軸ねじれ振動抑制機能を有する同時同量制御装置
【課題】 同時同量制度下のPPSの自家用ガスタービン発電機を対象として、同時同量制御および無限大母線供給電力一定制御を達成し、さらに軸ねじれ振動抑制も同時に達成できる同時同量制御システムを提供する。
【解決手段】 無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を達成するガスタービン制御器の偏差信号をLMIアプローチを用いて重み係数を選択した第1のH∞制御器により得られた出力で補正して相反する無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御をそれぞれ適宜に達成するようにすると共に、発電機端子電圧と軸ねじれトルクを入力して励磁電圧を調整する励磁制御器の偏差信号を重み係数W1,W2を選択した第2のH∞制御器により得られた出力で補正して相反する自動電圧調整機能と軸ねじれ振動抑制機能を異なる周波数帯域においてそれぞれ発揮させる。
【解決手段】 無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を達成するガスタービン制御器の偏差信号をLMIアプローチを用いて重み係数を選択した第1のH∞制御器により得られた出力で補正して相反する無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御をそれぞれ適宜に達成するようにすると共に、発電機端子電圧と軸ねじれトルクを入力して励磁電圧を調整する励磁制御器の偏差信号を重み係数W1,W2を選択した第2のH∞制御器により得られた出力で補正して相反する自動電圧調整機能と軸ねじれ振動抑制機能を異なる周波数帯域においてそれぞれ発揮させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン発電機の同時同量制御機能と軸ねじれ振動抑制機能を備えた制御器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本国では、電力小売自由化により特定規模電気事業者(PPS)の電力市場への参入が活発である。PPSは、たとえば、一般電気事業者と託送契約を締結して、その送配電ネットワークを利用して顧客に電力を供給する。一般電気事業者は、PPSから電気を受電し、同時に同量の電気をその顧客に対して供給するとともに、その顧客の負荷変動やPPSの発電設備の事故があった時には不足する電気を供給する。
【0003】
現行制度では、電力の安定供給を維持するため、PPSは30分ごとの電力需要量と電力供給量を一致させる「30分間同時同量制御」を行うことが求められ、需要に対する瞬時の供給不足分は一般電気事業者によって補償される。なお、「30分間同時同量制御」を達成できなかった分については高額の違約金の支払義務が生じる。
そこで、一般電気事業者からの供給電力を一定制御することにより、受給不平衡を低減することが望まれる。以下、一般電気業者からの供給電力を一定制御することを「無限大母線供給電力一定制御」と呼ぶ。
【0004】
一方、PPSの供給区域内において負荷遮断や発電機母線の瞬時電圧低下が生じた場合、PPSが所有する自家用発電設備において軸ねじれ振動が発生する。軸ねじれ振動は軸系の金属疲労を引き起こし、軸が破損する原因となる。
自家用発電設備のひとつであるガスタービン発電機にはシェアピンが設けられていて、定格トルクの数倍が加わると破断して軸を保護する。しかし、シェアピンが破断したときには、運転停止から補修まで時間を要するため、シェアピンの破断に至る前に過度な軸ねじれトルクを抑制する制御系を設けることが望まれる。限流器を用いて事故時の過電流を抑制して軸ねじれ振動を抑制する方法が知られているが、限流器により電流を制限すると発電機出力を制限して同時同量制御の達成が困難になることがある。
【0005】
これに対して、発電機の励磁制御を軸ねじれ振動抑制に応用することが有効であると考えられる。
特許文献1には、タービン発電機の軸ねじれ振動抑制装置が開示されている。開示発明は、軸ねじれ振動をモーダルモデルで構成し角速度検出器の信号に近づくように構成した模擬装置を設け、模擬装置から得られる角速度信号を励磁装置に入力して所望の軸ねじれ振動モードのみを抑制するので、位相の進み補償を必要としない軸ねじれ振動抑制装置である。
【0006】
また、非特許文献1には、7質点系発電機タービン軸を表した軸トルクオブザーバを使い、回転軸端の回転速度を観測量としてタービン軸の内部ねじれトルクを推定し、この値を制御信号として励磁電圧にフィードバックして,系統擾乱時にタービン軸に生じるねじれ振動を抑制する軸ねじれ振動抑制励磁制御システムが開示されている。
【0007】
しかし、従来、軸ねじれ振動抑制と同時同量制御と無限大母線供給電力一定制御を同時に達成する制御システムは見出すことができない。また、従来の装置では、パラメータ変動などのシステムの不確かさを考慮していないため、制御系のロバスト性を保証することができない。
【特許文献1】特開平07−011911号公報
【非特許文献1】柿木哲郎他「自家用発電設備における軸トルク推定方式」電学論B,123巻5号,2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、同時同量制度下のPPSの自家用タービン発電機を対象として、同時同量制御および無限大母線供給電力一定制御を達成し、さらに軸ねじれ振動抑制も同時に達成できる同時同量制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の同時同量制御装置は、無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を達成するガスタービン制御器にLMIアプローチを用いて重み係数を選択した第1のH∞制御器を適用して無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を一緒に達成するようにすると共に、発電機端子電圧と軸ねじれトルクを入力して励磁電圧を調整する励磁制御器に重み係数を選択した第2のH∞制御器を適用して自動電圧調整機能と軸ねじれ振動抑制機能を異なる周波数帯域においてそれぞれ発揮することを特徴とする。
【0010】
本発明の同時同量制御装置は、無限大母線の供給契約電力Pi*と無限大母線から供給される電力Piの差である供給電力偏差ΔPi=Pi*−Piを偏差信号として入力することにより無限大母線供給電力一定制御を行い、ガスタービンの電力指令値Prefと発電機出力電力Pgの差を積分した電力量偏差ΔW=∫(Pref−Pg)dtを偏差信号として入力することにより同時同量制御を行うガスタービン制御器を備え、制御器設計の際、無限大母線供給電力に関して共振点を除去するように感度関数の重み係数を選択し電力量に関して低周波領域の積分動作をなくすように相補感度関数の重み係数を選択して設計したH∞同時同量制御器を備え、H∞同時同量制御器に供給電力偏差ΔPiと電力量偏差ΔWを入力して得られた出力により、無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を一緒に達成させる。
【0011】
本発明の同時同量制御装置は、さらに、発電機端子電圧Vtと軸ねじれトルクTdを入力して励磁電圧を調整することにより自動電圧調整機能と軸ねじれ振動抑制機能を達成する励磁制御器を備え、制御器設計の際、軸ねじれ振動に関して共振点を除去し自動電圧調整機能を過剰に劣化させないように感度関数と相補感度関数の重み係数を選択して設計したH∞励磁制御器を備え、H∞励磁制御器に発電機端子電圧Vtと軸ねじれトルクTdの偏差信号を与えて得られた出力の基づいて励磁電圧を調整することにより、自動電圧調整を行いながら軸ねじれ振動を抑制することを特徴とする。
【0012】
本発明の同時同量制御装置によれば、相反する無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を周波数領域を分けて適切な分配比率で実行させるので、両制御をいずれも適度に達成することができる。また、相反する自動電圧調整機能と軸ねじれ振動抑制機能についても、軸ねじれ振動を効果的に抑制しながら自動電圧制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の同時同量制御装置は、同時同量制度下において、PPSが同時同量制御および無限大母線供給電力一定制御を達成すると同時に、軸ねじれ振動抑制も達成できる。本発明の制御装置は、H∞制御理論を適用しており、応答性およびロバスト性を向上させることができる。また、軸ねじれ振動を抑制するので、安定な発電機の運用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、実施例を用いて本発明の同時同量制御装置を詳細に説明する。
図1は本実施例を適用する電力系統モデルの1例を示す系統図である。
本実施例の同時同量制御装置は、PPSが所有するガスタービン発電機11を無限大母線12と並列に接続して、負荷13が必要とする電力を安定に供給する電力系統に適用することができる。ガスタービン発電機11は、負荷13の変動に応じて発電することにより、同時同量制御および無限大母線供給電力一定制御を達成し、かつガスタービン発電機11の軸ねじれ振動を抑制することができる。
【0015】
ガスタービン発電機11が同期発電機であれば、動的特性と電気的特性を下の微分方程式で表すことができる。
2HdΔω/dt=Pmech−Pe (1)
dδ/dt=Δω (2)
de'q/dt=efd/t'd0−(xd−x'd)id−e'q (3)
de'd/dt=e'd/t'q0−(xq−x'q)iq (4)
ここで、Hは発電機慣性定数、Pmechは発電機への機械入力、Peは発電機出力、δは相差角、Δωは基準速度との速度差、e'q,e'dは発電機q,d軸の過渡内部電圧、efdはd軸電圧に換算した励磁電圧、xd,xqは発電機直軸,横軸同期リアクタンス、x'd,x'qは発電機直軸,横軸過渡リアクタンス、id,iqは発電機端子電流のd,q軸成分、t'd0,t'q0は直軸,横軸回路時定数である。
【0016】
また、図2はタービン軸モデルを示す図面である。タービン軸は、発電機、タービン、励磁器および各種ジョイントなどからなる多慣性系である。一般に、発電機およびタービンの慣性は他の質点に比べて非常に大きいため、タービン軸モデルは図3の2慣性系モデルに近似することができる。そこで、この2慣性系モデルに基づいて,タービンと発電機の運動方程式を導出すると、次式のようになる。
2Htdωt/dt+Ktg(θt−θg)=Tt (5)
2Hgdωg/dt+Ktg(θg−θt)=Tg (6)
ここで、Ht,Hgはタービンと発電機の慣性定数、Ttはタービンに加えられる機械トルク、Tgは発電機で発生する電磁トルク、ωは角速度、θは位置角度、Ktgはタービン軸系トータルのバネ定数を表す。
【0017】
タービンと発電機の軸のねじれ角を表す角度差θtgを、次式で定義することができる。
θtg=θt−θg (7)
ねじれ角θtgを用いると、軸ねじれトルクTdは次式で与えられる。
Td=Ktg・θtg (8)
(5)〜(8)式を用いると、発電機・タービンからなる2慣性系モデルの伝達関数を導出することができる。
図4は、(5)〜(8)式により導出された2慣性系モデルのブロック図である。
【0018】
上述のように表現できる電力系統モデルに対して、PPSが無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を同時に達成する制御器を準備する。
無限大母線供給電力一定制御は、PPSが一般電気事業者から供給される電力Piを一定に制御するもので、下式に示されるように、無限大母線の供給契約電力P*iに対する供給電力偏差ΔPiをガスタービンの制御器に偏差入力として与えて、不足分をガスタービン発電機から得るようにすることにより達成することができる。
ΔPi=P*i−Pi (9)
【0019】
一方、同時同量制御は、負荷13の需要電力PlとPPSの自家用ガスタービン発電機11の供給電力Pgが所定期間内で同じ量になるように制御するもので、無限大母線供給電力一定制御の下で無限大母線12からの供給電力Piが供給契約電力P*i一定に制御されている場合には、次式
Pi+Pg=Pl (10)
から、ガスタービン出力指令値Prefを、
Pref=Pl −P*i (11)
とすれば目的を達成することができる。契約電力P*iはたとえば0.3puなどに定められる。
【0020】
ガスタービンの電力量指令値Wrefおよび電力量偏差ΔWは上式を用いて、
Wref=∫Pref dt (12)
ΔW=∫(Pref−Pg)dt (13)
と表すことができる。
電力量偏差ΔWをガスタービンの制御器に入力して偏差を解消させることによって、同時同量制御を達成することができる。
【0021】
次に、無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を同時に達成するH∞制御器を得る。H∞制御器は線形行列不等式(LMI)アプローチを適用して設計することができる。
図5は、H∞制御器を使った制御システムの構成を示すブロック図である。
H∞制御器の入力は電力偏差ΔPiと電力量偏差ΔWの2つである。H∞制御器の出力はガスタービンの機械入力Pmechとしてガスタービン発電機に与えられ、その効果は電力系統において一般電気事業者から供給される電力Pi、ガスタービン発電電力量Wの変化として観察される。
【0022】
図6はH∞制御の機能を説明するために用いる典型的なフィードバック制御系のブロック図である。図示した閉ループ系では、制御目的である制御量y(s)の観測値に観測ノイズn(s)が加わり、目標入力r(s)と差分を算出し制御偏差e(s)となって制御器K(s)に入力され、制御器で制御偏差が減少させるような操作量u(s)を算出して制御対象G(s)に与えられることにより、ノイズn(s)の影響を抑制して制御量y(s)を目標入力に近づける制御を達成する。
【0023】
目標入力r(s)から制御偏差e(s)への伝達関数S(s)は次式で与えられ、感度関数と呼ばれる。
e(s)=S(s)r(s) (14)
S(s)=1/(1+K(s)G(s)) (15)
目標入力rを変えたときに制御偏差eがほぼ零の状態で追従するためには、伝達関数S(jω)の絶対値が小さいことが望ましい。
【0024】
また、観測ノイズn(s)から制御量y(s)への伝達関数T(s)は次式で与えられ、相補感度関数と呼ばれる。
y(s)=T(s)n(s) (16)
T(s)=K(s)G(s)/(1+K(s)G(s)) (17)
したがって、制御量yが観測ノイズnによって乱されないためには、伝達関数T(jω)の絶対値が小さいことが望ましい。
【0025】
しかし、SとTの間には、
S(jω)+T(jω)=1 (18)
の関係が成立するので、目標値に対するトラッキング特性や外乱制御性を改善するためにSを小さくしようとする要求と、検出雑音の影響やロバスト安定化の改善のためにTを小さくしようとする要求は、同じ周波数では両立しない。
【0026】
H∞制御では、ある周波数帯域ではSを重視し、別の周波数帯域ではTを重視する特性の制御系を実現することができる。
たとえば、制御系における偏差の大きさは低周波域におけるものが重視されるが、高周波域の偏差は軽視されるので、感度関数S(jω)は低周波域で小さくすればよい。また、検出雑音のスペクトルは高周波域に偏っているので、相補感度関数T(jω)は高周波域で小さくすればよい。このようにして、2つの要求に対して両立する形で制御器を設計することができる。
【0027】
そこで、H∞制御器の設計では、制御対象となるシステムの周波数特性を把握し、図5に示された電力ループの感度関数に関係する重みw11、電力量ループの感度関数に関係する重みw12と、電力ループの相補感度関数に関する重みw21、電力量ループの相補感度関数に関する重みw22を選択して、最適な制御を達成するようにする。
制御対象とするシステムの特性は、開ループプラントの特異値プロットを作成することにより、たとえば共振点や積分動作などの確認をすることができる。重みは、即応性、定常偏差除去能力、追従性など、それぞれの要求特性に対応して周波数領域ごとに適切なゲインを選択する。
こうして、無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を同時に達成するH∞制御器を得る。
【0028】
さらに、自動電圧調整装置(AVR)の電圧調整機能と軸ねじれ振動抑制機能を同時に達成する励磁システムを得る。
図7は、従来法の代表例として、非特許文献1に記載された軸ねじれ振動抑制励磁システムについて、軸ねじれトルクの推定部を省略して示すブロック図である。
図示されたシステムでは、発電機端子電圧Vtおよび軸ねじれトルクTdを検出し、適切に成形されたフィルタを通して、励磁電圧を調整する偏差信号ef0を電圧自動調整装置(AVR)に出力する。
【0029】
図8は軸ねじれ振動抑制励磁システムに適用するH∞制御器の構成図、図9は重み係数を含むH∞制御システムの構成図である。
AVR機能と軸ねじれ振動抑制機能を同時に達成するH∞制御器は、発電機端子電圧偏差と軸ねじれトルク偏差を入力する2入力1出力H∞制御器である。図8に示すように、H∞制御器の出力Δefdと電圧設定値の和により発電機端子電圧偏差と軸ねじれトルク偏差を考慮して発電機の励磁電圧を調整する。
【0030】
制御対象とするプラントの開ループ伝達関数を調べて、低周波領域に軸ねじれの共振点がある場合には、この共振を抑えるようにH∞制御器の重みを選定する。しかし、軸ねじれ振動抑制機能とAVR機能の間には一方の機能を重視すると他方の機能が劣化するトレードオフが生じる。したがって、これらのトレードオフを塩梅した適切な重みを選定する必要がある。
【0031】
なお、軸ねじれ振動抑制励磁システムを主体的に表示した図9において、プラントP(s)には、先に求めた無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を同時に満足させる制御器が含まれていて、図中の制御器H∞の出力EfはプラントP(s)の励磁回路の励磁電圧調整を行い、これら制御器が同時に制御動作を行って制御目標を達成する。
【0032】
図9における基準入力r、観測出力y、制御偏差eはそれぞれ下式で定義される。
r=[Vref Tref]T (19)
y=[Vt Td]T (20)
e=[ΔV ΔT]T (21)
W1は感度関数に関わる重み係数、W2は相補感度関数に係る重み係数である。また、Efは操作量を表す。
【0033】
こうして構成されたH∞制御器を備える同時同量制御器は、同時同量制度下においてPPSが同時同量制御および無限大母線供給電力一定制御を達成し、同時に発電機の軸ねじれ振動を抑制することができる。
同時同量制御と同時に無限大母線からの供給電力を一定に制御するため、需給不平衡(インバランス)の低減が可能である。また励磁制御に軸ねじれ振動抑制機能を加えることにより発電機の持続的な保守・運用が可能となる。
【0034】
(適用例)
本実施例の同時同量制御装置について、所定の条件下における設計例を提示し、行列計算ソフトウエアであるMATLAB(商標名)を用いたシミュレーションにより性能の確認を行った。
本設計例における適用対象プラントは図1に示した電力システムで、PPSが所有するガスタービン発電機が負荷変動に応じて発電することにより、同時同量制御および無限大母線供給電力一定制御を達成する。なお、ガスタービンの定格出力を4MVAとし、これを基準容量とした。また、無限大母線の供給契約電力P*iを0.3puとした。
(1)〜(4)式を適用する上で必要となるガスタービン発電機のパラメータは、H=1.07sec、xd=1.5pu、x'd=0.30pu、xq=1.06pu、x'q=0.30pu、t'd0=3.7sec、t'q0=0.21secである。
【0035】
タービン軸は図2に示す多慣性系であり、各質点における機械系定数は図10の表に示した通りである。発電機とタービンの慣性が他の質点より遙かに大きいので、図3および図4に示した2慣性系モデルに近似することができ、運動方程式は(5)(6)式で表される。
図5に示した制御器を構成するために、制御対象の特性を調べた。このため、まず、開ループプラントの特異値プロットを作成する。図11の点線が特異値プロットを表す。
【0036】
図11(a)はガスタービンの機械入力Pmechから無限大母線供給電力Piまでの特異値プロットであり、10rad/sec付近において共振点が確認できた。このため、無限大母線供給電力Piに関しては共振点を除去するように重みを選択した。
また、図11(b)はPmechからガスタービン発電電力量Wまでの特異値プロットであり、積分動作が確認できた。積分動作によりインバランス量が増大し、同時同量にならない場合がある。そこで、電力量に関しては積分動作をなくすように重みの選択を行った。
【0037】
図5に関し、選択した重み係数は、下の通りである。
ω11=2.7×105(s3+318.5s2+4300s+1745)-1 (22)
ω12=(4s2+7.1s+3.3)(s3+2.2s2+4300s)-1 (23)
ω21=(6.1×10-7s−4.4×10-8)(s+23.35)-1 (24)
ω22=(4.9×10-7s−8.8×10-8)(s+21.1)-1 (25)
【0038】
選択された感度関数の重み係数ω11,ω12の特異値プロットを図12に示す。
重み係数ω11は電力ループに関係しており、即応性を重視してゲインを高周波領域まで高く維持するように決定した。重み係数ω12は電力量ループに関係しており、定常偏差除去性能を重視して低周波領域ではゲインを低く設定した。
また、相補感度関数の重み係数ω21,ω22の特異値プロットを図13に示す。
電力・電力量ループの相補感度関数に関する重み係数ω21,ω22はロバスト性を決定する。今回、追従性をより重視する設計を行うため、ロバスト性に関する重み係数ω21,ω22のゲインは低く設定した。
【0039】
以上のようにH∞制御器を設計した後の閉ループプラントの特異値プロットを図11に実線で表示した。設計した制御器の次数は8次となった。
ガスタービンの機械入力PmechからPiまでの特異値プロットにおける低周波域の共振は見られなくなり、また、PmechからWまでの特異値プロットにおける極低周波領域の積分動作が無くなった。
【0040】
次に、図9に示すH∞制御システムにおいて、軸ねじれ振動抑制機能を備えるように重み係数Wを選択する。
図14は、制御対象に係る特異値プロットで、図14(a)は対象プラントにおける偏差efからタービン出力電圧Vtに係る特異値プロット、図14(b)は偏差efから軸ねじれトルクTdに係る特異値プロットである。
点線は制御器を適用しない開ループ状態の対象システムを表すプロット、破線は従来型制御器を用いたときの閉ループプラントを表すプロットである。
さらに、設計後の制御器を含む閉ループプラントの特異値プロットを実線で示した。
【0041】
開ループプラントの特異値プロットから、低周波領域で軸ねじれの共振が観察される。この共振を抑えるように制御器の重みWを決定する。ただし、軸ねじれ振動抑制機能とAVR機能のトレードオフを考慮する必要があり、下のように重み係数Wを選定した。
【数1】
【0042】
(シミュレーション結果)
設計されたH∞制御器の同時同量制御、無限大母線供給電力一定制御、端子電圧制御、軸ねじれ振動抑制制御に係る効果を、シミュレーションにより確認した。
図15および図16は、本適用例の制御系において、PPSが電力供給する負荷に急激な負荷減少が生じたときのシミュレーション結果を表す。
図15(a)は負荷の消費電力を示す。時刻t=13secにおいて消費電力の激減が生じている。図15(b)はガスタービンの発電電力の変化を示す。負荷の変動に追従して発電電力を調整していることが分かる。
【0043】
図15(c)は無限大母線の供給電力の変化を示し、図16(d)はガスタービンの電力量偏差を示す。無限大母線からの供給電力がほぼ0.3pu一定であり、ガスタービンの電力量偏差は経時により零に収束していることから、適用例の制御器が無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を同時に達成できていることが分かる。
さらに、図16(e)はガスタービン発電機の端子電圧、図16(f)は軸ねじれトルクを、それぞれ制御をしない場合、従来型制御を行う場合、本適用例の場合について示している。
【0044】
本適用例の制御器を使用することにより、ガスタービン発電機の端子電圧を適切に調整して、軸ねじれ振動を従来法より良好に抑制することに成功している。
なお、ガスタービン発電機の端子電圧は変動するが、変動幅は基準値の±5%以内に収まっている。
【0045】
発電母線において瞬時電圧低下が生じると軸系に大きな影響を及ぼすことが知られている。そこで、シミュレーションにより、本適用例の制御系が瞬時電圧低下に対して効果があるか否かを検証した。
図17,18は、本適用例の制御系において、PPSの発電機母線に瞬時電圧低下が生じたときのシミュレーション結果を表す。
図17の(a)から(c)、図18の(d)から(f)は、それぞれ図15の(a)から(c)、図16の(d)から(f)とそれぞれ同じ信号状態の変化を示す。
【0046】
シミュレーションでは、時刻t=13secにおいて瞬時電圧低下が発生すると想定した。瞬時電圧低下後に軸ねじれ振動が生じるが、発電機端子電圧を調整することにより、振動は早期に減衰している。なお、端子電圧の変動は基準値の±5%をわずかしか超えていない。
シミュレーション結果から、提案する制御器が無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を同時に達成しており、さらに、従来手法と比較して軸ねじれ振動抑制もより良好に達成していることが分かる。
【0047】
本発明の制御器により、同時同量制度下においてPPSが同時同量制御および無限大母線供給電力一定制御を達成し、さらに発電機の軸ねじれ振動を効果的に抑制する制御システムを提供することができる。
本発明の制御器により同時同量制御および無限大母線供給電力一定制御を達成することから、需給不平衡(インバランス)の低減が可能である。
また、励磁制御に軸ねじれ振動抑制機能を付加したので、発電機の持続的な保守・運用が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の1実施例を適用する電力系統モデルの1例を示す系統図である。
【図2】本実施例におけるタービン軸モデルを示す図面である。
【図3】本実施例のタービン軸モデルを近似した2慣性系物理モデル図である。
【図4】本実施例を近似した2慣性系モデルのブロック図である。
【図5】本実施例のH∞制御器を使った制御システムの構成を示すブロック図である。
【図6】H∞制御の機能を説明するために用いる典型的なフィードバック制御系のブロック図である。
【図7】従来法の軸ねじれ振動抑制励磁システムを示すブロック図である。
【図8】本実施例の軸ねじれ振動抑制励磁システムに適用するH∞制御器の構成図である。
【図9】本実施例の重み係数を含むH∞制御系の構成図である。
【図10】本実施例の対象とするガスタービンの機械系定数を示す表である。
【図11】本実施例の同時同量制御対象プラントの特異値プロット図である。
【図12】本実施例において選択された感度関数の重み係数の特異値プロット図である。
【図13】本実施例において選択された相補感度関数の重み係数の特異値プロット図である。
【図14】本実施例の制御対象に係る特異値プロット図である。
【図15】本適用例の制御系において急激な負荷減少が生じたときのシミュレーション結果のうち負荷の有効電力、ガスタービン出力電力、無限大母線の供給電力の変化を表す図面である。
【図16】本適用例の制御系において急激な負荷減少が生じたときのシミュレーション結果のうちガスタービン電力量偏差、発電機端子電圧、軸ねじれトルクの変化を表す図面である。
【図17】本適用例の制御系において瞬時電圧低下が生じたときのシミュレーション結果のうち負荷の有効電力、ガスタービン出力電力、無限大母線の供給電力の変化を表す図面である。
【図18】本適用例の制御系において瞬時電圧低下が生じたときのシミュレーション結果のうちガスタービン電力量偏差、発電機端子電圧、軸ねじれトルクの変化を表す図面である。
【符号の説明】
【0049】
11 ガスタービン発電機
12 無限大母線
13 負荷
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン発電機の同時同量制御機能と軸ねじれ振動抑制機能を備えた制御器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本国では、電力小売自由化により特定規模電気事業者(PPS)の電力市場への参入が活発である。PPSは、たとえば、一般電気事業者と託送契約を締結して、その送配電ネットワークを利用して顧客に電力を供給する。一般電気事業者は、PPSから電気を受電し、同時に同量の電気をその顧客に対して供給するとともに、その顧客の負荷変動やPPSの発電設備の事故があった時には不足する電気を供給する。
【0003】
現行制度では、電力の安定供給を維持するため、PPSは30分ごとの電力需要量と電力供給量を一致させる「30分間同時同量制御」を行うことが求められ、需要に対する瞬時の供給不足分は一般電気事業者によって補償される。なお、「30分間同時同量制御」を達成できなかった分については高額の違約金の支払義務が生じる。
そこで、一般電気事業者からの供給電力を一定制御することにより、受給不平衡を低減することが望まれる。以下、一般電気業者からの供給電力を一定制御することを「無限大母線供給電力一定制御」と呼ぶ。
【0004】
一方、PPSの供給区域内において負荷遮断や発電機母線の瞬時電圧低下が生じた場合、PPSが所有する自家用発電設備において軸ねじれ振動が発生する。軸ねじれ振動は軸系の金属疲労を引き起こし、軸が破損する原因となる。
自家用発電設備のひとつであるガスタービン発電機にはシェアピンが設けられていて、定格トルクの数倍が加わると破断して軸を保護する。しかし、シェアピンが破断したときには、運転停止から補修まで時間を要するため、シェアピンの破断に至る前に過度な軸ねじれトルクを抑制する制御系を設けることが望まれる。限流器を用いて事故時の過電流を抑制して軸ねじれ振動を抑制する方法が知られているが、限流器により電流を制限すると発電機出力を制限して同時同量制御の達成が困難になることがある。
【0005】
これに対して、発電機の励磁制御を軸ねじれ振動抑制に応用することが有効であると考えられる。
特許文献1には、タービン発電機の軸ねじれ振動抑制装置が開示されている。開示発明は、軸ねじれ振動をモーダルモデルで構成し角速度検出器の信号に近づくように構成した模擬装置を設け、模擬装置から得られる角速度信号を励磁装置に入力して所望の軸ねじれ振動モードのみを抑制するので、位相の進み補償を必要としない軸ねじれ振動抑制装置である。
【0006】
また、非特許文献1には、7質点系発電機タービン軸を表した軸トルクオブザーバを使い、回転軸端の回転速度を観測量としてタービン軸の内部ねじれトルクを推定し、この値を制御信号として励磁電圧にフィードバックして,系統擾乱時にタービン軸に生じるねじれ振動を抑制する軸ねじれ振動抑制励磁制御システムが開示されている。
【0007】
しかし、従来、軸ねじれ振動抑制と同時同量制御と無限大母線供給電力一定制御を同時に達成する制御システムは見出すことができない。また、従来の装置では、パラメータ変動などのシステムの不確かさを考慮していないため、制御系のロバスト性を保証することができない。
【特許文献1】特開平07−011911号公報
【非特許文献1】柿木哲郎他「自家用発電設備における軸トルク推定方式」電学論B,123巻5号,2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、同時同量制度下のPPSの自家用タービン発電機を対象として、同時同量制御および無限大母線供給電力一定制御を達成し、さらに軸ねじれ振動抑制も同時に達成できる同時同量制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の同時同量制御装置は、無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を達成するガスタービン制御器にLMIアプローチを用いて重み係数を選択した第1のH∞制御器を適用して無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を一緒に達成するようにすると共に、発電機端子電圧と軸ねじれトルクを入力して励磁電圧を調整する励磁制御器に重み係数を選択した第2のH∞制御器を適用して自動電圧調整機能と軸ねじれ振動抑制機能を異なる周波数帯域においてそれぞれ発揮することを特徴とする。
【0010】
本発明の同時同量制御装置は、無限大母線の供給契約電力Pi*と無限大母線から供給される電力Piの差である供給電力偏差ΔPi=Pi*−Piを偏差信号として入力することにより無限大母線供給電力一定制御を行い、ガスタービンの電力指令値Prefと発電機出力電力Pgの差を積分した電力量偏差ΔW=∫(Pref−Pg)dtを偏差信号として入力することにより同時同量制御を行うガスタービン制御器を備え、制御器設計の際、無限大母線供給電力に関して共振点を除去するように感度関数の重み係数を選択し電力量に関して低周波領域の積分動作をなくすように相補感度関数の重み係数を選択して設計したH∞同時同量制御器を備え、H∞同時同量制御器に供給電力偏差ΔPiと電力量偏差ΔWを入力して得られた出力により、無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を一緒に達成させる。
【0011】
本発明の同時同量制御装置は、さらに、発電機端子電圧Vtと軸ねじれトルクTdを入力して励磁電圧を調整することにより自動電圧調整機能と軸ねじれ振動抑制機能を達成する励磁制御器を備え、制御器設計の際、軸ねじれ振動に関して共振点を除去し自動電圧調整機能を過剰に劣化させないように感度関数と相補感度関数の重み係数を選択して設計したH∞励磁制御器を備え、H∞励磁制御器に発電機端子電圧Vtと軸ねじれトルクTdの偏差信号を与えて得られた出力の基づいて励磁電圧を調整することにより、自動電圧調整を行いながら軸ねじれ振動を抑制することを特徴とする。
【0012】
本発明の同時同量制御装置によれば、相反する無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を周波数領域を分けて適切な分配比率で実行させるので、両制御をいずれも適度に達成することができる。また、相反する自動電圧調整機能と軸ねじれ振動抑制機能についても、軸ねじれ振動を効果的に抑制しながら自動電圧制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の同時同量制御装置は、同時同量制度下において、PPSが同時同量制御および無限大母線供給電力一定制御を達成すると同時に、軸ねじれ振動抑制も達成できる。本発明の制御装置は、H∞制御理論を適用しており、応答性およびロバスト性を向上させることができる。また、軸ねじれ振動を抑制するので、安定な発電機の運用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、実施例を用いて本発明の同時同量制御装置を詳細に説明する。
図1は本実施例を適用する電力系統モデルの1例を示す系統図である。
本実施例の同時同量制御装置は、PPSが所有するガスタービン発電機11を無限大母線12と並列に接続して、負荷13が必要とする電力を安定に供給する電力系統に適用することができる。ガスタービン発電機11は、負荷13の変動に応じて発電することにより、同時同量制御および無限大母線供給電力一定制御を達成し、かつガスタービン発電機11の軸ねじれ振動を抑制することができる。
【0015】
ガスタービン発電機11が同期発電機であれば、動的特性と電気的特性を下の微分方程式で表すことができる。
2HdΔω/dt=Pmech−Pe (1)
dδ/dt=Δω (2)
de'q/dt=efd/t'd0−(xd−x'd)id−e'q (3)
de'd/dt=e'd/t'q0−(xq−x'q)iq (4)
ここで、Hは発電機慣性定数、Pmechは発電機への機械入力、Peは発電機出力、δは相差角、Δωは基準速度との速度差、e'q,e'dは発電機q,d軸の過渡内部電圧、efdはd軸電圧に換算した励磁電圧、xd,xqは発電機直軸,横軸同期リアクタンス、x'd,x'qは発電機直軸,横軸過渡リアクタンス、id,iqは発電機端子電流のd,q軸成分、t'd0,t'q0は直軸,横軸回路時定数である。
【0016】
また、図2はタービン軸モデルを示す図面である。タービン軸は、発電機、タービン、励磁器および各種ジョイントなどからなる多慣性系である。一般に、発電機およびタービンの慣性は他の質点に比べて非常に大きいため、タービン軸モデルは図3の2慣性系モデルに近似することができる。そこで、この2慣性系モデルに基づいて,タービンと発電機の運動方程式を導出すると、次式のようになる。
2Htdωt/dt+Ktg(θt−θg)=Tt (5)
2Hgdωg/dt+Ktg(θg−θt)=Tg (6)
ここで、Ht,Hgはタービンと発電機の慣性定数、Ttはタービンに加えられる機械トルク、Tgは発電機で発生する電磁トルク、ωは角速度、θは位置角度、Ktgはタービン軸系トータルのバネ定数を表す。
【0017】
タービンと発電機の軸のねじれ角を表す角度差θtgを、次式で定義することができる。
θtg=θt−θg (7)
ねじれ角θtgを用いると、軸ねじれトルクTdは次式で与えられる。
Td=Ktg・θtg (8)
(5)〜(8)式を用いると、発電機・タービンからなる2慣性系モデルの伝達関数を導出することができる。
図4は、(5)〜(8)式により導出された2慣性系モデルのブロック図である。
【0018】
上述のように表現できる電力系統モデルに対して、PPSが無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を同時に達成する制御器を準備する。
無限大母線供給電力一定制御は、PPSが一般電気事業者から供給される電力Piを一定に制御するもので、下式に示されるように、無限大母線の供給契約電力P*iに対する供給電力偏差ΔPiをガスタービンの制御器に偏差入力として与えて、不足分をガスタービン発電機から得るようにすることにより達成することができる。
ΔPi=P*i−Pi (9)
【0019】
一方、同時同量制御は、負荷13の需要電力PlとPPSの自家用ガスタービン発電機11の供給電力Pgが所定期間内で同じ量になるように制御するもので、無限大母線供給電力一定制御の下で無限大母線12からの供給電力Piが供給契約電力P*i一定に制御されている場合には、次式
Pi+Pg=Pl (10)
から、ガスタービン出力指令値Prefを、
Pref=Pl −P*i (11)
とすれば目的を達成することができる。契約電力P*iはたとえば0.3puなどに定められる。
【0020】
ガスタービンの電力量指令値Wrefおよび電力量偏差ΔWは上式を用いて、
Wref=∫Pref dt (12)
ΔW=∫(Pref−Pg)dt (13)
と表すことができる。
電力量偏差ΔWをガスタービンの制御器に入力して偏差を解消させることによって、同時同量制御を達成することができる。
【0021】
次に、無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を同時に達成するH∞制御器を得る。H∞制御器は線形行列不等式(LMI)アプローチを適用して設計することができる。
図5は、H∞制御器を使った制御システムの構成を示すブロック図である。
H∞制御器の入力は電力偏差ΔPiと電力量偏差ΔWの2つである。H∞制御器の出力はガスタービンの機械入力Pmechとしてガスタービン発電機に与えられ、その効果は電力系統において一般電気事業者から供給される電力Pi、ガスタービン発電電力量Wの変化として観察される。
【0022】
図6はH∞制御の機能を説明するために用いる典型的なフィードバック制御系のブロック図である。図示した閉ループ系では、制御目的である制御量y(s)の観測値に観測ノイズn(s)が加わり、目標入力r(s)と差分を算出し制御偏差e(s)となって制御器K(s)に入力され、制御器で制御偏差が減少させるような操作量u(s)を算出して制御対象G(s)に与えられることにより、ノイズn(s)の影響を抑制して制御量y(s)を目標入力に近づける制御を達成する。
【0023】
目標入力r(s)から制御偏差e(s)への伝達関数S(s)は次式で与えられ、感度関数と呼ばれる。
e(s)=S(s)r(s) (14)
S(s)=1/(1+K(s)G(s)) (15)
目標入力rを変えたときに制御偏差eがほぼ零の状態で追従するためには、伝達関数S(jω)の絶対値が小さいことが望ましい。
【0024】
また、観測ノイズn(s)から制御量y(s)への伝達関数T(s)は次式で与えられ、相補感度関数と呼ばれる。
y(s)=T(s)n(s) (16)
T(s)=K(s)G(s)/(1+K(s)G(s)) (17)
したがって、制御量yが観測ノイズnによって乱されないためには、伝達関数T(jω)の絶対値が小さいことが望ましい。
【0025】
しかし、SとTの間には、
S(jω)+T(jω)=1 (18)
の関係が成立するので、目標値に対するトラッキング特性や外乱制御性を改善するためにSを小さくしようとする要求と、検出雑音の影響やロバスト安定化の改善のためにTを小さくしようとする要求は、同じ周波数では両立しない。
【0026】
H∞制御では、ある周波数帯域ではSを重視し、別の周波数帯域ではTを重視する特性の制御系を実現することができる。
たとえば、制御系における偏差の大きさは低周波域におけるものが重視されるが、高周波域の偏差は軽視されるので、感度関数S(jω)は低周波域で小さくすればよい。また、検出雑音のスペクトルは高周波域に偏っているので、相補感度関数T(jω)は高周波域で小さくすればよい。このようにして、2つの要求に対して両立する形で制御器を設計することができる。
【0027】
そこで、H∞制御器の設計では、制御対象となるシステムの周波数特性を把握し、図5に示された電力ループの感度関数に関係する重みw11、電力量ループの感度関数に関係する重みw12と、電力ループの相補感度関数に関する重みw21、電力量ループの相補感度関数に関する重みw22を選択して、最適な制御を達成するようにする。
制御対象とするシステムの特性は、開ループプラントの特異値プロットを作成することにより、たとえば共振点や積分動作などの確認をすることができる。重みは、即応性、定常偏差除去能力、追従性など、それぞれの要求特性に対応して周波数領域ごとに適切なゲインを選択する。
こうして、無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を同時に達成するH∞制御器を得る。
【0028】
さらに、自動電圧調整装置(AVR)の電圧調整機能と軸ねじれ振動抑制機能を同時に達成する励磁システムを得る。
図7は、従来法の代表例として、非特許文献1に記載された軸ねじれ振動抑制励磁システムについて、軸ねじれトルクの推定部を省略して示すブロック図である。
図示されたシステムでは、発電機端子電圧Vtおよび軸ねじれトルクTdを検出し、適切に成形されたフィルタを通して、励磁電圧を調整する偏差信号ef0を電圧自動調整装置(AVR)に出力する。
【0029】
図8は軸ねじれ振動抑制励磁システムに適用するH∞制御器の構成図、図9は重み係数を含むH∞制御システムの構成図である。
AVR機能と軸ねじれ振動抑制機能を同時に達成するH∞制御器は、発電機端子電圧偏差と軸ねじれトルク偏差を入力する2入力1出力H∞制御器である。図8に示すように、H∞制御器の出力Δefdと電圧設定値の和により発電機端子電圧偏差と軸ねじれトルク偏差を考慮して発電機の励磁電圧を調整する。
【0030】
制御対象とするプラントの開ループ伝達関数を調べて、低周波領域に軸ねじれの共振点がある場合には、この共振を抑えるようにH∞制御器の重みを選定する。しかし、軸ねじれ振動抑制機能とAVR機能の間には一方の機能を重視すると他方の機能が劣化するトレードオフが生じる。したがって、これらのトレードオフを塩梅した適切な重みを選定する必要がある。
【0031】
なお、軸ねじれ振動抑制励磁システムを主体的に表示した図9において、プラントP(s)には、先に求めた無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を同時に満足させる制御器が含まれていて、図中の制御器H∞の出力EfはプラントP(s)の励磁回路の励磁電圧調整を行い、これら制御器が同時に制御動作を行って制御目標を達成する。
【0032】
図9における基準入力r、観測出力y、制御偏差eはそれぞれ下式で定義される。
r=[Vref Tref]T (19)
y=[Vt Td]T (20)
e=[ΔV ΔT]T (21)
W1は感度関数に関わる重み係数、W2は相補感度関数に係る重み係数である。また、Efは操作量を表す。
【0033】
こうして構成されたH∞制御器を備える同時同量制御器は、同時同量制度下においてPPSが同時同量制御および無限大母線供給電力一定制御を達成し、同時に発電機の軸ねじれ振動を抑制することができる。
同時同量制御と同時に無限大母線からの供給電力を一定に制御するため、需給不平衡(インバランス)の低減が可能である。また励磁制御に軸ねじれ振動抑制機能を加えることにより発電機の持続的な保守・運用が可能となる。
【0034】
(適用例)
本実施例の同時同量制御装置について、所定の条件下における設計例を提示し、行列計算ソフトウエアであるMATLAB(商標名)を用いたシミュレーションにより性能の確認を行った。
本設計例における適用対象プラントは図1に示した電力システムで、PPSが所有するガスタービン発電機が負荷変動に応じて発電することにより、同時同量制御および無限大母線供給電力一定制御を達成する。なお、ガスタービンの定格出力を4MVAとし、これを基準容量とした。また、無限大母線の供給契約電力P*iを0.3puとした。
(1)〜(4)式を適用する上で必要となるガスタービン発電機のパラメータは、H=1.07sec、xd=1.5pu、x'd=0.30pu、xq=1.06pu、x'q=0.30pu、t'd0=3.7sec、t'q0=0.21secである。
【0035】
タービン軸は図2に示す多慣性系であり、各質点における機械系定数は図10の表に示した通りである。発電機とタービンの慣性が他の質点より遙かに大きいので、図3および図4に示した2慣性系モデルに近似することができ、運動方程式は(5)(6)式で表される。
図5に示した制御器を構成するために、制御対象の特性を調べた。このため、まず、開ループプラントの特異値プロットを作成する。図11の点線が特異値プロットを表す。
【0036】
図11(a)はガスタービンの機械入力Pmechから無限大母線供給電力Piまでの特異値プロットであり、10rad/sec付近において共振点が確認できた。このため、無限大母線供給電力Piに関しては共振点を除去するように重みを選択した。
また、図11(b)はPmechからガスタービン発電電力量Wまでの特異値プロットであり、積分動作が確認できた。積分動作によりインバランス量が増大し、同時同量にならない場合がある。そこで、電力量に関しては積分動作をなくすように重みの選択を行った。
【0037】
図5に関し、選択した重み係数は、下の通りである。
ω11=2.7×105(s3+318.5s2+4300s+1745)-1 (22)
ω12=(4s2+7.1s+3.3)(s3+2.2s2+4300s)-1 (23)
ω21=(6.1×10-7s−4.4×10-8)(s+23.35)-1 (24)
ω22=(4.9×10-7s−8.8×10-8)(s+21.1)-1 (25)
【0038】
選択された感度関数の重み係数ω11,ω12の特異値プロットを図12に示す。
重み係数ω11は電力ループに関係しており、即応性を重視してゲインを高周波領域まで高く維持するように決定した。重み係数ω12は電力量ループに関係しており、定常偏差除去性能を重視して低周波領域ではゲインを低く設定した。
また、相補感度関数の重み係数ω21,ω22の特異値プロットを図13に示す。
電力・電力量ループの相補感度関数に関する重み係数ω21,ω22はロバスト性を決定する。今回、追従性をより重視する設計を行うため、ロバスト性に関する重み係数ω21,ω22のゲインは低く設定した。
【0039】
以上のようにH∞制御器を設計した後の閉ループプラントの特異値プロットを図11に実線で表示した。設計した制御器の次数は8次となった。
ガスタービンの機械入力PmechからPiまでの特異値プロットにおける低周波域の共振は見られなくなり、また、PmechからWまでの特異値プロットにおける極低周波領域の積分動作が無くなった。
【0040】
次に、図9に示すH∞制御システムにおいて、軸ねじれ振動抑制機能を備えるように重み係数Wを選択する。
図14は、制御対象に係る特異値プロットで、図14(a)は対象プラントにおける偏差efからタービン出力電圧Vtに係る特異値プロット、図14(b)は偏差efから軸ねじれトルクTdに係る特異値プロットである。
点線は制御器を適用しない開ループ状態の対象システムを表すプロット、破線は従来型制御器を用いたときの閉ループプラントを表すプロットである。
さらに、設計後の制御器を含む閉ループプラントの特異値プロットを実線で示した。
【0041】
開ループプラントの特異値プロットから、低周波領域で軸ねじれの共振が観察される。この共振を抑えるように制御器の重みWを決定する。ただし、軸ねじれ振動抑制機能とAVR機能のトレードオフを考慮する必要があり、下のように重み係数Wを選定した。
【数1】
【0042】
(シミュレーション結果)
設計されたH∞制御器の同時同量制御、無限大母線供給電力一定制御、端子電圧制御、軸ねじれ振動抑制制御に係る効果を、シミュレーションにより確認した。
図15および図16は、本適用例の制御系において、PPSが電力供給する負荷に急激な負荷減少が生じたときのシミュレーション結果を表す。
図15(a)は負荷の消費電力を示す。時刻t=13secにおいて消費電力の激減が生じている。図15(b)はガスタービンの発電電力の変化を示す。負荷の変動に追従して発電電力を調整していることが分かる。
【0043】
図15(c)は無限大母線の供給電力の変化を示し、図16(d)はガスタービンの電力量偏差を示す。無限大母線からの供給電力がほぼ0.3pu一定であり、ガスタービンの電力量偏差は経時により零に収束していることから、適用例の制御器が無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を同時に達成できていることが分かる。
さらに、図16(e)はガスタービン発電機の端子電圧、図16(f)は軸ねじれトルクを、それぞれ制御をしない場合、従来型制御を行う場合、本適用例の場合について示している。
【0044】
本適用例の制御器を使用することにより、ガスタービン発電機の端子電圧を適切に調整して、軸ねじれ振動を従来法より良好に抑制することに成功している。
なお、ガスタービン発電機の端子電圧は変動するが、変動幅は基準値の±5%以内に収まっている。
【0045】
発電母線において瞬時電圧低下が生じると軸系に大きな影響を及ぼすことが知られている。そこで、シミュレーションにより、本適用例の制御系が瞬時電圧低下に対して効果があるか否かを検証した。
図17,18は、本適用例の制御系において、PPSの発電機母線に瞬時電圧低下が生じたときのシミュレーション結果を表す。
図17の(a)から(c)、図18の(d)から(f)は、それぞれ図15の(a)から(c)、図16の(d)から(f)とそれぞれ同じ信号状態の変化を示す。
【0046】
シミュレーションでは、時刻t=13secにおいて瞬時電圧低下が発生すると想定した。瞬時電圧低下後に軸ねじれ振動が生じるが、発電機端子電圧を調整することにより、振動は早期に減衰している。なお、端子電圧の変動は基準値の±5%をわずかしか超えていない。
シミュレーション結果から、提案する制御器が無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を同時に達成しており、さらに、従来手法と比較して軸ねじれ振動抑制もより良好に達成していることが分かる。
【0047】
本発明の制御器により、同時同量制度下においてPPSが同時同量制御および無限大母線供給電力一定制御を達成し、さらに発電機の軸ねじれ振動を効果的に抑制する制御システムを提供することができる。
本発明の制御器により同時同量制御および無限大母線供給電力一定制御を達成することから、需給不平衡(インバランス)の低減が可能である。
また、励磁制御に軸ねじれ振動抑制機能を付加したので、発電機の持続的な保守・運用が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の1実施例を適用する電力系統モデルの1例を示す系統図である。
【図2】本実施例におけるタービン軸モデルを示す図面である。
【図3】本実施例のタービン軸モデルを近似した2慣性系物理モデル図である。
【図4】本実施例を近似した2慣性系モデルのブロック図である。
【図5】本実施例のH∞制御器を使った制御システムの構成を示すブロック図である。
【図6】H∞制御の機能を説明するために用いる典型的なフィードバック制御系のブロック図である。
【図7】従来法の軸ねじれ振動抑制励磁システムを示すブロック図である。
【図8】本実施例の軸ねじれ振動抑制励磁システムに適用するH∞制御器の構成図である。
【図9】本実施例の重み係数を含むH∞制御系の構成図である。
【図10】本実施例の対象とするガスタービンの機械系定数を示す表である。
【図11】本実施例の同時同量制御対象プラントの特異値プロット図である。
【図12】本実施例において選択された感度関数の重み係数の特異値プロット図である。
【図13】本実施例において選択された相補感度関数の重み係数の特異値プロット図である。
【図14】本実施例の制御対象に係る特異値プロット図である。
【図15】本適用例の制御系において急激な負荷減少が生じたときのシミュレーション結果のうち負荷の有効電力、ガスタービン出力電力、無限大母線の供給電力の変化を表す図面である。
【図16】本適用例の制御系において急激な負荷減少が生じたときのシミュレーション結果のうちガスタービン電力量偏差、発電機端子電圧、軸ねじれトルクの変化を表す図面である。
【図17】本適用例の制御系において瞬時電圧低下が生じたときのシミュレーション結果のうち負荷の有効電力、ガスタービン出力電力、無限大母線の供給電力の変化を表す図面である。
【図18】本適用例の制御系において瞬時電圧低下が生じたときのシミュレーション結果のうちガスタービン電力量偏差、発電機端子電圧、軸ねじれトルクの変化を表す図面である。
【符号の説明】
【0049】
11 ガスタービン発電機
12 無限大母線
13 負荷
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を達成するガスタービン制御器にLMIアプローチを用いて重み係数を選択した第1のH∞制御器を適用して無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を一緒に達成するようにすると共に、発電機端子電圧と軸ねじれトルクを入力して励磁電圧を調整する励磁制御器に重み係数を選択した第2のH∞制御器を適用して自動電圧調整機能と軸ねじれ振動抑制機能を異なる周波数帯域においてそれぞれ発揮することを特徴とする分散型電源であるガスタービン発電機の同時同量制御装置。
【請求項2】
無限大母線の供給契約電力Pi*と無限大母線から供給される電力Piの差である供給電力偏差ΔPi=Pi*−Piを偏差信号として入力することにより無限大母線供給電力一定制御を行い、ガスタービンの電力指令値Prefと発電機出力電力Pgの差を積分した電力量偏差ΔW=∫(Pref−Pg)dtを偏差信号として入力することにより同時同量制御を行うガスタービン制御器を備え、
無限大母線供給電力に関して共振点を除去するように感度関数の重み係数を選択し電力量に関して低周波領域の積分動作をなくすように相補感度関数の重み係数を選択して設計したH∞同時同量制御器を備え、
該H∞同時同量制御器に供給電力偏差ΔPiと電力量偏差ΔWを入力して得られた出力により無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を一緒に達成させると共に、
発電機端子電圧Vtと軸ねじれトルクTdを入力して励磁電圧を調整することにより自動電圧調整機能と軸ねじれ振動抑制機能を達成する励磁制御器を備え、
軸ねじれ振動に関して共振点を除去し自動電圧調整機能を過剰に劣化させないように感度関数と相補感度関数の重み係数を選択して設計したH∞励磁制御器を備え、
該H∞励磁制御器に発電機端子電圧Vtと軸ねじれトルクTdの偏差信号を与えて得られた出力に基づいて前記励磁電圧を調整することにより、自動電圧調整を行いながら軸ねじれ振動を抑制することを特徴とする分散型電源である同期発電機の同時同量制御装置。
【請求項1】
無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を達成するガスタービン制御器にLMIアプローチを用いて重み係数を選択した第1のH∞制御器を適用して無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を一緒に達成するようにすると共に、発電機端子電圧と軸ねじれトルクを入力して励磁電圧を調整する励磁制御器に重み係数を選択した第2のH∞制御器を適用して自動電圧調整機能と軸ねじれ振動抑制機能を異なる周波数帯域においてそれぞれ発揮することを特徴とする分散型電源であるガスタービン発電機の同時同量制御装置。
【請求項2】
無限大母線の供給契約電力Pi*と無限大母線から供給される電力Piの差である供給電力偏差ΔPi=Pi*−Piを偏差信号として入力することにより無限大母線供給電力一定制御を行い、ガスタービンの電力指令値Prefと発電機出力電力Pgの差を積分した電力量偏差ΔW=∫(Pref−Pg)dtを偏差信号として入力することにより同時同量制御を行うガスタービン制御器を備え、
無限大母線供給電力に関して共振点を除去するように感度関数の重み係数を選択し電力量に関して低周波領域の積分動作をなくすように相補感度関数の重み係数を選択して設計したH∞同時同量制御器を備え、
該H∞同時同量制御器に供給電力偏差ΔPiと電力量偏差ΔWを入力して得られた出力により無限大母線供給電力一定制御と同時同量制御を一緒に達成させると共に、
発電機端子電圧Vtと軸ねじれトルクTdを入力して励磁電圧を調整することにより自動電圧調整機能と軸ねじれ振動抑制機能を達成する励磁制御器を備え、
軸ねじれ振動に関して共振点を除去し自動電圧調整機能を過剰に劣化させないように感度関数と相補感度関数の重み係数を選択して設計したH∞励磁制御器を備え、
該H∞励磁制御器に発電機端子電圧Vtと軸ねじれトルクTdの偏差信号を与えて得られた出力に基づいて前記励磁電圧を調整することにより、自動電圧調整を行いながら軸ねじれ振動を抑制することを特徴とする分散型電源である同期発電機の同時同量制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−71908(P2009−71908A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234772(P2007−234772)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(504145308)国立大学法人 琉球大学 (100)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(504145308)国立大学法人 琉球大学 (100)
【Fターム(参考)】
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