説明

転写後レベルでの核酸発現調節のための方法および組成物

本発明は、a)対象の異種ヌクレオチド配列をコードする少なくも1つの第一ヌクレオチド配列;およびb)少なくとも2つの第二の異種ヌクレオチド配列を含む、単離された核酸を提供し、前記第二の異種ヌクレオチド配列は、各々、i)第一イントロンを規定するスプライス要素の第一セット(前記第一イントロンは、スプライス要素の第二セットに活性が不在であるとき、生物学的機能を付与する第一RNA分子を産生させるようにスプライシングすることによって除去される);およびii)前記第一イントロンとは異なる1つ以上のイントロンを規定するスプライス要素の第二セット(前記第一イントロンとは異なる前記1つ以上のイントロンは、前記スプライス要素の第二セットが活性であるとき、RNA分子を産生させないようにおよび/または生物学的機能を付与しない第二RNA分子を産生させるようにスプライシングすることによって除去される)を含む。さらに、トランスジーン発現を調節するための本発明の核酸の使用方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2005年4月29日出願の米国特許仮出願第60/676,139号の利益を合衆国法典35巻119条(e)項の下で主張するものである。前記仮出願の全内容は、引用により本明細書の一部をなすものとする。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、転写後レベルで核酸の発現を調節するための組成物およびそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
遺伝子療法における最近の進展により、そのようなプロトコルによる様々な長期疾患の有効な治療への期待が高まっている。そして、安全で柔軟な治療には遺伝子発現の制御が望ましいことが、明らかになってきた。テトラサイクリン応答性の系、ラパマイシン調節タンパク質二量体化および多数の他のものを含む、多数の異なる調節系が、遺伝子療法ベクターに関して検査され、インビトロでもインビボでも遺伝子発現を調節することが証明された。これらの系の大多数は、転写活性化を制御することによって機能し、ならびにこれらは、外因性哺乳動物遺伝子調節経路由来のものであるか、転写活性化ドメインと組み合わされた薬物応答性成分の人工ハイブリッドである。これらの系は、トランスジーンに加えて1つ以上のタンパク質の発現、および外因性薬物、または転写を活性化するもしくは抑制する他の化合物の投与を必要とする。パッケージング容量が限られている遺伝子療法用ベクター、例えばアデノ関連ウイルス(AAV)ベクターまたはレトロウイルスベクターは、トランスジーンのサイズを限定することがあり、またはすべての必須成分を送達するために2つの別のベクターの使用を必要とすることがある。これらの系を使用して転写を有効に制御することもできるが、これらの大きな系は、非現実的であるか扱い難い場合が多い。
【0004】
内因性遺伝子発現は、外因性遺伝子発現の制御に活用することもできる幾つかの転写後レベルで調節される。RNAの産生は、転写速度により制御されるが、機能的なRNAは、正しい遺伝子産物を産生させることができるに先立ち、正しいスプライシングを必要とする。トランスジーンRNAのスプライシングを調節することにより、遺伝子産物の産生を制御することができる。
【0005】
特に長期治療を必要とする疾病については、遺伝子療法用ベクターへの免疫応答も重要な問題になっている。免疫系は、ベクターそれら自体に応答し得るばかりでなく、それらが産生するタンパク質にも応答し得る。非常に成功した調節系の多くが、ハイブリッドまたは異種白質を含むため、これらは、誘導性免疫反応を特に受けやすく、また幾つかの系は、齧歯動物および非ヒト霊長類においてこのような免疫反応を誘導することが証明されている。
【0006】
本発明は、以前に記載された遺伝子発現系の短所を伴わない遺伝子発現制御のための組成物および方法を提供することにより、当分野における以前の欠点を克服する。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、A)関心のある異種ヌクレオチド配列をコードする少なくとも1つの第一ヌクレオチド配列;およびB)少なくとも2つの異種第二ヌクレオチド配列を含む、単離された核酸を提供し、この場合、前記異種第二ヌクレオチド配列の各々は、i)第一イントロンを規定するスプライス要素の第一セット(前記第一イントロンは、スプライス要素の第二セットに活性が不在であるとき、生物学的機能を付与する第一RNA分子を産生させるようにスプライシングすることによって除去される);およびii)前記第一イントロンとは異なる1つ以上のイントロンを規定するスプライス要素の第二セット(前記第一イントロンとは異なる前記1つ以上のイントロンは、前記スプライス要素の第二セットが活性であるとき、RNA分子を産生させないようにおよび/または生物学的機能を付与しない第二RNA分子を産生させるようにスプライシングすることによって除去される)を含み;前記異種第二ヌクレオチド配列は、a)前記第一ヌクレオチド配列内のタンデムでの第二ヌクレオチド配列、b)前記第一ヌクレオチド配列内の少なくとも25塩基対離れた間隔に配置されている第二ヌクレオチド配列、c)前記第一ヌクレオチド配列内の少なくとも50塩基対離れた間隔に配置されている第二ヌクレオチド配列、d)前記第一ヌクレオチド配列内の少なくとも75塩基対離れた間隔に配置されている第二ヌクレオチド配列、e)前記第一ヌクレオチド配列内の少なくとも100塩基対離れた間隔に配置されている第二ヌクレオチド配列、f)前記第一ヌクレオチド配列内の少なくとも200塩基対離れた間隔に配置されている第二ヌクレオチド配列、g)前記第一ヌクレオチド配列内の少なくとも300塩基対離れた間隔に配置されている第二ヌクレオチド配列、h)第一の第二ヌクレオチド配列がプロモーターと前記第一ヌクレオチド配列の間に位置し、且つ、第二の第二ヌクレオチド配列が前記第一ヌクレオチド配列内に位置する、第二ヌクレオチド配列;およびi)第一の第二ヌクレオチド配列が、前記第一ヌクレオチド配列内のオープンリーディングフレームとポリ(A)テイルまたはポリAシグナルの間に位置し、且つ、第二の第二ヌクレオチド配列が、前記第一ヌクレオチド配列の前記オープンリーディングフレーム内に位置する、第二ヌクレオチド配列、からなる群より選択される。
【0008】
さらに、A)関心のある異種ヌクレオチド配列をコードする少なくとも1つの第一ヌクレオチド配列;およびB)少なくとも1つの第二異種ヌクレオチド配列を含む、単離された核酸を本明細書において提供し、i)第一イントロンを規定するスプライス要素の第一セット(前記第一イントロンは、スプライス要素の第二セットに活性が不在であるとき、生物学的機能を付与する第一RNA分子を産生させるようにスプライシングすることによって除去される);およびii)前記第一イントロンとは異なるイントロンを規定するスプライス要素の第二セット(前記第二イントロンは、前記スプライス要素の第二セットが活性であるとき、RNA分子を産生させないようにおよび/または生物学的機能を付与しない第二RNA分子を産生させるようにスプライシングすることによって除去される)を含み、前記第二ヌクレオチド配列は、a)配列番号50(564CT突然変異を有するIVS2−654イントロン)、b)配列番号51(657G突然変異を有するIVS2−654イントロン)、c)配列番号52(658T突然変異を有するIVS2−654イントロン)、d)配列番号20(657GT突然変異を有するIVS2−654イントロン)、e)配列番号53(200bp欠失を有するIVS2−654イントロン)、f)配列番号68(197bpのみを有するIVS2−654イントロン)、g)配列番号55(6A突然変異を有するIVS2−654イントロン)、h)配列番号56(564C突然変異を有するIVS2−654イントロン)、i)配列番号57(841A突然変異を有するIVS2−654イントロン)、j)配列番号59(564CT突然変異を有するIVS2−705イントロン)、配列番号50(564CT突然変異を有するIVS2−654イントロン)、配列番号54(425bp欠失を有するIVS2−654イントロン)、配列番号69(247bpのみを有するIVS2−654イントロン)、配列番号59(564CT突然変異を有するIVS2−705イントロン)、配列番号60(657G突然変異を有するIVS2−705イントロン)、配列番号61(658T突然変異を有するIVS2−705イントロン)、配列番号62(657GT突然変異を有するIVS2−705イントロン)、配列番号63(200bp欠失を有するIVS2−705イントロン)、配列番号64(425bp欠失を有するIVS2−705イントロン)、配列番号65(6A突然変異を有するIVS2−705イントロン)、配列番号66(564C突然変異を有するIVS2−705イントロン)、配列番号67(841A突然変異を有するIVS2−705イントロン)およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0009】
加えて、タンパク質を産生させるための方法を本明細書において提供し、a)スプライシングを可能にさせる条件下で本発明の核酸とブロッキングオリゴヌクレオチドを接触させること(前記ブロッキングオリゴヌクレオチドは、スプライス要素の第二セットの構成要素をブロックし、その結果、スプライシングにより第一イントロンを除去し、第一RNAを産生させる);およびb)その第一RNAを翻訳して、タンパク質を産生させることを含む。
【0010】
生物学的機能を付与するRNAを産生させるための方法も本明細書において提供し、a)スプライシングを可能にさせる条件下で本発明の核酸とブロッキングオリゴヌクレオチドを接触させること(前記ブロッキングオリゴヌクレオチドは、スプライス要素の第二セットの構成要素をブロックし、その結果、スプライシングにより第一イントロンを除去し、第一RNAを産生させる);およびb)その第一RNAを翻訳して、生物学的機能を付与するRNAを産生させることを含む。
【0011】
さらに、本発明は、生物学的機能を付与するRNAを産生させるための方法を提供し、a)スプライシングを可能にさせる条件下で本発明の核酸と小分子を接触させること(前記小分子は、スプライス要素の第二セットの構成要素をブロックし、その結果、第一イントロンを除去し、第一RNAを産生させる);およびb)その第一RNAを翻訳して、生物学的機能を付与するRNAを産生させることを含む。
【0012】
加えて、被験者における生物学的機能を付与する異種RNAの産生を調節する方法を本明細書において提供し、a)本発明の核酸を被験者に導入すること;ならびにb)スプライス要素の第二セットの構成要素をブロックするブロッキングオリゴヌクレオチドおよび/または小分子を、前記異種RNAの産生を望む時点で、その被験者に導入することを含み、それによってその被験者における前記異種RNAの産生を調節する。
【0013】
さらなる実施形態において、本発明は、被験者におけるタンパク質の産生を調節する方法を提供し、a)本発明の核酸を被験者に導入すること;ならびにb)スプライス要素の第二セットの構成要素をブロックするブロッキングオリゴヌクレオチドおよび/または小分子を、前記異種タンパク質の産生を望む時点で、その被験者に導入することを含み、それによってその被験者における前記異種タンパク質の産生を調節する。
【0014】
さらに、本発明は、本発明の核酸のスプライス要素の第二セットの構成要素をブロックする化合物を同定する方法を提供し、a)スプライシングを可能にさせる条件下で本発明の核酸をその化合物と接触させること;ならびにb)本発明の第一RNAの産生および/または本発明の第二RNAの産生を検出することを含み、それによって、第一RNAの産生により、本発明の核酸のスプライス要素の第二セットの構成要素をブロックする化合物を同定する。
【0015】
生物学的機能を付与する異種RNAの産生を阻害するための方法も本明細書において提供し、a)スプライシングを可能にさせる条件下で本発明の核酸と小分子を接触させることを含み、前記小分子がスプライス要素の第一セットの構成要素をブロックし、その結果、第二イントロンを除去し、それによって第一RNAの産生を阻害する。
【0016】
加えて、本発明は、異種タンパク質の産生を阻害するための方法を提供し、a)スプライシングを可能にさせる条件下で本発明の核酸と小分子を接触させることを含み、前記小分子がスプライス要素の第一セットの構成要素をブロックし、その結果、第二イントロンを除去し、それによって第一RNAの産生を阻害する。
【0017】
さらなる実施形態において、本発明は、生物学的機能を付与する異種RNAの産生を阻害するための方法を提供し、a)スプライシングを可能にさせる条件下で本発明の核酸とブロッキングオリゴヌクレオチドを接触させることを含み、前記ブロッキングオリゴヌクレオチドが、スプライス要素の第一セットの構成要素をブロックし、その結果、第二イントロンを除去し、それによって第一RNAの産生を阻害する。
【0018】
加えて、本発明は、異種タンパク質の産生を阻害するための方法を提供し、a)スプライシングを可能にさせる条件下で本発明の核酸とブロッキングオリゴヌクレオチドを接触させることを含み、前記ブロッキングオリゴヌクレオチドが、スプライス要素の第一セットの構成要素をブロックし、その結果、第二イントロンを除去し、それによって第一RNAの産生を阻害する。
【0019】
本発明の上述および他の目的は、以下に示す本明細書の中で詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本明細書において、「a」、「an」または「the」は、そのような使用状況に依存して単数形または複数形であり得る。例えば、「a cell」は、単一の細胞を意味することもあり、または多数の細胞を意味することもある。
【0021】
本明細書において、「および/または」は、付随して列挙される項目のうちの1つ以上の任意およびすべての可能な組み合わせ、ならびに選択肢(「または」)で解釈するときには組み合わせの欠如を指し、包含する。
【0022】
さらに、測定可能な値、例えば、本発明の組成物の量、用量、時間、温度などに言及するときに本明細書において用いる用語「約」は、指定量の±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、またはさらに±0.1%の偏差を包含することを意味する。
【0023】
本発明は、外因性核酸などの核酸の発現を、例えばインビボで、転写後レベルで調節することができるという予想外の発見に基づく。このような調節は、オリゴヌクレオチド、小分子、および/または特定部位のスプライシング活性を選択的にブロックする他の化合物の存在または不在によって、その核酸に付随する異なるイントロンを選択的スプライシングすることに基づく。従って、1つの実施形態において、本発明は、a)関心のある異種ヌクレオチド配列をコードする少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ以上)の第一の外因性ヌクレオチド配列;およびb)少なくとも1つ(例えば、2つ、3つ、4つ以上)の外因性または異種第二ヌクレオチド配列、を含む、から本質的になる、および/またはからなる単離された核酸を提供し、前記第二外因性または異種第二ヌクレオチド配列は、各々、i)第一イントロンを規定するスプライス要素の第一セット(前記第一イントロンは、スプライス要素の第二セットに活性が不在であるとき、生物学的機能を付与する第一RNA分子を産生させるようにスプライシングすることによって除去される);およびii)前記第一イントロンとは異なる1つ以上のイントロンを規定するスプライス要素の第二セットを含み、前記第一イントロンとは異なる前記1つ以上のイントロンは、前記スプライス要素の第二セットが活性であるとき、RNA分子を産生させないようにおよび/または生物学的機能を付与しない第二RNA分子を産生させるようにスプライシングすることによって除去される。
【0024】
利用可能な非常に多数の系、例えば公知突然変異イントロン系からのものを利用して、本発明の組成物を作ることおよび本発明の方法を行うことができる。例えば、一定のサレセミア(thallesemias)の原因となるβ−グロビン突然変異イントロンを利用することができる(例えば、本明細書に記載するような追加の突然変異を伴うおよび/または伴わない、配列番号58、配列番号18、配列番号19)(例えば、Suwanmanee et al.「Restoration of human beta−globin gene expression in murine and human IVS2−654 thalassemic erythroid cells by free uptake of antisense oligonucleotides」Mol.Pharmacol.(2002)62:545−553(これは、その全体が引用により本明細書の一部をなすものとする)参照)。他の系としては、嚢胞性線維性膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR)遺伝子(例えば、追加の突然変異を伴うおよび伴わない、配列番号70、配列番号71)の突然変異イントロンが挙げられる(例えば、NCBIゲノム注釈のビルド36バージョン1からのアクセッション番号NC_000007、ヌクレオチド116907253から117095951;Highsmith et al.(1994)「A novel mutation in the cystic fibrosis gene in patients with pulmonary disease but normal sweat chloride concentrations」New England Journal of Medicine 331:974−980(これは、その全体が引用により本明細書の一部をなすものとする)参照)。
【0025】
追加の系としては、ジストロフィン遺伝子(追加の突然変異を伴うおよび伴わない、配列番号74、配列番号75)の突然変異が挙げられる(例えば、NCBIゲノム注釈のビルド36バージョン1からのアクセッション番号NC_000023、ヌクレオチド31047266から33267647;Tuffery−Giraud et al.(1999)「Point mutations in the dystrophin gene:evidence for frequent use of cryptic splice sites as a result of splicing defects」Human Mutation 14:359−368;Aartsma−Rus et al.(2004)「Antisense−induced multiexon skipping for Duchenne Muscular Dystrophy makes more sense」American Journal of Human Genetics 74:83−92;Chamberlain et al.(1991)「PCR analysis of dystrophin gene mutation and expression」J.Cell.Biochem.46:255−259;Mann et al.(2001)「Antisense−induced exon skipping and synthesis of dystrophin in the mdx mouse」Proc.Natl.Acad.ScL USA 98:42−47;Lu et al.(2003)「Functional amounts of dystrophin produced by skipping the mutated exon in the mdx dystrophic mouse」Nat.Med.9:1009−1014;KoIe et al.,(2004)「RNA modulation,repair and remodeling by splice switching oligonucleotides」Acta Biochimica Polonica 51:373−378(前記すべてが、それら全体を引用により本明細書の一部をなすものとする)参照)。
【0026】
本発明の方法および組成物において利用することができるさらにもう1つの系は、選択的スプライシング異常の原因となる突然変異タウ遺伝子(例えば、配列番号78)(例えば、Kalbfuss et al.「Correction of alternative splicing in tau in frontotemporal dementia and Parkinsonism linked to chromosome 17」J.Biol.Chem.276:42986−42993(2001)(これは、その全体が引用により本明細書の一部をなすものとする))、ならびに現在知られているまたは将来同定されるような、スプライシング異常を生じさせる任意の他のそのような突然変異遺伝子である。選択的スプライスセットを導入する修飾イントロンも、当業者に周知の方法に従って、産生させ、検査することができる。
【0027】
特定の実施形態において、本発明は、A)関心のある異種ヌクレオチド配列をコードする少なくとも1つの第一ヌクレオチド配列;およびB)少なくとも2つの異種第二ヌクレオチド配列を含む、単離された核酸を提供し、前記異種第二ヌクレオチド配列は、各々、i)第一イントロンを規定するスプライス要素の第一セット(前記第一イントロンは、スプライス要素の第二セットに活性が不在であるとき、生物学的機能を付与する第一RNA分子を産生させるようにスプライシングすることによって除去される);およびii)前記第一イントロンとは異なる1つ以上のイントロンを規定するスプライス要素の第二セット(前記第一イントロンとは異なる前記1つ以上のイントロンは、前記スプライス要素の第二セットが活性であるとき、RNA分子を産生させないようにおよび/または生物学的機能を付与しない第二RNA分子を産生させるようにスプライシングすることによって除去される)を含み;前記異種第二ヌクレオチド配列は、a)前記第一ヌクレオチド配列内のタンデムでの第二ヌクレオチド配列、b)前記第一ヌクレオチド配列内の少なくとも25塩基対離れた間隔に配置されている第二ヌクレオチド配列、c)前記第一ヌクレオチド配列内の少なくとも50塩基対離れた間隔に配置されている第二ヌクレオチド配列、d)前記第一ヌクレオチド配列内の少なくとも75塩基対離れた間隔に配置されている第二ヌクレオチド配列、e)前記第一ヌクレオチド配列内の少なくとも100塩基対離れた間隔に配置されている第二ヌクレオチド配列、f)前記第一ヌクレオチド配列内の少なくとも200塩基対離れた間隔に配置されている第二ヌクレオチド配列、g)前記第一ヌクレオチド配列内の少なくとも300塩基対離れた間隔に配置されている第二ヌクレオチド配列、h)第一の第二ヌクレオチド配列が、プロモーターと前記第一ヌクレオチド配列の間に位置し、且つ、第二の第二ヌクレオチド配列が、前記第一ヌクレオチド配列内に位置する、第二ヌクレオチド配列;およびi)第一の第二ヌクレオチド配列が、前記第一ヌクレオチド配列内のオープンリーディングフレームとポリ(A)テイルまたはポリAシグナルの間に位置し、且つ、第二の第二ヌクレオチド配列が、前記第一ヌクレオチド配列の前記オープンリーディングフレーム内に位置する、第二ヌクレオチド配列、からなる群より選択される。これらは、イントロン間の距離の具体的な例であるとはいえ、本明細書に記載するように、2つ以上のイントロンがそれらを隔てている任意の数、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、200など、の塩基対を有することがあることは、理解される。さらに、本発明の第二ヌクレオチド配列が、本明細書に記載するように、1つ以上の突然変異を任意の組み合わせで含むことができることは理解される。
【0028】
さらなる実施形態において、本発明は、A)関心のある異種ヌクレオチド配列をコードする少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ以上)の第一ヌクレオチド配列;およびB)第二異種ヌクレオチド配列を含む単離された核酸を提供し、i)第一イントロンを規定するスプライス要素の第一セット(前記第一イントロンは、スプライス要素の第二セットに活性が不在であるとき、生物学的機能を付与する第一RNA分子を産生させるようにスプライシングすることによって除去される);およびii)前記第一イントロンとは異なる少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ以上)のイントロンを規定するスプライス要素の第二セット(第一イントロンとは異なる前記少なくとも1つのイントロンは、前記スプライス要素の第二セットが活性であるとき、RNA分子を産生させないようにおよび/または生物学的機能を付与しない第二RNA分子を産生させるようにスプライシングすることによって除去される)を含み、ならびに前記第二ヌクレオチド配列は、a)配列番号50(564CT突然変異を有するIVS2−654イントロン)、b)配列番号51(657G突然変異を有するIVS2−654イントロン)、c)配列番号52(658T突然変異を有するIVS2−654イントロン)、d)配列番号20(657GT突然変異を有するIVS2−654イントロン)、e)配列番号53(200bp欠失を有するIVS2−654イントロン)、f)配列番号68(197bpのみを有するIVS2−654イントロン)、g)配列番号55(6A突然変異を有するIVS2−654イントロン)、h)配列番号56(564C突然変異を有するIVS2−654イントロン)、i)配列番号57(841A突然変異を有するIVS2−654イントロン)、j)配列番号59(564CT突然変異を有するIVS2−705イントロン)、k)配列番号60(657G突然変異を有するIVS2−705イントロン)、l)配列番号61(658T突然変異を有するIVS2−705イントロン)、m)配列番号62(657GT突然変異を有するIVS2−705イントロン)、n)配列番号63(200bp欠失を有するIVS2−705イントロン)、o)配列番号64(425bp欠失を有するIVS2−705イントロン)、p)配列番号65(6A突然変異を有するIVS2−705イントロン)、q)配列番号66(564C突然変異を有するIVS2−705イントロン)、r)配列番号67(841A突然変異を有するIVS2−705イントロン)およびこれらの任意の組み合わせ(単独を含む)からなる群より選択される。
【0029】
前記第一ヌクレオチド配列は、任意の組み合わせで、例えば、タンパク質もしくはペプチド;RNAとしての酵素的活性を有するヌクレオチド配列(例えば、RNAi);リボザイムをコードするヌクレオチド配列;アンチセンス配列をコードするヌクレオチド配列;および/または核内低分子RNA(snRNA)をコードすることができる。さらに、前記第一ヌクレオチド配列は、1つ以上の突然変異を含むことができ、一部の実施形態において、そのような突然変異は、スプライス部位の規定および/またはスプライシング活性の変調に一定の役割を果たし得る。
【0030】
本発明の第一ヌクレオチド配列および第二ヌクレオチド配列が、本発明の単離された核酸において、反復および/または交互のあらゆる組み合わせに関して、同じである場合があり、および/または異なる場合があることも理解される。
【0031】
本発明の第二ヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列、すなわち、1つ以上の突然変異を含むイントロンを規定するヌクレオチド配列であり得、その存在により、スプライス要素の第一セットおよびスプライス要素の第二セットが生じ得る。一部の実施形態において、前記第二ヌクレオチド配列は、イントロン−エキソン−イントロン領域を規定する配列であり得、この場合、イントロンおよび/またはエキソン領域いずれかにおける突然変異により、スプライス要素の第一セットおよびスプライス要素の第二セットが存在することとなる。この後者の実施形態において、スプライス要素の第二セットが活性であるときの結果は、イントロン−エキソン−イントロン領域のエキソンを含むRNAの産生である。
【0032】
本発明の核酸を含むベクター、ならびに本発明の核酸またはベクターを含む細胞を本明細書においてさらに提供する。一部の実施形態において、heベクターは、非ウイルスベクター、ウイルスベクターおよび合成生物ナノ粒子であり得るが、これらに限定されない。本発明のウイルスベクターの非限定的な例としては、AAVベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、バキュロウイルスベクターおよびキメラウイルスベクターが挙げられる。
【0033】
本発明は、本発明の核酸を利用する様々な方法も提供する。従って、一部の実施形態において、本発明は、タンパク質および/または生物学的機能を付与するRNAを産生させるための方法を提供し、a)スプライシングを可能にさせる条件下で本発明の核酸とブロッキングオリゴヌクレオチドを接触させること(前記ブロッキングオリゴヌクレオチドは、スプライス要素の第二セットの構成要素をブロックし、その結果、スプライシングにより第一イントロンを除去し、第一RNAを産生させる);およびb)その第一RNAを翻訳してタンパク質を産生させること、生物学的機能を付与するRNAを産生させることを含む。
【0034】
本発明のブロッキングオリゴヌクレオチドおよび/または小分子および/または他のブロッキング化合物を、本発明の核酸を含む細胞に導入することができ、そのような細胞は、インビトロでまたは本明細書に記載するような本発明の被験者(例えば、動物はヒトである場合もある)に存在し得る。
【0035】
追加の実施形態において、本発明は、タンパク質およびまたは生物学的機能を付与するRNAを産生させるための方法を提供し、a)スプライシングを可能にさせる条件下で本発明のいずれかの核酸と小分子を接触させること(前記小分子は、スプライス要素の第二セットの構成要素をブロックし、その結果、第一イントロンを除去し、第一RNAを産生させる);ならびにb)その第一RNAを翻訳して、タンパク質を産生させること、および/または生物学的機能を付与するRNAを産生させることを含む。
【0036】
加えて、本発明は、被験者における生物学的機能を付与する異種タンパク質および/またはRNAの産生を調節する方法を提供し、a)本発明の核酸を被験者に導入すること;ならびにb)スプライス要素の第二セットの構成要素をブロックするブロッキングオリゴヌクレオチドおよび/または小分子を、前記異種タンパク質および/またはRNAの産生を望む時点で、その被験者に導入することを含み、それによってその被験者における前記RNAの産生を調節する。
【0037】
スクリーニング方法、例えば、本発明の核酸のスプライス要素の第二セットの構成要素をブロックする化合物を同定する方法も提供し、a)スプライシングを可能にさせる条件下で本発明の核酸をその化合物と接触させること;ならびにb)第一RNAの産生および/または第二RNAの産生を検出することを含み、それによって、第一RNAの産生により、スプライス要素の第二セットの構成要素をブロックする化合物を同定する。
【0038】
本明細書に記載する一定の実施形態において、トランスジーン発現系はOFFポジションで(例えば、被験者に)導入され、本発明のブロッキングオリゴヌクレオチドおよび/または小分子との接触がその系をONポジションに切り替える。ONポジションで(例えば、被験者に)導入される系をOFFポジションにする方法、例えば、生物学的機能を付与する異種タンパク質および/またはRNAの産生を阻害するための方法を本明細書においてさらに提供し、a)スプライシングを可能にさせる条件下で本発明の核酸をブロッキングオリゴヌクレオチドおよび/または小分子と接触させることを含み、前記小分子が、スプライス要素の第一セットの構成要素をブロックし、その結果、第二イントロンを除去し、それによって第一RNAの産生を阻害する。
【0039】
イントロンは、真核DNAもしくはRNAのコード部分、すなわち「エクソン」、の間に存在するそのDNAもしくはRNAの一部分である。イントロンおよびエキソンは、DNAから「一次転写体、RNAへの前駆体」(または「pre−mRNA」)と呼ばれるRNAに転写される。イントロンは、エキソンによりコードされているタンパク質を産生させることができるように、そのpre−mRNAから除去しなければならない(本明細書において、用語「タンパク質」は、自然発生、野生型、または機能的タンパク質を指す)。pre−mRNAからのイントロンの除去およびエキソンのその後の連結は、スプライシングプロセスにおいて行われる。
【0040】
前記スプライシングプロセスは、転写の後(すなわち、転写後的に)だが翻訳の前に行われる一連の反応であって、これらの反応はスプライシング因子によって媒介される。従って、「pre−mRNA」は、複数のエキソンと1つ以上のイントロンの両方を含有するRNAであり、「メッセンジャーRNA(mRNAまたはRNA)」は、任意のイントロンが除去されたRNAであり、この場合、エキソンは、その後に互いに連結して、それらから、リボソームでの機能的タンパク質への翻訳によってまたは機能的RNAへの翻訳によって、遺伝子産物を生じさせることができる。
【0041】
本明細書において、用語「翻訳」は、アミノ酸配列をコードするコドンを含むメッセンジャーRNAに沿って移動するリボソームによって指示されるアミノ酸鎖(例えば、ペプチドまたはポリペプチド)の産生を含む。本明細書においての用語「翻訳」は、RNA分子のヌクレオチド配列をコードする相補ヌクレオチド配列(例えば、エキソン)からの機能的RNA分子(例えば、リボザイム、アンチセンスRNA、RNAi、snRNAなど)の産生も含む。
【0042】
イントロンは、スプライシングメカニズムの一部であり、スプライシングに必要とされる、1セットの「スプライス要素(splice elements)」によって特徴づけられる。イントロンは、比較的短く、スプライシング反応を行う様々なスプライシング因子に結合する核酸セグメントを保存している。従って、各イントロンは、5’スプライス部位、3’スプライス部位、およびそれらの間に位置する分岐点によって規定される。スプライス要素は、エキソン内に位置するエキソンスプライシングエンハンサおよびサイレンサ、ならびにスプライス部位および分岐点からある距離を置いてイントロン内に位置するイントロンスプライシングエンハンサおよびサイレンサも含む。スプライス部位および分岐点に加えて、これらの要素は、選択的スプライシング、異常スプライシングおよび構成的スプライシングを制御する。
【0043】
本発明の実施形態によると、第一ヌクレオチド配列は、任意の組み合わせで、タンパク質またはペプチドをコードするヌクレオチド配列、RNAとしての酵素的活性を有するヌクレオチド配列(例えば、RNAi)、リボザイムをコードするヌクレオチド配列、アンチセンス配列をコードするヌクレオチド配列および/または核内低分子RNA(snRNA)をコードするヌクレオチド配列であり得るが、これらに限定されない。
【0044】
本明細書において、用語「外因性」および/または「異種」は、それが収容されている核酸構成体および/または送達ベクター(例えば、ウイルス送達ベクター)の中で自然には発生しないヌクレオチド配列も含むことができ、ならびに(例えば、自然には会合しないプロモーターまたはコード配列との会合により)他のヌクレオチド配列を基準にして非自然発生的環境および/または位置に配置されるヌクレオチド配列も含むことができる。従って、一部の実施形態において、本発明の第一ヌクレオチド配列は、それが導入される細胞に対して外因性または異種である(すなわち、非自然発生的である、自然に発生する状態では存在しない、および/または修飾されているおよび/または複製されている)本発明のタンパク質、ペプチドおよび/またはRNAをコードすることができる。第一ヌクレオチド配列は、それが配置されるベクター(例えば、ウイルスベクター)に対して外因性または異種である場合もある。さらに、第二ヌクレオチド配列は、それが配置されるベクターに対して、および/またはそれがイントロンとして会合している第一ヌクレオチド配列に対して、および/またはそれが配置される細胞に対して、外因性または異種である場合がある。
【0045】
あるいは、第一ヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質、ペプチドまたはRNAは、細胞に対して内因性であり得る(すなわち、その細胞内で自然に発生するもの)が、単離された核酸としてその細胞に導入されるおよび/またはその細胞内に存在する。「単離された核酸」とは、自然な状態の核酸に付随して通常見出される成分が実質的にまたは本質的に無い核酸を意味する。このような成分としては、他の細胞材料、組換え生産からの培地、および/またはその核酸を化学合成する際に使用された様々な化学物質が挙げられる。本発明の「単離された」核酸には、その核酸を採取した生物のゲノムDNA中の関心のある核酸に隣接する核酸配列(例えば、5’または3’末端に存在するコード配列)が一般に無い。しかし、本発明の核酸は、その核酸の基本的な特徴に有害な影響を及ぼさない幾つかの追加の塩基または部分を含むことができる。
【0046】
本発明の「単離された」タンパク質またはペプチドとは、自然な状態のタンパク質またはペプチドに付随して通常見出される成分が実質的に無いタンパク質またはペプチドを意味する。
【0047】
生物学的機能を付与する本発明の分子は、メッセンジャーRNA、タンパク質、ペプチド、リボザイム、RNAi、snRNA、アンチセンスRNAなどであり得る。従って、一部の実施形態において、生物学的機能を付与するRNAは、生物学的機能を付与するタンパク質もしくはペプチドに翻訳されるRNAであり、またはそれは、本明細書に記載するような生物学的機能を付与するRNA(例えば、リボザイム、RNAi、snRNA、アンチセンスRNAなど)に翻訳される、および/もしくはそのようなRNAとして直接機能するRNAである。
【0048】
本発明の核酸の非限定的な例としては、任意の組み合わせで、配列番号1(プラスミドTRCBA−int−luc mut)、配列番号2(プラスミドTRCBA−int−luc(wt))、配列番号3(プラスミドTRCBA−int−luc(657GT))、配列番号4(プラスミドGL3−int−Luc(mut))、配列番号5(GL3−int−Luc(wt))、配列番号6(GL3−int−Luc(657GT))、配列番号7(GL3−2int−fron−sph(mut))、配列番号8(GL3−3int−2fron−sph(mut))、配列番号9(GL3−int−Luc A(mut))、配列番号10(GL3−int−Luc B))、配列番号11(GL3−int−Luc C)、配列番号12(GL3−int−fron(mut))、配列番号13(GL3−2int−sph(mut))、配列番号14(GL3−2int−Sph−C)、配列番号15(GL3−sint200−sph(mut))、配列番号16(GL3−sint200−sph(657GT))、配列番号17(GL3−sint425−sph)および/または配列番号35(TRCBA−int−AAT−654CT)に記載のヌクレオチド配列を含む、から本質的になる、および/またはからなる核酸が挙げられる。
【0049】
本明細書に記載するようなこれらの配列の機能的領域の非限定的な例も提供する(例えば、配列番号1〜17のイントロンおよびコード配列(すなわち配列番号21〜34)、654C−T突然変異を含むイントロン(配列番号18)、野生型イントロン(配列番号19)、654C−T突然変異および657TA−GT突然変異を含むイントロン(配列番号20)、ならびに配列番号35のイントロンおよびコード配列(配列番号36))。従って、本発明の核酸は、本明細書において第一ヌクレオチド配列として同定する1つまたは1つより多くのヌクレオチド配列および/またはその機能的領域を含む、から本質的になる、および/または成ることができる。このような第一ヌクレオチド配列および/または機能的領域は、同じヌクレオチド配列の反復を含む任意の組み合わせで、任意の順序で、ならびに互いに対しておよび/または本発明の核酸および核酸構成体の他の成分に対して任意の位置で、存在することができる。
【0050】
本発明の核酸は、第一ヌクレオチド配列の発現を指示するプロモーターをさらに含むことができる。本発明の核酸に含めることができ、本発明の第一ヌクレオチド配列と作動可能に会合させることができるプロモーターの例としては、構成的プロモーターおよび/または誘導プロモーターが挙げられるが、これらに限定されず、これらの一部の非限定的な例としては、ウイルスプロモータ(例えば、CMV、SV40)、組織特異的プロモーター(例えば、筋肉MCK)、心臓(例えば、NSE)、目(例えば、MSK)および合成プロモーター(SP1要素)が挙げられる。本発明のプロモーターの一例は、本明細書の実施例に記載するようなニワトリβアクチンプロモータ(CBまたはCBA)である。本発明のプロモーターは、本発明の核酸上の任意の位置に存在し得、そこで、それは、第一ヌクレオチド配列と作動可能に会合した状態にある。同じである場合もあり異なる場合もある1つ以上のプロモーターが、同じ核酸分子内に一緒に存在することもあり、あるいはその核酸分子上の互いに異なる位置、ならびに/またはその核酸上に存在する第一ヌクレオチド配列および/もしくは第二ヌクレオチド配列に対して異なる位置にあることもある。さらに、内在性リボソーム侵入シグナル(IRES)および/または他のリボソーム読み過ごし要素が、本核酸分子上に存在することがある。同じである場合もあり異なる場合もある1つ以上のこのようなIRESおよび/またはリボソーム読み過ごし要素が、同じ核酸分子内に一緒に存在することもあり、および/またはその核酸分子上の異なる位置に存在することもある。多数の第一ヌクレオチド配列が本発明の核酸分子上に存在するときには、このようなIRESおよびリボソーム読み過ごし要素を用いて、キャップ非依存性メカニズムによりメッセンジャーRNA配列を翻訳することができる。
【0051】
本発明の単離された核酸上にプロモーターが存在する本発明の実施形態において、そのプロモーターは、第一ヌクレオチド配列および/または第二ヌクレオチド配列に対してその核酸分子内の任意の位置にあり得る。例えば、第二ヌクレオチド配列は、プロモーターと第一ヌクレオチド配列の間に位置することができる。さらに、第二ヌクレオチド配列は、第一ヌクレオチド配列に対してその核酸分子内の任意の位置にあり得る。例えば、第二ヌクレオチド配列は、第一ヌクレオチド配列の前、後および/または中に位置することができる。一部の実施形態において、第二ヌクレオチド配列は、第一ヌクレオチド配列のヌクレオチドの5’側三分の一の範囲内の任意の位置、第一ヌクレオチド配列のヌクレオチドの中央三分の一の範囲内の任意の位置、および/または第一ヌクレオチド配列のヌクレオチドの3’側三分の一の範囲内の任意の位置にあり得る。一部の実施形態において、第二ヌクレオチド配列は、第一ヌクレオチド配列内のオープンリーディングフレームとポリ(A)部位の間の任意の位置にあり得る。
【0052】
2つ以上のヌクレオチド配列が本発明の単離された核酸内に存在する一定の実施形態において、第二ヌクレオチド配列は、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900または1000のヌクレオチド(本明細書で具体的に挙げない5〜1000の間の任意の数のヌクレオチドを含む)によって隔てられる位置にあり得る。
【0053】
本発明の核酸分子の第二ヌクレオチド配列は、第一イントロンを規定するスプライス要素の第一セット(前記第一イントロンは、スプライス要素の第二セットに活性が不在であるとき、生物学的機能を付与する第一RNA分子を産生させるようにスプライシングすることによって除去される);および前記第一イントロンとは異なる第二イントロンを規定するスプライス要素の第二セット(前記第二イントロンは、前記スプライス要素の第二セットが活性であるとき、RNA分子を産生させないようにおよび/または生物学的機能を付与しない第二RNA分子を産生させるようにスプライシングすることによって除去される)を含む、から本質的になる、および/またはからなることができる。一部の実施形態において、本発明の第二ヌクレオチド配列は、1つ以上の突然変異を含むことができ、前記突然変異は、置換、付加、欠失などであり得る。
【0054】
本発明の第二ヌクレオチド配列の特定の、しかし非限定的な例としては、配列番号18〜20、50〜71、74、75および78のいずれかのヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の単離された核酸の特定の例としては、配列番号1〜17および21〜36が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のブロッキングオリゴヌクレオチドの特定の、しかし非限定的な例としては、配列番号37〜49、72、73、76、79および80が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
本発明の核酸において、第一イントロンは、生物学的機能を付与する第一RNA分子を産生させるようにスプライシングすることによって除去される機能的イントロンである。生物学的機能は、第一ヌクレオチド配列が機能的RNAである実施形態では直接付与することができ、および/または生物学的機能を付与するタンパク質、ペプチドもしくはRNAへの第一RNA分子の翻訳により間接的に付与することができる。このような生物学的機能としては、例えば、そうしなければ欠陥のあるおよび/または不十分なもしくは低量で存在するタンパク質、ペプチドおよび/またはRNAの活性の回復および/または増加のための(例えば、疾病または疾患を結果として生じさせる遺伝子欠陥であって、遺伝子療法などの治療に応答する遺伝子欠陥を補正するための)遺伝子療法を含む、治療効果を挙げることができる。
【0056】
本明細書において説明するように、本発明の核酸が、スプライシングが発生でき、且つ、本発明のブロッキング分子または化合物が不在である環境にあるとき、第二イントロンを規定するスプライス要素の第二セットを活性化し、第二イントロンを除去し、その結果として、その核酸からの第一RNA分子の産生を無くす。第二イントロンを除去すると、本発明の生物学的機能を付与しない第二RNA分子(すなわち、非機能的RNA)が産生される、および/または第二RNA分子がまったく産生されないという結果に成り得る。
【0057】
本発明の核酸の第二ヌクレオチド配列は、単一のヌクレオチド配列としてその核酸分子上のいずれの位置にも存在することができ、または前記第二ヌクレオチド配列は、同じであり異なる場合もある2つ以上の第二ヌクレオチド配列と同じ核酸分子上に存在することができる。従って、例えば、前記第二ヌクレオチド配列は、2つ以上の同じおよび/または異なるヌクレオチド配列の倍数で存在することができ、これらは、タンデムで存在することがあり、その核酸分子全体にわたって異なる位置に分散されていることがあり、および/または一緒に(例えば、タンデムで)存在し、且つ、分散されていることがある。
【0058】
本発明の核酸は、ベクター中に存在することができ、そのようなベクターは、細胞内に存在することができる。非ウイルスベクター(例えば、プラスミド、ポロキシマーおよびリポソーム)、ウイルスベクターおよび合成生物ナノ粒子(BNP)(例えば、異なるアデノ関連ウイルスから合成設計されたもの、ならびに他のパルボウイルス)を含む(しかし、これらに限定されない)、任意の適するベクターが、本発明の実施形態に包含される。
【0059】
任意の適するベクターを使用して本発明の異種核酸を送達できることは、当業者には明らかである。送達ベクターの選択は、ターゲット宿主の年齢および種、インビトロ対インビボ送達、所望の発現のレベルおよび持続性、使用目的(例えば、治療またはポリペプチド産生のため)、ターゲット細胞または器官、送達経路、単離された核酸のサイズ、安全性の問題などを含む当分野では公知の多数の因子に基づいて行うことができる。
【0060】
適するベクターとしては、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アルファウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、または単純疱疹ウイルス)、脂質ベクター、ポリ−リシンベクター、核酸分子と共に使用される合成ポリアミノポリマーベクター、例えばプラスミド、なども挙げられる。
【0061】
当分野において公知である任意のウイルスベクターを本発明において使用することができる。このようなベクターの例としては、アデノウイルス科(Adenoviridae);ビルナウイルス科(Birnaviridae);ブンヤウイルス科(Bunyaviridae);カリシウイルス科(Caliciviridae)、カピロウイルス(Capillovirus)属;カルラウイルス(Carlavirus)属;カルムウイルス(Carmovirus virus)属;カウリモウイルス群(Group Caulimovirus);クロステロウイルス(Closterovirus)属;ツユクサ黄色斑紋ウイルス(Commelina yellow mottle virus)属;コモウイルス(Comovirus)ウイルス属;コロナウイルス科(Coronaviridae);PM2ファージ群;コルチコウイルス科(Corcicoviridae);潜伏ウイルス群(Group Cryptic virus);クリプトウイルス群(group Cryptovirus);ククモウイルス(Cucumovirus)ウイルス属ファミリー([PHgr]6ファージ群;シストウイルス科(Cysioviridae);カーネーション輪点ウイルス群(Group Carnation ringspot);ダイアンソウイルス(Dianthovirus virus)属;ソラマメウイルトウイルス群(Group Broad bean wilt);ファバウイルス(Fabavirus virus)属;フィロウイルス科(Filoviridae);フラビウイルス科(Flaviviridae);フロウイルス(Furovirus)属;ゲルミニウイルス群(Group Germinivirus);ジアルジアウイルス群(Group Giardiavirus);ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae);ヘルペスウイルス科(Herpesviridae);ホルデイウイルス(Hordeivirus)ウイルス属;イラルウイルスウイルス(Illarvirus virus)属;イノウイルス科(Inoviridae);イリドウイルス科(Iridoviridae);レヴィウイルス科(Leviviridae);リポスリクスウイルス科(Lipothrixviridae);ルテオウイルス(Luteovirus)属;マラフィウイルスウイルス(Marafivirus virus)属;トウモロコシ・クロロティック・ドワーフウイルス(Maize chlorotic dwarf virus)属;イクロウイルス科(icroviridae);ミオウイルス科(Myoviridae);ネクロウイルス(Necrovirus)属;ネポウイルス(Nepovirus)ウイルス属;ノダウイルス科(Nodaviridae);オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae);パポバウイルス科(Papovaviridae);パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae);パースニップ黄斑ウイルス(Parsnip yellow fleck virus)属;パルティティウイルス科(Partitiviridae);パルボウイルス科(Parvoviridae);エンドウひだ葉モザイクウイルス(Pea enation mosaic virus)属;フィコドナウイルス科(Phycodnaviridae);ピコルナウイルス科(Picornaviridae);プラズマウイルス科(Plasmaviridae);プロドウイルス科(Prodoviridae);ポリドナウイルス科(Polydnaviridae);ポテックスウイルス(Potexvirus)属;ポティウイルス(Potyvirus);ポックスウイルス科(Poxviridae);レオウイルス科(Reoviridae);レトロウイルス科(Retroviridae);ラブドウイルス科(Rhabdoviridae);リジディオウイルス群(Group Rhizidiovirus);サイフォウイルス科(Siphoviridae);ソベモウイルス(Sobemovirus)属;SSV 1型ファージ;テクティウイルス科(Tectiviridae);テヌイウイルス(Tenuivirus);テトラウイルス科(Tetraviridae);タバコモザイクウイルス群(Group Tobamovirus);トブラウイルス群(Group Tobravirus);トガウイルス科(Togaviridae);トンブスウイルス群(Group Tombusvirus);トロウイルス群(Group Torovirus);トティウイルス科(Totiviridae);チモウイルス群(Group Tymovirus);および植物衛星ウイルス(Plant virus satellites)に由来するベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
組換えウイルスベクターを産生させるためのプロトコルおよび核酸送達のためにウイルスベクターを使用するためのプロトコルは、例えば、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel,F.M. et al.(eds.)Greene Publishing Associates,(1989)および他の標準的な実験マニュアル(例えば、Vectors for Gene Therapy.In:Current Protocols in Human Genetics.John Wiley and Sons,Inc.:1997)において見出すことができる。
【0063】
本発明の方法において利用されるベクターの非限定的な例としては、核酸を細胞に送達するために使用される任意のヌクレオチド構成体、例えば、プラスミド、非ウイルスベクターまたはウイルスベクター、例えば組換えレトロウイルスゲノムをパッケージすることができるレトロウイルスベクター(例えば、Pastan et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:4486(1988);Miller et al.,MoI.Cell.Biol.6:2895(1986)参照)が挙げられる。従って、例えば、組換えレトロウイルスを使用して感染させ、それによって本発明の核酸をその感染した細胞に送達することができる。改変された核酸を哺乳動物細胞に導入する的確な方法は、勿論、レトロウイルスベクターの使用に限定されない。アデノウイルスベクター(Mitani et al.,Hum.Gene Ther.5:941−948,1994)、アデノ関連ウイルス(AAV)ベクター(Goodman et al.,Blood 84:1492−1500,1994)、レンチウイルスベクター(Naldini et al.,Science 272:263−267,1996)、偽型レトロウイルスベクター(Agrawal et al.,Exper.Hematol.24:738−747,1996)および現在知られているまたは後に同定される任意の他のベクター系の使用を含む他の技術をこのために幅広く利用することができる。キメラウイルス粒子も含まれ、これらは、当分野において周知であり、ならびに機能的ウイルスベクターを産生させるための、2つ以上の異なるウイルスからのウイルスタンパク質および/または核酸を任意の組み合わせで含むことができる。本発明のキメラウイルス粒子は、非ウイルス起源のアミノ酸および/またはヌクレオチド配列も(例えば、特定に細胞もしくは組織へのベクターのターゲッティングを助長するために、および/または特定の免疫応答を誘導するために)含むことができる。本発明は、「ターゲッティングされた」ウイルス粒子(例えば、外因性ターゲッティング配列がそのパルボウイルスカプシドに挿入または代入された、パルボウイルスカプシドおよび組換えAAVゲノムを含むパルボウイルベクター)も提供する。
【0064】
物理的形質導入技術、例えばリポソーム送達ならびに受容体媒介および他のエンドサイトーシスメカニズム(例えば、Schwartzenberger et al.,Blood 87:472−478,1996参照)も用いることができる。本発明は、任意のこれらおよび/または他の一般的に用いられている核酸輸送方法と併用することができる。ウイルスベクター、キメラトランスフェクタント、または物理的メカニズムの方法、例えばDNAのエレクトロポレーションおよび直接拡散を含む適切なトランスフェクション手段は、例えば、Wolff et al.,Science 247:1465−1468,(1990);およびWolff,Nature 352:815−818,(1991)によって記載されている。
【0065】
従って、本発明の核酸の投与は、多数の周知アプローチのうちのいずれか1つ、例えば、プラスミドもしくはウイルスベクターでの核酸の直接輸送、または細胞でのもしくはカチオン性リポソームなどの担体と併用での輸送(これらに限定されない)によって達成することができる。このような方法は、当分野では周知であり、本明細書に記載する方法での使用に容易に適応させることができる。さらに、これらの方法は、担体のターゲッティング特性を用いることにより一定の疾病および組織、器官および/または細胞タイプおよび/または集団をターゲッティングするために用いることができ、これは、当業者には周知である。細胞および組織特異的プロモーターを本発明の核酸に利用して、特定の組織および細胞をターゲッティングできること、ならびに/または特定の疾病および疾患を治療できることも十分理解される。
【0066】
本発明のベクターおよび/または核酸を含む細胞は、当分野では周知であるような、筋肉からの細胞(例えば、平滑筋、骨格筋、心筋筋細胞)、肝臓からの細胞(例えば、肝細胞)、心臓からの細胞、脳からの細胞(例えば、ニューロン)、目からの細胞(例えば、網膜細胞、角膜細胞)、膵臓からの細胞、腎臓からの細胞、内皮からの細胞、上皮からの細胞、幹細胞からの(例えば、骨髄、臍帯血)、組織培養細胞からの(例えば、ヒーラ細胞)などを含む(しかし、これらに限定されない)、本発明のベクターおよび/または核酸を含有することができるいずれの細胞であってもよい。
【0067】
一部の実施形態において、本発明の核酸は、他の遺伝子発現調節系と比較したとき、低減された「漏出(leakiness)」レベルを有する。「漏出」とは、その系が「off」ポジションにあるときに産生される遺伝子産物または機能的RNAの量を意味する。例えば、本明細書に記載する一部の実施形態において、本系は、本発明の核酸が本発明のブロッキングオリゴヌクレオチド、小分子および/または他の化合物と接触しておらず、従って、第一イントロンがスプライシングされていないとき、「off」ポジションにある。漏出は、そのような調節系に固有の問題であり得るが、漏出のレベルは、当分野において公知の系におけるより本系の実施形態におけるほうが少ないはずである。従って、本発明は、他の遺伝子発現調節系と比較して漏出が低減された遺伝子発現調節系も提供し、この系は、本発明の核酸および/または本発明のベクターを含む。他の系と比較して本系において漏出が低減される程度は、当分野では公知の系において観察される漏出量より5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100%少なくあり得る。
【0068】
一例として、系の漏出量は、その系内のレポーター遺伝子を利用し、その系が「off」ポジションにあるときに産生されるレポーター遺伝子産物の量を検出することによって判定することができる。タンパク質検出アッセイ、例えばELISAおよびウエスタンブロッティング、ならびに核酸検出アッセイ、例えばポリメラーゼ連鎖反応、サザンブロッティングおよびノーザンブロッティングを含む(しかし、これらに限定されない)任意の数のアッセイを利用して、レポーター遺伝子産物を検出することができる。遺伝子産物を検出するための他のアッセイとしては、機能的アッセイ、例えば、その遺伝子産物に寄与する生物活性の量の測定が挙げられる。本発明の核酸および方法を比較アッセイで用いて、他の公知遺伝子調節発現系およびそれに利用されている核酸との比較で、低減される漏出レベルを証明することができる。
【0069】
本発明の核酸、ベクターおよび細胞を使用する様々な方法を本明細書においてさらに提供する。詳細には、本発明の第一RNAを産生させるための方法を本明細書において提供し、a)スプライシングを可能にさせる条件下で、本発明のブロッキングオリゴヌクレオチドおよび/または小分子および/または他の化合物を本発明の核酸と接触させることを含み、この場合、前記ブロッキングオリゴヌクレオチドおよび/または小分子および/または他の化合物が、スプライス要素の第二セットの構成要素をブロックし、その結果、スプライシングにより第一イントロンが除去され、第一RNAが産生される。
【0070】
加えて、タンパク質を産生させるための方法を提供し、a)当分野では周知であるような、および本明細書に提供する実施例に記載するようなスプライシングを可能にさせる条件下で、本発明のブロッキングオリゴヌクレオチドおよび/または小分子および/または他の化合物を本発明の核酸と接触させること(この場合、前記ブロッキングオリゴヌクレオチドが、スプライス要素の第二セットの構成要素をブロックし、その結果、スプライシングにより第一イントロンが除去され、第一RNAが産生される)、およびb)その第一RNAを翻訳してタンパク質を産生させることを含む。
【0071】
さらなる実施形態において、生物学的機能を付与するRNAを産生させるための方法を提供し、a)スプライシングを可能にさせる条件下で、本発明のブロッキングオリゴヌクレオチドおよび/または小分子および/または他の化合物を本発明の核酸と接触させること(この場合、前記ブロッキングオリゴヌクレオチドおよび/または小分子および/または他の化合物が、スプライス要素の第二セットの構成要素をブロックし、その結果、スプライシングにより第一イントロンが除去され、第一RNAが産生される);およびb)その第一RNAを翻訳して、生物学的機能を付与するRNAを産生させることを含む。一部の実施形態では、前記第一RNAは、生物学的機能を付与するRNAとして直接作用することができ、他の実施形態では、前記第一RNAを、生物学的機能を付与するRNAに翻訳することができる。
【0072】
本明細書に記載する任意の方法において、本発明のブロッキングオリゴヌクレオチドおよび/または小分子および/または他の化合物は、本発明の核酸を含む細胞に導入することができ、そのような細胞は、動物におけるものであり得、前記動物は、ヒト、非ヒト哺乳動物(イヌ、ネコ、ウマ、ウシなど)または他の動物であり得る。
【0073】
本発明のブロッキングオリゴヌクレオチドは、特定のスプライス部位でスプライシング活性を防止するオリゴヌクレオチド(例えば、RNAもしくはDNAまたは両方の組み合わせ)である。スプライシング事象を指示するスプライス事象セットの構成要素であるヌクレオチド配列にブロッキングオリゴヌクレオチドが結合し、それによってそのスプライシング要素の活性を阻害し、その結果スプライシング活性を阻害することとなるため、スプライシング活性が防止される。従って、本ブロッキングオリゴヌクレオチドは、スプライス連結部、5%スプライス要素、3’スプライス要素、潜在スプライス要素、分岐点、潜在分岐点、天然スプライス要素、突然変異スプライス要素などに相補的であり得る。本発明のブロッキングオリゴヌクレオチドの一部の非限定的な例としては、βグロビンイントロンの654T突然変異に特異的なGCTATTACCTTAACCCAG(配列番号37)およびβグロビンイントロンの657GT突然変異に特異的なGCACTTACCTTAACCCAG(配列番号38)が挙げられる。他の例としては、配列番号37、38、42、49、46、47、48、39、40、41、43、44、45、72、73、76、79および80のヌクレオチド配列を含む、から本質的になる、および/またはからなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。これらのオリゴヌクレオチド配列に関連して「から本質的になる」とは、そのオリゴヌクレオチドが、そのオリゴヌクレオチド配列の3’末端または5’末端のいずれかに、そのオリゴヌクレオチドの機能または活性に著しい影響を及ぼさない追加の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の追加の)ヌクレオチドを含むことができることを意図する(例えば、これらの追加ヌクレオチドは、原オリゴヌクレオチド配列に相補的な配列にはハイブリダイズしない)。
【0074】
ブロッキングオリゴヌクレオチドが本発明の方法において利用される場合の方法では、そのブロッキングオリゴヌクレオチドは、一部の実施形態において、RNアーゼHを活性化しないオリゴヌクレオチドであり得る。RNアーゼHを活性化しないオリゴヌクレオチドは、公知の技術に従って作製することができる。例えば、Pedersonらの米国特許第5,149,797号参照。デオキシリボヌクレオチドである場合もありまたはリボヌクレオチド配列である場合もあるこのようなオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドをその一構成要素として含有する2本鎖分子へのRNアーゼHの結合を立体的に妨害するまたは防止する任意の構造修飾を含有し、この構造修飾は、2本鎖形成を実質的に妨害せず、破壊しない。2本鎖形成に関与するオリゴヌクレオチドの部分は、それらへのRNアーゼHの結合に関与するタンパク質とは実質的に異なるので、RNアーゼHを活性化しない非常に多数のオリゴヌクレオチドを利用できる。
【0075】
本発明のオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドであり得、ヌクレオチド間架橋リン酸残基の少なくとも1つのまたはすべてが、修飾ホスフェート、例えばメチルホスフェート、メチルホスホノチオエート、ホスホロモルホリデート、ホスホロピペラジデートおよびホスホルアミデートである。追加例として、ヌクレオチド間架橋リン酸残基の他のあらゆるものが、記載したように修飾されていることがある。もう1つの非限定的な例において、そのようなオリゴヌクレオチドは、そのヌクレオチドの少なくとも1つのまたはすべてが2’低級アルキル部分(例えば、C1〜C4線状または分枝、飽和または不飽和アルキル、例えばメチル、エチル、エテニル、プロピル、1−プロペニル、2−プロペニルおよびイソプロピル)を含有するオリゴヌクレオチドである。例えば、前記ヌクレオチドの他のあらゆるものが、記載したように修飾される(例えば、Furdon et al.,Nucleic Acids Res.17:9193−9204(1989);Agrawal et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1401−1405(1990);Baker et al.,Nucleic Acids Res.18,3537−3543(1990);Sproat et al.,Nucleic Acids Res.17:3373−3386(1989);Walder and Walder,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5011−5015(1988)も参照)。従って、一部の実施形態において、本発明のブロッキングヌクレオチドは、任意の組み合わせでのメチル、ホスホロチオエート、ホスホロモルホリデート、ホスホロピペラジデートおよび/またはホスホルアミデートであり得る(しかし、これらに限定されない)、修飾ヌクレオチド間架橋リン酸残基を含むことができる。一定の実施形態において、本ロッキングオリゴヌクレオチドは、その2’位に低級アルキル置換基を有するヌクレオチドを含むことができる。
【0076】
本発明の修飾オリゴヌクレオチドの追加の例としては、ペプチド核酸(PNA)およびロックド核酸(LNA)が挙げられる。
【0077】
PNAにおける骨格は、ペプチド結合によって連結されたN−(2−アミノエチル)−グリシン単位の反復で作られている。異なる塩基(プリンおよびピリミジン)はメチレンカルボニル結合によって骨格に連結されている。DNAまたは他のDNA類似体とは異なり、PNAは、ペントース糖部分またはリン酸基を一切含有しない。PNAは、第1(左)位にN末端および右にC末端を有するペプチドのように描かれる。
【0078】
PNA骨格は、電荷を有さず、これは、PNA鎖とDNA鎖の間よりPNA/DNA鎖間のほうがずっと強い結合をこのポリマーにもたらす。これは、PNA鎖とDNA鎖の間には電荷反発がないためである。
【0079】
ホモピリミジン鎖を用いた初期の実験は、6量体PNA T/DNA dAのTmが、10℃未満の温度で変性するDNA dT/DNA dA 6量体と比較して、31℃であると判定されたことを示した。
【0080】
プリンおよびピリミジン塩基を有するペプチド骨格を伴うPNAは、ヌクレアーゼまたはプロテアーゼによって容易に認識される分子種ではない。例えば、それらは、酵素分解に対して耐性である。PNAは、広いpH範囲にわたって安定でもある。それらは、酵素によって容易に分解されないので、これらのポリマーの寿命は、インビトロでもインビボでも長期にわたる。加えて、それらが電荷を有さないということが、それらの細胞膜の横断を助長し、且つ、それらのより強い結合特性が、遺伝子発現の調節に必要なオリゴヌクレオチドの量を減少させる。
【0081】
LNAは、ヌクレオシドを含有する核酸の一類であり、その主な顕著な特徴は、リボース環の2’−O原子と4’−C原子の間のメチレン架橋の存在である。この架橋は、そのヌクレオチド類似体のリボフラノース環の可撓性を制限し、それを硬い二環式N型配座に固定する。さらに、LNAは、この配座を採るように隣接DNA塩基を誘導し、その結果、標準的なワトソン−クリックの法則に従ってそれらの相補ヌクレオシドと塩基対合させることができるDNAに見られる4つの共通核塩基(A、T、G、C)を含有する熱力学的により安定な形態のA2本鎖LNAヌクレオシドが形成される。LNAは、標準的なホスホルアミダイトDNA合成化学を用いて、DNAまたはRNAならびに他の核酸類似体と混合することができる。従って、LNAオリゴヌクレオチドは、例えばアミノ−リンカー、ビオチン、蛍光体などで容易に標識することができる。従って、プライマーおよびプローブの設計に非常に高い自由度が存在する。それらの固定された配座は、相補配列に対する結合親和性を増大させ、ならびに高感度で特異的な核酸検出のためにプライマーおよびプローブを最適化および微調整する新たな化学的アプローチをもたらす。この差は、実験的にはLNA−NAヘテロ2本鎖の温度安定性増大として観察され、ならびにその配列中に存在するLNAヌクレオシドの数にも、利用される核酸塩基の化学的性質にも依存する。この実験上の差は、標準的なハイブリダイゼーション法により特定の核酸ターゲットを検出するように設計されたオリゴヌクレオチドプローブの特異性の変調に活用することができる。
【0082】
本明細書において、「スプライス要素の第二セットの構成要素」は、第二イントロンのスプライシングの活性化に関与する任意の要素を含む。例えば、スプライス要素の第二セットの要素は、天然DNAおよび/またはpre−mRNAにおける突然変異の結果であり得、前記突然変異は、新たなスプライス要素を作る、置換突然変異および/または付加突然変異および/または欠失突然変異のいずれかであり得る。従って、この新たなスプライス要素は、第二イントロンを規定するスプライス要素の第二セットの1構成要素である。そのスプライス要素の第二セットの残りの構成要素は、第一イントロンを規定するスプライス要素のセットの構成要素である場合もある。例えば、その突然変異が、第一3’スプライス部位から上流(すなわち、5’方向に)でもあり、第一分岐点から下流(すなわち、3’方向)でもある位置に新たな第二3’スプライス部位を作る場合には、その第一5’スプライス部位およびその第一分岐点は、スプライス要素の第一セットとスプライス要素の第二セットの両方の構成要素として機能することができる。
【0083】
ある状況では、スプライス要素の第二セットの導入により、通常は休眠状態であるか、スプライシング要素としての役割を果たさないRNAの天然領域を、活性化するようにさせ、スプライシング要素として機能させることができる。このような要素は、「潜在」要素と呼ばれる。例えば、第一3’スプライス部位と第一分岐点の間に位置する新たな3’スプライス部位を導入すると、それが、その新たな3’スプライス部位と第一分岐点の間の潜在分岐点を活性化し得る。
【0084】
他の状況では、第一分岐点と第一5’スプライス部位の間に位置する新たな5’スプライス部位の導入は、さらに、潜在3’スプライス部位および潜在分岐点をその新たな5’スプライス部位から上流に向かって逐次的に活性化し得る。この状況では、第一イントロンは、2つの異常イントロンに分割され、それらの間に新たなエキソンが位置することとなる。
【0085】
さらに、第一スプライス要素(特に、分岐点)がスプライス要素の第二セットの構成要素でもある一部の状況では、第一要素をブロックし、潜在要素(すなわち、潜在分岐点)を活性化することができることがあり、この潜在要素が、スプライス要素の第一セットの残りの構成員を動員して、間違ったスプライシングに正しいスプライシングを強要することとなる。さらに、潜在スプライス要素を活性化したとき、それは、イントロンに位置することもあり、および/または隣接するエキソンのうちの1つに位置することもあることに留意しなければならない。
【0086】
従って、上で述べたように、「スプライス要素の第二セット」を構成するスプライス要素のセットに依存して、本発明のブロッキングオリゴヌクレオチド、小分子および/または他の化合物は、様々な異なるスプライス要素をブロックして、本発明を行うことができる。例えば、突然変異要素、潜在要素、天然要素、5’スプライス部位、3’スプライス部位、および/または分岐点をブロックすることができる。勿論、上で論じたような、第一イントロンのスプライス要素のブロッキングが潜在要素を活性化し、それが、その後、スプライス要素の第一セットの代理構成要素として機能し、正しいスプライシングに関与するという状況を考慮に入れて、一般に、第一イントロンの規定もするスプライス要素はブロックしない。
【0087】
ブロッキングオリゴヌクレオチドの長さ(すなわち、その中のヌクレオチドの数)は、それが対象となる位置に選択的に結合するのであれば重要ではなく、常例的な手順に従って決定することができる。従って、一部の実施形態において、本発明のブロッキングオリゴヌクレオチドは、約5ヌクレオチドから約100ヌクレオチドの間の長さであり得る。詳細には、本発明のブロッキングヌクレオチドは、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100ヌクレオチドの長さであり得る。一部の実施形態において、本発明のブロッキングオリゴヌクレオチドは、8から50ヌクレオチドの長さである。本発明のさらに他の実施形態において、本ブロッキングオリゴヌクレオチドは、15〜25ヌクレオチドの長さであり、18〜20ヌクレオチドの長さである場合もある。ブロッキングオリゴヌクレオチドは、本明細書に記載する方法において、同一のオリゴヌクレオチドの集団として、ならびに/または任意の組み合わせでおよび/もしくは互いに対して任意の比で存在する異なるオリゴヌクレオチドの集団として、使用することができる。
【0088】
本発明の小分子は、他の小分子と比較して構造的におよび/または機能的に多様であり得、且つ、低分子量(例えば、≦5000ダルトン)を有する活性化合物である。小分子は、天然物質である場合もあり、合成物質である場合もある。それらは、有機化学プロトコルによって合成することができ、および/または天然源、例えば植物、真菌よび微生物から単離することができる。小分子は、「薬のよう(drug−like)」である(例えば、アスピリン、ペニシリン、化学療法薬)場合もあり、毒性である場合もあり、および/または天然のものである場合もある。小分子薬は、特定の生物学的ターゲット、例えば受容体、酵素またはイオンチャネル、と相互作用して治療効果を生じさせる1つ以上の活性化合物であり得、これらは、一般に、経口投与可能なピルとして調合される。本発明の小分子の具体的な、しかし非限定的な例としては、抗体、ヌクレオシド類似体(例えば、トヨカマイシン)およびアプタマー(例えば、RNAアプタマー、DNAアプタマー)が挙げられる。
【0089】
本発明の小分子は、任意の数の小分子ライブラリーに存在する小分子であり得、それらの一部は、市販されている。本発明の小分子を含有し得るライブラリーの非限定的な例としては、様々な営利団体・企業(commercial entities)から得られる小分子ライブラリー、例えば、SPECS and BioSPEC B.V.(オランダ、ライスワイク)、Chembridge Corporation(カリフォルニア州、サンディエゴ)、Comgenex USA Inc.(ニュージャージー州、プリンストン)、Maybridge Chemical Ltd.(英国、コーンウォール)、およびAsinex(ロシア、モスクワ)が挙げら得る。1つの代表例は、DIVERSet(商標)として知られており、これは、ChemBridge Corporation(16981 Via Tazon,Suite G,San Diego,Calif.92127)から入手できる。DIVERSet(商標)は、薬のような、手で合成した(hand−synthesized)小分子を10,000から50,000個含有する。前記化合物は、最小限の化合物数で最大のファーマコフォア多様度をカバーし、且つ、高スループットまたはより低いスループットスクリーニングに適する「汎用」ライブラリーを形成するために、前もって選択される。追加のライブラリーの説明については、例えば、Tan et al.「Stereoselective Synthesis of Over Two Million Compounds Having Structural Features Both Reminiscent of Natural Products and Compatible with Miniaturized Cell−Based Assays」Am.Chem Soc.120,8565−8566,1998;Floyd et al.,Prog Med Chem 36:91−168,1999を参照のこと。非常に多数のライブラリーが、例えば、AnalytiCon USA Inc.(P.O.Box 5926,Kingwood,Tex.77325);3−Dimensional Pharmaceuticals,Inc.(665 Stockton Drive,Suite 104,Exton,Pa.19341−1151);Tripos,Inc.(1699 Hanley Rd.,St.Louis,Mo.,63144−2913)などから市販されている。
【0090】
本発明の小分子および他の化合物は、様々なメカニズムにより、本発明の核酸におけるスプライシング事象を修飾するように動作することができる。例えば、本発明の小分子および他の化合物は、スプライシング複合体、スプライセオソーム、およびそれらの成分、例えばhnRNP、snRNP、SR−タンパク質および他のスプライシング因子または要素の形成および/または機能および/または他の特性に干渉し、その結果、pre−mRNA分子におけるスプライシング事象を防止および/または誘導することができる。もう1つの例として、本発明の小分子および他の化合物は、特定のスプライセオソームの形成および/または機能に後に関与する遺伝子産物(例えば、hnRNP、snRNP、SR−タンパク質および他のスプライシング因子を挙げることができるが、これらに限定されない)の転写を防止および/または修飾することができる。本発明の小分子および他の化合物は、特定のスプライセオソームの形成および/または機能に後に関与する遺伝子産物(hnRNP、snRNP、SR−タンパク質および他のスプライシング因子を挙げることができるが、これらに限定されない)のリン酸化、グリコシル化および/または他の修飾を防止および/または修飾することもできる。加えて、本発明の小分子および他の化合物は、特定のpre−mRNAに結合および/または別様に影響を及ぼして、配列特異的な様式でのRNAとの塩基対合を必要としないメカニズムにより、特定のスプライシング事象を防止または誘導することができる。
【0091】
本発明は、被験者においてタンパク質および/または生物学的機能を付与するRNAを産生させる方法をさらに提供し、a)本発明の核酸、ベクターおよび/または細胞を被験者に導入すること、ならびにb)スプライス要素の第二セットの構成要素をブロックする本発明のブロッキングオリゴヌクレオチドおよび/または小分子および/または他の化合物をその被験者に導入することを含み、それによって被験者においてタンパク質および/または生物学的機能を付与するRNAを産生させる。
【0092】
加えて、被験者におけるタンパク質および/または生物学的機能を付与するRNAの産生を調節する方法を提供し、a)本発明の核酸、ベクターおよび/または細胞を被験者に導入すること、ならびにb)スプライス要素の第二セットの構成要素をブロックする本発明のブロッキングオリゴヌクレオチドおよび/または小分子および/または他の化合物を、そのタンパク質および/またはRNAの産生を望む時点で、その被験者に導入することを含み、それによってその被験者におけるそのタンパク質および/またはRNAの産生を調節する。被験者に存在するタンパク質および/またはRNAの量を当分野において公知の方法に従って経時的にモニターし、その量が所望のレベルおよび/または治療レベルより下に落ちたら、本ブロッキングオリゴヌクレオチド、小分子および/または他の化合物を被験者に導入してそのタンパク質および/またはRNAの産生を増加させ、このようにしてその産生を調節することができる。
【0093】
本発明の核酸、ベクターおよび/または細胞を被験者に投与する、本明細書に記載の方法では、本核酸、ベクターおよび/または細胞は、ブロッキングオリゴヌクレオチドおよび/または小分子および/または他の化合物(これらの存在は、スプライス要素の第二セットの構成要素に対するブロッキングを生じさせる)が不在である被験者に最初に存在し得る。この状況では、スプライス要素の第二セットは活性であり、ならびに第一ヌクレオチド配列によってコードされているような、生物学的機能を付与する外因性タンパク質、ペプチドおよび/またはRNAの被験者における産生は、無いか、極極少ない(例えば、有意でない)。本発明のブロッキングオリゴヌクレオチド、小分子および/または他の化合物が被験者に存在する場合、核酸上のスプライス要素の第二セットの構成要素はブロックされ、その結果、スプライシングにより第一イントロンが除去され、その後、生物学的機能を付与する第一ヌクレオチド配列によってコードされているタンパク質および/またはRNAがその被験者において産生される。
【0094】
本ブロッキングオリゴヌクレオチド、小分子および/または他の化合物は、本発明の核酸、ベクターおよび/または細胞の被験者への導入を基準にしていずれの時点においても被験者に導入することができる。例えば、本ブロッキングオリゴヌクレオチド、小分子および/または他の化合物は、被験者への本核酸、ベクターおよび/または細胞の導入前に、導入と当時に、および/または導入後にその被験者に導入することができる。さらに、本ブロッキングオリゴヌクレオチド、小分子および/または他の化合物は、1回または任意の時間間隔で複数回投与することができ、ならびにその被験者の寿命全体にわたり得る。
【0095】
従って、一部の実施形態において、本発明は、被験者における疾病または疾患を治療する方法を提供し、a)本発明の核酸、ベクターおよび/または細胞の有効量を被験者に導入すること;ならびにb)本発明のブロッキングオリゴヌクレオチド、小分子、および/または他の化合物の有効量を被験者に導入することを含み、それによって被験者における疾患を治療する。本核酸、ベクターおよび/または細胞ならびに本ブロッキングオリゴヌクレオチド、小分子および/または他の化合物が被験者に存在する場合、それらは、そのブロッキングオリゴヌクレオチド、小分子および/または他の化合物がその核酸と接触し、スプライス要素の第二セットの構成要素をブロックすることができる条件下に存在し、それによって、被験者において生物学的機能を付与するタンパク質、ペプチドおよび/またはRNAを産生させる。
【0096】
本発明の追加の実施形態では、本発明の方法による遺伝子発現の調節は、本明細書に記載する系の逆で起こり得る。具体的に言うと、本発明の一部の実施形態において、その系は、スプライス媒介発現を調節するブロッキングオリゴヌクレオチド、小分子および/または他の化合物が不在の状態で、本明細書において説明するような「OFF」ポジションにある(例えば、生物学的機能を付与するタンパク質、ペプチドおよび/またはRNAの産生をもたらす第一RNAが産生されない)。一定の他の実施形態において、本発明の系は、スプライス媒介発現を調節するブロッキングオリゴヌクレオチド、小分子および/または他の化合物が不在の状態で、「ON」ポジションにあり得る。このような後述の実施形態では、結果的に第一イントロンを除去し、第一RNAを産生させる条件下に存在する本発明の核酸、ベクターおよび/または細胞を、本発明のブロッキングオリゴヌクレオチド、小分子および/または他の化合物と接触させ、その結果、スプライス要素の第一セットの構成要素をブロックし、それによってスプライシングおよび第二イントロンの除去を生じさせ、従って、第二RNA分子を産生させない、および/または生物学的機能を付与しない第二RNA分子を産生されるという本発明の方法を実施することができる。
【0097】
本発明の核酸、ベクター、細胞、ブロッキングオリゴヌクレオチド、小分子および/または他の化合物の「有効量」は、有益であり得、および/または治療効果があり得る、所望の効果を生じさせるために十分ではあるが非毒性である量を指す。当業者には十分理解されるように、必要とされる正確な量は、被験者の年齢、性別、種、全身の健康状態、治療する状態の重症度、投与する特定の薬剤などに依存して、被験者ごとに異なる。当業者は、適切なテキストおよび文献(例えば、Remington’s Pharmaceutical Science(最新版))を参照することにより、および/または常用の薬理学的手順により、任意の個々のケースでの適切な「有効」量を決定することができる。
【0098】
本明細書において、「治療する」または「治療」は、本発明のタンパク質および/またはRNAにポジティブに応答し得る疾病または疾患を有すると診断される、有するリスクがある、有する疑いがある、および/または有する可能性が高い被験者に恩恵を授けるあらゆるタイプの治療を指す。恩恵としては、被験者の状態(例えば、1つ以上の症状)の改善、その状態の進行の遅延および/または反転、その疾病または疾患の発症の防止または遅延などを挙げることができる。
【0099】
本明細書において述べるように、本発明は、本発明の疾患または疾病を治療する方法を提供し、a)本発明の核酸の有効量を被験者に導入すること、ならびにb)本発明のブロッキングオリゴヌクレオチドおよび/または小分子の有効量をその被験者に導入することを含み、それによって、被験者においてその疾患または疾病を治療する。
【0100】
本発明の方法によって治療することができる疾病または疾患としては、生物学的機能を付与する本発明のタンパク質、ペプチドおよび/またはRNAの被験者における存在および/または量の増加を伴う治療に応答するあらゆる疾病または疾患を挙げることができる。このようなタンパク質、ペプチドおよび/またはRNAは、本発明の核酸、ベクターおよび/または細胞の被験者への導入ならびに本発明のブロッキングオリゴヌクレオチド、小分子および/または他の化合物の被験者への導入により、その被験者に存在し得る。
【0101】
本発明の方法によって治療することができる疾病および/または疾患の非限定的な例、ならびに本発明の第一ヌクレオチド配列によってコードされ得、且つ、治療効果を付与することができる遺伝子産物の一部の例としては、代謝性疾患、例えば糖尿病(インスリン)、成長/発達傷害(成長ホルモン;成長因子を調節するジンクフィンガータンパク質)、血液凝固障害(例えば、血友病A(第VIII因子);血友病B(第IX因子))、中枢神経系障害(例えば、発作、パーキンソン病(グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)およびGDNF様成長因子)、アルツハイマー病(神経成長因子、GDNFおよびGDNF様成長因子)、筋萎縮性側索硬化症、脱髄疾患)、骨同種移植(骨形態形成タンパク質2(タンパク質1〜9、例えば、MBP2))、炎症性疾患(例えば、関節炎、自己免疫疾患)、肥満、癌、心血管疾患(例えば、うっ血性心不全(ホスホランバン、およびCa++ポンプと関係がある遺伝子))、黄斑変性(色素上皮由来因子(PDEF)、β−サラセミア、α−サラセミア、テイ・サックス症候群、フェニルケトン尿症、嚢胞性線維症および/またはウイルス感染が挙げられる。
【0102】
追加例としては、AIDSの治療に使用される、可溶性CD4をコードする核酸、およびa−アンチトリプシン欠損症によって引き起こされる肺気腫の治療に使用される、α−アンチトリプシンが挙げられる。本発明の方法および組成物によって治療することができる他の疾病、症候群および状態としては、例えば、アデノシンデアミナーゼ欠損症、鎌状赤血球欠損症、脳の疾患、例えばハンチングトン病、リソソーム蓄積症、ゴーシェ病、ハーラー病、クラッベ病、運動ニューロン疾患、例えば優性脊髄性小脳性運動失調症(例としては、SCA1、SCA2およびSCA3が挙げられる)、サラセミア、血友病、フェニルケトン尿症、ならびに心疾患、例えばコレステロール代謝の変化によって引き起こされるもの、ならびに免疫系の異常が挙げられる。これらの方法によって治療することができる他の疾患としては、代謝性症候群、例えば筋骨格疾患、心血管疾患および癌が挙げられる。本発明の核酸を気道上皮に送達して、遺伝性疾患、例えば嚢胞性線維症、偽性低アルドステロン症および線毛不動症候群、ならびに非遺伝子性疾患(例えば、気管支炎、喘息)を治療することもできる。本発明の核酸を肺胞上皮に送達して、遺伝性疾患、例えばα−1−アンチトリプシン、ならびに肺疾患を治療すること(例えば、肺炎および肺気腫肺線維症、肺水腫の治療;サーファクタントタンパク質をコードする核酸の未熟児またはARDS患者への送達)ができる。
【0103】
一般に、本発明の核酸およびベクターは、生物学的機能を有する任意の核酸を送達して、遺伝子発現と関係がある任意の疾患に随伴する症状を治療または改善するために利用することができる。実例となる疾病状態としては、嚢胞性線維症(および肺の他の疾病)、血友病A、血友病B、サラセミア、貧血および他の血液疾患、AIDS、癌(例えば、脳腫瘍)、糖尿病、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ病、ベッカー病)、ゴーシェ病、ハーラー病、アデノシンデアミナーゼ欠損症、糖原蓄積病および他の代謝障害、ムコ多糖症、ならびに実質性器官(例えば、脳、肝臓、腎臓、心臓、肺、目)等の疾病などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
一定の実施形態において、本発明の送達ベクターは、遺伝性疾患、神経変性疾患、精神障害および/または腫瘍を含むCNSの疾病を治療するために投与することができる。CNSの実例となる疾病としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチングトン病、レット症候群、キャナヴァン病、リー病、レフサム病、トゥーレット症候群、原発性側索硬化症、筋萎縮性側索硬化症、進行性筋萎縮症、ピック病、筋ジストロフィー、多発性硬化症、重症筋無力症、ビンスワンゲル病、脊髄または頭部損傷に起因する外傷、テイ・サックス病、レッシュ−ナイハン病、癲癇、脳梗塞、気分傷害(例えば、うつ病、双極性情動障害、持続性情動障害、二次性気分障害)を含む精神障害、統合失調症、薬物依存症(例えば、アルコール中毒および他の物質依存症)、神経症(例えば、不安、強迫性障害、身体表現性障害、解離性障害、悲嘆、分娩後うつ病)、精神病(例えば、幻覚および妄想)、認知症、パラノイア、注意欠陥障害、精神性欲異常、睡眠障害、疼痛障害、摂食障害または体重異常(例えば、肥満、悪液質、食欲低下および食欲亢進)ならびにCNSの癌および腫瘍(例えば、下垂体腫瘍)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
本発明の方法に従って治療することができるCNSの疾患としては、網膜、後部神経路(posterior tract)、視神経に関わる眼の疾患(例えば、色素性網膜炎、糖尿病性網膜症および他の網膜変性疾患、ブドウ膜炎、加齢性黄斑変性、緑内障)が挙げられる。
【0106】
すべてではないかもしれないが殆どの眼病および眼の疾患は、次の3つのタイプの指標のうちの1つ以上を随伴する。(1)脈管形成、(2)炎症、および(3)変性。本発明の送達ベクターは、抗脈管形成因子;抗炎症性因子:細胞変性を遅らせる、細胞倹約を促進する、または細胞増殖を促進する因子、ならびに前述のものの組み合わせ。
【0107】
例えば、糖尿病性網膜症は、脈管形成によって特徴付けられる。糖尿病性網膜症は、1つ以上の抗脈管形成因子を眼内に(例えば、硝子体の中に)または眼周辺に(例えば、テノン領域の近くに)送達することによって治療することができる。1つ以上の神経栄養因子を眼内に(例えば、硝子体内に)または眼周辺に共同送達することもできる。
【0108】
ブドウ膜炎は、炎症を伴う。1つ以上の抗炎症性因子を、本発明の核酸の眼内(例えば、硝子体または前眼房)投与によって、投与することができる。
【0109】
比較すると、色素性網膜炎は、網膜変性によって特徴付けられる。代表的な実施形態において、色素性網膜炎は、1つ以上の神経栄養因子をコードする送達ベクターの眼内(例えば、硝子体)投与によって、治療することができる。
【0110】
加齢性黄斑変性は、脈管形成と網膜変性の両方を伴う。この疾患は、1つ以上の神経栄養因子をコードする本発明の核酸を眼内(例えば、硝子体)に、および/または1つ以上の抗脈管形成因子を眼内または眼周辺(例えば、テノン領域の近く)に投与することによって、治療することができる。
【0111】
緑内障は、眼内圧上昇および網膜神経節細胞の喪失によって特徴づけられる。緑内障の治療としては、本発明の送達ベクターを使用する興奮毒性障害から細胞を保護する1つ以上の神経保護剤の投与が挙げられる。このような薬剤としては、眼内に、好ましくは硝子体内に送達される、N−メチル−D−アスパルテート(NMDA)アンタゴニスト、サイトカイン、および神経栄養因子が挙げられる。
【0112】
他の実施形態では、本発明を用いて、発作を治療すること、例えば、発作の発現、発生率および/または重症度を減少させることができる。発作に対する治療的処置の効力は、行動(例えば、ふるえ、目もしくは口のチック)および/またはエレクトログラフ手段によって、アッセイすることができる(大部分の発作は、典型的なエレクトログラフ異常を有する)。従って、本発明は、一定の期間にわたる多数の発作を特徴とする癲癇を治療するために用いることもできる。
【0113】
さらなる例として、本発明の送達ベクターを使用して、ソマトスタチン(またはその活性フラグメント)を脳に投与して、下垂体腫瘍を治療することができる。この実施形態によると、ソマトスタチン(またはその活性フラグメント)をコードする送達ベクターを、マイクロインフュージョンによって下垂体に投与することができる。同様に、このような治療を用いて、先端巨大症(下垂体からの成長ホルモン異常分泌)を治療することができる。ソマトスタチンの核酸配列(例えば、ジーンバンクアクセッション番号J00306)およびアミノ酸配列(例えば、ジーンバンクアクセッション番号P01166;プロセッシングされた活性ペプチド ソマトスタチン−28およびソマトスタチン−14を含有する)は、当分野では公知である。
【0114】
本発明は、本発明の核酸におけるスプライシング事象を変調する能力について化合物をスクリーニングするための方法も提供する。従って、追加の実施形態において、本発明は、本発明の核酸のスプライス要素の第二セットの構成要素をブロックする化合物を同定する方法を提供し、a)スプライシングを可能にさせる条件下でその化合物と本核酸を接触させること;ならびにb)第一RNAの産生または第二RNAの産生を検出することを含み、この場合、その第一RNAの産生によって、本発明の核酸のスプライス要素の第二セットの構成要素をブロックする化合物が同定され、ならびに第二RNAの産生によって、そのスプライス要素の第二セットの構成要素をブロックしない化合物が同定される。これらの方法を利用して、第一RNAおよび/または第二RNAの産生を増加させるまたは減少させることができる化合物を同定することもできる。本明細書に記載する方法によって同定された化合物は、生物学的機能を付与するタンパク質および/またはRNAを産生させる方法を含む本発明の方法に、ならびに治療方法に用いることができる。他の実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチド、小分子および/または化合物を用いることにより、選択的スプライシング事象を変調することができる。
【0115】
例えば、本発明の核酸、ベクターおよび/または細胞を本発明のブロッキングオリゴヌクレオチド、小分子および/または他の化合物と一緒に被験者に導入して、スプライスセットのうちの特定のセットでの活性化の結果として、被験者において生物学的機能を付与する第一タンパク質および/またはRNAを産生させることができる。同核酸は、スプライスセットのうちの別のセットを活性化させることによってその被験者において生物学的機能を付与する別のタンパク質、ペプチドおよび/またはRNAをコードするように工学することができる。その別のタンパク質および/またはRNAは、本発明の別のブロッキングオリゴヌクレオチド、小分子および/または化合物がその被験者に導入されると、産生される。一例として、前記第一RNAは、第一ブロッキングオリゴヌクレオチド、小分子および/または他の化合物が存在するとき、関心のある第一タンパク質を産生させることができ、ならびに本発明の別の第二ブロッキングオリゴヌクレオチド、小分子および/または化合物の添加後、関心のある第二タンパク質または機能的RNAを産生させる第二のRNAが得られる(例えば、第一タンパク質のアイソフォーム(例えば、インターロイキン(IL)−4およびそのスプライス変異体、IL−4Δ2)が産生され得る)(例えば、Fletcher et al.「Increased expression of mRNA encoding interleukin(IL)−4 and its splice variant IL−4Δ2 in cells from contacts of Mycobacterium tuberculosis,in the absence of in vitro stimulation」Immunology 2004 Aug;112(4):669−73;Minn et al.「Insulinomas and expression of an insulin splice variant」Lancet 2004 Jan 31;363(9406):363−7;Schlueter et al.「Tissue−specific expression patterns of the RAGE receptor and its soluble forms−a result of regulated alternative splicing?」Biochim Biophys Acta 2003 Oct 20;1630(1):1−6;Vegran et al.「Implication of alternative splice transcripts of caspase−3 and survivin in chemoresistance」Bull Cancer 2005 Mar;92(3):219−26;Ren et al.「Alternative splicing of vitamin D−24−hydroxylase:A novel mechanism for the regulation of extrarenal 1,25−dihydroxyvitamin D synthesis」J Biol Chem.2005 Mar 23;et al.「Mutant huntington protein:a substrate for transglutaminase 1,2,and 3」J Neuropathol Exp Neurol 2005 Jan;64(l):58−65;Ding and Keller.「Splice variants of the receptor for advanced glycosylation end products(RAGE)in human brain」Neurosci Lett.2005 Jan 3;373(1):67−72;et al.「Transcript scanning reveals novel and extensive splice variations in human 1−type voltage−gated calcium channel,Cavl.2 α1 subunit」J Biol Chem 2004 Oct 22;279(43):44335−43,Epub 2004 Aug 6参照。これらの参考文献のすべてが、それら全体として、引用により本明細書の一部をなすものとする)。
【0116】
本発明は、組成物中の本発明の核酸、ベクターおよび/または細胞をさらに提供する。従って、追加の実施形態において、本発明は、医薬的に許容される担体中の本発明の核酸、本発明のベクターおよび/または本発明の細胞を含む組成物を提供する。「医薬的に許容される担体」とは、その医薬組成物中の他の成分と相溶性であり、且つ、被験者に有害および有毒でない担体を意味する。特に、医薬的に許容される担体は、本発明の被験者に投与または送達するために調合される無菌担体であることを意図する。
【0117】
本発明の組成物および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物も提供する。本明細書に記載する組成物は、公知の技術に従って医薬用担体中で投薬用に調合することができる。例えば、Remington,The Science And Practice of Pharmacy(最新版)参照。前記担体は、固体であってもよいし、液体であってもよいし、またはそれら両方であってもよく、ならびに好ましくは、本発明の組成物と共に単位用量調合物(これは、約0.01または0.5重量%から約95重量%または99重量%の本組成物を含有し得る)、例えば錠剤として調合される。本医薬組成物は、1つ以上の補助成分を場合によっては含む成分を混合することを含む(しかし、これらに限定されない)任意の周知調剤技術によって作製される。
【0118】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸内、局所、吸入(例えば、エーロゾルによる)口腔内(例えば、舌下)、経膣、非経口(例えば、皮下、筋肉内、経皮、関節内、胸膜内、腹腔内、脳内、動脈内または静脈内)、局所(すなわち、気道表面を含む、皮膚表面と粘膜表面の両方)および経皮投与に適するものを含むが、いずれの所与の症例においても、最も適する経路は、当分野では周知であるように、被験者の種、年齢、性別および総合的な健康状態、治療する状態の性質および重症度、ならびに/または投与することとなる特定の組成物の性質(すなわち、投薬量、調合)に依存する。
【0119】
経口投与に適する医薬組成物は、本発明の組成物の所定量を各々が含有する個別の単位体、例えばカプセル、カシェ剤、ロゼンジまたは錠剤で、粉末もしくは顆粒として、水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油型もしくは油中水型エマルジョンとして、提供することができる。経口送達は、動物の胃の中での消化酵素による消化に耐えることができる担体に本発明の組成物を複合させることによって行うことができる。このような担体の例としては、当分野において公知であるようなプラスチックカプセルまたは錠剤が挙げられる。このような調合物は、任意の適する調剤方法によって作製することができ、それらの方法は、本組成物と適する担体(これは、上で述べたような補助成分を1つ以上含有することができる)を会合させる段階を含む。一般に、本発明の実施形態による医薬組成物は、液体担体もしくは微粉固体担体または両方と本組成物を均一、且つ、均質に混合し、その後、必要な場合には、その得られた混合物を成形することによって作製する。例えば、錠剤は、本組成物と場合によっては1つ以上の補助成分とを含有する粉末または顆粒を圧縮または成形することによって作製することができる。圧縮錠剤は、結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤および/または界面活性剤/分散剤と場合によっては混合された粉末または顆粒などの易流動性形態の本組成物を適する機械で圧縮することによって作製する。成形錠剤は、不活性液体結合剤で湿潤させた粉末化合物を適する機械で成形することによって製造する。
【0120】
口腔内(舌下)投与に適する医薬組成物としては、着香基剤、通常はスクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカントゴム中の本発明の組成物を含むロゼンジ;ならびに不活性基剤、例えばゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアラビアゴム中の本組成物を含む香剤が挙げられる。
【0121】
非経口投与に適する本発明の医薬組成物は、本発明の組成物の滅菌水性および非水性注射溶液を含むことができ、これらの製剤は、好ましくは、対象となる受容者の血液と等張である。これらの製剤は、抗酸化物質、緩衝剤、静菌薬および溶質を含有することがあり、これらが、その組成物を対象となる受容者の血液と等張にする。水性および非水性滅菌懸濁液、溶液およびエマルジョンは、懸濁化剤および増粘剤を含むことができる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、および注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体としては、食塩水および緩衝媒質を含む、水、アルコール/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液または固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、液体および栄養補充物、電解質補充薬(例えば、リンゲルデキストロースに基づくもの)などが挙げられる。保存薬および他の添加剤、例えば抗菌剤、抗酸化物質、キレート剤および不活性ガスなどが存在し得る。
【0122】
本組成物は、単位用量または複数回分の用量用の容器に、例えば密封アンプルおよびバイアルに入れることができ、ならびに使用直前に無菌液体担体、例えば食塩水または注射用蒸留水を添加するだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管することができる。
【0123】
即時調合注射溶液および懸濁液は、前に説明した種類の無菌粉末、顆粒および錠剤から作製することができる。例えば、密封容器に入った単位剤形で本発明の注射用安定無菌組成物を提供することができる。本組成物は、凍結乾燥物の形態で提供することができ、これを適する医薬的に許容される担体で再構成して、被験者への注射に適する液体組成物を形成することができる。この単位剤形は、約1μgから約10gの本発明の組成物であり得る。本組成物が実質的に水不溶性である場合、生理学的に許容される十分な量の乳化剤を水性担体中のその組成物を乳化するために十分な量で含めることができる。1つのこのような有用な乳化剤は、ホスファチジルコリンである。
【0124】
直腸内投与に適する医薬組成物は、好ましくは、単位用量坐剤として提供する。これらは、1つ以上の従来の固体担体、例えばカカオ脂などと本組成物を混合物し、その後、その得られた混合物を成形することによって作製することができる。
【0125】
皮膚への局所適用に適する本発明の医薬組成物は、好ましくは、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、スプレー、エーロゾルまたは油の形態をとる。使用することができる担体としては、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、経皮吸収増進剤(transdermal enhancer)、およびこれらのうちの2つ以上の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。一部の実施形態において、例えば、局所送達は、本発明の医薬組成物と、皮膚に通すことができる親油性試薬(例えば、DMSO)とを混合することによって行うことができる。
【0126】
経皮投与に適する医薬組成物は、長期間にわたって被験者の表皮と密接した状態のままでいられるようにした個別のパッチの形態であり得る。経皮投与に適する組成物は、イオン導入法(例えば、Pharmaceutical Research 3:318(1986))によって送達することもでき、ならびに典型的には本発明の組成物の場合によっては緩衝された水溶液の形態をとる。適する調合物は、シトレートまたはビストリス緩衝液(pH6)またはエタノール/水を含むことができ、ならびに0.1から0.2Mの活性成分を含有することができる。
【0127】
本発明の組成物の有効量は、組成物ごとにおよび被験者ごとに異なり、様々な要因、例えば、被験者の年齢、種、性別、体重、総合的な状態、および治療すべき特定の疾病または疾患に依存する。有効量は、通常の当業者には公知の常用の薬理学的手順に従って決定することができる。一部の実施形態において、約0.1μg/kgから約1mg/kgの範囲の投薬量が、治療効能を有する。本発明の核酸の送達にウイルスベクターを利用する実施形態では、利用するウイルスに依存して、ウイルス用量を測定して、特定の数のウイルス粒子またはプラーク形成単位(pfu)または感染性粒子を含めることができる。例えば、一部の実施形態において、特定の単位用量は、103、104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013または1014pfuまたは感染性粒子を含むことができる。
【0128】
本発明の組成物の投与頻度は、所望の治療効果を授けるために必要なだけの頻度であり得る。例えば、本組成物は、特定の状態を制御するために、ならびに/または特定の効果および/もしくは恩恵を達成するために、1日に1、2、3、4回以上、1週間に1、2、3、4回以上、1月に1、2、3、4回以上、1年に1、2、3、または4回、および/または必要に応じて投与することができる。一部の実施形態では、被験者の生涯にわたって1、2、3または4用量が、所望の治療効果を達成するために妥当であり得る。本発明の組成物の投与量および頻度は、治療または予防する特定の状態および所望の治療効果に依存して変わる。
【0129】
本発明の組成物は、被験者の細胞にインビボでまたはエクスビボで投与することができる。被験者の細胞へのインビボでの投与について、ならびに被験者への投与については、本発明の組成物を、例えば、経口的に、非経口的に(例えば、静脈内に)、筋肉内注射により、皮内に(例えば、遺伝子銃により)、腹腔内注射、皮下注射により、経皮的に、体外的に、局所的になど、上で述べたように、投与することができる。また、本発明の組成物は、樹状細胞(これらは、当分野では周知の方法に従って被験者の細胞から単離または成長させる)に、または被験者からのバルクPBMCもしくはそれらの様々な細胞サブフラクションに、パルスすることができる。
【0130】
エクスビボ法を利用する場合、当分野では周知の標準的プロトコルに従って細胞または組織を除去し、体外で維持することができ、その間に本発明の組成物をそれらの細胞または組織に導入する。例えば、本発明の核酸およびベクターは、任意の遺伝子輸送メカニズム、例えばウイルス媒介遺伝子送達、リン酸カルシウム媒介遺伝子送達、エレクトロポレーション、マイクロインジェクションまたはプロテオリポソームなどによって細胞に導入することができる。その後、それらの形質導入されたおよび/またはトランスフェクトされた細胞を、その細胞または組織タイプについての標準的な方法により注入(例えば、医薬的に許容される担体中で)または移植して被験者に戻すことができる。被験者への様々な細胞の移植または注入についての標準的な方法は、公知である。
【0131】
本発明の調合物は、活性化合物の滅菌水性および非水性注射溶液を含むことができ、これらの製剤は、好ましくは、対象となる受容者の血液と等張であり、本質的に発熱物質不含である。これらの製剤は、抗酸化物質、緩衝剤、静菌薬および溶質を含有することがあり、これらが、その調合物を対象となる受容者の血液と等張にする。水性および非水性滅菌懸濁液は、懸濁化剤および増粘剤を含むことができる。これらの調合物は、単位用量または複数回分の用量用の容器に、例えば密封アンプルおよびバイアルに入れることができ、ならびに使用直前に無菌液体担体、例えば食塩水または注射用蒸留水を添加するだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管することができる。
【0132】
ある調合物では、本発明の組成物を、非経口投与に適当であり得る脂質粒子または小胞内、例えばリポソームまたは微結晶、の中に収容することができる。前記粒子は、化合物がその中に収容されるのであれば、単層または多層のいずれの適する構造のものであってもよい。正の電荷を有する脂質、例えば、N−[1−(2,3−ジオレオイロキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチル−アンモニウムエチルスルフェート、すなわち「DOTAP」は、このような粒子および小胞に特に好ましい。このような脂質粒子の作製は、周知である。例えば、Janoffらの米国特許第4,880,635号明細書、Kuronoらの米国特許第4,906,477号明細書、Wallachらの米国特許第4,911,928号明細書、Wallachらの米国特許第4,917,951号明細書、Allenらの米国特許第4,920,016号明細書、Wheatleyらの米国特許第4,921,757号明細書などを参照のこと。
【0133】
本発明の医薬組成物は、例えば、本明細書に記載するような疾病および/または疾患の治療のための薬物の生産に使用することができる。
【0134】
以下の配列は、本発明に含まれる。
配列番号1.プラスミドTRCBA−int−luc mut.Nts 163−2036:CBAプロモーター;nts.2739−4573:突然変異イントロン(654 C−T);nts 4592−4813:ポリAシグナル。
配列番号2.プラスミドTRCBA−int−luc(wt).Nts 163−2036:CBAプロモーター;nts.2739−3588:wtイントロン(654 C);nts 2071−4573:ルシフェラーゼ中のイントロン;nts 4592−4813:ポリAシグナル。
配列番号3.プラスミドTRCBA−int−luc(657GT).Nts 163−2036:CBAプロモーター;nts.2739−3588:突然変異イントロン(654 C−T;657 TA−GT);nts 2071−4573:ルシフェラーゼ中のイントロン;nts 4592−4813:ポリAシグナル。
配列番号4.プラスミドGL3−int−Luc(mut).Nts 48−250:SV40プロモーター;nts.948−1797:突然変異イントロン(654 C−T);nts 2814−3035:ポリAシグナル;nts.280−2782:突然変異イントロンを有するルシフェラーゼ。
配列番号5.プラスミドGL3−int−Luc(wt).Nts 48−250:SV40プロモーター;nts.948−1797:wtイントロン(654 C);nts 280−2782:イントロンを有するルシフェラーゼ;nts 2814−3035:ポリAシグナル。
配列番号6.プラスミドGL3−int−Luc(657GT).Nts 48−250:SV40プロモーター;nts.948−1797:イントロン(654 C−T;657TA−GT);nts 280−2782:突然変異イントロンを有するルシフェラーゼ;nts 2814−3035:ポリAシグナル。
配列番号7.プラスミドGL3−2int−fron−sph(mut).Nts 48−250:SV40プロモーター;nts.251−1100;1771−2620:突然変異イントロン(654 C−T);nts 1103−3635:突然変異イントロンを有するルシフェラーゼ;nts 3637−3858:ポリAシグナル。
配列番号8.プラスミドGL3−3int−2fron−sph(mut).Nts 48−250:SV40プロモーター;nts.251−1100;1106−1965;2635−3484:突然変異イントロン(654 C−T);nts 1967−4469:突然変異イントロンを有するルシフェラーゼ;nts 4514−4735:ポリAシグナル。
配列番号9.プラスミドGL3−int−luc A(mut).Nts 48−250:SV40プロモーター;nts.673−1522:イントロン(654 C−T);nts 280−2782:イントロンを有するルシフェラーゼ;nts 2814−3035:ポリAシグナル。
配列番号10.プラスミドGL3−int−Luc B(mut).Nts 48−250:SV40プロモーター;nts.1440−2289:イントロン(654 C−T);nts 280−2782:イントロンを有するルシフェラーゼ;nts 2814−3035:ポリAシグナル。
配列番号11.プラスミドGL3−int−Luc C(mut).Nts 48−250:SV40プロモーター;nts.1691−2540:イントロン(654 C−T);nts 280−2782:イントロンを有するルシフェラーゼ;nts 2814−3035:ポリAシグナル。
配列番号12.プラスミドGL3−int−fron(mut).Nts 48−250:SV40プロモーター;nts.251−1100:イントロン(654 C−T);nts 1103−2755:イントロンを有するルシフェラーゼ;nts 2787−3008:ポリAシグナル。
配列番号13.プラスミドGL3−2int−sph(mut).Nts 48−250:SV40プロモーター;nts.948−1797;1798−2647:イントロン(654 C−T);nts 280−3632:イントロンを有するルシフェラーゼ;nts 3664−3885:ポリAシグナル。
配列番号14.プラスミドGL3−2int−sph C(mut).Nts 48−250:SV40プロモーター;nts.948−1797;2541−3390:イントロン(654 C−T);nts 280−3632:イントロンを有するルシフェラーゼ;nts 3664−3885:ポリAシグナル。
配列番号15.プラスミドGL3−sint200−sph(mut).Nts 48−250:SV40プロモーター;nts.948−1597:イントロン(654 C−T);nts 280−2582:イントロンを有するルシフェラーゼ;nts 2794−2835:ポリAシグナル。
配列番号16.プラスミドGL3−sint200−sph(657 GT).Nts 48−250:SV40プロモーター;nts.948−1597:イントロン(654 C−T;657 TA−GT);nts 280−2582:イントロンを有するルシフェラーゼ;nts 2794−2835:ポリAシグナル。
配列番号17.プラスミドGL3−sint425−sph.Nts 48−250:SV40プロモーター;nts.948−1373:イントロン(654 C−T);nts 280−2358:イントロンを有するルシフェラーゼ;nts 2569−2615:ポリAシグナル。
配列番号18.突然変異イントロン(654 C−T)。
配列番号19.wtイントロン(654 C)。
配列番号20.2つの突然変異を有するイントロン(654 C−T;657 TA−GT)。
配列番号21.nts.669−1518に突然変異イントロン(654 C−T)を有するルシフェラーゼcDNA。
配列番号22.nts.669−1518に野生型イントロンを有するルシフェラーゼcDNA。
配列番号23.nts.669−1518に二重突然変異イントロン(C654 C−T;657 TA−GT)を有するルシフェラーゼcDNA。
配列番号24.nts.1−850に突然変異イントロン(654 C−T)およびnts.1521−2370に突然変異イントロン(654 C−T)を有する、ルシフェラーゼcDNA。
配列番号25.nts.1−850に突然変異イントロン(654 C−T)およびnts.861−1710およびnts.2385−3234に2つの突然変異イントロン(654 C−T)を有する、ルシフェラーゼcDNA。
配列番号26.代替位置(alternative location)A(nts.394−1243)に突然変異イントロン(654 C−T)を有するルシフェラーゼcDNA。
配列番号27.代替位置B(nts.1161−2010)に突然変異イントロン(654 C−T)を有するルシフェラーゼcDNA。
配列番号28.代替位置C(nts.1412−2261)に突然変異イントロン(654 C−T)を有するルシフェラーゼcDNA。
配列番号29.翻訳部位の上流(nts.1−850)に突然変異イントロン(654 C−T)を有するルシフェラーゼcDNA。
配列番号30.nts.669−1518およびnts.1519−2368に2つの突然変異イントロンを有する、ルシフェラーゼcDNA。
配列番号31.nts.669−1518およびnts.2262−3111に2つの突然変異イントロン(654 C−T)を有する、ルシフェラーゼcDNA。
配列番号32.nts.669−1318に突然変異イントロン(654 C−T)、および200塩基対欠失を有する、ルシフェラーゼcDNA。
配列番号33.nts.669−1318に二重突然変異イントロン(654 C−T;657 TA−GT)、および200塩基対欠失を有する、ルシフェラーゼcDNA。
配列番号34.nts.669−1094に突然変異イントロン(654 C−T)、および425塩基対欠失を有する、ルシフェラーゼcDNA。
配列番号35.αアンチトリプシンcDNAおよびnts.2866−3715に突然変異イントロン(654 C−T)を有する、プラスミドTRCBA。
配列番号36.nts.772−1621に突然変異イントロン(654 C−T)を有するαアンチトリプシンcDNA。
配列番号37.IVS2−654のためのブロッキングオリゴヌクレオチド GCT ATT ACC TTA ACC CAG。
配列番号38.657GT突然変異を有するIVS2−654のためのブロッキングオリゴヌクレオチド GCA CTT ACC TTA ACC CAG。
配列番号50(564CT突然変異を有するIVS2−654イントロン)。
配列番号51(657G突然変異を有するIVS2−654イントロン)。
配列番号52(658T突然変異を有するIVS2−654イントロン)。
配列番号20(657GT突然変異を有するIVS2−654イントロン)。
配列番号53(200bp欠失を有するIVS2−654イントロン)。
配列番号54(425bp欠失を有するIVS2−654イントロン)。
配列番号68(197bpのみを有するIVS2−654イントロン)。
配列番号69(247bpのみを有するIVS2−654イントロン)。
配列番号55(6A突然変異を有するIVS2−654イントロン)。
配列番号56(564C突然変異を有するIVS2−654イントロン)。
配列番号57(841A突然変異を有するIVS2−654イントロン)。
配列番号58(IVS2−705イントロン)。
配列番号59(564CT突然変異を有するIVS2−705イントロン)。
配列番号60(657G突然変異を有するIVS2−705イントロン)。
配列番号61(658T突然変異を有するIVS2−705イントロン)。
配列番号62(657GT突然変異を有するIVS2−705イントロン)。
配列番号63(200bp欠失を有するIVS2−705イントロン)。
配列番号64(425bp欠失を有するIVS2−705イントロン)。
配列番号65(6A突然変異を有するIVS2−705イントロン)。
配列番号66(564C突然変異を有するIVS2−705イントロン)。
配列番号67(841A突然変異を有するIVS2−705イントロン)。
配列番号70(CFTRエキソン19野生型配列)。
配列番号71(CFTRエキソン19 3849 + 10kb CからTへの突然変異)。
配列番号72(CFTRエキソン19野生型オリゴ).
配列番号73(CFTRエキソン19 3849 + 10kb CからTへの突然変異 オリゴ)。
配列番号74(マウスジストロフィン イントロン22、エキソン23およびイントロン23野生型配列)。
配列番号75(mdxマウスジストロフィン イントロン22、エキソン23およびイントロン23 ナンセンス突然変異)。
配列番号76(アンチセンス エキソン 23 スキッピング誘導性オリゴ)。
配列番号39(IVS2−654における6A突然変異のためのオリゴ)。
配列番号40(IVS2−654における564C突然変異のためのオリゴ)。
配列番号41(IVS2−654における564CT突然変異のためのオリゴ)。
配列番号43(IVS2−654における841A突然変異のためのオリゴ)。
配列番号44(IVS2−654における657G突然変異のためのオリゴ)。
配列番号45(IVS2−654における658T突然変異のためのオリゴ)。
配列番号42(IVS2−705における705G突然変異のためのオリゴ)。
配列番号49(IVS2−705のためのオリゴ)。
配列番号46(IVS2−654のためのオリゴ)。
配列番号47(IVS2−654のためのオリゴ)。
配列番号48(IVS2−654のためのオリゴ)。
【0135】
以下の実施例は、本発明を例証するために示すものであり、本発明の限定と解釈すべきではない。
【実施例1】
【0136】
(ウイルスベクター誘導遺伝子発現のスプライシング媒介制御)
(プラスミドの構成)
プラスミドpGL3は、Promegaから購入した。すべてのプライマーは、UNC−CH LCCCオリゴヌクレオチドコアファミリーから入手した。すべての酵素は、New England Bioladsからのものであり、この供給業者の推奨に従って使用した。緑色蛍光タンパク質(GFP)またはルシフェラーゼ(Luc)cDNAの中央に潜在スプライス部位を有する野生型(wt)またはイントロン配列を挿入するために、pre−mRNAにおけるコンセンサス配列に従って挿入部位を選択した(Luca Cartegni et al.「Listening to silence and understanding nonsense exonic mutations that affect splicing」 Nat Rev Genet.2002 Apr;3(4):285−98)。
【0137】
イントロンは、(番号1のルシフェラーゼcDNA開始コドンATGに基づき)様々な位置に挿入した:393−394(A)、668−669(B)、1160−1161(C)および1411−1412(D)。幾つかの試験では、イントロンをプロモーターとルシフェラーゼcDNAの間に挿入した。4フラグメントライゲーション戦略を適用した。Pfu酵素(Stratagen)を使用して、イントロンおよび隣接する、NcoIを有する上流配列とXbaIを有する下流配列の両方を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅した。GL3骨格はNcoIとXbaIの両方で消化し、一方、そのPCR産物はNcoIまたはXbaIのいずれかで消化した。イントロンを平滑末端ライゲーションによって挿入した。そのセグメントをgelから精製した。1時間後、Fast Ligase(Epicentre)による室温ライゲーションを行い、その後、電子穿孔(elebtroperforation)によってその核酸をDH10B細菌細胞に形質転換させた。
【0138】
(ウイルス作製)
イントロン調節トランスジーンカセットを有するAAV2ベクターを、標準的な3−プラスミドコトランスフェクション手順(Xiao et al.「Efficient long−term gene transfer into muscle tissue of immunocompetent mice by adeno− associated virus vector」 J Virol.1996 Nov;70(11):8098−108)に従って作製した。その力価をドットブロットによって判定した。
【0139】
(インビトロでのルシフェラーゼ発現アッセイ)
幾つかの実験において、24ウエルプレート内で293細胞をトランスフェクトした。各ウエルにつき、10ngのプラスミド 5μL、2.5MのCaCl2 10μLおよびddH2O 85μLを共に混合した後、100μLの2X HeBSを添加した。これは、光学顕微鏡法のもとで沈殿が形成した後、細胞に添加した。同時に幾つかの細胞をオリゴ(例えば、0.05mM、10μL)で処理した。
【0140】
37℃、5%CO2での24時間のインキュベーション後、200μLの1×PBSで洗浄した後に、それらの細胞を各ウエルにつき100μLの1×溶解緩衝液で溶解した。Microplate Luminometer(Tropix)を使用するルシフェラーゼアッセイのために、20μL量を取って96ウエル不透明プレートに入れた。ルシフェラーゼ基質は、Promegaから購入した。
【0141】
(動物研究)
ウイルス注射の1週間後、2.5mMのアベルチンまたはイソフルランの腹腔内(i.p.)注射により動物を麻酔した。ルシフェラーゼ基質(125μL、25mg/mL、Promega)をi.p.投与して、蛍光反応を惹起した。Luciferase Imaging System(Roper Scientific)またはIVIS撮像システム(Xenogen)を適用して、その動物全体からルシフェラーゼ蛍光の「現時間」撮像を捕捉した。画像は、最初に(第0日)取得し、その後2日続けてオリゴヌクレオチドを投与した(i.p.25mg/kg)後に、取得した。
【0142】
この実施例では、β−グロビンイントロンにおける自然発生突然変異を用いて、調節されたスプライシング系を発生させた。これらのイントロン突然変異は、β−サラセミアの患者で発見されたものであり、新たな5’スプライスドナー部位を作ることによって疾病を生じさせることが判明した。潜在3’スプライスアクセプターと協力して、この新たなドナー部位が、インフレーム停止シグナルを有するイントロンの一部分のmRNAへの包含を生じさせる。
【0143】
具体的には、この実施例において、AAVベクターの緑色蛍光タンパク質(GFP)トランスジーンに含まれている突然変異イントロンを完全ベクター調節系として使用できることを証明する。突然変異を指示するオリゴヌクレオチド(「オリゴ」)の付加は、インビトロでもインビボでもスプライシング異常を補正し、正しい遺伝子発現を誘導する。
【0144】
AAVプラスミドベクターは、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターまたはハイブリッドCMVニワトリβ−アクチンプロモーター(CBもしくはCBA)の後に組み込まれた野生型または突然変異β−グロビンイントロンを含有する緑色蛍光タンパク質(GFP)またはルシフェラーゼレポーター遺伝子をクローニングすることによって構成した。2つの異なるスプライス突然変異を、別個のAAVベクター(そのイントロンのnt 654での突然変異(AAV−654)、および潜在スプライス部位での追加の突然変異を有するnt 705での突然変異(AAV−705)に組み込んだ。HEK293細胞またはHeLa細胞へのこれらのAAV構成体のトランスフェクションは、結果として、野生型イントロンでの良好な遺伝子発現および突然変異イントロンでの低い遺伝子発現をもたらした。その後、それらの細胞を、nt 654での突然変異またはnt 705での突然変異をそれぞれ指示する2’−O−メトキシエチルホスホロチオエート(MOE)オリゴヌクレオチドでトランスフェクションすることで、654および705U突然変異体からの遺伝子発現を、それぞれ増加させた。
【0145】
組換えAAVを産生させ、HEK293細胞とHeLa細胞の両方で検査した。AAV感染の24時間後、対応する突然変異を指示するMOEオリゴヌクレオチドで細胞をトランスフェクトし、そのオリゴトランスフェクション後24および48時間の時点でレポーター遺伝子発現を観察した。AAV−654またはAAV−705Uで感染させ、オリゴで感染させていない細胞は、トランスフェクション後24時間の時点でGEP発現を実質的に示さず、48時間の時点でほんのわずかな遺伝子発現を示した。対照的に、オリゴでトレンスフェクトした細胞は、24時間の時点で有意な遺伝子発現を示し、48時間の時点で強度が多少上昇したが、細胞数は増加しなかった。GFPポジティブ細胞のカウントは、48時間の時点で、654突然変異体についてはオリゴの付加で200倍までの誘導および705突然変異体については70倍の誘導を示した。GFP蛍光細胞カウント数によりおよび全場蛍光によりアッセイしたところ、705U突然変異体は、HeLa細胞およびHEK 293細胞においてあまり強くない誘導を示した。これは、遺伝子発現のわずかに高い基底レベルおよびオリゴの付加へのあまり強くない応答に起因すると思われた。
【0146】
野生型イントロン(AAV−wt int)を含有するrAAVでの感染は、ほぼ100%の細胞において、突然変異体と同じ感染多重度(MOI)で強いGFP発現を一貫してもたらした。このAAV−wtイントロンは、オリゴの存在下でいずれの突然変異体よりも有意に大きい遺伝子発現を示した。これは、そのオリゴによる不完全な補正を示している。半定量RT−PCRにより、オリゴの存在下、AAV−654感染細胞とAAV−706U感染細胞の両方において、正しくスプライシングされた種と正しくなくスプライシングされた種の両方が確認された。しかし、オリゴの用量の増加は、遺伝子発現を実質的に増加させなかった。ウイルスの量の増加は、全場強度を多少増加させるが、GFPポジティブ細胞の数は増加させなかった。
【0147】
表1は、ルシフェラーゼcDNAを基準にして異なる位置での1つのイントロンの補正効率を示すものである。
【0148】
表2は、多数のイントロンの挿入に伴うルシフェラーゼトランスジーン発現の変化を示すものである。
【0149】
表3は、塩基対151〜350を欠失させることによりその長さを四分の一に短縮したイントロン(配列番号53)のトランスジーン補正効率を示すものである。
【実施例2】
【0150】
(インビボ試験)
オリゴヌクレオチドによるAAV媒介遺伝子発現の誘導を、CBプロモーターによって駆動された654突然変異イントロン構成体(AAV−CB−654)を用いて、インビボでも調査した。ルシフェラーゼレポーター遺伝子内に654突然変異イントロンを有するrAAVタイプ2ベクター(5x1010 ベクター粒子)を門脈注射によりマウス肝臓に送達した。1年後、オリゴを、1日1回25mg/kgで2日間、腹腔内投与した。3日目にルシフェラーゼ撮像を行った。オリゴ治療を受けていない動物と比較したとき、ルシフェラーゼ発現は、8〜10倍高かった。インビボで観察されたオリゴ誘導アップレギュレーションは1ヶ月にわたって存続し、その後、低下してベースラインレベルに戻った。1週間ベクターを投与し、その後、オリゴを投与した動物の第二のセットは、トランスジーン発現の特徴的なアップレギュレーション、その後、1ヶ月にわたっての低下という結果となった。オリゴの反復投与により、イントロン調節トランスジーン発現を再び活性化することもできた。この結果は、ベクター特異的構成プロモーターは長期間にわたってmRNAを発現し続ける(インビボでのAAV媒介トランスジーン発現と一致)が、機能的遺伝子産物は「スプライス媒介」薬(例えば、オリゴヌクレオチド)の投与後にしか観察されないことを明示している。
【0151】
これらの結果は、非機能的mRNAから機能的mRNAへとベクター産生RNAのスプライシングを調節することによる機能的遺伝子発現の調節を明示している。
【0152】
このオリゴの付加は、遺伝子発現を相当急速に誘導して、組織培養では24時間までに、インビボでは1から2日以内に発現を生じさせた。遺伝子発現の継続時間は、そのトランスジーンによって産生されるタンパク質の半減期およびそのオリゴヌクレオチドの半減期による影響を受ける。オリゴヌクレオチド、例えば2’−O−メトキシエチルホスホロチオエート骨格は、インビボで長い半減期を有し、8時間後、ラットでは完全にそのまま維持される。継続的mRNA補正およびタンパク質発現が、1回のMOEまたはLNAオリゴ注射で、かなり長い間、続くことがあった。オリゴヌクレオチドの骨格および用量を変えることによって遺伝子補正の継続時間を変えることができるはずである。異なる骨格は、有意に異なる生体内安定性を明示し、これらを用いて、遺伝子発現継続時間をより正確に制御することができた。スプライシングされたmRNAが速いまたは遅い交替速度を有するようにさせるシス作用性要素を含めることにより、ターゲットmRNAの半減期を制御することもできる。このような要素の使用は、当分野では一般的であり、当業者によく知られている。強いポリAシグナルの付加も、プロセッシングされたメッセージの半減期に影響を及ぼす。従って、「スプライス媒介」薬が機能的mRNAをアップレギュレートする能力は、与えられる量、生体内分布、安定性および/またはターゲット配列への親和性、ならびにターゲットmRNAの存在度および安定性による影響を受け得る。これらのパラメータのすべてを、当分野では公知の方法に従って修飾して、「スプライス媒介」調節をより正確に制御することができた。
【0153】
遺伝子発現を調節するためにイントロンを使用することにより、トランスジーン以外の異種タンパク質の付加の必要をなくし、そのようにして調節トランスアクチベータへの一連の免疫反応についての可能性を回避する。加えて、このイントロンは、サイズが様々であり得(1000bp以下)、ならびにオリゴの付加後に単一のベクターにおいて組織特異性およびタンパク質発現調節を生じさせる組織特異的プロモーターと容易に併用することができる。より多くの従来的な調節系において、一般に、これには、2つのベクターおよび2つの別のプロモーター(すなわち、トランスジーン発現を駆動するための調節プロモーターおよびトランスアクチベータを駆動するための組織特異的プロモーター)が必要である。
【0154】
この系の使用効果をさらに実証するために、機能的治療用トランスジーン(α1−アンチトリプシン;AAT)をイントロン調節遺伝子カセット系でAAVベクターにクローニングした。ベクター粒子の門脈注射後、機能的AATトランスジーン活性をELISAアッセイにより経時的に測定した。「スプライス媒介」オリゴ不在下で検出されたヒトAATは、少ないか無かった。しかし、薬物(この実施例では、LNAオリゴ)の存在下では、血液中でのトランスジーン発現のアップレギュレーション(100倍)をモニターすることができ、レポーター遺伝子について説明したものに類似した反応速度および継続時間(30日を越える)であった。AAVベクターと一致して、ベクター送達後、トランスジーン発現は、ターゲット組織において遺伝子発現カセット(レポーターまたは治療用)にかかわらず確実であり、持続する。「スプライス媒介」制御ベクターに関しては、ベクター送達のすべての態様が、機能的mRNAの発現の例外と一致する。この態様は、外因性「スプライス媒介性」薬の存在によってのみ制御され、ならびに選択された時間でのみおよび/または反復的に生じさせて、トランスジーンmRNAの所望の機能的活性を達成することができる。
【実施例3】
【0155】
(図1〜3に示す試験)
本発明の一部の実施形態において、AAVプラスミドベクターは、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターまたはハイブリッドCMVニワトリβ−アクチンプロモーター(CB)のいずれかの後のコード配列内に突然変異β−グロビンイントロンを含有するレポーター遺伝子カセット(緑色蛍光タンパク質−GFPまたはルシフェラーゼ−Luc)をクローニングすることによって構成した。AAVベクターは、標準的な3−プラスミドコトランスフェクション手順(Xiao et al.Journal of Virology(1998))に従って産生させた。イントロン突然変異配列の存在に基づき、これらのベクターカセットからのRNA発現の結果、pre−mRNAが形成される(図1(1))。外因性オリゴヌクレオチドが不在の場合、pre−mRNAは、潜在スプライス部位を用いてスプライシングすることとなる。これは、そのイントロンのnt 654に位置する単点突然変異の結果であり、その突然変異の結果、選択的スプライス部位(図1(1)(i)におけるpre−mRNAの上の小さな三角)が形成される。この反応から産生されるスプライシングされたmRNAは、2つのコード配列間にそのイントロン配列の一部分を含有する(図1(2)(i))。このmRNAは、非機能的であり、機能的産物を発現しない(図1(3)(i))。nt 654(図1(1)(ii)における黒棒の右側)での突然変異を指示する2’−O−メトキシエチルホスホロチオエート(MOE)オリゴヌクレオチドのその後のトランスフェクションは、選択的スプライシングをブロックし、その結果、正しいスプライシング(図1(2)(ii))および機能的遺伝子産物(図1(3)(ii))が生じる。
【0156】
上記カセットを有する組換えAAVベクターを産生させ、ヒト細胞(HeLa細胞)において調節されたトランスジーン発現について検査した。AAV感染の24時間後、それらの細胞の1/2を、654突然変異を指示するMOEオリゴヌクレオチドでトランスフェクトし、そのオリゴトランスフェクション後48時間の時点でレポーター遺伝子発現を観察した。オリゴヌクレオチドでではなくAAV−654ベクターで感染させた細胞は、検出可能なGFP発現を実質的に示さなかった。対照的に、654特異的オリゴヌクレオチドでトランスフェクトさせた細胞は、有意な遺伝子発現を示した。GFPポジティブ細胞のカウントは、654突然変異体について、そのオリゴヌクレオチドの付加で200倍までの誘導を示した。
【0157】
「スプライス媒介」イントロンによって制御されたルシフェラーゼレポーター遺伝子を有するAAVベクターを本明細書において説明するとおり産生させ、それらを使用して、門脈注射によりマウス肝臓を感染させた。1セットの動物では、オリゴ薬送達の1年前にベクターを投与した(図2A)。腹腔内注射により2日続けてスプライス特異的オリゴを投与した後、ルシフェリン基質の注射後に動物の実現時間撮像を行って、フォトンの放出および収集(ならびに発光単位(light unit)への変換)により機能的ルシフェラーゼ活性を検出した。図2Aに示されているように、オリゴを受けたマウス(図2A(ii)および図2C)は、未治療動物と比較したとき、増加したルシフェラーゼ活性(濃いグレーのシェーディングおよび増加した表面積量)を示した。これらの結果は、ベクター特異的構成プロモーターが非機能的mRNAを発現し続けること、およびこの活性が1年より長きにわたって持続したことも明示している。図1において説明したように、「スプライス媒介」オリゴ用量の付加後にのみ、非機能的mRNAは、機能的mRNAに変換する。
【0158】
「スプライス媒介」ベクタートランスジーンカセットで感染させた別のセットの動物では、調節は、オリゴ投与後に誘導され、1ケ月を超えて持続し、一定して低下してベースラインに戻った。オリゴの反復投与(図2B;矢印)は、第一薬物投与と一致してトランスジーン活性のアップレギュレーションを明示した(図2B;ひし形)。アップレギュレーションの証拠は、「スプライス媒介」オリゴ薬を受けていない動物では観察されなかった(図2B;黒丸)。これらの実験は、ベクター送達トランスジーンカセットが、そのオリゴ薬の存在にインビボで応答し、そのオリゴ薬の持続時間に影響されやすいことを明示している。当業者は、薬物送達に関連した非常に多数の実験パラメータを、調節されるトランスジーン機能(例えば、薬物の用量および生体内分布、薬物およびターゲットmRNAの半減期、mRNA産物の安定性など)のレベルおよび持続時間に影響を及ぼすように調整することができる。
【0159】
調節された治療用トランスジーン(アルファ1−アンチトリプシン;AAT)を有するAAVベクターを使用して、類似した実験をインビボで行った。この実施例では、AAVベクターを門脈注射によってマウス肝臓に投与した。1週間後、動物のサブセットに腹腔内注射によって所与のLNAオリゴを投与し、その後、ELISAアッセイによってAATタンパク質の循環レベルを測定した。AAT発現は、約1週間でピークに達し(図3;四角)、そして1ケ月にわたってゆっくりと低下した。ベクターのみを受けた動物(図3;ひし形)では、この実験の継続時間の間、ベースラインより上のAAT発現の形跡は観察されなかった。主として、2つの重要な要素、すなわち、使用されるオリゴおよびタンパク質産物それぞれの半減期、が、この実験において誘導されるトランスジーンの寿命を決める。使用されるオリゴのタイプ(PNA 対 LNAなど)および調節のターゲットとなるトランスジーン(AAT 対 成長因子 対 サイトカインなど)に依存して、種々の結果を達成することができる。それにもかかわらず、これらの全体にわたっての結果は、「スプライス媒介」調節レポーター遺伝子のものによく似ており、ならびに「スプライシング媒介」調節メカニズムにより薬物の外因性投与後にインビボでの治療用トランスジーン発現を調節できることを明示している。
【実施例4】
【0160】
(二重イントロン系)
インビトロおよびインビボでトランスジーン発現を調節するための選択的スプライシングの使用。ヒトβ−グロビン遺伝子の異常スプライシングされた突然変異イントロン、IVS2−654を緑色蛍光タンパク質(GFP)発現カセットに挿入した。IVS2−654イントロンは、850bpのサイズであり、4つのスプライス部位を含有する。IVS2−654イントロンのヌクレオチド配列(配列番号19)を下に示す。2つの選択的イントロン(alternative intorn)が、ヌクレオチド1〜159および653〜850にある。選択的エキソン(alternative exon)は、ヌクレオチド580〜652にある。2つの矢印は、選択的イントロン−エキソン間の接合点を指定している。4つのスプライス部位および4つの潜在的分岐部位点を直線の下線および曲線の下線によってそれぞれ示す。5’ss 652/18 AONのターゲット配列は、太字エンボス文字である。十分なスプライシングおよび3’末端形成に必要な配列は、太字斜体である。
【化1】

【0161】
得られたプラスミドを、リン酸カルシウムトランスフェクション法を用いることにより、293細胞、ヒト腎臓上皮細胞系に、トランスフェクトした。その後、0.5μMの最終濃度で特異的AONを2つの同一のトランスフェクト細胞セットのうちの一方に付加させて、GFP発現を誘導した。5’ss 652/18 AONという名のこの特異的AONは、5’選択的スプライス部位に相補的な18量体オリゴヌクレオチドであり、異常エキソンの包含を阻害することができる。ポジティブ対照として、293細胞を、そのGFP発現カセット内の同じ部位に挿入された野生型イントロンを含有するプラスミドで、別途、トランスフェクトした。これらのポジティブ対照細胞は、5’ss 652/18 AONで処理しなかった。そのトランスフェクションの24時間後、蛍光顕微鏡法を用いてそれらの細胞をGFP発現について検査した。この実験群において、トランスフェクトしたがこのAONで処理していない細胞は、検出可能なGFPレベルを発現することができなかった。対照的に、このAONで処理した細胞は、ポジティブ対照群のものと類似したレベルで機能的GFPを発現した。従って、選択的スプライシングを用いて、トランスジーン発現をインビトロで制御することができた。
【0162】
選択的スプライシングを用いてトランスジーン発現をインビボでも制御できるかどうかを判定するために、850bp IVS2−654イントロンの1つのコピーが挿入されたルシフェラーゼ発現カセットを有する組換えAAVプラスミド(Promega)を構成した。このルシフェラーゼ遺伝子は、マウスにおいて構成的トランスジーン発現を駆動できることが証明されている、CMVエンハンサー/ニワトリβ−アクチンプロモーターによって駆動した。AAVは、アデノウイルスを利用しない産生計画を用いて産生させ、この計画は、3つのプラスミド(組換えAAVプラスミド;構造AAV遺伝子と非構造AAV遺伝子の両方を供給するAAV−ヘルパープラスミド;およびAAVベクター産生に必須のヘルパー遺伝子を供給するアデノウイルス−ヘルパープラスミド)での293細胞のトランスフェクションを含むものであった。結果として生じたAAVベクターは、イオジキサノール勾配およびヘパリンスルフェートクロマトグラフィー段階を含む精製プロトコルを利用することによって精製した。その後、その精製されたAAVの5x1010の粒子を各マウスに投与した。注射の1週間後、2日続けて1日1回、25mg/kgで5’ss 652/18 AONを腹腔内注射することにより、ルシフェラーゼ発現を誘導した。ルシフェラーゼ発現レベルは、ルシフェリン投与後、Luciferase Imaging System(Roper Scientific)を用いる全身撮像によって判定した。門脈注射によりAAVを肝臓にターゲッティングしたとき、その器官でのルシフェラーゼ発現は、10.4倍まで誘導され、8日目にピークに達し、29日より長く続いた。直接注射によって心臓にターゲッティングしたAAVも、類似した誘導トランスジーン発現パターンを示した。AONをそのマウスにAAV注射の1年後にも投与し、肝臓におけるルシフェラーゼ発現は、同様のレベルまで誘導された。これは、AAVベクターへのイントロンの組み込みが、AAVゲノムの残存に影響を及ぼさないかったことを示している。
【0163】
トランスジーン発現レベルをより正確に定量するために、および選択的スプライシングがインビボでの関心のある他の遺伝子の発現を制御できるかどうかを判定するために、850bp IVS2−654イントロンの1つのコピーが挿入されたα1−アンチトリプシン(AAT)発現カセットを有する別のAAVベクターを構成した。得られた精製AAVを門脈注射によってマウスに投与した。AAT発現を5’ss 652/18 AONの投与によって誘導し、ELISAアッセイによって定量した。ルシフェラーゼ発現パターンに類似して、AAT発現は、8.9倍まで誘導され、8日目および29日目にピークに達し、43日より長く続いた。これらの結果は、選択的スプライシングを用いて、インビトロでもインビボでもトランスジーン発現を制御できることを示している。
【0164】
(トランスジーン発現を制御するための選択的スプライシングの最適化)
トランスジーン発現を制御するための選択的スプライシングの最適化を助長するために、蛍ルシフェラーゼマーカー遺伝子を、850bpの選択的にスプライシングされたイントロン IVS2−654の挿入に用いた。従って、トランスジーン発現の制御は、エキソン包含とエキソンスキッピングの両方の条件下で、すなわち5’ss 652/18 AONの存在下または不在下で、ルシフェラーゼ発現レベルをアッセイすることによって、適便に判定することができた。トランスジーン発現を制御するためのこの選択的スプライシングを最適化するために、以下の3セットの実験を行った。
【0165】
1)トランスジーン発現を制御するためのルシフェラーゼ発現カセットへのIVS2−654イントロンの単一コピーの挿入。挿入部位がそのイントロンのスプライシングに影響を及ぼすかどうかを判定するために、850b IVS2−654イントロンの単一コピーを、ヌクレオチド393〜394(A)、668〜669(B)、1160〜1161(C)または1411〜1412(D)、ならびに翻訳開始の直ぐ上流(F)の間に、すなわち、そのルシフェラーゼ発現カセットの位置A、B、C、DおよびFに、挿入した。それらのコード配列の上流にイントロンを挿入する理由は、異常エキソンそれ自体が、上流ATG開始コドンと下流TTA停止コドンの両方を含有するからである。従って、位置Fでの異常エキソンの包含は、ルシフェラーゼタンパク質の合成を妨げるはずである。結果として生じたプラスミドを、リン酸カルシウムトランスフェクション法を用いることにより、293細胞に別々にトランスフェクトした。その後、0.5μMの最終濃度で、遊離5’ss 652/18 AONを、そのトランスフェクトされた細胞の2つの同一のセットのうちの一方に付加させた。そのトランスフェクションの24時間後、ルシフェラーゼ発現を定量するためにそれらの細胞を回収した。位置A〜Dでのイントロン挿入については、実際のルシフェラーゼ発現レベルが、同じ条件下で、すなわち前記AONの不在下または存在下、いずれかで、3.8倍まで有意に変動した。しかし、4つの構成体の誘導レベルは類似しており、4.0から5.7倍であった。構成体A〜Dについての誘導レベルにおける類似性は、隣接する配列がその選択的スプライシングに劇的な影響を及ぼさないことを示唆していた。驚くべきことに、位置Fでの挿入は、低い誘導発現レベルおよび比較的高い発現バックグラウンドレベルをもたらした。この低い誘導レベルは、5’選択的スプライス部位の認識が5’キャップ構造によって強化され、その結果、より効率的なエキソン包含が生じたためであり得る。この高いバックグラウンドレベルは、正しい開始コドンで開始された翻訳に起因し得る。
【0166】
ルシフェラーゼ発現系は、誘導レベルと実際の発現レベルの両方を適便に定量することができるため、選択的スプライシングアプローチと自己切断リボザイムアプローチ(38)との並列比較を行った。83bp N79リボザイムの単一コピーを、そのルシフェラーゼ発現カセットのコザック配列およびATG開始コドンの上流に挿入した。結果として生じたプラスミドおよび構成体Cを、リン酸カルシウムトランスフェクション法を用いることにより、293細胞に別々にトランスフェクトした。リボザイム含有構成体については、1.5μMの最終濃度で、トヨカマイシンを、それらのトランスフェクト細胞の2つの同一のセットのうちの一方に添加した。イントロン含有構成体については、0.5μMの最終濃度で、遊離の5’ss 652/18 AONを、それらのトランスフェクト細胞の2つの同一のセットのうちの一方に添加した。そのトランスフェクションの24時間後、ルシフェラーゼ発現を定量するために、それらの細胞を回収した。それらのイントロンおよびリボザイム含有構成体についての誘導レベルは、それぞれ、5.3倍および1.8倍であった。加えて、リボザイム含有構成体についての実際のルシフェラーゼ発現レベルは、イントロン含有構成体についてのものの0.4%であった。リボザイム含有構成体についてのより低いルシフェラーゼ発現レベルは、翻訳開始の上流のAUG含有リボザイムの配置が、突然変異タンパク質の正しい翻訳または合成のいずれかの阻害に至るという考えと一致する。イントロン含有構成体についてのより高いルシフェラーゼ発現レベルは、イントロン配列の存在下でのmRNAの3’末端のより効率的な形成に起因する可能性が高かった。リボザイムアプローチについて報告されている約260倍のルシフェラーゼ発現誘導が、ルシフェラーゼ発現カセットに挿入されたN79リボザイムの2つのコピーを有する安定な細胞系に基づくものであったことは、明らかにすべきである(38)。
【0167】
2)トランスジーン発現を制御するためのルシフェラーゼ発現カセットへのIVS2−654イントロンの2つのコピーの挿入。この実験セットの目的は、イントロンの2つのコピーの挿入が、トランスジーン発現の誘導レベルを改善するかどうか、および2つのイントロン間の距離が、その誘導レベルに対して何らかの影響を及ぼすかどうかを検査することであった。従って、1,700bpの総合サイズを有するIVS2−654イントロンの2つのコピーを、間に様々な距離を有する2つの異なる部位(AB、AC、AD、BC、BDおおびFB)にまたはタンデムで1つの部位(BB)に配置した。結果として生じたプラスミドを、リン酸カルシウムトランスフェクション法を用いることにより、293細胞に別々にトランスフェクトした。引き続いて0.5μMの最終濃度で、遊離5’ss 652/18 AONを、それらのトランスフェクト細胞の2つの同一のセットのうちの一方に添加した。そのトランスフェクションの24時間後、それらの細胞を、ルシフェラーゼ発現を定量するために回収した。BBを除くすべての構成体が、有意に低減されたバックグラウンド発現レベルに至った。結果として、それらの誘導レベルは、大きく改善され、10.1倍から143.3倍に及んだ。それらの誘導レベルは、タンデムでの2つのイントロンの場合、すなわちBB構成体の場合を除き、2つのイントロン間の距離にほぼ逆相関していた。イントロンの2つのコピーがある程度まで極めて近接している場合、その低減されたバックグラウンド発現レベル、および、その結果、改善されたトランスジーン発現誘導レベルは、選択的スプライス部位の認識が強化されたため、および/またはmRNAのナンセンス媒介崩壊が加速されたためであり得る。ナンセンス媒介mRNA崩壊は、不完全なポリペプチドをコードする異常mRNAを削除することによて遺伝子発現のエラーを減少させる監視経路である。BB構成体についての発現のバックグラウンドレベルは、その群の残りのものより有意に高かった。おそらく、このより高いバックグラウンド発現レベルは、上流イントロンの3’スプライス部位および下流イントロンの5’スプライス部位が互いに近すぎるので、それらのスプライス部位の認識が損なわれていしまうためであった。その結果として、2つの最も外側のスプライス部位が、認識される主な部位と成り得た。これらの結果は、イントロンの多数のコピーの挿入が、トランスジーン発現の誘導レベルを改善し得ることを示している。それらは、最高誘導レベルを生じさせるイントロン間の最適な距離があり得ることも示していた。
【0168】
3)選択的スプライシングを調節するためのIVS2−654イントロンの選択的スプライス部位の突然変異。850bp IVS2−654イントロンにおける選択的スプライス部位を突然変異させて、それらの長さを変えた。第一の実験は、構成体Bにおける上流選択的イントロン内の2つの潜在的分岐点のうちの一方をノックアウトすることを含む。ヌクレオチド564および565のAAAをCTに変換して、そのコンセンサス配列にあまり類似していない上流潜在的分岐点を作製する。結果として生じたプラスミドを、リン酸カルシウムトランスフェクション法を用いることによって、293細胞にトランスフェクトした。その後、0.5μMの最終濃度で、遊離5’ss 652/18 AONを、それらのトランスフェクト細胞の同一のセットに添加した。そのトランスフェクションの24時間後、それらの細胞を、ルシフェラーゼ発現を定量するために回収した。このAA→CTの突然変異は、誘導レベルを4.3から13倍に増大させたが、比較的高いトランスジーン発現誘導レベルを維持していた。これは、分岐部位の使用が、選択的スプライシングを調節するメカニズムの1つであるという現行の考えと一致する。第二の実験は、構成体Bにおけるヌクレオチド657のTをGへ、ヌクレオチド658のAをTへ、またはその両方TAからGTへ変換させることにより選択的スプライシングを最適化するように設計した。これらの突然変異は、そのコンセンサス配列とより類似しているまたは同一であるスプライス部位を作製することによって選択的5’スプライス部位の強度を増加させるものであった。そのスプライス部位に単一塩基変換を有する2つの構成体は、両方とも、誘導レベルの約2倍増加を生じさせた。一方、2塩基変換は、結果として、誘導レベルの55倍増加を生じさせた。この誘導レベルの増加は、トランスジーン発現の誘導レベルの低下より劇的に大きい、トランスジーン発現のバックグラウンドレベルの低下に起因するように見受けられた。これらの結果は、分岐部位点の使用および選択的スプライス部位の強度を調整することによって、トランスジーン発現を制御するために選択的スプライシングを最適化することができることを示唆していた。
【0169】
選択的スプライシングのための小さなイントロンの開発。IVS2−654イントロンは、850塩基対(bp)の長さである。このサイズが、AAVにより媒介されるトランスジーン発現を制御するためにそのイントロンの多数のコピーを挿入するには問題であることはわかるはずである。これは、AAVのパッケージング限界が4.7kgであるためである。イントロンのサイズを最小にするために、200bpフラグメント、ヌクレオチド151から350、を構成体Bにおけるイントロンから欠失させて、構成体BΔ200を生じさせた。この配列がイントロンのスプライシングにおいて一定の役割を果たすことは証明されていない。構成体BΔ200は、構成体Bと比較したとき、誘導レベルは低減しなかった。197bpのイントロンもIVS2−654から誘導した。これは4つの必須スプライス部位および1つの改変された選択的エキソン、ならびにβ−グロビンmRNAの3’末端の効率的なスプライシングおよび形成に必要な、その5’末端の最初の32bpおよびその3’末端の最後の57bpを含有する。197bpイントロンのルシフェラーゼ遺伝子への挿入は、構成体Bと比較して、誘導レベルは減少されたが、そのメッセージの選択的スプライシングを生じさせた。これらの結果は、誘導レベルに有意な影響を及ぼすことなくIVS2−654イントロンを短縮できることを示していた。
【0170】
選択的スプライシングイントロンを含有するルシフェラーゼ発現カセットを有するトランスジェニックマウスの産生。原型850bp IVS2−654イントロンの単一コピーが挿入された蛍ルシフェラーゼ発現カセットを有するトランスジェニックマウスを産生させた。IVS2−654に対する特異的AONの送達成功は、エキソン包含を阻害し、エキソンスキッピングを誘導し、その結果、機能的ルシフェラーゼタンパク質の翻訳を生じさせる。例えば、AONの送達をモニターするために、ルシフェラーゼ発現の全身撮像を適便に用いることができよう。このトランスジェニックマウスアッセイ系は、AONを標識付けすることまたは実験用マウスを犠牲にすることを必要としないため、AON送達の最適化を大いに助長する。AON投与後のトランスジェニックマウスにおけるルシフェラーゼ発現の誘導成功は、ANO送達の使用およびインビボでのトランスジーン発現の調節の実行可能性を明示していた。
【0171】
選択的スプライシングイントロンのさらなる最適化。IVS2−654イントロンの2つのコピーの同じ発現カセットへの挿入は、トランスジーン発現のバックグラウンドレベルを著しく減少させ、誘導レベルを増加させた。しかし、効率的にパッケージすることができるAAVゲノムのサイズは、4.7kbに限られているため、850bp IVS2−654イントロンの多数のコピーの挿入は、AAVベクターのクローニング能力を有意に低下させる。200bpフラグメントを欠失させることによるIVS2−645イントロンの短縮は、類似したトランスジーン発現誘導レベルを生じさせ、小さな197bpイントロンからIVS2−654イントロンへの誘導は、低減された誘導レベルでではあるが、選択的スプライシングを受ける能力を未だ保持していた。従って、IVS2−654イントロンの系統的欠失により、許容可能な誘導レベルとAAVベクターへの組み込みに適する低減されたサイズの両方を有する選択的スプライシングイントロンを生じさせることができると思われる。トランスジーン発現を制御するために、エキソン包含のための条件下ではトランスジーン発現の低いバックグラウンドレベルおよびエキソンスキッピングのための条件下ではトランスジーン発現の高い誘導レベルを生じさせる選択的スプライシングイントロンを有することは、望ましいことである。分岐部位の使用を変更することおよび選択的スプライス部位の強度を微調整することによって、そのような望ましいイントロンを得ることができた。これは、分岐部位の1つの突然変異がその誘導レベルを有意に増加させるためである。加えて、スプライス部位の配列の突然変異は、その誘導レベルを大いに増加させたが、同時に、トランスジーン発現の実際のレベルを有意に減少させた。イントロンのサイズを最小にすることができ、分岐部位が変更された一連の最小イントロンを産生させることができ、および/またはライブラリーを作製して突然変異スプライス部位を有する最小イントロンをスクリーニングして、トランスジーン発現の低いバッググラウンドレベルおよび高い誘導レベルを有する最適化されたイントロンを産生させることができる。
【0172】
例えば、効率的な選択的スプライシングが可能な最小イントロンを開発することができる。本明細書において説明するように、IVS2−654イントロンからの200bpフラグメントの欠失は、誘導レベルを減少させなかった。IVS2−654イントロンにおけるスプライシングのための必須要素をすべて含有する小さな197bpのイントロンの合成は、選択的スプライシングを受ける能力をなお保っていた。しかし、この小さなイントロンは、IVS2−654イントロンについての4.3倍より有意に低い、2.3倍の誘導レベルしか有さなかった。IVS2−654イントロンのものと類似した誘導レベルをなお有する最大欠失を判定するために、200bp欠失を有するプラスミドをさらに欠失させて、欠失を5’末端の方向にヌクレオチド150から33まで拡大させてもよい。欠失を3’末端方向にヌクレオチド350から519まで、別途、拡大させてもよい。ヌクレオチド660と793の間の下流選択的イントロンに、別途、さらなる欠失を作ってもよい。各欠失領域について、欠失させるフラグメントのサイズは、最初は約30bpの増分、そして後に、欠失サイズをさらに最大にするために、約10bpの増分であり得る。これらの欠失突然変異体は、例えば、Stratagene QuikChange Multi Site−Directed Mutagenesis kitを使用して産生させることにする。この方法は、所望の突然変異を有するプライマーを使用する突然変異体標準物質の合成と、親プラスミドを除去するためのDpnIでの消化と、2本鎖プラスミドに変換させるための合成1本鎖プラスミドの細菌宿主への形質転換とを含む。トランスジーン発現の誘導レベルを迅速、且つ、定量的に判定するために、ルシフェラーゼアッセイ系を用いることにする。しかし、各突然変異イントロンの作用を左右するメカニズムを理解することが、トランスジーン発現を制御するためのイントロンのより良好な設計には必須である。従って、別の試験のもとで、mRNAレベルとスプライシングのパターンの両方を分析してもよい。得られた構成体は293細胞に個々にトランスフェクトして、それらのルシフェラーゼ発現誘導レベルについてアッセイすることにする。その3つの各々についての最大欠失を判定した後、1つの構成体においてそれらを併用し、結果として生じたイントロンをルシフェラーゼ発現の誘導レベルについて検査することになる。最小イントロンの使用は、トランスジーン発現を制御するためにそのイントロンの多数のコピーを挿入した後、AAVクローニング能力を最大にするから、提案する試験の残りについては、その最小イントロンを使用して、この実験セットから産生させることにする。
【0173】
突然変異分岐部位を有する改変された最小イントロンの産生および評価。本明細書に記載するように、上流選択的イントロンにおける2つの潜在的分岐部位のうちの1つの突然変異は、誘導レベルを4.3倍から13倍に増加させた。イントロン挿入後にAAVクローニング能力を最大にするために使用される最小イントロンを最適化するために、4つの潜在的分岐部位を別々に突然変異させ、それらの遺伝子発現誘導レベルを評価することになる。その上流選択的イントロンにおける2つの分岐部位は、ヌクレオチド520〜526のTTTTATおよび560〜566のCCCTATであり、その下流選択的イントロンにおける2つの分岐部位は、813〜819のTGCTATおよび831〜837のCTCTTTである。コンセンサス分岐部位配列は、PyNPyUPuPy(この場合、Py=CまたはU、Pu=AまたはG)であり、下線を引いたAは、高度に保存されるため、上流のAに加えてこの保存AもCTに変換されるである。831〜837の潜在的分岐部位CTCTTTは、保存Aの上流に保存Puの代わりにTを有するので、その保存Aのみが突然変異を受ける。分岐部位と3’スプライス部位の間の距離は、一般には18塩基であるが、広範に変わる。この距離がその誘導レベルになんらかの影響を及ぼすかどうかを判定するために、その誘導レベルをさらに最適化する試みで、その距離を変えることにする。突然変異は、記載したようなStratagene QuikChange Multi Site−Directed Mutagenesis kitを使用することにより、産生させることにする。トランスジーン発現の誘導レベルを迅速、且つ、定量的に判定するために、ルシフェラーゼアッセイ系を使用することにする。各突然変異イントロンの作用を左右するメカニズムを理解して、トランスジーン発現を制御するためのイントロンをより良好に設計するたために、別の試験のもとで、mRNAレベルとスプライシングのパターンの両方を分析することにする。得られた構成体を293細胞に個々にトランスフェクトして、それらのルシフェラーゼ発現誘導レベルについてアッセイすることにする。上流および下流選択的イントロンについての最適な改変を1つの構成体において併用し、結果として生じたイントロンを改善された誘導レベルについて検査することにする。
【0174】
トランスジーン発現の低いバックグラウンドレベルおよび高い誘導レベルを有する最適化されたイントロンについての突然変異スプライス部位を有する最小イントロンのライブラリーからの産生およびスクリーニング。イントロン挿入後、AAVクローニング能力を最大にするために、突然変異スプライス部位を有するイントロンのライブラリーを作製するためのテンプレートとして最小イントロンを使用することにする。最適化されたイントロンのスクリーニングを助長するために、そのライブラリーの作製前にその最小イントロンをマーカー発現カセットに挿入することにする。使用することとなるマーカー発現カセットは、ピューロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼと単純疱疹ウイルス1型チミジンキナーゼのトランケーションバージョンとの間の二官能性融合タンパク質(puΔtk)を発現するものとする。このpuΔtk融合タンパク質は、ピューロマイシンおよびガンシクロビルの類似体、1−(−2−デオキシ−2−フルオロ−1−β−D−アラビノ−フラノシル)−5−ヨードウラシル(FIAU)をそれぞれ使用する、そのタンパク質を発現する細胞のポジティブ選択とネガティブ選択の両方が可能であることが、明らかになった。開発済みの他のポジティブ/ネガティブ選択可能マーカーは、幾つか存在し、このライブラリーのスクリーニングに同じ程度によく役立つ。イントロンの誘導レベルを最適化するために、5’選択的スプライス部位を突然変異させることにする。これは、スプライス部位の強度計算方法に従って、この5’選択的スプライス部位の強度が、その5’および3’スプライス部位の強度ならびに3’選択的スプライス部位の強度より有意に弱いためである。この選択は、その配列の改変による5’選択的スプライス部位の強度の増加が、その誘導レベルを有意に増加させた(しかし、同時に、トランスジーン発現のその総合レベルを減少させた)ためでもある。そのコンセンサス5’スプライス部位配列、-2AG↓GUPuAGU+6(この場合、矢印は、エキソン−イントロン連結部を指定している)において、位置+1および+2のGUは、100%保存されるので、これらのヌクレオチドを位置−2および−1ならびに+3から+6で突然変異させることにする。突然変異イントロンのライブラリーを作製するために、Stratagene QuikChange Multi Site−Directed Mutagenesis kitを使用することにする。
【0175】
突然変異イントロンのライブラリーを作製するための別の方法として、一対のオーバーラッププライマー(突然変異される位置に変性塩基を有する5’選択的スプライス部位全体にわたる一方のプライマーと、そのイントロンの上流または下流のもう一方のプライマー)を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において別々に使用することにする。この2つの別の反応からのPCR産物を別のPCR反応ラウンドのためのテンプレートとして併用して、突然変異イントロンを再構成することにする。結果として生じるPCR産物を制限酵素で消化し、それらを使用して、親プラスミド内の対応するフラグメントを置換し、それによって突然変異イントロンのライブラリーを作ることにする。
【0176】
以下の戦略を用いて、トランスジーン発現の低いバックグラウンドレベルおよび高い誘導レベルを有する最適化されたイントロンについてスクリーニングすることにする。そのライブラリーの各クローンを個々に発現させ、選択することができるように、そのライブラリーをエプスタイン・バーウイルス(EBV)プラスミドの骨格で作製することにする。エピソームとして増殖するその能力のため、EBVプラスミドベクターは、薬物選択用の細胞を形質転換させるために従来から用いられいる。結果として生じるプラスミドライブラリーを293またはHeLa細胞にトランスフェクトすることにする。特異的AONの存在下で効率的なエキソンスキッピングを受けるそれらの能力により、高いトランスジーン発現誘導レベルを有する突然変異イントロンを選択するために、それらの細胞をそのAONで処理し、ピューロマイシンで選択することにする。このライブラリーは、その5’ss 652/18 AONが相補的である5’選択的スプライス部位に突然変異を有するから、別のAON、3’ss 579/18、をこのライブラリーのスクリーニングに使用することにする。この3’ss 579/18 AONは、3’選択的スプライス部位に相補的な18量体オリゴヌクレオチドであり、5’ss 652/18 AONのものと同じ効率で異常エキソンの包含を阻害することができる。AONの不在下では効率的なエキソン包含を受けることができないことから高いトランスジーン発現バックグラウンドレベルを有する突然変異イントロンを削除するために、ピューロマイシンの選択後、耐性細胞は、AON処理を中止することにする。その後、それらの細胞をFIAUで処理して、低いpuΔtk発現レベルを有する細胞を選択することにする。この薬物選択のための濃度を変化させて、トランスジーン発現の最高誘導レベルを有するイントロンをスクリーニングできるようにする。選択された細胞からそれらのイントロンを回収するために、低分子量DNAをその細胞から抽出し、エレクトロポレーションを行って細菌宿主、DH5αに送り込むことにする。回収したイントロンをルシフェラーゼ発現カセットに再挿入して、それらのトランスジーン発現誘導レベルを定量できるようにする。スクリーニングされた各イントロンについての作用メカニズムを理解するために、別の試験のもとで、mRNAレベルとスプライシングのパターンの両方を分析することにする。このようにして特定された高いトランスジーン発現誘導レベルを有する突然変異イントロンをDNA塩基配列決定に付して、それらの配列を特定することにする。
【0177】
動物モデルにおけるトランスジーン発現を長期間制御するためのAAVベクターへの選択的スプライシングイントロンの組み込み。
選択的スプライシングをインビボで用いてトランスジーン発現を制御することができるので、AAVベクターに選択的スプライシングイントロンを組み込みむことにより、その治療を受ける動物において長期間にわたってトランスジーン発現を制御することができるようになる。IVS2−654イントロンの2つのコピーの挿入が、その誘導レベルを著しく増加させたため、およびAAVベクターのパッケージング限界が、わずか4.7kbであるため、最適化された最小イントロンをAAVベクターに組み込んで、そのイントロン挿入後、AAVクローニング能力を最大にすることにする。イントロン間の距離が、トランスジーン発現の誘導レベルに影響を及ぼし得る(図7)ことを仮定して、様々な位置に最適化された選択的イントロンおよび様々なコピー数が挿入されたAAVプラスミドを構成し、結果として生じるAAVベクターをインビボでのトランスジーン発現の最適な誘導について評価することにする。イントロンの多数のコピーを挿入することによる誘導レベルの改善を、より大きなパッケージング容量を有する他の遺伝子輸送ベクターに容易に適応させることもできよう。従って、トランスジーン発現の誘導レベルに対して相乗効果を有するイントロンの最適な数を決めることは重要である。
【0178】
最適化された選択的スプライシングイントロンが挿入されたマーカー遺伝子を有するAAVプラスミドのインビトロでの構成および評価。本明細書において説明するように、2つのイントロンを挿入した後の誘導レベルは、それらのイントロン間の距離と逆相関関係にあった。この例外は、タンデムでの2つのイントロンが、誘導レベルをわずかにしか改善しないことであった。従って、最高の誘導レベルを生じさせる、イントロン間の最適な距離があるはずである。この最適な距離を決めるために、最適化されたイントロンの2つのコピーを、間の距離を様々にしてルシフェラーゼ遺伝子に挿入することにする。結果として生じるAAVゲノムの期待サイズは、4.0kb未満である。これは、4.7kb AAVパッケージング限界の範囲内である(4.0kg AAVゲノム = 2つの末端繰り返し単位+プロモーター+ルシフェラーゼcDNA+2つのイントロン+ポリA=0.29+0.56+1.65+2x0.65+0.2、最小イントロンは、650bp未満である)。5’AGPu 3’配列(この場合、Pu=GまたはA)が、最適化されたイントロンの挿入のためにルシフェラーゼ遺伝子内で選択されることとなる。この基準は、5’および3’スプライス部位配列の圧倒的多数が、それぞれ、コンセンサス-2AG↓GUPuAGU+6および-4NPyAG↓PuN+2(この場合、矢印は、エキソン−イントロン連結部を指定している)という事実に基づく。従って、配列5’AGとPu 3’間へのイントロンの挿入は、両方のコンセンサス5’および3’スプライス部位を回復させる。AB構成体は、273倍の最高誘導レベルを生じさせ、275bpのイントロン間距離を有したので、最適化されたイントロンの2つのコピーを(1つを位置Bに、およびもう1つを位置AとBの間の各候補部位に)挿入することにより、275bpの距離の減少を開始することにする。このプラスミドセットは、イントロンの2つのコピー間に191、118、105、98、49、30および15bpの距離を有する。イントロンの2つのコピー間の配列が、トランスジーン発現の誘導レベルに影響を及ぼすかどうかを判定するために、ヌクレオチド964〜965の間に挿入されたイントロンの1つのコピーと、ヌクレオチド988および1161の間(両端の値を含む)の7つの候補部位の各々にイントロンの別のコピーとを含有する、もう1つのセットの挿入プラスミドを構成することにする。従って、イントロンの2つのコピー間には197、153、99、69、52、40および24bpの距離が存在することになる。結果として生じる構成体を293細胞に別々にトランスフェクトして、それらのトランスジーン発現誘導レベルについてアッセイすることとする。このイントロン間の距離を誘導レベルと相関させることとなる。最適化されたイントロンの3つのコピーの挿入が、トランスジーン発現の誘導レベルをさらに改善するかどうかを調査するために、本発明者らは、イントロンの別のコピーを挿入するための上述の実験から選択したイントロンの2つのコピーが挿入された最適な構成体を使用することにする。そのイントロンの3つのコピーを含有するAAVゲノムの期待サイズは、4.65kb未満である。これは、4.7kb AAVパッケージング限界の範囲内である(4.65kg AAVゲノム = 2つの末端繰り返し単位+プロモーター+ルシフェラーゼcDNA+3つのイントロン+ポリA=0.29+0.56+1.65+3x0.65+0.2、最小イントロンは、650bp未満である)。第三のイントロンは、その第三イントロンと最も近いイントロンの間に約800、600、400、200、100および50bpの距離が存在するように、様々な位置に挿入することにする。結果として生じる構成体を293細胞に別々にトランスフェクトして、それらのトランスジーン発現誘導レベルについてアッセイすることにする。蛍ルシフェラーゼcDNAの以下のヌクレオチド配列(配列番号77)において、イントロン挿入の潜在的部位に下線を引く。位置A〜Dは、曲線の下線によって示し、対応する文字よって左側にも示す。
【化2A】

【化2B】

【0179】
結果として生じたAAVベクターによって媒介されるトランスジーン発現の長期間にわたるインビボでの制御の評価。上で説明したようにトランスジーン発現の最適な制御を判定するAAVプラスミドをウイルスベクターにパッケージすることにする。これらのベクターは、アデノウイルスを利用しない産生計画を用いて産生させ、この計画は、3つのプラスミド(組換えAAVプラスミド;構造AAV遺伝子と非構造AAV遺伝子の両方を供給するAAV−ヘルパープラスミド;およびAAVベクター産生に必須のヘルパー遺伝子を供給するアデノウイルス−ヘルパープラスミド)での293細胞のトランスフェクションを含む。結果として生じるAAVベクターは、イオジキサノール勾配およびヘパリンスルフェートクロマトグラフィー段階を含む精製プロトコルを利用することによって精製することにする。その後、インビボでの長期にわたって制御可能なトランスジーン発現を媒介するAAVベクターの能力を、本明細書に記載するように、それらの精製されたベクターを門脈注射により肝臓にならびに直接注射により骨格筋および心臓に向かわせることによってアッセイすることにする。ルシフェラーゼ遺伝子発現の誘導レベルは、マウスを、それらの動物に対照またはイントロン特異的AONのいずれかを注射した後、撮像することによって判定することとなる。対照ベクターとして、緑色蛍光タンパク質(GFP)発現カセットを有するAAVをこの実験セットに含めることとする。
【0180】
マウスに異なる経路(例えば、門脈、直接筋肉、直接心臓)でAAVベクターを注射することにする。特異的AONおよび対照AONの両方を投与して、ルシフェラーゼ遺伝子の発現を調節することとする。ルシフェラーゼ発現のレベルは、全身撮像によって判定することとする。AAV−luc−intおよびAAV−GFPは、イントロンが挿入されたルシフェラーゼ発現カセットおよびGFP発現カセットをそれぞれ有するAAVベクターを示す。
【0181】
長期にわたってルシフェラーゼ遺伝子の発現を制御する能力を判定するために、以前に誘導されたルシフェラーゼ発現がバックグラウンドレベルに戻った後、AONをマウスに再び投与することとする。新たに誘導された発現を全身撮像によって再びモニターすることとする。この誘導発現サイクルを反復して、トランスジーン発現の長期制御を評価することとする。
【0182】
第三のイントロンと最も近いイントロンの間に様々な距離を生じさせるように第三のイントロンを挿入することに関する潜在的な問題は、所望の位置に挿入するための必要5’AGPu 3’配列が存在しない場合があることである。この場合、各アミノ酸のために多数のコドン使用法を用いて、挿入のためのそのような必要配列を作ることとなる。例えば、5’(NNX)(GPuN)3’(この場合、括弧の各ペアは、コドンを指定している)の場合、ヌクレオチドXをサイレント突然変異としてAに変換し、それによってイントロン挿入のための必要5’AGPu 3’配列を産生させることができよう。同様に、5’(NAZ)(PuNN)3’の配列において、ヌクレオチドZは、サイレント突然変異としてGに変換させることができよう。20のアミノ酸に関しては、それらのうちの11が、代替使用として、それらのコドンの最後の位置にGを含有し、およびそれらのうちの12が、Aを含有する。従って、所望の位置に挿入部位を作ることができる可能性は、比較的高い。AAV感染マウスにおけるルシフェラーゼ発現の反復誘導により、インビボでのトランスジーン発現の長期制御を評価することができよう。
【実施例5】
【0183】
(RETT症候群の研究)
RTTには有効な治療が存在しない。治療アプローチが発見されれば、その生後6ヶ月から18ヶ月の無症状期間により、永久神経細胞損傷が発生する前に、介入を開始することが可能となり得る。CNSに正常な遺伝子を送達するためにAAVを使用することは、妥当なアプローチである。理想的なベクターがこの研究には必須である。適するベクターの発見は、将来、この疾病の症状を治癒または改善するという可能性に直接光をあてることができる。調節系として選択的スプライシングを用いることにより、関心のある遺伝子の過剰または過少発現を回避することができ、固有の発生期で発現を制御することができ、およびCNAの正常な機能の要件を満たすことができる。長期的な目標は、RTTを表している動物モデルにおける脳特異的送達に理想的なベクターと選択的スプライシングの制御調節とのカップリングである。これらの研究は、最終的に患者における安全で効果的なトランスジーン発現の開発につながることが期待される。
【0184】
インビボでの異なる血清型のrAAVベクターでの形質導入パターン。インビボで異なる血清型のAAVベクターの親和性を判定するために、血清型1〜5および8のAAVベクターをマウス肝臓、筋肉およびラット網膜に導入した。様々な組織におけるトランスジーン発現は、被験血清型間で大いに異なる。AAV1およびAAV8は、肝臓および筋肉において最高のトランスジーン発現を開始させることができるが、AAV5およびAAV4は、他の血清型より効率的に網膜細胞を形質導入することができる。注射後46日以内に、トランスジーン(緑色蛍光タンパク質、GFP)発現は比例的に増加し、これらの動物は、実験継続期間(4ヶ月)にわたってポジティブのままであった。出版物に掲載された包括的遺伝子送達アプローチを用いて、類似の分析をマウスの脳において行うことにする。
【0185】
トランスジーンは、ニワトリβ−アクチンプロモーター(CBA)とCMVエンハンサー駆動hAAT(a)およびCMV媒介早期プロモーター駆動EGFP(b)であった。スコアは、各セットの動物について観察された最大タンパク質レベル(+++++)からその群における最低発現レベル(+)にわたった。
【0186】
インビトロで遺伝子発現を変調させるための相補的AONの使用。トランスジーンカセットにおいて既知突然変異イントロン(ヒトβ−グロビンイントロン2)を使用することにより、AONの付加後、レポーター遺伝子発現の調節成功を達成した。
【0187】
レポーターとしてのイントロン特異的GFPの使用およびAONによる補正効果。突然変異ヒトβ−グロビンイントロン2をGFPcDNAおよびプラスミド(pEGFP−mut−int)またはウイルス(AAV2/EGFP−mut−int)に構成し、それらをそれぞれ使用して、293細胞をトランスフェクトまたはを感染させた。トランスジーン発現に対するAONの影響を経時的に測定した。処置の48時間後、蛍光顕微鏡法(Leitz DM IRB,Vashaw Scientific Inc.)を用いてGFPの発現を測定した。pre−mRNAの異常スプライシングを補正するAONの効率GFPポジティブ細胞によって示す。
【0188】
トランスジーン発現を変調するためのルシフェラーゼcDNAへの野生型または突然変異イントロンの挿入。プラスミドpGL3(Promega)のリーディングフレームに野生型ヒトβ−グロビンイントロン2または突然変異ヒトβ−グロビンイントロン2のいずれかを挿入することにより、ルシフェラーゼpre−mRNAのスプライシングを改変した。その後、その再構成されたプラスミド(pGL3−int−luc)を293細胞にトランスフェクトした。同時に、幾つかの細胞をAONで処理した。24時間の時点でルシフェラーゼの発現をMicroplate Luminometer(Tropix)で検査して、pre−mRNAのスプライシング効率を評価した。データは、AONの存在下で、突然変異イントロンを有するプラスミドの発現が原プラスミドのものより2〜3倍増加したことを示している。加えて、バックグラウンドを相当低レベルに減少させることができる。遺伝子発現の補正は、AON用量依存関係を示している。
【0189】
インビボでの遺伝子発現を変調するための相補的AONの使用。AONはインビトロで非常に効率的に遺伝子発現を変調させることができるので、この調節系をインビボで検査した。肝臓および筋肉をターゲット器官として使用した。組織特異的プロモーターを使用したためである。「現時間」Luciferase Imaging System(Roper Scientific)を使用して発現は容易に観察される。結果は、AONがインビボで選択的スプライシングを有効に補正できることを示唆している。
【0190】
レポーター遺伝子(例えば、緑色蛍光タンパク質、GFP)を使用するニューロンを特異的に形質導入する理想的なAAV血清型ベクターの同定。AAV2と他の血清型の間にはカプシドのアミノ酸配列に関して幾つかの違いがあるが、AAV2ゲノム、またはAAV2逆方向末端反復配列に隣接するトランスジーンを異なる血清型のカプシドにパッケージして、形質導入ビリオンを形成することができる。これは、インビボで感染に関与する血清型カプシドの機能を直接比較するための卓越したツールとなる。
【0191】
実験計画および方法。AAV2/GFPゲノムをAAV血清型1から8カプシドにそれぞれパッケージして、インビボ検査用の生存可能AAV組換え体のコレクションを産生させることにする。以下の実験を行うことにする。1)同じ粒子数の異なるAAV血清型をマウスに投与して、どの血清型がCNSにおいて最高の発現を達成できるかを判定することにする。ニワトリβ−アクチンプロモーター(CBA)を使用して、検査すべきすべての血清型においてGFP発現を駆動することとする。これは、構成的非組織特異的プロモーターである。必要な場合には、他のプロモーター、例えばNSEプロモーター、を選択された血清型において使用して、ニューロンにおけるトランスジーン発現の強度および特異性をさらに比較することとする。2)MeCP2 cDNAを、最適なプロモーターにより駆動される最良のAAV血清型において構成し、そのウイルスを、RTTマウスモデルのCNSにおいてMeCP2遺伝子送達について検査することとする。遺伝子発現を免疫組織化学によって、ならびに行動表現型のレスキューによって特性付けすることとする。
【0192】
マウスのCNSにトランスジーンを送達するために適するAAV血清型の同定。AAV1から8ベクターを、CBAプロモーターおよびGFPプロモーター遺伝子を有する同じAAV2ベクターゲノムを用いて作製することとする(rAAV1〜8/CBA−GFP)。3プラスミドコトランスフェクション法に従ってウイルスを作製し、DNアーゼ耐性ドットブロット法によってそれらの粒子数をアッセイすることとする。200μL マンニトール(25%)の静脈内注射の15〜20分後、各血清型の約1×1012個の粒子を各野生型C57BL株マウス脳の後脳槽に注射することとする。注射後14日の時点でそれらのマウスを犠牲にすることとする。注射していない対照も同じ時点で犠牲にすることとする。切片を前頭面または傍矢状平面で切断し、必要な場合には蛍光顕微鏡法(Leitz DM IRB,Vashaw Scientific Inc.)、免疫組織化学(Pierce)およびウエスタンブロットを用いることにより、脳の異なる部分におけるGFPの発現を研究することとする。
【0193】
MeCP2遺伝子欠失動物へのMeCP2トランスジーン送達についての最適ベクターの検査。MeCP2欠失マウスモデルは、Jackson Laboratoryから入手することとなる。このモデルは、ヒト患者における症状を模倣するものである。この動物モデルを使用することにより、インビボで送達される遺伝子の効果を観察することができる。MeCP2 cDNAを選択されたAAVベクターに構成し(AAV/MeCP2)、槽内注射(粒子数 2×1010)によってマウス脳に導入することとする。動物を次のように2つの群にセットすることとする。群1は、注射後14日の時点で遺伝子発現について検査し、一方、群2は、生きたまま保持して生存時間を評価し、1年までにわたって長期的に行動および症状を観察することとする。
【0194】
すべての動物を以下の基準によってモニターすることとする。1)(同年齢の正常および突然変異動物と比較した)体重、脳重量、生存時間、および赤外線活性化運動モニター室(Opto−Varimax−MiniA,Columbus Instruments)の使用による運動活性などの症状の改善。他の症状、例えば振戦および荒い呼吸も観察される。MeCP2の過剰発現の結果として生じ得る症状(例えば、食餌のための競争不能、サイズ、または仲間に対する拒絶)には特に注意を払うこととする。2)ウサギ抗MeCP2抗体(Upstate,Lake Placid)、ビオチン化ヤギ抗ウサギIgG(Vector Lovoratories)、およびVectastain Elite ABC kit(Vector Lovoratories)を使用することによる免疫組織化学によって、その時の脳におけるトランスジーン発現を検出することとする。
【0195】
Luikenhuis et al.(「Expression of MeCP2 in postmitotic neurons rescues Rett syndrome in mice」 PNAS USA 101(16):6033−8(E.pub April 6,2004);これは、その全体が引用により本明細書の一部をなすものとする)によって記載されたように、動物モデル表現型をレスキューする望みがある最大ウイルス用量を用いることとする。
【0196】
選択的スプライシングによるマウス脳におけるトランスジーン発現の新規調節方法の特性付け。遺伝子欠失は、RTTを含む遺伝子疾患の原因となり得るが、一定の遺伝子の過発現も深刻な問題をもたらすことがある。ニューロンが、重症運動機能障害が発生する前の正常なレベルより2〜3倍高いMeCp2発現にしか耐えることができないことは、研究により証明されている。このため、正確なレベルが重要な問題となってくる。AAVベクターは、小さすぎて、MeCp2組織特異的プロモーターカセットを有することができない。過発現を制御するために、本明細書に記載するような選択的スプライシング調節系をベクターカセットに導入することとする。
【0197】
2つの理由で、ルシフェラーゼをレポーター遺伝子として選択した:1)基質ルシフェリンは、腹腔内注射することができ、且つ、BBBを通過する(この場合、この領域におけるルシフェラーゼタンパク質発現により、それに対して作用することができる);および2)Luciferase Imaging System(Roper)により、動物を犠牲にすることなく、脳におけるルシフェラーゼ発現の現時間変化の観察を行うことができる。AON用量依存的に示されるルシフェラーゼ発現を検査することとする。投与すべきAONの頻度および用量を確立し、対照(GFPベクターのみ)と比較することとする。MeCP2イントロン依存性トランスジーンカセットで検査する前に、CNSにおけるこのベクターの性能を確立することとする。
【0198】
本明細書に記載する研究は、AONが、イントロン補正によりトランスジーンの発現を増加させることによって、またはオリゴがクリアされる場合には発現を減少させることによって作用できることを実証した。これにより、AONによるトランスジーン調節は、免疫応答しやすいことが証明されている現在利用されているトランス活性化カセットの魅力的な代替になる。直接頭蓋内注射によって達成されるのと同じ発現レベルを得るために、静脈内注射(IV)によると、より高いAON用量が必要となるが、IVアプローチのほうがより便利であり、実際的である。
【0199】
実験計画および方法。本明細書に記載する研究を、ルシフェラーゼレポーター遺伝子において野生型イントロンカセットまたは突然変異イントロンカセットのいずれかを構成することによって展開することとする。このイントロン依存性カセットを、適切なプロモーターによって駆動される選択されたAAVベクターに構成することとする。ウイルスは、上で説明したとおり産生させ、C57BLマウス脳の後脳槽に直接注射することとする(粒子数 2×1010/マウス)。ベースライン画像を収集し、注射の2週間後、AONを投与してルシフェラーゼ発現を誘導することとする。トランスジーン発現のレスキューのためのAON投与の用量および頻度を評価することとする。結果は、週に1度、Luciferase Imaging System(Roper)を使用することにより、直接観察することとする。
【0200】
注射すべきAONの適する用量を判定するために、異なる用量のAON(例えば、100μLの食塩水中、0.02μg、1μg、4μg、20μgおよび100μg)を静脈内注射によってマウスに注射して、用量依存性トランスジーン発現曲線を得ることとする。対照群には同量の食塩水のみを投与することとする。これらのデータは、脳においてMeCP2トランスジーン発現に依存してAONがイントロンを発現させるために必要な用量を判定する助けとなるはずである。
【0201】
本明細書に記載の研究によると、AON誘導インビボトランスジーン発現は、一定の時間の後、次第に減少する。そのため、理論的には、AONの第一投与によって誘導されるルシフェラーゼの発現は、一定の期間の後、減少する。この減少を現時間で観察できるので、発現が原発現レベルの半分に低下した時点で、再びAONを投与することとする。Lu発現を用い、MeCP2についての類似した発現時間点に外挿することによって、トランスジーン発現を定常レベルで維持することとする。問題のタンパク質の半減期が、この実験アプローチの最終的な条件(例えば、分対時間)を決める。これらのタンパク質の半減期は、S35標識メチオニンでの従来のパルス・チェイス実験を用いて組織培養で確立することとする。これらの実験条件の確立により、定レベルでMeCP2発現を維持する頻度でAONを投与することができる。血液脳関門の横断効率に関する問題に対処するために、化学修飾されたAON、例えばホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを用いることができる。脳におけるAAV調節ベクターの確立は、全体としては遺伝子療法分野にとって、より重要にはRett症候群などの脳障害全体に関係する神経学的コミュニティーにとって、有意な価値がある。
【0202】
マウス脳にMeCP2トランスジーンを送達するための選ばれた血清型特異的ベクターおよびイントロン依存性スプライシング調節系の使用。突然変異ヒトβ−グロビンイントロン2に依存する調節系をMeCP2 cDNAに構成することとする(AAV/MeCP2−mut−int)。このトランスジーンカセットを理想的な血清型ベクターに組み込み、選択されたプロモーター(NSE、CBAなど)によって駆動することとする。トランスジーンマウスは、Jackson Laboratoryに注文することとする。AONは、上で確立された量および頻度でそれらのマウスに投与することとする。トランスジーン発現のためにAONを送達した後、動物を特性付けし(上で説明したとおり)、本明細書において説明するとおり行動変化についてモニターすることとする。
【0203】
上記実施例は、本発明の例示となるものであり、本発明の限定と解釈すべきものではない。本発明は、後続の特許請求の範囲によって記述されるものであり、本特許請求の範囲に記載のものと等価のものは、本発明に包含される。
【0204】
本明細書において引用したすべての出版物、特許出願、特許、公開特許および他の参考文献は、その引用箇所が提示されている文および/または段落に関連した教示について、それら全体が引用により本明細書の一部をなすものとする。
【0205】
【表1】

【0206】
【表2】

【0207】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0208】
【図1】本発明の核酸構成体の一部分の略図であり、これは、本明細書において説明するような、外因性オリゴヌクレオチドの存在または不在に基づく、ルシフェラーゼ配列の発現を調節するメカニズムを示す。
【図2A−2B】1×1011ベクター粒子の門脈注射後のインビボでのAAV Luc発現を示す。ベクター注射の1年および7日後、25mg/kgのLNAオリゴヌクレオチドを腹腔内注射により投与した(A ii;B 矢印の時点)。ルシフェラーゼトランスジーン活性を、現時間撮像を用いて測定し(A)、発光単位×106として経時的に表した。B:オリゴ=ひし形;オリゴなし=丸。
【図3】オリゴヌクレオチド治療後のインビボでのAAT発現を示す。イントロン調節AATコード配列カセットを発現するAAVベクターを形質導入したマウス肝臓を、0.625mg/200μLのLNAオリゴヌクレオチドで2日間、腹腔内注射により治療した(矢印)。血液サンプルのELISAアッセイにより、ヒトAATの循環レベルを経時的に分析した。
【図4】654突然変異体への異なる突然変異の追加に基づくルシフェラーゼ発現の変化を示す。QuickChange(商標)Site−Directed Mutagenesis Kit(Stratagene)を取扱説明書に従って使用して、以下の突然変異を発生させた(番号付けは、IVS−654の5’スプライス部位から離れている塩基対の数に基づく):6 TからA、564 AからC、564 AAからCT、657 TAからGT、および841 CからA。新たなイントロンをルシフェラーゼcDNAにクローニングした。293の細胞を、本明細書において説明するようなベクターおよびオリゴでトランスフェクトした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された核酸であって、前記核酸は、
A)目的とする異種ヌクレオチド配列をコードする少なくとも1つの第一ヌクレオチド配列、および
B)少なくとも2つの異種第二ヌクレオチド配列
を含み、前記異種第二ヌクレオチド配列の各々が、
i)第一イントロンを規定する第一のスプライス要素セット(前記第一イントロンは、第二のスプライス要素セットに活性がないとき、生物学的機能を与える第一RNA分子を産生させるようにスプライシングすることによって除去される)、および
ii)前記第一イントロンとは異なる1つ以上のイントロンを規定する第二のスプライス要素セット(前記第一イントロンとは異なる前記1つ以上のイントロンは、前記第二のスプライス要素セットが活性であるとき、RNA分子を産生させないようにおよび/または生物学的機能を付与しない第二RNA分子を産生させるようにスプライシングすることによって除去される)
を含み、前記異種第二ヌクレオチド配列が、
a)前記第一ヌクレオチド配列内にタンデムで配置される第二ヌクレオチド配列、
b)前記第一ヌクレオチド配列内の少なくとも25塩基対離れた間隔に配置されている第二ヌクレオチド配列、
c)前記第一ヌクレオチド配列内の少なくとも50塩基対離れた間隔に配置されている第二ヌクレオチド配列、
d)前記第一ヌクレオチド配列内の少なくとも75塩基対離れた間隔に配置されている第二ヌクレオチド配列、
e)前記第一ヌクレオチド配列内の少なくとも100塩基対離れた間隔に配置されている第二ヌクレオチド配列、
f)前記第一ヌクレオチド配列内の少なくとも200塩基対離れた間隔に配置されている第二ヌクレオチド配列、
g)前記第一ヌクレオチド配列内の少なくとも300塩基対離れた間隔に配置されている第二ヌクレオチド配列、
h)第一の第二ヌクレオチド配列が、プロモーターと前記第一ヌクレオチド配列の間に位置し、且つ、第二の第二ヌクレオチド配列が、前記第一ヌクレオチド配列内に位置する、第二ヌクレオチド配列、および
i)第一の第二ヌクレオチド配列が、前記第一ヌクレオチド配列内のオープンリーディングフレームとポリ(A)テイルまたはポリAシグナルの間に位置し、且つ、第二の第二ヌクレオチド配列が、前記第一ヌクレオチド配列の前記オープンリーディングフレーム内に位置する、第二ヌクレオチド配列、
からなる群より選択される核酸。
【請求項2】
前記第一ヌクレオチド配列が、任意の組み合わせで、タンパク質またはペプチドをコードするヌクレオチド配列、RNAとしての酵素的活性を有するヌクレオチド配列(例えば、RNAi)、リボザイムをコードするヌクレオチド配列、アンチセンス配列をコードするヌクレオチド配列および/または核内低分子RNA(snRNA)からなる群より選択される、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
同じまたは異なる2つ以上の第一ヌクレオチド配列を含む、請求項1または2に記載の核酸。
【請求項4】
同じである2つ以上の第二ヌクレオチド配列を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の核酸。
【請求項5】
互いに異なる2つ以上の第二ヌクレオチド配列を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の核酸。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの核酸を含むベクター。
【請求項7】
非ウイルスベクター、ウイルスベクターおよび合成生物ナノ粒子からなる群より選択される、請求項6に記載のベクター。
【請求項8】
AAVベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、バキュロウイルスベクターおよびキメラウイルスベクターからなる群より選択される、請求項6に記載のベクター。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかの核酸を含む細胞。
【請求項10】
請求項6〜8のいずれかのベクターを含む細胞。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれかの核酸および医薬的に許容される担体を含む組成物。
【請求項12】
請求項6〜8のいずれかのベクターおよび医薬的に許容される担体を含む組成物。
【請求項13】
請求項9〜10のいずれかの細胞および医薬的に許容される担体を含む組成物。
【請求項14】
タンパク質を産生させるための方法であって、
a)スプライシングを可能にさせる条件下で請求項1〜5のいずれかの核酸とブロッキングオリゴヌクレオチドを接触させること(前記ブロッキングオリゴヌクレオチドは、スプライス要素の第二セットの構成要素をブロックし、その結果、スプライシングにより第一イントロンを除去し、第一RNAを産生させる)、および
b)前記第一RNAを翻訳して、タンパク質を産生させること
を含む方法。
【請求項15】
生物学的機能を付与するRNAを産生させるための方法であって、
a)スプライシングを可能にさせる条件下で請求項1〜5のいずれかの核酸とブロッキングオリゴヌクレオチドを接触させること(前記ブロッキングオリゴヌクレオチドは、スプライス要素の第二セットの構成要素をブロックし、その結果、スプライシングにより第一イントロンを除去し、第一RNAを産生させる)、および
b)前記第一RNAを翻訳して、生物学的機能を付与するRNAを産生させること
を含む方法。
【請求項16】
前記ブロッキングオリゴヌクレオチドが、前記核酸を含む細胞に導入される、請求項14〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記細胞が、動物における細胞である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記動物が、ヒトである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ブロッキングオリゴヌクレオチドが、RNアーゼHを活性化しない、請求項14〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記ブロッキングオリゴヌクレオチドが、メチルホスホロチオエート、ホスホロモルホリデート、ホスホロピペラジデートおよびホスホルアミデートからなる群より選択されるヌクレオチド間を架橋する修飾リン酸残基を含む、請求項14〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記ブロッキングオリゴヌクレオチドが、その2’位に低級アルキル置換基を有するヌクレオチドを含む、請求項14〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記ブロッキングオリゴヌクレオチドが、8から50ヌクレオチドの長さである、請求項14〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
タンパク質を産生させるための方法であって、
a)スプライシングを可能にさせる条件下で請求項1〜5のいずれかの核酸と小分子を接触させること(前記小分子は、第二のスプライス要素セットの構成要素をブロックし、その結果、第一イントロンを除去し、第一RNAを産生させる)、および
b)前記第一RNAを翻訳して、タンパク質を産生させること
を含む方法。
【請求項24】
生物学的機能を付与するRNAを産生させるための方法であって、
a)スプライシングを可能にさせる条件下で請求項1〜5のいずれかの核酸と小分子を接触させること(前記小分子は、第二のスプライス要素セットの構成要素をブロックし、その結果、第一イントロンを除去し、第一RNAを産生させる)、および
b)前記第一RNAを翻訳して、生物学的機能を付与するRNAを産生させること
を含む方法。
【請求項25】
前記小分子が、前記核酸を含む細胞に導入される、請求項23〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記細胞が、動物における細胞である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記動物が、ヒトである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
被験体における生物学的機能を付与する異種RNAの産生を調節する方法であって、
a)請求項1〜5のいずれかの核酸を対象に導入すること、ならびに
b)第二のスプライス要素セットの構成要素をブロックするブロッキングオリゴヌクレオチドおよび/または小分子を、前記異種RNAの産生を望む時点で、前記対象に導入することにより、前記対象における前記RNAの産生を調節する
ことを含む方法。
【請求項29】
被験体における異種タンパク質の産生を調節する方法であって、
a)請求項1〜5のいずれかの核酸を対象に導入すること、ならびに
b)第二のスプライス要素セットの構成要素をブロックするブロッキングオリゴヌクレオチドおよび/または小分子を、前記異種タンパク質の産生を望む時点で、前記対象に導入することにより、前記対象における前記タンパク質の産生を調節する
ことを含む方法。
【請求項30】
被験体における疾患を治療する方法であって、
a)請求項1〜5のいずれかの核酸を対象に導入すること、ならびに
b)ブロッキングオリゴヌクレオチドおよび/または小分子を前記対象に導入することにより前記対象における疾患を治療する
ことを含む方法。
【請求項31】
請求項1の核酸の第二のスプライス要素セットの構成要素をブロックする化合物を同定する方法であって、
a)スプライシングを可能にさせる条件下で請求項1の核酸を前記化合物と接触させること、ならびに
b)請求項1の第一RNAの産生および/または第二RNAの産生を検出することにより請求項1の第一RNAの産生により、請求項1のスプライス要素の第二セットの構成要素をブロックする化合物を同定する
ことを含む方法。
【請求項32】
生物学的機能を付与する異種RNAの産生を阻害するための方法であって、
a)スプライシングを可能にさせる条件下で請求項1〜5のいずれかの核酸と小分子を接触させることにより、前記小分子が、第一のスプライス要素セットの構成要素をブロックし、その結果、第二イントロンを除去し、それによって第一RNAの産生を阻害する
ことを含む方法。
【請求項33】
異種タンパク質の産生を阻害するための方法であって、
a)スプライシングを可能にさせる条件下で請求項1〜5のいずれかの核酸と小分子を接触させることにより、前記小分子が、スプライス要素の第一セットの構成要素をブロックし、その結果、第二イントロンを除去し、それによって第一RNAの産生を阻害する
ことを含む方法。
【請求項34】
生物学的機能を付与する異種RNAの産生を阻害するための方法であって、
a)スプライシングを可能にさせる条件下で請求項1〜5のいずれかの核酸とブロッキングオリゴヌクレオチドを接触させることにより、前記ブロッキングオリゴヌクレオチドが、スプライス要素の第一セットの構成要素をブロックし、その結果、第二イントロンを除去し、それによって第一RNAの産生を阻害する
ことを含む方法。
【請求項35】
異種タンパク質の産生を阻害するための方法であって、
a)スプライシングを可能にさせる条件下で請求項1〜5のいずれかの核酸とブロッキングオリゴヌクレオチドを接触させることにより、前記ブロッキングオリゴヌクレオチドが、スプライス要素の第一セットの構成要素をブロックし、その結果、第二イントロンを除去し、それによって第一RNAの産生を阻害する
ことを含む方法。

【図1】
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【図2A−2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−539698(P2008−539698A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509220(P2008−509220)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/016514
【国際公開番号】WO2006/119137
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(500093834)ザ・ユニヴァーシティ・オヴ・ノース・キャロライナ・アト・チャペル・ヒル (14)
【Fターム(参考)】