説明

軸流ファン

【課題】軸流羽根車及びモータを専用設計することなく、羽根車の面振れや心振れを抑え、許容トルクの制限を受けにくくすることが可能なアウターロータ型モータを使用した軸流ファンを提供する。
【解決手段】軸流ファン(10)は、軸流羽根車(20)と、モータ(30)と、ファン固定部材(40)とを有する。軸流羽根車(20)は、円筒形状のハブ外周部(22)を有するハブ(21)と、プロペラ形状の翼(28)とを有する。モータ(30)は、軸流羽根車(20)を回転駆動するアウターロータ型のモータである。ファン固定部材(40)は、径方向内周部(50)と、径方向外周部(60)とを含んでいる。径方向内周部(50)は、アウターロータ(32)に固定される。径方向外周部(60)は、ハブ外周部(22)に接触しており、ハブ外周部(22)に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸流ファン、特に、空気調和装置の室外ユニットに使用される軸流ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、図1のような横向きに空気を吹き出す型式の空気調和装置の室外ユニット1に使用される軸流ファン2として、ハブの外周部にプロペラ翼が形成された軸流羽根車3と、軸流羽根車を回転駆動するインナーロータ型のモータ4とを備えたものが、従来から広く用いられている。尚、室外ユニットとしては、図1のような横向きに空気を吹き出す型式だけでなく、上向きに空気を吹き出す型式等の種々の型式があるが、いずれの型式の室外ユニットにおいても、図1のようなインナーロータ型のモータ4を使用した軸流ファン2が広く用いられている。この軸流ファン2では、モータ4のインナーロータから突出した回転軸の先端に、軸流羽根車3のハブの中央部に設けられたボスを固定した構造を有している。
【0003】
また、空気調和装置の室外ユニットに使用される軸流ファンとして、特許文献1(特開平3−275998号公報)のような、アウターロータ型のモータによって軸流羽根車を回転駆動する構造の軸流ファンも提案されている。この軸流ファンでは、モータのアウターロータから継手ハブと呼ばれる軸状の部材を突出させて、この継手ハブの先端に、軸流羽根車のハブの中央部を固定した構造を有している。
【0004】
さらに、軸流ファンではないが、特許文献2(特開2008−223666号公報)のような、アウターロータ型のモータによって多翼羽根車を回転駆動する構造の遠心多翼ファンも提案されている。この遠心多翼ファンでは、アウターロータカップと呼ばれる部材によって多翼羽根車とアウターロータとを兼用することでモータを多翼羽根車と一体化した構造を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記インナーロータ型のモータを使用した軸流ファンでは、モータの回転軸の先端に固定される軸流羽根車のボスの位置精度が悪いと、軸流羽根車の面振れや心振れが生じやすくなる。また、この軸流ファンでは、モータのトルクを回転半径の小さいボスを介して伝達するため、ボス(すなわち、ハブの中央部)に非常に大きな力が加わり、その結果、軸流羽根車の許容トルクが制限を受けざるを得なくなっている。
【0006】
これに対して、軸流ファンに対してアウターロータ型のモータを採用し、特許文献2のアウターロータ型のモータを使用した遠心多翼ファンのように、アウターロータ型のモータを多翼羽根車と一体化した構造にすることが考えられる。そうすれば、上記インナーロータ型のモータを使用した軸流ファンに比べて、アウターロータの外周部という回転半径の大きい部分でモータのトルクを伝達するため、軸流羽根車の面振れや心振れが生じにくくなり、また、軸流羽根車の許容トルクが制限を受けにくくなる。
【0007】
ところが、空気調和装置の室外ユニットは、空調能力等に応じた多数のクラスがある。このため、空気調和装置の室外ユニットに使用される軸流ファンについても、要求される送風性能やモータ動力、コストに応じて、数種類の軸流羽根車と数種類のモータとを組み合わせることによって構成されることが通常である。具体的には、空気調和装置の室外ユニットに使用される軸流ファンは、軸流羽根車とモータとの組み合わせが一様ではなく、例えば、ある大きさのロータを有するモータに対して、ハブの大きさが異なる複数の軸流羽根車を組み合わせて設計される等によって構成されている。すなわち、空気調和装置の室外ユニットに使用される軸流ファンは、個別に設計された軸流羽根車と個別に設計されたモータとが組み合わされる、いわゆる軸流羽根車及びモータの個別設計がなされるものである。このため、空気調和装置の室外ユニットに使用される軸流ファンでは、特許文献2のアウターロータ型のモータを使用した遠心多翼ファンとは異なり、アウターロータ型のモータを軸流羽根車と一体化した構造にする、いわゆる軸流羽根車及びモータが専用設計された構造を適用することが困難である。
【0008】
このように、空気調和装置の室外ユニットに使用される軸流ファンに対してアウターロータ型のモータを採用しようとすると、軸流羽根車及びモータの個別設計に対応することができるように、特許文献1のアウターロータ型のモータを使用した軸流ファンのような、アウターロータと軸流羽根車のハブの中央部とを軸状の部材を介して固定した構造を採用することになる。しかし、特許文献1のアウターロータ型のモータを使用した軸流ファンでは、上記インナーロータ型のモータを使用した軸流ファンと同様に、軸流羽根車の面振れや心振れという問題、及び、軸流羽根車の許容トルクの制限という問題が生じる。
【0009】
本発明の課題は、軸流羽根車及びモータを専用設計することなく、羽根車の面振れや心振れを抑え、また、許容トルクの制限を受けにくくすることが可能な軸流ファンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の観点にかかる軸流ファンは、軸流羽根車と、モータと、ファン固定部材とを有している。軸流羽根車は、円筒形状のハブ外周部を有するハブと、ハブ外周部に形成されたプロペラ形状の翼とを有する。モータは、軸流羽根車を回転駆動するアウターロータ型のモータである。ファン固定部材は、軸流羽根車をモータに連結する部材であり、径方向内周部と、径方向外周部とを含んでいる。径方向内周部は、モータのアウターロータに固定される部分である。径方向外周部は、ハブ外周部に接触しており、ハブ外周部に固定される部分である。
【0011】
この軸流ファンでは、アウターロータ型のモータと軸流羽根車との連結に上記のファン固定部材を介在させるようにしているため、個別設計された軸流羽根車及びモータとを組み合わせた構造において、モータからのトルク伝達を回転半径が大きいハブ外周部を介して行うことができる。
【0012】
これにより、軸流羽根車及びモータを専用設計することなく、軸流羽根車の面振れや心振れを抑え、また、許容トルクの制限を受けにくくすることが可能なアウターロータ型のモータを使用した軸流ファンを提供することができる。
【0013】
第2の観点にかかる軸流ファンは、第1の観点にかかる軸流ファンにおいて、径方向外周部が、ハブ外周部を内周側及び外周側から挟み込む形状を有している。
【0014】
この軸流ファンでは、径方向外周部とハブ外周部との接触面積を大きくすることができるとともに、ハブ外周部に径方向外周部を径方向両側から押圧することができるため、モータからのトルク伝達をさらに良好にするとともに、ハブ外周部と径方向外周部との固定を強固にすることができる。
【0015】
第3の観点にかかる軸流ファンは、第1又は第2の観点にかかる軸流ファンにおいて、ファン固定部材が、径方向内周部と径方向外周部との間に、径方向外周側に向かって延びて径方向内周部と径方向外周部との間を繋ぐ寸法調整部をさらに有している。
【0016】
この軸流ファンでは、寸法調整部の径方向寸法を変更することによって、ファン固定部材の基本的な形状(すなわち、径方向内周部及び径方向外周部を有する形状)を変更することなく、個別設計された軸流羽根車及びモータを用いて軸流ファンを構成する場合に生じるアウターロータとハブとの径方向寸法差を吸収することができる。
【0017】
第4の観点にかかる軸流ファンは、第1〜第3の観点のいずれかにかかる軸流ファンにおいて、径方向内周部が、アウターロータの径方向外周部に接触している。
【0018】
この軸流ファンでは、モータからのトルク伝達を回転半径が大きいアウターロータの径方向外周部を介して行うことができる。特に、径方向内周部がアウターロータの径方向外周面に接触する場合には、径方向内周部とアウターロータとの接触面積を大きくすることができるため、モータからのトルク伝達をさらに良好にするとともに、径方向内周部とアウターロータとの固定を強固にすることができる。
【0019】
第5の観点にかかる軸流ファンは、第1〜第4の観点のいずれかにかかる軸流ファンにおいて、ハブ外周部の径方向外周部と接触する部分に、ハブ側凹形状又はハブ側凸形状が形成されており、径方向外周部のハブ外周部と接触する部分に、ハブ側凹形状又はハブ側凸形状に係合する固定部材側凸形状又は固定部材側凹形状が形成されている。
【0020】
この軸流ファンでは、モータからのトルク伝達をさらに良好にするとともに、径方向外周部とハブ外周部との間の回転方向の位置ずれをなくすことができる。
【0021】
第6の観点にかかる軸流ファンは、第1〜第5の観点のいずれかにかかる軸流ファンにおいて、ファン固定部材が、ハブ外周部のうち軸流羽根車の回転軸方向の一端側の部分に固定されており、ハブ外周部のうちファン固定部材が固定されている側と反対側の部分に、ハブ外周部に固定される蓋部材が設けられている。
【0022】
この軸流ファンでは、ハブ外周部の軸方向両端を支持することができるとともに、ハブを円筒形状のハブ外周部だけもの(すなわち、ハブ外周部の開口を覆う部分や補強用のリブを有しないもの)にすることができるため、軸流羽根車を樹脂成形する場合には、軸流羽根車の成形に使用される材料を削減し、成形時の冷却時間を短縮することができ、材料費、加工費の両面でコストを削減することができる。
【0023】
第7の観点にかかる軸流ファンは、第6の観点のいずれかにかかる軸流ファンにおいて、蓋部材が、ハブ外周部を内周側及び外周側から挟み込む形状を有している。
【0024】
この軸流ファンでは、ハブ外周部に蓋部材を径方向両側から押圧することができるため、ハブ外周部と蓋部材との固定を強固にすることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0026】
第1の観点にかかる軸流ファンでは、軸流羽根車及びモータを専用設計することなく、軸流羽根車の面振れや心振れを抑え、また、許容トルクの制限を受けにくくすることが可能になる。
【0027】
第2の観点にかかる軸流ファンでは、モータからのトルク伝達をさらに良好にするとともに、ハブ外周部と径方向外周部との固定を強固にすることができる。
【0028】
第3の観点にかかる軸流ファンでは、ファン固定部材の基本的な形状を変更することなく、個別設計された軸流羽根車及びモータを用いて軸流ファンを構成する場合に生じるアウターロータとハブとの径方向寸法差を吸収することができる。
【0029】
第4の観点にかかる軸流ファンでは、モータからのトルク伝達を回転半径が大きいアウターロータの径方向外周部を介して行うことができる。
【0030】
第5の観点にかかる軸流ファンでは、モータからのトルク伝達をさらに良好にするとともに、径方向外周部とハブ外周部との間の回転方向の位置ずれをなくすことができる。
【0031】
第6の観点にかかる軸流ファンでは、軸流羽根車を樹脂成形する場合には、軸流羽根車の成形に使用される材料を削減し、成形時の冷却時間を短縮することができ、材料費、加工費の両面でコストを削減することができる。
【0032】
第7の観点にかかる軸流ファンでは、ハブ外周部と蓋部材との固定を強固にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来例の軸流ファンが採用された室外ユニットを示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態及び変形例1にかかる軸流ファンの断面図である。
【図3】図2又は図7のA部の拡大図である。
【図4】本発明の一実施形態及び変形例1にかかる軸流ファンの分解断面図である。
【図5】軸流羽根車とモータとの組み合わせを変更する場合に、ファン固定部材の寸法調整部の径方向寸法を変更する様子を示す図である。
【図6】本発明の変形例1、2にかかる軸流ファンを示す図であり、図2又は図7のI−I断面図である。
【図7】本発明の変形例2にかかる軸流ファンの断面図である。
【図8】本発明の変形例2にかかる軸流ファンの分解断面図である。
【図9】本発明の変形例3にかかる軸流ファンの断面図であって、図3に相当する図である。
【図10】本発明の変形例3にかかる軸流ファンの断面図であって、図3に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明にかかる軸流ファンの実施形態について、図面に基づいて説明する。尚、本発明にかかる軸流ファンの具体的な構成は、下記の実施形態及びその変形例に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0035】
(1)構成
図2は、本発明の一実施形態にかかる軸流ファン10の断面図である。図3は、図2のA部の拡大図である。図4は、軸流ファン10の分解断面図である。ここで、図2等における線O−Oは、軸流ファン10の回転軸線であり、以下の説明では、回転軸線O−Oに沿う方向を軸方向とし、軸方向のうち後述のモータ30側の方向を軸方向モータ側とし、軸方向モータ側とは反対の方向を軸方向羽根車側とする。また、回転軸線O−Oに直交する方向を径方向とし、径方向のうち回転軸線O−Oから外周側に向かって離れる方向を径方向外周側とし、径方向のうち回転軸線O−Oに向かって近づく方向を径方向内周側とする。
【0036】
軸流ファン10は、図1に示す従来の軸流ファン2と同様に、横向きに空気を吹き出す空気調和装置の室外ユニット1や上向きに空気を吹き出す空気調和装置の室外ユニットに使用されるものである。
【0037】
軸流ファン10は、主として、軸流羽根車20と、モータ30と、ファン固定部材40とを有している。
【0038】
軸流羽根車20は、ハブ21と、翼28とを有している。軸流羽根車20は、樹脂製の部材であり、射出成形によってハブ21及び翼28が一体成形されたものである。ハブ21は、円筒形状のハブ外周部22と、円板形状のハブ側円板部25とを有している。ハブ外周部22の軸方向モータ側の端部である第1端部23は、翼28のハブ外周部22との軸方向モータ側の付け根部分よりも軸方向モータ側へ延びている。ハブ外周部22の軸方向羽根車側の端部である第2端部24には、ハブ側円板部25が形成されている。ハブ側円板部25は、ハブ外周部22の第2端部24側の開口を覆う円板形状の部分である。翼28は、ハブ外周部22に形成されたプロペラ形状の翼である。そして、ハブ外周部22の径方向内周側には、モータ30の大部分が配置される空間が形成されている。
【0039】
モータ30は、軸流羽根車20を回転駆動するアウターロータ型のモータである。モータ30は、主として、ステータ31と、アウターロータ32とを有している。ステータ31は、ここでは図示しないが、室外ユニットのモータ支持台等によって支持されており、外部から電源供給を受けるようになっている。アウターロータ32は、ステータ31の径方向外周側に対向するように配置されている。そして、アウターロータ32は、ステータ31の軸方向モータ側の端部付近に配置された第1軸受32、及び、ステータ31の軸方向羽根車側の端部付近に配置された第2軸受33を介して、ステータ31の周囲を回転自在な状態で支持されている。そして、ステータ31が通電されると、アウターロータ32が回転駆動されるようになっている。
【0040】
ファン固定部材40は、軸流羽根車20をモータ30に連結する部材である。ファン固定部材40は、主として、径方向内周部50と、径方向外周部60とを有している。ファン固定部材40は、金属製の部材であり、板金加工等によって径方向内周部50や径方向外周部60等の各部が形成されたものである。
【0041】
径方向内周部50は、アウターロータ32に固定される部分である。径方向内周部50は、モータ30のステータ31側の部分(すなわち、第1、2軸受33、34のうちステータ31と一体となっている部分及びステータ31)に接触しない状態で、ハブ21の軸方向羽根車側の端部(ここでは、ハブ側円板部25)とモータ30の軸方向羽根車側の端部との軸方向間の空間に配置されている。径方向内周部50は、モータ30のアウターロータ32の外形に概ね沿う形状を有している。径方向内周部50は、ロータ当接部51と、固定部材側筒状部52と、固定部材側円板部53とを有している。ロータ当接部51は、アウターロータ32に接触する部分である。ここでは、ロータ当接部51は、アウターロータ32の軸方向羽根車側に配置された環形状の部分であり、アウターロータ32の軸方向羽根車側の端面の径方向外周寄りの部分に接触している。ロータ当接部51は、ネジや接着等によって、アウターロータ32に固定されている。固定部材側筒状部52は、ロータ当接部51の径方向内周側の端部から軸方向羽根車側に向かって延びる円筒形状の部分である。固定部材側円板部53は、固定部材側筒状部52の軸方向羽根車側の端部側の開口を覆う円板形状の部分である。
【0042】
径方向外周部60は、ハブ外周部22に接触しており、ハブ外周部20に固定される部分である。径方向外周部60の大部分は、モータ30のステータ31側の部分(すなわち、第1、2軸受33、34のうちステータ31と一体となっている部分及びステータ31)に接触しない状態で、ハブ外周部22とアウターロータ32との径方向間に配置されている。径方向外周部60は、内周側当接部61と、固定部材側曲げ部62と、外周側当接部63とを有している。内周側当接部61は、ハブ外周部22に接触する部分である。ここでは、内周側当接部61は、アウターロータ32の径方向外周側に配置された円筒形状の部分であり、ハブ外周部22の径方向内周側の面に接触している。内周側当接部61は、アウターロータ32の軸方向羽根車側の端部付近から軸方向モータ側に向かってハブ外周部22の軸方向モータ側の端部まで延びている。固定部材側曲げ部62は、内周側当接部61の軸方向モータ側の端部から径方向外周側に向かって延びる環形状の部分であり、ハブ外周部22の軸方向モータ側の端面に接触している。外周側当接部63は、固定部材側曲げ部62の径方向外周側の端部から軸方向羽根車側に向かって延びる円筒形状の部分であり、ハブ外周部22の径方向外周側の面に接触している。すなわち、径方向外周部60の内周側当接部61、固定部材側曲げ部62及び外周側当接部63によって、ハブ外周部22を内周側及び外周側から挟み込む形状が構成されている。これにより、径方向外周部60は、ハブ外周部22に固定されている。そして、モータ30からのトルクは、ファン固定部材40を介して、アウターロータ32からハブ外周部22に伝達されるようになっている。
【0043】
また、ファン固定部材40の径方向内周部50と径方向外周部60との間には、径方向外周側に向かって延びて径方向内周部50と径方向外周部60との間を繋ぐ寸法調整部70がさらに形成されている。より具体的には、寸法調整部70は、径方向内周部50の径方向外周側の端部(ここでは、ロータ当接部51の径方向外周側の端部)と、径方向外周部60の径方向内周側の端部(ここでは、内周側当接部61の軸方向羽根車側の端部)との間を繋ぐ環形状の部分である。ここでは、寸法調整部70は、径方向内周部50のロータ当接部51と一続きの部分になっている。これにより、アウターロータ32と径方向外周部60との径方向間には、隙間Sが形成されるようになっている。
【0044】
(2)特徴
本実施形態の軸流ファン10には、以下のような特徴がある。
【0045】
<A>
本実施形態の軸流ファン10では、アウターロータ型のモータ30と軸流羽根車20との連結に、上記のような径方向内周部50と径方向外周部60とを有するファン固定部材40を介在させるようにしている。
【0046】
このため、送風性能等を考慮して個別設計された軸流羽根車20と、モータ動力等を考慮して個別設計されたモータ30とを組み合わせた構造において、モータ30からのトルク伝達を回転半径が大きいハブ外周部22を介して行うことができる。
【0047】
これにより、この軸流ファン10では、軸流羽根車20及びモータ30を専用設計することなく、軸流羽根車20の面振れや心振れを抑え、また、許容トルクの制限を受けにくくすることができる。
【0048】
<B>
本実施形態の軸流ファン10では、ファン固定部材40の径方向外周部60の軸流羽根車20のハブ外周部22への固定構造として、上記のようなハブ外周部22を内周側及び外周側から挟み込む形状を採用している。
【0049】
このため、この軸流ファン10では、例えば、径方向外周部60として内周側当接部61だけが設けられている場合に比べて、固定部材側曲げ部62や外周側当接部63が設けられている分だけ、径方向外周部60とハブ外周部22との接触面積を大きくすることができる。
【0050】
これにより、この軸流ファン10では、モータ30からのトルク伝達をさらに良好にすることができる。
【0051】
しかも、ハブ外周部22に径方向外周部60を径方向両側から押圧することができる。
【0052】
これにより、この軸流ファン10では、例えば、径方向外周部60として内周側当接部61だけが設けられている場合に比べて、ハブ外周部22と径方向外周部60との固定を強固にすることができる。
【0053】
尚、このようなファン固定部材40の径方向外周部60の軸流羽根車20のハブ外周部22への固定構造は、ネジや接着等による固定と併用してもよい。
【0054】
<C>
本実施形態の軸流ファン10では、ファン固定部材40として、径方向内周部50と径方向外周部60との間に、径方向外周側に向かって延びて径方向内周部50と径方向外周部60との間を繋ぐ寸法調整部70をさらに有するものを採用している。
【0055】
このため、この軸流ファン10では、ファン固定部材40の寸法調整部70の径方向寸法を変更することによって、種々の軸流羽根車20とモータ30との組み合わせに対応することができる。より具体的には、例えば、図5に示すように、軸流羽根車20(ハブ外周部22の半径R)に組み合わされるモータ30を、サイズの大きいもの(アウターロータ32の半径r1、図5の実線参照)から、サイズの小さいもの(半径r2、図5の二点鎖線参照)に変更する場合には、アウターロータ32と径方向外周部60との径方向間の隙間がS1からS2に変更されるように、寸法調整部70の径方向寸法を大きくすればよい。逆に、軸流羽根車20(ハブ外周部22の半径R、図5の二点鎖線参照)に組み合わされるモータ30を、サイズの小さいもの(アウターロータ32の半径r2)から、サイズの大きいもの(半径r1、図5の実線参照)に変更する場合には、アウターロータ32と径方向外周部60との径方向間の隙間がS2からS1に変更されるように、寸法調整部70の径方向寸法を小さくすればよい。
【0056】
これにより、この軸流ファン10では、寸法調整部70の径方向寸法を変更することによって、ファン固定部材40の基本的な形状(すなわち、径方向内周部50及び径方向外周部60を有する形状)を変更することなく、個別設計された軸流羽根車20及びモータ30を用いて軸流ファン10を構成する場合に生じるアウターロータ32とハブ21との径方向寸法差を吸収することができる。
【0057】
<D>
本実施形態の軸流ファン10では、ファン固定部材40の径方向内周部50が、アウターロータ32の径方向外周部(より具体的には、アウターロータ32の軸方向羽根車側の端面の径方向外周寄りの部分)に接触している。
【0058】
これにより、この軸流ファン10では、モータ30からのトルク伝達を回転半径が大きいアウターロータ32の径方向外周部を介して行うことができる。
【0059】
(3)変形例1
上記実施形態の軸流ファン10においては、モータ30からのトルク伝達をさらに良好にすることが好ましい。そこで、本変形例の軸流ファン10では、図6(a)に示すように、ハブ外周部22の径方向外周部60と接触する部分に、ハブ側凹形状としてのハブ側凹部26を形成し、径方向外周部60のハブ外周部22と接触する部分に、ハブ側凹形状としてのハブ側凹部26に係合する固定部材側凸形状としての固定部材側凸部64を形成してもよい。または、図6(b)に示すように、ハブ外周部22の径方向外周部60と接触する部分に、ハブ側凸形状としてのハブ側凸部27を形成し、径方向外周部60のハブ外周部22と接触する部分に、ハブ側凸形状としてのハブ側凸部27に係合する固定部材側凹形状としての固定部材側凹部65を形成してもよい。ここでは、ハブ側凹部26及び固定部材側凸部64、又は、ハブ側凸部27及び固定部材側凹部65は、円周方向に並ぶように複数個形成されている。
【0060】
本変形例の軸流ファン10では、モータ30からのトルク伝達をさらに良好にするとともに、径方向外周部60とハブ外周部22との間の回転方向の位置ずれをなくすことができる。
【0061】
尚、図6においては、ハブ側凹部26やハブ側凸部27を径方向外周部60の内周側当接部61に形成し、かつ、固定部材側凸部64や固定部材側凹部65をハブ外周部22の径方向内周側の面に形成しているが、これに限定されない。例えば、ハブ側凹部26やハブ側凸部27を径方向外周部60の外周側当接部63に形成し、かつ、固定部材側凸部64や固定部材側凹部65をハブ外周部22の径方向外周側の面に形成してもよい。または、ハブ側凹部26やハブ側凸部27を径方向外周部60の固定部材側曲げ部62に形成し、かつ、固定部材側凸部64や固定部材側凹部65をハブ外周部22の軸方向モータ側の端面に形成してもよい。
【0062】
(4)変形例2
上記実施形態及び変形例1の軸流ファン10においては、ハブ外周部22のうち軸流羽根車20の回転軸方向の一端側の部分(すなわち、第1端部23側の部分)にファン固定部材40が固定されているが、図7及び図8に示すように、ハブ外周部22のうちファン固定部材40が固定されている側と反対側の部分(すなわち、第2端部24側の部分)に蓋部材80を固定するようにしてもよい。
【0063】
より具体的には、蓋部材80は、主として、蓋側円板部81と、内周側当接部82と、蓋側曲げ部83と、外周側当接部84とを有している。蓋部材80は、金属製の部材であり、板金加工等によって蓋側円板部81や内周側当接部82等の各部が形成されたものである。蓋側円板部81は、ハブ外周部22の第2端部24側の開口を覆う円板形状の部分である。内周側当接部82は、ハブ外周部22の第2端部24に接触する部分である。ここでは、内周側当接部82は、アウターロータ32の径方向外周側に配置された円筒形状の部分であり、第2端部24の径方向内周側の面に接触している。内周側当接部82は、第2端部24の端部付近から軸方向羽根車側に向かって延びている。蓋側曲げ部83は、内周側当接部82の軸方向羽根車側の端部から径方向外周側に向かって延びる環形状の部分であり、第2端部24の軸方向羽根車側の端面に接触している。外周側当接部84は、蓋側曲げ部83の径方向外周側の端部から軸方向モータ側に向かって延びる円筒形状の部分であり、第2端部24の径方向外周側の面に接触している。すなわち、蓋部材80の内周側当接部82、蓋側曲げ部83及び外周側当接部84によって、第2端部24を内周側及び外周側から挟み込む形状が構成されている。これにより、蓋部材80は、ハブ外周部22の第2端部24に固定されている。ここでは、ハブ外周部22の第2端部24は、翼28のハブ外周部22との軸方向羽根車側の付け根部分よりも軸方向羽根車側へ延びている。そして、この部分に蓋部材80が固定されている。
【0064】
本変形例の軸流ファン10では、ハブ外周部22の軸方向両端を支持することができるとともに、ハブ21を円筒形状のハブ外周部22だけもの、すなわち、ハブ外周部22の開口を覆う部分であるハブ側円板部25(図2及び図4参照)や補強用のリブを有しないものにすることができる。このため、軸流羽根車10を樹脂成形する場合には、軸流羽根車10の成形に使用される材料を削減し、成形時の冷却時間を短縮することができ、材料費、加工費の両面でコストを削減することができる。
【0065】
しかも、本変形例の軸流ファン10では、蓋部材80(ここでは、内周側当接部82、蓋側曲げ部83及び外周側当接部84)が、ハブ外周部22を内周側及び外周側から挟み込む形状を有している。このため、この軸流ファン10では、ハブ外周部22に蓋部材80(ここでは、内周側当接部82及び外周側当接部84)を径方向両側から押圧することができるため、ハブ外周部22と蓋部材80との固定を強固にすることができる。
【0066】
また、ここでは図示しないが、蓋部材80をファン固定部材40にネジや接着等によって固定するようにしてもよい。これにより、蓋部材80を介してモータ30からのトルクをハブ外周部22に伝達することができるため、モータ30からのトルク伝達をさらに良好にすることができる。
【0067】
(5)変形例3
上記実施形態及び変形例1、2の軸流ファン10においては、ファン固定部材40の径方向内周部50のうち、円筒形状の固定部材側筒状部52の軸方向モータ側の端部から径方向外周側に向かって延びる環形状の部分をロータ当接部51としているが、図9又は図10に示すように、固定部材側筒状部52の一部をロータ当接部とする、又は、上記実施形態及び変形例1、2におけるロータ当接部51と寸法調整部70との間に、アウターロータ32の径方向外周面に沿って延びる円筒形状のロータ当接部をさらに形成する。
【0068】
より具体的には、図9においては、固定部材側筒状部52の径方向内周面の径をアウターロータ32の径方向外周面の外径と同径になるように形成し、固定部材側筒状部52の軸方向モータ側の部分をロータ当接部51としてアウターロータ32の径方向外周面に接触させ、ネジや接着等によって、ロータ当接部51をアウターロータ32に固定する。そして、上記実施形態及び変形例1、2においてロータ当接部51としていた部分全体を寸法調整部70とする。
【0069】
また、図10においては、ロータ当接部51の径方向外周側の端部からアウターロータ32の径方向外周面の径と同じ内径を有する円筒形状の部分を軸方向モータ側に向かって延ばし、この部分をロータ当接部51としてアウターロータ32の径方向外周面に接触させ、ネジや接着等によって、ロータ当接部51をアウターロータ32に固定する。そして、このロータ当接部51の軸方向モータ側の端部から径方向外周側に向かって寸法調整部70を形成する。
【0070】
本変形例の軸流ファン10では、上記実施形態及び変形例1、2と同様に、モータ30からのトルク伝達を回転半径が大きいアウターロータ32の径方向外周部を介して行うことができる。特に、この軸流ファン10では、径方向内周部50がアウターロータ32の径方向外周面に接触していることから、径方向内周部50とアウターロータ32との接触面積を大きくすることができるため、モータ30からのトルク伝達をさらに良好にするとともに、径方向内周部50とアウターロータ32との固定を強固にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、空気調和装置の室外ユニットに使用される軸流ファンに広く適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
10 軸流ファン
20 軸流羽根車
21 ハブ
22 ハブ外周部
28 翼
30 モータ
32 アウターロータ
40 ファン固定部材
50 径方向内周部
60 径方向外周部
70 寸法調整部
80 蓋部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【特許文献1】特開平3−275998号公報
【特許文献2】特開2008−223666号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状のハブ外周部(22)を有するハブ(21)と、前記ハブ外周部に形成されプロペラ形状の翼(28)とを有する軸流羽根車(20)と、
前記軸流羽根車を回転駆動するアウターロータ型のモータ(30)と、
前記モータのアウターロータ(32)に固定される径方向内周部(50)と、前記ハブ外周部に接触しており前記ハブ外周部に固定される径方向外周部(60)とを含んでおり、前記軸流羽根車を前記モータに連結するファン固定部材(40)と、
を備えた軸流ファン(10)。
【請求項2】
前記径方向外周部(60)は、前記ハブ外周部(22)を内周側及び外周側から挟み込む形状を有している、
請求項1に記載の軸流ファン(10)。
【請求項3】
前記ファン固定部材(40)は、前記径方向内周部(50)と前記径方向外周部(60)との間に、径方向外周側に向かって延びて前記径方向内周部と前記径方向外周部との間を繋ぐ寸法調整部(70)をさらに有している、
請求項1又は2に記載の軸流ファン(10)。
【請求項4】
前記径方向内周部(50)は、前記アウターロータ(32)の径方向外周部に接触している、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の軸流ファン(10)。
【請求項5】
前記ハブ外周部(22)の前記径方向外周部(60)と接触する部分には、ハブ側凹形状又はハブ側凸形状が形成されており、
前記径方向外周部の前記ハブ外周部と接触する部分には、前記ハブ側凹形状又はハブ側凸形状に係合する固定部材側凸形状又は固定部材側凹形状が形成されている、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の軸流ファン(10)。
【請求項6】
前記ファン固定部材(40)は、前記ハブ外周部(22)のうち前記軸流羽根車(20)の回転軸方向の一端側の部分に固定されており、
前記ハブ外周部のうち前記ファン固定部材が固定されている側と反対側の部分には、前記ハブ外周部に固定される蓋部材(80)が設けられている、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の軸流ファン(10)。
【請求項7】
前記蓋部材(80)は、前記ハブ外周部(22)を内周側及び外周側から挟み込む形状を有している、
請求項6に記載の軸流ファン(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−140887(P2012−140887A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293657(P2010−293657)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】