説明

軸受装置

【課題】給油ユニットをコンパクト化して潤滑対象となる転がり軸受又はこれに突き合わされた間座に組み入れることにより、外部装置との間の配管・配線の必要のない軸受装置を提供することである。
【解決手段】転がり軸受11、給油ユニット13の組み合わせからなる軸受装置10において、前記給油ユニット13は環状のタンク26、そのタンク26に連通したノズル35、ノズルの開閉弁41、インペラ40及びインペラ駆動部50により構成され、前記タンク26は固定側の外輪間座25に固定され、前記インペラ40はタンク26の内周壁面27に回転自在に嵌合され、前記インペラ駆動部50は、インペラ40が内輪間座24と回転すき間をおいて磁気的に結合された構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機スピンドル等における転がり軸受とこれに潤滑油を供給する給油ユニットの組み合わせからなる軸受装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機スピンドルの転がり軸受に潤滑油を供給する装置として、スピンドルの外部にタンク、ポンプ等を設置し、潤滑油を配管によってスピンドルの転がり軸受内部に供給する給油ユニットが従来から知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−130593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来の給油ユニットは、潤滑油のタンク、ポンプ等の潤滑装置が、潤滑対象となる転がり軸受、その転がり軸受を含むスピンドルから離れた場所に設置されるため、配管の取り回しが必要となり、装置全体の取り付けに手間が掛かる不具合がある。
【0005】
また、タンクとポンプは別の構造体であるので、ポンプは、潤滑油を加圧してこれを軸受側へ吐出する機能のほかに、タンクから潤滑油を吸引する機能を備える必要がある。その結果、給油ユニットが大型化する問題がある。
【0006】
そこで、この発明は、給油ユニットをコンパクト化して潤滑対象となる転がり軸受又はこれに突き合わされた間座に組み入れることにより、外部装置との間の配管・配線の必要のない軸受装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、この発明に係る軸受装置は、転がり軸受、給油ユニットの組み合わせからなる軸受装置において、前記給油ユニットは潤滑油を溜める環状のタンク、前記タンクに連通したノズル、前記ノズルの開閉弁、インペラ及びインペラ駆動部により構成され、前記タンクは前記転がり軸受の固定輪又はこれに隣接した固定側間座のいずれかに固定され、前記インペラは前記タンクの内周壁面に回転自在に嵌合され、前記インペラ駆動部は、前記インペラが前記転がり軸受の回転輪又はこれに隣接した回転側間座のいずれかと回転すき間をおいて磁気的に結合された構成としたものである。
【0008】
前記のタンクはそのままポンプ室となるので、インペラを回転させてタンク内部の潤滑油を加圧してノズルから吐出させるだけよく、タンク内部に潤滑油を吸引する機能は不要となる。また、インペラは回転輪又は回転輪側間座の回転と磁気的結合によって回転駆動されるので、インペラの駆動に電源は不要である。
【0009】
前記開閉弁の構成として、タンクに連通した弁室、その弁室内に収納した弁体及び付勢ばねにより構成し、前記弁室にノズルを連通するとともに、前記タンクと弁室の連通部分に弁孔を設け、前記付勢ばねにより弁体が弁室側から弁孔を常時閉鎖し、前記付勢ばねのばね力よりもタンク内の圧力が高くなったときに前記弁孔が開放される構造を採ることができる。この構成の開閉弁は、構造が簡単であり、開閉の条件が一律に決まる特徴がある。
【0010】
また、前記給油ユニットは径方向に広がり軸方向に二分する隔壁により前記タンクと制御室に二分され、前記制御室は前記開閉弁の駆動部、制御部及び電源部が内蔵された構成を採ることができる。この場合の開閉弁の作動は各種の条件に応じて自動的に制御される。
【0011】
なお、この発明においては、回転輪及び回転側間座を総称するときは回転側環状部材、固定輪及び固定側間座を総称するときは固定側環状部材という。
【発明の効果】
【0012】
(1)回転側環状部材の回転によってタンク内の潤滑油の圧力を高くすることができるため、タンク内に負圧部分を作って外部から潤滑油を吸引する必要がない。これにより装置がコンパクト化されるとともに、無駄なエネルギーの消費を避けることができる。
【0013】
(2)装置がコンパクト化されることにより、回転側環状部材と固定側環状部材の間に給油ユニットを組み込むことができ、省スペース化を図ることができる。
【0014】
(3)開閉弁の駆動を電気的に制御する手段を採用する場合においても、その電源は回転側環状部材の回転を利用して発電を行うため、省エネルギー化に資することができる。
【0015】
(4)(3)の場合において、開閉弁の弁体は常に閉鎖方向に付勢され、給油が必要なときのみ駆動部に通電するため、エネルギーの消費が少なくて済む。
【0016】
(5)開閉弁は、弁体と付勢ばねによって構成されるので、これを閉鎖するための電力を必要としない。
【0017】
(6)開閉弁の弁体をタンク内の圧力で開放させる構成の場合は弁体の開放作用に電力を必要とせず、インペラの駆動に電力が不要であることと相まって、電力を全く必要としない軸受装置を実現することできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実施形態1の軸受装置の断面図である。
【図2】図2は、実施形態1のタンクの断面図である。
【図3】図3は、図2のX2−X2線の断面図である。
【図4】図4は、図1のX1−X1線の断面図である。
【図5】図5は、図4の一部拡大断面図である。
【図6】図6は、図1の一部拡大断面図である。
【図7】図7は、実施形態2の軸受装置の断面図である。
【図8】図8は、実施形態2のタンクの断面図である。
【図9】図9は、図7のX3−X3線の断面図である。
【図10】図10は、図7の一部拡大断面図である。
【図11】図11は、給油ユニットのブロック図である。
【図12】図12は、実施形態3のスピンドルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
[実施形態1]
【0020】
図1から図6に示した実施形態1に係る軸受装置10は、転がり軸受11、その軸方向の一端部に突き当てられた間座12及び間座12に組み込まれた給油ユニット13により構成される。軸受装置10及び間座12は、回転軸14とハウジング15の間に軸方向の位置決めを行って取り付けられる。
【0021】
転がり軸受11は、回転輪である内輪16、固定輪である外輪17及びこれらの軌道溝18、19の間に介在された所要数の転動体21、その転動体21を一定間隔に保持する保持器22により構成される。例えば、アンギュラ玉軸受が用いられる。転がり軸受11の間座12と反対側の端面において、内輪16と外輪17の間にシール部材23が装着される。
【0022】
間座12は、回転側間座である内輪間座24と固定側間座である外輪間座25とから成り、内輪間座24は前記内輪16の端面に突き当てられた状態で回転軸14に嵌合固定される。外輪間座25は外輪17の端面に突き当てられた状態でハウジング15の内周壁面に嵌合固定される。
【0023】
前記の給油ユニット13は、外輪間座25の内周壁面に取り付けられた環状樹脂製のタンク26と、そのタンク26に内蔵された後述のインペラ40及び開閉弁41とにより構成される。給油ユニット13は、幅の広い内輪16及び外輪17を用いた場合は、その外輪17の内周面の肩部に取り付けることができる。その場合の間座12は本来の間座としてのみの機能を果たす。
【0024】
この実施形態1においては、図示のように、間座12に給油ユニット13を取り付ける構成を採用している。前記タンク26は同時に給油ユニット13のケーシングの機能を有する。
【0025】
なお、回転輪(図示の場合内輪16)及び回転側間座(同内輪間座24)を総称するときは回転側環状部材という。固定輪(同外輪17)及び固定側間座(同外輪間座25)を総称するときは固定側環状部材という。
【0026】
タンク26は、内輪間座24と外輪間座25の間に介在される断面四角形の空洞の環状部材であり、内輪間座24の外周面に沿った内周壁面27(図2参照)、外輪間座25の内周面に沿った外周壁面28を有する。また、内周壁面27と外周壁面28の内側面(転がり軸受11側の面)と外側面を閉塞する環状の内側壁29と外側壁31とを有する。外壁面31は、タンク26の蓋ともなっている。
【0027】
図3に示したように、タンク26の外周壁面28の内径面の一部には軸方向の全体に渡る凹部33が設けられる。内径面の半径Rは、その凹部33の一端を起点aとし、他端部を終点bとして後述のインペラ40の回転方向(矢印A参照)に見た場合、起点aの部分の半径Rは最小(但し、インペラ40の回転半径よりは大きい。)であり、回転方向に漸増し終点bにおいて最大となる肉厚をもつように形成される。
【0028】
前記凹部33に対向した内側壁29の一部に設けられた円形孔32の外側に弁室34が設けられ、その弁室34の先端にノズル35が連通されている。ノズル35は転がり軸受11の内部に延び出す。前記円形孔32に弁孔部材34aが取り付けられ、その弁孔34bによってタンク26の内部と弁室34の内部は連通している。
【0029】
前記タンク26に潤滑油を充填するための開口が外側壁31の適宜位置に設けられ、その開口を閉塞する閉塞栓37が嵌められる。この閉塞栓37に空気孔を設け、タンク26の内部が負圧になるのを防止することが望ましい。その空気孔には外部の空気を通過させ内部の潤滑油の漏出を防止するフィルターを装着する。
【0030】
外輪間座25の内周壁面に浅い円周溝39が設けられる(図1参照)。その円周溝39に接着剤が塗布され、接着剤溜まりとなっている。タンク26の外周壁面28は、外輪間座25の内周壁面に密着され、前記接着溜まりの接着剤によって外輪間座25の内周壁面に接着固定される。タンク26の内周壁面27は内輪間座24との間に所要の回転すき間xをおいて対向する。
【0031】
前記タンク26に内蔵されたインペラ40は、図1に示したように、タンク26の内周壁面27に回転自在に嵌合された環状のボス部42と、そのボス部42の外周面に周方向に一定間隔をおいて配置された多数の凸部43(図4参照)によって形成される。ボス部42の内径面とタンク26の内周壁面27とは摺動回転するものであるため、これらの部材は低摩擦係数の材質を選択することが望ましい。例えば、ポリアセタール樹脂などが挙げられる。
【0032】
前記ボス部42の内周面に2列の円周溝44が設けられ、各円周溝44に環状の多極磁石45が装着される。各多極磁石45の露出面はボス部42の内周壁面と同一面となる。
【0033】
ボス部42の2列の多極磁石45に対向して内輪間座24の外周壁面にも円周溝46が設けられ、同様に環状の多極磁石47が装着される。回転すき間x及び内周壁面27を挟んで径方向に対向した多極磁石45、47は同極数に着磁され、磁気カップリング48を構成する(図1、図5参照)。
【0034】
インペラ駆動部50(図1参照)は、ボス部42が内輪間座24に対し磁気カップリング48によって磁気的に結合されることにより構成される。内輪間座24のトルクが磁気カップリング48を経てボス部42に伝達されることにより、インペラ40が駆動されることになる。
【0035】
前記の多極磁石45、47は、フェライト、希土類などの磁性粉をNBR(ニトリルゴム)などをバインダとして混ぜ合わせて加硫成形し、これに着磁を施したものを前記円周溝44,46に接着固定する。前記接着方法以外に、前記ボス42の円周溝44、46にフェライト、希土類などの磁性粉をNBRなどをバインダとして混ぜ合わせたものを装着し、そのゴム磁性材料をボス部42に加硫接着し、これに着磁を施す方法もある。
【0036】
また、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)などをバインダとしたプラスチック磁石、焼結製の磁石のセグメントを前記円周溝44、46に接着する方法もある。
【0037】
前記のタンク26、その内部に回転自在に収納されたインペラ40及びインペラ駆動部50によってポンプ53(図1、図4参照)が構成される。潤滑油を充填したタンク26の内部においてインペラ40が回転すると、凹部33近辺の潤滑油の圧力が高められる。インペラ40を構成する周方向の多数の凸部43が設けられ、また凸部43とタンク26の内周面のすき間yが前述の起点aから終点bに至るに従い大きくなることにより、インペラ40の回転に伴って潤滑油の圧力の上昇が図られる。
【0038】
前記開閉弁41は、図6に示したように、前述の弁室34、その弁室34の内部に収納された球形の弁体49、弁体49の付勢ばね51により構成され、前記の弁孔34bに対し弁室34側から弁体49が突き当てられる。弁体49とノズル35の周りのばね座52との間に付勢ばね51が介在され、そのばね力により弁体49が一定の圧力をもって弁孔34bに押し当てられ、弁孔34bを弁室34側から常時閉塞する。
【0039】
前記ノズル35は、タンク26の内側壁29から転がり軸受11の外輪17の軌道溝19に向けて突き出す。外輪17の間座12側の肩部には、弁室34及びノズル35との干渉を避けるため、切欠き部54、55(図1参照)が段差状に設けられる。
【0040】
実施形態1の軸受装置10は以上のように構成され、次にその作用について説明する。タンク26にはあらかじめ潤滑油が充填されているものとする。
【0041】
回転軸14が回転すると、図1に示したように、これと一体の内輪16及び内輪間座24が回転する。外輪17、外輪間座25、外輪間座25に取り付けられたタンク26は静止状態にある。内輪間座24の回転に伴い、インペラ駆動部50を構成する磁気カップリング48によって内輪間座24と磁気的に結合されたインペラ40が回転し、ポンプ53が駆動される。
【0042】
インペラ40の回転に伴いタンク26内の潤滑油の圧力が一定以上に上昇すると、付勢ばね51のばね力に打ち勝って開閉弁41の弁体49を後退させ弁孔34bを開放する。これにより、タンク26内の潤滑油が弁室34及びノズル35を経て軌道溝19に向けて吐出され軸受内部の潤滑に供される。
[実施形態2]
【0043】
図7から図10に示した実施形態2の軸受装置10は、間座12の間に設けられる給油ユニット13を、前記実施形態1のタンク26に加え、開閉弁41の制御を電気的に行うための制御室59によって構成したものである。
【0044】
給油ユニット13を構成するケーシング57は、図8に示したように、軸方向中間部分において径方向の環状の隔壁58によって軸方向に二分される。転がり軸受11側が実施形態1の場合と同様の構成をもったタンク26、反対側が制御室59となっている。
【0045】
タンク26は、実施形態1の場合に比べ、軸方向の幅が小さくなり、インペラ40の幅も小さくなっているが、開閉弁41の構成を除き他の構成は同一である。この場合の開閉弁41の弁室34は、図10に示したように、タンク26の内周面に形成された前記凹部33(図9参照)の部分と、転がり軸受11の方向に突き出した部分によって形成される。その弁室34の先端部にノズル35が連通状態に設けられる。
【0046】
弁体49は、本体部61の先端に前記ノズル35に挿入される小径の突起部62を有し、その突起部62と本体部61の段差面63にOリング64が装着される。Oリング64がノズル孔35aを囲む。突起部62の外径面とノズル35の内径面との間には潤滑油が通過可能なすき間が存在する。
【0047】
本体部61の後端面に磁性ピース65が埋め込まれ、その磁性ピース65の周囲の座繰り穴70に付勢ばね66の一端部が挿入される。付勢ばね66の他端部は隔壁58に押し当てられる。本体部61及び磁性ピース65の端面と隔壁58との間にはすき間があり、弁体49の一定量の後退を可能にしている。
【0048】
前記付勢ばね66のばね力によって段差面63のOリング64がノズル孔35aの周りに押し当てられこれを閉塞する。弁体49の開閉制御は後述の駆動部69によって行われる。
【0049】
なお、実施形態1の場合と同様に、外輪17の間座12側の肩部には、弁室34及びノズル35との干渉を避けるため、切欠き部54、55が段差状に設けられる(図7参照)。
【0050】
前記制御室59には電源部67、制御部68、駆動部69等が収納される(図7、図11参照)。電源部67は、制御室59の内周壁面27に取り付けられた鉄心71(図7参照)とこれに巻かれた電磁コイル72からなる静止部が制御室59に設けられる。電磁コイル72に対向した回転部である環状の多極磁石73は内輪間座24の外周壁面に取り付けられる。
【0051】
内輪間座24の回転に伴い電磁コイル72と対向する多極磁石73の磁極が変化することにより、電磁コイル72の両端に交流電力が発生する。その交流電力を整流器等の交直変換器によって直流電力に変換したのち、電源部67の適宜位置に設けられた電気二重層キャパシタに蓄えられる。電気二重層キャパシタに蓄えられた電力は、駆動部69及び制御部68の電源として供給される。
【0052】
駆動部69は、鉄心77に電磁コイル78を巻いた電磁石により構成され(図10参照)、前記弁体49の端面が対向した隔壁58の反対面に取り付けられる。駆動部69に通電されると隔壁58を挟んで弁体49の磁性ピース65に磁力を及ぼし、弁体49を隔壁58側へ引き寄せる。これにより弁体49はノズル孔35aを開放する。
【0053】
制御部68はCPU等により構成され、軸受装置10の適宜位置に設置された外輪温度センサー74、前記電気二重層キャパシタの充電量検知センサー75、軸受の駆動開始からの経過時間を計測する充電時間計測タイマー76等の検知部材から所定の信号が入力され、これらの信号に基づき駆動部69を制御し、開閉弁41の開閉作用によって潤滑油の供給を調整する。
【0054】
制御部68は、電気二重層キャパシタの充電量が一定以上に達したことが前記充電量検知センサー75に検知されたとき、外輪の温度が一定以上に達したことが外輪温度センサー74により検知されたとき、軸受駆動後において一定の時間間隔を経過したことが充電時間計測タイマー76によって計測されたとき等において、電気二重層キャパシタに蓄電された電力を駆動部69に通電(放電)する。
【0055】
実施形態2の軸受装置10は以上のようなものであり、回転軸14の回転に伴い内輪間座24が回転すると、給油ユニット13においてはインペラ40が回転してタンク26内の潤滑油の圧力を高める。これと同時に制御室59の電源部67において発電が行われ、その電力が電気二重層キャパシタに蓄電されたのち制御部68の制御によって駆動部69に通電される。
【0056】
制御部68はセンサー等の検知部材から得られる情報に基づき駆動部69へ通電する電力を制御する。駆動部69を構成する電磁石が励磁されると開閉弁41の弁体49が隔壁58へ吸引されノズル孔35aが開放される。ノズル孔35aの開放により、ノズル35から転がり軸受11の軌道溝19に向けて潤滑油が吐出され軸受の潤滑に供される。
【0057】
この実施形態2の場合は、開閉弁41の開閉を軸受装置10の各種環境条件に基づいて制御することができるので、実施形態1の場合に比べ一層的確に潤滑油の供給を調整することができる。
[実施形態3]
【0058】
図12に示した実施形態3は、工作機械のスピンドル79に関するものである。このスピンドル79は、ハウジング15のセンターに縦方向に回転軸14が配置され、両者の間において上下2個所軸受装置10が設けられる。図示の場合は実施形態2の軸受装置10を使用したものを示しているが、実施形態1の軸受装置10を使用することもできる。
【符号の説明】
【0059】
A 回転方向
x 回転すき間
y すき間
10 軸受装置
11 転がり軸受
12 間座
13 給油ユニット
14 回転軸
15 ハウジング
16 内輪
17 外輪
18、19 軌道溝
21 転動体
22 保持器
23 シール部材
24 内輪間座
25 外輪間座
26 タンク
27 内周壁面
28 外周壁面
29 内側壁
31 外側壁
32 円形孔
33 凹部
34 弁室
34a 弁孔部材
34b 弁孔
35 ノズル
35a ノズル孔
37 閉塞栓
39 円周溝
40 インペラ
41 開閉弁
42 ボス部
43 凸部
44 円周溝
45 多極磁石
46 円周溝
47 多極磁石
48 磁気カップリング
49 弁体
50 インペラ駆動部
51 付勢ばね
52 ばね座
53 ポンプ
54、55 切欠き部
57 ケーシング
58 隔壁
59 制御室
61 本体部
62 突起部
63 段差面
64 Oリング
65 磁性ピース
66 付勢ばね
67 電源部
68 制御部
69 駆動部
70 座繰り穴
71 鉄心
72 電磁コイル
73 多極磁石
74 外輪温度センサー
75 充電量検知センサー
76 充電時間計測タイマー
77 鉄心
78 電磁コイル
79 スピンドル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受、給油ユニットの組み合わせからなる軸受装置において、前記給油ユニットは潤滑油を溜める環状のタンク、前記タンクに連通したノズル、前記ノズルの開閉弁、インペラ及びインペラ駆動部により構成され、前記タンクは前記転がり軸受の固定輪又はこれに隣接した固定側間座のいずれかに固定され、前記インペラは前記タンクの内周壁面に回転自在に嵌合され、前記インペラ駆動部は、前記インペラが前記転がり軸受の回転輪又はこれに隣接した回転側間座のいずれかと回転すき間をおいて磁気的に結合された構成であることを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
前記固定輪又は固定側間座のいずれかの固定側環状部材の内周壁面に接着剤溜まりが設けられ、前記タンクが前記ノズルを転がり軸受の内部に臨ませた姿勢で前記固定側環状部材の内周壁面に前記接着剤溜まりの接着剤により接着されたことを特徴とする請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記タンクは前記回転輪又は回転側間座のいずれかの回転側環状部材に回転すき間をおいて対向した内周壁面を有し、その内周面に前記インペラの環状のボス部が回転自在に嵌合され、前記ボス部と前記回転側環状部材にそれぞれ対向状に設けられた環状の多極磁石とにより磁気カップリングが構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記インペラは、ボス部とその外周面に周方向に一定間隔をおいて配置された多数の凸部によって形成され、前記インペラを収納した潤滑油タンクの内周壁面の半径が前記ノズルの部分を起点としてインペラの回転方向に漸増する形状であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の軸受装置。
【請求項5】
前記開閉弁は、前記タンクに連通した弁室、その弁室内に収納された弁体及び付勢ばねにより構成され、前記弁室に前記ノズルが連通され、前記タンクと弁室の連通部分に弁孔が設けられ、前記付勢ばねにより前記弁体が弁室側から弁孔を常時閉鎖し、前記付勢ばねのばね力よりもタンク内の圧力が高くなったときに前記弁孔が開放されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の軸受装置。
【請求項6】
前記給油ユニットは径方向に広がり軸方向に二分する隔壁により前記タンクと制御室に二分され、前記制御室に開閉弁の駆動部、制御部及び電源部が内蔵されたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の軸受装置。
【請求項7】
前記開閉弁は、前記タンクと連通した弁室、その弁室に収納された弁体及び弁体の付勢ばねにより構成され、前記弁室に前記ノズルが連通され、前記弁体はその一端部が弁室側のノズル孔に臨むとともに、他端部と前記隔壁の間に付勢ばねが介在され、そのばね力により前記ノズル孔を常時閉鎖し、前記弁体の隔壁側の端面に磁性体が設けられたことを特徴とする請求項6に記載の軸受装置。
【請求項8】
前記駆動部は前記隔壁を挟んで前記磁性体に対向して設置された電磁石によって構成され、前記電磁石に通電されたとき前記弁体を隔壁側へ吸引駆動することにより前記開閉弁を開放させることを特徴とする請求項6又は7に記載の軸受装置。
【請求項9】
前記電源部は電磁コイルと多極磁石の組み合わせによりなる発電機により構成され、前記電磁コイルが前記給油ユニットの内周壁面に設けられ、前記多極磁石が回転すき間を介して前記回転側環状部材に設けられたことを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の軸受装置。
【請求項10】
前記電源部は交直変換器及び電気二重層キャパシタを含み、前記発電機によって発電された交流電力を直流電力に変換してその直流電力を前記の電気二重層キャパシタに蓄電し、蓄電された電力を前記駆動部及び制御部の電源とすることを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載の軸受装置。
【請求項11】
前記制御部は、軸受温度センサー、前記電気二重層キャパシタの充電量検知センサー、前記電気二重層キャパシタの充電時間計測タイマー等の検知部材を1以上含み、前記検知部材の出力信号に基づき前記駆動部を制御することを特徴とする請求項6から10のいずれかに記載の軸受装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の軸受装置を用いたことを特徴とするスピンドル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−76428(P2013−76428A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215088(P2011−215088)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】