説明

転圧機

【課題】効率的な転圧施工を可能とする転圧機を提供すること。
【解決手段】下方に繰り出して土質材料を転圧する転圧体622を施工方向と交差する方向に複数備えた転圧機であって、転圧体622の繰り出し方向長さLを転圧体622の繰り出しストロークLsよりも大きく形成したので、隣り合う転圧体622の一方が上死点に位置し他方が下死点に位置する場合であっても隣り合う転圧体622が重なり合うことがなく、効率的に転圧施工が可能である。また、転圧体622の転圧面を施工方向前方から施工方向後方に向けて漸次側方に延在する平行四辺形形状としたので、隣り合う転圧体622の相互間に隙間があっても転圧した未施工部分が生じることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転圧体を下方に繰り出して土質材料を締め固める転圧機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低レベル放射性廃棄物の埋設処分施設が計画されている。埋設処分施設は、掘削した地下坑道の内部に地下空洞躯体を設置したものであり、内部に低レベル放射性廃棄物を密閉収容した放射性廃棄物用躯体を埋設可能としたものである。そして、放射性廃棄物用躯体を埋設した後、その周囲、すなわち、放射性廃棄物と地下空洞躯体との間にベントナイト系材料を転圧施工することにより、難透水性バリアが構築される(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−12356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような難透水性バリアは、効率的に施工可能なものである必要がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、効率的な転圧施工を可能とする転圧機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、下方に繰り出して土質材料を転圧する転圧体を施工方向と交差する方向に複数備え、各転圧体が異なるタイミングで土質材料を転圧する転圧機であって、前記転圧体の繰り出し方向長さを前記転圧体の繰り出しストロークよりも大きく形成したことを特徴とする。
【0007】
また、上記発明において、前記転圧体の転圧面を施工方向前方から施工方向後方に向けて漸次側方に延在する態様で形成したことを特徴とする。
【0008】
また、上記発明において、施工方向と交差する方向に前記複数の転圧体をシフトするシフト装置を設けたことを特徴とする。
【0009】
また、上記発明において、前記複数の転圧体の施工方向前方に土質材料を敷き均す均平装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる転圧機は、転圧体を施工方向と交差する方向に複数備え、各転圧体が異なるタイミングで土質材料を転圧するので、効率的に転圧施工が可能である。また、転圧体の繰り出し方向長さを転圧体の繰り出しストロークよりも大きく形成したので、隣り合う転圧体の一方が上死点に位置し他方が下死点に位置する場合であっても隣り合う転圧体が重なり合うことがなく、一方の転圧体によって他方の転圧体が損傷することがない。
【0011】
転圧体の転圧面を施工方向前方から施工方向後方に向けて漸次側方に延在する態様で形成したので、隣り合う転圧体の相互間に隙間があっても転圧した施工面に筋状の未施工部分が生じることはない。
【0012】
施工方向と交差する方向に複数の転圧体をシフトするシフト装置を設けたので、施工面の幅が複数の転圧体の幅よりも狭い場合、あるいは施工方向が転圧機の走行方向と異なる場合であっても、軌道修正することなく、転圧施工が可能である。
【0013】
複数の転圧体の施工方向前方に土質材料を敷き均す均平装置を備えたので、転圧機は、施工方向前方で土質材料を均平するとともに、施工方向後方で均平した土質材料を転圧することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態にかかる転圧機を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1にかかる転圧機の正面図、図2は図1に示した転圧機の側面図、図3は図1に示した転圧装置の構成を示す概念図、図4は図3に示した転圧駆動装置の稼働状態を示す概念図である。
【0016】
図1および図2に示すように、実施の形態1にかかる転圧機1は、走行装置2を備えている。本実施の形態1にかかる転圧機の走行装置2は、履帯走行装置であって、走行装置2の上部に設けた運転席3からの操作により任意の方向に走行可能である。なお、走行装置2は、履帯走行装置に限られるものではなく、異なる型式の走行装置、たとえば、車輪走行装置であってもよい。
【0017】
また、走行装置2の後方には、走行装置2よりも幅広な均平装置4を備えている。均平装置4は、転圧機1の施工方向前方の土質材料が均一な高さとなるように均す装置であり、運転席3からの操作により、排土板41を任意の高さに設定することが可能である。したがって、均平装置4は、土質材料を任意の高さで敷き均し可能である。なお、均平装置4は、転圧機1の施工方向前方の土質材料を敷き均すものであればよく、図1および図2において二点鎖線で示すように、走行装置2の前方に備えてもよい。このように、走行装置2の前方に備えた均平装置4は、たとえば、後述するビーム61に取り付けてあり、運転席3からの操作により、油圧シリンダ42が作用して排土板43を任意の高さに設定することが可能である。
【0018】
運転席3の前方には、昇降装置5を備えている。昇降装置5には、走行装置2よりも幅広な転圧装置6が取り付けてある。昇降装置5は、転圧装置6を昇降可能であり、転圧機1を施工現場に移動する場合に転圧装置6を上昇させ、転圧機1を稼働する場合に転圧装置6を所定の位置(たとえば、転圧装置6が土質材料をかき寄せることがない範囲で土質材料に近づいた位置)まで下降させることが可能である。
【0019】
図3−1に示すように、昇降装置5と転圧装置6との間には、シフト装置(図示せず)を設けることが好ましい。シフト装置は、施工方向と交差する方向(図3−1において左右方向)に転圧装置6を移動可能であり、油圧シリンダ8等の駆動力により転圧装置6を施工方向と交差する方向にシフト可能である。
【0020】
図3−1に示すように、転圧装置6は、ビーム61と、複数の転圧ユニット62とを有している。ビーム61は、板状体であり、その長手方向が転圧機1の施工方向と直交する態様で昇降装置5、あるいはシフト装置に取り付けてある。複数の転圧ユニット62は、ビーム61の長手方向に取り付けてあり、転圧ユニット62は転圧機1の施工方向と直交する態様で配設される。したがって、ビーム61が昇降すると全ての転圧ユニット62が昇降する。
【0021】
各転圧ユニット62は、駆動部621と転圧体622とを有している。駆動部621は、転圧体622を下方に繰り出す部分であり、転圧体622は、土質材料を転圧する部分である。転圧体622は、直方体形状を有し、土質材料を転圧する面(以下「転圧面622a」という)は、図3−2に示すように、矩形形状(本実施の形態にかかる転圧面は正方形形状)を有している。
【0022】
図4に示すように、駆動部621は、独立して駆動可能であり、各転圧体が異なるタイミングで土質材料を転圧するように構成してある。したがって、転圧ユニット62が異なるタイミングで土質材料を転圧し、全ての転圧ユニット62が同時に転圧することがない。また、転圧体622の繰り出し方向長さLは、転圧体622の繰り出しストロークLsよりも大きく形成してあり、隣り合う転圧ユニット62の一方の転圧体622が上死点に位置し、他方の転圧ユニット62の転圧体622が下死点に位置する場合であっても転圧体622が重なり合うことがない。
【0023】
このように構成した転圧機1は、図5に示すように、撒出機7と協働して転圧施工可能である。ここで用いられる撒出機7は、施工面に土質材料を撒き出す機械であって、走行装置71、土質材料を収容するホッパー72、およびホッパー72から土質材料を順次撒き出すコンベア73を有している。そして、撒出機7から撒き出された土質材料は、転圧機1の均平装置4により、所定の高さで均された後、転圧機1の転圧装置6により転圧される。したがって、図6に示すように、構造体Sに囲まれた狭隘部においても転圧施工が可能である。また、転圧装置6の幅が施工幅よりも広い場合、あるいは施工方向が転圧機1の走行方向と異なる場合であっても、シフト装置が転圧装置6をシフトすることにより、転圧機1の走行方向を軌道修正することなく、転圧施工される。
【0024】
また、たとえば、図7に示すように、低レベルの放射性廃棄物の埋設処分施設100においても施工可能である。埋設処分施設100は、掘削した地下坑道101の内部に地下空洞躯体102を設置したものであり、内部に低レベル放射性廃棄物を密閉収納した放射性廃棄物格納用躯体103を埋設可能としたものである。そして、放射性廃棄物格納用躯体103を収容した後、その周囲、すなわち、放射性廃棄物格納用躯体103と地下空洞躯体102との間に粘土系遮水材を転圧施工することにより、難透水性バリア104が構築される。この結果、埋設処分された放射性廃棄物格納用躯体103は、その周囲を高密度の粘土系遮水材で囲繞される。粘土系遮水材は、たとえば、ベントナイトであり、放射性廃棄物格納用躯体103を収容した後、上述した撒出機7からベントナイトを順次撒き出す一方、本実施の形態1にかかる転圧機1により、所定の高さでベントナイトを均した後、ベントナイトを高密度で転圧施工される。
【0025】
上述した本実施の形態1にかかる転圧機1によれば、施工方向と交差する方向に転圧ユニット62を複数備えたので、走行装置2よりも幅広な帯状の転圧施工が可能である。また、これらの転圧ユニット62が異なるタイミングで転圧するように構成してあるので、転圧にともなう振動衝撃が分散され、効率的な転圧施工が可能である。
【0026】
さらに、転圧体622の繰り出し方向長さLが転圧体622の繰り出しストロークLsよりも大きく形成してあるので、隣り合う転圧ユニット62の一方の転圧体622が上死点に位置し、他方の転圧体622が下死点に位置する場合であっても、転圧体622が重なり合うことがない。したがって、一方の転圧体622によって他方の転圧体622が損傷することがなく、効率的な転圧施工が可能である。
【0027】
また、昇降装置5と転圧装置6との間にシフト装置を設けた場合には、転圧装置6の幅が施工幅よりも狭い場合、あるいは施工方向が転圧機1の走行方向と異なる場合であっても、シフト装置が転圧装置6をシフトすることにより、転圧機1の走行方向を軌道修正することなく、転圧施工が可能である。
【0028】
上述した転圧体622に代えて、図8に示すように、転圧面622a’が施工方向前方から施工方向後方に漸次側方に延在するように形成した立方体で構成してもよい。このような転圧体622’は、転圧面622a’が平行四辺形(ひし形を含む)となるように形成した立方体、あるいは、転圧面622a’が台形(二角が直角である直角台形を含む)となるように形成した立方体である。図8に示す例では、転圧面622a’がひし形となるように形成した同一形状の転圧体622’を中央に複数配設する一方、転圧面622a’が直角台形となるように形成した転圧体622’を両側に配設してある。
【0029】
したがって、このように形成した転圧体622’を用いて転圧すると、施工面に筋状の未施工部分が生じることはない。これは、転圧機1は施工方向に移動しながら転圧し、転圧体622’の相互間に形成される隙間によって生じる未転圧部分が漸次転圧されることによるものである。
【0030】
(実施の形態2)
図9は施工面に敷設する型枠を示す斜視図、図10は本発明の実施の形態2にかかる転圧機の正面図、図11は図10に示した転圧機の側面図、図12は図10に示した転圧機の背面図である。
【0031】
実施の形態2にかかる転圧機11は、施工面に敷設した型枠20上を走行し、型枠20の内部に充填した土質材料を転圧するものである。型枠20は、図9に示すように、溝形鋼20aを上方に重ね合わせたものであり、その上方にガイドレールとなるL型鋼20bが取り付けてある。
【0032】
図10〜図12に示すように、転圧機11の本体12には、車輪13が回転自在に取り付けてあり、上述したL型鋼20bにより案内されて、型枠20上を移動可能である。本体は、テーブル12aが昇降可能なテーブルリフトからなり、テーブル12aを任意に昇降可能である。テーブル12aには、転圧装置14とウエイト15とが取り付けてあり、転圧機11を移動する場合には転圧装置14を上昇させ、転圧機11を稼働させる場合に転圧装置14を下降させることが可能である。
【0033】
転圧装置14は、ビーム141と複数の転圧ユニット142とを有している。ビーム141は、板状体であり、その長手方向が施工方向と交差する態様でテーブル12aに取り付けてある。複数の転圧ユニット142は、ビーム141の長手方向に取り付けてあり、転圧ユニット142は転圧機11の施工方向と直交する態様で配設される。したがって、ビーム141が昇降すると全ての転圧ユニット142が昇降する。
【0034】
各転圧ユニット142は、駆動部1421と転圧体1422とを有している。駆動部1421は、転圧体1422を下方に繰り出す部分であり、転圧体1422は、土質材料を転圧する部分である。転圧体1422は、立方体形状を有し、転圧面は、矩形形状、平行四辺形形状、ひし形形状、直角台形形状等任意の形状で形成してある。
【0035】
駆動部1421は、独立して駆動可能であり、土質材料を異なるタイミングで転圧するように構成してある。したがって、転圧ユニット142が交互に土質材料を転圧し、全ての転圧ユニット142が同時に転圧することがない。また、転圧体1422の繰り出し方向長さは、転圧体1422の繰り出しストロークよりも大きく形成してあり、隣り合う転圧ユニット142の一方の転圧体1422が上死点に位置し、他方の転圧ユニット142の転圧体1422が下死点に位置する場合であっても転圧体1422が重なり合うことがない。
【0036】
ウエイト15は、転圧装置14の衝撃とバランスを取るための錘であり、転圧機11の倒伏を防止可能である。
【0037】
上述した実施の形態2にかかる転圧機11によれば、施工方向と交差する方向に転圧ユニット142を複数備えたので、幅広な帯状の転圧施工が可能である。また、これらの転圧ユニット142が異なるタイミングで転圧するように構成してあるので、転圧にともなう振動衝撃が分散され、効率的な転圧施工が可能である。
【0038】
さらに、転圧体1422の繰り出し方向長さが転圧体1422の繰り出しストロークよりも大きく形成してあるので、隣り合う転圧ユニット142の一方の転圧体1422が上死点に位置し、他方の転圧ユニット142の転圧体1422が下死点に位置する場合であっても、転圧体1422が重なり合うことがない。したがって、一方の転圧体1422によって他方の転圧体1422が損傷することがなく、効率的な転圧施工が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明にかかる転圧機は、土質材料の転圧施工に有用であり、特に、狭隘地における転圧施工に適している。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる転圧機の正面図である。
【図2】図1に示した転圧機の側面図である。
【図3−1】図1に示した転圧装置の構成を示す概念図である。
【図3−2】図3−1に示した転圧体の転圧面を示す図である。
【図4】図3に示した転圧駆動装置の稼働状態を示す概念図である。
【図5】実施の形態1にかかる転圧機を用いた転圧施工例を示す概念図である。
【図6】構造体に囲まれた狭隘部における転圧施工例を示す概念図である。
【図7】転圧施工した放射性廃棄物の埋設処分施設を示す断面図である。
【図8−1】他の例にかかる転圧駆動装置の構成を説明する説明図である。
【図8−2】図8−1に示した転圧体の転圧面を示す図である。
【図9】施工面に敷設する型枠を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態2にかかる転圧機の正面図である。
【図11】図10に示した転圧機の側面図である。
【図12】図10に示した転圧機の背面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 転圧機
2 走行装置
3 運転席
4 均平装置
5 昇降装置
6 転圧装置
61 ビーム
62 転圧ユニット
621 駆動部
622,622’ 転圧体
622a,622a’ 転圧面
7 撒出機
71 走行装置
72 ホッパー
73 コンベア
8 油圧シリンダ
11 転圧機
12 本体
12a テーブル
13 車輪
14 転圧装置
141 ビーム
142 転圧ユニット
1421 駆動部
1422 転圧体
20 型枠
100 埋設処分施設
101 地下坑道
102 地下空洞躯体
103 放射性廃棄物格納用躯体
104 難透水性バリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に繰り出して土質材料を転圧する転圧体を施工方向と交差する方向に複数備え、各転圧体が異なるタイミングで土質材料を転圧する転圧機であって、
前記転圧体の繰り出し方向長さを前記転圧体の繰り出しストロークよりも大きく形成したことを特徴とする転圧機。
【請求項2】
前記転圧体の転圧面を施工方向前方から施工方向後方に向けて漸次側方に延在する態様で形成したことを特徴とする請求項1に記載の転圧機。
【請求項3】
施工方向と交差する方向に前記複数の転圧体をシフトするシフト装置を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の転圧機。
【請求項4】
前記複数の転圧体の施工方向前方に土質材料を敷き均す均平装置を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の転圧機。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−231562(P2007−231562A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52658(P2006−52658)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】