説明

転写箔用ポリエステルフィルム

【課題】
特にインモールド成形に用いられるインモールド転写箔用として使用した場合に、金型汚れや転写ヌケを防止し得る転写箔用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】
ポリエステルフィルム(B層)の少なくとも片面に、下記構造式(I)で示されるアクリル酸エステルを共重合した化合物からなる塗布層(A層)が形成されてなることを特徴とする転写箔用ポリエステルフィルムである。
【化1】


(式中、R=水素またはアルキル基、n=1〜20、X=アルカリ金属、アルカリ土類金属または4級アミノ基を表す。)本発明においては、上記のアクリル酸エステルを30モル%以上の割合で共重合してなる化合物を用いることが好ましい態様である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写箔用ポリエステルフィルムに関し、さらに詳しくは、本発明は、特にインモールド成形に用いられるインモールド転写箔用として使用した場合に、金型汚れや転写ヌケを防止し精細な絵柄を転写し得る転写箔用ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年における樹脂成形法のひとつとして、射出成形と成形体表面への印刷を同時に行うインモールド成形(インモールド転写)が着目されている。インモールド成形は、射出成形するときに転写箔を金型の間に挟み込み、射出時の熱圧により成形転写する方法である。インモールド成形による成形時には、転写箔の支持体として機能しているフィルムが用いられているが、このフィルムは絵柄を転写した後に樹脂成形体から取り除かれるため、再生材料としてリサイクルが可能となる。また、この方法を用いることで、曲面となる成形体上に精細で鮮やかな絵柄や文字を施すことが可能となり、絵柄の印刷などの二次加工が省けるため効率が向上し、携帯電話の外装部品や自動車関係部品、医療用機械機具、エレクトロニクス製品、家電製品、建材、および洗剤や化粧品などの容器などを対象に、急速に普及しつつある。
【0003】
一方、二軸配向ポリエステルフィルムは、寸法安定性、機械的性質、耐熱性、透明性および電気的性質などに優れた性質を有することから、磁気記録材料、包装材料、電気絶縁材料、各種写真材料およびグラフィックアーツ材料などの多くの用途の基材フィルムとして広く使用されており、二軸配向ポリエステルフィルムを転写箔用として用いた例も提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、二軸配向ポリエステルフィルムは、一般に静電気が発生し易く、製膜工程、加工工程および製品の使用時などに塵埃の付着などのトラブルを発生し易いという欠点を有している。このため、従来から、ポリエステルフィルム表面に種々の方法で帯電防止性を与えるための検討がなされてきた。例えば、帯電防止剤をポリエステルフィルムに添加する方法(特許文献2参照)、ポリエステルフィルムにスルホン酸塩基を有する化合物を塗布する方法(特許文献3および特許文献4参照)、ポリエステルフィルム上にリン酸塩基を含有する塗布層を形成する方法(特許文献5参照)、あるいはポリエステルフィルム上にイオン化された窒素原子を有する化合物を塗布する方法(特許文献6参照)などが提案されている。
【特許文献1】特開2001−322396号公報
【特許文献2】特開平6−145394号公報
【特許文献3】特開平2−110141号公報
【特許文献4】特開2001−323090号公報
【特許文献5】特開平7−81015号公報
【特許文献6】特開平6−172562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のポリエステルフィルムでは、それを転写箔用に用いた場合に、帯電防止性の悪化から生じる塵埃の付着やオリゴマーの析出などによる金型汚れや転写ヌケという問題が生じていた。
【0006】
そこで本発明は、このような従来技術の欠点を改良し、特にインモールド成形に用いられるインモールド転写箔用として使用した場合に、金型汚れや転写ヌケを防止し精細な絵柄を転写し得る転写箔用ポリエステルフィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の転写箔用ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルム(B層)の少なくとも片面に、下記構造式(I)で示されるアクリル酸エステルを共重合した化合物からなる塗布層(A層)が形成されてなることを特徴とする転写箔用ポリエステルフィルムである。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R=水素またはアルキル基、n=1〜20、X=アルカリ金属、アルカリ土類金属または4級アミノ基を表す。)
本発明においては、上記の構造式(I)で示されるアクリル酸エステルを30モル%以上の割合で共重合してなる化合物を用いることが好ましい態様である。
【0010】
さらに、本発明においては、上記のポリエステルフィルム(B層)の少なくとも片面に形成される塗布層(A層)とは反対側にもしくは塗布層(A層)の片側に、コロナ放電処理が施されることが好ましい様態である。
【0011】
さらに、本発明においては、上記のポリエステルフィルム(B層)の少なくとも片面に形成される塗布層(A層)とは反対側にもしくは塗布層(A層)の片側に、ポリエステル樹脂およびウレタン樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂からなる塗布層(C層)が形成されてなることが好ましい様態である。
【0012】
さらに、本発明においては、上記のポリエステルフィルム(B層)の少なくとも片面に形成される塗布層(A層)とは反対側もしくは塗布層(A層)の片側(コロナ放電処理を施す側あるいは塗布層(C層)側)の面を、三次元表面粗さ計で測定したときの算術平均粗さ(SRa)が30nm以下であることが好ましい様態である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって作成される転写箔用ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルム(B層)の少なくとも片面に、下記構造式(I)で示されるアクリル酸エステルを共重合した化合物からなる塗布層(A層)が形成されているため、優れた帯電防止性やオリゴマー析出防止が可能となり、特にインモールド成形に用いられるインモールド転写箔用として使用した場合に、金型汚れや転写ヌケを防止し得る転写箔用ポリエステルフィルムが得られる。
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、R=水素またはアルキル基、n=1〜20、X=アルカリ金属、アルカリ土類金属または4級アミノ基を表す。)
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の転写箔用ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルム(B層)の少なくとも片面に、下記構造式(I)で示されるアクリル酸エステルを共重合した化合物からなる塗布層(A層)が形成されてなるものである。
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、R=水素またはアルキル基(炭素数1または2のアルキル基)、n=1〜20、X=アルカリ金属、アルカリ土類金属または4級アミノ基を表す。)
従って、本発明の転写箔用ポリエステルフィルムの層構造は、「A層/B層」あるいは「A層/B層/A層」で表現される。
【0019】
さらに、本発明においては、ポリエステルフィルム(B層)の少なくとも片面に形成される塗布層(A層)とは反対側にもしくは塗布層(A層)の片側に、コロナ放電処理が施されることが好ましい様態である。この好ましい様態を鑑みるに、本発明の転写箔用ポリエステルフィルムのさらに好ましい層構造は、「A層/B層/コロナ放電処理」あるいは「A層/B層/A層/コロナ放電処理」で表現される。
【0020】
さらに、本発明においては、ポリエステルフィルム(B層)の少なくとも片面に形成される塗布層(A層)とは反対側にもしくは塗布層(A層)の片側に、ポリエステル樹脂およびウレタン樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂からなる塗布層(C層)が形成されてなることが好ましい様態である。この好ましい様態を鑑みるに、本発明の転写箔用ポリエステルフィルムのさらに好ましい層構造は、「A層/B層/C層」あるいは「A層/B層/A層/C層」で表現される。
【0021】
本発明の転写箔用ポリエステルフィルムを、特にインモールド成形に用いられるインモールド転写箔用として使用する場合には、層構造として「A層/B層(/A層)/離型層/保護(絵柄)層/接着層」という構成が例示され、さらには「A層/B層(/A層)/コロナ放電処理/離型層/保護(絵柄)層/接着層」あるいは「A層/B層(/A層)/C層/離型層/保護(絵柄)層/接着層」という構成が例示される。これらの構成においては、射出時の熱圧により接着層側が成形体に接着して絵柄が転写され、その後「A層/B層(/A層)/離型層」あるいは「A層/B層(/A層)/コロナ放電処理/離型層」あるいは「A層/B層(/A層)/C層/離型層」が成形体から取り除かれて使用される。
本発明の転写箔用ポリエステルフィルムは、上記に例示されるように、特にインモールド成形に用いられるインモールド転写箔用として使用した場合に、コロナ放電処理を施す側あるいは塗布層(C層)側は、樹脂成形体に転写する絵柄側に位置することから、その表面が平滑であると、絵柄がより精細となる。その平滑さのレベルについては、三次元表面粗さ計で測定したときの算術平均粗さ(SRa)が30nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは20nm以下を挙げることができる。
【0022】
本発明の転写箔用ポリエステルフィルムにおいて、ポリエステルフィルム(B層)を構成するポリエステル(b)とは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分
子化合物の総称であって、好ましいポリエステルとしては、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレートおよびエチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等から選ばれた少なくとも1種の構成成分を主要構成成分とするポリエステルを用いることができる。これら構成成分は1種のみ用いても、2種以上併用してもよいが、中でも品質や経済性などを総合的に判断すると、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましく用いられる。また、これらポリエステルには、更に他のジカルボン酸成分やジオール成分が一部、好ましくは20モル%以下共重合されていてもよい。
【0023】
上記のポリエステル(b)を使用したポリエステルフィルム(B層)には、オリゴマー(環状三量体)の含有量が通常0.5重量%以上含まれている。このポリエステルフィルム(B層)を転写箔用として使用した場合には、転写時に熱処理を受けることから、ポリエステルフィルム(B層)中のオリゴマーがフィルム表面へと析出し、金型汚れや転写ヌケなどの原因となり得るが、本発明においては、特定の構造を有するアクリル酸エステル共重合体からなる塗布層(A層)が、表面へのオリゴマー析出を防止するため、金型汚れや転写ヌケを防止することが可能となる。さらに、ポリエステルフィルム(B層)に用いられるポリエステルとして、例えば、従来公知の固相重合法を用いることによりオリゴマー量を低減したポリエステル(b’)を使用することも可能である。この固相重合法により得られたポリエステル(b’)は、製造コストの上昇や極限粘度の増加に由来する生産性の悪化など、ポリエステルフィルム(B層)に単独で用いることに幾分かの問題点があることから、ポリエステル(b)とポリエステル(b’)の積層構造を有するポリエステルフィルム(B層)とすることも可能である。この場合の積層構造として、b/b’あるいはb’/b/b’が例示される。
【0024】
更に、このポリエステル(b、b’)中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤および核剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
【0025】
本発明におけるポリエステルフィルム(B層)は、塗布層(A層、C層)が設けられた状態あるいはコロナ放電処理が施された状態においては、二軸配向されたものであることが好ましい。二軸配向ポリエステルフィルムとは、一般に、未延伸状態のポリエステルシートまたはフィルム状物を長手方向および幅方向に各々2.5〜5倍程度延伸され、その後、熱処理が施されて、結晶配向が完了されたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
【0026】
本発明で用いられるポリエステルフィルムの厚みは用途に応じて適宜選択されるが、機械的強度やハンドリング性や転写箔用としての特性を考慮すると、通常1〜100μmの範囲であり、より好ましくは10〜50μmの範囲である。
【0027】
本発明の転写箔用ポリエステルフィルムにおいては、ポリエステルフィルム(B層)の少なくとも片面に、次の構造式(I)
【0028】
【化4】

【0029】
(式中、R=水素またはアルキル基(炭素数1または2のアルキル基)、n=1〜20、X=アルカリ金属、アルカリ土類金属または4級アミノ基を表す。)で示されるアクリル酸エステルを共重合した化合物からなる塗布層(A層)が形成される。この点において、例えば、特開2001−322396号公報とは、転写箔用ポリエステルフィルムとしての構成を異にしている。
【0030】
本発明においては、特定の構造を有するアクリル酸エステル共重合体からなる塗布層(A層)がポリエステルフィルム(B層)の少なくとも片面に形成されることから、優れた帯電防止性を有するのみならず、表面へのオリゴマー析出を防止することが可能である。上記に例示されたように、上記のポリエステルフィルムを、特にインモールド成形に用いられるインモールド転写箔用として使用した場合に、優れた帯電防止性により塵埃が付着せず、金型汚れや転写ヌケを防止することが可能となり、さらには、塗布層(A層)側は金型側に位置することから、オリゴマーの析出を防止することで、特に金型汚れを防止することが可能となる。
【0031】
帯電防止性を付与する公知の技術としては、例えば、特開平2−110141号公報には下記構造式(II)で示されるスルホン酸塩基を有する化合物が記載されているが、この化合物を用いた場合には、水洗後の帯電防止性が悪化したり、熱処理後のオリゴマー析出の防止が不十分であることから、転写箔用ポリエステルフィルムに用いることは不適である(比較例参照)。
【0032】
【化5】

【0033】
(式中、R=水素またはアルキル基(メチル基、エチル基など)、n=0〜2、X=金属元素または4級アミノ基を表す。)
本発明において塗布層(A層)成分に用いられるアクリル酸エステルは、従来の上記構造式(II)で示される化合物とは化学構造を異にしている。本発明におけるアクリル酸エステルは、下記の構造式(I)
【0034】
【化6】

【0035】
で示され、式中、Rは水素またはアルキル基(炭素数1または2のアルキル基)、であり、n=1〜20、さらに好ましくはn=1〜10であり、Xとしてはアルカリ金属(Li、Na、Kなど)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Baなど)、4級アミノ基(NH、NH(CH)など)を用いることができる。該アクリル酸エステルの好ましい共重合割合としては30モル%以上、さらに好ましくは40〜80モル%であり、該割合がこの範囲内のときには帯電防止性がより良くなり、さらには該塗布層が少なくとも一方向に延伸されたときに、透明性を悪化させない傾向がある。
【0036】
さらには、特にインモールド成形に用いられるインモールド転写箔用として使用し、上記のような層構造を例示すると、該層構造をロール状態にしたときには、本発明の転写箔用ポリエステルフィルムにおける塗布層(A層)は接着層と接することとなり、塗布層(A層)には接着層との耐ブロッキング性が必要となる。本発明における塗布層(A層)は、上記した特定の構造を有するアクリル酸エステル共重合体からなるために、接着層との耐ブロッキング性に優れており、転写箔用として有用である。
【0037】
本発明において、塗布層(A層)に用いられる上記構造式(I)で示されるアクリル酸エステルの共重合成分としては、当該アクリル酸エステルと共重合可能であり本発明の効果を損なわないものであれば、特に限定されないが、例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基など)、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ビニルアセトアミドなどのアミド基含有モノマー、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、およびN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有モノマー、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどの水酸基含有モノマー、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、およびアリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有モノマー、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)などのカルボキシル基またはその塩を含有するモノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物を含有するモノマー、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)などのスルホン酸基またはその塩を含有するモノマー、また、他種のモノマーとして、特に限定されないが、例えば、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、エチレン、スチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリスアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマル酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルキルイタコン酸モノエステル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、ポリブチレンオキサイド、およびカルボキシル化ポリエチレンオキサイドなどを用いることができ、これらは1種もしくは2種以上を用いて共重合される。
【0038】
また、本発明においては、アクリル酸エステルの他の共重合成分として、上記モノマーの他にブロック共重合体やグラフト共重合体などの変性共重合体を用いることもでき、この変性共重合体は上記モノマーと併用することもできる。本発明において、アクリル酸エステルを共重合した化合物は、ブロック共重合体やグラフト共重合体などの変性共重合体であってもよく、また、その使用態様においては、本発明の効果が損なわれない範囲内で、アクリル酸エステルまたは上記モノマーを未反応の状態で含んでいてもよい。また、本発明にかかるアクリル酸エステルを共重合した化合物からなる塗布層(A層)には、他の樹脂、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂およびこれらの変性体などが、本発明の効果が損なわれない範囲内で配合されていてもよい。
【0039】
本発明の転写箔用ポリエステルフィルムにおいて、ポリエステルフィルム(B層)の少なくとも片面に形成される塗布層(A層)とは反対側にもしくは塗布層(A層)の片側に、コロナ放電処理が施されることが好ましい様態である。
【0040】
本発明にかかるコロナ放電処理は、転写箔用として使用した際に、離型層との接着性を向上させるために有効であり、コロナ放電処理した表面の濡れ張力を、好ましくは45mN/m以上、より好ましくは47mN/m以上とすることが例示される。また、該コロナ放電処理は、本発明の転写箔用ポリエステルフィルムの製造工程中に施してもよいし、ポリエステルフィルムをいったん巻き取った後改めて施してもよい。
【0041】
本発明の転写箔用ポリエステルフィルムにおいて、ポリエステルフィルム(B層)の少なくとも片面に形成される塗布層(A層)とは反対側にもしくは塗布層(A層)の片側に、ポリエステル樹脂およびウレタン樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂からなる塗布層(C層)が形成されてなることが好ましい様態である。
【0042】
本発明にかかる塗布層(C層)の形成は、転写箔用として使用した際に、離型層との接着性を向上させるために有効であり、上記のコロナ放電処理との使い分けをすることが可能である。離型層との接着性が不十分であると、絵柄が転写された後の樹脂成形体に離型層が残存し、絵柄の鮮明さが不足したり、樹脂成形体のリサイクル性に不具合が生じたりする。
【0043】
本発明にかかる塗布層(C層)の構成成分として好ましく用いることのできるポリエステル樹脂は、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有するものであり、このようなポリエステル樹脂は、酸成分とグリコール成分から重縮合して得ることができるものである。
【0044】
ポリエステル樹脂を構成する酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p’−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸など、およびそれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
【0045】
また、ポリエステル樹脂を塗液として用いる場合、水溶性化を容易にするため、スルホン酸塩基を含む化合物やカルボン酸塩基を含む化合物を共重合することが好ましい。
【0046】
スルホン酸塩基を含む化合物としては、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルホ−p−キシリレングリコール、2−スルホ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
カルボン酸塩基を含む化合物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸などのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
ポリエステル樹脂を構成するグリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,およびp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオールおよびビスフェノールAなどを用いることができる。
【0049】
また、ポリエステル樹脂として、変性ポリエステル共重合体、例えば、アクリル、ウレタン、エポキシなどで変性したブロック共重合体およびグラフト共重合体などを用いることも可能である。
【0050】
本発明にかかる塗布層(C層)の構成成分として好ましく用いることのできるポリウレタン樹脂は、分子構造中にウレタン結合を有するものであれば特に限定されるものではなく、ポリオール化合物とイソシアネート化合物より得られる反応生成物をその基本骨格とするものであり、必要に応じて鎖延長剤などを用いることができる。
【0051】
用いられるポリオール化合物としては、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリアセタールジオールなどであり、それらの中でもポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが好ましい。
【0052】
ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなど、あるいはこれらの混合物と有機ジカルボン酸、例えば、飽和脂肪酸(アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸など)、不飽和脂肪酸(マレイン酸、フマル酸など)、芳香族酸(テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸など)、脂環族ジカルボン酸およびこれらの混合物、無水物などを反応させて得られた両末端に水酸基を有する線状ポリエステル、更にはカプロラクタム、メチルカプロラクトンなどのラクトン類をグリコール類で開環重合させて得られるポリエステルなども用いることができる。
【0053】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、オキサシクロブタン、置換オキサシクロブタンあるいはテトラヒドロフランなどの開環重合もしくは共重合によって得られる末端に水酸基を有する重合体もしくは共重合体またはこれらの混合物などを用いることができる。
【0054】
このポリオール化合物と反応させるイソシアネート化合物としては、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,8−オクタメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなど、あるいはこれらの混合物を用いることができる。
【0055】
鎖延長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヒドラジン、エチレンジアミンおよびジエチレントリアミンなどを用いることができる。
【0056】
また、本発明にかかる塗布層(C層)には、本発明の効果を損なわれない範囲内で、他の樹脂、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂およびフェノール樹脂などが配合されていてもよい。
【0057】
さらに、本発明にかかる塗布層(A層およびC層)には、本発明の効果が損なわれない範囲内で、各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤および核剤などが配合されていてもよい。
【0058】
本発明にかかる塗布層(A層およびC層)に、粒子や架橋剤を添加することは任意である。
【0059】
本発明にかかる塗布層(A層およびC層)に任意に添加される粒子としては、特に限定されないが、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカおよび炭酸カルシウムなどを用いることができる。その平均粒径は、特に限定されないが、0.01〜5μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.03〜3μmの範囲であり、最も好ましくは0.05〜2μmの範囲である。また、塗布層中の全樹脂に対する粒子の混合比は、特に限定されないが、固形分重量比で0.05〜8重量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量部の範囲である。
【0060】
本発明にかかる塗布層(A層およびC層)に任意に添加される架橋剤としては、特に限定されないが、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系、メラミン系、アクリルアミド系、ポリアミド系の樹脂、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン系化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを用いることができる。その添加量は、特に限定されないが、塗布層を形成する全樹脂に対し、0.5〜50重量部の範囲が好ましく、より好ましくは1〜30重量部の範囲である。
【0061】
本発明にかかる塗布層(A層およびC層)を形成する樹脂は、これを有機溶媒に溶解あるいは水に溶解、分散させた塗液として使用し得る。この塗液を、基材フィルムであるポリエステルフィルム(B層)上に塗布し塗布層を形成する方法は、各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法またはスプレーコート法などを用いることができる。特に、本発明の転写箔用ポリエステルフィルムを得る上で、経済性、均一性および基材フィルムであるポリエステルフィルム(B層)との接着性などを考慮すると、ポリエステルフィルムの製造工程内で塗布するインラインコーティング法による方法が好ましく、その点において水に溶解あるいは分散させた樹脂を用いることが好ましい。
【0062】
また、本発明にかかる塗布層(A層およびC層)の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.02〜5μmの範囲であり、より好ましくは0.03〜2μmの範囲であり、最も好ましくは0.05〜0.5μmの範囲である。特に、塗布層(A層)の厚みが薄いときには帯電防止性が不良となる場合があり、塗布層(C層)の厚みが薄いときには離型層との接着性が不良となる場合がある。
【0063】
次に、本発明の転写箔用ポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略称する)を基材フィルムであるポリエステルフィルム(B層)とした、最終的な層構造がA層/B層/C層となる例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0064】
まず、PETペレットを真空乾燥した後、押し出し機に供給し、260〜300℃の温度で溶融し、T字型口金からシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度10〜60℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化し、未延伸PETフィルムを作成する。この未延伸フィルムを70〜120℃の温度に加熱されたロール間で縦方向(フィルムの進行方向)に2.5〜5倍延伸する。次に、このフィルムの両面にコロナ放電処理を施し、その処理面にA層/B層/C層の構成となるよう本発明の塗布層(A層およびC層)形成塗液を塗布する。これらの塗液を塗布したフィルムをクリップで把持して70〜150℃の温度に加熱された熱風ゾーンに導いて乾燥した後、幅方向に2.5〜5倍延伸し、引き続き160〜250℃の温度の熱処理ゾーンに導いて結晶配向を完了させる。この熱処理工程中で必要に応じて幅方向あるいは長手方向に3〜12%の弛緩処理を施してもよい。二軸延伸は、縦、横逐次延伸あるいは同時二軸延伸のいずれでもよく、また縦、横延伸後、縦、横いずれかの方向に再延伸してもよい。また、この場合に用いられる塗液は環境汚染や防爆性の点で水系塗液が好ましい。
【実施例】
【0065】
[特性の測定方法および効果の評価方法]
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は、次のとおりである。
【0066】
(1)帯電防止性−1
転写箔用ポリエステルフィルムを23℃の温度で、相対湿度65%で1日間放置した後、デジタル超高抵抗/微小電流計R8340A(アドバンテスト(株)製)を用いて印加電圧100Vで、塗布層(A層)上を測定した。このとき、9×10Ω/□以下を帯電防止性良好とした。
【0067】
(2)帯電防止性−2
転写箔用ポリエステルフィルムの塗布層(A層)上を、精製水中にて10秒間水洗した後、60℃の温度のオーブンにて5分間乾燥した。このフィルムを23℃の温度で、相対湿度65%で1日間放置した後、デジタル超高抵抗/微小電流計R8340A(アドバンテスト(株)製)を用いて印加電圧100Vで、塗布層(A層)上を測定した。このとき、9×1010Ω/□以下を帯電防止性良好とした。
【0068】
(3)オリゴマー抑止性
転写箔用ポリエステルフィルムを180℃の温度のオーブンにて30分間熱処理した後、走査型電子顕微鏡(S−2100A型、日立製作所(株)製)を用いて、倍率3000倍でA層上の表面観察を行った。この観察で、視野内にオリゴマーの析出が2個以下を良好とし、それ以上析出している場合を不良とした。
【0069】
(4)接着層との耐ブロッキング性
転写箔用ポリエステルフィルムの塗布層(A層)と、接着層形成樹脂(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)を設けたポリエステルフィルム“ルミラー”(登録商標)S10の接着層を重ね合わせ、500g荷重のもと60℃の温度のオーブンで20時間放置した。このとき、荷重を加えた箇所の剥離状態が、軽く剥離できる場合を良好とし、それ以外を不良とした。
【0070】
(5)離型層との接着性
転写箔用ポリエステルフィルムのC層上に、離型層形成樹脂(シリコーン樹脂/硬化剤)を塗布し、40℃の温度のオーブンで3日間乾燥した。このフィルムの離型層上を指でこすって、離型層の剥離を観察し、以下の基準で判定した。◎:離型層に変化が見られない、○:離型層にわずかに変化が見られる、×:離型層が剥離した。このうち◎と○を良好とした。
【0071】
(6)算術平均粗さ(SRa)
転写箔用ポリエステルフィルムに設けられる塗布層(A層)とは反対側もしくは塗布層(A層)の片側(コロナ放電処理を施す側あるいはC層側)の面を、三次元表面粗さ計(光触針式、ET−30HK型、小坂研究所(株)製)を用いて、測定長0.5mm、測定本数80本、カットオフ0.25mm、送りピッチ5μm、スピード100μm/秒、触針荷重10mgで測定した。
【0072】
(7)絵柄の精細さ
転写箔用ポリエステルフィルムのコロナ放電処理を施す側あるいは塗布層(C層)側の面上に、離型層(シリコーン樹脂/硬化剤)、保護(絵柄)層(印刷インキ)、接着層(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)を順に設け、転写箔を作成し、被転写材であるプラスチックプレートに転写後、絵柄の精細さを目視で観察し、以下の基準で判定した。◎:精細さに優れている、○:若干精細さに劣るが実用上は問題ない、×:精細さに欠ける。このうち◎と○を良好とした。
【0073】
次に、実施例に基づき本発明の実施態様を説明するが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。
【0074】
(実施例および比較例におけるポリエステルフィルムの製造方法)
ポリエステルフィルム(B層)組成のポリエステルペレットを減圧乾燥した後、押出機に供給して280℃の温度で溶融し、これらのポリマーを高精度濾過した後、T字型口金からシート状に押し出した。得られたシート状物を静電印加キャスト法を用いて、表面温度25℃の温度のキャスティングドラムに巻き付けて冷却固化し、未延伸フィルムを製造した。この未延伸フィルムを、90℃の温度で長手方向に3.3倍延伸した。このようにして得られた一軸延伸フィルムの両面に、大気中でコロナ放電処理を施し、最終的な層構造になるように塗布層(A層および/またはC層)形成塗液(濃度は約5重量%)を塗布した。塗液が塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら100℃の温度に加熱して幅方向に3.3倍延伸し、230℃の温度で5秒、210℃の温度で5秒の熱処理を施して、転写箔用ポリエステルフィルムを得た。このとき、B層に相当するポリエステルフィルムの厚みは38μmであった。
【0075】
(実施例および比較例におけるB層組成のポリエステルペレット)
実施例1、2および4においては、「b1(98重量%)+b2(1.5重量%)+b3(0.5重量%)」からなるポリエステル組成物を使用し、実施例3においては、「b1(100重量%)」からなるポリエステル組成物を使用し、実施例5および比較例1と2においては、「b1(92重量%)+b3(8重量%)」からなるポリエステル組成物を使用した。
【0076】
(実施例1)
塗布層形成塗液として塗布層(A層)のみ(a1(100重量%))を使用し、層構造が「A層/B層/コロナ放電処理」となるように上記製造方法に従って作成し、塗布層(A層)の厚みが0.15μmの転写箔用ポリエステルフィルムを得た。表1に示すとおり、帯電防止性、オリゴマー防止性、接着層との耐ブロッキング性、離型層との接着性および絵柄の精細さが良好であった。
【0077】
(実施例2)
塗布層形成塗液として塗布層(A層)のみ(a1(100重量%)+d1(10重量%))を使用し、層構造が「A層/B層/A層」となるように上記製造方法に従って作成し、A層の厚みが0.15μmの転写箔用ポリエステルフィルムを得た。表1に示すとおり、帯電防止性、オリゴマー防止性、接着層との耐ブロッキング性、離型層との接着性および絵柄の精細さが良好であった。
【0078】
(実施例3)
塗布層形成塗液として塗布層(A層)(a2(100重量%)+d3(8重量%))およびC層(c1(100重量%)+d3(3重量%))を使用し、層構造が「A層/B層/C層」となるように上記製造方法に従って作成し、塗布層(A層)の厚みが0.1μmであり、塗布層(C層)の厚みが0.1μmの転写箔用ポリエステルフィルムを得た。表1に示すとおり、帯電防止性、オリゴマー防止性、接着層との耐ブロッキング性、離型層との接着性および絵柄の精細さが良好であった。
【0079】
(実施例4)
塗布層形成塗液として塗布層(A層)(a2(100重量%))および塗布層(C層)(c1(100重量%)+d2(10重量%))を使用し、層構造が「A層/B層/C層」となるように上記製造方法に従って作成し、塗布層(A層)の厚みが0.1μmであり、塗布層(C層)の厚みが0.08μmの転写箔用ポリエステルフィルムを得た。表1に示すとおり、帯電防止性、オリゴマー防止性、接着層との耐ブロッキング性、離型層との接着性および絵柄の精細さが良好であった。
【0080】
(実施例5)
塗布層形成塗液として塗布層(A層)(a3(100重量%))のみを使用し、層構造が「A層/B層/A層」、A層の厚みが0.08μmとなるように上記製造方法に従って作成したフィルムの片側の面に、塗布層(C層)の厚みが0.1μmとなるようにオフラインコートして転写箔用ポリエステルフィルム「A層/B層/A層/C層」を得た。表1に示すとおり、帯電防止性、オリゴマー防止性、接着層との耐ブロッキング性および離型層との接着性、絵柄の精細さが良好であった。
【0081】
(比較例1)
上記製造方法において一軸延伸フィルムにコロナ放電処理を施すことなく、塗布層形成塗液として塗布層(A層)のみ(a4(100重量%))を使用し、層構造が「A層/B層」となるように作成し、A層の厚みが0.15μmのポリエステルフィルムを得た。表1に示すとおり、帯電防止性、接着層との耐ブロッキング性、離型層との接着性および絵柄の精細さが不良であった。
【0082】
(比較例2)
上記製造方法において一軸延伸フィルムにコロナ放電処理を施さず、塗布層形成塗液を使用しないで、ポリエステルフィルムを得た。表1に示すとおり、帯電防止性、オリゴマー防止性、接着層との耐ブロキング性、離型層との接着性および絵柄の精細さが不良であった。
【0083】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の転写箔用ポリエステルフィルムは、特にインモールド成形に用いられるインモールド転写箔用として使用した場合に、金型汚れや転写ヌケを防止し精細な絵柄を転写し得るという優れた機能を発揮する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルム(B層)の少なくとも片面に、下記構造式(I)で示されるアクリル酸エステルを共重合した化合物からなる塗布層(A層)が形成されてなることを特徴とする転写箔用ポリエステルフィルム。
【化1】

(式中、R=水素またはアルキル基、n=1〜20、X=アルカリ金属、アルカリ土類金属または4級アミノ基を表す。)
【請求項2】
塗布層(A層)が、下記構造式(I)で示されるアクリル酸エステルを30モル%以上の割合で共重合した化合物からなることを特徴とする請求項1記載の転写箔用ポリエステルフィルム。
【化2】

(式中、R=水素またはアルキル基、n=1〜20、X=アルカリ金属、アルカリ土類金属または4級アミノ基を表す。)
【請求項3】
ポリエステルフィルム(B層)の少なくとも片面に形成される塗布層(A層)とは反対側にもしくは塗布層(A層)の片側に、コロナ放電処理が施されてなることを特徴とする請求項1または2記載の転写箔用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
ポリエステルフィルム(B層)の少なくとも片面に形成される塗布層(A層)とは反対側にもしくは塗布層(A層)の片側に、ポリエステル樹脂およびウレタン樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂からなる塗布層(C層)が形成されてなることを特徴とする請求項1または2記載の転写箔用ポリエステルフィルム。
【請求項5】
ポリエステルフィルム(B層)の少なくとも片面に形成される塗布層(A層)とは反対側もしくは塗布層(A層)の片側の面を、三次元表面粗さ計で測定したときの算術平均粗さ(SRa)が30nm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の転写箔用ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2006−16505(P2006−16505A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196362(P2004−196362)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】