説明

軸受装置及び工作機械の主軸装置並びに工作機械

【課題】回転軸に作用するアキシャル荷重を、回転部材から直接、精度よく、且つコンパクトなセンサによって測定することができる軸受装置及び工作機械の主軸装置並びに工作機械を提供する。
【解決手段】回転軸11は、定位置予圧が負荷された一対のアンギュラ玉軸受20、30によって前端が支持され、また後端が円筒ころ軸受40によって回転自在に支持されている。一対のアンギュラ玉軸受20、30の内輪22、32間に配設された内輪間座81の外周面には、被検出面の特性が円周方向に交互に変化するエンコーダ84が設けられている。エンコーダ84の被検出面は、円周方向に関して変化する特性のピッチが、軸方向に関して連続的に変化する部分を軸方向に単列で構成する。また、エンコーダ84の被検出面に対向配置されるセンサ82の検出部90は、被検出面の特性の変化を検出して回転軸11に作用するアキシャル荷重を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置及び工作機械の主軸装置並びに工作機械に関し、より詳細には、工作機械のスピンドル軸等の回転軸に作用するアキシャル荷重を測定可能な軸受装置及び工作機械の主軸装置並びに工作機械に関する。
【0002】
工作機械において、スピンドル軸に作用するアキシャル荷重を測定することは、大きなメリットを有する。即ち、工作機械のスピンドル軸に働くアキシャル荷重は、加工精度、加工効率、工具寿命等に与える影響が大きい重要なパラメータである。従って、アキシャル荷重を知ることにより適正な加工条件の選定が可能となる。例えば、加工条件は、一般的に工具の回転数や、送り速度によって決められているが、摩擦や、加工によって発生する熱等の制御し難い要因の影響も受けるので、回転数や送り速度を一定に設定しても、常に同じ加工精度が得られることはない。加工面の変化に対応する切削荷重(即ち、スピンドル軸のアキシャル荷重)を新たなパラメータとして考慮することで、より厳密な加工条件の選定が可能となり、加工精度の向上が期待される。
【0003】
具体的には、切り屑排出量が同じであれば、切削荷重の小さい加工条件の方が効率的な加工条件であり、省エネルギ、工具寿命の延長に有利となる。また、切削荷重の増加から、工具の切削性(切れ味)の低下や、刃先摩耗等の発生を推測することができ、工具寿命や、工具交換時期を知ることが可能となる。更に、切削荷重の変化の履歴を管理することによって、無理な切削加工条件や工具とワークとの衝突(衝撃荷重)等の軸受損傷要因を推定することができ、また把握した工具の寿命特性から工具の改良、改善が可能となる。
【0004】
上記したように、工作機械において切削荷重を知ることは重要である。しかし、工具が回転するタイプの工作機械(工具回転型工作機械)において、工具や回転軸に作用する荷重を検出することは、工具が回転しないタイプの工作機械(工具非回転型工作機械)と比較して困難が伴う。
【0005】
工作機械の主軸にかかる荷重を検出することができる従来の装置としては、主軸先端部に軸受型センサを配設した工作機械主軸の荷重検出装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の軸受型センサは、ハウジングと主軸間に転がり軸受を配置し、外輪外周に貼付した歪みゲージによって、軸受の転動体が歪みゲージの位置を通過する度に発生する歪みを検出して主軸に加わる荷重の大きさを検出している。
【0006】
また、軸受ユニットのハブに配置したエンコーダと、このエンコーダの被検出面に近接対向させたセンサとにより、外輪とハブ間に加わる荷重を求めるようにした荷重測定装置付転がり軸受ユニットが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−159260号公報
【特許文献2】特開2006−317420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている工作機械主軸の荷重検出装置は、軸受の内輪に働く力を、転動体及び軸受外輪を介して間接的に検出する装置であり、回転に伴う発生熱等のように不規則に発生して外輪に作用する外乱(ノイズ)を除去することが困難であり、精度よく荷重を検出することができない問題点があった。また、センサがハウジングの前面側に突出配置されているので、スピンドルの軸長が長くなるばかりでなく、センサ設置のための専用スペースを必要とする問題点があった。
【0009】
また、特許文献2に記載の荷重測定装置付転がり軸受ユニットは、軸受ユニットのハブにエンコーダを固定すると共に、このエンコーダの被検出面に検出部を近接対向させたセンサを外輪に配置し、検出部の出力信号の変化から外輪とハブとの間に加わる荷重を求めるものであり、工作機械の主軸への適用についても言及されているが、具体的構成については記載されていない。
【0010】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転軸に作用するアキシャル荷重を、回転部材から直接、精度よく、且つコンパクトなセンサによって測定することができる軸受装置及び工作機械の主軸装置並びに工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 静止部材に嵌合固定される静止側軌道輪、回転部材に嵌合固定される回転側軌道輪、及び、前記静止側軌道輪の静止側軌道及び前記回転側軌道輪の回転側軌道間に転動自在に配置された複数の転動体を備える軸受と、
前記回転側軌道輪の側方に配置されて前記回転側軌道輪と共に回転する回転側間座と、
被検出面の特性が円周方向に交互に変化するエンコーダ、及び、該エンコーダの前記被検出面に対向配置されて前記被検出面の前記特性の変化を検出するセンサからなるセンサユニットと、を備える軸受装置であって、
前記エンコーダは、前記回転側間座によって構成され、
前記エンコーダの被検出面は、円周方向に関して変化する前記特性のピッチが、軸方向に関して連続的に変化する部分を軸方向に単列で構成することを特徴とする軸受装置。
(2) 前記軸受は、前記回転部材の軸方向位置を位置決めするように配置された一対の軸受を備え、
前記エンコーダを構成する回転側間座は、前記一対の軸受の回転側軌道輪間に配置されることを特徴とする(1)に記載の軸受装置。
(3) 前記一対の軸受の静止側軌道論間には、静止側間座が配置されており、
前記センサは、該静止側間座に形成された貫通孔から延出して、前記エンコーダの前記被検出面に対向配置されることを特徴とする(2)に記載の軸受装置。
(4) 前記エンコーダの被検出面に、それぞれが他の部分とは特性が異なる1対の個性化部分より成る複数の被検出用組み合わせ部を、円周方向に亙り等間隔で配置しており、これら各被検出用組み合わせ部を構成する1対ずつの個性化部分同士の円周方向に関する間隔は、総ての被検出用組み合わせ部で軸方向に関して同じ方向に連続的に変化していることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の軸受装置。
(5) 前記エンコーダの被検出面には、互いに異なる特性を有する第一被検出部と第二被検出部とが円周方向に関して交互に且つ等間隔で配置されており、前記両被検出部の円周方向に関する幅のうち、第一被検出部の幅は軸方向一端側程広く、第二被検出部の幅は軸方向他端側程広いことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の軸受装置。(6) 前記エンコーダが磁性材製で、前記センサが前記エンコーダの被検出面の磁気特性の変化に対応して出力信号を変化させるものであり、前記エンコーダの軸方向両端部に、第一、第二両被検出部同士の回転方向に関するピッチが軸方向に関して変化しない平行部が存在することを特徴とする(5)に記載の軸受装置。
(7) 静止部材に嵌合固定される静止側軌道輪、回転部材に嵌合固定される回転側軌道輪、及び、前記静止側軌道輪の静止側軌道及び前記回転側軌道輪の回転側軌道間に転動自在に配置された複数の転動体を備える軸受と、
被検出面の特性が円周方向に交互に変化するエンコーダ、及び、該エンコーダの前記被検出面に対向配置されて前記被検出面の前記特性の変化を検出するセンサからなるセンサユニットと、を備える軸受装置であって、
前記エンコーダの被検出面は、円周方向に関して変化する前記特性のピッチが、軸方向に関して連続的に変化する部分を軸方向に単列で構成すると共に、
前記センサは、前記静止側軌道輪の側方に配置された静止側間座に形成された貫通孔から延出して、前記エンコーダの前記被検出面に対向配置されることを特徴とする軸受装置。
(8) 前記静止側間座には、前記貫通孔と異なる円周方向位相にノズル穴が形成されており、該ノズル穴から給油ノズルが延出して配置されることを特徴とする(7)に記載の軸受装置。
(9) (1)〜(8)のいずれか1つに記載の軸受装置を備え、前記回転部材であるスピンドル軸のアキシャル荷重が測定可能であることを特徴とする工作機械の主軸装置。
(10) (9)に記載の主軸装置を備えたことを特徴とする工作機械。
【発明の効果】
【0012】
本発明の軸受装置によれば、被検出面の特性が円周方向に交互に変化するエンコーダと、被検出面に対向配置されて特性の変化を検出するセンサと、からなるセンサユニットを備え、エンコーダが回転側間座によって構成されるので、新たな専用スペースを設けることなく既存のスペースにセンサユニットを配置することができ、センサ付軸受装置を小型化することができる。
【0013】
また、前記エンコーダの被検出面は、円周方向に関して変化する前記特性のピッチが、軸方向に関して連続的に変化する部分を軸方向に単列で構成するので、センサを一つの磁気センサのみによって構成することができる。これにより、センサユニットのコスト低減が図られると共に、センサ、及びエンコーダの軸方向幅も狭くすることができる。
【0014】
また、エンコーダを構成する回転側間座は、回転部材の軸方向位置を位置決めする一対の軸受の回転側軌道輪間に配置されているので、回転部材の伸縮による影響が抑制され、精度のよい荷重測定が可能となる。
【0015】
更に、センサは、一対の軸受の静止側間座に形成された貫通孔から延出して、エンコーダの被検出面に対向配置されているので、新たな専用スペースを設けることなくセンサユニットを配置することができ、センサ付軸受装置を小型化することができる。
【0016】
また、エンコーダの被検出面に、それぞれが他の部分とは特性が異なる1対の個性化部分より成る複数の被検出用組み合わせ部を、円周方向に亙り等間隔で配置しており、これら各被検出用組み合わせ部を構成する1対ずつの個性化部分同士の円周方向に関する間隔は、総ての被検出用組み合わせ部で軸方向に関して同じ方向に連続的に変化している。この様に構成した場合には、回転部材に作用するアキシャル荷重の変動に伴って回転側軌道輪がアキシャル方向にずれると、被検出面と検出部との位置が相対的に変化し、検出部の出力信号に軸方向位置のずれが生じる。従って、センサは、この軸方向位置のずれからアキシャル荷重の方向及び大きさを直接求めることができる。
即ち、アキシャル荷重を求めるためには、必ずしも相対変位量を求める必要はなく、演算部に、センサの出力信号に基づいて、アキシャル荷重の大きさを直接(上記相対変位量を求める過程を経る事なく)算出する機能を持たせることができる。
【0017】
さらに、エンコーダの被検出面には、互いに異なる特性を有する第一被検出部と第二被検出部とが円周方向に関して交互に且つ等間隔で配置されており、両被検出部の円周方向に関する幅のうち、第一被検出部の幅は軸方向一端側程広く、第二被検出部の幅は軸方向他端側程広い。この様な構成を採用した場合にも、回転部材に作用するアキシャル荷重の変動に伴って回転側軌道輪がアキシャル方向にずれると、被検出面と検出部との位置が相対的に変化し、検出部の出力信号に軸方向位置のずれが生じる。従って、センサは、この軸方向位置のずれからアキシャル荷重の方向及び大きさを直接求めることができる。
【0018】
また、本発明の他の軸受装置によれば、被検出面の特性が円周方向に交互に変化するエンコーダと、被検出面に対向配置されて特性の変化を検出するセンサと、からなるセンサユニットを備え、センサが静止側間座に形成された貫通孔から延出して、エンコーダの被検出面に対向配置されるので、新たな専用スペースを設けることなく既存のスペースにセンサユニットを配置することができ、センサ付軸受装置を小型化することができる。特に、静止側間座にノズル穴が更に形成され、ノズル穴に給油ノズルが設けられることで、センサと給油ノズルをコンパクトに配置することができる。
【0019】
また、工作機械の主軸装置や工作機械が上記の軸受装置を備えるので、切削時にスピンドル軸に作用するアキシャル荷重の測定が可能となり、このアキシャル荷重を加工条件の新たなパラメータとして考慮することで、より厳密な加工条件の選定が可能となり、加工精度を向上させることができる。更には、工具寿命、工具交換時期、及び軸受損傷要因の推測や、工具の改良、改善が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る第1実施形態の主軸装置の断面図である。
【図2】図1に示す主軸装置の要部断面図である。
【図3】図1に示すエンコーダの斜視図である。
【図4】図1に示すIV−IV断面図である。
【図5】(a)は図1に示すセンサの斜視図であり、(b)はその平面図、(c)はその側面図である。
【図6】図1に示すハウジングに設けられたセンサ取付穴の斜視図である。
【図7】(a)は図6に示すセンサ取付穴の平面図であり、(b)はその断面図である。
【図8】図1に示すセンサの組み付け手順を示す説明図である。
【図9】(a)は、エンコーダに対する検出部の位置を示し、(b)〜(d)は、図1に示す主軸装置のアキシャル荷重の変動に伴って変化するセンサの出力信号を示す線図である。
【図10】第1実施形態の変形例の主軸装置の断面図である。
【図11】第2実施形態のエンコーダの斜視図である。
【図12】(a)は、図11に示すエンコーダに対する検出部の位置を示し、(b)〜(d)は、主軸装置のアキシャル荷重の変動に伴って変化するセンサの出力信号を示す線図である。
【図13】第2実施形態の変形例のエンコーダの斜視図である。
【図14】(a)は、図13に示すエンコーダに対する検出部の位置を示し、(b)〜(d)は、主軸装置のアキシャル荷重の変動に伴って変化するセンサの出力信号を示す線図である。
【図15】第3実施形態の主軸装置の要部断面図である。
【図16】第3実施形態のエンコーダの斜視図である。
【図17】第3実施形態のエンコーダを外周側から見た展開図である。
【図18】第3実施形態の変形例に係るエンコーダの斜視図である。
【図19】第3実施形態の他の変形例に係るエンコーダの斜視図である。
【図20】第4実施形態のセンサ取付穴の斜視図である。
【図21】図20に示すセンサ取付穴の平面図である。
【図22】第5実施形態の主軸装置の要部断面図である。
【図23】第6実施形態の主軸装置の要部断面図である。
【図24】第7実施形態の主軸装置の要部断面図である。
【図25】第8実施形態の主軸装置の要部断面図である。
【図26】第9実施形態の主軸装置の要部断面図である。
【図27】第9実施形態の変形例の主軸装置の要部断面図である。
【図28】第10実施形態の主軸装置の要部断面図である。
【図29】冷却機構を備えない主軸装置の要部断面図である。
【図30】冷却機構を備えない他の主軸装置の要部断面図である。
【図31】無線式センサを備える主軸装置の要部断面図である。
【図32】エンコーダが位置決め用の内輪間座に設けられたセンサユニットを備える主軸装置の要部断面図である。
【図33】エンコーダが内輪に設けられたセンサユニットを備える主軸装置の要部断面図である。
【図34】本実施形態の主軸装置が適用される門形マシニングセンタの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る主軸装置の各実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1及び図2に示すように、第1実施形態の工作機械の主軸装置10は、モータビルトイン方式であり、その中心部には、回転部材である中空状の回転軸(スピンドル軸)11が設けられている。回転軸11の軸方向端部(図1において左側)には、不図示の工具が保持されている。
【0023】
回転軸11は、その工具側を支承する一対の前側軸受20,30と、反工具側を支承する後側軸受40とによって、静止部材であるハウジング50に回転自在に支持されている。前側軸受20,30と後側軸受40間における回転軸11の外周面には、ロータ51が外嵌されている。また、ロータ51の周囲に配置されるステータ52は、ハウジング50に固定されており、ステータ52に電力を供給することで、ロータ51に回転力を発生させて、回転軸11を回転させる。尚、ハウジング50は、前側軸受30とステータ52との間で軸方向に2分割されたハウジング50aとハウジング50bとから構成されている。
【0024】
前側軸受20,30は、背面組み合わせとなるように配置された略同一寸法の一対のアンギュラ玉軸受であり、静止側軌道輪である外輪21,31と、回転側軌道輪である内輪22,32と、静止側軌道である外輪軌道溝及び回転側軌道である内輪軌道溝間に、接触角を持って配置された転動体としての複数の玉23,33と、を備える。
【0025】
前側軸受20,30の外輪21,31は、ハウジング50に内嵌され、ハウジング50にボルト締結された前側軸受外輪押え53によって静止側間座である外輪間座54を介してハウジング50に固定されている。
【0026】
また、前側軸受20,30の内輪22,32は、回転軸11に外嵌され、回転軸11に締結されたナット55によって回転側間座である内輪間座81を介して回転軸11に固定されている。前側軸受20,30は、ナット55によって定位置予圧が負荷されており、前側軸受20,30によって回転軸11の軸方向位置が位置決めされる。
【0027】
図3に示すように、エンコーダ84は、磁性金属材からなる内輪間座81の外周面に、複数の被検出用組み合わせ部85、85を、円周方向に亙り等間隔で配置している。これら各被検出用組み合わせ部85、85は、それぞれが他の部分とは特性が異なる1対の個性化部分86、86により構成している。この様な各個性化部分86、86として本実施形態の場合には、長尺の溝を採用している。
【0028】
各被検出用組み合わせ部85、85を構成する1対ずつの個性化部分86、86同士の円周方向に関する間隔は、総ての被検出用組み合わせ部85、85で軸方向に関して同じ方向に連続的に変化させる。即ち、各被検出用組み合わせ部85、85を構成する1対ずつの個性化部分86、86同士の円周方向に関する間隔が、エンコーダ84の軸方向一端(図3の右上端)程小さくなり、円周方向に隣り合う各被検出用組み合わせ部85、85を構成する個性化部分86、86同士の円周方向に関する間隔が、エンコーダ84の軸方向他端(図3の左下端)程小さくなる方向に傾斜している。このエンコーダ84は、後述するセンサ82と共にセンサユニット80を構成する。
【0029】
図1に戻り、後側軸受40は、円筒ころ軸受であり、外輪41と、内輪42と、転動体としての複数の円筒ころ43と、を有する。後側軸受40の外輪41はハウジング50に内嵌され、ハウジング50にボルト締結された後側軸受外輪押え56によって外輪間座44を介してハウジング50に固定されている。後側軸受40の内輪42は、回転軸11に締結された他のナット57によって内輪間座45を介して回転軸11に固定されている。
【0030】
軸方向において前側軸受20,30、及びステータ52に対応するハウジング50の外周面には、円環状の冷却油溝58、59が形成されている。この冷却油溝58、59は、Oリング62、63が装着されてハウジング50に外嵌するリング状の冷却ジャケット60、61によって覆われている。そして、この冷却油溝58,59に供給された冷却油によって前側軸受20,30、及びステータ52が冷却される。
【0031】
図4に示すように、ハウジング50及び外輪間座54を径方向に貫通して設けられた一対のノズル穴66,54bには、それぞれ給油ノズル67が配設されている。そして、潤滑装置から供給された潤滑油が、給油ノズル67のノズル(図示せず)から前側軸受20,30に向けて吐出され、前側軸受20,30を潤滑する。潤滑方式は、グリース潤滑、オイルエア潤滑、オイルミスト潤滑、直噴潤滑等のいずれであってもよい。
【0032】
また、ハウジング50及び外輪間座54には、それぞれセンサ取付穴68及び貫通孔54aが径方向に連続して形成されている。センサ取付穴68は、軸方向において給油ノズル67(ノズル穴66)と略同一位置、且つ円周方向位相が異なる位置に設けられている。センサ取付穴68には、センサユニット80を構成するセンサ82が配設される。
【0033】
センサ取付穴68を、給油ノズル67(ノズル穴66,54b)と軸方向略同一位置に配置することにより、センサ82を配置するための専用スペースが不要となり、小型化が可能となる。尚、給油ノズル67(ノズル穴66,54b)とセンサ82(センサ取付穴68)との円周方向位相は、特に限定されず任意に設定することができる。
【0034】
図5に示すように、センサ82は、検出部である磁気センサ90を内蔵し、大径部82a及び小径部82bからなる段付円筒状に形成されている。大径部82a及び小径部82bには、それぞれOリング溝87a、87bが設けられ、大径部82aの上面には、U字溝82cが形成されている。U字溝82cには、長円形状の固定治具88の一端が嵌合する。
【0035】
図6及び図7に示すように、ハウジング50に設けられたセンサ取付穴68は、大径部68a及び小径部68bを有する段付き穴であり、センサ82の配線83を配索するための第1配索穴70が、小径部68bに連通して軸方向に設けられている。更に、大径部68aと小径部68bとの段部には、長手方向が第1配索穴70に向けられた長円68cが第1配索穴70に連通して設けられている。
【0036】
また、冷却油溝58の外周面には、一端が大径部68aに連続するU字溝68dが形成されている。U字溝68dには、センサ82を固定するための雌ねじ69が径方向に設けられている。尚、センサ82と給油ノズル67の外形形状を同一形状に設定しておけば、ノズル穴66とセンサ取付穴68(大径部68a及び小径部68b)の加工を同一の加工工程で行うことができ、コストダウンに寄与する。
【0037】
図1を参照して、第1配索穴70は、ハウジング50aの反工具側から加工されており、ハウジング50の外周面から傾斜して径方向に設けられた傾斜穴71、及び第1配索穴70と平行に反工具側に延設する第2配索穴72に連通している。このように第1配索穴70、傾斜穴71、及び第2配索穴72を屈曲形成することにより、センサ82の配線83をステータ52と干渉することなく配索可能としている。第1配索穴70の反工具側端部には、栓74が挿入されて閉鎖されており、モータ側からの異物侵入が阻止される。
【0038】
センサ82は、図1及び図8に示すように、Oリング溝87a、87bにOリング91a、91bを装着し、センサ82の配線83を第1配索穴70、傾斜穴71、及び第2配索穴72に挿通させ、ハウジング50のセンサ取付穴68、及び外輪間座54の貫通孔54aに挿入することで組み付けられる。
【0039】
このとき、センサ取付穴68には、第1配索穴70に連通する長円68cが設けられているので、配線83がセンサ取付穴68とセンサ82の間に挟まれて損傷を受けることはない。また、センサ82に装着されたOリング91a、91bによって、冷却油溝58、及び前側軸受20,30側から第1配索穴70への潤滑油の侵入が防止される。
【0040】
尚、第1配索穴70、傾斜穴71、及び第2配索穴72に対する配線83の挿通作業は、上記したように一度に挿通することが困難な場合には、第1配索穴70、及び傾斜穴71に挿通した配線83を一旦傾斜穴71から外に出した後、再び傾斜穴71から第2配索穴72に挿通するようにしてもよい。また、配線83挿通後に、傾斜穴71の開口部に栓(図示せず)を挿入して閉鎖し、異物の侵入を阻止することもできる。このように配索された配線83の一端は、演算装置150に接続されてセンサ82で検出された出力信号が入力される。
【0041】
そして、固定治具88をセンサ82のU字溝82c、及びハウジング50のU字溝68dに嵌合させて、雄ねじ89をハウジング50の雌ねじ69に螺合させて固定する。これにより、センサ82の先端に設けられた磁気センサ90は、所定の位置に位置決めされて、内輪間座81の外周面に形成されたエンコーダ84の被検出面に対向して配置される。
【0042】
センサ82とエンコーダ84の被検出面との相対位置は、磁気センサ90が被検出面の軸方向中間部に位置する。具体的には、磁気センサ90の位置は、定位置予圧が付与された前側軸受20,30間に配置された内輪間座81の軸方向中間位置となるエンコーダ84の軸方向中間部(仮想線α)と一致するように設定されている。
【0043】
第1実施形態の主軸装置10のセンサユニット80の作用を、図9に基づいて説明する。この様なエンコーダ84の被検出面である外周面にその検出部を対向させたセンサ82の出力信号は、各個性化部分86、86に対向する瞬間に変化する。そして、変化する間隔(周期)は、センサ82の検出部が対向する部分の軸方向位置の変化に伴って変化する。例えば、回転軸11(内輪間座81)にアキシャル荷重が作用していない場合、センサ82の検出部は、仮想線αで示した、被検出面の中央部を走査し、出力信号は、図9(c)に示す様に変化する。
【0044】
ここで、回転軸11、即ち内輪間座81に図9(a)において工具側から反工具側の方向にアキシャル荷重が作用すると、エンコーダ84に対する検出部の位置は、図9(a)に示す仮想線β上に移動し、出力信号は、図9(b)に示す様に変化する。
【0045】
また、回転軸11に反工具側から工具側の方向にアキシャル荷重が作用すると、一対の検出部の位置が図9(a)に示す仮想線γ上に移動し、出力信号は、図9(d)に示す様に変化する。
【0046】
なお、磁気センサ90の構造は、永久磁石を組み込んだものであれば、特にその形式を問わない。即ち、この永久磁石から出る磁束の流れを導くポールピースの周囲にコイルを巻回して成る、所謂パッシブ型のものであっても、磁束の密度に応じて特性を変化させる磁気検出素子を組み込んだ、所謂アクティブ型のものであっても使用される。また、本実施形態のセンサ82としては、長尺の溝とした個性化部分86のエッジを検出可能なものであればよく、光学センサ等が使用されてもよい。
【0047】
上記したように、磁気センサ90の出力信号は、回転軸11に作用するアキシャル荷重の方向に応じて、また、アキシャル荷重の大きさに比例して変化する。従って、定位置予圧が負荷されている前側軸受20,30の剛性(ばね定数)を予め測定あるいは計算して、アキシャル荷重の大きさと回転軸11の変位量との関係を求めておけば、磁気センサ90からの出力信号のパターンに基づいて、回転軸11に作用するアキシャル荷重の方向及び大きさが、演算装置150によって求められる。
【0048】
また、エンコーダ84を構成する内輪間座81は、背面組合せで配置された一対のアンギュラ玉軸受である前側軸受20,30間に配置されているので、内輪間座81の軸方向中間位置が回転軸11が熱によって伸縮する場合の軸方向中心となるため、回転軸11の伸縮による影響が抑制され、精度のよい荷重測定が可能となる。
【0049】
さらに、配線83は、第1配索穴70、傾斜穴71、及び第2配索穴72によってハウジング50の内部を通過するので、別途配線用のカバーを設けることなく、加工時の切り屑や切削油等からコードを防護することができ、省スペース化が図られる。特に旋回型の主軸装置においては、ハウジング50の内部から主軸装置10を支持する旋回アームの内部へ配線を導出するようにすれば、配線を外部へ曝すことなく配索することができる。
【0050】
また、本実施形態では、エンコーダ84の被検出面は、円周方向に関して変化する特性のピッチが、軸方向に関して連続的に変化する部分を軸方向に単列で構成しており、センサ82を一つの磁気センサ90のみによって構成することができる。これにより、センサユニットのコスト低減が図られると共に、センサ82、及びエンコーダ84を構成する内輪間座81の軸方向幅も狭くすることができる。これにより、主軸装置10の軸方向長さも短くすることができる。特に、5軸加工機などでスピンドル軸が旋回する(例えば、±120°前後で旋回)方式の工作機械の場合、スピンドル軸長が短くなれば、旋回半径を小さくすることができ、工作機械全体の省スペース化や加工スペースを確保でき、3次元加工を行う場合など、主軸装置10の動作が容易となり、加工プログラム作成の容易性や加工性が向上できるメリットがある。
【0051】
図10は本発明の第1実施形態の変形例に係る主軸装置の要部断面図である。この主軸装置10では、ハウジング50に形成される第1配索穴70が工具側から加工され、傾斜穴71と連通している。これにより、第1配索穴70は前側軸受外輪押え53によって塞ぐことができ、栓74を設ける必要がない。また、ハウジング50が軸方向に2分割される構成でなくても容易に加工することができる。
【0052】
(第2実施形態)
図11は本発明の第2実施形態に係るエンコーダの斜視図である。第2実施形態のエンコーダ84は、磁性金属材からなる内輪間座81の外周面に、互いに異なる特性を有する第1被検出部である凸部93と第2被検出部である凹部94とが円周方向に関して交互に且つ等間隔に形成されている。凸部93及び凹部94は、台形若しくは倒立台形に形成されており、凸部93の幅は、軸方向一端(図11の下端)側程広く、凹部94の幅は、軸方向他端(図11の上端)側程広い。
【0053】
本実施形態のエンコーダ84を備える主軸装置は、回転軸11にアキシャル荷重が作用していない状態では、センサ82の磁気センサ90は、図12(a)に示す仮想線α上に位置している。従って、磁気センサ90の出力信号(デューティー比)は、図12(c)に示す様に変化する。
【0054】
ここで、ワーク加工によって、回転軸11に図12(a)において工具側から反工具側の方向にアキシャル荷重が作用すると、内輪間座81、即ち、エンコーダ84の軸方向位置が回転軸11と共に反工具側へ変化する。これにより、エンコーダ84に対する磁気センサ90の位置が、図12(a)に示す仮想線β上に移動し、磁気センサ90の出力信号(デューティー比)は、図12(b)に示すように変化する。
【0055】
また、回転軸11に図12(a)において反工具側から工具側の方向にアキシャル荷重が作用すると、内輪間座81、即ち、エンコーダ84の軸方向位置が回転軸11と共に工具側に変化して、エンコーダ84に対する磁気センサ90の位置が、図12(a)に示す仮想線γ上に移動し、磁気センサ90の出力信号(デューティー比)は、図12(d)に示すように変化する。従って、検出部からの出力信号(デューティー比)に基づいて、回転軸11に作用するアキシャル荷重の方向及び大きさが演算装置150によって求められる。
なお、その他の構成及び作用については、第1実施形態のものと同様である。
また、本実施形態において、エンコーダ84を永久磁石で構成し、S極に着磁した第1被検出部とN極に着磁した第2被検出部を、円周方向に交互に配置する構成としてもよい。
【0056】
図13は本発明の第2実施形態の変形例に係るエンコーダの斜視図である。このエンコーダ84では、その外周面に形成した凸部93、93と凹部94、94との形状を工夫する事により、センサ90の出力信号を安定させるものである。即ち、本実施例の場合には、各凸部93、93及び凹部94、94の軸方向両端部を、それぞれエンコーダ84の円周方向に関する幅寸法がこのエンコーダ84の軸方向に関して変化しない、平行部93a,93b、94a,94bとしている。従って、エンコーダ84の被検出面である外周面の特性が円周方向に関して変化するピッチは、この外周面の軸方向中間部では、軸方向位置により変動するが、軸方向両端部では軸方向位置に拘らず変動しない。
【0057】
本変形例の場合に、各平行部93a、93b、94a、94bを設ける事で、センサ82の出力信号を安定させられる理由は、次の通りである。前述した通り、エンコーダとして磁性材製で被検出面に凹凸部を形成したものを使用する事により、永久磁石製のエンコーダに比べて被検出面の特性変化のピッチを高精度にできる。但し、上述した実施形態の場合には、この特性変化のピッチを短くすべく、凹部と凸部との間隔を短くすると、センサの検出部がエンコーダの被検出面の幅方向両端部(軸方向両端部)近傍に対向する状態で、これら検出部と被検出面との間を流れる磁束の流れが不安定になり、上記センサの出力が不安定になり易い。例えば、図11に示したエンコーダ84で、凸部93、93と凹部94、94とのピッチを短くした場合、円周方向に隣り合う台形の凸部93、93の底辺同士が近接する。特に、エンコーダ84とセンサ82とが軸方向に大きくずれた場合でも回転軸11の回転速度検出を可能とすべく、これらエンコーダ84とセンサ82との間で許容される軸方向に関する相対変位量を確保する為に、台形形状の高さ寸法を大きくした場合に、上述の様に円周方向に隣り合う台形の凸部93、93の底辺同士が近接する傾向が著しくなる。
【0058】
これに対して本変形例の場合には、各平行部93a、93b、94a、94bを設ける事に伴って、円周方向に隣り合う台形の凸部93、93の底辺同士が過度に近接する事を防止できる。そして、センサ82の検出部がエンコーダ84の外周面の軸方向端部で凸部93、93の底辺に対応する部分に対向した場合でも、センサ82の検出部とエンコーダ84の被検出面との間を流れる磁束の流れを安定させて、センサ82の出力を安定させる事ができる。また、エンコーダ84とセンサ82との軸方向の変位量が多少大きくなっても、センサ82による、回転軸11の回転速度検出を行なえる。
【0059】
尚、各平行部93a、93b、94a、94bの円周方向両側縁の形状は、直線としているが、この部分の形状は必ずしも直線でなくても良い。例えば、センサ82の感度や感受範囲(スポット径)によって、軸方向に対し多少傾斜させたり、曲率半径の大きな円弧状にする事もできる。
又、エンコーダ84と組み合わせるセンサ82の構造は、永久磁石を組み込んだものであれば、特にその型式を問わない。即ち、この永久磁石から出る磁束の流れを導くポールピースの周囲にコイルを巻回して成る、所謂パッシブ型のものであっても、磁束の密度に応じて特性を変化させる磁気検出素子を組み込んだ、所謂アクティブ型のものであっても使用できる。但し、図14に示す様に、センサ82の検出部がエンコーダ84の軸方向中間部に対向した状態で、このエンコーダ84の外周面に存在する各凸部93、93及び凹部94、94の、回転方向に関する長さ寸法の比率をセンシングする必要上、センサ82のスポット径は小さい方が、この比率を高精度で求める面から好ましい。
【0060】
(第3実施形態)
図15は、本発明に係る第3実施形態の主軸装置の要部断面図である。第3実施形態の内輪間座81は、第1実施形態の内輪間座81(図3)に対して、外周面の軸方向両端部に、軸方向幅La,Lb及び深さHa,Hbの溝部81a,81bを凹設したものである。
【0061】
具体的に、図16及び図17に示すように、本実施形態の内輪間座81では、溝部81a,81bの軸方向幅La,Lbはそれぞれ1mm以上に設定されており、エンコーダ84の個性化部分86は、溝部81a,81bの両方の軸方向端面81aS,81bSに開口するように連続的に形成されている。また、溝部81a,81bの深さHa,Hbは、個性化部分86の深さhよりも大きく設定されており、溝部81a,81bの外周面は個性化部分86の外周面よりも内径側に位置している。
【0062】
この内輪間座81によれば、エンコーダ84の個性化部分86を設ける際、軸方向両端部に個性化部分86よりも内径側にまで切り欠かれた溝部81a,81bが形成されているため、個性化部分86を軸方向に渡って切り通すことが可能となる。
【0063】
したがって、溝部81a,81bを有する内輪間座81にエンコーダ84の個性化部分86をミーリング加工機等で切削加工する際、個性化部分86は軸方向に渡って切り通すことで形成することができ、加工性を向上することができる。また、加工機が溝部81a,81bの軸方向端面81aS,81bSを抜ける際に、該軸方向端面81aS,81bS近傍にバリが発生した場合であっても、バリが内輪22,32と当接する内輪間座81の軸方向端面81c,81dに影響を及ぼすことがないので、内輪間座81端面の平行度が向上する。これによって、内輪22,32と内輪間座81を精度良く組み立てることが可能となる。
【0064】
また、個性化部分86は、溝部81a,81bの軸方向端面81aS,81bS間を軸方向に渡って切り通すことで形成されているので、各個性化部分86の軸方向寸法誤差を低減することができる。これによって、各個性化部分86の寸法のアンバランスに起因する主軸装置の振動を抑制することが可能となる。これは、特に、工具を高速回転させる際に、顕著な効果を発揮する。
なお、その他の構成及び作用については、第1実施形態のものと同様である。
【0065】
また、本実施形態の溝部81a,81bを有する内輪間座81の構成は、図18に示すように、第2実施形態の凸部93及び凹部94によってエンコーダ84を構成する内輪間座81にも適用可能であり、また、図19に示すように、第2実施形態の変形例である、平行部93a,93b,94a,94bを持った凸部93及び凹部94によってエンコーダ84を構成する内輪間座81にも適用可能である。
【0066】
(第4実施形態)
図20は本発明の第4実施形態のセンサ取付穴の斜視図、図21はセンサ取付穴の平面図である。第4実施形態のセンサ取付穴68は、第1実施形態のセンサ取付穴68と同様に、センサ82の大径部82a(図5参照)が挿通される大径部68a、及びセンサ82の小径部82bが挿通される小径部68bを有し、更に大径部68aと小径部68bとの間に中径部68eが形成された3段の段付き穴である。中径部68eには、センサ82の配線83を配索するための第1配索穴70が連通して軸方向に設けられている。また、ハウジング50には、第1実施形態と同様に、センサを固定するためのU字溝68d、及び雌ねじ69が設けられる。
【0067】
このセンサ取付穴68の中径部68eは、センサ取付穴68にセンサ82を挿入する際、配線83とセンサ取付穴68との干渉を防止して組付けを容易にするためのものであり、配線83の干渉が防止可能な範囲で、できるだけ小さいことが望ましい。
なお、その他の構成及び作用については、第1実施形態のものと同様である。
【0068】
(第5実施形態)
図22は本発明の第5実施形態の主軸装置の要部断面図である。第5実施形態の主軸装置10には、円環状の冷却油溝58内にセンサ取付穴68と同心円状にリング溝95が形成されている。リング溝95には、Oリング96が装着された円筒状の蓋体97が嵌合している。この主軸装置10によれば、冷却油溝58とセンサ82とが蓋体97で分離され、Oリング96によってシールされているので、冷却油がセンサ82に付着することが防止される。また、センサ82の大径部82aにOリング溝87aを加工する必要がない。 なお、その他の構成及び作用については、第1実施形態のものと同様である。
【0069】
(第6実施形態)
図23は本発明の第6実施形態の主軸装置の要部断面図である。第6実施形態の主軸装置10では、センサ82の配線83を配索するため、工具側からセンサ取付穴68(小径部68b)に連通する配索穴98が加工されている。また、前側軸受外輪押え53に配索溝99が設けられると共に、ハウジング50の外周面には、配索溝99が開口する周方向位置を跨いで軸方向に延びる配線カバー100が固定されている。これにより、配索穴98から工具側に向けて導出された配線83は、前側軸受外輪押え53の配索溝99内を通り、配線カバー100で覆われて配索される。
【0070】
この主軸装置10によれば、センサ取付穴68からハウジング50の端部(図中左端部)までの距離が短い場合、ハウジング50の加工量が少なくなり加工上有利である。また、センサ82の配線83が、前側軸受外輪押え53及び配線カバー100で覆われているので、加工中の切り屑等による配線83に与える損傷や切断を防止することができる。
なお、その他の構成及び作用については、第1実施形態の主軸装置10と同様である。また、ハウジング50の外部環境によっては、配線カバー100を設けずに配線83が配策されてもよい。
【0071】
(第7実施形態)
図24は本発明の第7実施形態の主軸装置の要部断面図である。第7実施形態の主軸装置10では、前側軸受外輪押え53に形成される配索溝99が、ハウジング50の外周面まで開口せずに径方向に延びると共に、冷却ジャケット60には配索溝99に連通する配索穴101が形成されている。配索穴98から工具側に向けて導出された配線83は、前側軸受外輪押え53の配索溝99、及び冷却ジャケット60の配索穴101を通って配索される。これにより、第1実施形態と同様、別途配線用のカバーを設けることなく、加工時の切り屑や切削油等からコードを防護することができ、省スペース化が図られる。
なお、その他の構成及び作用については、第6実施形態のものと同様である。
【0072】
(第8実施形態)
図25は本発明の第8実施形態の主軸装置の要部断面図である。第8実施形態の主軸装置10は、冷却ジャケット60にセンサ82を取り付けるためのセンサ穴102が、ハウジング50のセンサ取付穴68と同心に形成されている。また、センサ82は、大径部82aの長さが長く形成されると共に、配線83が大径部82aの上面から導出されている。大径部82aには、センサ取付穴68、及びセンサ穴102に対応する位置に、それぞれOリング91a、91cが装着されている。
【0073】
センサ82は、冷却ジャケット60のセンサ穴102、ハウジング50のセンサ取付穴68、及び外輪間座54の貫通孔54aに挿入され、固定治具88と雄ねじ89によって冷却ジャケット60に固定される。センサ82と、センサ取付穴68、及びセンサ穴102との間は、それぞれOリング91a、91cによってシールされる。また、センサ82から径方向に導出された配線83は、配線カバー100で覆われて配索される。
【0074】
この主軸装置10によれば、冷却ジャケット60に加工容易なセンサ穴102を形成するだけで、ハウジング50に加工し難い配索穴を設ける必要がなくなり、加工上有利となる。
なお、その他の構成及び作用については、第6実施形態のものと同様である。
【0075】
(第9実施形態)
図26は本発明の第9実施形態の主軸装置の要部断面図である。第9実施形態の主軸装置10に組み込まれるセンサ103は、配線直付けタイプのセンサ82と異なり、小径部82bの側面に雌コネクタ104を備えるコネクタ接続タイプのセンサ103である。また、配線83の先端には、雌コネクタ104に嵌合可能な雄コネクタ105が設けられている。
【0076】
本実施形態のセンサ103は、冷却ジャケット60が取り外された状態で、配線83を第1配索穴70に挿通し、ハウジング50の外方でセンサ取付穴68から延出された配線83の雄コネクタ105をセンサ103の雌コネクタ104に接続した後、配線83を第1配索穴70に押し込みながらセンサ103をセンサ取付穴68に挿入し、固定治具88と雄ねじ89によって固定することで組み付けられる。
なお、その他の構成及び作用については、第1実施形態のものと同様である。
【0077】
図27は本発明に係る第9実施形態の変形例の主軸装置の要部断面図である。本変形例の主軸装置10に組み込まれるセンサ103は、図26に示すコネクタ接続タイプのセンサ103であり、ハウジング50には、配索穴98が工具側から加工されている。
【0078】
センサ103は、雌コネクタ104を工具側(配索穴98側)に向けた状態で、ハウジング50のセンサ取付穴68、及び外輪間座54の貫通孔54aに挿入されて固定される。これにより、雌コネクタ104は配索穴98に対向して位置する。ここで、配線83の雄コネクタ105を接続治具110に載置して配索穴98の工具側から矢印方向に挿入して、雄コネクタ105と雌コネクタ104とを接続する。ここで、接続治具110の先端部110aは、雄コネクタ105が回転せず、且つ、軸方向後方へ移動しないように位置決めされており、雌コネクタ104との接続を確実に行うことができ、且つ、接続後に接続治具110を取り外すことができる。配索穴98から導出する配線83は、配索溝99内に収容して前側軸受外輪押え53を取り付ける。これにより、センサ103をハウジング50に取り付けた後に、配線83をセンサ103に接続することができる。
【0079】
(第10実施形態)
図28は、本発明に係る第10実施形態の主軸装置の要部断面図である。本実施形態の主軸装置10に組み込まれるセンサ82(即ち、樹脂製のセンサケース)は、その大径部82aの外周面から軸方向両側に向かって延出するフランジ部82d,82dを有する。
【0080】
フランジ部82dには穴82daが設けられており、その内部には金属製の補強リング120が一体成型されている。補強リング120は、穴82daよりも軸方向に長く、フランジ部82dの表裏面から突出する。そして、雄ねじ89を、補強リング120の内部を通じて、ハウジング50の雌ねじ69に螺合することによって、センサ82は固定される。
【0081】
このように、固定治具88を使用せずに、センサ82に設けたフランジ部82d,82dによってセンサ82をハウジング50に固定する場合、補強リング120を設けず、フランジ部82dを雄ねじ89で直接締め付けようとすると樹脂製のセンサ82に、強度不足による破損、クリープ変形による緩み、変位による不具合等が発生する可能性がある。
【0082】
一方、本実施形態のセンサ82は、金属製の補強リング120を穴82da内部に一体成型したことにより、補強リング120のみで雄ねじ89の締付力を受け、フランジ部82dに締付力が伝わることを防止できる。これによって、フランジ部82dの破損、クリープ変形による緩み、変位による不具合の発生等を防ぐことができる。
【0083】
なお、本実施形態のセンサ82では、大径部82aから軸方向両側に向かってフランジ部82d,82dが延設されるとしたが、必ずしもこの形状には限定されない。例えば、軸方向一箇所のみにフランジ部82dが設けられてもよい。
その他の構成及び作用については、第1実施形態のものと同様である。
【0084】
尚、本発明は、前述した各実施形態及び変形例に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。また、各実施形態及び変形例は、実施可能な範囲において組み合わせて適用することができる。
例えば、図29に示すように、本発明の主軸装置10は、冷却油溝を備えないハウジング50にも同様に適用することができ、この場合、センサ82の大径部82aに装着するOリングを省略することができる。
また、図30に示すように、配線83が大径部82aの上面から導出されるようにすることで、配索穴を設ける必要がなくなり、加工上有利となる。
【0085】
さらに、図31に示すように、配線付のセンサ82、103に代えて、検出信号を無線で出力可能な無線式センサ111を用いれば、ハウジング50への配索穴の加工が不要となる。
【0086】
また、図32に示すように、エンコーダ84は、反工具側に配置された前側軸受30の内輪32と、回転軸11の段部11aとの間に配設されて前側軸受30の軸方向位置を調整する調整用内輪間座112の外周面に設けるようにしてもよい。この場合、センサ82は、前側軸受30の外輪31と、ハウジング50の段部50cとの間に配設された調整用外輪間座113の貫通孔113aを貫通してエンコーダ84の被検出面に対向配置される。
【0087】
さらに、上記の各実施形態では、エンコーダ84は内輪間座81によって構成されているが、図33に示すように、内輪間座81の代わりに、工具側に配置された前側軸受20の内輪22を内輪間座81のスペースに延出するように幅広に形成し、内輪22の外周面に直接、上記実施形態と同様のハの字形状のエンコーダ84を形成してもよい。なお、エンコーダ84は、反工具側に配置された前側軸受30の内輪32を内輪間座81と置き換わるように幅広に形成し、内輪32の外周面に直接形成してもよい。
【0088】
このような構成においても、センサ82が外輪間座54に形成された貫通孔54aから延出して、エンコーダ84の被検出面に対向配置されるので、新たな専用スペースを設けることなく既存のスペースにセンサユニットを配置することができ、センサ付軸受装置を小型化することができる。特に、第1実施形態の図4にも示したように、外輪間座54にノズル穴54bが更に形成され、ノズル穴54bに給油ノズル67が設けられることで、センサ82と給油ノズル67をコンパクトに配置することができる。
【0089】
また、上記の各実施形態及び変形例においてアンギュラ軸受は、背面組合せされたものとして説明したが、これに限定されることはなく正面組合せとすることもできる。また、前側軸受のアンギュラ軸受の列数や組合せの方向等についても限定されるものでない。
さらに、本発明のエンコーダは、回転側間座によって構成されればよく、内輪が静止側軌道輪で、外輪が回転側軌道輪である場合には、回転側間座としての外輪間座に構成されてもよい。また、本発明の軸受装置は、工作機械の主軸装置の他、工作機械の円テーブルや、ボールねじ、鉄道車両、航空機、自動車等の回転部材が軸受によって支持され、該回転部材にアキシャル荷重が作用する箇所に適用可能である。
【0090】
加えて、スピンドル軸のアキシャル荷重を測定可能な、本実施形態の主軸装置10は、工作機械に組み込んで適用可能であり、例えば、図34に示すような門形マシニングセンタ201に装着される。具体的に、門形マシニングセンタ201では、ベッド202の上にテーブル203がX軸方向へ移動可能に支持されており、ベッド202の両側には一対のコラム204が立設されている。コラム204の上端にはクロスレール205が架設されており、クロスレール205には、サドル206がY軸方向へ移動可能に設けられる。また、サドル206には、Z軸方向に昇降可能なラム207が支持されており、ラム207の下端には、主軸装置10をY軸回り及びZ軸回りに回転割出し駆動可能に保持する主軸ヘッド208が装着されている。主軸ヘッド208の2本の支持アーム208a内には、図示しないチルト機構が設けられており、主軸装置10は、このチルト機構によってブラケット209を介してY軸回りに回転割出しされる。
【符号の説明】
【0091】
10 主軸装置
11 回転軸(回転部材、スピンドル軸)
20 アンギュラ玉軸受(前側軸受)
21 外輪(静止側軌道輪)
22 内輪(回転側軌道輪)
23 玉(転動体)
30 アンギュラ玉軸受(前側軸受)
31 外輪(静止側軌道論)
32 内輪(回転側軌道論)
33 玉(転動体)
50 ハウジング(静止部材)
54 外輪間座(静止側間座)
54a 貫通孔
80 センサユニット
81 内輪間座(回転側間座)
82 センサ
84 エンコーダ
85 被検出用組み合わせ部
86 個性化部分
93 凸部(第1被検出部)
94 凹部(第2被検出部)
90 磁気センサ(検出部)
103 センサ
111 無線式センサ(センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止部材に嵌合固定される静止側軌道輪、回転部材に嵌合固定される回転側軌道輪、及び、前記静止側軌道輪の静止側軌道及び前記回転側軌道輪の回転側軌道間に転動自在に配置された複数の転動体を備える軸受と、
前記回転側軌道輪の側方に配置されて前記回転側軌道輪と共に回転する回転側間座と、
被検出面の特性が円周方向に交互に変化するエンコーダ、及び、該エンコーダの前記被検出面に対向配置されて前記被検出面の前記特性の変化を検出するセンサからなるセンサユニットと、を備える軸受装置であって、
前記エンコーダは、前記回転側間座によって構成され、
前記エンコーダの被検出面は、円周方向に関して変化する前記特性のピッチが、軸方向に関して連続的に変化する部分を軸方向に単列で構成することを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
前記軸受は、前記回転部材の軸方向位置を位置決めするように配置された一対の軸受を備え、
前記エンコーダを構成する回転側間座は、前記一対の軸受の回転側軌道輪間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記一対の軸受の静止側軌道論間には、静止側間座が配置されており、
前記センサは、該静止側間座に形成された貫通孔から延出して、前記エンコーダの前記被検出面に対向配置されることを特徴とする請求項2に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記エンコーダの被検出面に、それぞれが他の部分とは特性が異なる1対の個性化部分より成る複数の被検出用組み合わせ部を、円周方向に亙り等間隔で配置しており、これら各被検出用組み合わせ部を構成する1対ずつの個性化部分同士の円周方向に関する間隔は、総ての被検出用組み合わせ部で軸方向に関して同じ方向に連続的に変化していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の軸受装置。
【請求項5】
前記エンコーダの被検出面には、互いに異なる特性を有する第一被検出部と第二被検出部とが円周方向に関して交互に且つ等間隔で配置されており、前記両被検出部の円周方向に関する幅のうち、第一被検出部の幅は軸方向一端側程広く、第二被検出部の幅は軸方向他端側程広いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の軸受装置。
【請求項6】
前記エンコーダが磁性材製で、前記センサが前記エンコーダの被検出面の磁気特性の変化に対応して出力信号を変化させるものであり、前記エンコーダの軸方向両端部に、第一、第二両被検出部同士の回転方向に関するピッチが軸方向に関して変化しない平行部が存在することを特徴とする請求項5に記載の軸受装置。
【請求項7】
静止部材に嵌合固定される静止側軌道輪、回転部材に嵌合固定される回転側軌道輪、及び、前記静止側軌道輪の静止側軌道及び前記回転側軌道輪の回転側軌道間に転動自在に配置された複数の転動体を備える軸受と、
被検出面の特性が円周方向に交互に変化するエンコーダ、及び、該エンコーダの前記被検出面に対向配置されて前記被検出面の前記特性の変化を検出するセンサからなるセンサユニットと、を備える軸受装置であって、
前記エンコーダの被検出面は、円周方向に関して変化する前記特性のピッチが、軸方向に関して連続的に変化する部分を軸方向に単列で構成すると共に、
前記センサは、前記静止側軌道輪の側方に配置された静止側間座に形成された貫通孔から延出して、前記エンコーダの前記被検出面に対向配置されることを特徴とする軸受装置。
【請求項8】
前記静止側間座には、前記貫通孔と異なる円周方向位相にノズル穴が形成されており、該ノズル穴から給油ノズルが延出して配置されることを特徴とする請求項7に記載の軸受装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の軸受装置を備え、前記回転部材であるスピンドル軸のアキシャル荷重が測定可能であることを特徴とする工作機械の主軸装置。
【請求項10】
請求項9に記載の主軸装置を備えたことを特徴とする工作機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate


【公開番号】特開2012−67906(P2012−67906A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235639(P2010−235639)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】