説明

転写シールとその転写使用法

【課題】レーザープリンターや静電複写機などのトナーから成るオリジナルな標章がプリントされた転写シールを提供する。
【解決手段】吸水紙(10)の表面へ水溶性のアンダーコート層(11)と透明なトップコート層(12)とが順次積層一体化された合計3層のプリント基材シート(A)と、粘着剤層(14)と離型紙(16)との剥離界面が直交する方眼形態の空気抜き用凹凸条(19)として粗面化された両面粘着シート(B)との2部品から成り、上記基材シート(A)のトップコート層(12)へ表側から希望の標章(T)を、レーザープリンターや静電複写機などのトナーによりプリントすると共に、上記離型紙(16)の剥離により露出した両面粘着シートの粘着剤層(14)を介して、その粘着シートに残っている透明な離型フィルム(15)を上記基材シートのトップコート層へ、その表側から標章の被覆状態に貼り合わせ一体化した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転写シールとその被写体への貼り付け転写使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は既に特許第3266197号(発明の名称:転写シール用キットとその転写使用法)を提案した。
【0003】
これによれば、一般家庭にも普及しているインクジェットプリンターやありふれた水性の筆記具を用いて、誰もが希望するオリジナルな標章(画像)(T)の転写シール(S)を簡単に便利良く作成でき、又その作成した転写シール(S)を人体の皮膚や被服、携帯バッグ、ゴルフボール、その他の目的とする各種被写体(M)へ、その材質や形態などの制約を受けることなく、確実に貼り付け転写使用し得る利点があり、本発明に最も近似する公知技術であると考えられる。
【特許文献1】特許第3266197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記公知発明はあくまでもインクジェットプリンターや水性の筆記具を用いて作成される転写シール(S)に係り、その水溶性インクを浸透・受容させて、これから成る標章(画像)(T)を定着・保持させるための第3コーティング層(水溶性のインク受容層)(13)が、必須不可欠の構成として具備されている。
【0005】
その結果、図9の仕上がり状態にある転写シール(S)としての保管中に、万一その周縁部(所謂木口面)から水分を受けると、これが水溶性のインク受容層(13)に浸透・受容されて、ここから転写シール(S)の基材シート(A)と両面粘着シート(B)とが不慮に分離してしまうのであり、転写シール(S)の保管上特別の注意を要することになる。
【0006】
又、図11のような被写体(M)への貼り付け転写使用中でも、人体の発汗や外界からの雨水が、やはり周縁部から水溶性のインク受容層(13)へ浸透・受容されると、その被写体(M)から容易に剥離してしまうこととなり、たとえ剥離しないまでも、水溶性インクから成る標章(画像)(T)が滲み・形崩れを生ずることは必至である。上記インク受容層(13)の周縁部が露出している以上、その表面が撥水性の第2コーティング層(12)により被覆されていても、このような現象の発生を予防することはできない。
【0007】
更に、標章(画像)(T)が水溶性インクから成るため、撥水性の透明な第2コーティング層(12)も不可欠であり、その厚み:約5μmの第2コーティング層(12)と厚み:約7μmの上記インク受容層(13)とから成る2層のマスキングシートが、合計約12μmとして厚肉化するため、被写体(M)の曲面や凹凸粗面に馴染み良く変形し難く、未だ使用中の違和感を与えることになるほか、その2層の厚肉なマスキングシートが標章(画像)(T)の言わば背景・生地として、肉眼により明白に見え過ぎてしまう結果、標章(画像)(T)のみが貼り付け転写されている如き、優美な浮き彫りタトウ状態の印象を与えることができない。
【0008】
他方、転写シール(S)の作成法としても、基材シート(A)における水溶性のインク受容層(13)へプリント又は手書きした水溶性インクの標章(画像)(T)が、完全に乾燥した後でなければ、その表面へ両面粘着シート(B)の第1離型フィルム(16)を貼り合わせることができないため、転写シール(S)の量産には不向きである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこのような課題の更なる改良を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では転写シールの構成として、吸水紙の表面へ水溶性ポリマーのアンダーコート層と熱可塑性ポリマーの透明なトップコート層とが順次積層一体化された合計3層のプリント基材シートと、
【0010】
粘着剤層の表面に透視可能な合成樹脂の離型フィルムと、同じく裏面に透視不能な離型紙とが貼り合わせ一体化され、且つその粘着剤層と離型紙との剥離界面が、直交する方眼形態又は網形態の空気抜き用凹凸条として粗面化された両面粘着シートとから成り、
【0011】
上記プリント基材シートのトップコート層へ表側から希望の標章を逆画像として、レーザープリンターや静電複写機などのトナーによりプリントすると共に、
上記離型紙の剥離により露出した両面粘着シートの粘着剤層を介して、その粘着シートに残っている離型フィルムを上記プリント基材シートのトップコート層へ、その表側から上記標章の被覆状態に貼り合わせ一体化したことを特徴とする。
【0012】
又、請求項2の構成ではプリント基材シートにおけるアンダーコート層の水溶性ポリマーをポリビニルアルコールとして、約3μmの厚みに塗工すると共に、トップコート層の熱可塑性ポリマーをポリエチレンテレフタレートとして、約5μmの厚みに塗工したことを特徴とする。
【0013】
請求項3の構成では、プリント基材シートのトップコート層に香料や蓄光顔料、その他の各種添加物を混入させたことを特徴とする。
【0014】
更に、請求項4の構成では両面粘着シートにおける粘着剤層と離型紙との剥離力を、同じく粘着剤層と離型フィルムとのそれよりも小さく相違変化させたことを特徴とする。
【0015】
請求項5の構成では、請求項1記載の転写シールを目的の被写体へ貼り付け転写するに当り、その両面粘着シートの離型フィルムを剥離して、その露出した粘着剤層によりプリント基材シートを被写体の表面へ貼り付けた後、
【0016】
その貼り付けた結果としてプリント基材シートの表側となる吸水紙の存在方向から水分を投与することにより、その吸水紙とアンダーコート層との2層をトップコート層との境界面から剥離して、未だ残存するトップコート層だけの1層を通じて、逆画像の標章を正画像のそれとして表側から透視できる状態に保つことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の構成によれば、プリント基材シートのトップコート層へプリントされた希望の標章が、一般家庭にも普及している電子写真方式のレーザープリンターや静電複写機などのトナー(帯電粉インク)から成るため、冒頭に述べたインクジェットプリンターや筆記具などの水溶性インクから成る標章に比し、これを乾燥する時間が不要となり、その標章の焼き付け定着された上記トップコート層へ、表側から両面粘着シートの透明な離型フィルムを瞬時に貼り合わせ一体化して、簡便に能率良くオリジナルの転写シールを作成することができ、水溶性のインク受容層を設ける必要がないこととも相俟ち、その転写シールの量産効果にも優れる。
【0018】
又、両面粘着シートをなす粘着剤層と離型紙との剥離界面が、直交する方眼形態又は網形態の空気抜き用凹凸条として粗面化されているため、その離型紙の先行的な剥離により露出した粘着剤層を介して、上記粘着シートに未だ残っている透明な離型フィルムをプリント基材シートのトップコート層へ貼り合わせ押圧する際、その貼り合わせ面に滞留又は封じ込められる空気を、上記空気抜き用凹凸条の凹条部に沿って洩れなく抜き出すことができ、たとえ大きな転写シールであっても、波打ちや皺寄りなどがない全面的に密着した優美な貼り合わせ仕上がり状態を得られることとなる。
【0019】
しかも、その転写シールの標章は上記トナーから造形されており、表側から両面粘着シートの透明な離型フィルムによって被覆された状態にあるため、保管中に周縁部(所謂木口面)から水分を受けるも、上記標章の滲み・形崩れなどを生じるおそれがない。
【0020】
特に、請求項2の構成を採用するならば、ポリビニルアルコール(商品名:ポバール)から成る約3μmの極薄なアンダーコート層が、被写体の表面に対する転写シールの貼り付け転写使用時、僅かな水分の投与を受けて瞬時に溶解するため、その貼り付け転写作業性が向上する。
【0021】
他方、トップコート層をなすポリエチレンテレフタレートは、その約5μmの極薄な1層であっても、トナーの定着力(印刷特性)や両面粘着シートにおける粘着剤層の絶縁性、強靱性、耐熱性、寸法安定性、耐候性などに優れ、却ってその極薄の1層により、被写体の曲面や凹凸粗面へ馴染み良く屈曲変形できるため、その被写体の制約を受けることがなく、しかも透明であるため、これが被写体に貼り付けられた状態を、肉眼では容易に見ることができず、その結果標章だけをタトウの印象として、浮き彫り状態に表出させ得るのである。
【0022】
請求項3の構成を採用するならば、そのプリント基材シートのトップコート層へ混入した香料により、転写シールから芳香を発散させることができ、又同じくトップコート層へ混入した蓄光顔料が暗闇に発光し、その転写シールに興趣変化や付加価値を与え得る効果がある。
【0023】
更に、請求項4の構成を採用するならば、その剥離力の大小差によって、両面粘着シートの粘着剤層から離型紙を先に誤りなく剥離でき、その時には勿論のこと、転写シールが被写体へ貼り付け転写使用される時まで、残る離型フィルムをその粘着シートの粘着剤層から不慮に剥離されてしまわない状態として、安定良く確固に維持できる効果がある。
【0024】
他方、請求項5の転写使用法によれば、上記プリント基材シートと両面粘着シートとの2部品から作成した転写シールを、目的とする各種被写体の表面へ誰でも簡便にすばやく貼り付け作業することができ、その転写使用上の作業性に優れる。
【0025】
しかも、上記プリント基材シートの吸水紙が存在する方向(表側)から、ありふれた安全な水分を投与すれば、その吸水紙と水溶性アンダーコート層との2層が、トップコート層との境界面からすばやく円滑に剥離され、上記プリント基材シートの標章を被覆した状態に残存するトップコート層の1層は、透明のマスキングシートとして極薄であるため、被写体の表面が均斉なフラット面をなす場合には勿論のこと、図11〜13に示唆するような曲面であったり、凹凸粗面であったり、角張ったコーナー面であったりしても、これらの表面へ馴染み良く完全に密着した安定・確固な転写使用状態を保つことができ、その被写体の材質や形態などの制約を受けることがない。
【0026】
しかも、その極薄な1層のトップコート層により被覆された標章は、上記トナー(帯電粉インキ)から成るため、その被写体への貼り付け転写使用中において、人体の発汗や外界からの雨水、洗濯水、その他の水分を受けるも、滲み・形崩れしたり、太陽光に晒らされて褪色したりするおそれがなく、その標章だけを正画像のそれとして、透明なトップコート層を通じタトウの如き浮き彫り状態に透視できる効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面に基いて本発明を詳述すると、その本発明の転写シールを示した図1〜9において、(A)はプリンター記録シートとしての搬送特性を有する一定厚みのプリント基材シート、(B)はそのプリント基材シート(A)との対をなす一定厚みの両面粘着シートであり、このような予じめ別個独立する2部品から、需要者が希望のオリジナル(個性的)な標章(T)を備えた転写シール(S)として作成した上、目的とする各種被写体(M)の表面へ貼り付け転写使用できるようになっている。その標章(T)とは文字、図形、記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合を意味する。
【0028】
先ず、転写シール(S)のプリント基材シート(A)について言えば、これは例えばA4サイズの大きさ・形状として、図1、2のような合計3層の積層状態に作成準備されている。
【0029】
即ち、(10)は所謂吸い取り紙やその他の水を吸収する吸水紙であり、約5μm〜約0.5mmの厚みを有する。(11)はその吸水紙(10)の表面全体へ約3μmの厚みとして塗工されたアンダーコート層であり、ポリビニルアルコール(商品名:ポバール)やポリビニルピロリドン、その他の水溶性(高吸水性)ポリマーから成る。
【0030】
又、(12)は上記アンダーコート層(11)の表面全体へ約5μmの厚みとして塗工された透明なトップコート層であり、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリカーボネート、その他の各種熱可塑性ポリマーから成るが、その熱可塑性ポリマーのうちでも、特にポリエチレンテレフタレート(PET)を採用することが好ましい。
【0031】
ポリエチレンテレフタレートは吸水率や熱膨張係数が低く、そのトップコート層(12)として引裂き・衝撃・屈曲強度、耐熱性、耐候性、絶縁性、印刷特性(印字濃度・発色性・色再現性など)、その他の機械的・電気的性質に優れ、後述するトナー(帯電粉インク)の定着上最も有効な記録体となるからである。尚、このようなトップコート層(12)には各種の香料や蓄光顔料などの添加物を混入することにより、転写シール(S)に付加価値や興趣変化を与えても良い。
【0032】
上記プリント基材シート(A)は図1、2に示すような合計3層として、適当なこわさのある全体厚みに積層一体化されているため、そのトップコート層(12)へ表側から電子写真方式のカラーレーザープリンターやカラー静電複写機などにより、トナー(帯電粉インク)を加熱溶着させて、そのトナーから成る希望の標章(T)を焼き付けることができる。
【0033】
しかも、その標章(T)が例えば文字や記号である場合には、図6、7のような左右の反転する逆画像(13a)としてプリントされ、これを具備した転写シール(S)が追って被写体(M)の表面へ貼り付け転写使用された時、その逆画像(13a)の標章(T)を正画像(13b)のそれとして、表側から上記透明のトップコート層(12)を通じて正しく読むことができるようになっている。
【0034】
但し、上記標章(T)がその逆画像(13a)と正画像(13b)との区別を必要としない図形や模様などとして、プリントされる場合もあり得る。
【0035】
次に、両面粘着シート(B)は上記プリント基材シート(A)とほぼ同じ大きさと形状を備え、図3〜5から明白なように、その粘着剤層(14)の表面全体にはポリエチレンテレフタレートやその他の合成樹脂から成る透明な離型フィルム(15)が、同じく粘着剤層(14)の裏面全体にはその離型フィルム(15)と識別するための色彩を施されることにより透視不能な離型紙(16)が、各々貼り合わせ一体化された合計3層になっている。
【0036】
その場合、粘着剤層(14)としてはアクリル系粘着剤が使用されており、その厚みは約8〜12μm、離型フィルム(15)の厚みは約38μm、離型紙(16)の厚みは約0.5mmであるが、その離型フィルム(15)の裏面にはシリコン系化合物の離型剤層(17)が約2μmの厚みとして塗工されている一方、離型紙(16)の表面には同じく離型剤層(18)が約4μmの厚みとして塗工されており、その表側の離型フィルム(15)に比して、裏側の離型紙(16)を軽く剥離できるように、その剥離上の軽重差が与えられている。
【0037】
両面粘着シート(B)の粘着剤層(14)から裏側の離型紙(16)を先に剥離し、その剥離時には勿論のこと、その後転写シール(S)を被写体(M)へ貼り付け転写使用する時までは、その表側の離型フィルム(15)が安定良く確固な貼り合わせ状態を保てるように、その剥離力が大小に相違変化されているのである。
【0038】
しかも、上記粘着剤層(14)と離型紙(16)との剥離界面が、特に図4、5のような両面粘着シート(B)の縦横方向又は対角線方向に沿い直交する方眼形態(網形態)の空気抜き用凹凸条(19)として、意図的に粗面化されている。
【0039】
つまり、その方眼形態又は網形態の空気抜き用凹凸条(19)がエンボス加工された離型紙(16)の表面全体へ、上記粘着剤層(14)が凹凸条(19)と噛合する状態の均一な薄膜として塗工されているのである。これに対して、上記離型フィルム(15)と粘着剤層(14)との剥離界面は、単純なフラット面同士の全面密着状態に保たれており、その離型フィルム(15)の剥離力は上記のように大きい。
【0040】
茲に、両面粘着シート(B)における粘着剤層(14)と離型紙(16)との剥離界面を、空気抜き用の凹凸条(19)として粗面化した理由は、その離型紙(16)の剥離により露出した粘着剤層(14)を介して、両面粘着シート(B)に残存している離型フィルム(15)を上記プリント基材シート(A)のトップコート層(12)へ表側から貼り合わせる時、その貼り合わせ面に滞溜又は封じ込められる空気を、上記凹凸条(19)の凹条部(19a)からすばやく完全に抜き出すためである。
【0041】
図3、5のような両面粘着シート(B)における粘着剤層(14)と離型紙(16)との噛合した貼り合わせ状態から、その離型紙(16)が先に軽く剥離されると、上記粘着剤層(14)の裏面全体は図8のような凹凸条(19)として露出することになる。
【0042】
そして、引き続き両面粘着シート(B)の離型フィルム(15)が上記粘着剤層(14)により、プリント基材シート(A)のトップコート層(12)へ貼り合わされる時には、その貼り合わせ上の押圧力を受けた粘着剤層(14)が、扁平に圧縮変形することになるため、その貼り合わせ面に封じ込められる筈の空気は、粘着剤層(14)の圧縮変形に連れて、上記凹凸条(19)の凹条部(19a)に沿いすばやく確実に追い出され、上記両面粘着シート(B)の離型フィルム(15)とプリント基材シート(A)のトップコート層(12)とが、全面密着状態に貼り合わせ一体化されるのである。
【0043】
その場合、図3、4のような離型紙(16)だけの分割線(所謂ハーフカット)(20)を、その任意な1辺へ偏倚した位置に予じめ切り込んでおくならば、その分割線(20)から離型紙(16)の偏倚した小面積部分を先行的に剥離して、その露出した離型フィルム(15)の対応的な小面積部分をプリント基材シート(A)のトップコート層(12)へ貼り合わせ、同じく離型紙(16)の残存する大面積部分をその後分割線(20)から剥離して、その露出した離型フィルム(15)の対応的な大面積部分を、同じくプリント基材シート(A)のトップコート層(12)へ貼り合わせることにより、その貼り合わせ作業を便利良く正確な整合状態に行なえ、上記空気も一層円滑に洩れなく追い出せる利点がある。
【0044】
本発明の転写シール(S)は上記したようなプリント基材シート(A)と両面粘着シート(B)との2部品から成り、これらから転写シール(S)を作成するに当っては、次のとおり作業すれば良い。
【0045】
即ち、先ずプリント基材シート(A)の透明なトップコート層(12)へ、その表側から希望する標章(T)を図6、7のような左右が反転する逆画像(13a)として、電子写真方式を用いたレーザープリンターや静電複写機などによりプリントする。そうすれば、そのトナー(帯電粉インク)がトップコート層(12)へ瞬時に加熱溶着され、これから成る標章(T)の逆画像(13a)が確固に安定良く焼き付け定着されることとなり、その際プリント基材シート(A)の反り曲がるおそれはない。
【0046】
そこで、引き続き両面粘着シート(B)の離型紙(16)を図8のように剥離し、これにより裏面が露出した粘着剤層(14)を介して、その粘着シート(B)に未だ残存している透明の離型フィルム(15)を上記プリント基材シート(A)のトップコート層(12)へ、やはり表側から標章(T)の被覆状態に貼り合わせ一体化する。
【0047】
その貼り合わせ作業時には上記両面粘着シート(B)の離型フィルム(15)を、その裏面に付属している粘着剤層(14)の空気抜き用凹凸条(19)が延在する方向に沿って、その一端側から他端側へと摺り付ける如く押圧することにより、上記プリント基材シート(A)におけるトップコート層(12)との貼り合わせ面に空気が滞留又は封じ込められないように保つ。
【0048】
そうすれば、その両面粘着シート(B)の離型フィルム(15)とプリント基材シート(A)のトップコート層(12)とが、波打ちや皺寄りのない全面密着状態に貼り合わされる結果となり、茲に図9のような希望する標章(T)が透明の離型フィルム(15)により被覆された状態の転写シール(S)として仕上がるのである。
【0049】
その標章(T)の逆画像(13a)が上記離型フィルム(15)を通じて、表側から支障なく透視できることは言うまでもなく、又転写シール(S)としての保管中に、その標章(T)の汚損したり、水分を受けて滲み・形崩れしたり、褪色したりするおそれは全然ない。上記粘着剤層(14)と離型フィルム(15)との剥離力は大きいため、その離型フィルム(15)が不慮に剥離するおそれもない。
【0050】
更に、このような転写シール(S)を目的の被写体(M)へ貼り付け転写使用する当っては、その標章(T)の被覆状態にある両面粘着シート(B)の離型フィルム(15)も剥離して、その露出した粘着剤層(14)により、上記転写シール(S)のプリント基材シート(A)を図10、11のように被写体(M)の表面へ貼り付ける。
【0051】
そして、その貼り付けた結果としてプリント基材シート(A)の表側となる上記吸水紙(10)の存在方向(F)(図11の矢印参照)から、最後に所要量の水分を投与するのである。その投与は例えばありふれたスポンジやティッシュペーパーなどに少量の水分を含浸させ、これにより上記プリント基材シート(A)の吸水紙(10)が存在する方向(表側)から濡らす程度で足りる。
【0052】
そうすれば、図11と図12との比較から明白なように、上記プリント基材シート(A)における吸水紙(10)とアンダーコート層(11)との2層が水分を吸収して柔軟化又は溶融するため、そのアンダーコート層(11)と上記トップコート層(12)との境界面が剥離界面となって、ここからアンダーコート層(11)と吸水紙(10)との2層を滑る如く、すばやく確実に剥離することができ、被写体(M)の表面には転写シール(S)の標章(T)を被覆したトップコート層(12)だけが、貼り付け状態として残る結果になる。
【0053】
その最終的な被写体(M)への貼り付け転写使用状態は図12、13に示すとおりであり、上記プリント基材シート(A)のトップコート層(12)は透明をなすため、先の逆画像(13a)であった標章(T)を表側から正画像(13b)のそれとして、正しく読み取り透視できることになる。
【0054】
しかも、そのトップコート層(12)は極薄な1層であるに過ぎないため、被写体(M)の表面が均斉なフラット面のみならず、たとえ曲面や凹凸粗面などであっても、これに馴染み良く屈曲変形して密着一体化し、その透明なトップコート層(12)の貼り付け状態を肉眼で見ることさえも困難となり、あたかも標章(T)のみが転写されたタトウの印象を与え得るのである。
【0055】
更に、上記正画像(13b)の標章(T)は透明なトップコート層(12)の1層をマスキングシートとして、常時表側から被覆された保護状態に維持される結果、そのトナー(帯電粉インク)から造形されていることとも相俟って、使用中に表側から水分や摺擦力などを受けるも、決して消失したり、滲み・形崩れしたりするおそれがなく、耐候性や耐用性にも優れる。
【0056】
尚、人体の皮膚を被写体(M)とする場合に限っては、上記両面粘着シート(B)を使用せずに、その被写体(M)の皮膚へゴマ油やオリーブ油、椿油、その他の植物油を塗り付けた上、これを両面粘着シート(B)における粘着剤層(14)の代りとして、図6のような標章(T)がプリントされた状態にある転写シール(S)のプリント基材シート(A)を、引き続き被写体(M)の皮膚へ貼り付けても良い。そのプリント基材シート(A)の表側となる上記吸水紙(10)の存在方向(F)から、最終的に水分を投与して、アンダーコート層(11)と吸水紙(10)との2層を剥離することは言うまでもない。
【0057】
このような転写シール(S)の貼り付け転写使用法を採用するならば、万一アレルギー体質の皮膚についても、両面粘着シート(B)の粘着剤層(14)から受ける悪影響がなく、その化学物質ではない植物油により、人体の皮膚を安全に保てる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る転写シールのプリント基材シートを示す斜面図である。
【図2】図1の拡大断面図である。
【図3】本発明に係る転写シールの両面粘着シートを示す斜面図である。
【図4】その両面粘着シートの離型紙を抽出して示す斜面図である。
【図5】両面粘着シートの拡大断面図である。
【図6】プリント基材シートに対する標章のプリント状態を示す断面図である。
【図7】図6の平面図である。
【図8】離型紙が剥離された両面粘着シートの離型フィルムを、プリント基材シートへ貼り合わせる過程の断面図である。
【図9】図8に続く転写シールとしての仕上がり状態を示す断面図である。
【図10】被写体へ転写シールを貼り付ける過程の断面図である。
【図11】被写体へ転写シールを貼り付けた状態の断面図である。
【図12】図11からプリント基材シートの吸水紙とアンダーコート層を剥離した使用状態の断面図である。
【図13】図12の平面図である。
【符号の説明】
【0059】
(10)・吸水紙
(11)・アンダーコート層
(12)・トップコート層
(13a)・逆画像
(13b)・正画像
(14)・粘着剤層
(15)・離型フィルム
(16)・離型紙
(17)(18)・離型剤層
(19)・空気抜き用凹凸条
(19a)・凹条部
(20)・分割線
(A)・プリント基材シート
(B)・両面粘着シート
(M)・被写体
(S)・転写シール
(T)・標章

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水紙(10)の表面へ水溶性ポリマーのアンダーコート層(11)と熱可塑性ポリマーの透明なトップコート層(12)とが順次積層一体化された合計3層のプリント基材シート(A)と、
粘着剤層(14)の表面に透視可能な合成樹脂の離型フィルム(15)と、同じく裏面に透視不能な離型紙(16)とが貼り合わせ一体化され、且つその粘着剤層(14)と離型紙(16)との剥離界面が、直交する方眼形態又は網形態の空気抜き用凹凸条(19)として粗面化された両面粘着シート(B)とから成り、
上記プリント基材シート(A)のトップコート層(12)へ表側から希望の標章(T)を逆画像(13a)として、レーザープリンターや静電複写機などのトナーによりプリントすると共に、
上記離型紙(16)の剥離により露出した両面粘着シート(B)の粘着剤層(14)を介して、その粘着シート(B)に残っている離型フィルム(15)を上記プリント基材シート(A)のトップコート層(12)へ、その表側から上記標章(T)の被覆状態に貼り合わせ一体化したことを特徴とする転写シール。
【請求項2】
プリント基材シート(A)におけるアンダーコート層(11)の水溶性ポリマーをポリビニルアルコールとして、約3μmの厚みに塗工すると共に、トップコート層(12)の熱可塑性ポリマーをポリエチレンテレフタレートとして、約5μmの厚みに塗工したことを特徴とする請求項1記載の転写シール。
【請求項3】
プリント基材シート(A)のトップコート層(12)に香料や蓄光顔料、その他の各種添加物を混入させたことを特徴とする請求項1又は2記載の転写シール。
【請求項4】
両面粘着シート(B)における粘着剤層(14)と離型紙(16)との剥離力を、同じく粘着剤層(14)と離型フィルム(15)とのそれよりも小さく相違変化させたことを特徴とする請求項1又は2記載の転写シール。
【請求項5】
請求項1記載の転写シールを目的の被写体(M)へ貼り付け転写するに当り、その両面粘着シート(B)の離型フィルム(15)を剥離して、その露出した粘着剤層(14)によりプリント基材シート(A)を被写体(M)の表面へ貼り付けた後、
その貼り付けた結果としてプリント基材シート(A)の表側となる吸水紙(10)の存在方向から水分を投与することにより、その吸水紙(10)とアンダーコート層(11)との2層をトップコート層(12)との境界面から剥離して、未だ残存するトップコート層(12)だけの1層を通じて、逆画像(13a)の標章(T)を正画像(13b)のそれとして表側から透視できる状態に保つことを特徴とする転写シールの転写使用法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図7】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−49609(P2008−49609A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−229132(P2006−229132)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(396017176)ミラクル工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】