説明

転写物の切断装置

【課題】 迅速かつ正確に転写物の切断を行うことができる転写物の切断装置を提供すること。
【解決手段】 切断装置は、1または複数の切断刃部110を、昇華性材料で転写紙に形成された画像を布地10に転写する加熱ローラ240排出側に設けられ、布地10を送り方向に沿って切断する。また、切断装置100には、切断刃の設置位置を調整する刃先移動手段406を備え切断線の位置を自由に設定できる他、切断刃を加熱するヒータ112を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写物の切断装置に係り、特に長尺に形成され、昇華性材料で形成された画像を担持した転写体と、長尺に形成され、転写非転写体とが重ね合わされ、長手方向に搬送されつつ加圧・加熱して、前記昇華性材料で形成された画像を被転写体に転写する加熱ローラを備えた転写装置に設けられる転写物の切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述のような転写装置として、帯状の布、例えばポリエステル系布に文字模様等の画像をプリントして、垂れ幕、横断幕、幟等一方向に長い転写物を作成するものがある。このような転写物は、中間転写体であるロール状転写紙に昇華性インクで一旦画像を印刷形成し、この転写紙と被転写体である布とを、圧縮転写装置内で密着させて、加熱ローラで加圧加熱することで布に長尺の画像を形成する。
【0003】
特許文献1には中間転写 記録媒体への画像形成を、中間転写 記録媒体を表裏から押圧して挟みながら行う熱転写記録装置において、中間転写 記録媒体を、サーマルヘッドの前後で表裏からニップローラで押さえながら搬送する、あるいは幅方向両端を、挟持板やベルトで表裏から挟持し幅方向長さを固定しながら搬送する等するものが記載されている。
【特許文献1】特開平9−300673
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した装置で模様文字等の転写模様が印刷された状態において、図9に示すように布地10には、転写部11,12が形成されている。このような状態で、横断幕、幟等の転写製品を製造するためには、それぞれの転写製品の寸法に裁断しなければならない。即ち、図9中の転写部11,12に沿って縦切断線13,14,15,16及び横切断線17,18に沿って切断しなければならない。
【0005】
従来、このような裁断は作業者が定規、ヒータで切断刃が加熱された電熱カッタ等を用いて行うようにしている。しかしながらこのように、裁断を人手で行うと処理時間及び費用がかさむ他、切断が正確に行われないことがあるという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、上述した従来の問題点に鑑みなされたものであり、迅速かつ正確に転写物の切断を行うことができる転写物の切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、長尺に形成され、昇華性材料で形成された画像を担持した転写体と、長尺に形成され、転写非転写体とが重ね合わされ、長手方向に搬送されつつ加圧・加熱して、前記昇華性材料で形成された画像を被転写体に転写する加熱ローラを備えた転写装置に設けられる転写物の切断装置において、前記切断装置は、加熱ローラ排出側に設けられ、転写体の送り方向に沿って配置され、転写物を送り方向に沿って切断する切断刃を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の転写物の切断装置において、前記切断刃は転写体の幅方向に1または2以上設けられたことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2の転写物の切断装置において、切断刃の配置位置を変更可能とした切断刃移動手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3の転写物の切断装置において、転写体の画像転写領域を検出するセンサを備え、前記センサの検出結果に基づいて前記切断刃移動手段を駆動制御して、転写体の切断位置を変更する刃位置制御手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの転写物の切断装置において、切断刃には、切断刃を加熱する加熱手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、転写物は、転写処理終了後に切断刃により転写物の送り方向、即ち長手方向に切断されるから、転写体の切断を転写処理の直後に人手を介さず正確に行うことができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、切断刃は必要により所定数設けることができるから、2枚の切断刃を備えていれば、所定間隔で転写物をその長手方向に切断して転写切断品として排出できる。また、必要に応じて切断刃を増加すれば、転写物を複数の転写切断品として排出できる。
【0014】
請求項3の発明によれば、切断刃は切断刃移動手段で移動して転写体の切断位置を変更できるから、転写体の切断位置、転写切断品の幅寸法を所望のものとして設定することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、センサで画像転写領域を検出し、刃位置制御手段は、この間出結果に基づいて前記切断刃移動手段を駆動制御するから、画像形成領域に即して切断を行うことができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、刃先部を加熱手段で加熱するようにしたから、熱可塑性樹脂で形成された布地を容易に切断できる他、切断部が溶解して布端のほつれを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る転写物の切断装置を適用した転写装置を示す正面図、図2は図1に示した転写装置の駆動系を示す側面図、図3は実施の形態に係る転写物の切断装置を示す斜視図、図4は実施の形態に係る転写物の切断装置を示す側面図、図5は実施の形態に係る転写物の切断装置を示す平面図、図6は実施の形態に係る転写物の切断装置を示す正面図である。
【0018】
本例において、転写物の切断装置100は、図1及び図2に示すように転写装置200に設けられている。
【0019】
転写装置200は、昇華性インクで文字等の模様が印刷された転写紙210を巻き取り供給する転写紙供給ローラ211と、被転写材である例えばポリエステル製の布地220を供給する布地供給ローラ221と、下紙230を供給する下紙供給ローラ231とを備える。
【0020】
また、転写装置200は、内部にヒータを備え、前記転写紙210、布地220及び下紙230を重ね合わせた積層体を加熱する加熱ローラ240と、加熱ローラ240表面に配置され、前記積層体を加圧する無端状のフェルト帯250とを備える。また、転写装置200は、転写後の転写紙を巻き取る転写紙ローラ270、転写が終わり切断された布地を巻き取る布地ローラ280と、紙を巻き取る下紙ローラ290とを備える。
【0021】
本例において、加熱ローラ240及びフェルト帯250は加熱部201に配置されている。加熱ローラ240は図示しないモータで回転駆動されると共に図示しないヒータで加熱されている。本例において、前記フェルト帯250は、ローラ251〜255で加熱ローラ240の周りに掛け回されている。なお本例では、ローラ252は上下動されフェルト帯250の位置を調整する。また、ローラ252近傍には、フェルト位置の上限リミットスイッチ256、下限リミットスイッチ257が設けられている。また、ローラ225には、フェルトの延びに対応してローラ225を移動させるフェルト伸張ノブ258を備えている。なお、図中符号259は駆動ローラテンション調整ノブ、260はフェルト位置ずれリミットスイッチを示している。
【0022】
本例では、前記転写紙ローラ270、布地ローラ280、下紙ローラ290は巻取部202に配置されている。本例では転写紙ローラ270、布地ローラ280、下紙ローラ290はモータ310で同期回転される。各ローラ270,280,290には、スプロケット311、312、313が取り付けられローラチェーン315が巻きかけられている。なお符号314はローラチェーン315転向用のスプロケットを示している。
【0023】
本例では、切断装置100は、図1ないし図3に示すように、加熱部201の幅方向に渡された角パイプ状の梁部材203に取り付けられている。切断装置100は、図3に示すように、前記梁部材203を覆い、この梁部材203に沿って移動可能に配置された角パイプ状の取付部102と、この取付部102から下方に向け立設するフランジ部103、104と、このフランジ部103、104間に配置された送り螺子105とを備える。なお取付部102には、ハンドル121が配置され、取付部102を梁部材203に対して固定することができるものとしている。なお、この102の移動は、手動で行うことができる他、送り螺子等の手段によって自動的に行うことができる。なお、図中符号204,205はシャフト、206は挿入テーブル、207はエアシリンダで駆動される挿入ローラを示している。また、図中符号131,132は前記シャフト204,205に係合するスライドブシュを示している
【0024】
また、本例では送り螺子105には、移動台106が配置され、移動台106には、軸113が配置され、さらにこの軸113には刃取付基台107が、前記軸113に対して回動可能に配置されている。この例では、刃取付基台107はエアシリンダ108のプッシュロッド108a及びスプリング(図示していない)で前記軸113に対し回動駆動され、布地切断状態及び待避状態の2つの傾斜状態をとりうる。
【0025】
前記布地切断状態においては、刃取付基台107を後述する刃先111が布地10を切断する位置に配置されると共に適度な力で刃先を布地10を案内する刃受けシャフト204に押しつける。また、待避状態では、刃先111が布地10から離間した状態となる。
【0026】
なお、本例では、前記前記送り螺子106をハンドル114で回転させることにより、刃取付基台107の位置を調整している。この106の駆動をパルスモータ等で自動的にすることもできる。なお、図1中符号122はカット位置調整ノブ、123は布地調整ノブを示している。

【0027】
また、前記刃取付基台107には刃取付部109がその取付角度を可変に配置されている。本例では107は2つの突出フランジ部109a、109bの間で刃取付部109を挟み込み刃取付部109に固定される。
【0028】
そして、刃取付部109の先端には切断刃部110が配置される。本例では、前記切断刃部110は、前記布地切断状態において、巻取部202に掛け渡された刃受けシャフト204に接触するように配置される。この切断刃部110には鋭利な刃先部111が形成されると共に、その内部に加熱手段として電気ヒータ112が配置されている。本例では切断対象となる布地10をポリエステルとしているため、刃先部111を高温としておくことにより、布地10が溶解して切断が容易となる他、布地10の切り口が溶着してほつれを防止できる。
【0029】
また、本例では、切断装置100は図4ないし図6に示すように4台配置される。このように4台配置されることにより、1枚の布地10上に同時に転写される2つの転写部11,12を長手方向に切り分けることができる。この際、図5及び図6に示すように、転写部11,12の内側に切断線13,14、15、16が配置されるように、刃先部111の配置位置を設定しておくことが望ましい。
【0030】
なお、切断装置の配置個数は前記例に限られることなく1台のみまたは5台以上設けてもよい。図7には、切断装置100を6台設ける場合を示している。このように、並列する転写部の幅w1、w2、w3が異なる場合であっても本例が適用できることはもちろんである。なお、長手方向に切断された布地の短尺方向の切断は、人手あるいは他の自動装置で行うことができる。
【0031】
図8は、本発明の他の実施の形態を示すものである。本例は、転写装置200の加熱ローラ240の下流に転写部11,12の輪郭を検知するセンサ401、402,403、404(例えば光センサ)を配置し、このセンサ401、402,403、404の出力に基づいて切断装置100を駆動制御して刃先部111の位置を調整する刃位置制御手段405を設けたものである。刃位置制御手段405は前記送り螺子105にステップモータ等を台み合わせた刃先移動手段406,407,408,409を駆動して、刃先部11の位置を自動的に移動する。
【0032】
本例によれば、転写部11,12の位置変動に対しても正確な切断を行うことができる。また、光センサとして、布地の幅全体を検知幅としたCCDラインセンサ等を用い、布地全体の転写部の枚数及び転写幅を正確に認識して、その認識した枚数及び幅で布地を切断するように切断装置を移動させることができる。このようにして、等間隔でない転写幅の布地や、転写幅が変化する転写動作に対してもその都度切断装置の位置調整をすることなく自動的に適正な幅での切断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る転写物の切断装置を適用した転写装置を示す正面図である
【図2】図1に示した転写装置の駆動系を示す側面図である。
【図3】実施の形態に係る転写物の切断装置を示す斜視図である。
【図4】実施の形態に係る転写物の切断装置を示す側面図である。
【図5】実施の形態に係る転写物の切断装置を示す平面図である。
【図6】実施の形態に係る転写物の切断装置を示す正面図である。
【図7】本発明に係る転写物の切断装置で切断する布の例を示す図である。
【図8】他の実施の形態に係る転写物の切断装置を示すブロック図である。
【図9】転写物の切断線を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
10 布地
11,12 転写部
13,14、15、16 切断線
17,18 切断線
100 切断装置
102 取付部
103、104 フランジ部
106 移動台
107 刃取付基台
108 エアシリンダ
109 刃取付部
109a、109b 突出フランジ部
110 切断刃部
111 刃先部
112 電気ヒータ
113 軸
114 ハンドル
121 ハンドル
200 転写装置
201 加熱部
202 巻取部
203 梁部材
204 刃受けシャフト
210 転写紙
211 転写紙供給ローラ
220 布地
221 布地供給ローラ
225 ローラ
230 下紙
231 下紙供給ローラ
240 加熱ローラ
250 フェルト帯
251〜255 ローラ
256 上限リミットスイッチ
257 下限リミットスイッチ
258 フェルト伸張ノブ
270,280,290 ローラ
270 転写紙ローラ
280 布地ローラ
290 下紙ローラ
310 モータ
311、312、313 スプロケット
315 ローラチェーン
401、402,403、404 センサ
405 刃位置制御手段
406,407,408,409 刃先移動手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺に形成され、昇華性材料で形成された画像を担持した転写体と、長尺に形成され、転写非転写体とが重ね合わされ、長手方向に搬送されつつ加圧・加熱して、前記昇華性材料で形成された画像を被転写体に転写する加熱ローラを備えた転写装置に設けられる転写物の切断装置において、
前記切断装置は、加熱ローラ排出側に設けられ、転写体の送り方向に沿って配置され、転写物を送り方向に沿って切断する切断刃を備えたことを特徴とする切断装置。
【請求項2】
前記切断刃は転写体の幅方向に1または2以上設けられたことを特徴とする請求項1の転写物の切断装置。
【請求項3】
切断刃の配置位置を変更可能とした切断刃移動手段を備えたことを特徴とする請求項1または2の転写物の切断装置
【請求項4】
転写体の画像転写領域を検出するセンサを備え、前記センサの検出結果に基づいて前記切断刃移動手段を駆動制御して、転写体の切断位置を変更する刃位置制御手段を備えたことを特徴とする請求項3の転写物の切断装置。
【請求項5】
切断刃には、切断刃を加熱する加熱手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの転写物の切断装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−68984(P2006−68984A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253853(P2004−253853)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(597131118)株式会社ジャパンネットワークサービス (4)
【Fターム(参考)】