説明

転写ロール清掃装置および転写装置

【課題】微細な転写パターンが外周に形成されている転写ロールに付着している不要物を除去するときに、前記転写ロールの微細な転写パターンに傷がつくことを防止する。
【解決手段】外周に微細な転写パターン11が形成されている転写ロール9を、粘着剤43を用いて掃除するように構成されている転写ロール清掃装置5である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写ロール清掃装置および転写装置に係り、たとえば、外周に微細な転写パターンが形成されている転写ロールを清掃するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロール・ツー・ロールで、転写ロールに形成されている微細な転写パターンをフィルムに転写する構成の転写装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−220504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のロール・ツー・ロール方式の転写装置では、転写ロールの微細な転写パターンが形成されている部位に不要物が僅かに付着し、フィルムへの正確な転写ができない状態になるおそれがある。
【0005】
そこで、転写ロールに付着した不要物を、ブラシ等を用いてオペレータが除去するようにしている。しかし、不要物をブラシ等で除去する際に、転写ロールの微細な転写パターンが傷付いてしまうおそれがあるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、微細な転写パターンが外周に形成されている転写ロールに付着している不要物を除去するときに、前記転写ロールの微細な転写パターンに傷がつくことを防止することができる転写ロール清掃装置および転写装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、外周に微細な転写パターンが形成されている転写ロールを、粘着剤を用いて掃除するように構成されている転写ロール清掃装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、外周に微細な転写パターンが形成されている転写ロールを掃除する転写ロール清掃装置であって、粘着フィルムを巻くことによってロール状に形成されている繰り出しロールを設置する繰り出しロール設置部と、前記繰り出しロール設置部に設置された繰り出しロールから繰り出している粘着フィルムを、この粘着フィルムの粘着部が前記転写ロールに接するように、前記転写ロールと協働して挟み込む粘着フィルム用バックアップロールとを有する転写ロール清掃装置である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の転写ロール清掃装置において、前記微細な転写パターンは、前記転写ロールの一部に形成されており、前記粘着フィルム用バックアップロールは、前記転写ロールと協働して前記粘着フィルムを挟む位置である挟位置と、前記転写ロールから離れた位置である離反位置との間で移動自在になっており、前記転写ロールが回転したときにおける、前記微細な転写パターンが形成されている部位の位置を検出する微細転写パターン位置検出手段を有し、前記微細転写パターン位置検出手段の検出結果に応じて、前記粘着フィルム用バックアップロールが前記挟位置に位置するように構成されている転写ロール清掃装置である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、ロール・ツー・ロールで搬送されるシート状の基材に、前記転写ロールに形成されている微細な転写パターンを転写する転写装置本体と、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の転写ロール清掃装置とを有する転写装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、微細な転写パターンが外周に形成されている転写ロールに付着している不要物を除去するときに、前記転写ロールの微細な転写パターンに傷がつくことを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る転写装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る清掃装置の動作の概要を示す図である。
【図3】転写ロールの変形例を示す図である。
【図4】転写ロールの回転角度検出センサの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係る転写装置1は、転写装置本体3と転写ロール清掃装置5とを備えて構成されている。
【0014】
転写装置本体3は、ロール・ツー・ロール(Roll to Roll)で搬送されるシート状の基材7に、転写ロール(グラビアロール)9に形成されている微細な凹凸で形成された転写パターン11を転写し、基材7の厚さ方向の一方の面に、微細な凹凸(転写パターン11に対して反転している微細な凹凸)を形成する装置である。
【0015】
転写装置本体3は、ベース体13と転写前基材設置部(図示せず)と転写後基材巻き取り部(図示せず)と塗工ノズル15と転写用バックアップロール17とガイドロール19と微細な転写パターン11が形成されている転写ロール9とを備えて構成されている。なお、微細な転写パターン11は、転写ロール9の外周を直接機械加工等することで形成されているが、微細な転写パターン11が形成されているシート状のモールドを転写ロール9の本体外周に一体的に貼り付けた構成であってもよい。
【0016】
転写前基材設置部には、転写前繰り出しロール(図示せず)が設置されるようになっている。転写前繰り出しロールは、所定の幅で長く形成されたシート状の基材7を、円柱状もしくは円筒状の芯材の外周に重ねて巻き付ける(シート状の基材7がこの厚さ方向でお互いに重なるように巻き付ける)ことによって、円柱状もしくは円筒状に形成されている。
【0017】
転写前基材設置部に設置された転写前繰り出しロールは、この軸を回転中心にしてベース体13に対して回転し、シート状の基材7が、転写前繰り出しロールから繰り出されるようになっている。
【0018】
転写後基材巻き取り部では、この転写後基材巻き取り部に設置された円柱状もしくは円筒状の芯材(図示せず)が、この軸を回転中心にしてベース体13に対して回転するようになっている。そして、転写前基材設置部に設置された転写前繰り出しロールから繰り出されているシート状の基材7を、転写後基材巻き取り部に設置されている芯材の外周に重ねて巻き付ける(シート状の基材7がこの厚さ方向でお互いに重なるように巻き付ける)ことによって、円柱状もしくは円筒状の転写後巻き取りロール(図示せず)が生成されるようになっている。
【0019】
なお、図示していない転写前基材設置部や転写前繰り出しロールは、図1の左側に配置されているものであり、図示していない転写後基材巻き取り部や転写後巻き取りロールは、図1の右側に配置されているものである。
【0020】
転写前繰り出しロールと転写後巻き取りロールとの間で延伸しているシート状の基材7は、転写ロール9と転写用バックアップロール17とガイドロール19とに巻き掛けられ、転写ロール9と転写用バックアップロール17とガイドロール19とが同期して回転することによって、シート状の基材7が所定の速度で、図1で示す矢印A10,A11の方向に移動するようになっている。なお、図1の紙面に直交する方向が、シート状の基材7の幅方向になっている。
【0021】
図1で示すシート状の基材(転写前繰り出しロールと転写後巻き取りロールとの間で延伸しているシート状の基材)7には、この移動方向(シート状基材7の長手方向;シート状基材7の延伸方向)で、所定の張力がかかっている。
【0022】
さらに説明すると、転写用バックアップロール17は、この軸(図1の紙面に直交する方向に延びている軸)C2を回転中心にしてベース体13に対し矢印A2で示すように回転自在になっており、転写ロール9も、この軸(図1の紙面に直交する方向に延びている軸)C1を回転中心にし矢印A1で示すようにベース体13に対して回転自在になっており、ガイドロール19も、(図1の紙面に直交する方向に延びている軸)C3を回転中心にし矢印A3で示すようにベース体13に対して回転自在になっている。前述した図示していない転写前繰り出しロールや転写後巻き取りロールの回転中心軸は、各軸C1,C2,C3に対して平行に延伸している。
【0023】
そして、転写後基材巻き取り部(転写後巻き取りロール)が、サーボモータ等のアクチュエータの回転出力軸に接続されて回転し、シート状の基材7を巻き取り、シート状の基材7が、矢印A10,A11で示すような移動をするようになっている。
【0024】
また、転写前基材設置部(転写前繰り出しロール)は、パウダークラッチ等のトルク制御クラッチを介してモータ等のアクチュエータの回転出力軸に連結されている。このアクチュエータの回転出力軸は、逆回転するようになっている(シート状の基材7を転写前繰り出しロールで巻き取る方向に回転するようになっている)。そして、トルク制御クラッチのトルクが適宜な値に設定されていることで、図1で示すシート状の基材7に所定の張力がかけられて、シート状の基材7が弛むことなく矢印A10,A11で示す方向に(転写前繰り出しロールから転写後巻き取りロールに)移動するようになっている。
【0025】
転写前繰り出しロールから繰り出したシート状の基材7は、まず、転写用バックアップロール17に巻き掛けられる。そして、転写用バックアップロール17の回転とともに移動するようになっている。転写用バックアップロール17は、シート状の基材7の移動にしたがって回転するようになっている(連れ回りするようになっている)が、転写用バックアップロール17を転写用バックアップロール専用のアクチュエータ(たとえばサーボモータ)で回転させてもよい。
【0026】
転写用バックアップロール17に巻き掛けられた後に、シート状の基材7は、転写用バックアップロール17と転写ロール9とで所定の圧力で挟み込まれ、その後、転写ロール9に巻き掛けられる。そして、転写ロール9の回転とともに移動するようになっている。なお、転写ロール9は、転写用バックアップロール17を転写用バックアップロール専用のアクチュエータ(たとえばサーボモータ)で回転するようになっているが、シート状の基材7の移動にしたがって回転するようになっていてもよい(連れ回りするようになっていてもよい)。
【0027】
転写ロール9に巻き掛けられた後に、シート状の基材7は、転写ロール9から離れた後ガイドロール19に巻き掛けられ、ガイドロール19の回転とともに移動するようになっている。
【0028】
なお、シート状の基材7が移動するとき、転写用バックアップロール17とシート状の基材7の間、転写ロール9とシート状の基材7の間およびガイドロール19とシート状の基材7の間には、滑りが発生しないようになっている。
【0029】
次に、シート状の基材7への微細な転写パターン11の転写について詳しく説明する。
【0030】
転写ロール9の、微細な転写パターン11が形成されている部位の形状は、たとえば、矩形状の平面を、お互いが対向する一対の辺が円弧(転写ロール9の外周の円弧)になるように湾曲させた形状になっている。
【0031】
図1では、微細な転写パターン11が形成されている部位が、たとえば、転写ロール9の周方向で所定の間隔をあけて2箇所に設けられている。また、2つの微細な転写パターン11が形成されている部位は、転写ロール9の中心軸C1に対して点対称に設けられている。
【0032】
なお、微細な転写パターン11が形成されている部位が転写ロール9の周方向で所定の間隔をあけて3箇所以上の複数箇所に設けられていてもよいし、図3で示すように1箇所に設けられていてもよい。
【0033】
微細な転写パターン11が形成されている部位が1箇所にしか設けられていない場合(図3(a)参照)には、たとえば、微細な転写パターン11が形成されている部位の面積が、微細な転写パターンが形成されていない部位の面積より大きくなっているものとする。
【0034】
転写ロール9の微細な転写パターン11は、たとえば、シート状の基材7の厚さ方向の一方の面に薄膜状に設けられた紫外線硬化樹脂21等の感光性材料に転写されるようになっている。
【0035】
紫外線硬化樹脂21は、塗工ノズル15によって、シート状の基材7に設置されるようになっている。シート状の基材7に設置された流動体状の紫外線硬化樹脂21は、シート状の基材7とともに、転写ロール9と転写用バックアップロール17とで挟まれる。そして、挟まれたときに、紫外線硬化樹脂21とシート状の基材7とが転写ロール9と転写用バックアップロール17とで押圧され、紫外線硬化樹脂21が微細な転写パターン11に接触し、空隙が存在しないようにして、紫外線硬化樹脂21が微細な転写パターン11に入り込むようになっている。
【0036】
転写ロール9と転写用バックアップロール17とで挟まれた後、紫外線硬化樹脂21が微細な転写パターン11に接触している状態で、シート状の基材7が転写ロール9に巻き掛けられて移動するようになっている。このときに、紫外線発生装置23が発した紫外線25が、シート状の基材(紫外線が透過するPET樹脂等の合成樹脂で構成されている基材)7を通って紫外線硬化樹脂21に照射され、紫外線硬化樹脂21が硬化するようになっている。
【0037】
この後、転写ロール9と、微細な転写パターン11が転写された紫外線硬化樹脂21を備えたシート状の基材7が、転写ロール9から離れ、ガイドロール19でガイドされ、転写後巻き取りロールで巻き取られるようになっている。
【0038】
ところで、微細な転写パターン11が形成されている部位は、上述したように、転写ロール9の外周の周方向で間隔をあけて設けられている。したがって、塗工ノズル15で連続的に紫外線硬化樹脂21をシート状の基材7に設けると、紫外線硬化樹脂21が無駄になってしまう。そこで、紫外線硬化樹脂21を塗工ノズル15から間歇的に供給し、上述した無駄を排除している。すなわち、シート状の基材7の、微細な転写パターン11と接する部位にのみ、もしくは、微細な転写パターン11と接する部位とこの近傍の部位にのみ、紫外線硬化樹脂21を供給するようにしている。
【0039】
詳しく説明すると、ロータリエンコーダ27等の検出手段(転写ロール9の回転角度検出手段;転写ロール9が回転したときにおける、微細な転写パターン11が形成されている部位の位置を検出する微細転写パターン位置検出手段)で、微細な転写パターン11の位置を検出する。そして、この検出結果に応じて、塗工ノズル15でも紫外線硬化樹脂21を供給している(塗工ノズル15での紫外線硬化樹脂21を供給するタイミングを決めている)。
【0040】
たとえば、図1で示すように、転写ロール9の外周における微細な転写パターン11が形成されている部位の長さをL1とし、転写パターン11が形成されていない部位の長さをL2とし、転写ロール9と転写用バックアップロール17とでシート状の基材7を挟み込む点(挟み込み点)と、次にシート状の基材7の挟み込みを行う微細な転写パターン11の部位との間の道のりをL3とし、上記挟み込み点と、次に挟み込まれる紫外線硬化樹脂21との間の道のりをL4とし、シート状の基材7に設けられた紫外線硬化樹脂21の長さをL5とし、シート状の基材7に設けられた各紫外線硬化樹脂21の間隔をL6とする。
【0041】
この場合において、「L1=L5、L2=L6、L3=L4」となるように、塗工ノズル15での紫外線硬化樹脂21の供給がなされるようになっている。
【0042】
なお、図4で示すように、ロータリエンコーダ27に代えて、転写ロール9の外周部にセンサ29を設けて、転写ロール9が回転したときにおける、微細な転写パターン11が形成されている部位の位置を検出してもよい。センサ29は、転写ロール9の外周面にお蹴る光の反射率の差で、微細な転写パターン11が形成されている部位と、微細な転写パターン11が形成されていない部位との検出するようになっているが、転写ロール9の外周の一部に予めマーキングとしておき、このマーキングをセンサ29で検出することにより、微細な転写パターン11が形成されている部位等の位置を検出してもよい。
【0043】
なお、紫外線硬化樹脂21が間隔をあけて設けられていることに合わせて、紫外線発生装置23も、紫外線25を間歇的に発生するよになっていることが望ましい。
【0044】
次に、転写ロール清掃装置5について詳しく説明する。
【0045】
転写ロール清掃装置5は、外周に微細な凹凸状の転写パターン11が形成されている円柱状もしくは円筒状の転写ロール9を掃除する装置であり、たとえば、転写パターン11が形成されている部位とこの近傍の部位とに付着している不要物(紫外線硬化樹脂21のカスや、空気中にごく僅かに存在していた微細なチリ等)を除去することによって、転写ロール9を掃除する装置である。
【0046】
転写ロール清掃装置5は、繰り出しロール設置部31と粘着フィルム巻き取り部33と粘着フィルム用バックアップロール35とを備えて構成されている。
【0047】
繰り出しロール設置部31には、繰り出しロール39が設置されるようになっている。繰り出しロール39は、粘着フィルム37を巻くことによってロール状(円柱状もしくは円筒状)に形成されている。
【0048】
詳しく説明すると、繰り出しロール39は、使用前の粘着フィルム37を、円柱状もしくは円筒状の芯材45の外周に重ねて巻き付けることによって、円柱状もしくは円筒状に形成されている。使用前の粘着フィルム37では、所定の幅で長く形成されたシート状の基材41の厚さ方向の一方の面に層状の粘着部(粘着剤)43が設けられている。
【0049】
なお、粘着フィルム37の幅(図1の紙面に直交する方向の寸法)は、たとえば、芯材45の長さ(芯材45の軸C4の延伸方向の寸法;図1の紙面に直交する方向の寸法)よりも小さくなっており、粘着フィルム37の幅方向(芯材45の長さ方向)で、粘着フィルム37の中心の位置と芯材45の中心の位置とがお互いに一致している。
【0050】
繰り出しロール設置部31には、繰り出しロール39の芯材45が着脱自在に設置される芯材設置部材(図示せず)が設けられており、この芯材設置部材に繰り出しロール39の芯材45が一体的に設置されることによって、繰り出しロール設置部31に繰り出しロール39が一体的に設置されるようになっている。
【0051】
繰り出しロール設置部31の芯材設置部材は、転写ロール清掃装置のベース体47(図2、図3参照)に対して回転自在になっている。したがって、繰り出しロール設置部31に設置された繰り出しロール39は、この軸(図1、図2、図3の紙面に直交する方向に延伸している軸)C4を中心にして、回転自在になっており、粘着フィルム37がシート状になって繰り出すときに、繰り出しロール39が矢印A4の方向に回転するようになっている。
【0052】
粘着フィルム巻き取り部33では、繰り出しロール設置部31に設置された繰り出しロール39から繰り出している粘着フィルム37が巻き取られてロール状に形成されるようになっている。
【0053】
詳しく説明すると、粘着フィルム巻き取り部33には、円柱状もしくは円筒状の芯材49を設置するための芯材設置部材(図示せず)が設けられている。粘着フィルム巻き取り部33の芯材は、繰り出しロール39から繰り出している粘着フィルム37を巻き取って、粘着フィルム37をロール状に形成するためのものである(巻き取りロール51を形成するためのものである)。
【0054】
また、粘着フィルム巻き取り部33の芯材設置部材に巻き取りロール51の芯材49が一体的また着脱自在に設置されるようになっている。
【0055】
粘着フィルム巻き取り部33の芯材設置部材は、転写ロール清掃装置5のベース体47に対して回転自在になっている。したがって、粘着フィルム巻き取り部33に設置された巻き取りロール51の芯材49は、この軸(図1、図2、図3の紙面に直交する方向に延伸している軸)C6を中心にして回転自在になっている。そして、巻き取りロール51の芯材49の矢印A6方向への回転によって、粘着フィルム37が芯材49の外周に巻き付けて巻き取られ、巻き取りロール51が形成されるようになっている。なお、巻き取りロール51は、繰り出しロール39とほぼ同様の形態になる。
【0056】
円柱状もしくは円筒状の粘着フィルム用バックアップロール35は、繰り出しロール設置部31に設置された繰り出しロール39から繰り出している粘着フィルム37(繰り出しロール設置部31に設置された繰り出しロール39と粘着フィルム巻き取り部33の巻き取りロール51との間に存在しているシート状の粘着フィルム37)を、この粘着フィルム37の粘着部43が転写ロール9に接するように、転写ロール9と協働して挟み込むようになっている。
【0057】
なお、粘着フィルム用バックアップロール35には、繰り出しロール設置部31に設置された繰り出しロール39から繰り出している粘着フィルム37が巻き掛けられるようになっている。
【0058】
転写ロール9は、前述したように、転写装置1のベース体13に対して、軸C1を中心にして回転自在になっている。粘着フィルム用バックアップロール35は、転写ロール清掃装置のベース体47に対して、軸C5を中心にして回転自在になっている。
【0059】
そして、転写ロール9と粘着フィルム用バックアップロール35とで粘着フィルム37を挟んでいる状態で転写ロール9が回転すると、粘着フィルム用バックアップロール35も転写ロール9と同期して回転するようになっている。
【0060】
すなわち、転写ロール9の外周における周速と粘着フィルム用バックアップロール35の周速とがお互いに等しくなっている。これにより、粘着フィルム37と転写ロール9との間、粘着フィルム37と粘着フィルム用バックアップロール35との間には、滑りが発生しないようになっている。
【0061】
粘着フィルム用バックアップロール35は、粘着フィルム37の移動(巻き取りロールでの巻き取り速度等;転写ロール9等の回転速度)に従って回転(連れ回りで回転)するようになっているが、粘着フィルム用バックアップロール35を回転するためのアクチュエータ(たとえばサーボモータ)を別途設けて、粘着フィルム用バックアップロール35を回転させてもよい。
【0062】
また、上述したように、繰り出しロール39が矢印A4の方向に回転し、巻き取りロール51の芯材49が矢印A6の方向に回転し、粘着フィルム用バックアップロール35が矢印A5の方向に回転することにより、粘着フィルムが図1や図3の矢印A7,A8で示す方向に移動するようになっている。
【0063】
ところで、粘着フィルム37の幅(図1、図2、図3の紙面に直交する方向の寸法)は、粘着フィルム用バックアップロール35の長さ(粘着フィルム用バックアップロール35の軸C5の延伸方向の寸法;図1の紙面に直交する方向の寸法)よりも小さくなっており、粘着フィルム37の幅方向で、粘着フィルム37の中心の位置と粘着フィルム用バックアップロール35の中心の位置とがお互いに一致している。
【0064】
また、粘着フィルム37の幅(図1の紙面に直交する方向の寸法)は、転写ロール9の長さ(転写ロール9の軸C1の延伸方向の寸法)よりも小さくなっており、粘着フィルム37の幅方向で、粘着フィルム37の中心の位置と転写ロール9の中心の位置とがお互いに一致している。
【0065】
さらに、粘着フィルム37の幅(図1の紙面に直交する方向の寸法)は、転写ロール9の微細な転写パターン11が形成されている部位の長さ(転写ロール9の軸C1の延伸方向の寸法)よりも大きくなっている。
【0066】
そして、転写ロール9と粘着フィルム用バックアップロール35とが粘着フィルム37を挟み込み同期して回転することにより、粘着フィルム37の粘着剤43が設けられている面が、転写ロール9の微細な転写パターン11が形成されている部位に一時的に貼り付き、転写ロール9の微細な転写パターン11が形成されている部位に付着している不要物を粘着剤43にくっつけて除去し、転写ロール9の微細な転写パターン11が形成されている部位を清掃するようになっている。
【0067】
なお、転写ロール9の微細な転写パターン11が形成されている部位に貼り付いている粘着フィルム37の部位の形状は、図1の紙面に直交している方向に延びている直線状、もしくは、図1の紙面に直交している方向に長い矩形状(幅の狭い矩形状)の面になっている。また、紫外線硬化樹脂21等の種類に応じて粘着剤43の種類を適宜変更し、転写ロール9に付着している不要物を、粘着剤43ではがし取りやすくすることが望ましい。
【0068】
また、転写ロール清掃装置5には、繰り出しロール設置部31に設置された繰り出しロール39と、粘着フィルム巻き取り部33の巻き取りロール51との間で延伸している(繰り出している)粘着フィルム37に張力を付与する張力付与手段53が設けられており、これにより、繰り出しロール設置部31に設置された繰り出しロール39と、粘着フィルム巻き取り部33の巻き取りロール51との間で延伸している粘着フィルム37には、弛みが発生しないようになっている。
【0069】
ここで、張力付与手段53について例を掲げて詳しく説明する。繰り出しロール設置部31に設置されている繰り出しロール39は、パウダークラッチ等のトルク制御クラッチを介してモータ等のアクチュエータの回転出力軸に連結されている。
【0070】
粘着フィルム巻き取り部33に設置されている巻き取りロール51(芯材49)は、サーボモータ等のアクチュエータの回転出力軸にされて回転するようになっている。
【0071】
そして、繰り出しロール設置部31に設置された繰り出しロール39と、粘着フィルム巻き取り部33の巻き取りロール51との間で延伸している粘着フィルム37との間で延出しているシート状の粘着フィルム37を移動させる場合には、繰り出しロール設置部31のモータを逆回転させておき(粘着フィルム37を繰り出しロール39で巻き取るようにモータを回転させておき)、パウダークラッチのトルクを所定の値T1にしておき、粘着フィルム巻き取り部33のサーボモータの回転出力軸を、巻き取りロール51で粘着フィルム37を巻き取る方向に所定のトルクT2で所定の回転角度だけ回転する。この場合において、繰り出しロール設置部31に設置された繰り出しロール39の半径を「R1」とし、粘着フィルム巻き取り部33の巻き取りロール51の半径を「R2」とすると、「T1/R1<T2/R2」になっている。これにより、所定の張力F1(F1=T2/R2−T1/R1)を保って、粘着フィルム37が繰り出しロール39から巻き取りロール51に移動するようになっている。
【0072】
なお、繰り出しロール設置部31に設置されている繰り出しロール39を、パウダークラッチを介して固定軸に設置する構成であってもよい。
【0073】
また、粘着フィルム37が移動しておらず、繰り出しロール設置部31と粘着フィルム巻き取り部33との間で延伸している粘着フィルム37がその位置を維持している状態では、粘着フィルム巻き取り部33のサーボモータの回転出力軸は、所定の保持トルクで停止している。また、繰り出しロール設置部31のモータとパウダークラッチとで、平板状の粘着フィルム37が所定の張力を得ている。
【0074】
ところで、前述したように、微細な転写パターン11は、転写ロール9の一部に形成されている。粘着フィルム用バックアップロール35は、転写ロール9と協働して粘着フィルム37を挟む位置である挟位置PS1と、転写ロール9から離れた位置である離反位置PS2(この位置PS2でも、粘着フィルム37は、粘着フィルム用バックアップロール35に巻き掛けられている。)との間で移動自在になっている。
【0075】
また、前述したように、転写ロール清掃装置5には、転写ロール9が回転したときにおける、微細な転写パターン11が形成されている部位の位置を検出する微細転写パターン位置検出手段(たとえば、ロータリエンコーダ27)が設けられている。
【0076】
そして、微細転写パターン位置検出手段の検出結果に応じて、粘着フィルム用バックアップロール35が挟位置PS1に位置し、転写ロール9と協働して粘着フィルム37の挟み込み(押圧力をもった挟み込み)をするように構成されている。
【0077】
すなわち、微細転写パターン位置検出手段で、微細な転写パターン11が形成されている部位が粘着フィルム用バックアップロール35と協働して粘着フィルム37を挟み込める位置に回転してきたことを検出したときに、粘着フィルム用バックアップロール35が挟位置PS1に位置し、粘着フィルム用バックアップロール35と転写ロール9とが協働して粘着フィルム37に挟み込むよううに構成されている。
【0078】
また、微細転写パターン位置検出手段で、転写ロール9の微細な転写パターンが形成されている部位が粘着フィルム用バックアップロール35と協働して粘着フィルム37を挟み込むことができない位置に回転してきたことを検出したときには、粘着フィルム用バックアップロール35が離反位置PS2に位置するように構成されている。換言すれば、微細転写パターン位置検出手段で、転写ロール9の微細な転写パターンが形成されていないい部位が粘着フィルム用バックアップロール35と協働して粘着フィルム37を挟み込むことができなる位置に回転してきたことを検出したときには、粘着フィルム用バックアップロール35が離反位置PS2に位置するように構成されている。
【0079】
そして、転写ロール9が一定の速度で回転しているにもかかわらず、繰り出しロール設置部31に設置されている繰り出しロール39と、粘着フィルム用バックアップロール35と、粘着フィルム巻き取り部33の巻き取りロール51とが、間歇的に回転するようになっている。すなわち、粘着フィルム用バックアップロール35が挟位置PS1に位置して、転写ロール9と協働して粘着フィルム37を挟んだときにのみ、繰り出しロール設置部31に設置されている繰り出しロール39と、粘着フィルム用バックアップロール35と、粘着フィルム巻き取り部33の巻き取りロール51とが回転し、粘着フィルム37が繰り出しロール39から巻き取りロール51に向かって移動するようになっている。
【0080】
ここで、粘着フィルム用バックアップロール35を移動する構成について詳しく説明する。
【0081】
繰り出しロール39の芯材45の芯材設置部材は、軸C4を回転中心にして転写ロール清掃装置5ベース体47に回転自在に設けられている。巻き取りロール51の芯材49の芯材設置部材も、軸C6を回転中心にして転写ロール清掃装置のベース体47に回転自在に設けられている。粘着フィルム用バックアップロール35も、軸C5を回転中心にして転写ロール清掃装置のベース体47に回転自在に設けられている。
【0082】
転写ロール清掃装置のベース体47は図示しないリニアガイドベアリングを介して、転写装置1のベース体13に移動自在に設けられており、図示しないシリンダ等のアクチュエータによって移動するようになっている。そして、粘着フィルム繰り出しロール39が、挟位置PS1と離反位置PS2との間を移動するようになっている。このときに、繰り出しロール39の芯材45の芯材設置部材、巻き取りロール51の芯材49の芯材設置部材も、粘着フィルム繰り出しロール39とともに移動するようになっている。
【0083】
なお、粘着フィルム繰り出しロール39が離反位置PS2に位置しているときにおける粘着フィルム繰り出しロール39と転写ロール9との間の距離は、たとえば、2mm〜5mm程度になっている。
【0084】
なお、上記構成では、繰り出しロール39の芯材45の芯材設置部材と巻き取りロール51の芯材49の芯材設置部材と粘着フィルム繰り出しロール39とが、転写ロール清掃装置のベース体47の移動によっていっしょに移動するようになっているが、粘着フィルム繰り出しロール39のみが、挟位置PS1と離反位置PS2との間で移動するように構成されていてもよい。この場合には、繰り出しロール39の芯材45の芯材設置部材と巻き取りロール51の芯材49の芯材設置部材とは、転写装置1のベース体13に回転自在に設けられているものとする。また、粘着フィルム繰り出しロール39と繰り出しロール39との距離が変化するので、粘着フィルム繰り出しロール39に移動に伴って、繰り出しロール39等から粘着フィルム37が適宜繰り出されるようになっている。
【0085】
次に、転写装置1の動作について説明する。
【0086】
初期状態として、図示しない制御装置の制御の下、シート状の基材7が所定の速度で、図1に矢印A10,A11で示す方向に移動しており、塗工ノズル15がロータリエンコーダ27の検出結果に応じて、流動体状の紫外線硬化樹脂21をシート状の基材7に間歇的に供給しているものとする。
【0087】
上記初期状態において、転写ロール9の回転角度が、微細な転写パターン11が形成されている部位が粘着フィルム用バックアップロール35と協働して粘着フィルム37を挟み込むことができない回転角度になっていることを、ロータリエンコーダ27が検出したきには、図2(a)で示すように、粘着フィルム37の移動(繰り出しロール39から巻き取りロール51への移動)を停止し、粘着フィルム用バックアップロール35を離反位置PS2に位置させておく。
【0088】
また、上記初期状態において、転写ロール9の回転角度が、微細な転写パターン11が形成されている部位が粘着フィルム用バックアップロール35と協働して粘着フィルム37を挟み込むことができる回転角度になっていることを、ロータリエンコーダ27が検出したきには、図2(b)で示すように、粘着フィルム37を移動(繰り出しロール39から巻き取りロール51への移動)し、粘着フィルム用バックアップロール35を挟位置PS1に位置させて、粘着フィルム37で転写ロール9の微細な転写パターンが形成されている部位を清掃する。
【0089】
なお、転写ロール9において、図3(b)で示すように、転写ロール9の周方向で継ぎ目無く微細な転写パターン11が形成されていてもよい。この場合には、転写装置1が稼動している場合、粘着フィルム用バックアップロール35が常に挟位置PS1に位置し、粘着フィルム37で転写ロール9の掃除をしているものとする。
【0090】
転写装置1によれば、粘着剤43を用いて転写ロール9を掃除しているので、転写ロール9に局部的に大きな力が加わることがなくなり、転写ロール9に形成されている微細な転写パターン11が傷付くことが無くなる。また、転写ロール9から剥がれた不要物が、粘着剤43にくっつき、空気中に飛散することがなくなり、転写装置1が設置されている環境をクリーンな状態に維持することができる。
【0091】
また、転写装置1によれば、繰り出しロール設置部31に設置された繰り出しロール39から繰り出している粘着フィルム37を、転写ロール9と同期して回転する粘着フィルム用バックアップロール35が、転写ロール9と協働して挟み込んで転写ロール9の掃除をするので、転写装置1の稼動を継続したままで転写ロール9の掃除を効率良く行うことができる。
【0092】
また、転写装置1によれば、たとえば、転写ロール9が1回転する毎に微細な転写パターンが清掃されるので、時間の経過によって不要物が転写ロールの強く貼り付く前に転写ロール9の清掃をすることになり(不要物を転写ロール9から無理に引き剥がすことがなくなり)、転写ロール9が破損等することを防止することができる。
【0093】
また、転写装置1によれば、粘着フィルム37で簡潔的に転写ロール9を清掃するので、粘着フィルム37の無駄な使用を無くすることができる。なお、上記説明では、転写ロール9が1回転する毎に(1回の転写毎に)、転写ロール清掃装置5で転写ロール9を清掃しているが、転写ロール9が複数回回転する毎に(複数回の転写毎に)、転写ロール清掃装置5で転写ロール9を清掃するようにしてもよい。
【0094】
なお、上述した転写ロール清掃装置5は、外周に微細な転写パターンが形成されている転写ロールを、粘着剤を用いて掃除する転写ロール清掃装置の例である。この転写ロール清掃装置では、粘着フィルムを転写ロールの微細な転写パターンが形成されている部位に貼り付けた後に剥がすことによって転写ロールを掃除する構成になっている。
【0095】
粘着フィルム37は、前述したように、シート状の基材の厚さ方向の少なくとも一方の面に層状の粘着剤が設けられて構成されている。そして、転写ロール清掃装置では、この粘着フィルムの粘着剤が転写ロールの少なくとも転写パターンが形成されている部位に貼り付くように貼り付け、この貼り付け後に剥がすことで、転写ロールの微細な転写パターンに付着している不要物を粘着フィルムの粘着剤にくっつけることによって掃除するようになっている。
【0096】
なお、粘着フィルムを転写ロールの微細な転写パターンが形成されている部位に貼り付け剥がす場合、粘着フィルムの粘着剤が設けられている面の面内方向および微細な転写パターンが形成されている部位の面内方向で、微細な転写パターンが形成されている部位に対して粘着フィルムが移動しないようになっている。すなわち、前記面内方向では、転写ロールに対する粘着フィルムの位置ずれが発生しないようになっている。
【符号の説明】
【0097】
1 転写装置
3 転写装置本体
5 転写ロール清掃装置
9 転写ロール
11 微細な転写パターン
27 ロータリエンコーダ(微細転写パターン位置検出手段)
31 繰り出しロール設置部
35 バックアップロール
37 粘着フィルム
39 繰り出しロール
43 粘着剤
PS1 挟位置
PS2 離反位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に微細な転写パターンが形成されている転写ロールを、粘着剤を用いて掃除するように構成されていることを特徴とする転写ロール清掃装置。
【請求項2】
外周に微細な転写パターンが形成されている転写ロールを掃除する転写ロール清掃装置であって、
粘着フィルムを巻くことによってロール状に形成されている繰り出しロールを設置する繰り出しロール設置部と、
前記繰り出しロール設置部に設置された繰り出しロールから繰り出している粘着フィルムを、この粘着フィルムの粘着部が前記転写ロールに接するように、前記転写ロールと協働して挟み込む粘着フィルム用バックアップロールと、
を有することを特徴とする転写ロール清掃装置。
【請求項3】
請求項2に記載の転写ロール清掃装置において、
前記微細な転写パターンは、前記転写ロールの一部に形成されており、
前記粘着フィルム用バックアップロールは、前記転写ロールと協働して前記粘着フィルムを挟む位置である挟位置と、前記転写ロールから離れた位置である離反位置との間で移動自在になっており、
前記転写ロールが回転したときにおける、前記微細な転写パターンが形成されている部位の位置を検出する微細転写パターン位置検出手段を有し、
前記微細転写パターン位置検出手段の検出結果に応じて、前記粘着フィルム用バックアップロールが前記挟位置に位置するように構成されていることを特徴とする転写ロール清掃装置。
【請求項4】
ロール・ツー・ロールで搬送されるシート状の基材に、前記転写ロールに形成されている微細な転写パターンを転写する転写装置本体と、
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の転写ロール清掃装置と、
を有することを特徴とする転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−91321(P2012−91321A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238101(P2010−238101)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】