示された実施形態の場合、角形シャフト13を備えた、いわゆるタービンハンドピースが用いられている。これは、一体状に形成することも、後側または前側シャフト部分13a、13bを、角形の頂点で互いに固定的に連結して構成することもできる。シャフト13の前端部に、肉厚のヘッド14が設けられており、その内部にタービンが配置され、それのタービンホィール15がヘッド14内に、シャフト13の角度平面上にあってシャフト13またはその長手方向中心軸13cを横切って延在する回転軸16を中心して回転可能に取り付けられている。タービンホィール15は、タービン室17内に配置されており、このタービン室17内に圧縮空気用の媒体管10bが開いて、タービンホィール15のブレードに向けられている。タービンホィール15は、ホルダ装置5に、本例では、収容スリーブ18に連結されており、この収容スリーブ18内に器具6をそれのシャフトで挿入して、固定装置によって周知のように着脱式に固定することができる。タービンホィール及び収容スリーブ18は、一体状に形成してもよい。図1の例示の実施形態では、タービンホィール15は、収容スリーブ18の挿入開口18aから遠い方の端部に連結されている。タービンホィール15及び収容スリーブ18からなるタービンロータ15aを回転式に取り付けるために、2列に配置されたころ22、たとえば、ボールを有する2列配置の転がり軸受21が設けられており、それの中空円筒形の外側軸受スリーブ23が、ヘッド14内の横穴24内に着座し、それの中空円筒形の内側軸受スリーブ25が、収容スリーブ18上に着座している。タービンホィール15に対して、器具側に片側配置された転がり軸受が用いられている。タービンホィール15の器具側と反対の側では、タービンロータ15aが取り付けられていない。軸受スリーブ23、25のそれぞれ内側及び外側面には、ころ列の対応の横断面上に軌道22aが設けられ、その内部をころ22が循環することができる。タービン室17と横穴24との間に、転がり軸受21を密封するためのリングシールが設けられているが、簡略化するために、それを図示していない。タービンホィール15の、器具側と反対の側において、タービン室17が半径方向ヘッド壁14aによって覆われている。このヘッド壁14aは、タービン室17及び横穴24を包囲するヘッドハウジングにハウジング14bの形で連結された、たとえば、それにねじ付けられた特別な部材にすることができる。収容スリーブ18に入っている器具6のシャフトは、ヘッド14の、器具側と反対の側から同軸穴を通して、このヘッド側に配置された取り外しピン26で取り外すことができる。取り外しピン26は、回転軸16の長手方向に、伸張した待機位置と後退した取り外し端部位置との間を変位可能に取り付けられて、たとえば、ヘッド壁14a及びピンフランジ26a間に取り付けられたばねによって、待機位置に押し付けられて、この位置で軸方向に固定されている。そのような取り外し装置は、それ自体は周知である。
【0026】
図2〜図4に従った転がり軸受11の実施形態が上記実施形態と異なる点は、外側軸受スリーブ(図2)または内側軸受スリーブ(図3)のいずれかが、前後配置された2つの外側軸受スリーブ部材23a、23bまたは内側軸受スリーブ部材25a、25bからなり、軸受スリーブ部材は、互いに軸方向に間隔を置いて離しても、図4が内側軸受スリーブ25について示すように、互いに接していてもよい。図4に従った構造では、図4に鎖線で概略的に示すように、それぞれの軌道22aを共通の分離隙間25cに開くこともできる。共通の分離隙間及び/または軸方向に切れた軌道を、外側軸受スリーブ23に、好ましくは対称的に配置することもできる。この構造では、これらの外側または内側軸受スリーブ部材を軸方向移動によって据え付けて、それぞれ転がり軸受21にすることができる。図2〜図4に従ったすべての実施形態では、セットになった外側または内側軸受スリーブ部材23a、23bまたは25a、25bを同一に形成することも可能であり、これにより、製造コストを大幅に削減することができる。転がり軸受11に望まれる軸方向支持の方向に応じて、軸受スリーブ部材23a、23b、25a、25bを互いに同様の向きか、互いに180°回転した位置に取り付けることができる。
【0027】
図5に従った例示の実施形態では、1列のころ22が、外側または内側軸受スリーブ23、25か、スリーブ部材23a、23b、25a、25bの表面間に配置されており、それの少なくとも軸方向外側面または両面は、外側軸受スリーブ23及び内側軸受スリーブ25の半径方向フランジ23c、25c上の、それぞれこれらのフランジ23c、25cの軸方向に互いに向き合った端面の軌道22b内に設けられている。図示の構造では、外側軸受スリーブ23から半径方向内向きに延出した内側フランジ23cが、ころ列の軸方向外側に配置され、内側軸受スリーブ25から半径方向外向きに延出した外側フランジ25cが、ころ列間に配置されている。逆の配置も可能であり、その場合、図6に示されているように、内側フランジ23cがころ列間に配置され、外側フランジ25cがころ列の軸方向外側に配置される。さらに、ころ22及び関連の軌道22bを、短い外側または内側軸受スリーブ23、25の端面及び軸方向に向き合ったフランジ23c、25c間に配置することも可能である。すなわち、それぞれ1つのフランジ23cまたは25cだけを設ければよい。
【0028】
そのような転がり軸受21は、一方の転がり軸受ころ列について言えば、ラジアル軸受であり、他方の転がり軸受ころ列について言えば、アキシアル軸受である。したがって、この構造では、転がり軸受21は、半径方向および軸方向の両軸受力を吸収することができる。これは、機能作動で、器具6の抵抗力から生じる半径方向力だけでなく、機能作動の軸方向力も加えられる収容スリーブ18をヘッド14内に取り付けるのに特に適している。
【0029】
図7に従った例示の実施形態では、収容スリーブ18を取り付けるために、図5に従った構造を有する転がり軸受21が、タービンホィール15の器具から遠い側に配置されている。器具側の2列配置の転がり軸受21と組み合わせたこの軸受配置は、特に好都合である。しかし、たとえば、図1に従った収容スリーブの場合の、タービンホィール15の器具側の図5または図6に従った転がり軸受21を、図7に従った収容スリーブ18の場合の、タービンホィール15の器具側と反対の側に配置することができる単列配置の転がり軸受と組み合わせて配置することも可能である。図7に従った構造では、別の図示しない器具取り外し装置が設けられている。
【0030】
図8及び図9に従った実施形態では、シャフト13の内部に回転可能に取り付けられた回転部材12の回転式取り付け、本例では、駆動軸の長手方向部分の回転可能な取り付けのために、転がり軸受21がシャフト13の内部に配置されている。この治療装置1の場合、駆動モータ(図示せず)が、鎖線で示された長いコネクタ部分2内に配置されて、複数の駆動軸部分を有する駆動軸列33によって収容スリーブ18に駆動接続されている。差込形継手4の付近において、駆動軸チェーン33は、はめ合い形状式に互いに対応した2つの差込形継手部材32a、32bを備えた差込形継手32を有し、これにより、差込形継手4の連結及び切り離し時に、同時に差込形継手32の連結及び切り離しを行うことが可能である。
【0031】
ハンドピース3の後端部領域に配置された駆動軸部分33aは、角形のシャフト13の頂部領域まで延びて、その前端部が、実質的に頂部領域だけに軸方向に延在する第2駆動軸部分33bによって第3駆動軸部分33cに駆動連結されており、第3駆動軸部分は、前側シャフト部分13b内を収容スリーブ18まで延在して、それに駆動連結されている。駆動軸部分33a、33b、33cを連結するために、それぞれ歯車伝達機構が設けられている。第1駆動軸部分33aの前端部には、内歯を有する歯車34が配置されており、これは、第2駆動軸部分33bの後端部のピニオン35と噛み合う。それにより、第2駆動軸部分33bは、頂部領域13c内の、器具6から遠い側の方にずれた位置にあって、第2駆動軸部分33bの前端部及び第3駆動軸部分33cの後端部にはそれぞれ、実質的に同一横平面上にあるか、互いに噛み合う平歯車のように互いに重なったピニオン36、37が配置されている。第2及び第3駆動軸部分33b、33cは、器具6から遠い側に向かって開いた鈍角W1をなす。
【0032】
第3駆動軸部分33c及び収容スリーブ18間の駆動連結は、第3駆動軸部分33cの前端部の円錐歯車38と、収容スリーブ18上の円錐歯車39とを有する傾斜歯車伝達機構によって行われている。円錐歯車38、39間の噛み合いは、第3駆動軸部分33cを基準にして、器具6から遠い側で行われる。これにより、収容スリーブ18は、第1駆動軸部分33aと同一の回転方向に駆動される。収容スリーブ18は、ヘッド14内の2つの転がり軸受41、42によって回転可能に取り付けられており、これらの転がり軸受は、回転軸16の長手方向の向きに互いに間隔を置いて設けられ、その間隔が円錐歯車38より大きいことによって、円錐歯車38をその間に配置することができ、また、円錐歯車39は、円錐歯車38の器具6から遠い側に、また同時に、転がり軸受42より器具6から離れた位置にある転がり軸受41の、器具6に近い側部に配置されている。第2駆動軸部分33cを回転式に取り付けるために、この駆動軸部分33cの端部分にそれぞれ転がり軸受33、34が配置されており、それらの外輪は、シャフト部分13bの図示しない長手方向穴内にはめ込まれている。
【0033】
歯車34が中空歯車として構成されていることにより、半径方向に小さい構造でありながら、第1及び第2駆動軸部分33a、33b間の回転速度を比較的高速化することができる。
【0034】
図8に従った例示の実施形態では、第1駆動軸部分33a及び第2駆動軸部分33bをそれぞれシャフト13内に取り付けるために、2列配置の転がり軸受21a、21bが設けられている。この転がり軸受21a、21bはそれぞれ、駆動軸部分33aまたは33b全体を十分に安定的に取り付けることができる。第1駆動軸部分33aは、転がり軸受21aから後方へ自由状態に突出しており、これにより、この駆動軸部分とコネクタ部分2との連結にわずかな半径方向可撓性が存在する。可撓性を増加させるために、第1駆動軸部分33a及び歯車34間に、横ピン29を有するジョイントコネクタ28を連結することができ、これにより、第1駆動軸33aの半径方向可撓性が増加する。歯車34は、後側の円筒形または中空の円筒形支持部分34aからなり、その前端部に設けられたフランジ34bの前側に、中空の冠歯車が配置されている。例示の実施形態では、転がり軸受21a、21bは、図3に従った構造を有する。
【0035】
すべての転がり軸受21、21a、21bにおいて、好ましくは、ころ列の間の間隔aを、ころの軌道22aの平均直径bより大きくすることができる。転がり軸受21bは、ピニオン35、36間にはまるような、Lで示された長さを有し、これによって同時に、第2駆動軸部分32bの軸方向拘束が行われる。図5及び図6に従った実施形態では、半径方向には1つのころ列だけが有効であるので、その間隔aを平均軌道直径bより小さくすることもできる。
【0036】
両転がり軸受21a、21bは好ましくは、シャフト13内の後側シャフト部分13aの頂点の近傍部分に着座している共通のキャリヤ部材44内に取り付けられており、このキャリヤ部材44は、後向きまたは前向きに開いた収容穴によって、後方から取り付け、再び後方から取り外すか、その逆に行うことができ、図示しない方法で軸方向に固定することができる。
【0037】
図8からさらに理解できるように、後側の転がり軸受21aは、キャリヤ部材45の収容穴45aに後側から挿入されて、たとえば、外側軸受スリーブ23の後端部に配置されたフランジ23dによって、前方へ向かう軸方向の固定が行われている。反対に、前側の転がり軸受21bは、キャリヤ部材45の収容穴46に前方から挿入されて、軸方向に固定される。フランジ34は、収容穴45a内の、転がり軸受21aと収容穴45aの底部との間に、遊びを設けて取り付けられている。
【0038】
47は、光導体ロッドを示し、これは、シャフト13の縁部付近で、シャフト内を後部から前方に、器具6の自由端部に向けられた出口窓82まで延在している。このハンドピース3の機能作動中に、光源の光が光導体ロッド47内へ送られ、光源47aは、コネクタ部分2内に回転可能に取り付けられた回転部材49(概略的に図示)上に配置されているため、この場合も、差込/旋回形継手4でのハンドピース3の自由回転性が確保される。
【0039】
前側シャフト部分13bの中心軸と収容スリーブ18の回転軸16とがなす図8の角度W2は、約100°である。そのような構造は、患者の口内の解剖学的構造の点から、特に好ましい。角度W2が100°であるこの好適な構造は、コネクタ部分2内のモータで作動可能な図8に従ったハンドピース3だけでなく、図1に従ったタービンハンドピース3や、後述する図9に従ったハンドピース3にも適しており、図9に従ったハンドピース3は、コネクタ部分2内にモータを有するが、この場合、シャフト部分13b及び回転軸16間の角度W3が約90°に示されている。90°から好ましくは100°の間の角度が好ましい。
【0040】
図9に従った実施形態のハンドピース3は、2つの大きな点で図8に従った実施形態と異なっている。1つには、第2及び第3駆動軸33b、33cが、重なるのではなく、それらの端部が互いに軸方向に近接して向き合うように配置されており、角度W1より小さく、約135〜150°の鈍角W4をなしている。したがって、歯車36、37は、前方及び後方を向いた歯で実際の傾斜伝達の方向に噛み合っており、これらの歯は、それぞれ外周の器具6から遠い側に設けられている。したがって、第2及び第3駆動軸部分33b、33cの回転方向は、図8に従った実施形態のように互いに逆方向ではなく、互いに同一方向である。
【0041】
図8に従った実施形態と異なって、図9及び図10に従った実施形態では、第2駆動軸部分33bは、第1駆動軸部分33aに対して軸平行に配置されていないで、それに対して約10〜20°の鋭角W5をなす。さらに、第2駆動軸部分33bには、前方から軸受胴部44内へ挿入する、特にねじ込むことができる中空円筒形の取り付けスリーブ51内の転がり軸受21bと、好ましくは第2駆動軸部分33b上に一体状に形成されたピニオン35とが設けられており、歯車36及び転がり軸受21bは、事前に組み立て可能な構造ユニットを構成する。
【0042】
図10に示すように、第3駆動軸部分33cの後端部は、軸受スリーブ52内の転がり軸受43で取り付けることができ、このスリーブは、後側シャフト部分13aから前側シャフト部分13b内へ一体状に突出しており、移行領域に、歯車36用、または取り付けスリーブ52用でもある拡大自由室54を有する。
【0043】
他方、図9に従った実施形態では、円錐歯車38、39間の駆動連結が、円錐歯車38の器具6から遠い側ではなく、器具に近い側で行われ、円錐歯車39は、円錐歯車38を基準にして、収容スリーブ18の器具6に近い側に配置されている。これにより、図8に従った構造と比較して、収容スリーブ18の回転方向が逆になり、したがって、歯車伝達機構35、37での回転方向の上記逆転が補償され、したがって、図8及び図9に従った実施形態では、収容スリーブ18の回転方向が再び同一になる。
【0044】
さらに図11に示されているように、収容スリーブ18は、ヘッド14内に2列配置の転がり軸受21cで取り付けられており、これは、図3に従った構造に対応する、すなわち、一体状に延びた外側軸受スリーブ23を有する。円錐歯車39は、対応の内側軸受スリーブ部分25bの中空円筒形の部分キャリヤと一体化することができる。収容スリーブ18の、器具6から遠い位置にあって、対応の内側軸受スリーブ部分25aを担持している端部領域内に、収容スリーブ18内に配置された取り付けスリーブ55を拡張させる追加の取り外しピン26bが、軸方向に変位可能に取り付けられており、取り外しピン26aによって器具6から遠い側から手動で作動させることができる。外側軸受スリーブ23の器具6から遠い端部は、図11に示すように、ヘッド壁14bを有するヘッドハウジングカバー14cのねじ支持部14c内に取り付けることができる。したがって、転がり軸受21cも同様に、器具6から遠い側から取り付けたり、取り外すことができる。第3駆動軸部分33cを貫通係合させるために、外側軸受スリーブ23の対応側に、貫通穴23eが設けられている。外側軸受スリーブ23の回転を防止するために、このための回り止めが設けられており、これは、たとえば、カム56を凹分57に係合させて行うことができる。例示の実施形態では、カム56は、外側軸受スリーブ23の外周上の、器具から遠い端部領域に配置され、それが、外側軸受スリーブ23を受け取る軸受穴の壁の軸方向溝にはまる。この構造により、回転部材12が収容スリーブ18によって構成される。
【0045】
すべての実施形態において、外側軸受スリーブ23及び内側軸受スリーブ25、またはスリーブ部材23a、23b、25a、25b間に、ころ22と組み合わせた保持器が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】転がり軸受内に取り付けられた回転部材を有する本発明に従ったハンドピースの、一部断面図で示す側面図である。
【図2】変更構造の転がり軸受を個別部材として示す軸方向断面図である。
【図3】変更構造の転がり軸受の軸方向断面図である。
【図4】さらなる変更構造の転がり軸受の軸方向断面図である。
【図5】さらなる変更構造の、本発明に従った転がり軸受の軸方向断面図である。
【図6】さらなる変更構造の、本発明に従った転がり軸受の軸方向断面図である。
【図7】さらなる変更構造のハンドピースの前端部領域の軸方向断面図である。
【図8】さらなる変更構造の、本発明に従ったハンドピースの軸方向断面図である。
【図9】さらなる変更構造の、本発明に従ったハンドピースの軸方向断面図である。
【図10】図9のXで示された詳細を拡大して示す図である。
【図11】図9に従ったハンドピースの前端部領域の、拡大して示す軸方向断面図である。
【符号の説明】
【0047】
3 歯科用ハンドピース
6 器具
12 回転部材
13a 後側シャフト部分
13b 前側シャフト部分
15 タービンホイール
15a タービンロータ
18 収容スリーブ
21;21a;21b 転がり軸受
22 ころ
22a 軌道
23 外側軌道輪
23a;23b リング部材
23c フランジ
25 内側軌道輪
25c フランジ
33a 後側駆動軸部分
33b 中間駆動軸部分
33c 前側駆動軸部分
34 中空歯車
38 円錐歯車
39 円錐歯車
44 軸受胴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用または歯科用ハンドピース(3)用であって、外側及び内側軌道輪(23、25)間にころ(22)を、軌道(22a)内に配置して有する転がり軸受(21)、特に小型転がり軸受であって、
前記内側軌道輪(25)及び/または前記外側軌道輪(23)の端面に、それぞれ半径方向外向きまたは半径方向内向きに延出するフランジ(23c)及び/またはフランジ(25c)が設けられており、
一方のころ列の前記ころ(22)は、一方の軌道輪の前記フランジ(23c)またはフランジ(25c)と他方の軌道輪の軸方向に向き合った位置の端面との間に配置されていることを特徴とする転がり軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−66423(P2009−66423A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282972(P2008−282972)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【分割の表示】特願2003−524465(P2003−524465)の分割
【原出願日】平成14年8月28日(2002.8.28)
【出願人】(500577585)カルテンバッハ ウント ホイクト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント カンパニー カーゲー (6)
【Fターム(参考)】